第48話「緑色の尋ね人」
ツバサを置いてヒスイを捜索するために町をでたクロウとセシル。
セシル「大丈夫かな、ツバサ・・・。」
クロウ「あいつは弱い男じゃない。そうじゃなければ、あそこであの判断はできなかったはずだ。」
セシル「それは、そうだけど。」
マーダビィに操られたジョーからクロウ達をかばうため一人ジョーと戦うことになった。
それに対して責任を感じるのは人間として当然の感情。
しかし、それゆえにその行為を無下に扱っては本末転倒だ。
クロウはそれを知っているからあえて気にしないようにしている。しかし、セシルはそこまで強くない。
セシル「よかったのかな?あのままツバサを置いていって。」
クロウ「今更何を心配している?余計な事は考えるな。それが、ツバサのためでもある。」
セシル「分かってる・・・分かってるけど・・・。」
何度も、何度も後ろを振り返る。
明らかな迷い。自分の決断に迷いを生じさせることは、はなっから過ちということだ。
だからこそ、クロウは
クロウ「いい加減にしろ!」
そう怒鳴った。
セシル「え?」
クロウ「お前は、非力だ。」
いきなり、そんな事を言われた。
セシル「!?」
驚くセシル。しかし、それは自分でも分かっていたこと。だから、反論できない。
クロウ「そんな非力なお前が今ツバサの心配をして何になる?あそこでツバサと共に戦って何が変わる?」
セシル「・・・・。」
クロウ「だけど、そんな非力なお前でもヒスイを探すということはできる。だからこそツバサはお前にそれをさせようとした!自分の仕事を放棄するような真似はするな!」
クロウの叱責。その言葉にセシルの中で何かが変わった。
セシル「・・・分かったわ。私は、私の出来る事をする。出来もしないくせに、自分が出来ないことをしてくれている人の心配をして自分が出来ることを疎かにするなんてできない。」
セシルはまっすぐ前を向いた。もうそこに迷いは無い。
それを感じたクロウはそれ以上何も言うことは無く、二人はただひたすら前へと進んでいった。
しばらく進んでいくと、小さな町が見えてきた。
他にあてがあるわけではない。
クロウ達はそこへ入り、聞き込みすることにした。
おばはん「う~ん、見かけないねぇ・・・。」
セシル「そうですか・・。どうも、すみません。ありがとうございました。」
じじい「見とらんぞ。」
クロウ「そうか。」
ガキ「見ないじょー!」
セシル「そう・・・。」
町へ入り、何人もの人に「小柄で翡翠色の短髪をして、白衣を着た少年」を見なかったかと聞いたのだが、いまだ証言は得られない。
少年「う~ん・・・しらねぇな。」
クロウ「そうか・・・。」
これで13人目。同じ答えを聞いたのは。
セシル「また、手がかりなし・・・。ヒスイ、どこ言っちゃったんだろう?」
少年「ヒスイだと・・!」
少年は、セシルの言葉に過剰に反応した。
セシル「え?」
少年「貴様ら!ヒスイの仲間かぁ!!」
クロウ「それがどうした?」
ドンッ!!
いきなり、少年はビーダマンを取り出し、クロウへ向けてショットした。
とっさによけたおかげでそのショットはクロウの頬を掠めただけだったが。
クロウ「何をする!」
少年「黙れぇ!ヒスイのせいで・・・!弟は・・・!シルバは・・・!やれぇ、ヘルプリンス!!」
少年は怒りで、我を忘れてしまっているようで、見境無く乱射している。
クロウ「くっ!」
とっさのことなので、少年から離れようとするクロウとセシル。
無論、逃げるわけではない。体勢を建て直し、返り討ちにしようとするのだが・・・。
少年「みんなぁ!こいつらは、あのヒスイの仲間だぜ!!!」
その少年の叫びに、村中の人たちが反応し、血相を変えてクロウ達に襲い掛かってきた。
村人A「このやろう!あいつのせいでおらの畑はボロボロだ!」
村人B「どれだけの人が苦しんでたと思ってるんだ!」
村人C「わしの妹も・・・!妹も・・・!」
村人H「あの実験はいったいなんなんだ!!」
村人T「これ以上好き勝手にはさせねぇべ!」
村人達はいっせいにビーダマンを持ち、乱射してくる。
多勢に無勢。いきなりこんな大勢にしかもルール無用に仕掛けられたら、いかにクロウといえども逃げるしかない。
いや、それは否だ。
たとえどんな状況においてもクロウは突破することは可能だ。この程度の雑魚が何人集まろうが関係ない。
しかし、村人達が口にしていた言葉・・・それが気にかかってバトルに集中できないのだ。
クロウ「逃げるぞ・・・!もうこの村にはいられない!」
あ、ここって町なのか村なのかはっきりしてない(汗
村を出て、クロウ達は近くにある小さな森の中に逃げ込んだ。
まだ、村人達は追ってくる。
しかし、木々がいりこんでいるこの森の中に隠れたクロウ達を見つけることは困難だったらしい。
しばらくして、村人達はあきらめて帰っていった。
クロウ「どうやら、行ったようだな・・・。」
セシル「もう、一体なんなのよ。なんで、ヒスイの事を探そうとしたら皆が襲い掛かってくるの?」
クロウ「さぁな。だが、あいつには、あいつの過去には何かある。俺たちの知らない何かがな。それだけは確かだ。」
セシル「うん・・・。」
ガサ・・・!
