第49話「歪んだ憎しみ」
ラルドの案内のもと、クロウ達はとある町にたどり着いた。
セシル「ここに、ヒスイが・・・?」
ラルド「ううん、ここはただの通過点。それに、ちょっと休憩も必要でしょ。」
セシル「そうね・・・ちょっと疲れちゃった。」
クロウも、その意見に反対する気はなかった。
とにかく、いろんな事がありすぎた。
疲労したままの体で行動するのはよくない。
とりあえずレストランで食事を取ったクロウら。
セシル「さぁ、行きましょう。」
一刻も早くヒスイを探さなきゃいけない。
気持ちをあせらせる。
ラルド「まぁ、落ち着いて。大丈夫。多分もうヒスイは近いから。」
セシル「だけど、グズグズしてたら・・・!」
ラルド「それも大丈夫。多分もうそこからヒスイは遠くへはいかないと思う・・・。」
セシル「分かるの?」
ラルド「分かるって言ったよ。ただ、それ以上は言えない。聞かないでほしい。」
クロウ「・・・。」
言えない・・・聞かないでほしい・・・。
その言葉がどうにも引っかかり、ラルドを信用しきれないクロウ。
クロウ「(だが、手がかりはこいつしかいない・・・。)」
いざとなれば自分がこいつをしとめれば言いだけの話・・・。
クロウは密かにデスサイズをいつでも取れる体勢になる。
と、その時、町の人たちがざわざわと騒がしくしているのに気づく。
セシル「なんだろう・・?」
見ると、一つの小屋みたいなところに人が集まっているようだが・・・。
ラルド「最近、この町にやってきた占い師みたいだね。」
セシル「へぇ・・・・。」
女の子だけに多少こういうのには興味を示す。だが、今はそれどころではないはずだ。
ラルド「やってみる?」
セシル「せっかくだけど・・・今はそんな場合じゃないし・・・。」
ラルド「だから、時間は大丈夫だって言ったでしょ。ヒスイがちゃんと見つかるかどうか、占ってもらうのもいいし。」
セシル「だけど・・・。」
クロウ「いいんじゃないか?」
意外にも、クロウは賛成のようだ。
セシル「え?」
クロウ「ちょいと占ってもらいたい事も・・・あるしな。」
チラッとラルドを見て言う。
ラルド「そう。じゃ、行こうか。」
クロウ「ああ。」
ラルドとクロウは占いに並ぶ。
セシル「あ、待ってよ!」
そして、数分後、クロウたちは小屋の中に入り、占ってもらう事にする。
中は薄暗く、水晶玉を前に黒いフードをかぶった女の人が座っている。
占い師「では、何を占いますか?」
クロウ「そうだな・・。俺には、新たに仲間になった奴がいる・・・そいつが信用できるものか、占ってくれ。」
ラルド「!?」
率直だった。
セシル「(クロウ!いくらなんでもストレートすぎるよ・・・!)」
しかし、ラルドは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに平静を保つ。
占い師「・・・・。」
占い師は一瞬迷ったようなそぶりを見せたが・・・。
占い師「分かりました。」
そうつぶやき、水晶玉に念を込める。
輝きだす玉。
湧き上がる気流。
クロウ「これは・・・!」
そして、占い師のフードが上がる。
セシル「あぁ!」
声も上がる。
そう、そのフードをかぶった女性とは・・・。
セシル「フローネさん!?」
フローネ「!?」
鋼の砦の、預言者だった。
フローネ「あなたたちは・・・あの時の・・!?」
クロウ「あの後、こんなところにいたとは・・・。」
デスサイズを奪おうとした女性・・・信用できるものではない。
クロウ「行くぞ。こいつの占いなどあてにならないからな。」
セシル「う、うん。」
セシルもちょっと軽蔑ぎみ。
ラルド「?」
ただ、ラルドだけはちょっと事情が分からないようだった。
