爆・爆ストーリー ZERO」カテゴリーアーカイブ

爆・爆ストーリー ZERO 歴史まとめ

爆ZERO は、本編では語られてない裏設定や歴史が結構あったりします。

特に物語のキモであった『改良型ヒューマノイド』については、物語開始前にさまざまな歴史があったと想定して物語を書いていました。

今回は、その歴史について簡単にまとめてみました。

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爆・爆ストーリー ZERO TRUE END アフターストーリー

TRUE END アフターストーリー「ヒトスジノキボウ」

・・・俺の進むべき道は、もう決まっている。俺は、強さへの道を選ぶ!
そのために利用できるものは全て利用し、出来ないものは切り捨てる。
それは昔も、今も、そしてこれからも変わらない。俺の中にある、唯一の真実だ。

 強さだけを求められ。
 強さだけを求め。
 そして、たった一人で生き続けてきた。
 生き続ける事しかできなかった。
 そんなお話。
 終らせたかった。
 終らせるわけにはいかなかった。
 永遠に続くと思っていた。
 永遠は、変わらないと思っていた。
 だから、選んだ。
 永遠を、選んだ。
 望もうが望むまいが・・・そんな事は瑣末な事だったから。
 ビーバトルと言う永久のレクイエムを奏でながら・・・。
「・・・・。」
 昔の事を思い出していた。
 いや、思い出していたというよりも、これは思い浮かべていたといった方が正しいかもしれない。
 まるで白昼夢のように、過去の世界へトリップしてしまっていた。
「どうしたんだい、セシル?」
 と、歩きながら惚けていた私の目の前に、男の人の顔が映る。
「・・・・・。」
 一瞬、何が起きたか分からなかった。
 即座に思考をめぐらせる。
 そうだ・・・。私は、この人と・・・恋人と散歩をしていたのだ。
 大切な恋人を心配させてはいけない。
「あ、ごめんなさい。少しぼうっとしてて。」
 慌てて顔を挙げ、取り繕う。
「そう?少し、疲れてるんじゃないかな。公園で少し休もうか。」
「ええ。」
 優しい彼の聲。
 私は、彼にエスコートされて公園のベンチに腰を下ろした。
「ふぅ・・・・。」
 本当は、特に疲れてはいないのだが座ったとたんため息が出てきた。
 それに気づいた彼は、優しく微笑んで。
「それじゃ、ジュースでも買ってくるよ。」
 そういって、自販機へと歩いていった。
「・・・・。」
 彼は、本当に優しい。
 そんな彼の後姿を眺めながら、私は再び惚けた。
 クロウ達と別れてから、もう数年。
 あの後行くあての無かった私は、家へ連れ戻されてしまった。
 そして、政略的に婚約させられた今の彼と、結婚を前提にお付き合いしている。
 彼は、真面目で優しい人だった。
 だから、彼は私に良くしてくれている。
 だから、愛していない癖に、愛そうとしてくれている。
 私は、それが耐えられなかった。
 偽りの愛情なんか、受けたくなかった。
 『愛そう』とか『愛したい』とか・・・その時点でそこに愛なんか存在しないのだから。
「はぁ・・・。」
 また、ため息。
 やっぱり、私は後悔してる。
 あの時、クロウに対して私に何ができたわけじゃない。
 でも、もっと他に選択肢があったはず。別の選択肢が・・・。
 多世界解釈を信じているわけではないが、それでも・・・別の可能性を信じたくなってしまう。
 ザッ!
 物音が聞こえた。
「っ!」
 私は息を呑んだ。
 背筋が凍る。
 頭の中が真っ白になってしまう。
 私の目の前に、だらしなく涎をたらした野犬がうなりながらやってきたのだ。
 あぁ、そうだ・・・この時期、餌不足のせいで山から町に野犬が下りてくることがあるのだ。
 恐怖しながら、私はのんきにそんな事を考えていた。
「あ・・ああ・・・!」
 息を押し殺す悲鳴が聞こえた。
 それは、私の声じゃない。私は、声も出せないほど恐怖しているのだから。
 カランッ・・・!
 それは、金属を落とす音・・・そして、流れ出す液体。
 彼だ。ジュースを買いに行っていた彼が戻ってきたのだ。
 そして、さっきの音は彼がジュースを落とした音。
「・・・・・。」
 恐怖でしゃべれない私は、視線で彼に助けを求めた。
 しかし・・・私以上に彼は恐怖に慄いている。
 ジュースを落としたのは、身軽になって私を助けるためじゃない。ただ、怖くて・・・手足の感覚がなくなっただけなのだろう。
「あ、あぅ・・あ、あぁ・・・。」
 彼は、見っとも無く尻餅をつき、そのまま後ずさるように逃げていってしまった。
 あぁ、なんてこと・・・。
 彼は、私のことを愛してるわけじゃないから。身を挺してまで私を守ろうなんて思考はとっさに浮かばないのだろう。
 こんなに簡単にボロが出てしまうなんて。
 でも、私は彼を責めることなんてしない。
 これが、当たり前なんだと思う。
 私は、静かに目を閉じた。
 この狂犬相手に対抗できるとは思えないし、何より今は動けない。
 だから、もう諦めて覚悟するしかない。
 なにより、もう・・・このまま生きてても仕方ないって、思ってたところだったから。
 犬が吼えた。そしてこちらに飛び掛ってくるのを肌で感じた。
 もうすぐ、激痛が走る。
 それが分かっているのに、なんだか、心は穏やかだった。
 ・・・・。
 ・・。
 激痛は、いつまで立ってもこなかった。
 不思議に思って目を開けると、その刹那。
 シュンッ!
 目の前を一筋の光が走ったと思ったら、それが狂犬に当たる。
 すると、狂犬はキャインと可愛い聲を上げて去っていった。
「はぁ・・・!」
 一気に緊張が解けて、私はその場でへたり込んだ。
 体が震えている。やっぱり怖かったんだ。
 生きてても仕方ないなんて・・・あまりの恐怖で・・・恐怖への感覚さえも麻痺してしまったのだろう。
 少し落ち着いて、周りを見てみた。
 何か、落ちている。さっきまで狂犬がいた場所に、小さく光るものが・・・。
「ビー玉・・・?」
 そう、それは透き通った綺麗な玉だった。
 では、それは一体どこから・・・?
 私は、さっきの軌跡を視線で辿り、その発生源を探った。
「あ・・・!」
 見つけた。
 でも、聲を上げたのは発生源を見つけたことにじゃない。
 その発生源には人が立っていた。
 その、人は・・・。
「く、クロウ・・・。」
 そう、確かに・・・。
 服はぼろぼろで、髪はボサボサで・・・まるで、漂流者のような格好だったけれど・・・。
 その面影には覚えがある。見間違うはずなんて、なかった。
「・・・は・・・あ・・・。」
 息を吐き、クロウはそのまま意識を失い、倒れてしまった。
「クロウ!!」
 自分でも信じられないくらいの大きな声で叫び、私はクロウの元へ駆け寄った。
 うつぶせに倒れた体を抱きかかえ、その顔を見る。
「クロウ・・・!」
 その顔は、紛れも無くクロウだった。
 思わず・・・涙がこぼれた。
 とめどなく、雫が溢れ、クロウの顔に落ちる。
「う・・。」
 涙が傷にしみるのか、そのたびにクロウは呻く。
「あ、そうだ・・・救急車、呼ばなきゃ。」
 ハッとして、私は急いで119番した。
 数分後にやってきた救急車に運ばれ、私とクロウは近くの病院へ入った。
 クロウはそのまま手術室へ。私は、待合室へ。
 しばらくして、医者と思われる白衣の男の人に呼ばれた。
 真っ白な病室。
 そこのベッドでクロウはまるで死んだかのように眠っていた。
「先生、クロウは・・・どうなんですか?」
 たまらなくなって、白衣の男に病状を聞いてみた。
 すると、白衣の男は重いため息を付いたあと、ゆっくり口を開いた。
「過度の疲労により、かなり衰弱しています・・・。処置が早かったおかげで、なんとか一命は取り留めたものの・・。」
 そこで、一旦口を閉じた。
 それだけでは何も分からない。重要な事は何も分からない。
 だから私は、その口が開かれるのをひたすらに待った。
「・・・彼の5感は、ほとんど失われている・・・。もう、彼は立つことも、話すこともできない・・・植物状態に・・・。」
「っ!」
 息を呑んだ。
「そ・・・んな・・。」
「この状態のまま、数年間生命を維持することは可能です。しかし、残念ながら回復は絶望的です。」
 何も、言葉が返せなかった。
 まるで、今まで築き上げてきた積み木が、無情に崩されてしまったみたいで・・・。
 やりきれない気持ちは、頭の中で凍りつき・・・私の体を硬直させる。
「このまま、生命を維持するか・・・それとも、楽に終らせるか・・・。」
 どちらか選べというのだろう。
 確かに、どちらを選んでもさほど差は無いだろう。
 どちらにしても死んでいるも同然なのだから。
 しかし・・・。
「私に・・・選ぶ権利はありません。・・・でも、クロウならきっと、どんな時でも生きることを選び続けると想います。だから・・・。」
 それは、今までもそうだったから。
 意味の無い人生だと思い知っても。
 自分が価値の無い人間だと思い込んでも。
 それでもただ、盲目的なままに生きる事だけを選び続けてきた。
 それは、きっとすごく強いと想う。
 だって、そんな人生の中で生きたいって思える人間なんかいない。
 クロウは死が怖いって言ってたけど・・・死ぬことなんかより生きる方がずっと怖かったはず。
 だから、クロウはただ生き続けているだけで強かったんだ。
「分かりました。」
 医者はそういって、深々と頭を下げた後、部屋を出て行った。
「クロウ・・・。」
 誰もいない部屋。
 私とクロウしかいないこの部屋で、私は改めてクロウの顔を見た。
 クロウは眠っている。静かに・・・寝息も立てずに。
 もう二度と、その目が開くことは無いのか。
「っ・・・ああ・・・!」
 嗚咽が漏れた。
 今まで押さえ込んでいた涙が、ドッとあふれ出す。
「ああ・・・あああ・・・・!!」
 止まらない。止まらない。
 私は、やはり後悔していた。
 あの後、クロウはずっと戦い続けてきた。
 戦い続けて、戦い続けて・・・そうすることでしか生きる意義を見出せず・・・。
 そうしてきたクロウの体はボロボロになってしまったのだ。
「ごめん・・・なさい・・・ごめん・・なさい・・・!!」
 何がごめんなのか、自分でもよく分からない。
 やはり、あの時なんとかすればよかったんじゃないかと。
 くだらない後悔で己を慰めようとしているのか。
 よく、分からなかった。
 ・・・・それから数日後。
 カチャ・・・。
 私は、もう何度も開けた、見慣れた病室の扉を開いた。
 すると、中に広がっている世界は、本当に見慣れた世界だった。
「クロウ、お見舞いに来たよ。」
 返って来ることの無い返事をわずかに期待しつつ、私は中に入るが、当然のようにクロウの反応は皆無だった。
 私はベッドの隣に座り、静かにクロウに語りかけた。
「ねぇ、クロウ・・・覚えてる?レーザーホーネットを奪われた時のこと・・・。」
 こうして、私は毎日のように病院に通い、毎日のようにクロウに語りかけている。
 昔の事を・・・昔、一緒に旅をしていた時の事を・・・。
 それに意味があるのかどうかは分からない。
 でも、それしか私にできることはなかったから・・・。
 たとえ返事がなくても、無駄な行為でも・・・私は毎日のようにそれを続けた。
 
 彼とは、別れた。
 毎日のように見舞いに言っていては、付き合う暇もなくなってしまうからだ。
 私は、この身をクロウに捧げるかのように、全てを捨てる覚悟をした。
 ・・・・まぁ、元々、捨てるべきものなんて、私の所有物なんて、存在しなかったのかもしれないけど。
「・・・あ、そうだ。今日はいいものを持ってきたんだよ。」
 ある日、私は取って置きのプレゼントを持ってクロウの元へやってきた。
 相変わらず何の反応も示さないクロウにショックを受けながらも、私は持ってきた包みをクロウの前に出す。
「ふふ、何だと思う?」
 反応は、無い。
 でも、それを悲しんで入られない。
「じゃ~ん!」
 無理に明るい声を出し、包みを開いた。
 そこから出てきたのは、クロウの愛機・・・デスサイズだ。
 そう、デスサイズもクロウとの過酷な戦いによりぼろぼろだった。
 だから、私はずっと修理していた。
 慣れない道具と慣れない手つきで、一生懸命直した。クロウの心が開くきっかけになるかもしれないから・・。
「ちょっと格好悪いけど、私なりに一生懸命修理したんだ。ボロボロのままじゃ、かわいそうだから。」
 しかし、意に反してクロウはなんの反応も示さない。
 意に反して?
 あぁ、それは日本語として変だろう。
 予想の範疇だった。
 覚悟はしていた。
 むしろ、それは当たり前のことだった。
 これくらいのことで、クロウが元通りになるわけが無い。
 分かっていたのに・・・。
 分かっていたのに・・・・。
 分かっていたのに・・・・・!
「あ・・・れ・・・?」
 目の前が、揺らいだ。
 涙が瞳にたまり、視界を揺らしたのだ。
「ど、どうしちゃったんだろうね、私・・・。」
 慌てて涙を拭うが、拭っても拭っても雫は溢れ出る。
 その雫は、クロウの頬を濡らす。
「あ、ご、ごめ、ごめ、ん、ね・・・。」
 言葉が出ない。
 喉が震えてうまく聲にならない。
「すぐに、拭くから・・・。」
 ハンカチを取り出そうとした、その時・・・!
「ん・・・。」
「え・・!?」
 動いた。
 頬が、むず痒そうに動いた。
 あの、再会した時のように・・・雫が落ちて、痒かったのだろう。
「く、クロウ・・・!」
 しかし、それ以上は何の反応もなかった。
 でも、それでも・・・。
 それは、私にとっての希望だった。
 クロウは、きっと回復する。そう、確信できた。
 絶望の中に見出すことができた、一筋の希望・・・。
 私は、それを大切にしたい・・・。
「ずっと・・・そばにいるから・・・。」
           END


 

 

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爆・爆ストーリー ZERO BEST END アフターストーリー

BEST END アフターストーリー「チイサナシアワセ」

 ・・・なくなればいいと願って、でもなくすわけにはいかないと求めて・・・俺は・・・!
 強さだけを求められ。
 強さだけを求め。
 そして、たった一人で生き続けてきた。
 生き続ける事しかできなかった。
 そんなお話。
 終らせたかった。
 終らせるわけにはいかなかった。
 永遠に続くと思っていた。
 永遠は、変わらないと思っていた。
 でも、それは永遠ではなかった。
 それを、止めてくれたのは・・・。
 だって、好きなんだもん!クロウの事が、ずっと前から・・・!だから、クロウは生きてていいんだよ!
 他の誰かが、なんと言おうと、クロウは意味のある人間なの!私は、クロウに生きててほしいの!