そのとき、近くで物音が聞こえてきた。
セシル「誰!?」
振り向くと、そこには・・・。
小柄で翡翠色の短髪をして、白衣を着た少年が立っていた。
セシル「ヒスイ!?」
いや、違った。確かに記号的な面ではヒスイと同じだが、顔はぜんぜん違う。
どうして、見間違えたのだろうか?
???「やぁ、君たち、ヒスイを探してるの?」
クロウ「知ってるのか!?」
???「うん。知ってる。」
思いがけない言葉だった。
セシル「ほんとう!?」
???「うん。僕についてきてよ。案内してあげる。」
そういって歩き出す少年。
しかし、クロウはそこから足を動かさなかった。
???「どうしたの?」
ついてくる気配を感じなかったのか。少年は振り返り、怪訝な顔をする。
???「ヒスイって人を、探したいんじゃなかったの?」
クロウ「信用できないな。いきなり現れて。大体お前何者なんだ?」
ラルド「ごめんごめん。僕の名前はラルド。理由は言えないけど、ヒスイとは無関係ではないんだ。」
クロウ「理由はいえない・・・か。」
イマイチ信用できない様子のクロウ。
ラルド「まぁ、別に信用してくれようとくれなかろうと、僕に損得は無いんだけど。」
確かにそのとおりだ。これが、わなでなかったらの話だが。
クロウ「・・・。」
セシル「クロウ、ここはこの子を信用しよう。それしか道は無いよ。」
セシルの言うことももっともだ。
今のクロウ達はわらをもすがらなければならない切迫した状況。そこに駆け引きを加える余裕は無いだろう。
クロウ「そうだな。分かった。案内しろ。」
ラルド「うん。」
ラルドについていくクロウとセシル。
そして、どこかの草原へとたどり着いた。
クロウ「ここに、ヒスイがいるのか?」
ラルド「いいや。」
クロウ「なに!?」
セシル「私たちをだましたの!?」
ラルド「話は最後まで聞いてよ。僕は本当にヒスイの居場所を知ってるし、それを君たちに教えたところで、別に損は無いんだ。」
クロウ「なら、なんでこんな足踏みをする?」
ラルド「・・・・条件だよ。」
クロウ「条件?」
ラルド「そう。ヒスイの居場所を教えてあげてもいいけど、条件がある。それは・・・。」
ラルドは緑色のビーダマンを取り出す。
ラルド「この、エメラルドガンナーと勝負してほしいんだ!」
セシル「(このビーダマン・・・スパイラルビーストに似てる!?)」
クロウ「(前に、ジュウが言ってた奴か。)」
いつまでたってもビーダマンを取り出さないクロウにちょっといらいらするラルド。
ラルド「どうしたの?やらないの?」
クロウ「なぜ、バトルを求める?何か目的があるのか?」
ラルド「別に。ただ楽しいからさ。だけど、僕はずっと一人で・・・だから、こうやって条件をつけてバトルを楽しんでるんだよ。」
クロウ「・・・いいだろう。」
デスサイズを取り出す。
クロウ「勝負方法はなんだ?デスマッチでいいのか?」
ラルド「僕を傷つけたら、君たちが損をするだろ?だから・・・ターゲットバグシューティングでどうかな?」
ラルドはどこに隠し持っていたのか、大量のターゲットバグを取り出し、稼動させる。
ラルド「お互い、10個。先に相手のターゲットバグを停止させたほうの勝ちだ。」
クロウ「分かった。」
お互い、ルールの確認は出来た。
そして、ビーダマンを構える。準備はOKだ。
セシル「それじゃいくわよ・・!ビーファイア!」
ラルド「エメラルドガンナー!ハーフスプリング挿入!」
いきなり、トリガー部に何かを挿入した。
クロウ「なに!?」
そして、信じられないくらいの連射を放った。
クロウ「ば、ばかな!」
クロウは咄嗟に地面を撃ち、砂埃を巻き上げ、それを防御する。
ラルド「パワー型か。」
クロウ「それはどうかな?」
ラルド「え?」
ドンッ!!
パワーダブルバーストを放つクロウ。
ラルド「ダブルバースト・・・!でも、狙いがずれてるよ!」
ガッ!
そのショットはターゲットバグにはぶつからず、地面にぶつかる。
そのとき、二つのビー玉がぶつかり・・・!
カンッ!!
はじけ飛んで、バグを二つ撃破した。
ラルド「い、イングリッシュ!?」
クロウ「はぁ!」
ギャギャギャ!!
今度は、ビー玉が弧を描きながらバグを次々となぎ倒していく。
ラルド「変化球・・・!」
早くも、ラルドのバグは残り2個になってしまった。
ラルド「なるほど・・・。パワーリングによる威力だけでなく、二点射、イングリッシュ、変化球とさまざまな特殊能力を使いこなす・・・。まさにパーフェクト型。」
クロウ「このまま、決めるぞ。」
ラルド「望むところさ!」
・・・・。
・・・・。
そして、バトルの決着がついた。
ラルド「負けた・・・。」
クロウ「当然だな。」
ラルド「でも、楽しかったよ。ありがとう。約束どおり、ヒスイのいるところまで、案内してあげるよ。」
クロウ「・・・。」
こうして、一応ヒスイの手がかりらしきものをつかむことが出来たクロウとセシル。
しかし、それは完全に信用できるというものではない。
この先・・・何が待ち構えているのか・・・!
つづく
次回予告
クロウ「ラルドの案内の元、俺たちはとある町へとたどり着いた。」
セシル「た、大変!その町で、女の子が襲われてる!」
クロウ「な・・・!奴は・・!」
セシル「え、まさか・・・。」
クロウ「次回!『歪んだ憎しみ』極めろ、強さへの道!」
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