セシル「はぁ、まさかあの人が占い師だったなんて・・・。」
小屋から出たと同時にため息をつく。
クロウ「ま、現実はこんなものだな。どの道、ヒスイは見つかるんだ。そうだろう?」
ラルド「もちろん。君が僕にどんな疑いを持とうが、その結果に変わりはないよ。」
クロウ「ふん、期待していよう。」
フローネ「キャアアアアア!!!」
その時、小屋から、フローネの叫び声が聞こえてきた。
ざわつく客たち。野次馬たちもやってきた。
クロウ「なんだ!?」
ただ事ではない。そう感じたクロウたちは野次馬たちを押しのけ、小屋の中に入る。
フローネ「うぅ・・・!」
クロウ「!?」
セシル「あぁ!」
フローネが、男に首を締め上げられていた。
その・・・男は・・・。
クロウ「ロン・・・!」
ロンが、首を締めている腕を高々と上げている。
ロン「俺を愛せ。この、俺を・・・!」
フローネ「な・・・なに・・を・・・あぁ!!」
さらに力をいれるロン。
ロン「ならば・・・.死ね!」
フローネ「うぅ・・・!」
セシル「な、なにやってるのよ!」
チラッとセシルの方を見るロン。
ロン「全てこの女のせいだ。」
クロウ「どういう意味だ?」
ロン「この女のせいで、余計な感情を持ってしまった・・・!その感情は、俺を狂わせる!だから、殺す!邪魔者は排除するのみだ!」
ギリギリギリ・・・!!
さらに力を込めて首を締める。
フローネ「・・・・・。」
抵抗する力を失ったのか、ぐったりとしてしまった。
このままでは、本当に死んでしまう。
クロウ「よせ!」
ドンッ!!
すばやくデスサイズを取り出し、ロンの腕へ撃つ。
ロン「ちっ。」
その玉を避けるために、フローネを離すロン。
フローネ「げほっ!げほっ!」
激しくむせるフローネ。
ロン「おい、これで終わったと思うな・・・!」
さらに、ロンはフローネにビーダマンを向ける。
フローネ「!?」
ロン「死ね!」
ドンッ!!
フローネに向けてショットを放つ。しかし、フローネもそれに応戦する。
フローネ「カオススパイダー!」
緑色のビーダマンを取り出して、すばやく連射し、ロンのショットを止める。
ロン「なに・・!」
フローネ「はぁ・・・はぁ・・・!」
ロン「くだらないショットだ。」
フローネ「いきなり、なんのよ・・。」
ロンはひるまない。再びヘイロンが火を吹く。
フローネ「うっ!」
フローネも負けじとカオススパイダーの連射で応戦する。
ラルド「ショートストロークシステムか・・・しかも、かなり精度がいいみたいだね。」
クロウ「前に見た事あるが、確かに精度が段違いだな。」
セシル「(そんな事言ってる場合じゃ・・!)」
パワーと連射の押収。
しかし、やはりロンの方が上手だった。
フローネ「きゃあ!」
今度はヒットした。大きく吹っ飛ばされるフローネ。
そのまま壁にぶつかり、気絶してしまった。
ロン「・・・・もう、感じない。あの感情は・・・消えたのか・・・?」
ブツブツと独り言をつぶやいている。そして、今度はクロウへ向き直る。
ロン「次は・・・お前だ。」
クロウ「ああ。そうくると思っていた。」
二人とも戦闘の構えを取る。
ロン「俺は・・・・お前を許さない・・・・。」
ロンはブリザードヘイロンをクロウへ向ける。
ロン「許さない・・・お前の罪を・・・!」
ロンの怒りが増す。それと同時に、ヘイロンにも変化が置き始める。
クロウ「なんだ・・・!?」
黒いエフェクトが起こり、ヘイロンが徐々に進化していく・・・!
ラルド「ビーダマンが、ビーダーの心に反応して進化していく・・・。」
そして、新たなるヘイロンが生まれてしまった。
ロン「グレイズヘイロン・・・・。」
クロウ「っ!?」
いきなり、その砲火が放たれた。
今までより数段強い!