 ・・・・・あれから、数年が経過した。
「~♪~♪」
 小さなアパートの小さな部屋。
 キッチンで煮立つ鍋を前に、私は鼻歌交じりに料理している。
 鍋の中にあるのは、ジャガイモに玉ねぎに味醂醤油・・などなど。
 今日は、一番の得意料理肉じゃがを作ることにした。
「クロウ、今日は早く帰れるって言ってたし。腕によりをかけなくちゃ♪」
 ヒスイのあの一件以来、私とクロウは一緒に暮らしている。
 今更、あの家に戻れないし、戻る気も無い。
 だから、安いアパートの一室を借りて同棲することにした。
 
 最初は、持ち合わせていたお金でやりくりしていたが、勘当同然の私に収入源はなく。
 蓄えは、すぐに底を尽きてしまった。
 クロウはすぐにバイトを始めた。
 朝から晩までバイトに明け暮れ、私を養ってくれている。
 ・・・幸せだった。
 愛する人が自分のために働いてくれて。
 私は、その働いてくれている人のために尽くしている。
 お互いが、お互いのために生きている。
 それは、幼い頃からずっと憧れていたものだった。
「・・・うん、これでよし。」
 完成した肉じゃがをお皿に盛り付け、テーブルに並べた。
 後は、クロウが帰ってくるのを待つだけ。
 しばらくして、玄関が開いた。
「ただいま。」
 聲が聞こえる。
 いつも聞いている声だけど、さっきまで聞こえなかった声。
 いつも聞いているからこそ、さっきまで聞こえなかったことがすごく寂しくて。
 さっきまで聞こえなかったことがすごく寂しかったからこそ、今聞こえてきた声はすごく嬉しかった。
 
「おかえり~!」
 笑顔で玄関へ向かい、クロウを迎えた。
「ああ。」
 クロウはそれだけ答え、上着を私に預けて部屋に上がる。
 そっけない態度だけど、私にはそれが暖かく感じた。
「ごはん、もうできてるよ。」
 食卓には、湯気の立つ肉じゃがが食欲を誘っている。
「美味そうだな。」
 バイトでつかれきったためか、今日のクロウはいつにも増して空腹な様子だ。
 あまり表情には出していないのだが、私には分かる。
 今の私だからこそ、分かる。それが嬉しかった。
「それじゃ、すぐ食事にしよっか?」
「ああ。」
 そう答え、クロウは簡単な着替えを終えた後、テーブルについた。
「腕を上げたな、お前。」
 忙しなく動かしていた手を止め、クロウは言った。
 言った後すぐに手と口を動かし始めるのだから、私はおかしくてクスリと笑った。
 そんなに急がなくても、ご飯は逃げないのに。
「そう?ありがと。・・・あ、おべんとついてるよ。」
 クロウの頬にご飯粒がついているのを指摘すると、クロウは手を止めた。
「ん・・・?」
 そして、それを取ろうと必死で顔を探るのだが、なかなか見当たらないらしい。
「もう、みっともないなぁ。・・・はい、取れたよ。」
 苦笑しつつ、私はクロウの頬についていたご飯粒をつまみ、そのまま口に運んだ。
「わ、悪い・・・。」
 少し顔を赤くし、うつむくクロウ。
 私は、たまに見せるクロウのこういう態度に弱い。
 頭がとろけそうになってしまう。顔がにやついてしまう。
 とても・・・幸せな気分。
「どうした?」
 怪訝そうなクロウ。
「ううん、なんでもない。」
 笑顔のまま否定する。
 クロウにとってはそんな事よりご飯の方が魅力だったみたいで、それ以上気にする様子も無く再び食事に没頭する。
「・・・。」
 と、ここでクロウの手が止まった。
 虚ろな目でどこかを見ていた。
 クロウの視線を目で追っていって、私はハッとした。
「どうしたの?おかわり?」
 分かりきっている。
「いや・・・えと・・・あぁ、そうだ。」
 分かりきっている。
「もう、だったらそう言えばいいのに。茶碗貸して。」
 分かりきっている。
 私は・・・分かりきっている。
 今日、この日はウィナーズが開催された日。
 そして、この時間はウィナーズのハイライトが放送される時間だったはずだ。
 クロウは・・・見たがっている。
「はい。」
「ああ。」
 茶碗を受け取るクロウ。
 やはり、その目は何も見ていない。
 今までもずっと、その目は何も見てはいなかった。
 私と同棲するようになってから、クロウはビーダーを引退した。
 毎日バイトに明け暮れていれば、ビーダマンをする暇なんてなくなってしまう。
 クロウは、そんなこと全く気にするそぶりは見せなかったが、時折今みたいに空虚な表情を見せる。
 それは、やはり・・・どこか未練があるということなのだろうか。
「ねぇ、クロウ・・・。」
 私は、恐る恐る声をかけた。
「ん?」
 返事したその目は・・・やはり何も見てはいなかった。
「・・・後悔、してない?」
「・・・それは、前に言ったはずだが?」
 そう、クロウは確かに言ってくれた。
 “ビーダマンを辞めた事に後悔は無い”と。
 クロウが今までビーダマンを続けていたのは、自分の存在意義を確かめるため。
 強くなり続けなければ存在意義が無いと思い込んでいたから。
 でも、今は違う。
 今のクロウにとっての存在意義は・・・私自身だった。
 私と共に生きることこそがクロウにとっての存在意義であり、そのためには全てを捨ててもいい覚悟だった。
 私もそう、クロウと共に生きるために全てを捨てた。
 そうして手に入れた幸せは、私にとっては何にも変えがたいものだった。
 でも・・・クロウにとってはどうだろうか?
 本当に、クロウは幸せなのだろうか。
 存在意義を得ることと幸せは違う。
 クロウは、まだ今も・・・強さを求め続けていた頃と同じものを感じ続けているのではないのだろうか?
「本当は、ビーダマン続けたかったんじゃないの?」
「・・・・。」
 クロウは黙り込んでいる。
 だから、歯止めが利かなくて、私はついしゃべってしまう。
「だって、今のクロウ、全然生き生きしてない!なんだか・・・昔とは、別人みたいで・・・。」
 言ってしまう。止まらない。
「なんだか、怖いの。クロウが無理してるみたいで・・・だから・・・。」
 言わなければいいのに。
 言わなければいいのに。
 言わなければ・・・このまま幸せは続くのに。
「私・・・もしかしたらクロウを縛り付けてるんじゃないかって・・・。」
「・・・そんな事はない。」
「っ!」
 クロウの返事は静かだった。
 そして、すごく冷たかった。
 その目に感情はなかったけれど。
 私は、それ以上何もいえなかった。
「・・・ごめん、なさい。」
 そう、クロウは後悔はしていないし、何も変わろうとはしていない。
 ただ・・・気づいて無いだけ。今クロウは本当に幸せでは無いということに。
 ただ・・・知らないだけ、本当の幸せが何なのかという事に。
 そして・・・私は今本当に幸せだから・・・。
 そんなクロウの無知さに甘えてしまっている。
 クロウを犠牲にして、幸せを得ている私。
 その事に罪悪を持っている私。
 そして、それ以上どうすることもできない私・・・。
 私は、実家へ手紙を書こうと思った。
 実家へ連絡を入れるのは本当に久しぶりだった。
 勝手に家を出て、勝手な事をし続けて、迷惑や心配をかけ続けているのだ。
 伝えなければいけないことはいっぱいある。
 家を出てからどんな事があったのか。
 今、どんな生活を送っているのか。
 そして・・・。
 PS.私は今、それなりに幸せです。
      END

爆・爆ストーリー ZERO 第51話

 

最終話「強さへの道」


 ラルドと別れたクロウとセシルは、深い森の中を歩いていた。
クロウ「朝から随分歩いてるが、まだ出られないのか・・・?」
セシル「まさか、迷ったのか?」
一向に森の出口にたどり着かないことに一抹の不安を覚える。
クロウ「だが、ラルドはこのまままっすぐ行けばいいと・・・。」
セシル「あ、クロウ!」
セシルが声を上げて前方を指さす。
木々の間から光が漏れている。おそらく、アレが出口だ。
クロウ「よし、行くぞ!」
セシル「うん!」
二人は出口に向かって駆け出した。
セシル「うっ、眩しい・・・!」
森を抜けると、陽射しが出迎えてくれた。
まぶしさに耐えながらうっすらと目を開けると、そこには荒野の一本道が続いている。
そしてその先には、一本の塔がそびえ立っていた。
クロウ「分かりやすい、道のりだな。」
セシル「う、うん。」
二人は、その順路に沿って歩き、塔の前にたどり着く。
セシル「こんな何もない荒野に、こんなに高い塔が建ってるなんて・・・。」
クロウ「あからさまに、怪しいな。」
その塔には、入り口に真っ赤な扉がある。
クロウ「(さて、どうするべきか・・・・。)」

1.せっかくだから、この赤の扉を選ぶぜぇ!  2.怪しい・・・入るのはやめよう
 

 

