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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第18話「燃えろ!赤壁杯決勝大会!!」

第18話「燃えろ!赤壁杯決勝大会!!」

 

 赤壁杯予選大会の翌日。
 小竜隊達はまたレンタルルームを借りて決勝大会進出を祝うパーティを開いていた。
 子供達は、大皿料理の置かれた卓を囲み、わいわいとおしゃべりしながら飲み食いを楽しんでいる。

「いやぁ、予選突破して決勝大会進出なんて補欠として俺も鼻が高いなぁ」
 一応小竜隊の控え選手トップに選ばれた経験のあるヨウが何故か自慢げに言う。
「なんでヨウ君が自慢げなの……?」
「補欠って言っても、一度も試合に出てないじゃぁないか」
 アオイとチュウタに突っ込まれる。
「ははは、まぁ控えがいるからこそ俺達は安心して戦えるんだけどさ」
 ゲンジは苦笑しながらフォローした。
「控えといえば、決勝大会は二人まで交代要員の控え選手が認められてるんだったっけ?」
 ナガトが思い出したように言うとリュウジが頷いた。
「そうだ。ただし、予め選手登録したメンバーだけで途中変更は無しだ。もちろんチームの掛け持ちは禁止」
「まぁ、途中変更アリで、しかもチーム掛け持ちアリにしたら、勝ち進んだチームに移籍しまくって最低でも準優勝のチームに所属するって言う裏技が出来てまうしな」
「そ、そんな事する選手も、それを許可する大会も、あり得ないと思うけど……」

「でも、その交代要員ってあくまで決勝大会の前に登録するんだよな?って事は、予選落ちしたけどちゃっかり本戦出場チームの控え枠に入るって事は可能なのか」
「わざわざ予選落ちしたチームの奴を控えに迎えるチームなんて滅多におらんやろうけどな」
「……だが、チームとしては予選落ちでも、選手としては優秀なフリッカーもいるかもしれない。一度チェックしてみるのもアリか?」
 ゲンジの言葉を聞いて、リュウジは少し考え込んでから大会パンフレットのチェックを始めた。

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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第17話「手放したくない絆」

第17話「手放したくない絆」

 

 赤壁杯予選大会第二ステージ。
 サバイバルバトルの最中、リュウジはツバサとナガトから不信感を買ってしまう。
 このままではチームのためにならないと判断し、リュウジは一度チームを離脱する事を決意した。

