弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第13話「赤壁杯開幕!波乱のサバイバルレース!!」

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第13話「赤壁杯開幕!波乱のサバイバルレース!!」

 

 【遊尽コーポレーション】
 フリックスの開発製造販売を担う、ここ近年上場してきた新興企業である。
 少々強引なやり口が批判される事もあったが、敏腕社長・諸星氏の手によって短期間で急成長を遂げており海外展開も視野に入れているらしい。

 そんな会社の社長室では、年端もいかない少年……諸星コウが社長椅子に座りノートパソコンのモニターを眺めていた。

「ふむ、赤壁杯参加者リストはこれで全部だな。江東館に小竜隊は当然居るとして……ふっ、やはり参加して来たかソウ。あの孤高気取りがわざわざチームまで作るとは、焚き付けておいた甲斐があった。そして……掛かったな、これでようやく全てが揃う」

 ブツブツと独り言を言いながらほくそ笑んでいると、扉が控えめに叩かれた。

「どうぞ」

 ゆっくりと開かれた扉から、スーツ姿の20代後半くらいの女性が束になったプリントを持って入って来た。

「失礼いたします。社長代理、赤壁杯の協賛企業のリストをお持ちしました」
「ありがとう、そこに置いといて」
 女性は丁寧な所作で資料をコウの隣に置く。
「しかし社長代理、本当によろしいのでしょうか?」
「ん、何がだい?」
「いくらお父様が海外展開のために不在とは言え無断でこのような……新型のワンオフモデルの急ピッチ開発、そしてマイナーな大会へメインスポンサーとしての出資に大会日程の変更……少々やりすぎでは……」
 遠慮がちに批判意見を言う女性に対し、コウは『そんな批判は想定済みだ』と言わんばかりの顔で言った。

「ふっ、父の代理とは言え今の社長は僕だ。社長ならば社の利益を考えて開発や出資先の選択、スケジュール管理をするのは当然の権利だろう?」
「しかし、個人のフリッカーへのワンオフ機提供や赤壁杯への出資が利益になるとは……」
「スキマ産業さ。目先の利益に飛びついていては企業の未来はない。父もよく言っている事だ。社の方針から外れた事はしていない。利にならないものを育て利に変えるのが真の経営だよ。第一人者ほど強いものはないからね」
「ですが……いえ、出過ぎた事を言って申し訳ありません」
 女性が深々と頭を下げる。
「いや、気にしないでくれ。君の不安ももっともだ。部下の意見は大事だからね、皆に納得してもらえるよう僕も尽力するよ」

 ……。
 ………。

 成都小学校、放課後。
 いつものように小竜隊は空き教室に集まって練習していた。

「いけぇ、ドラグナー!」
「飛ぶんや、ワイバーン!!」

 活気付く中、ナガトは1人ぼんやりと立ち尽くしていた。

「……」

 その視線の先にいるのは、ゲンジ達の指導をしているリュウジだった。
 いつもと同じように飄々と、それでいてしっかりと指導する彼の姿は先輩フリッカーとして好印象を与えるものだろう。

 “リュウジが、俺を轢いた……”

 先日、自らの口から出た言葉を思い出す。

「……ふ」

 今になってみれば、気が動転したとは言え馬鹿な事を呟いたものだ。
 例え事故を起こした車に乗っていたとは言え、リュウジに責任をなすりつけるのは筋違いも良いとこだ。
 そう考え直し、改めて練習に参加しようとナガトはリュウジへ声をかけようとした。

「なぁ、リュウ……」

 ちゃんちゃらちゃんちゃらちゃららら〜♪
 その時、リュウジのポケットから何やら楽しげな音楽が流れ出した。

「うぉっと、悪い。電話だ」
「なんや、彼女か?」
「そんなんじゃねぇよ」
 ツバサの軽口をあしらい、リュウジは教室を出て行く。

「うししし、あれは絶対彼女やな」
 ほくそ笑みながらツバサは扉の前で聞き耳を立てる。
「つ、ツバサちゃん盗み聞きは良くないよ」
「そういうユウスケかて……って、ゲンジにナガトもかい」
「ははは、やっぱリュウジにどんな奴から電話来るのか気になるじゃん」
「……静かに」
「ナガトが一番ノリノリかい」