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爆・爆ストーリー ZERO 第50話

第50話「残された望み」
ロン「お前の・・・罪は・・・・。」
 クロウは黙って、その続きを待った。
ロン「お前の・・・存在自体だ。」
クロウ「どういう、意味だ・・・?」
ロン「お前は、生きていること、そのものが罪だ。」
クロウ「な・・・・に・・・・。」
 クロウの目から徐々に精彩が失われてしまった。
セシル「ど、どういうことよ!生きてる事が罪だなんて!」
クロウ「お前は・・・黙っていろ・・・。」
セシル「・・・。」
 クロウは、ただひたすらまった。続きを。これから、ロンの言う事を少しでも聞き逃すわけにはいかない。
 全神経を耳に集中した。
ロン「俺は・・・お前と・・・同じ。Dr.コハクによって作られた・・・改良型ヒューマノイドだ。」
 やはり、そうだった。だが、それとクロウを憎む事と、どう関係があるのだろうか?
ロン「俺は、ずっと・・・一人だった・・・辛かった・・・・孤独が・・・。」
クロウ「(こいつは・・・俺と、同じ?)」
ロン「ずっと、薄暗い牢屋に閉じ込められ・・・。ずっと・・・・地獄のような人体実験を繰り返させられた・・・!」
クロウ「!?」
 驚愕した。それは、おそらく、クロウの苦痛を遙かに・・・。
ロン「あるときは、牢を密閉し、水を敷き詰め、俺がどれだけ耐えられるか試し・・・。あるときは、灼熱の炎で焼き・・・ある時は、冷気の中に閉じ込められ・・・。全てはデータを取るためだけに・・・!」
クロウ「・・・・。」
 ただ、黙って聞く事しかできない。おそらく、その苦しみを分かち合うことは出来ない。
 その苦しみを経験した事が無いから。
 なんて、甘い。自分の境遇なんて、ちっぽけなもののように思えた。
ロン「俺は憎んだ。自分が生まれてきた事を・・・俺は憎んだ、生みの親を・・・!俺は、こんな思いをしてまで、この世に生まれたかったわけじゃない・・・!」
 すさまじい憎しみ。それは生に対する憎しみ。
 『生きていればいい亊ある。』
 よく聞く言葉。
 だけど、本当にそうなのだろうか?
ロン「俺は狂った。そして殺した。生みの親を・・・!だが、それだけでは足りない・・・!俺の憎しみが尽きる事は無い・・・!」
クロウ「・・・・・。」
 憎しみが尽きない・・・。それは当然だ。憎い相手を殺したところで、何も解決はしないのだから。しかし、ロンはその事を知らない。
 憎しみを憎しみで癒そうとし、更なる憎しみを生み出し、その事に苦しんでいるのだ。
セシル「でも、それとクロウとは関係無いじゃない!なんで、クロウを!」
ロン「俺は、こいつのデータを元に、生み出されたんだ!」
 クロウを指差し、叫ぶ。
クロウ「!?」
ロン「俺はお前とは違う・・・・。お前は人工授精によって生まれた改良型ヒューマノイドだが、俺はそれの発展型・・・。授精も何もせず、一から人工的に作られた改良型ヒューマノイドだ。」
クロウ「俺とは違う・・。」
ロン「俺が生み出されたのは一年前・・・。それまでに・・・お前が生きてきたデータが・・・俺の中にインプットされてある。」
クロウ「俺の、データが・・。」
ロン「こいつがこれまで生きてきたデータのせいで、俺は生み出され、こいつは今ものうのうと外の世界で生き続けている・・・!」
クロウ「・・・・。」
ロン「そんなお前を、俺は許さない・・・!俺は・・・!」
 ロンの言葉で、クロウには完全な隙が出来てしまった。
 その隙をついて、ロンは立ち上がる。
クロウ「しまっ!」
 もう遅い。だが、ロンも戦える状態では無い。
ロン「必ず・・・お前・・・を・・・・。」
 シュウウウ・・・・。
 ロンの腕から煙のような靄が出てきた。
ロン「!?」
 それに気づいたロンは焦ったようにその場を去っていった。
クロウ「・・・・。」
 ロンの言葉を聞き、呆然とするクロウ。
クロウ「(俺のせいで・・・俺が生まれせいで・・・俺が・・・生き続けたせいで・・・。)」
セシル「クロウ・・・。」
 セシルにも、クロウの悲しみは伝わった。だからこそ、何も声をかける事が出来なかった。
 そんな自分をもどかしく思う。やはり、非力なのだと言う事を思い知らされてしまった。
 何も出来ない自分が・・・悔しかった。
ラルド「さて、問題は解決したようだね。そろそろ行こうか。」
 と、いきなり緊張感をぶち壊す声が聞こえた。
 ラルドはこのような状況でも平然としている。まるで、感情が無いみたいに。
セシル「何言ってるのよ!何も解決してないでしょ!」
ラルド「え?」
セシル「クロウの気持ちを考えてよ!よくそんなことが言えるわね!」
クロウ「よせ。ラルドの言うとおりだ。・・・今の俺に出来るのは、もうそれしか残っていない。」
セシル「・・・。」
ラルド「そういうことだね。じゃ、行こう。」
クロウ「ああ。」
 気力の無い顔で返事し、歩き出す。
セシル「・・・・。」
 釈然としないが、セシルも歩き出した。
 三人は深い森の中を歩いていた。
 この森を抜けたところに、ヒスイがいると言うのだ。
ラルド「・・・・・。」
 と、いきなり、ラルドの足が止まった。
クロウ「どうした?疲れたのか?」
ラルド「ううん・・・もう、限界みたい。」
クロウ「なに?」
ラルド「ここから先は、二人だけで行って。大丈夫。一本道だから、迷うことは無いと思う。」
セシル「何言ってるの?」
ラルド「この森を抜けたら、すぐヒスイがいる場所へ行ける。すぐ分かると思うから・・・・あぁ、早く、行って!」
 何か焦っているようだ。
クロウ「大丈夫か、お前?」
ラルド「大丈夫だから!お願い、早く行って!」
クロウ「あ、あぁ・・・・。」
 なんとなく納得できないが、促されるまま、クロウとセシルはラルドを置いてあるいて行った。
ラルド「・・・・。」
 そんな二人の後姿を眺めながら、ラルドはため息をつく。
ラルド「よかった・・・まにあ・・・。」
 言い切る前に、ラルドは崩れた。そして、手足から機器のようなものが漏れた。
ラルド「ガ...ガガガ....。」
 短い電子音を最後に、ラルドは完全に停止してしまった。
 深い森の中をたった二人で歩き続けるクロウとセシル。
セシル「・・・・ほんとに、会えるのかな?」
クロウ「分かるか。だが・・・俺達に残された希望は、それしかない。あいつの真意を聞かなければ・・・このまま、生きることも、死ぬことも出来ない。それだけが、今の俺に残されたものだ。」
セシル「・・・・。」
 生きる意義を失ってしまったものが、最後にすがりつくもの。
 それは自分がやるべき仕事。
 仕事をする事によって得られる存在意義。
 その存在意義に生きる意義を見出すことが出来る。
 『ヒスイを探すこと』
 それは本当は何の意味も無い事なのかもしれない。
 さらなる絶望を生むだけなのかもしれない。
 でも、それをしなければ生きている意味は無いから・・。
 だから、何があろうとそれをするしかないのだ。
 辺りが暗くなった。
 ただでさえ薄暗い森なのだが、日が落ちた事によってさらにそれが増している。
クロウ「今日は、ここで野宿だな。この状態で動くのは、危険だ。」
セシル「ええ。」
 クロウの提案にセシルは素直に応じた。
 適当に薪を集め、それを燃やす。
 保存食もある程度たくわえがあったので、なんとか過ごせそうだ。
クロウ「・・・・。」
セシル「・・・。」
 焚き火をはさんで、座る二人。
 お互い、何も話さなかった。
 パチパチと音を鳴らし、炎が二人の顔を照らす。
セシル「ねぇ。」
 ふいに、口を開くセシル。
クロウ「なんだ?」
 表情一つ変えず、答える。
セシル「クロウとヒスイって、私が会う前から知り合いだったでしょ。いつから知り合いだったの?」
クロウ「お前と大差無い。あいつと出会ってすぐ、お前とも出会った。」
セシル「そうなんだ・・・。」
クロウ「あれは、俺がまだシャドウにいた頃だった・・・。」
 そしてクロウは、ゆっくりとヒスイとの出会いを話し出した。過去を懐かしむように。愛おしむように。
クロウ「俺はボスの命令で、伝説のビーダマンを探すように言われた。その先で会ったのが、あいつだった。」
>クロウ「おい・・!」
>ヒスイ「ふえ?」
> ヒスイが作業する手を止め、振り向く。
>クロウ「なんだ、貴様は?」
>ヒスイ「え!?き、君こそ何ですか!勝手に人の隠れ家に入ってきて!」
セシル「ふふ、クロウらしいね。」
 理不尽な言いかたにウケたのか、静かに吹き出すセシル。
クロウ「あいつも、頑固だったな・・・。そして、あいつのジェイドガンナーと初めてバトルした・・・。」
>クロウ「どうした?たいした事無いな」
>ヒスイ「ふふ・・!」
> ドドドドド!!
> ジェイドガンナーの怒涛の連射。10発くらいのビーダマが一気に発射され、ドライブショットを弾く。
>クロウ「バカな・・!なんだ、この連射は・・!いくらなんでも、ここまでの連射は・・・!」
セシル「やっぱり、ビーダーなんだね。バトルが全てって感じ。」
クロウ「まぁな。当然、この勝負は俺の勝ちだった。だが、俺は何か釈然としないものを感じたんだ。」
>クロウ「その程度の攻撃で・・。!?」
> ジェイドガンナーの攻撃で、アーマーが傷ついてしまった。
>クロウ「くっ!」
>ヒスイ「いけー!!」
> ジェイドガンナーの連射が続く。
> ガガガガガガ!!!
> 今度は、モロにうけてしまう。
> パキッ!パキッ!
> 徐々に破壊されていくアーマー。
>クロウ「くっ・・!調子に乗るなぁー!!!」
> クロウは思いっきりホールドパーツを締め付ける。
> パキーン!!!
> その衝撃で、アーマーが吹っ飛び、純粋な素体ZERO-Dになってしまった。
>クロウ「うおおおお!!!!」
> ドキューン!!!!
> しめ撃ちドライブショット発射。ジェイドガンナーの連射を吹き飛ばし、ジェイド
>ガンナーに直撃。
>ヒスイ「くっ!」
> その威力に、メガネの手から、ジェイドガンナーが吹っ飛ばされる。
>クロウ「はぁ・・・はぁ・・・!」
>ヒスイ「負けましたね・・。仕方ない・・・約束どおり・・・。」
>クロウ「くっそおおお!!!」
> クロウは、素体ZEROを地面に叩き付け、そのまま走り去った。
>ヒスイ「・・・・・。」
セシル「あの時、クロウは何を感じたの?」
クロウ「・・・.あの時の俺には、分からなかった。だが、今なら、なんとくなく分かるかもしれない・・・言葉には出来ないが。」
セシル「そう。だったら、このたびはクロウにとって意味のあるもの・・・だったのかもね。」
クロウ「どうだろうな。」
> 俺は組織を裏切った。だが、後悔はしていない・・・より強くなるために、自らが選んだ道なのだから・・・。
>ヒスイ「やっ!」
> 突如、目の前にヒスイが現われる。
>クロウ「なんだ・・お前か・・・いきなり目の前に現われるな。」
>ヒスイ「まぁまぁ。・・そんな事より・・・。」
> ヒスイは、クロウにビーダマンを渡す。
>クロウ「これは・・・!」
>ヒスイ「前のバトルで、君のビーダマン壊しちゃったから、直しときました。ちょっと手を加えましたけど・・・。」
> 確かに、クロウの改良型素体ZEROのビーダマンだが、それは、前に使っていたビーダマンとは全く違う、新型と言っていいようなものだった。
>ヒスイ「レクイエム・・・。」
>クロウ「?」
>ヒスイ「メタルレイヴンレクイエム・・・それが、このビーダマンの名前です。」
>クロウ「メタルレイヴン・・・レクイエム・・・。」
>ヒスイ「そう言えば、名前聞いてませんでしたね?」
>クロウ「クロウだ。」
>ヒスイ「僕は、ヒスイです。よろしく!」
> ヒスイと名乗った少年は、握手を求めるように、手を出す。
>クロウ「・・・・。」
> しかし、クロウはなかなかその手を握ろうとはしない。
>クロウ「(レクイエムか・・・。シャドウは捨てた事だし、今度はこいつを利用して強くなるのも、悪くないな・・・)」
> そう思い、手を握るクロウ。
>クロウ「ああ。こちらこそ・・・よろしくな。」 
セシル「それで、ヒスイと旅をする事にしたんだ。」
クロウ「ああ。あの頃はヒスイを利用する事しか考えて無かった・・・だが、今はどうなんだろうな・・・。」
セシル「え?」
クロウ「利用するだけの存在なら、こんなに躍起になって探す必要は無いはずだ・・・だが・・・。いや、やはり俺は利用しているのかもしれない。奴を探すことによって、俺は自分の存在意義を見出そうとしている。生きために利用しているんだ。」
セシル「ヒスイは仲間。そういったのはクロウでしょ?」
クロウ「・・・・。」
セシル「簡単に自分の発言を覆さないで。クロウは変わったの。前みたいな冷たい人間じゃない。改良型ヒューマノイドでもない。私たちと同じ、人間よ。」
クロウ「・・・そうだと、いいが・・・。」
セシル「私は・・・例え、クロウが・・・・。え?」
 見ると、クロウは目をつぶって寝息を立てていた。
 今日は、本当にいろんな事があって、疲れたのだろう。
 セシルは、そっとクロウに毛布をかけてやった。
 そして、クロウの寝顔を見ながら、思った。
セシル「(神様・・・どうか、奪わないでください。私から、大切なものを・・・。)」
 その願いは聞き入れてくれるのかどうか分からない。
 それでも願うしか無い。
 明日になれば、すべてが分かるかもしれない。
 それはきっと怖い。
 分からないままでいたいのかもしれない。
 もし、真実が自分の中で生まれかけた幸せを奪うようなものだとしたら・・・。
 知らない方がいいのかもしれない。
 でも、それは単なる時間稼ぎ。
 知らなかったら、それでも徐々に幸せはなくなってしまうのだ。
 全ては明日、決まる。
 セシルの願いは神様に聞き入られるのか・・・・。
 クロウは、答えを導き出せるのか・・・。
 この旅のこの物語の結末は・・・・答えは・・・・。
 全ては、この世界の創造主のみが知る。
 全ては、観測者によって決定される。
 物語の終結は、近い。
 一体、どんな答えが待っているのだろう?
 どんな答えを・・・決定してくれるのだろうか・・・?
             つづく
 次回予告
クロウ「ヒスイと出会い、シャドウを抜けたあの日。あの日から全てが始まった・・・。さまざまな人と出会い、戦い・・・。さまざまな出来事と遭遇し・・・。
この旅で俺は何かを得ることが出来たのだろうか?あるいは、俺は本当に強くなれたのか・・・?
 次回、最終話『強さへの道』極めるべき強さは、一つでは無い・・・。」



