弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第12話「舞台はバーチャル!アクチュアルバトル!!」

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第12話「舞台はバーチャル!アクチュアルバトル!!」

 

 赤壁杯を1ヶ月後に控えたある日の放課後。
 小竜隊メンバーはいつものように空き教室に集まっていた。
 この日は練習の前にミーティングをするようで、皆がリュウジの前に集まっている。

「ついに赤壁杯予選の内容が公開された」
「おっ、いよいよやな!」
「予選はバーチャル空間で行われる『アクチュアルバトル』と言うシステムを使うらしい」
 聞き慣れない単語に一同顔を見合わせる。
「アクチュアルバトル?」
「なんや、聞いた事あるような無いような」
「確か、段田バンが子供の頃に夢で見たバトルシステムって話をなんかの番組で聞いたことあるなぁ」
「バーチャル空間って事は特殊な機器が必要になるんですよね。練習とかは出来るんですか?」
「そこは問題ない。全国のゲームセンターにバーチャルマシンが設置されていて、そこで練習出来るようになっている。予選大会はそのマシンでネット対戦するらしい」
「随分大掛かりですね」
「俺もこんなのは初めてだ。今回はあのフリックス開発の大手『遊尽コーポレーション』がスポンサーになったのもあって、例年とは比較にならないほど規模が大きくなってるらしい」
「ええなぁ!大きければ大きいほど燃えてくるで!」
「しかし、ただでさえチーム戦の経験も十分じゃないのに加えて、未経験のシステムで大会か……」
「アクティブバトルと通ずる部分も多いらしいから、今までの経験がリセットされるってほどじゃないが。この1ヶ月でどれだけ練習出来るかが鍵になりそうだな。次の休みは早速市川駅前のゲームセンターに行って練習だ」

「「「おーーーー!!」」」

 この場にいた子供達全員が声を上げるが、黄山先生が慌てて止めた。

「待て待て待て!全員でゲームセンターに押しかけたら迷惑じゃろうが!行くのはレギュラーメンバーだけじゃ。それと、大会のためでもワシやリュウジの付き添いなしで子供だけでゲームセンターに行くのは禁止じゃぞ!」

「「「ええーーーー!」」」

「返事は『はい!』じゃ!」

「「「は〜〜い……」」」

 子供達は渋々ながら返事した。

 ……。
 ………。

 そして、休日。
 小竜隊のメンバーは市川駅前のゲームセンターに来ていた。
 周辺では1番規模の大きいゲームセンターで、新旧ジャンル問わず様々な筐体が揃ってるおり、某芸人がレトロゲームに挑戦する有名なCX番組でも取り上げられた事のある場所だ。

「おぉ〜、千葉にもこんな立派なゲーセンがあったんやな!」
 ツバサが目を輝かせながら店内を見渡す。
「俺、ゲームセンターに来たの初めてだ」
「俺は結構前に父さんに連れてきてもらって以来だけど、結構リニューアルされてるんだなぁ。おっ、ガソダムの新作がある!」
「僕、あんまりこういう場所は落ち着かないや……」
「おおおおお!!あっちのクレーンには大人気アニメ『爪切りの刃』のプライズがあるやん!!」
 クレーンゲームの方へ歩みを進めるツバサの襟首をリュウジが掴んだ。
「こらこら、俺たちは遊びに来たんじゃないんだぞ」
「えぇーー!一回!一回だけ!堪忍や〜!」
「ダ・メ・だ!」
 駄々をこねるツバサをリュウジは引き摺っていった。

「……やはりレギュラーメンバーだけに人数絞って正解じゃったな」

 もしクラス全員の引率をしてたらと思うと、黄山先生は身震いした。

 アクチュアルバトルのできるVR設備は4階にあるらしく、メンバーはエレベーターで4階に向かった。

「おおおお!!!プラネットウォーズの秘密基地みたいや!!!」

 エレベーターの扉が開いた瞬間、ツバサが目の前に広がる光景にはしゃいで飛び出した。
 このエリアは様々な最新VRゲームを楽しめるようで、まるでSF映画を彷彿とさせるような内装をしていた。