クロウ「ぐっ!」
そのショットにクロウは成すすべなく吹き飛ばされる。
クロウ「ちぃ!」
小屋の外へはじき出されるが、なんとか踏みとどまった。
そこをゆっくり歩んで来るロン。
ロン「・・・・。」
その目は、憎しみで満ちている。
他に何も見えていない、クロウしか見ていない。
その目に、不覚にも身震いしてしまった。
クロウ「!?」
その隙を、ロンは逃さなかった。
すばやくトリガーを押し、クロウへショットをぶつける。
クロウ「ぐぅ!!」
まともにうけ、ひるむが、今度は隙をつくらまいと耐える。
クロウ「はぁ!」
痛みに耐え、クロウも反撃。
ロン「ふん!」
カキンッ!
あっさり落とすロン。しかし、落とせたのは一発だけ。
ドンッ!
ロン「!?」
クロウが放ったのはダブルバースト。しかも二つ目の感覚を少し空けておいたのだ。
しかし、たった一発だけではロンはひるまなかった。
ロン「・・・・。」
クロウ「(こいつ・・・ショットをまともに受けたのに、平然としている・・・。まさか・・・!)」
クロウは、ロンに対してある仮説が浮かんだ。
クロウ「お前は・・・まさか・・・。」
ロン「っ!」
ドンッ!
焦るように、クロウへ向かってパワーショットを放つ。
クロウ「ちっ!」
とっさにそれをよける。
そしてよけざまにこっちからもダブルバーストを放つ。
ロン「ふん。」
あっさりかわされる。
しかし、それはクロウにとっては計算内の行動だった。
クロウのショットはそのまま壁にぶつかり、方向変換し、ロンへ襲いかかった。
バーンッ!!
強力なダブルバーストがロンの横腹にヒットする。
ロン「ぐっ!」
さすがに二回目はちょっときついらしい。
クロウ「お前は・・・!」
ロン「黙れ。お前に言われる筋合いはない!」
つまり、クロウの仮説はあっているということだ。
クロウ「だとしても、なぜだ!俺は関係ないはずだ!」
ロン「関係無いだと・・・寝ぼけるな!」
ドンッ!!
怒りを込めたロンのショット。
それを止めるクロウのショット。
クロウ「どういうことだ!俺も被害者だぞ!」
ロン「それこそ、関係無い!お前の事など、知らない!」
再び火を吹くロンのショット。
クロウ「ちっ!」
迎え撃とうとするクロウの横を、二つの種類のショットが飛んで行く。
クロウ「?!」
それは、連射とコントロールショットだ。
クロウ「なに!?」
振り向く。そこには、ラルドとセシルがビーダマンを構えていた。
セシル「私達も加勢するよ!クロウ!」
ラルド「えぇ!」
クロウ「お前らは下がっていろ!これは、俺とこいつとの問題なんだ!」
セシル「でも、クロウにはどんな問題が・・・!?」
クロウ「分かるか!だが、どうやら本当に無関係ではなさそうだ・・・!だったら、その真実を知るまでだ!」
ロンへ向き直り、ショットを放つ。
それを止めるロン。
ロン「お前は一生気づかない・・!自分の罪を・・・!それが許せない・・・!」
今度は乱射する。それでいてパワーもあるのだから性質が悪い。
クロウ「くそぉ!」
クロウはすばやく後ろへ飛びのき、迎撃する。
そして、玉の勢いが落ちてきたところですばやく横へ移動し、壁の後ろに隠れる。
クロウ「はぁ!!」
そして、渾身のパワーショットで壁をぶち抜き、ロンへ狙う。
ロン「!?」
バーンッ!!