 さすがにドア越しからでは上手く聞き取れないが、断片的に話し声は聞こえてきた。
 何より、リュウジのテンションが上がったるためかいつもより声のトーンが高い。

「おぉ、イッケイじゃないか!久しぶりだなぁ!」

「なんや、男の名前か。つまんな」
 ツバサはいきなり興味を失った。

「……おぅ、順調だ……そっちもか……よかった……」

「昔のチームメイトかな?」
「そういや、ホワイトホースってとこに所属してたんだったな」

「あぁ、例の件……任せろ……もちろんだ、お前らのためだ、……も協力する……そのために、こっちで……結成……んだからな」

 断片的すぎて内容はよくわからない。

「くぅぅ、よく聞こえねぇ……!」
「いつまでそんなくだらない事やっとるんや。とっとと練習するで」
「ツバサがやり始めた事だろ」
 早々に興味を失ったツバサは言い出しっぺのくせにいけしゃあしゃあとそんな事を言ってきた。
 とは言え正論ではあるので三人は渋々練習に戻った。

(……協力……ホワイトホースのために、結成?小竜隊を、って事か……?)

 戻りながら、ナガトは頭の中でさっき聞いた断片的な情報を整理していた。

 ……。
 ………。

 そして、赤壁杯予選当日。
 小竜隊メンバーは駅前のゲームセンターに集まりVRマシンをセットした。
 観客はネット配信で試合の様子を見る事になる。
 VRマシンをセットすると、グリッド線が敷かれただだっ広い空間に飛ばされた。
 そこに赤壁杯予選参加者であろうフリッカー達が大勢待機している。

「うっひょ〜!めっちゃ人いるやん!!」
「実際ゲーセンにいるのは俺らだけなんだけど、なんか不思議な感じするな」
「しかし、こんなに集まるとは赤壁杯始まって以来だな」
「それだけ遊尽コーポレーションの影響力が強いって事か」

 しみじみと人混みを眺めていると、ゲンジはその中によく知った顔を見つけた。
「あいつは……!」
 それは、南雲ソウと甲賀アツシ……かつて自分を負かした二人の男だった。
「あの二人チームだったのか……そうか、それでGFCの出場枠に空きが出たのか」
 ゲンジがソウ達を眺めていると、視線に気づいたのかソウがゲンジの方を向く。
「っ!」
 思わず身構えるゲンジだが、ソウはすぐにそっぽを向いた。
「なんや?感じ悪いやっちゃなぁ」
 その流れを見ていたツバサが悪態をつく。
「いや、いいんだ。今の俺は無視出来ないフリッカーだって事をバトルで証明してやる!」
「その意気やで!あんな強敵まで参加してるなんて、うちも燃えてきたわ!!」

 と、その時。リュウジが1人の青年に声をかけられた。

「よっ、元気してたかリュウジ」
 見ると、5人の年齢も幅広い男女が立っていた。
「おぉ、イッケイ!皆!!」
 リュウジが顔を綻ばせると、5人は口々にリュウジへ話しかける。
「久しぶりです!」
「元気そうで何より」
「会いたかったよリュウジ兄ちゃん!」
「その様子だとそっちでも心配なさそうじゃい!」
「皆こそ、相変わらずだなぁ!少し安心した!」

 その様子を小竜隊メンバーはなんとなく置いて行かれたような気分で眺めていた。
 それに気付いたリュウジは、小竜隊へ話を振る。

「おっと、悪い。こいつらは俺が前に所属していた北海道のチーム『ホワイトホース』だ」
「リーダーのイッケイだ、よろしく」
「ど、どうも」
 小竜隊メンバー達はぎこちなく会釈する。
「君達が話に聞いた小竜隊か。良いチームを作ったな、リュウジ」
「まぁな」
「俺達もお前が抜けてから死に物狂いで訓練してきた。前みたいに退屈はさせないぜ」
「じゃなきゃ困るさ」
「……リュウジ、お前はいつでも……いや、お互い健闘しよう、小竜隊の皆」
 意を決して言いかけた言葉を飲み込み、イッケイに社交辞令のような激励を贈られ、小竜隊メンバーは「え、あぁ、はい」と言った微妙な返ししか出来なかった。