「ええっと、受付はあそこじゃな」
 黄山先生が受付へ向かう。
「大人2人子供4人、フリータイムで」
「はい。では料金は……」
 料金は一プレイごとではなく、入場料を払ったら制限時間までゲーム遊び放題というシステムだ。
「あ、先生!俺の分は自分で……」
 ナガトが財布を取り出そうとするのを黄山先生は制した。
「ええから、子供がそんな事気にするな」
「でも……」
「大丈夫じゃ、経費で落とす」
(落とせるのかな……)
「さっすが成都小学校のドン!ありがとうございます〜」
 リュウジの軽口に黄山先生は冷たく答えた。
「雲野、お前は自分で払え」
「ええー!そりゃないですよ〜!」

「「「あははは!」」」

 受付も終わり、ゲンジ達は早速VRマシンの筐体に座った。
 筐体は卵型で人が中に入って鍵を閉めるタイプだ。恐らく起動中はVR世界に没頭して無防備になるので犯罪等を防止するためだろう。

「この筐体に機体をセットして、手足にセンサーを取り付けて、メット型ダイブギアを被れば準備OKだ」
 リュウジに言われた通りに機器を取り付けると、一瞬視界がブラックアウトし意識が殺風景なデジタル空間へと飛ばされた。

「おぉ、ここがバーチャル空間かいな!」
「すご……!本当に別世界に飛ばされたみたいだ!」
「全然違和感なく自由に動けるんだね」
「よく出来てるなぁ」

 それぞれ思い思いに身体を動かしたり空間の中を歩き回ったりする。

「でも、ゲームって言うよりもただ部屋の中に入っただけって感じだよな」
「せやな、これからどうやってバトルするんや?」
「まずは空間に手を翳してみてくれ。するとメニューが現れるから、そこの機体アイコンをタッチすれば自機が手元に現れる」
 言われた通りにすると、筐体にセットした自機が現れた。
「おぉ、これがバーチャル空間のワイバーン!質感はリアルそのままや」
「変形とかも出来るみたいだな」
 バーチャルの自機を皆興味深げにグリグリと弄る。
「でも、これでバトルするんならリアルと大して変わらないんじゃ」
「バーチャルってのは珍しいけどな」
「それに、フィールドはどこにあるんや?こんな殺風景な空間じゃ何も出来んやろ」
「それはバーチャルなんだから、下からニュッと出てくるんじゃないか?」
「あそっか!さすがバーチャルや!!ほなはよ出してや!こいつでバトルしてみたいわ!」
 皆が口々に好き勝手言うのをリュウジが諌めた。
「一回静かにして俺の話を聞け。まずメニューを開いて『スケールアップ』をタッチだ」
 言われた通りにスケールアップをタッチすると、目の前に魔法陣のようなものが展開し、更に自機がその魔法陣の前まで浮かび上がった。
「うわ、なんか出たし浮いた!!」
「その魔法陣に向かって自機をシュートするんだ」
「よ、よし……!」

 リュウジに言われるまま魔法陣に向けて自機をシュートする。
 自機が魔法陣を通過した瞬間、10倍の大きさにサイズアップして着地した。

「うわ、なんや!?」
「おっきくなっちゃった」
「マギ○かよ」
「さすがバーチャル、拡大縮小は自由自在って事か」

 ほば人間と変わらないくらいの大きさになった自機を物珍しそうに触ろうとするが、スカッとすり抜けた。

「あれ?」
「スケールアップした機体は原則触れないんだ」
「え、じゃあどうやって動かすんだ?」
「ちょっと待ってな」

 数秒経過すると、リュウジの目の前に実物代のユニコーンのホログラムが浮かび上がった。

「よし」
 リュウジはそのホログラムを掴んで向きを変える。
 すると、サイズアップしたフリックスの方もそれに連動して回転し、ライジングドラグナーの方へ向いた。
「ゲンジ、ちょっとドラグナー狙うけどいいか?」
「え?あぁ、別に良いよ」
 一応ゲンジに了解を得た後にリュウジがホログラムのユニコーンをシュートする。
 すると、サイズアップしたユニコーンも連動し、ドラグナーへ向かって突進。