「じゃあな。なるべくポイント稼いでチームに貢献してくるぜ。お前らも負けるなよ」
 そう言って軽く手を上げて歩いて行こうとする。
「リュウジ……!でも、やっぱり無茶だって!下手したら1VS5で戦う事にもなるのに、ポイント稼ぐどころじゃないだろ!?」
 ゲンジは遠ざかる背中へ必死へ訴えかけるが、リュウジの足は止まらない。
「なぁ、ツバサ、ナガト。落ち着いて話そうぜ?ちゃんと話せば……」
「……」
「……」
 ツバサとナガトは無言で視線を逸らす。
「変だよ……」
 ユウスケがつぶやく。
「ユウスケ?」
「どうしてそうなるの!?おかしいよそんなの!!」
 ユウスケの悲痛な叫びにリュウジの足がついに止まった。
「何もおかしくないさ。俺は信頼を失った。なら、離れた方が良い」
 リュウジは感情を殺し、振り返りもせずに事務的に返答する。まるで自分に言い聞かせるかのように。
「だけど、これはチーム戦なのに!」
「いつもベッタリ一緒にいる事だけがチームワークじゃない。離れた方が効率が良い時だってある」
「効率とか、そう言う問題じゃないよ!だって、今のリュウジさんはチームワークのためじゃなくて、追い出されてるようなものじゃないか!それで上手くいったとしても、そんなのチームじゃないよ!!」
「だが、今俺が一緒に行動してもマイナスにしかならないだろ」
「僕はそれでも良いよ!!例えマイナスだとしても、ダントツを誓いあった仲間だもん!勝っても負けても、チームでなきゃ意味がないじゃないか!!」
「そうは言っても、俺はお前達を利用するかもしれないんだぞ?」
「リュウジさんにどんな企みがあったって、少しくらい秘密があったって良いよ!それでも僕は、小竜隊でバトルするのが好きなんだ!!」
 ユウスケの必死な訴えに便乗するようにゲンジも口を開いて援護した。
「そ、そうだぜ!大体、言えない事の一つや二つ誰にだってあるし、前のチームの友達と仲良くするなんて当たり前じゃないか!そんなのでいちいち突っかかる方がおかしいんだ!リュウジも、ちょっと突っかかられた程度で離れるなんて大袈裟なんだよ!」
「ユウスケ、ゲンジ……」
 ユウスケとゲンジの訴えを聞き、リュウジはゆっくりと小竜隊の下へ歩み寄った。
「……そうだな、効率とか最適解とか言い訳して、俺は逃げていただけなのかもしれない」
「リュウジ……」
 殊勝な態度のリュウジに、ツバサとナガトもゆっくりと振り返った。
「正直に言う。小竜隊を……俺が自分でチームを作ろうと思った動機は、ホワイトホースにある。ある意味、利用するためと言っても間違いじゃない」
 小竜隊メンバーは、リュウジの言葉を否定も肯定もせず、ただ静かに聞いた。
「俺がいた頃のホワイトホースは、そこそこの強豪ではあったが、だからこそそこで満足して向上心を失っていた。俺はそれがずっと不満だった。だから、親の都合で転校したのを機にチームを脱退してライバルとして鼓舞しようと思ったんだ。
何より俺自身、あいつと仲間としてじゃなくライバルとして本気で戦いたかったと言うのもある」
「そのためのチームが、俺達小竜隊……」
「そうだ。あいつらにとって発破になって、そして強くなったあいつらを小竜隊として戦って倒す。それが俺の真の目的だ」
「だから、リュウジは……」
「あぁ、ホワイトホースとは決勝トーナメントで戦いたい。だから予選落ちしてほしくなかった。ツバサの言う通り、俺がホワイトホースを倒したくなかったと言うのは事実だ」
「やっぱりそうなんか……」
「でも、それでも小竜隊が勝つ事が1番の目的ってのも本当なんだよね」
「もちろんだ。そして、事故の事を黙っていたのは……責められるのが怖かったんだ……」
「責められる?」
「ナガトは有名なフリッカーだからな。その事故に関わってしまった事で、才能を潰したと責められるんじゃないかと……だから、言えなかった。それだけなんだ」
「……別にちゃんと対応してくれたから、いいのに」
「それでも、な」
 それを聞いて、ゲンジはフッと笑った。
「なんだ、聞いてみるとやっぱり大した事なかったんじゃん」
「うん。友達が大事だったり、怒られるのが怖かったり、僕らだってそう言うのあるもんね」
「せやな……うちもすまんかった!」
 ツバサはリュウジに向かって勢いよく頭を下げた。
「ほんまの話、リュウジがホワイトホースと仲良くしてるのを見てるのは面白くなかったんや。結局うちらよりも昔の仲間の方が大事なんじゃないかって思うたら、モヤモヤして……けど、うちかて転校する前の友達は大事やし、今の仲間も同じくらい大事なんやもんな」
「俺も、すまなかった。疑心暗鬼に囚われて、筋の通らない理由で言いがかりを付けてしまって……本来なら俺は礼を言わなきゃいけないのにな。あの時、適切な応急手当してくれてありがとう、俺が今もフリックスできるのはそのおかげなんだ」
「ツバサ、ナガト……」

「へへっ!よーし、無事仲直り出来たところで、あれやろうぜ!」
 ゲンジがグッと拳を突き出すと他のメンバーもなんの事か察して拳を合わせた。
 そして、声を合わせて叫ぶ。

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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第16話「混戦の第二ステージ!止められない疑念」

第16話「混戦の第二ステージ!止められない疑念」

 

 2年前。グレートフリックスカップ決勝大会。
 フィールドを挟んでまだあどけない表情をしたナガトと年上の少年が対峙していた。

『さぁ、グレートフリックスカップ決勝トーナメント!デビューしていきなり才覚を発揮したまさに神童!関ナガト君と【誇り高き強さの求道者】の異名を持つ遠近リョウマくんの対決!いきなりの好カードだ!!』