「なんや、なんかなぁ」
 去っていくホワイトホース達の背中を眺めながらツバサがボヤく。
「どうした、ツバサ?」
「別に、ただ随分仲良かったんやなと思うてな」
「そりゃ元チームメイトなんだから当然だろ」
「さよか。まぁ、うちも転校生やから気持ちは分からん事もないけど」
「なんだ、もしかして嫉妬してるのか?可愛いとこあるじゃないか」
「ん、んなわけあるかい!!」
「ははははは」
 ツバサを揶揄って笑うリュウジへ、ナガトが遠慮がちに切り出した。
「……ねぇ、リュウジが小竜隊を作ったのってホワイトホースの」
 言い切る前に今度は別の人が小竜隊へ話しかけてきた。

「あ、小竜隊の皆だ!おーい!!」

 江東館のケンタが駆け寄ってきた。
「おっ、ケンタ!それに江東館の皆も!」

 他の江東館メンバーもゆっくり歩いてくる。
「待てよケンタ!」
「走ると危ないわよ!」
「シャシャッ!バカだなぁ、バーチャル空間だから危ないわけないだろ」
「うるさい」
 バカにしたように笑うシズキをリンが小突く。
「いてっ!バーチャルなのに、痛さは本物だと……!」
「ね、危ないでしょ?」
「はい」
「言わぬが花、だな」
 江東館メンバーも相変わらず和気藹々としている。
「ゲンジさん!僕バイフーを完璧に使いこなせるようになったんだ!次は絶対僕が勝つよ!!」
「言うじゃないか!俺とドラグナーだって、あれからもっと強くなったんだぜ!」
 仲良く話すゲンジとケンタの横で、サクヤはリュウジに話しかけた。
「先日は世話になったね、改めて礼を言うよ」
「いや、こちらこそ良い経験をさせてもらった」
「大会でも、また親善試合のように正々堂々と戦おう」
「あぁ、望むところだ」

 交流もそこそこ済んだ所で、会場が少し薄暗くなり上部に大きなモニターが浮かんでそこに司会者と思われる22歳くらいのアナウンサー風の男が現れた。

『会場へお越しのフリッカーの皆様!赤壁杯予選大会へようこそ!私は今大会の司会進行を務めさせていただきます真島アナウンサーです!』

「バトルフリッカーコウじゃないんだ」
「グレートフリックスカップと日程が被ってるしな。そもそも赤壁杯で有名人を司会進行に起用する事自体今回が初めてだ」
「あの人有名人なの?」
「最近テレビで良く観るで。主婦に大人気の新人男子アナって話題や」
「へー」

『それでは、早速予選のルール説明をします!予選大会の参加チームは全73組!それを第1ステージ、第2ステージで篩い落とし、上位16チームが決勝トーナメントへ進めます!
事前に連絡した通り、フリックスの操作はアクチュアルシステムを使ってのものですが。
第一ステージはサバイバルレース!四本に分かれた巨大な橋を制限時間内に渡って、島に辿り着けば突破です!』

「レース!?」
「アクチュアルとは言ってたけど、バトルじゃないのか!?」
「バーチャルとは言え、5人1組の70チーム以上が一斉に走ったら収拾つかないんじゃ」

 皆口々に騒ぐ。

『各チーム出走するのは1〜3人までです。これはレース中自由に交代や追加、回収が可能となります。交代は控えの選手と立ち位置の入れ替え、追加はチーム内で最もゴールに近い選手よりも後ろならどこでも出現可能、回収は制限無しですが、全機回収してしまうと自動的にリタイアと見なされます!』

「出走人数はかなり重要になりそうだな」
「レースって事を考えると、1番早い1人がいれば良さそうだけど」
「けどサポーターの存在も必要だろうし」

『操作方法は基本的にアクチュアルと同じ。通常時はステップを使い、ウェイトタイムが経過したらシュート可能。ただし、ステップして消耗したバリケードの回復は不可能。また、ダメージの概念、マインやスペルは無いものとします!』