 バキィ!!
 ドラグナーはそこそこの距離を飛ばされ、そしてHPの数値が表示されて30→29に減った。

「……と、まぁこんな感じだ。各機体ごとに重量に応じたウェイトタイムが設けられてて、それが経過すると目の前に自機のホログラムが現れるから、そいつをシュートすればスケールアップした機体も連動するってわけだ」
「クールタイム式のリアルタイムバトルって事か」
「ネトゲでよくある奴だな」
「HPの最大値も違うんだ」
「しかも場外もマインヒットもしてないのにダメージ受けたのはどういうこっちゃ?」

「アクチュアルバトルの最大HPは30だ。それに伴って場外やマインヒットのダメージ量も変わってくる。そして何よりも大きな違いは、新たに『ビートヒット』と言うルールがあるんだ」
「ビートヒット?」
「敵機からの攻撃で飛ばされると、その距離に応じてダメージを受けるんだ。フリップアウトやマインヒットと比べれば小さいが、飛ばされる距離が長くなればなるほどダメージは大きくなるし、他のダメージ要素と加算される」
「つまり、力の差が大きいと一撃で撃沈さるる事もあると」
「そう言う事だ。まぁ、あとはプレイしてみて感覚を掴めば良い。フリーモードにしておいたから各々自由にバトルロイヤルと行こう」

 と言うわけで特にバトルというわけでもなく、好き勝手にシュートしてみたりしてアクチュアルモードがどういうものなのか試す事にした。

「いけ!ライジングドラグナー!!……10倍にはなってるけど、機体の動きとかは普通の感覚に近いんだな」
「サイズが増えても慣性が変わるわけじゃないんだね」

「バリケードは場内にも構えられるのか。しかもそのままステップも出来る」
「ただし、バリケードは機体に近づけば近づくほど強度下がるから注意しろよ」

「うわっ!シュート準備中に攻撃喰らうとめっちゃ飛ばされるやん……!」
「アクティブフェイズになったら、なるべく早くシュートしないといけないんだな」

「バリケードを自機の周りにグルグル回すとウェイトタイムが早く経過するけど、無防備になるな」
「バリケードで防御に専念するか、ステップで回避するか、ウェイトタイムを早めるか……ウェイトフェイズの立ち回りもよく考えないとな」

 ……。
 ………。
 1時間ほど練習し、大体アクチュアルの感覚に慣れたのか小竜隊メンバー達は自由自在に機体を動かして攻防している。

「よし、だいぶ良い感じになってきたな!」
「アクチュアルバトル、結構面白いじゃん!」
「アクティブバトルでのテクニックはそのまま使えるけど、それよりももっといろんな要素があるからな。戦略が広がる」
「せやな!ウチはもっとガンガン攻撃したいからウェイトタイムを短くしてみよう」
「バリケードの自由度も上がってるから、防御戦術にも幅があるね」
「じゃあ、次は実戦トレーニングと行くか。まずは1vs1のバトルからだ」
「おっしゃ!ほなウチから行くで!!」
 リュウジが言うと、ツバサが真っ先に名乗りを上げた。
「ツバサか。そういえば直接戦った事なかったな。よし、俺が相手だ」
 リュウジは一歩前に出てツバサと対峙した。

 二人は一旦スケールアップを解除して手元に機体を戻した。

「ちゃんとした試合形式で最初から行くぞ」

 リュウジはメニューでフレンドバトルモードを選択し、ツバサを対戦相手に選んだ。

「マインセット、と」
「うちはセット無しや!フリップアウト狙うで!」

 アクチュアルバトルは予めマインを一つだけフィールドにセットするか否かを選べる。
 試合中でもアクティブフェイズ時にマインを最大二つまで追加する事はできるが、マインの追加や回収、再セットをするとウェイトフェイズになる