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爆・爆ストーリー ZERO 第49話

第49話「歪んだ憎しみ」
 ラルドの案内のもと、クロウ達はとある町にたどり着いた。
セシル「ここに、ヒスイが・・・?」
ラルド「ううん、ここはただの通過点。それに、ちょっと休憩も必要でしょ。」
セシル「そうね・・・ちょっと疲れちゃった。」
 クロウも、その意見に反対する気はなかった。
 とにかく、いろんな事がありすぎた。
 疲労したままの体で行動するのはよくない。
 とりあえずレストランで食事を取ったクロウら。
セシル「さぁ、行きましょう。」
 一刻も早くヒスイを探さなきゃいけない。
 気持ちをあせらせる。
ラルド「まぁ、落ち着いて。大丈夫。多分もうヒスイは近いから。」
セシル「だけど、グズグズしてたら・・・!」
ラルド「それも大丈夫。多分もうそこからヒスイは遠くへはいかないと思う・・・。」
セシル「分かるの?」
ラルド「分かるって言ったよ。ただ、それ以上は言えない。聞かないでほしい。」
クロウ「・・・。」
 言えない・・・聞かないでほしい・・・。
 その言葉がどうにも引っかかり、ラルドを信用しきれないクロウ。
クロウ「(だが、手がかりはこいつしかいない・・・。)」
 いざとなれば自分がこいつをしとめれば言いだけの話・・・。
 クロウは密かにデスサイズをいつでも取れる体勢になる。
 と、その時、町の人たちがざわざわと騒がしくしているのに気づく。
セシル「なんだろう・・?」
 見ると、一つの小屋みたいなところに人が集まっているようだが・・・。
ラルド「最近、この町にやってきた占い師みたいだね。」
セシル「へぇ・・・・。」
 女の子だけに多少こういうのには興味を示す。だが、今はそれどころではないはずだ。
ラルド「やってみる?」
セシル「せっかくだけど・・・今はそんな場合じゃないし・・・。」
ラルド「だから、時間は大丈夫だって言ったでしょ。ヒスイがちゃんと見つかるかどうか、占ってもらうのもいいし。」
セシル「だけど・・・。」
クロウ「いいんじゃないか?」
 意外にも、クロウは賛成のようだ。
セシル「え?」
クロウ「ちょいと占ってもらいたい事も・・・あるしな。」
 チラッとラルドを見て言う。
ラルド「そう。じゃ、行こうか。」
クロウ「ああ。」
 ラルドとクロウは占いに並ぶ。
セシル「あ、待ってよ!」
 そして、数分後、クロウたちは小屋の中に入り、占ってもらう事にする。
 中は薄暗く、水晶玉を前に黒いフードをかぶった女の人が座っている。
占い師「では、何を占いますか?」
クロウ「そうだな・・。俺には、新たに仲間になった奴がいる・・・そいつが信用できるものか、占ってくれ。」
ラルド「!?」
 率直だった。
セシル「(クロウ!いくらなんでもストレートすぎるよ・・・!)」
 しかし、ラルドは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに平静を保つ。
占い師「・・・・。」
 占い師は一瞬迷ったようなそぶりを見せたが・・・。
占い師「分かりました。」
 そうつぶやき、水晶玉に念を込める。
 輝きだす玉。
 湧き上がる気流。
クロウ「これは・・・!」
 そして、占い師のフードが上がる。
セシル「あぁ!」
 声も上がる。
 そう、そのフードをかぶった女性とは・・・。
セシル「フローネさん!?」
フローネ「!?」
 鋼の砦の、預言者だった。
フローネ「あなたたちは・・・あの時の・・!?」
クロウ「あの後、こんなところにいたとは・・・。」
 デスサイズを奪おうとした女性・・・信用できるものではない。
クロウ「行くぞ。こいつの占いなどあてにならないからな。」
セシル「う、うん。」
 セシルもちょっと軽蔑ぎみ。
ラルド「?」
 ただ、ラルドだけはちょっと事情が分からないようだった。
セシル「はぁ、まさかあの人が占い師だったなんて・・・。」
 小屋から出たと同時にため息をつく。
クロウ「ま、現実はこんなものだな。どの道、ヒスイは見つかるんだ。そうだろう?」
ラルド「もちろん。君が僕にどんな疑いを持とうが、その結果に変わりはないよ。」
クロウ「ふん、期待していよう。」
フローネ「キャアアアアア!!!」
 その時、小屋から、フローネの叫び声が聞こえてきた。
 ざわつく客たち。野次馬たちもやってきた。
クロウ「なんだ!?」
 ただ事ではない。そう感じたクロウたちは野次馬たちを押しのけ、小屋の中に入る。
フローネ「うぅ・・・!」
クロウ「!?」
セシル「あぁ!」
 フローネが、男に首を締め上げられていた。
 その・・・男は・・・。
クロウ「ロン・・・!」
 ロンが、首を締めている腕を高々と上げている。
ロン「俺を愛せ。この、俺を・・・!」
フローネ「な・・・なに・・を・・・あぁ!!」
 さらに力をいれるロン。
ロン「ならば・・・.死ね!」
フローネ「うぅ・・・!」
セシル「な、なにやってるのよ!」
 チラッとセシルの方を見るロン。
ロン「全てこの女のせいだ。」
クロウ「どういう意味だ?」
ロン「この女のせいで、余計な感情を持ってしまった・・・!その感情は、俺を狂わせる!だから、殺す!邪魔者は排除するのみだ!」
 ギリギリギリ・・・!!
 さらに力を込めて首を締める。
フローネ「・・・・・。」
 抵抗する力を失ったのか、ぐったりとしてしまった。
 このままでは、本当に死んでしまう。
クロウ「よせ!」
 ドンッ!!
 すばやくデスサイズを取り出し、ロンの腕へ撃つ。
ロン「ちっ。」
 その玉を避けるために、フローネを離すロン。
フローネ「げほっ!げほっ!」
 激しくむせるフローネ。
ロン「おい、これで終わったと思うな・・・!」
 さらに、ロンはフローネにビーダマンを向ける。
フローネ「!?」
ロン「死ね!」
 ドンッ!!
 フローネに向けてショットを放つ。しかし、フローネもそれに応戦する。
フローネ「カオススパイダー!」
 緑色のビーダマンを取り出して、すばやく連射し、ロンのショットを止める。
ロン「なに・・!」
フローネ「はぁ・・・はぁ・・・!」
ロン「くだらないショットだ。」
フローネ「いきなり、なんのよ・・。」
 ロンはひるまない。再びヘイロンが火を吹く。
フローネ「うっ!」
 フローネも負けじとカオススパイダーの連射で応戦する。
ラルド「ショートストロークシステムか・・・しかも、かなり精度がいいみたいだね。」
クロウ「前に見た事あるが、確かに精度が段違いだな。」
セシル「(そんな事言ってる場合じゃ・・!)」
 パワーと連射の押収。
 しかし、やはりロンの方が上手だった。
フローネ「きゃあ!」
 今度はヒットした。大きく吹っ飛ばされるフローネ。
 そのまま壁にぶつかり、気絶してしまった。
ロン「・・・・もう、感じない。あの感情は・・・消えたのか・・・?」
 ブツブツと独り言をつぶやいている。そして、今度はクロウへ向き直る。
ロン「次は・・・お前だ。」
クロウ「ああ。そうくると思っていた。」
 二人とも戦闘の構えを取る。
ロン「俺は・・・・お前を許さない・・・・。」
 ロンはブリザードヘイロンをクロウへ向ける。
ロン「許さない・・・お前の罪を・・・!」
 ロンの怒りが増す。それと同時に、ヘイロンにも変化が置き始める。
クロウ「なんだ・・・!?」
 黒いエフェクトが起こり、ヘイロンが徐々に進化していく・・・!
ラルド「ビーダマンが、ビーダーの心に反応して進化していく・・・。」
 そして、新たなるヘイロンが生まれてしまった。
ロン「グレイズヘイロン・・・・。」
クロウ「っ!?」
 いきなり、その砲火が放たれた。
 今までより数段強い!
クロウ「ぐっ!」
 そのショットにクロウは成すすべなく吹き飛ばされる。
クロウ「ちぃ!」
 小屋の外へはじき出されるが、なんとか踏みとどまった。
 そこをゆっくり歩んで来るロン。
ロン「・・・・。」
 その目は、憎しみで満ちている。
 他に何も見えていない、クロウしか見ていない。
 その目に、不覚にも身震いしてしまった。
クロウ「!?」
 その隙を、ロンは逃さなかった。
 すばやくトリガーを押し、クロウへショットをぶつける。
クロウ「ぐぅ!!」
 まともにうけ、ひるむが、今度は隙をつくらまいと耐える。
クロウ「はぁ!」
 痛みに耐え、クロウも反撃。
ロン「ふん!」
 カキンッ!
 あっさり落とすロン。しかし、落とせたのは一発だけ。
 ドンッ!
ロン「!?」
 クロウが放ったのはダブルバースト。しかも二つ目の感覚を少し空けておいたのだ。
 しかし、たった一発だけではロンはひるまなかった。
ロン「・・・・。」
クロウ「(こいつ・・・ショットをまともに受けたのに、平然としている・・・。まさか・・・!)」
 クロウは、ロンに対してある仮説が浮かんだ。
クロウ「お前は・・・まさか・・・。」
ロン「っ!」
 ドンッ!
 焦るように、クロウへ向かってパワーショットを放つ。
クロウ「ちっ!」
 とっさにそれをよける。
 そしてよけざまにこっちからもダブルバーストを放つ。
ロン「ふん。」
 あっさりかわされる。
 しかし、それはクロウにとっては計算内の行動だった。
 クロウのショットはそのまま壁にぶつかり、方向変換し、ロンへ襲いかかった。
 バーンッ!!
 強力なダブルバーストがロンの横腹にヒットする。
ロン「ぐっ!」
 さすがに二回目はちょっときついらしい。
クロウ「お前は・・・!」
ロン「黙れ。お前に言われる筋合いはない!」
 つまり、クロウの仮説はあっているということだ。
クロウ「だとしても、なぜだ!俺は関係ないはずだ!」
ロン「関係無いだと・・・寝ぼけるな!」
 ドンッ!!
 怒りを込めたロンのショット。
 それを止めるクロウのショット。
クロウ「どういうことだ!俺も被害者だぞ!」
ロン「それこそ、関係無い!お前の事など、知らない!」
 再び火を吹くロンのショット。
クロウ「ちっ!」
 迎え撃とうとするクロウの横を、二つの種類のショットが飛んで行く。
クロウ「?!」
 それは、連射とコントロールショットだ。
クロウ「なに!?」
 振り向く。そこには、ラルドとセシルがビーダマンを構えていた。
セシル「私達も加勢するよ!クロウ!」
ラルド「えぇ!」
クロウ「お前らは下がっていろ!これは、俺とこいつとの問題なんだ!」
セシル「でも、クロウにはどんな問題が・・・!?」
クロウ「分かるか!だが、どうやら本当に無関係ではなさそうだ・・・!だったら、その真実を知るまでだ!」
 ロンへ向き直り、ショットを放つ。
 それを止めるロン。
ロン「お前は一生気づかない・・!自分の罪を・・・!それが許せない・・・!」
 今度は乱射する。それでいてパワーもあるのだから性質が悪い。
クロウ「くそぉ!」
 クロウはすばやく後ろへ飛びのき、迎撃する。
 そして、玉の勢いが落ちてきたところですばやく横へ移動し、壁の後ろに隠れる。
クロウ「はぁ!!」
 そして、渾身のパワーショットで壁をぶち抜き、ロンへ狙う。
ロン「!?」
 バーンッ!!
 さすがに反応しきれずヒット。今度はかなりダメージが大きい。
クロウ「うおおおおお!!!」
 たった一瞬だが確実な隙。それを逃さず、連射するクロウ。
ロン「っ!」
 よける暇も、迎撃する暇も与えられずそのショットを全て受けてしまうロン。格闘ゲームで言うところの『ハメ技』だろう。
クロウ「うおおおおおお!!」
 連射はさらに勢いをます。しかし、ロンも負けてはいなかった。
クロウ「なに・・・!」
 ロンは立っていた。連射をすべて受けながら平然としている。
 心頭滅却すれば火もまた凉・・・。ロンは精神を無にし、ほんの数秒だけ体の感覚を麻痺させているのだ。
 そして、ロンは腕を前に出す・・・ヘイロンのウィングが一段階下がる。そして、腕を思いっきり引き・・・。
 『爆・憎回転!』
 強力な回転を得た玉が風圧をまとい、ゆっくりと進んでいく。
 クロウの発射した玉全てを弾き飛ばしながら・・。
クロウ「(くっ、このショットに迎撃は通用しない・・・!)」
 しかも、この技の特殊な風圧に体が巻きつかれ、身動きが出来ない上、連射を続けてきたので、とっさにパワーショットも撃てない。
 バーンッ!!
クロウ「うわああああ!!!」
 強力な技にヒットし、大きく飛ばされるクロウ。
ロン「はああ!」
 飛ばされる間も、ロンに何度もショットを打ち込まれた。
 ドサッ!
 地面に倒れこむまでに、何度ロンのパワーショットを受けただろうか・・?
 とにかく、そんなダメージを受けたために、すぐには立ち上がれない。
ロン「止めだ。」
 チャッ!
 倒れているクロウに標準を合わせ、ショットする。
クロウ「くそっ!」
 クロウはすばやく地面に向かってビー玉を放つ。
 バーンッ!
 ロンのショットがヒットする前に、クロウは地面を撃った反動で起き上がれた。
クロウ「はぁ・・・はぁ・・・!」
ロン「・・・!」
 お互い、体力も限界だろう。
 おそらく、次のショットが最後の決め手になるはずだ。
 チャッ!
 すばやく、同時に構える。
クロウ&ロン「うおおおおお!!!」
 そして、渾身の力を込め、ショットする。
 ドンッ!!!
 放たれたその玉は、中央で激突!
 パワーは互角だったのか、クロウとロンの玉は大きくはじかれた。
ロン「ちっ!」
 勝負はまだまだ続きそうだ・・・だが、その前に二人の体力が・・・。
クロウ「まだだぁ!!」
ロン「なに!?」
 そう、まだクロウのショットは終わってなかった。
 ロンにはじかれたクロウの玉。それがクロウの目の前に来る。
 その玉はまだ十分な回転力を持っていた。
クロウ「リプルションブレイカー!!」
 その玉に向かってショットする。
 そのショットは玉の回転を受けて、一気に加速・・・そして・・・!
ロン「ぐわああああ!!!!」
 ロンを吹き飛ばした。
 倒れるロン。
 そう簡単に立ち上がる事は出来ない。
クロウ「終わりだ・・・。」
 倒れているロンの顔に銃口を突きつけるクロウ。
 この瞬間、クロウの勝利が決定した。
ロン「・・・・ばかな・・・!」
 未だにクロウへの憎しみの眼差しを向けているロン。しかし、この状態ではどうしようもない。
クロウ「さぁ、聞かせてもらおう。なぜ、俺を憎んでいるのか・・・。俺の罪とは一体何なのか・・・?」
ロン「・・・・。」
 ロンはしばらく黙っていたが、ゆっくり口を開いた。
ロン「お前の・・・罪は・・・・。」
 ロンの口から音が出る。それを聞いたクロウは、愕然とする。
クロウ「な・・・・に・・・・。」
 そして、その目から徐々に精彩が失われてしまった。
 その瞬間、世界は反転し、色を失った・・・。