「ついに、憧れのリョウマさんと戦える……!」
 ナガトは緊張した面持ちでリョウマを見る。
「余計な事は考えなくていい」
「え?」
 身体中がガチガチに固まっているナガトへ、リョウマは優しく声を掛けた。
「俺を俺だと思うな。そうだな、ニンジンかゴボウとでも思っていろ」
「ニンジン?ゴボウ……?」
「ただし、お前が相手にするゴボウは結構強いぜ」
 リョウマなりにナガトの緊張をほぐすための優しさだったのだろう、それを察したナガトはふっと微笑んで返事した。
「はい!」

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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第15話「デザイアの謎 交錯する企み!」

第15話「デザイアの謎 交錯する企み!」

 

 赤壁杯予選第一ステージサバイバルレース。
 小竜隊とデッドキャッスルは共闘して順調に進んでいたのだが、突如現れた玄武使いホウセンの乱入によってゲンジが分断され、更にギョウが裏切って小竜隊を道連れに海へダイブするようにシュートした。
 絶体絶命の小竜隊!果たして予選通過出来るのか……!

「「「うわあああああ!!!!」」」

 ナスティアラクネアに拘束されたまま、ソニックユニコーンとマイティオーガが宙を舞い、海へと落ちていく。

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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第14話「大乱戦!白熱のサバイバルレース!!」

第14話「大乱戦!白熱のサバイバルレース!!」

 

『さぁ、ついにはじまりました赤壁杯予選大会第一ステージ!バーチャル世界に建設されたロングブリッジ上で繰り広げられるサバイバルレース!早くも多くのドラマが展開されています!果たして、勝ち上がるのは……!』

「いけっ!マイティオーガ!!」
 デッドキャッスルと組んでいる小竜隊。
 スタートダッシュはシールダーアリエスの特性を活かしたものの、ある程度グループが分散した中盤戦では力を発揮出来ず他の選手にバトンタッチ。
 現在はマイティオーガがウィップローズを抱えて先行している。
 ウィップローズはツルを使って相手に絡みつく機体だが、マイティオーガの角の多さは絡みやすさにも繋がっているようだ。

「うふふ、あたしの機体とあなたの機体、相性良いみたいね。どう、今度リアルでも会ってみない?」
「……」
 真面目なナガトは特に良い返しが思いつかず黙ってしまう。
「おすましさんね。そういうところもかっこいいわよ」
「……はあ」

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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第13話「赤壁杯開幕!波乱のサバイバルレース!!」

第13話「赤壁杯開幕!波乱のサバイバルレース!!」

 

 【遊尽コーポレーション】
 フリックスの開発製造販売を担う、ここ近年上場してきた新興企業である。
 少々強引なやり口が批判される事もあったが、敏腕社長・諸星氏の手によって短期間で急成長を遂げており海外展開も視野に入れているらしい。

 そんな会社の社長室では、年端もいかない少年……諸星コウが社長椅子に座りノートパソコンのモニターを眺めていた。

「ふむ、赤壁杯参加者リストはこれで全部だな。江東館に小竜隊は当然居るとして……ふっ、やはり参加して来たかソウ。あの孤高気取りがわざわざチームまで作るとは、焚き付けておいた甲斐があった。そして……掛かったな、これでようやく全てが揃う」

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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第12話「舞台はバーチャル!アクチュアルバトル!!」

第12話「舞台はバーチャル!アクチュアルバトル!!」

 

 赤壁杯を1ヶ月後に控えたある日の放課後。
 小竜隊メンバーはいつものように空き教室に集まっていた。
 この日は練習の前にミーティングをするようで、皆がリュウジの前に集まっている。