「ステップが基本でバリケード回復無しってなると、1人だけに負担かけるのは得策じゃないな」
「実質、バリケードの強度がバッテリーみたいな扱いになるのか」

『そして、見事第1ステージを突破すれば第2ステージは島全体を舞台にしたサバイバルバトル!バトルロイヤル形式で一斉にバトルし、他のフリッカーを撃沈させればチームに3ポイントが入り、撃沈されると1ポイント失う上に一定時間バトルに参加出来なくなります。機体のセットと回収は自由に行えますが、機体を出してない状態のフリッカーが敵機に触れてしまうとその時点で撃沈になってしまうので要注意です!』

「第二ステージからが本番って事か」
「けど、いきなりレースって言われてもなぁ」
「俺達はバトルするつもりで来たんだぜ」

 口々に不満が漏れる。

『これは今回の赤壁杯メインスポンサー遊尽コーポレーションの社長代理諸星コウ氏の各チームの対応力が見たいと言う意向に則ったものです』

「社長代理!?コウが!?」
「えらい奴と関わっとったんやな、うちら……」

『ですが、皆様の不満も最もです。そこで、試合開始まで1時間の準備タイム、そして各チームのプライベートサーバーと交流用ロビーサーバーを設けました。機体改造や作戦会議だけじゃなく、敵チームと共闘するための取引など存分に対策を行ってください。では、皆様の健闘を祈ります!』

 これで説明は終わり、準備時間となった。
 小竜隊はとりあえずプライベートサーバーへ移動して作戦会議をする。

「まさかコウが社長でメインスポンサーだったなんてなぁ。いろいろ納得って感じだ」
 今回の赤壁杯は従来と全く毛色が違うらしい事は聞いたが、それもコウが手を引いてるとなれば当然だ。あいつならやりかねん。
「それはそうとして時間がない。早いとこ対策を練るぞ」
「レース、となると当然軽量で低摩擦なセッティングが必要になるね」
「スピードなら自信あるで!レヴァントワイバーンも対応出来るはずや!」
「ウチのメンバーは機動力高い奴が多いからな。ユウスケ、急いでセッティングを頼む」
「は、はい!」
 リュウジに指示され、ユウスケは全員分のセッティングに取り掛かった。
「となると、1人ずつで走って、交代しながら全員でスピードを稼ぐ作戦がベストか」
「他チームの妨害もブッちぎれば関係あらへんしな!」
「けど、シールダーアリエスはディフェンダーだ。全員でスピードを稼ぐよりも、サポートに回ってもらった方がいいんじゃ」
「いや、ユウスケ1人にサポートを任せるのはむしろ荷が重くて逆効果だ。それに、乱戦なら防御型なりの走り方がある」
「あ、そっか」
 リュウジの言葉にユウスケは納得したようにうなづいた。
「出来そうか?」
「なんとかやってみます」
「じゃあスタートダッシュはユウスケに任せる。頼むぞ」
「は、はい」
「とは言え、全くサポーター無しってのはいざって時不安だよなぁ」
「だがそれでスピードが落ちちゃ元も子もない。コースレイアウトを見る限りかなりの長丁場になりそうだからな」
「そりゃそうだけど」
「せや!だったら他のチームと共闘すればええやん!味方が増えればその分余裕も生まれるで!!」
「あ、そうだな!江東館辺りだったら話も通じそうだし!」