さすがに反応しきれずヒット。今度はかなりダメージが大きい。
クロウ「うおおおおお!!!」
たった一瞬だが確実な隙。それを逃さず、連射するクロウ。
ロン「っ!」
よける暇も、迎撃する暇も与えられずそのショットを全て受けてしまうロン。格闘ゲームで言うところの『ハメ技』だろう。
クロウ「うおおおおおお!!」
連射はさらに勢いをます。しかし、ロンも負けてはいなかった。
クロウ「なに・・・!」
ロンは立っていた。連射をすべて受けながら平然としている。
心頭滅却すれば火もまた凉・・・。ロンは精神を無にし、ほんの数秒だけ体の感覚を麻痺させているのだ。
そして、ロンは腕を前に出す・・・ヘイロンのウィングが一段階下がる。そして、腕を思いっきり引き・・・。
『爆・憎回転!』
強力な回転を得た玉が風圧をまとい、ゆっくりと進んでいく。
クロウの発射した玉全てを弾き飛ばしながら・・。
クロウ「(くっ、このショットに迎撃は通用しない・・・!)」
しかも、この技の特殊な風圧に体が巻きつかれ、身動きが出来ない上、連射を続けてきたので、とっさにパワーショットも撃てない。
バーンッ!!
クロウ「うわああああ!!!」
強力な技にヒットし、大きく飛ばされるクロウ。
ロン「はああ!」
飛ばされる間も、ロンに何度もショットを打ち込まれた。
ドサッ!
地面に倒れこむまでに、何度ロンのパワーショットを受けただろうか・・?
とにかく、そんなダメージを受けたために、すぐには立ち上がれない。
ロン「止めだ。」
チャッ!
倒れているクロウに標準を合わせ、ショットする。
クロウ「くそっ!」
クロウはすばやく地面に向かってビー玉を放つ。
バーンッ!
ロンのショットがヒットする前に、クロウは地面を撃った反動で起き上がれた。
クロウ「はぁ・・・はぁ・・・!」
ロン「・・・!」
お互い、体力も限界だろう。
おそらく、次のショットが最後の決め手になるはずだ。
チャッ!
すばやく、同時に構える。
クロウ&ロン「うおおおおお!!!」
そして、渾身の力を込め、ショットする。
ドンッ!!!
放たれたその玉は、中央で激突!
パワーは互角だったのか、クロウとロンの玉は大きくはじかれた。
ロン「ちっ!」
勝負はまだまだ続きそうだ・・・だが、その前に二人の体力が・・・。
クロウ「まだだぁ!!」
ロン「なに!?」
そう、まだクロウのショットは終わってなかった。
ロンにはじかれたクロウの玉。それがクロウの目の前に来る。
その玉はまだ十分な回転力を持っていた。
クロウ「リプルションブレイカー!!」
その玉に向かってショットする。
そのショットは玉の回転を受けて、一気に加速・・・そして・・・!
ロン「ぐわああああ!!!!」
ロンを吹き飛ばした。
倒れるロン。
そう簡単に立ち上がる事は出来ない。
クロウ「終わりだ・・・。」
倒れているロンの顔に銃口を突きつけるクロウ。
この瞬間、クロウの勝利が決定した。
ロン「・・・・ばかな・・・!」
未だにクロウへの憎しみの眼差しを向けているロン。しかし、この状態ではどうしようもない。
クロウ「さぁ、聞かせてもらおう。なぜ、俺を憎んでいるのか・・・。俺の罪とは一体何なのか・・・?」
ロン「・・・・。」
ロンはしばらく黙っていたが、ゆっくり口を開いた。
ロン「お前の・・・罪は・・・・。」
ロンの口から音が出る。それを聞いたクロウは、愕然とする。
クロウ「な・・・・に・・・・。」
そして、その目から徐々に精彩が失われてしまった。
その瞬間、世界は反転し、色を失った・・・。
つづく
次回予告
クロウ「俺は...罪・・・・。俺は・・・・。なぜ、存在している?なぜ・・・。」
セシル「ロンに全てを聞かされて、呆然とするクロウ。だけど、それどころじゃない!もうすぐ、ヒスイの所へいける・・。そうすれば、きっと全て解決するはずだから・・・。」
クロウ「次回!『残された望み』極めろ、強さへの道!」
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