「ついに赤壁杯予選の内容が公開された」
「おっ、いよいよやな!」
「予選はバーチャル空間で行われる『アクチュアルバトル』と言うシステムを使うらしい」
 聞き慣れない単語に一同顔を見合わせる。
「アクチュアルバトル?」
「なんや、聞いた事あるような無いような」
「確か、段田バンが子供の頃に夢で見たバトルシステムって話をなんかの番組で聞いたことあるなぁ」
「バーチャル空間って事は特殊な機器が必要になるんですよね。練習とかは出来るんですか?」
「そこは問題ない。全国のゲームセンターにバーチャルマシンが設置されていて、そこで練習出来るようになっている。予選大会はそのマシンでネット対戦するらしい」
「随分大掛かりですね」
「俺もこんなのは初めてだ。今回はあのフリックス開発の大手『遊尽コーポレーション』がスポンサーになったのもあって、例年とは比較にならないほど規模が大きくなってるらしい」
「ええなぁ!大きければ大きいほど燃えてくるで!」
「しかし、ただでさえチーム戦の経験も十分じゃないのに加えて、未経験のシステムで大会か……」
「アクティブバトルと通ずる部分も多いらしいから、今までの経験がリセットされるってほどじゃないが。この1ヶ月でどれだけ練習出来るかが鍵になりそうだな。次の休みは早速市川駅前のゲームセンターに行って練習だ」

「「「おーーーー!!」」」

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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第11話「舞い降りて来たチャンス」

第11話「舞い降りて来たチャンス」

 

 

 静岡県某所。
 コンクリートで囲まれた薄暗い廃墟のような空間で、三人の少年が顔を合わせていた。
 一人は南雲ソウ、もう一人は甲賀アツシ、そしてもう一人は忍者を思わせる格好をした少年だ。

「俺達とチームを組みたいだと?」
 忍者っぽい少年が怪訝な顔をして復唱する。
「まさか孤高を気取っていたお前から、そんな言葉が飛び出すとはな。馴れ合いに興味でも出て来たか?南雲ソウ」
「……嫌なら、別の奴を探すまでだ」
 ソウは、相手の反応が芳しくないのが気に障ったのか、ぶっきらぼうに言う。
「待て待て、嫌とは言ってない。だが、どういう風の吹き回しだ?GFC決勝大会出場を辞退したかと思ったら、今度は俺達とチームを組んで赤壁杯へ出たいとは」
「……戦いたい奴がいる。それだけだ」
「あの、チャンピオンへのリベンジを蹴ってでも、か?」
 試すような口調で言うと、ソウはなんでもないと言う風にサラッと返した。
「奴などもう眼中にない。俺が行くのは最強への道だ」
「最強ねぇ……でも今年の赤壁杯はGFC決勝大会とスケジュールが被って……」
「面白い、俺は乗るぜ」
 と、今まで黙っていたアツシが開口一番そう言った。
「アツシ!?でもお前予選突破したのに……」
「大会は問題じゃない。大事なのは誰と戦えるかだ」
 アツシがそれだけ言うと、ソウはフッと笑った。
「……まぁ、俺は元々スケジュールは空いてたから問題はないが。だが、出場選手は5人だろう?他にアテはあるのか?」
「無いことはない」
「無いことはって、お前な……」
 何故か自信満々に答えたソウへ、忍者少年は呆れ顔をした。

 ………。
 ……。

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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第10話「激突!ライジングドラグナーVSディバイトバイフー」

第10話「激突!ライジングドラグナーVSディバイトバイフー」

 