 と言うわけで小竜隊はロビーサーバーに移って江東館か共闘できそうなチームを探した。

「うーん、いないなぁ」
 どれだけ探しても江東館メンバーは見つからなかった。
「あのチームは気を衒った行動はしなさそうだし、プライベートサーバーで対策練ってるのかもなぁ」
「ちぇ、当てが外れたか」
 仕方ないと再びプライベートサーバーに潜ろうとした所で声をかけられた。
「おっ、お前東堂ゲンジじゃないか!久しぶりだなぁ!」
「へ?……げっ!ギョウ!?」
 振り向いてみるとそこにいたのは、かつてGFCでゲンジに反則行為をしてきたギョウだった。
「げっ!はないだろげっ!は……」
「いやぁ、ははは……」
 さすがに失礼すぎる反応だと気づいて笑って誤魔化す。
「あんた、また卑怯な手をする気やないやろな?」
 GFCの事を思い出し、ツバサはあからさまに疑惑の視線を向けた。
「……あの時はすまなかった。最後の大会だと思って焦ってたんだ。反省してる」
 思いもよらず、ギョウはしおらしく頭を下げた。
「ま、まぁ、別に良いけど……」
「なんか気味悪いな……」
「それで、お詫びってわけじゃないんだが。俺のチーム『デッドキャッスル』と組まないか?」
「え、」
 思わぬ提案にゲンジは面食らう。
「上手い事言って、どうせうちらを利用する気やろ?」
「もちろん、その気がないわけじゃないが。間違いなく君達にとってもプラスになる。と言うのも、ウチのチームは俺を始め拘束系ギミックがメインだからレースには向いてない。その代わりサポーターとしてだったら十分力を発揮できる」
「サポーターか……」
 丁度欲しかった所ではある。
「君達の機体を掴ませてもらって、同時にステップをすれば二人分の力で機体を動かせるからバリケードへの負担はむしろ少なくなるし、もちろんシュートも2人分の回数撃てる。知っての通り、俺の機体は本来は軽量型だから荷物にはならない」
「うーん……」
 美味い話のように思うが、どうも信用ならない。
「少し考えさせてもらっても良いか?」
 ナガトがそう言うとギョウは快く頷いた。
「もちろんだ。ただ、開始10分前には決めてくれよ。こっちにも作戦があるんだ」
「分かっている」
「じゃあ、俺たちのプライベートサーバーのパスワードを渡しとく。決まったらそこに来てくれ、チームメイトには俺が話をしておくから」
「あぁ」

 そして、小竜隊はプライベートサーバーに戻って会議する。

「で、どうする?」
「うちは、どうもあいつは信用ならんわ」
「共闘した方がお互い得が大きいってのは間違いないだろうけどな。機体同士を完全に連結して2人分の力でシュート出来ればレースでは有利だ」
「僕は、せっかく更生したっていうのを疑いたくはないけど。けどやっぱり危ないと思う」
「……俺は、奴を知らないからなんとも言えないが、話が美味すぎるとは思ったな」
「だよなぁ。やっぱりここは断って……」

「いや、敢えて罠にかかってやるのも良いんじゃないか?」
 意外な事にリュウジが賛成派に回った。
「え?」
「確かに奴らの提案は罠だろうな。しかし、仕掛けるとしたら終盤のはずだ。じゃないと向こうにとっても損だ。となれば、警戒さえしていれば上手く利用は出来る。隙を見せずに何も仕掛けられないままゴールしたとしても、お互い何も損をしないんだ。その結果は向こうも想定した上での交渉だろうからな」

「確かに、油断していたら俺達を蹴落とすか、隙がなかったら共闘して安全に予選突破。2パターンの結末は考えてそうだ」
「となれば、俺達は上手い事奴らに後者を選択させれば良い」
「上手くいけば良いけど」
「なるようになるか」

 一応、デッドキャッスルの提案に乗ると言う形で小竜隊はデッドキャッスルのプライベートサーバーへお邪魔した。

「フハハハハ!俺がデッドキャッスルリーダーの城ヶ崎シュウタロウだ!歓迎するぞ、小竜隊!」
 シュウタロウはなかなか豪快そうな男だと。
「あたしは、氏家ヒナコよ。なかなかのイケメン揃いね、よ・ろ・し・く❤️」
 ヒナコは子供とは思えない色香を漂わせている。
「延城ブンなんだよね」
 ブンはチームの中で1番背が低い。
「俺は車田ジロー!一時的な共闘だが、よろしく頼むぜ!!」
 ジローはレスラーのように大柄で覆面をつけていた。

 それぞれ自己紹介も終わり作戦の確認に入る。

「ある程度の話はギョウから聞いてるよな?俺達の中では、ギョウのナスティアラクネア、ヒナコのウィップローズ、ブンのアサルトスコーピオの3機が拘束ギミック持ちだ。こいつらで代わる代わる小竜隊の機体と連結して、2人分のシュートパワーで突き進む。
そして、防御に優れた俺のニードルセンザンオーとジローのギガモスが要所要所でサポートに入る」
「なるほど、理には叶ってるな」
 ナガトが感心すると、他の全員も頷いた。
 シュウタロウの作戦に一同特に異議はないようだ。