         つづく

 次回予告


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爆・爆ストーリー ZERO 第48話

第48話「緑色の尋ね人」



 ツバサを置いてヒスイを捜索するために町をでたクロウとセシル。
セシル「大丈夫かな、ツバサ・・・。」
クロウ「あいつは弱い男じゃない。そうじゃなければ、あそこであの判断はできなかったはずだ。」
セシル「それは、そうだけど。」
 マーダビィに操られたジョーからクロウ達をかばうため一人ジョーと戦うことになった。
 それに対して責任を感じるのは人間として当然の感情。
 しかし、それゆえにその行為を無下に扱っては本末転倒だ。
 クロウはそれを知っているからあえて気にしないようにしている。しかし、セシルはそこまで強くない。
セシル「よかったのかな?あのままツバサを置いていって。」
クロウ「今更何を心配している?余計な事は考えるな。それが、ツバサのためでもある。」
セシル「分かってる・・・分かってるけど・・・。」
 何度も、何度も後ろを振り返る。
 明らかな迷い。自分の決断に迷いを生じさせることは、はなっから過ちということだ。
 だからこそ、クロウは
クロウ「いい加減にしろ!」
 そう怒鳴った。
セシル「え?」
クロウ「お前は、非力だ。」
 いきなり、そんな事を言われた。
セシル「!?」
 驚くセシル。しかし、それは自分でも分かっていたこと。だから、反論できない。
クロウ「そんな非力なお前が今ツバサの心配をして何になる?あそこでツバサと共に戦って何が変わる?」
セシル「・・・・。」
クロウ「だけど、そんな非力なお前でもヒスイを探すということはできる。だからこそツバサはお前にそれをさせようとした!自分の仕事を放棄するような真似はするな!」
 クロウの叱責。その言葉にセシルの中で何かが変わった。
セシル「・・・分かったわ。私は、私の出来る事をする。出来もしないくせに、自分が出来ないことをしてくれている人の心配をして自分が出来ることを疎かにするなんてできない。」
 セシルはまっすぐ前を向いた。もうそこに迷いは無い。
 それを感じたクロウはそれ以上何も言うことは無く、二人はただひたすら前へと進んでいった。
 しばらく進んでいくと、小さな町が見えてきた。
 他にあてがあるわけではない。
 クロウ達はそこへ入り、聞き込みすることにした。
おばはん「う~ん、見かけないねぇ・・・。」
セシル「そうですか・・。どうも、すみません。ありがとうございました。」
じじい「見とらんぞ。」
クロウ「そうか。」
ガキ「見ないじょー!」
セシル「そう・・・。」
 町へ入り、何人もの人に「小柄で翡翠色の短髪をして、白衣を着た少年」を見なかったかと聞いたのだが、いまだ証言は得られない。
少年「う~ん・・・しらねぇな。」
クロウ「そうか・・・。」
 これで13人目。同じ答えを聞いたのは。
セシル「また、手がかりなし・・・。ヒスイ、どこ言っちゃったんだろう?」
少年「ヒスイだと・・!」
 少年は、セシルの言葉に過剰に反応した。
セシル「え?」
少年「貴様ら!ヒスイの仲間かぁ!!」
クロウ「それがどうした?」
 ドンッ!!
 いきなり、少年はビーダマンを取り出し、クロウへ向けてショットした。
 とっさによけたおかげでそのショットはクロウの頬を掠めただけだったが。
クロウ「何をする!」
少年「黙れぇ!ヒスイのせいで・・・!弟は・・・!シルバは・・・!やれぇ、ヘルプリンス!!」
 少年は怒りで、我を忘れてしまっているようで、見境無く乱射している。
クロウ「くっ!」
 とっさのことなので、少年から離れようとするクロウとセシル。
 無論、逃げるわけではない。体勢を建て直し、返り討ちにしようとするのだが・・・。
少年「みんなぁ!こいつらは、あのヒスイの仲間だぜ!!!」
 その少年の叫びに、村中の人たちが反応し、血相を変えてクロウ達に襲い掛かってきた。
村人A「このやろう!あいつのせいでおらの畑はボロボロだ!」
村人B「どれだけの人が苦しんでたと思ってるんだ!」
村人C「わしの妹も・・・!妹も・・・!」
村人H「あの実験はいったいなんなんだ!!」
村人T「これ以上好き勝手にはさせねぇべ!」
 村人達はいっせいにビーダマンを持ち、乱射してくる。
 多勢に無勢。いきなりこんな大勢にしかもルール無用に仕掛けられたら、いかにクロウといえども逃げるしかない。
 いや、それは否だ。
 たとえどんな状況においてもクロウは突破することは可能だ。この程度の雑魚が何人集まろうが関係ない。
 しかし、村人達が口にしていた言葉・・・それが気にかかってバトルに集中できないのだ。
クロウ「逃げるぞ・・・!もうこの村にはいられない!」
 あ、ここって町なのか村なのかはっきりしてない(汗
 村を出て、クロウ達は近くにある小さな森の中に逃げ込んだ。
 まだ、村人達は追ってくる。
 しかし、木々がいりこんでいるこの森の中に隠れたクロウ達を見つけることは困難だったらしい。
 しばらくして、村人達はあきらめて帰っていった。
クロウ「どうやら、行ったようだな・・・。」
セシル「もう、一体なんなのよ。なんで、ヒスイの事を探そうとしたら皆が襲い掛かってくるの?」
クロウ「さぁな。だが、あいつには、あいつの過去には何かある。俺たちの知らない何かがな。それだけは確かだ。」
セシル「うん・・・。」
 ガサ・・・!
 そのとき、近くで物音が聞こえてきた。
セシル「誰!?」
 振り向くと、そこには・・・。
 小柄で翡翠色の短髪をして、白衣を着た少年が立っていた。
セシル「ヒスイ!?」
 いや、違った。確かに記号的な面ではヒスイと同じだが、顔はぜんぜん違う。
 どうして、見間違えたのだろうか?
???「やぁ、君たち、ヒスイを探してるの?」
クロウ「知ってるのか!?」
???「うん。知ってる。」
 思いがけない言葉だった。
セシル「ほんとう!?」
???「うん。僕についてきてよ。案内してあげる。」
 そういって歩き出す少年。
 しかし、クロウはそこから足を動かさなかった。
???「どうしたの?」
 ついてくる気配を感じなかったのか。少年は振り返り、怪訝な顔をする。
???「ヒスイって人を、探したいんじゃなかったの?」
クロウ「信用できないな。いきなり現れて。大体お前何者なんだ?」
ラルド「ごめんごめん。僕の名前はラルド。理由は言えないけど、ヒスイとは無関係ではないんだ。」
クロウ「理由はいえない・・・か。」
 イマイチ信用できない様子のクロウ。
ラルド「まぁ、別に信用してくれようとくれなかろうと、僕に損得は無いんだけど。」
 確かにそのとおりだ。これが、わなでなかったらの話だが。
クロウ「・・・。」
セシル「クロウ、ここはこの子を信用しよう。それしか道は無いよ。」
 セシルの言うことももっともだ。
 今のクロウ達はわらをもすがらなければならない切迫した状況。そこに駆け引きを加える余裕は無いだろう。
クロウ「そうだな。分かった。案内しろ。」
ラルド「うん。」
 ラルドについていくクロウとセシル。
 そして、どこかの草原へとたどり着いた。
クロウ「ここに、ヒスイがいるのか?」
ラルド「いいや。」
クロウ「なに!?」
セシル「私たちをだましたの!?」
ラルド「話は最後まで聞いてよ。僕は本当にヒスイの居場所を知ってるし、それを君たちに教えたところで、別に損は無いんだ。」
クロウ「なら、なんでこんな足踏みをする?」
ラルド「・・・・条件だよ。」
クロウ「条件?」
ラルド「そう。ヒスイの居場所を教えてあげてもいいけど、条件がある。それは・・・。」
 ラルドは緑色のビーダマンを取り出す。
ラルド「この、エメラルドガンナーと勝負してほしいんだ!」
セシル「(このビーダマン・・・スパイラルビーストに似てる!?)」
クロウ「(前に、ジュウが言ってた奴か。)」
 いつまでたってもビーダマンを取り出さないクロウにちょっといらいらするラルド。
ラルド「どうしたの?やらないの?」
クロウ「なぜ、バトルを求める?何か目的があるのか?」
ラルド「別に。ただ楽しいからさ。だけど、僕はずっと一人で・・・だから、こうやって条件をつけてバトルを楽しんでるんだよ。」
クロウ「・・・いいだろう。」
 デスサイズを取り出す。
クロウ「勝負方法はなんだ?デスマッチでいいのか?」
ラルド「僕を傷つけたら、君たちが損をするだろ?だから・・・ターゲットバグシューティングでどうかな?」
 ラルドはどこに隠し持っていたのか、大量のターゲットバグを取り出し、稼動させる。
ラルド「お互い、10個。先に相手のターゲットバグを停止させたほうの勝ちだ。」
クロウ「分かった。」
 お互い、ルールの確認は出来た。
 そして、ビーダマンを構える。準備はOKだ。
セシル「それじゃいくわよ・・!ビーファイア!」
ラルド「エメラルドガンナー!ハーフスプリング挿入!」
 いきなり、トリガー部に何かを挿入した。
クロウ「なに!?」
 そして、信じられないくらいの連射を放った。
クロウ「ば、ばかな!」
 クロウは咄嗟に地面を撃ち、砂埃を巻き上げ、それを防御する。
ラルド「パワー型か。」
クロウ「それはどうかな?」
ラルド「え?」
 ドンッ!!
 パワーダブルバーストを放つクロウ。
ラルド「ダブルバースト・・・!でも、狙いがずれてるよ!」
 ガッ!
 そのショットはターゲットバグにはぶつからず、地面にぶつかる。
 そのとき、二つのビー玉がぶつかり・・・!
 カンッ!!
 はじけ飛んで、バグを二つ撃破した。
ラルド「い、イングリッシュ!?」
クロウ「はぁ!」
 ギャギャギャ!!
 今度は、ビー玉が弧を描きながらバグを次々となぎ倒していく。
ラルド「変化球・・・!」
 早くも、ラルドのバグは残り2個になってしまった。
ラルド「なるほど・・・。パワーリングによる威力だけでなく、二点射、イングリッシュ、変化球とさまざまな特殊能力を使いこなす・・・。まさにパーフェクト型。」
クロウ「このまま、決めるぞ。」
ラルド「望むところさ!」
・・・・。
・・・・。
 そして、バトルの決着がついた。
ラルド「負けた・・・。」
クロウ「当然だな。」
ラルド「でも、楽しかったよ。ありがとう。約束どおり、ヒスイのいるところまで、案内してあげるよ。」
クロウ「・・・。」
 こうして、一応ヒスイの手がかりらしきものをつかむことが出来たクロウとセシル。
 しかし、それは完全に信用できるというものではない。
 この先・・・何が待ち構えているのか・・・!