 小竜隊VS江東館の親善試合。
 第1ラウンドの3VS3の戦いは見事小竜隊が制した。
 この事でより一層結束を強めたのだが、反対に江東館チームは……。

「ちくしょう、俺達があんな負け方するなんてよぉ……!」
「ごめん、サクヤ……」
「俺の詰めが甘かった。油断大敵、火がボウボウだな」
 負けた三人は申し訳なさそうにしているが、サクヤは凛とした表情で言った。
「何言ってるんだ、三人はよく戦ってくれた!おかげで、小竜隊の強さのおおよそは掴めた。……新規チームのにわか仕込みかとも思ったが、さすがは元ホワイトホースのエースが指導しただけの事はある」
「残りの二人も、チーム戦の基礎訓練はマスターしていると見ていいだろう。後世畏れるべし、だ」
「そうだな、楽な戦いにはならなそうだ」
「兄ちゃん……」
 ケンタが不安げにサクヤを見上げた。
「大丈夫だ心配するなケンタ。俺とお前のコンビネーションがあれば必ず勝てる。それに、ケラトプスとバイフーの力を信じるんだ」
「うん……」
 ケンタは弱々しげに頷き、手に持ったバイフーを見つめた。
「ユミ、早速三人の機体のメンテを頼む。最終ラウンドは、場合によって誰が出るか分からないからな」
「えぇ。いつでも万全に戦えるようにしておきますよ、お任せあれ!」
 ユミは清楚に振る舞いつつも、いたずらっ子のような笑顔を浮かべながら敬礼した。
「しゃしゃっ、相変わらず敬礼似合わねぇなぁ。頼りなさそっ」
 シズキが軽口を叩くとユミは目を細めて冷たい笑顔を向けた。
「では、シズキ君は頼りになる方にメンテしてもらってください。その分、私はエイグルとオルカを完璧に仕上げますね」
「うわわわ、ごめん!冗談冗談!ぃよっ、世界一敬礼の似合う女!!」
 シズキは慌てて手を振ると、取って付けたようなおべっかを飛ばした。
「そのフォローも微妙なんですが……」
「褒め下手か」
 シズキの下手くそっぷりにユミは困ったように苦笑し、リンは呆れてジト目になった。
「ふっ、はははは!」
 その様子を見て、サクヤが笑い出すと、他のメンバーもつられて笑い雰囲気が和やかになっていった。

(さすがはチームバトルの老舗、江東館だ。敗北を引き摺らないように素早く雰囲気を切り替えている。さて、小竜隊の方はどうかな?)
 諸星コウは離れた場所で眺めながら江東館に感心したのち、小竜隊へ意識を向けた。

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弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第9話「ダントツの誓い」

第9話「ダントツの誓い」

 

 国道14号線を一台のワゴン車が千葉方面から東京方面へ向かって走っていた。
 国道14号線は車を持っている千葉市民が東京方面へ行く際によく利用する主要道路だが、この車の運転手も例外なく頻繁に利用しているようでその走行には長年の慣れを感じさせた。
 このワゴン車には、運転手の黄山先生と小竜隊のメンバーが乗っている。

「おっ、皆見えてきたぞ!あれが我らが千葉の県境、江戸川じゃ!」
 大きな河川敷を結ぶ橋が見えてきた。
「おお〜!ついに俺たち、県境を越えるのか!!」
「この瞬間はワクワクするよね」
「千葉の県境は川で囲まれてるから、特別感あるもんなぁ」
 そう、千葉県は江戸川と利根川よって他県から分断されている。
 もし川を繋ぐ橋が崩れたら、千葉県は実質孤島となってしまうだろう。
 ある意味、本州から独立した県といっても過言ではないのかもしれない。
 それ故に千葉県民にとって県境とは国境と同レベルの大きな意味を持つのだ。

「そんなもんかねぇ……まぁでも、車で試合会場まで行けるのは快適やなぁ〜!」
 ワゴン車なので車内はそこそこ広いので、ツバサは大袈裟に伸びをするがそれでも大人数で乗っているため腕が隣にいるゲンジの顔を掠めた。
「うわ、気をつけろよツバサ……」
「悪い悪い。かんにんな」
 苦言を呈すゲンジに対して、ツバサは悪びれる様子もなく謝った。
「はは、グレートフリックスカップは電車移動だったからねぇ」
「せやせや、舞浜駅まで地味に乗り換え面倒やったからなぁ……まっ、梅田ダンジョンと比べれば屁でもないけどな」
「俺たちがついてなきゃ、一回乗る電車間違えそうになってたけどな」
「うっ……武蔵野線と京葉線の境がややこしすぎるんや。しかもちょっと風が吹いただけで遅延しとるし」
「『風が吹けば京葉線が止まる』って奴だな」
「なんじゃそりゃ、桶屋が儲かるんやないんかい」
 千葉民なら誰しもが知っている慣用句だが、まだ越してきたばかりのツバサは怪訝な顔をした。

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