 そして、二人はスケールアップ用の魔法陣を出現させて機体を構えた。

「「3.2.1.アクティブシュート!!」

 お馴染みの掛け声とともに機体をシュートしてスケールアップ。

「さぁ、先攻は貰うで!」
 ツバサはウェイトタイムを早めようとするが……。
「甘いぞ、ツバサ!」
 圧倒的に早くユニコーンがアクティブフェイズになる。
「いぃ、なんでや!?」
「あのな、ユニコーンの方が軽いんだから同じようにウェイトタイムを早めようとしたら俺の方が早いに決まってるだろ」
 自分の方が軽いと分かりきってるなら、無理に防御や回避に専念せずに、早く行動する事を考えた方が良い。
「くっ!でもそんな機動型の攻撃なんかワイバーンのグリップ力で耐えてみせるで!!」
「どうかな?いけっ、ユニコーーーン!!」

 バキィ!!
 ユニコーンの攻撃でワイバーンは吹っ飛びマインヒットを受けるが、サイドのグリップパーツのおかげで踏ん張った。

「どや!!」
「まだまだ!」

 シュンッ!
 既にシュートが終わったはずなのに、ユニコーンは素早く進み追撃を仕掛ける。
「な、なんで動けるんや!?」
「そうか、ステップだ!」
「ユニコーンの機動力なら、バリケードで突いただけでもスピードが出る……!」
「せやけどそんなの攻撃にはならんで!!」
「どうかな!?」

 ベシッ!
 確かにその当たりは大した衝撃ではなかった。しかし、飛ばされた直後でバランスを崩していたワイバーンにとっては大きかったのか、サイドのグリップを支点にして転倒した。

「しもたっ!」
「これで動けないぜ」

 自シュート以外で転倒したらスタンとなり、一定時間ウェイトタイムが止まりバリケードも使えなくなる。

「これで決めるぞ。一点集中ソニックホーン!!」

 リュウジは指を伸ばしてピタリとつけて、掌を上に向けて貫手のような形で指の先をシュートポイントへ接触させ、伸ばした指で突くようにシュートした。
 バキィィ!!!
 必殺の一撃がヒット!転倒して踏ん張りが効かず、バリケードも使えないワイバーンはそのままスコーーンと場外し、そのままフリップアウト+ビートヒットのダメージで撃沈してしまった。

「あーー負けたああああ!!!」
「凄い、これがアクチュアルシステムをフルに利用した機動型の戦い方……!」
「シュートした直後にステップで追撃、アクティブバトルじゃ不可能な戦術だ」
「フリーでやってる時はアクティブバトルと大差ないと思ったけど、バトルってなるとやっぱり違うんだな」
「ってかリュウジ強すぎやないか!?」
「ははは、悪い悪い。実は練習が休みの日の放課後にこっそりやり込んでたんだ」
「ずっるー!うちらは平日来られへんのに!」
「まぁまぁ、それも皆が強くなれるよう指導するためにってのが目的なんだから勘弁してくれ」
「文句言うより練習だ。ゲンジ、次は俺達でやろうぜ」
「おお!ナガトとはあんまりバトル出来てないし、楽しみだ!」