        つづく
 次回予告
クロウ「ラルドの案内の元、俺たちはとある町へとたどり着いた。」
セシル「た、大変!その町で、女の子が襲われてる!」
クロウ「な・・・!奴は・・!」
セシル「え、まさか・・・。」
クロウ「次回!『歪んだ憎しみ』極めろ、強さへの道!」


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爆・爆ストーリー ZERO 第47話

第47話「荒れ狂う海を飛ぶ神鳥」

ツバサ&ジョー「ビー、ファイア!!」
 ついに切って落とされた戦いの火蓋。果たして、勝つのは・・・!
ジョー「はぁ!!」
 先手を撃ったのはジョーだ。
 正確なパワーショットがツバサを襲う。
ツバサ「うっ!相変わらずのパワー&コントロール型か・・・!」
 ジョーのウェイブアビスは、見たところロングコアのようだ。
 長く伸びたコアの先に、なにやらパーツがついているが・・・。(コア前方のホールドが、コバセイFみたく開いていると思ってください)
ツバサ「(ただ、あの形状・・・内部のホールドパーツは、デルタ、ローラー・・・いろいろ互換性があるみたいだね。その代わり、バレルの互換がないのが気になるけど・・・。)」
 ツバサも反撃する。
 パワーではセイクリッドの方が上。ジョーのショットを全て弾き飛ばす。
ジョー「!?」
ツバサ「無駄だよ。汚れた君に、聖なる翼を落とせはしない!」
ジョー「・・・荒波の上を自由に飛んでいられると思うのか?」
ツバサ「なに・・・!」
ジョー「はぁ!」
 ジョーのショット。それはツバサの横をすりぬけ、後ろの建物へ。
ツバサ「っ!」
 建物の一部を破壊し、それがツバサの肩に・・・!
ツバサ「ぐっ!」
ジョー「海っていうのは、何が起こるのか分からないんだぜ。」
ツバサ「き・・・君は・・・本当にマーダビィとやらに・・・支配されたみたいだね・・・。」
ジョー「今更何を言って・・・!」
ツバサ「前の君なら、そんな卑怯な事は絶対にしなかった・・・!」
ジョー「戯言を・・!」
 弱ったツバサへ強力なシメ撃ちを放つ。
 それはさっきダメージを受けたツバサの肩へ。
ツバサ「があぁ!・・・これで・・・ふっきれた・・・君を倒す・・・友としてではなく、敵として!」
ジョー「ほんとうに今更だな!」
 再び襲い来るジョーのショット。それをすんでのところでかわし、体制を立て直す。
ツバサ「うおおおおお!!!」
 ツバサは気合で痛みに耐え、全てのパワーを出し、シメ、連射、装填をこなす。
ジョー「なに!?」
 ジョー向かってくるビー玉の嵐。
ジョー「くそっ!」
 迎え撃つために連射するジョー。
ツバサ「今だ二人とも!」
 クロウとセシルに叫ぶツバサ。
セシル「え?」
ツバサ「今のうちに・・・行って!」
セシル「でも・・・。」
ツバサ「早く!さすがに・・・長持ち出来そうにない・・・だから!」
 苦痛の表情のツバサ。それを悟ったクロウは。
クロウ「いくぞ。」
セシル「だけど・・・。」
クロウ「お前は全てを失いたいのか!?ヒスイも・・・ツバサの思いも、全部!」
セシル「・・・・・分かった。」
 駆け出すクロウとセシル。
ジョー「まちやがれぇ!!」
ツバサ「おっと、君の相手は僕だよ!」
 撃ちあいをしているので、ジョーは身動き出来ない。
ジョー「ちぃぃ!!」
 ここで、ジョーは撃つのをやめた。
 2、3発ほど腹部に衝撃をうけたが、それに耐えその場を離れる。
 そして、動きながらツバサの横腹へビー玉を放つ。
ツバサ「うっ!」
 それは見事命中。
ツバサ「さ、さすがコントロール型・・・!だけど!」
 セイクリッドウィングが前方に出る。
ツバサ「コントロールなら、僕だって!セイントブリーズ!!」
 必殺のセイントブリーズ。
 前方に出たウィングがサイトがわりになり、遠慮なくシメうちができるのだ。
ジョー「ぐわああ!」
 それはジョーに命中。2Mほど吹っ飛ばされ、建物に激突。
ジョー「や、やるな・・・!」
ツバサ「言っただろう。敵として戦うと。容赦はしない。絶対に!」
 一方、ツバサに逃がされたクロウ達は、町の人の証言により、ヒスイらしき人物が北へ向かったと言う情報を得て、とりあえず北へ向かっている。
セシル「会えるかな・・・・。」
クロウ「さぁな。だが、だいぶ時間をとられたものの、まだそう遠くへは行ってない筈だ。」
セシル「うん・・・。」
クロウ「信じるんだ。それしかない、今の俺たちには。」
セシル「・・・・うん。」
ジョー「そろそろ、俺も本気で行くか・・・!」
ツバサ「なに!?」
 ウェイブアビスのコアのパーツが閉じていく・・・。それはさながらコバセイファイヤーのレベル2のように。
 そのパーツは、コア前方で固定され、ホールドパーツのようになった。
ツバサ「それは、一体・・・!」
ジョー「いくぜ!」
 ジャキッ!
 前方からビー玉を装填するジョー。
ジョー「ファングバースト!!」
 ドゴオオオオ!!!
 ウェイブアビスから強力なダブルバーストが発射される。
ツバサ「なに・・・!」
 バーンッ!!
 その威力に吹き飛ばされるツバサ。
ツバサ「なんだ、今のは・・・前のダブルバーストは、一発一発の玉の威力は落ちていたはずなのに・・・今のは二つともパワーが伝わっていた。」
ジョー「前方の、ビー玉を固定するパーツも、ホールドパーツの役目をするんだよ。これで、パワーダブルバーストが可能になった!」
ツバサ「ぐっ・・・!」
 もういちど、ファングバーストを放つジョー。
ツバサ「ぐああああ!!!」
 そのスピードに成すすべなくヒットする。
ツバサ「は・・・あ・・・・。」
 心身ともにボロボロ。すでに限界に近かった。
ジョー「お前が力尽きればその魂をもらえる。さぁ、後少しだ!」
 一気に畳みかけるように連射する。
ツバサ「あああああ!!!」
 その全てを体にうけるツバサ。どんどん傷ついていく。
ジョー「そろそろか。」
 あまりの衝撃で砂煙が巻き起こった。
 その先にシルエットが見える。
ジョー「!?」
ツバサ「はぁ・・・はぁ・・・!」
 ツバサは立っていた。傷つきながらも、じっとジョーを見据えている。
ジョー「馬鹿な!?」
ツバサ「ふっ。」
 笑った。この圧倒的不利で、絶望的な状況にもかかわらず、ツバサは笑ったのだ。
ジョー「なぜ笑う・・・!」
ツバサ「楽しいからさ。バトルをする事が、ビー玉を撃つ事が!一発一発のショットに、自分の魂を込める事が、たまらなく楽しいんだぁ!!」
 ツバサのその叫び。その気合で、気流が変わる。
 いや、変わったように見えただけなのかもしれない、。それほど、すさまじい精神パワーを見せつけたのだ。
ジョー「な・・・!」
 所詮呪縛を受けた操る人形であるビーダーはその不可解なパワーにたじろいでしまう。
ツバサ「君は敵だ。絶対に容赦はしない。・・・だけど、バトルをするからには、絶対に楽しんでやる!やっぱり、この感情は隠しきれないよ!」
ジョー「敵と戦うのが・・・楽しいのか!?」
ツバサ「いや、悲しいよ。君と敵として戦う事は。だけど、それと同じくらい楽しいんだ!バトルが出来ると言う現実が!」
 ドンッ!!
 ジョーに懇親のシメ撃ちを放つ。
ジョー「不可解だ!」
 それをとめるジョー。
ツバサ「やるじゃないか!」
ジョー「っ・・・!余裕だな!」
ツバサ「余裕なんかないよ。現に、さっきのショットは僕の全てを込めたショットだ。それをとめられたのは、君が心の奥ではバトルを楽しんでいるから。楽しいバトルを求めているからだ!」
 ドンッ!!
 今度はジョーが撃つ。
ジョー「だまれぇ!俺は、マーダビィ様の忠実なる僕!そんなくだらない感情なんかに支配されるか!!」
 カンッ!!
 それを止めるツバサ。
ツバサ「そのくだらない感情に僕が支配させてくれたのは、君のおかげじゃないか!」
 ドンッ!!
 ツバサのショット。
ジョー「言うな!」
 カンッ!
 止める。
ジョー「今の俺にそんな記憶はない!俺にあるのは、マーダビィ様への忠誠心だけだ!」
 ドンッ!
 ジョーのショット。
ツバサ「だったら思いださせてあげる!君が僕に教えてくれた事を!そして、君が僕から学んだ事を!」
 カンッ!
 止める。
 お互い、パワーショットの撃ち合いになっている。小細工のない真正面からのぶつかりあい。
 ツバサはそれを楽しんだ。
 楽しむ事が、強さなのだと知っているから。
 だが、今のジョーはそれを知らない。
 楽しむ事が苦悩になっている。
 それでも、ツバサは楽しませた。その苦悩をジョー自身が乗り越えるときが来るまで。
ジョー「あああああ!!!なんだ・・この感情は・・・!!」
 頭を抱え、苦しみだすジョー。
 その手はビーダマンを手放していた。
ジョー「うう・・・ぐぐ・・・!!」
 きっと、ジョーは苦しんではいない。
 きっと、今のジョーは心地よい感覚に包まれているはずだ。
 だが、ジョーにとってはそれこそが不可解で、不可解な事こそが最大の苦悩になっている。
ジョー「分からない・・・・分からない・・・!」
ツバサ「ジョー・・・。」
 ツバサはジョーに近づき、手を差し伸べようと・・・。
 パシッ!
ツバサ「え。」
 ツバサの手はジョーにはじかれる。そして、ジョーは再びウェイブアビスを構える。
ジョー「お前を倒す!それが、俺の目的!くだらない感情など知らない!」
ツバサ「っ!?」
 ジョーのビーダマンはツバサのすぐ目の前で火を吹いた。
ツバサ「うわああああ!!!」
 ドサッ!
 そのショットに、成す術も無く吹っ飛ばされるツバサ。
 バラバラに分解するセイクリッドガルダ。
ツバサ「うぅ・・・。」
 仰向けに倒れる。起き上がれない。
 腰を強く打ったわけではない。ダメージ的な問題でもない。
 だが、足が動かない。
 動かすことが出来ない・・・なぜなら。
ツバサ「あ、あぁ・・・!」
 ツバサは恐怖した。自分の足に。
 そう、ツバサは足からどんどん石化していっているのだ。動かせるはずがない。
ツバサ「うぅ・・・!」
 徐々になくなっていく体の感覚。これが、死と言うものなのか?
ジョー「・・・・。」
 ジョーはゆっくりツバサに近づく。
ジョー「これでも、楽しいのか?」
ツバサ「・・・・。」
 ツバサはゆっくり首を振る。
ツバサ「・・・悔しい・・かな。」
ジョー「・・・・。」
ツバサ「だけど、この悔しさはきっと、僕を強くしてくれる。そしたら、もっともっと、楽しめるはずだから・・・・だから・・・・。」
ジョー「・・・・。」
ツバサ「また、バトルしよう。ジョー。」
ジョー「!?」
 ツバサの最後の言葉。石化はすでに首筋まできていた。
ジョー「な...何を言って・・!」
ツバサ「だって、負けて悔しいけど、それまでは楽しかったから・・・・必死で勝とうと思って、それが楽しかったから。勝とうとする事を楽しむことが、バトルだろ。」
 それは、かつて、己自身が出した答え。
 こんな状況においてもまだ、それを信じて。
ジョー「ツバサ・・・!」
 呼びかけた。もう、返事は返ってこない。ツバサは完全に魂を抜かれ、石になってしまった。
ジョー「・・・・・。」
 その瞬間、ジョーの額に開いていた目はゆっくりと閉じた。
ジョー「俺は・・・なんて事を・・・!」
 石化したツバサを抱え、叫ぶジョー。
ジョー「おい!嘘だろ!目を、目を覚ませよ!何負けてんだよお前!こんなの、こんなの勝ちじゃねぇよ!」
 ジョーの叫びもむなしく、石化したツバサの耳には届くはずがない。
ジョー「こんなのって、ありかよ・・・!せっかく、再会できたのに、バトルできずに逝っちまうなんて・・・!俺はどうすればいいんだ!お前とバトルする事も出来ないで!その責任は全て俺にあって・・・俺は誰に、何にこの想いをぶつければいいんだぁ!!!!」
 ザッザッ!
 足音が、聞こえた。
ジョー「!?」
 気がつくと、ジョーの周りにメガディアブロスの量産機を持った大量のサイボーグ達が・・・。
ジョー「貴様ら・・・!」
 それは、マーダビィの造りだした僕。憎き、マーダビィの・・・。
ジョー「ゆるさねぇ・・!お前だけは!うおおおおおお!!!!」
 ビーダマンを掲げ、咆哮。
 そして、サイボーグ軍団へ突っ込んで行く。絶対に勝ち目がないと分かっていながら。
ジョー「うおおおおお!!!」
 その目に涙を浮かべながら走り続けるジョー。浮かんでくるのは、ツバサとバトルした、あの最高の日だけ・・・!
 “このバトル・・・思いっきり楽しもうぜ!”
 “ああ!・・・でも!”
 “勝つのは(ジョー)俺だ!(ツバサ)僕だ!”
 “いくぜ!ファングバースト!”
 “パワーウィングモード!”
 “行くぜ!ウェイブギル!”
 “セイクリッドホーク!!”
ジョー「くっそおおおおおお!!!」
 あの日はもう戻る事はない。そして、これからもあの眩しさを手に入れる事は出来ないのだ。
 誰も責める事は出来ない。その元凶は自分なのだから。
 だからこそ、この耐えがたい怒りをかかえている。
 だからこそ、ジョーは勝ち目のない戦いを挑んでいる。
ジョー「ウェイブアビス!!!(一部声が裏返る)」
 しかし、サイボーグ達は無情にメガディアブロスの標準をジョーへ向け・・・。
ビーグ「ギギ・・!」
 ズドドドドドドドド!!!!!
 超速連射を放った。
ジョー「ぐわあああああああ!!!!!」
 耐え切れず、崩れていくジョー。
 体が、石化していく。
ジョー「(ツバサ・・・もうすぐ俺も、そっちへ逝けるぜ・・・。そしたらまた、バトルしような・・・・。)」
 薄れていく意識の中で、ジョーの願った事は、ただそれだけだった。
 ジョーは石化したツバサと寄りそうように倒れ、そして完全に石化してしまった。
 メガディアブロスの放ったショットはあまりに強力で、ビー玉が砕けてしまうほど。
 そのビー玉の破片が、光り輝き、二人の上に降り注ぐ。
 まるで、世界が、二人の死を祝福するかのように・・・。
             つづく


 次回予告

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爆・爆ストーリー ZERO 第46話

第46話「謎の失踪 本当のはじまり」
 ヒスイとの戦いが終わり、クロウ達は宿舎に戻った。
 最初は気まずい空気が流れていたのだが、それは今まで一緒に旅をしてきた友。
 夕食の時間になる頃には、さっきの事はすでに水に流し、和やかなときをすごしていた。