「名付けて!『絶対に予選突破するぞ大作戦』だ!!」

「……もとい、ネーミングセンス以外は理に叶ってるな」

「???」
 作戦名に微妙な顔をする一同だが、シュウタロウは何故そんな反応をされたのか理解出来なかったようだ。

 そして時間も経過し、いよいよ試合開始時刻となった。

 島へと伸びる何本もの橋の上でフリッカー達が待機している。

『それでは、いよいよ赤壁杯予選大会第1ステージを始めます!!3.2.1.アクティブシュート!!』

 真島アナウンサーの合図で一斉にスタート。
 幾多のフリックスがスケールアップして着地し、そのまま勢い任せに進んでいく。
 フリッカー達は半透明になって、ホバーボードのようなものに乗って自動で自機や味方機の後を追えるようだ。

「いけっ!シールダーアリエス!!」
「続け!ナスティアラクネア!!」

 力一杯シュートしたユウスケのシールダーアリエスにアラクネアのアームががっしりと食い込む。スポンジのおかげで接続はバッチリだ。
 そして二機分のシュートの勢いでカッ飛ぶ。

『さぁ、ついにスタートしました!各機体綺麗な走り出し!まず先頭に飛び出したのはレッドウイングスの南雲ソウ君!カイザーフェニックスです!!翼の形状を微妙に変化させながら理想的な空力を利用して加速しています!!』

「飛べっ、カイザーフェニックス!!」

『しかし、それにピッタリと喰らい付くのはインビンシブルソウルの神宮タツヤ君!謎が謎を呼ぶ未知の機体、セイバーはこの大会に嵐を巻き起こすのでしょうか!?』

「いきなさい、セイバー」
 シュンッ!
 セイバーが加速してカイザーフェニックスの真後ろについた。テールトゥノーズだ。

「良い調子じゃないか、カイザーフェニックス。完全に自分のものにしたな、ソウ」
「……よくそんな事が言えたものだ」
「そう邪険にするなよ。昔からの幼馴染だろ?」
「ふん」

『トップツー以下は団子状態!無数の機体がひしめき合っています!!おおっと、その中でも面白い走りをしているのは小竜隊とデッドキャッスル!2機を連結させて2人分のシュート回数でスピードを稼いでいます!!』

「よし、上手くいった!けど、アリエスは見たところ防御型だが、サポートに回らなくて良いのか?」
 ギョウが素直な疑問を口にする。
「防御型でも機動力を稼ぐ方法はあるんだ。特にこの乱戦ならね!」
 そう言いながらユウスケはアリエスを機体密度の多い場所へシュートした。
「そ、そっちは危ないぞ!」
「耐えろアリエス!!」

 ガッ!ボイン!!
 丁度、敵機のシュートをブロックするような形でぶつかると、アリエスはスポンジの弾力を利用のしてバウンド加速した。
 その要領で敵機のシュートを利用して弾かれながら加速していく。

「フハハハハ!こんな走法があったとは、天晴れだな!!」
「普通なら敵機とぶつかったら吹っ飛ばされて終わるが、アリエスの弾力と安定性、そしてユウスケのフィールド把握能力の賜物だな」
「でも、グループが分散するまでの乱戦状態じゃないと効果が薄いから、あくまでスタートダッシュ用だけど」
「フゥン、やるじゃない坊や」

『おっと!ここで大事件発生です!!赤壁杯常連の強豪チーム!江東館の3機がたった1機のフリックスによって海へ弾き落とされました!!これでは復帰は難しい!早々にリタイアでしょうか!?』

「なに!?」
「江東館が!?」

『今情報が入ってきました!江東館を弾き飛ばしたのは、現在2位のインビンシブルソウルのホウセン君!愛機はブロッケンシェルロード!!』

「ケンタ達を弾き飛ばすなんて……!」

『さぁ、波乱含みのサバイバルレース!果たして勝ち残るのはどのチームなのでしょうか!?』

 

 つづく

 

 

CM

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