 今度はゲンジとナガトがスケールアップの構えをとった。

「「3.2.1.アクティブシュート!!」」

 バシュウウウウウ!!
 魔法陣を潜って大きくなったドラグナーとオーガが空中で激突、お互いに弾かれて2.3回バウンドして着地した。

「やるな、ゲンジ」
「ナガトも、さすがだ!」

 先にアクティブフェイズになったのはオーガだ。

「いくぞ、マイティオーガ!」
 ナガトはじっくりと狙いを定めてドラグナーの急所を見極めてシュートした。
「躱せ!!」

 シュン!
 しかし、ゲンジは当たる寸前にそれを回避、掠ったもののダメージにはならなかった。

「なに!?」
「へへっ、どうせ先手は取られるって思ったから、最初から回避に専念したんだ!」

「ナガト、じっくり狙いすぎだ!これはターン制じゃないんだぞ!」
 アクティブバトルだと無類のテクニックを誇るナガトだが、それはじっくりと狙えるからこそだったのだ。アクチュアルによって思わぬ欠点が露見してしまった。

「今度は俺の番だ!!」
 バシュッ!!
 ゲンジが素早くドラグナーをシュートしてオーガを弾き飛ばしてビートヒットダメージを与えた。

「なるほど、だったらこれだ!」
「来い!」
 再びナガトの狙いを定めたシュート!……と見せかけてその指はシュートポイントに触れただけで撃たなかった。
「なに!?」
 シュートが来ると思ってステップで動いてしまったゲンジは拍子抜けして動きが止まる。
「今だ!!」
 その隙をついて今度はオーガの攻撃がヒットしドラグナーにダメージを与えた。
「くっそぉ、フェイントかよ……!」
「じっくり狙ったせいで躱されるなら、いっそ思いっきりじっくり狙ってやろうと思ってな」
 『押してダメならもっと押す』と言うやつだろう。
「自分の欠点を無理に直さず、むしろ伸ばす事で克服するとは……!」
「しかもそれを一瞬で判断するなんて」
「さっすが神童ナガトやで」

 しかし勝負は互角。まだまだ結果は分からない。
 二人は何度も何度もぶつかり合いながらジワジワとダメージを与えていく。
 そんな激しい立ち合いをしばらく続け、丁度お互いにウェイトタイムのタイングが被って、小休止のようになった。

「「はぁ、はぁ……!」」

 ほんの数十秒とは言え、全力シュートやバリケードの応酬をリアルタイムで続ければ息も上がる。
 二人は一旦立ち止まって力を抜いた。

「凄い、二人とも……!」
「練習とは思えんガチバトルやん」

 激しい戦いに周りが息を呑む中、ゲンジは深呼吸して乱れた息を整えて笑顔で口を開いた。

「ナガト……お前、本当に強かったんだな!」

「は?」
「え?」
「今更何を当たり前の事言うとるんや……」
 ゲンジの言葉に一同は呆れた。
「いや、そんなの分かってるけどさ!俺だって、昔は何度挑んでもナガトに勝てた事ないんだ……だけどさ、なんかあの時は実感が湧かなかったのが、今は分かるって言うか……」
 上手く言葉に出来ないゲンジにナガトがフッと笑いかける。
「ゲンジ、それはきっとお前が強くなったからだ!」
「俺が、強くなったから……」
「俺はお前が強くなれるって信じて、待ってたんだぜ」
「ナガト……」

 そして、二機がほぼ同時にアクティブフェイズに突入する。

「勝負だ、ナガト!最後は同時シュートで決着付けようぜ!!」
「面白い、乗った!!」

 二人はそれぞれ最もパワーの出せる状態へシュート準備をした。

「いくぞ!!」
「ああ!!」

 そして、阿吽の呼吸で同時に撃った。

「ドラゴンヘッドブラスター!!」
「鬼牙二連斬!!」

 それぞれの最高のシュート、最強の必殺技を繰り出しながら真正面から突進していく。

「な、なんちゅーバトルや!ほんまに練習かこれ!?」
「ナガトくん、すごく嬉しそう」

 ずっと昔からの幼なじみで、ほぼ同時にフリックスを始めた二人。
 本当ならライバルとしても切磋琢磨していくはずが、先に才能を開花させたのはナガトで、ゲンジはその事を悔しがるでもなく素直に称賛し『自分が凡人である』と言う現実をあっさりと受け入れた。
 でもナガトは気付いていた、ゲンジの潜在能力を。
 そして求めていた、それが開花して共に並び立つ事を。
 それがライバルとしてなのか、仲間としてなのかは瑣末な事。
 ただ、今この瞬間、全力をぶつけ合えると言う悦びに全てを委ねた。

「うおおおおおおお!!!!」
「はあああああああ!!!!」

 雄叫びを上げ、轟音と火花を撒き散らしながら、二機のフリックスが激突する!