 そして、三人は就寝までくつろいでいる。
ヒスイ「クロウ、デスサイズを貸してください。あれだけのバトルをした後ですし、だいぶ消耗してるはずです。」
クロウ「あぁ。」
 ヒスイにデスサイズを預けるクロウ。
ヒスイ「(ふっ。)」
 一瞬、口元がつり上がるが、クロウはそれに気づかない。
 そして、なにやら作業を始めるヒスイ。
ヒスイ「(・・・もう十分だな。)」
 手をとめる。
ヒスイ「はい、これでデスサイズは完璧です!」
クロウ「ああ。すまないな。」
ヒスイ「いえいえ。このくらいお安い御用ですよ。」
クロウ「ん・・?」
 クロウはデスサイズの腕にリングがはめられていることに気づいた。
ヒスイ「あ、ちょっと改良して、ZERO2化しておきました。これで互換性はあがりますよ。」
クロウ「そうか。」
ヒスイ「いやぁ、こういう細かい改良って楽しいですね。」
 楽しいらしい。それでさっき笑ってたのか。

 そして翌日。
 クロウらはまだゴルドンに滞在するらしく。町を散策していた。
 映画館にいったり、レストランにいったり・・・一般の友人たちがするようなそんな娯楽を一通り楽しんでいた。
 あるいは、確かめたかったのかもしれない。お互いの絆を。
 あんなことがあった後だ。そんな簡単に絆が戻るわけが無い。今はまだ、表面を繕ってるだけだ。
 だけど、こうやって・・・少しずつ、隔たりをなくして行けば良い。

セシル「あ~楽しかった~!」
 映画館から出て、大きく伸びをする。
セシル「そういえば、午後はツバサも合流するんでしょ?」
ヒスイ「ええ。この町にあるBコロシアムに案内してくれるそうですね。」
セシル「楽しみだね~!」
 その中で一番楽しそうにしているのはセシルだった。
 いや、単に虚勢を張っているだけかもしれない。
 不安で仕方が無い。今の状況が。いつ、崩れるかもしれないこの状態が。
 それを少しでもごまかしているのだ。

ツバサ「やぁ、みんな!」
 午後になり、ツバサと合流する。
ツバサ「ゴルドンにあるBコロシアムはすごいよ!設備はいいし。最新の競技はすぐ入ってくるし。」
 との事なので、皆コロシアムへ向かった。

 ツバサの言うとおり、コロシアム内は今までに見た事がないほどのいい設備がそろっており、最新のアルティメットシューティングもある
セシル「うわぁ!これってもしかしてアルティメットシューティング!?」
クロウ「鋼の砦で見て以来だな。」
ツバサ「うん、今一番人気の競技だよ。」
セシル「あの時は、ヒスイしかプレイしなかったけど、結構面白そうだったよね~!」
 と言うわけで並ぶ。
 しかし、かなりの行列が・・・!
ヒスイ「す、すごい人ですね。」
ツバサ「一番人気だからね。」
 列のそばには看板が置かれており『1時間待ち』と書かれていた。
セシル「い、1時間も待つの・・・(汗)」
ツバサ「人気競技だから仕方ないよ。」
クロウ「別の競技にするか。」
 しかし、クロウらの後にもどんどん人が並んでくる。ここで抜けるのは、なんか損した気分だ。
 仕方なく待つ事にする。
 そして1時間後・・・。

セシル「いくわよぉ~!」
 プレイしているのはセシルだ。ホーネットの命中精度を生かし、どんどんターゲットを撃破していく。
 ピー!
 結果が出てきた。得点は22点。
セシル「う~ん、意外と難しいかも。」
ツバサ「これは移動型ターゲットだから、固定型ターゲットを狙うのに有利なコントロール型には、逆に不利かもね。」
セシル「確かに。ちょっとやりにくかったかも。」

 その後もいろいろな競技をプレイし、楽しい一時を過ごすクロウたち。
 たまにはこういう日もいいかもしれない。戦いを忘れ、息抜きをする事も必要だ。

ツバサ「ふぅ、そろそろ帰ろうか?」
 少し日が傾いてきた頃、ツバサがそう提案する。
 結構遊びつかれてきたし、クロウたちも異存はなかった。
 と、そのとき・・・!
???「ううおおおお!!バトルの匂いはここかぁ!!」
 と、いきなり勢い良くコロシアムの中に突入してくる輩が・・・!
ツバサ「あ!」
 ツバサが反応する。
 その輩とは・・・!
ツバサ「ジョー!」
ジョー「んは?」
 ジョーもツバサに気づく。
ジョー「おぉ!ツバサ!久しぶりだな!!」
ツバサ「ど、どうして、ここへ?」
ジョー「どうしてもこうしてもあるか!お前が釈放されたって聞いて、真っ先に飛んできたんだよ!・・・・ちっと迷ったりもしたが。」
 見ると、ジョーの体はボロボロだった。・・・ジャングルの中にでも彷徨っていたのか?と思わせるほどに
ジョー「んな事より、バトルだぜ!久しぶりに!」
ツバサ「うん!」
 と、叫ぶなり、ジョーはゆっくり倒れた。
ジョー「きゅ~!」
ツバサ「ジョー!?」
ヒスイ「ど、どうしたんですか!?」
ジョー「は・・・はらへった・・・。」
セシル「は、ははは。」
 そんなジョーにツバサは笑みをこぼし。
ツバサ「じゃぁ、今夜は僕の家に泊まっていきなよ。僕も、ちょっと疲れてたし。バトルは明日にしよう。」
ジョー「お~・・・ナイスな提案、感謝だぜ・・・。」
 そうつぶやいて、ぱたりと意識を失うジョー。
ツバサ「ははは・・。じゃぁ、今日はこれで。」
ヒスイ「ええ。」
 そして、クロウ達は宿舎へと戻った。
ヒスイ「ジョーも、相変わらずでしたね。」
セシル「ほんとほんと、暑苦しいって言うか。」
ヒスイ「そういえば、ジョーとツバサっていつの間に仲直りしたんでしょうね?仲悪かったのに。」
クロウ「まぁ、いろいろあったんだろう。」
 さして興味の無い様子のクロウ。
ヒスイ「ふぅ・・・ほんと、久しぶりに楽しく過ごせましたね。」
セシル「うん、いろいろあったからね・・・。」
 今まであった事を振り返り、過去をいとおしんでいる。
セシル「でもまだ、続くんだよね?私たちの旅。」
ヒスイ「え?」
セシル「今までもいろいろあったんだけど、これからも、いろいろ・・・あるんだよね?」
 少し、おびえているようにも感じられるその問い。何かを確かめるようにセシルはつぶやく。
ヒスイ「・・・もちろん・・・ですよ。」
クロウ「当然だ。お前を失うわけにはいかないからな。俺が生き続ける限りな。」
 相変わらずセシルは金づるって考えを捨てていないクロウ。まぁ、確かにセシル失ったら食ってけ無いけど。
セシル「そ、そうよね。・・・ごめん、変な事言っちゃって。」
ヒスイ「・・・。」
 そして、時間はあっという間に過ぎ、就寝時間となる。
 ・・・。
 ・・・・。
 ・・・・。
 翌日。
クロウ「ん・・・。」
 クロウはゆっくり目覚める。
 そして、気づいた。隣に・・・ヒスイがいないと言う事に。
クロウ「なに!?」
 バッとヒスイの布団を引っぺがす。確かに誰もいなかった。
 いやな予感がする。
 ただ単に早く起きて部屋から出て言っただけなのかもしれない。
 だけど、そのいやな予感は・・・。
 と、ここで、布団の下になにやら紙切れが一枚置いてあった。
クロウ「これは・・・。」
 そこには丁寧な文字で一言。
 『探さないでください』
 とだけ書いてあった。
クロウ「・・・っ!」
 クロウは急いで部屋を出る。
 そして、セシルを呼び出した。
セシル「なぁにぃ・・・?」
 眠い目をこすりながら現れるセシル。それに、ヒスイが残した置手紙を見せる。
セシル「な、なにこれ!?」
クロウ「分からん。だが、ヒスイは俺たちの前から姿を消した・・・それだけは事実だ。」
セシル「そんな・・・!」
 がくっとひざを突く。
 ずっと不安に思ってきて、でも絶対ありえないと思っていたことが、現実に起きてしまった。
 そのショックでセシルは呆然とする。
セシル「なんで・・・・だって・・・これからもずっと・・・一緒に旅が出来るって・・・。」
クロウ「おい、しっかりしろ。」
 セシルの肩をゆする。
セシル「なんで・・・なんでよ・・・。」
クロウ「おい!」
 大声を出す。正気に戻るセシル。
セシル「クロウ・・・ヒスイは・・・・。」
クロウ「落ち着け。・・・・あいつは、俺たちにとってかけがえの無い仲間だ。それは、確かだな?」
セシル「う、うん。もちろん!」
クロウ「だったら、俺たちがやるべき事は一つだ。分かってるだろう?」
セシル「・・・うん。」
クロウ「どんな理由があるにせよ。このまま黙っているわけにもいかない。いくぞ。支度しろ。まだ遠くへは行っていないはずだ。」
 支度し、外へ出るクロウたち。
 そこで、バッタリツバサとジョーと出会った。
ツバサ「やぁ。」
クロウ「お前ら・・・。」
ジョー「これから、ツバサとBコロシアムいくんだけど、お前らも来るか?」
クロウ「いや、俺達は・・。」
ツバサ「??何かあったのかい?」
 ただならぬ様子に気づいたツバサ。
 クロウは、置手紙を見せ、ヒスイがいなくなった事を説明した。
ツバサ「そっか・・・。分かった。僕達も協力するよ。」
ジョー「・・・・。」
クロウ「すまないな。」
ツバサ「いや、彼にはいろいろと借りがあるし・・・。行こう、ジョー!」
ジョー「・・・・待て。」
 いきなり、ジョーの口調が変わった。
ツバサ「え?」
ジョー「このまま、お前らを生かす訳には行かねぇ。」
ツバサ「??」
セシル「なんなの?」
 ゆっくり顔を上げるジョー。
 そして、額から第三の目が開いた。
ツバサ「こ、これは?!」
クロウ「あ、アババの呪縛!?」
ジョー「アババ・・・それは違う。俺はネオシャドウの一員。マーダビィ様の忠実なるしもべだ。」
ツバサ「ネオシャドウ・・マーダビィ?」
クロウ「なんだって違わない。操られていると言う事には。」
 チャキ・・・!
 ゆっくりビーダマンを取り出すジョー。
ジョー「ウェイブアビス・・・!」
ツバサ「新型ビーダマン!?」
ジョー「奴らを食いちぎれ!」
 ドンッ!!
 ウェイブアビスから放たれる強力な玉。
クロウ「くっ!」
 それを交す三人。
ツバサ「そんなっ!せっかく再開できたのに。こんな形で戦うことになるなんて・・・!」
ジョー「お前の想いなんか知るか。俺はマーダビィ様に従うだけだ。」
ツバサ「くっ!」
セシル「な、なんで次から次へと!こっちはそれどころじゃないのに・・!」
ツバサ「君たちは行って!彼を探すんだ!」
ジョー「ふん。」
 ドンッ!
 クロウとセシルに向かって撃つ。
クロウ「どうやら、そう簡単には行かせてもらえないようだな。」
 戦闘態勢に入るクロウ。
ツバサ「ダメだ!君たちはこんなところで足踏みをしている場合じゃない!」
セシル「でも・・・!」
ツバサ「ここは僕が食い止めるから、なんとか隙を作るから!その間に・・・!」
クロウ「・・・・分かった。」
セシル「ごめん!」
 ジョーをにらむツバサ。
ツバサ「君は・・・僕の目を覚まさせてくれた。今度は、僕の番だ!」
ジョー「お前の想いなんか知らないと言っただろう。バトルだ。」
ツバサ「ああ!」
ツバサ&ジョー「ビー、ファイア!!」
 再び、あいまみえる事になったツバサとジョー。
 しかし、それは望みもしないバトルだった。
 果たして勝つのは。汚れを落とした聖なる翼か!?はたまた、マーダビィに汚された荒れ狂う波か!?