 その直前。
 ビー!と言うけたたましいサイレンと同時にアナウンスが入った。

『はい、ではお時間になります。ご利用ありがとうございました〜』

 ドラグナーとオーガの姿がフッと消えて、意識がバーチャルからリアルへと引き戻された。

「へ?」

 ヘッドギアを外し、目の前に広がる筐体の機器を眺めながらゲンジは間の抜けた声を上げた。

「なんだよ、もう!良いとこだったのに〜!」
 ブツクサ文句言いながら機器を外し、筐体から出る。
 丁度ナガト以外の他のメンバー達も筐体から出てきた所だった。

「いやぁ、最後のバトルはなかなか熱かったじゃないか!」
「そうだね!見ててドキドキしたよ!」
「でも、あのタイミングでタイムアップは空気読めてへんわあのスタッフ」
「本当だぜ。フリータイムって言ってもあっという間だったよなぁ」
「しまったなぁ、黄山先生に延長お願いしとくんだった」

 少し遅れてナガトが筐体から出てくる。

「おっ、ナガト」
「悪い、器具外すのにちょっと手間取った。熱くなりすぎてコード絡んでたみたいでさ」
「あはは、何やってんだよ。でもほんと楽しかったよなぁ。次やる時は決着付けようぜ!」
「もちろんだ。大会じゃ仲間でも、練習じゃライバルなんだからな!」
「おう!」

「な、なんやろう?間違ってへんのに妙に違和感のある言い回しや……」
「あははは……うぉっと!」
 突如、ナガトはフラついて筐体に手をついた。

「どうした?」
「い、いや、ちょっと目眩がしただけだ。バーチャルに酔ったかな」
「大丈夫か、ナガト?無理するなよ」
 リュウジがナガトへ手を差し伸べる。
「あぁ、こんなの大した事……っ!」

 その時だった。
 心臓が大きく波打つ。
 眼前に映るリュウジの顔、差し出された手、そして……。

 “キミ、大丈夫か!意識は!?自分の名前言えるか!?”

 脳裏に蘇る緊迫した言葉、そして耳障りなサイレン、痛む身体にモヤのかかっていく意識……。

「うわぁっ!!」

 ナガトは突然大声を上げて、リュウジの手を払った。
「ナガト?」
「あ、いえ、なんでも……もう、大丈夫です」
「なんや?もしかしてVRの影響で幻覚でも見たんか?」
「いや、ほんとにただ立ちくらみしただけさ」
「まぁ、それならいいけど。……それより黄山先生は?」

 フリッカーではない黄山先生はわざわざアクチュアルシステムの中には入らず外で待っているはずだが……。

「ぐおーーー!!がごーーーー!!!」

 その時、奥にある筐体から地響きのようなイビキが聞こえていた。
 そして、スタッフが慌ててその筐体を開けると、中にはVR機器を付けたまま大イビキをかいている黄山先生が転がり出てきた。

「お客様こんな所で眠られては困ります!もうお時間ですよ、起きてください!!」

 スタッフの必死の呼びかけも虚しく黄山先生の眠りは深い。

「……」

 小竜隊メンバーは汗マークを浮かべながら黄山先生の遊んでいたゲームのタイトルを見ると、そこには『VRアイドル耳かき』と書いてあった。

「黄山先生……」

 その呟きには若干の軽蔑が込められていたように聞こえた。

 黄山先生も起きたので小竜隊は帰り支度をして一階へ降りた。

「黄山先生、小学生引率してる身でなんてゲームで遊んでるんですか」
 リュウジがジト目で黄山先生を見る。
「べ、別にいかがわしいもんでもないじゃろう!教師にも癒しが必要なんじゃ!」
「そうですか」
 まぁ教師と言えど人間だ。追求しすぎるのも可哀想だろうとリュウジは話を終わらせた。

「お、そうや!せっかくやから皆でプリクラでも撮っていかんか?」
 ツバサが店の奥にあるプリント撮影筐体専用コーナーを見ながら言った。
「プリクラ?」
「初めて小竜隊メンバーでゲーセンに来てアクチュアルバトルをした記念にや!」
「へぇ……」
 ツバサを提案を聞いて、ゲンジは目をパチクリさせながらツバサを見た。
「なんや?」
「あ、いや、ツバサも女子なんだなって」
「どう言う意味や……?」
「褒めたんだよ。俺、そう言う発想なかったから」
「そうか。褒めたんならええわ。んで、どうする?」
「良いんじゃないか?もう用事は済んだし、最後にちょっと遊ぶくらい」
「あぁ、俺も賛成だ」
「僕も」
「ええ考えじゃな!」

 満場一致だったので、6人はプリクラを撮りそれぞれの帰路へついた。

 ナガトは、帰宅後夕食を取ると自室に戻り宿題に励んでいた。
 昼間遊んだ分、夜はしっかり勉強する。優等生のナガトらしい休日だ。
 広げたノートの横に今日撮ったプリクラを置いて、時折りそれを眺めてほっこりしながら筆を進めていく。

「なぁに、これプリクラ?あんたも友達とゲームセンターに行く事あるのねぇ」
 突如、右後ろからニュッと母の顔が覗き込まれ、ナガトはビクッとした。
「か、母さん!勝手に入ってきてビックリするじゃないか……!」
「ちゃんとノックもしたし声も掛けたわよ。はい、お勉強頑張ってるナーくんにおやつよ。少し休憩したら?」
 そう言いながら、お菓子とジュースの乗ったお盆を机の上に置いた。
「ありがと……」
 ナガトはさっきの事を少し引きずりながらもお礼を言いつつコップに口をつけた。
「それにしても今日って何とか言うチームの活動だったんじゃないの?」
「その活動としてゲームセンターに行ったんだよ」
「ふーん、フリックスって今流行りのeスポーツか何かなのね?」
「まぁ、そんなとこ」
 間違いではないので適当に返事をした。母親相手にいちいち正すのも面倒だ。
「あら?」
 勉強の邪魔だから早く出て行って欲しかったが、その密かな願いは通じず、母はプリクラに写っていた一人の人物の顔を見つけて声を上げた。
「この子……雲野さんのとこの息子さんじゃない。なに、ナーくん?仲良くなっちゃったの?」

 母の何気ない一言は、ナガトの脳を混乱させるには十分だった。

「え、え?なにいって……?母さん、リュウジを知ってるの……?」
「知ってるも何も。ほら、あんたちょっと前に事故に遭ったでしょ。その時のトラックが、雲野さんの引っ越しトラックだったのよ」
「……え」

 自分を跳ねたトラックに、リュウジが……?
 でも、あの時リュウジは初対面のような態度だったし……。

「まぁ、見通しの悪い道でお互い気をつけてたのに運悪くって事だったけど、向こうの事故対応がとても紳士的でねぇ。命に別状もなかったし、母さんも悪印象はないんだけど……って、ナーくん?聞いてる?」

 母の言葉はすでに耳に入らず、ナガトの脳は本人の制御から外れて様々な理屈と感情が駆け巡っていた。

(リュウジがトラックに、なぜ?なんで知らないフリをしたんだ?俺に近づいた本当の理由は……?)

 どれだけ考えてもゴールに辿り着けない思考は、一つの安定を求めて明確な事実に拠り所を作ってしまった。

「リュウジが、俺を轢いた……」

 

    つづく

 

 

CM

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