           つづく
 次回予告
クロウ「ヒスイは、俺たちの前から消えてしまった。何も言わず。ただ、そっけない置手紙を残して。俺達は本当に仲間だったのか?あいつは、一体何を思って・・・。そんな時、ネオシャドウに操られたジョーが俺達の想いに関係なく襲い掛かる。」
ツバサ「ジョー!君は絶対に僕が倒す!あの時の決着をつけるために!」
ジョー「無駄だ。お前じゃ俺には勝てねぇよ!いけっ!ウェイブアビス!!」
ツバサ「次回!『荒れ狂う海を飛ぶ神鳥』」
クロウ「極めろ、強さへの道!」

 

 

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爆・爆ストーリー ZERO 第45話

第45話「過去を超えた戦い」
クロウ「ようやく本気か・・・。」
ヒスイ「絶対に、お前を倒す!」
 リバースハンドミッションに組み替えたヒスイ。
 間髪いれずに連射。怒涛のビー玉の嵐が襲い掛かる。
 クロウはそれを横にかわし、近くにあるビルに身を隠す。
 ヒスイは躊躇せず走り出し、クロウが隠れている陰に向かった。
 しかし、そこにクロウはいない。身を潜めたのではなく、そのまま走って行ったのだ。
ヒスイ「くっ!」
 見ると、クロウはすでに射程外まで離れていた。
ヒスイ「逃がすか!」
 シールドを付け替える。これにより射程範囲を広げられる。
ヒスイ「食らえ!」
 ドンッ!!
 狙いを定めた締め撃ち。まっすぐクロウの背中へ飛んでいく。
 しかし、クロウは振り返ろうとしない。
 諦めたのか?
 確かに、いまさら立ち止まって振り返ったところで、その飛んできた玉を撃ち落すことは不可能だろう。
 だったら、背中を見せたままでも、なるべくスピードを落とさずに走る事で受けるダメージを和らげようとしているのか。
 いや、違った。クロウは走りながらビーダマンを横に向け、壁にむかって発射。それも一発だけでなく、何度も何度も。
 キュンッ!キュンッ!!
 その玉は跳ね返り、クロウの後ろを通る。
 カキンッ!
 ついに、クロウのイングリッシュボールがヒスイのショットを止めた。
ヒスイ「!?」
 ここで、足をとめ、振り返る。
 ヒスイも射程内までやってくる。
クロウ「はぁ!」
ヒスイ「はぁ!」
 今度は駆け引き無しの直球勝負だ。
 クロウのパワーダブルバーストとヒスイの超速連射が激突する。
 カンッ!カンッ!!
 お互い、わざとはずして相手を狙おうと言う考えはなく。あくまでパワーと連射の総合力を競っている。
クロウ「はぁ!!」
 ドンッ!!
 ここで、クロウが上空へ向かって強力なドライブショットを一発だけ放つ。
ヒスイ「?」
 そして、そのドライブショットは上昇の頂点を過ぎ、重力の法則で自由落下する。
 その落下して来た玉がクロウの目の前を過ぎた瞬間、クロウはその玉目掛けてドライブショットを放つ。
 カンッ!!
 接触する二つのドライブショット。その瞬間、ものすごい勢いでぶつかった玉がぶっ飛んで行く。
クロウ「リプルションブレイカー!!」
ヒスイ「なに!?」
 
 蛇足説明 リプルションブレイカーとは前方に対してゼロ速度で順回転しながら落下してくる玉を、通常のドライブショットでビリヤードのようにはじいてしまう技なんですが。原理としては、同じ質量のものがぶつかり合った場合、その運動エネルギーはぶつかったものに変換される。さらに、同じ方向へ順回転しているもの同士をぶつける事で、もともとの玉のスピードに回転の反動が+され、威力がますものです。
 そのクロウの必殺ショットはヒスイの連射をすべてはじいていく。
ヒスイ「バカな・・・!バカナァ!!!」
 バーンッ!!
 強烈なショットがヒットし、ヒスイは吹っ飛び仰向けになる。
クロウ「俺の勝ちだな。」
 ザッ・・・ザッ・・・!
 ゆっくりとクロウが歩いてくる。
ヒスイ「くそっ!」
 ダメージが大きすぎるせいか、すぐに立ち上がれない。
 そこへクロウがやってきて、ヒスイを見下ろし、顔面へ銃口を突きつける。
ヒスイ「くっ・・・!」
 観念するヒスイ。しかし、クロウは何故か撃たなかった。
クロウ「・・・・!」
 苦悩の表情。それはさっきまでのクロウからは感じられなかったものだ。
 明らかにためらっている。止めを刺す事を。手が、小刻みに震えていた。
クロウ「(どうしたんだ、俺は・・・。)」
 しかし、このチャンスを逃すほどヒスイは甘くなかった。
 バッ!!
 素早く身を翻し、立ち上がる。そして、その場を少しはなれて体制を立て直す。
ヒスイ「は・・・あ・・・!」
クロウ「・・・・。」
ヒスイ「お前も甘いな。」
クロウ「ちっ!」
 再びジェイドを構えなおす。
ヒスイ「俺はお前を倒すことに対して躊躇はしない!」
 カンッ!
 そこへ、どこからか飛んできた玉がジェイドにヒットする。その玉は非常に弱かったので動じる事はなかったが。
ヒスイ「なんだ?」
 ヒスイはその玉が飛んできたほうをにらみつけた。
セシル「い、いい加減にしてよ!もう争うのはやめて!」
ヒスイ「黙れ。お前には関係ない。」
クロウ「そうだ。これは俺達の問題だ。」
セシル「そうじゃなくて・・・!あなた達にどんな事情があろうと、私には関係ないし、それをどうこう言う資格はない。でも、こんな街中で戦ってるのを、黙って見てるわけには!」
 確かに、こんな街中でバトルされたら非常に迷惑だ。
ツバサ「だったら、ここは僕に任せてよ。」
 いきなり、唐突に。ツバサが現れた。
クロウ「お前・・・。」
ツバサ「こんな大騒ぎされたら。誰だって気になって見にくるよ。」
 ツバサの言うとおり、今まで気づかなかったが、まわりには大勢の人が集まっている。
ツバサ「また自警団沙汰になるまえに。ここは競技ルールは僕に任せたほうがいいと思うよ?」
ヒスイ「ルールによるな。」
ツバサ「大丈夫。だいたいの事情は分かったよ。・・・完璧に決着がつけられるようなルールにしてあげる。君が納得の行くようなね。ついてきて。」
 そして、ツバサは歩き出した。
 ツバサに連れられてやってきたのは、Bコロシアムのような施設だった。
 そこには、巨大な鉄球が二つ、吊らされていた。
ツバサ「あの鉄球は、下にあるロープを切る事で、落ちるんだ。」
クロウ「なるほど。二人とも鉄球の下に行き、先に相手側のロープを切ったほうの勝ちと言うことか。」
ツバサ「うん。」
セシル「だ、ダメよ!そんな危険なルール!」
 当然止めようとするのだが。
ヒスイ「ふん、面白そうだ。どの道、こいつは殺すつもりでいたんだからな。」
セシル「ヒスイ!」
 ヒスイとクロウはセシルの言葉を無視し、鉄球の下へ行く。
 ピッ!
 ツバサはいつの間にか手に持ったリモコンのスイッチを入れる。すると、何故かしたから牢屋らしきものが出てきて、クロウとヒスイを閉じ込める。
ツバサ「これで、お互い逃げる事は出来ない。ビー玉を発射するだけの隙間はあるから、そこから狙ってくれ。」
クロウ「ああ。分かった。」
セシル「な、なんでこんなルールにしたのよ!」
 今度はツバサに食って掛かる。
 そんなセシルに、ツバサは冷静に言葉を返す。
ツバサ「今、彼らを止める事は出来ないよ。どんなルールであれ、彼らは最後まで相手を傷つけなければ気がすまない。僕に出来るのは、いかにまわりに被害が出ないようにするかだけなんだ。」
セシル「でも・・・!」
ツバサ「大丈夫だよ。命にはかかわらないと思うから。」
セシル「え?」
 ツバサはセシルに耳打ちする。
セシル「な、なんだ・・・。よかった。」
 安堵のため息をつく。
セシル「でも、わざわざ二人のためにこんな用意したの?」
ツバサ「ううん。これはもともと別のバトルのために用意したんだ。・・・まだ、僕の翼が汚れていた頃のね。」
セシル「・・・・。」
クロウ「準備はいいぞ。始めてもいいか?」
ツバサ「え、あぁ。ごめんごめん!それじゃ、行くよ!ビー、ファイア!!」
 ツバサの合図とともにクロウとヒスイがビー玉を撃ち合う。
 パワーと連射の嵐が吹き荒れている。
ヒスイ「必ず、お前を殺す!あの苦しみを・・・虚無を!お前に味わわせてやる!」
クロウ「確かに、悪いのは俺だ。だが、俺はどんな事をしてでも生き続ける!それは理屈じゃない、本能だ!そして、このバトルをそのための糧にする!」
 バシュッ!!
 二人のショットは正確で、ロープにあと少しで当たるのだが、ことごとく止められてしまう。
ヒスイ「負けるわけには行かない!ここで負ける事は今までやってきた事の全てを否定する事になる!」
クロウ「それはお互い様だ!俺も、死ぬわけには行かない!」
ヒスイ「死ぬわけにはいかないだと・・・!お前のせいで、どれだけの人が傷ついてきたのか・・・それを分かって言っているのか!?」
クロウ「関係ないな。生き物は他の生き物の命を糧にして生きている。それと同じように、俺は生きていくために必要な強さを、他のビーダーを倒す事で得てきた。ただそれだけだ。お前のように、ただの感情で相手を殺すのとはわけが違う。」
ヒスイ「黙れ!お前の罪は許されない・・・!俺は許さない!屁理屈を並べるな!!」
 二人のショットは勢いを増していくばかりだ。
 なかなか決着がつきそうにない。
ヒスイ「ふっ、このスペースじゃ、あの技は使えないだろう。リバースハンドミッション!!」
 ヒスイは逆手にジェイドを持ち替える。
ヒスイ「この勝負!もらった!」
 必殺の連射で攻めるヒスイ。しかし・・。
クロウ「それはどうかな?」
 クロウは、まったく見当違いの方向へビー玉を放つ。
クロウ「お前がその技を出すのを待っていた。」
ヒスイ「まさか・・・しまった!」
 カンッ!!
 クロウが放った玉はイングリッシュボールで、壁にぶつかり、そのままロープへ向かう。
 しかし、リバースハンドミッションで手首に負担をかけているヒスイはすばやく反応することが出来なかった。
 ビシッ!!
 そのショットはロープを掠めた。が、その事でロープは徐々に切れていく。
ヒスイ「あ・・あ・・・!」
ツバサ「勝負あったね。この状態なら、ロープが切れるのは時間の問題。」
 どんどん細くなっていくロープ。
ヒスイ「そんな・・・そんな・・・・死ぬのか・・・俺が・・・この、俺が・・・・!」
クロウ「・・・・。」
 ブチッ!
 ついに、鉄球を支えていたロープが切れてしまった。
ヒスイ「うああああ!!」
 両手をかざし、しゃがむ。
 その瞬間・・・!
 バーンッ!!!
 すごい音がした。
 しかし、ヒスイは何の衝撃も感じなかった。それほどまでにあっさりと死んでしまったのだろうか。
ヒスイ「・・・。」
 目を開ける。体は別になんともない。その代わり、自分が入っている檻の外に、鉄球が落ちているのが目に入った。
ヒスイ「なに・・・?」
 クロウを見ると、ビーダマンを構えていた。もう撃つ必要はなかったはずなのに・・・。
 考えられる事はただ一つ。クロウが鉄球を撃ち、そらしたのだ。
ヒスイ「なぜ・・・助けたんだ?」
クロウ「・・・さぁな。ただ、俺は自分の本能に従っただけだ。それに俺の目的は、バトルに勝って強くなる事。そして、俺のとってのバトルは、ロープを切る事だけだからな。」
ヒスイ「・・・・。」
クロウ「正直に言えば、俺の中に生まれた甘さ。初めて芽生えた、人を求める心。それが、いつの間にか本能になっていた。俺の気づかないうちにな。全て、お前のせいだが。」
 そして、クロウはデスサイズを置いた。
クロウ「撃てよ。ロープを。」
ヒスイ「え。」
クロウ「俺のバトルは終わった。だが、お前は終わっていないだろう?お前のバトルは先にロープを切ることじゃない。俺を殺すことだ。」
ヒスイ「・・・・。」
クロウ「死にたくはないが、仕方がない。」
 クロウはヒスイを助けた事を後悔していない。ただ、自分の中に甘さが生まれた時点で、死を意味する。その事を認めた上での覚悟だった。
ヒスイ「・・・・。」
 ジェイドを構えるヒスイ。しかし、撃たない。
 ポツポツと。地面にしずくが落ちる。
セシル「ヒスイ・・・。」
 泣いているのだ。ヒスイが。涙を流し。
ヒスイ「僕も・・・出来ません・・・。だって・・・僕も楽しかったから!クロウと一緒に旅をするのが!クロウと一緒にバトルするのが!・・・だけど、だけどそれじゃあ意味がないから。恨みを晴らさなければ、一緒にいる意味はないから・・・!だから・・・だから・・・!!」
 ザッ!
 膝をつき、地面に手をつく。
ヒスイ「殺さなきゃ・・・・意味がないから・・・でも・・・でも、いつの間にか、ずっとこのままでいたいって思ってる自分がいて・・・どうすればいいのか、分からなくて・・・どう・・・すれば・・・!」
クロウ「・・・・。」
ヒスイ「憎かったのに!憎かったのに・・・!憎かった相手と一緒にいて楽しいって思うなんて・・・僕は・・・狂っています・・・!」
ツバサ「・・・。」
 ツバサは無言で、リモコンのスイッチを押す。
 すると、檻が下がっていく。
 クロウは、ゆっくりヒスイの元へ歩み、手を差し出す。
ヒスイ「・・・クロウ。」
 涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げるヒスイ。
クロウ「憎かったら、いつでも俺を殺せ。寝込みを襲おうが、病み上がりを襲おうが、どんな卑怯な手を使ってもかまわない。俺も、いつでも全力で迎え撃つ。だがその代わり、俺は、お前を利用する。生きるために必要だからな。」
ヒスイ「・・・・。」
 ヒスイは震える手でクロウの手を取った。
ヒスイ「ありがとう・・・クロウ・・。」
         つづく
 次回予告
ジョー「うおおおおお!!!次回はひっさびさに俺の出番だ!燃えるぜぇ!!!」
ツバサ「久しぶりだね、ジョー!君とまた戦えるのを楽しみにしてたよ!僕の磨きをかけた聖なる翼を見せてあげるよ!」
ジョー「俺だって!あのつらく厳しい修行(?)の成果を見せてやる!!」
ツバサ「次回!『謎の失踪 本当のはじまり』」
ジョー「ってあれ?サブタイと俺ら関係ねぇじゃん!」

 

 

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