爆・爆ストーリー ZERO 第50話

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第50話「残された望み」
ロン「お前の・・・罪は・・・・。」
 クロウは黙って、その続きを待った。
ロン「お前の・・・存在自体だ。」
クロウ「どういう、意味だ・・・?」
ロン「お前は、生きていること、そのものが罪だ。」
クロウ「な・・・・に・・・・。」
 クロウの目から徐々に精彩が失われてしまった。
セシル「ど、どういうことよ!生きてる事が罪だなんて!」
クロウ「お前は・・・黙っていろ・・・。」
セシル「・・・。」
 クロウは、ただひたすらまった。続きを。これから、ロンの言う事を少しでも聞き逃すわけにはいかない。
 全神経を耳に集中した。
ロン「俺は・・・お前と・・・同じ。Dr.コハクによって作られた・・・改良型ヒューマノイドだ。」
 やはり、そうだった。だが、それとクロウを憎む事と、どう関係があるのだろうか?
ロン「俺は、ずっと・・・一人だった・・・辛かった・・・・孤独が・・・。」
クロウ「(こいつは・・・俺と、同じ?)」
ロン「ずっと、薄暗い牢屋に閉じ込められ・・・。ずっと・・・・地獄のような人体実験を繰り返させられた・・・!」
クロウ「!?」
 驚愕した。それは、おそらく、クロウの苦痛を遙かに・・・。
ロン「あるときは、牢を密閉し、水を敷き詰め、俺がどれだけ耐えられるか試し・・・。あるときは、灼熱の炎で焼き・・・ある時は、冷気の中に閉じ込められ・・・。全てはデータを取るためだけに・・・!」
クロウ「・・・・。」
 ただ、黙って聞く事しかできない。おそらく、その苦しみを分かち合うことは出来ない。
 その苦しみを経験した事が無いから。
 なんて、甘い。自分の境遇なんて、ちっぽけなもののように思えた。
ロン「俺は憎んだ。自分が生まれてきた事を・・・俺は憎んだ、生みの親を・・・!俺は、こんな思いをしてまで、この世に生まれたかったわけじゃない・・・!」
 すさまじい憎しみ。それは生に対する憎しみ。
 『生きていればいい亊ある。』
 よく聞く言葉。
 だけど、本当にそうなのだろうか?
ロン「俺は狂った。そして殺した。生みの親を・・・!だが、それだけでは足りない・・・!俺の憎しみが尽きる事は無い・・・!」
クロウ「・・・・・。」
 憎しみが尽きない・・・。それは当然だ。憎い相手を殺したところで、何も解決はしないのだから。しかし、ロンはその事を知らない。
 憎しみを憎しみで癒そうとし、更なる憎しみを生み出し、その事に苦しんでいるのだ。
セシル「でも、それとクロウとは関係無いじゃない!なんで、クロウを!」
ロン「俺は、こいつのデータを元に、生み出されたんだ!」
 クロウを指差し、叫ぶ。
クロウ「!?」
ロン「俺はお前とは違う・・・・。お前は人工授精によって生まれた改良型ヒューマノイドだが、俺はそれの発展型・・・。授精も何もせず、一から人工的に作られた改良型ヒューマノイドだ。」
クロウ「俺とは違う・・。」
ロン「俺が生み出されたのは一年前・・・。それまでに・・・お前が生きてきたデータが・・・俺の中にインプットされてある。」
クロウ「俺の、データが・・。」
ロン「こいつがこれまで生きてきたデータのせいで、俺は生み出され、こいつは今ものうのうと外の世界で生き続けている・・・!」
クロウ「・・・・。」
ロン「そんなお前を、俺は許さない・・・!俺は・・・!」
 ロンの言葉で、クロウには完全な隙が出来てしまった。
 その隙をついて、ロンは立ち上がる。
クロウ「しまっ!」
 もう遅い。だが、ロンも戦える状態では無い。
ロン「必ず・・・お前・・・を・・・・。」
 シュウウウ・・・・。
 ロンの腕から煙のような靄が出てきた。
ロン「!?」
 それに気づいたロンは焦ったようにその場を去っていった。
クロウ「・・・・。」
 ロンの言葉を聞き、呆然とするクロウ。
クロウ「(俺のせいで・・・俺が生まれせいで・・・俺が・・・生き続けたせいで・・・。)」
セシル「クロウ・・・。」
 セシルにも、クロウの悲しみは伝わった。だからこそ、何も声をかける事が出来なかった。
 そんな自分をもどかしく思う。やはり、非力なのだと言う事を思い知らされてしまった。
 何も出来ない自分が・・・悔しかった。
ラルド「さて、問題は解決したようだね。そろそろ行こうか。」
 と、いきなり緊張感をぶち壊す声が聞こえた。
 ラルドはこのような状況でも平然としている。まるで、感情が無いみたいに。
セシル「何言ってるのよ!何も解決してないでしょ!」
ラルド「え?」
セシル「クロウの気持ちを考えてよ!よくそんなことが言えるわね!」
クロウ「よせ。ラルドの言うとおりだ。・・・今の俺に出来るのは、もうそれしか残っていない。」
セシル「・・・。」
ラルド「そういうことだね。じゃ、行こう。」
クロウ「ああ。」
 気力の無い顔で返事し、歩き出す。
セシル「・・・・。」
 釈然としないが、セシルも歩き出した。
 三人は深い森の中を歩いていた。
 この森を抜けたところに、ヒスイがいると言うのだ。
ラルド「・・・・・。」
 と、いきなり、ラルドの足が止まった。
クロウ「どうした?疲れたのか?」
ラルド「ううん・・・もう、限界みたい。」
クロウ「なに?」
ラルド「ここから先は、二人だけで行って。大丈夫。一本道だから、迷うことは無いと思う。」
セシル「何言ってるの?」
ラルド「この森を抜けたら、すぐヒスイがいる場所へ行ける。すぐ分かると思うから・・・・あぁ、早く、行って!」
 何か焦っているようだ。
クロウ「大丈夫か、お前?」
ラルド「大丈夫だから!お願い、早く行って!」
クロウ「あ、あぁ・・・・。」
 なんとなく納得できないが、促されるまま、クロウとセシルはラルドを置いてあるいて行った。
ラルド「・・・・。」
 そんな二人の後姿を眺めながら、ラルドはため息をつく。
ラルド「よかった・・・まにあ・・・。」
 言い切る前に、ラルドは崩れた。そして、手足から機器のようなものが漏れた。
ラルド「ガ...ガガガ....。」
 短い電子音を最後に、ラルドは完全に停止してしまった。
 深い森の中をたった二人で歩き続けるクロウとセシル。
セシル「・・・・ほんとに、会えるのかな?」
クロウ「分かるか。だが・・・俺達に残された希望は、それしかない。あいつの真意を聞かなければ・・・このまま、生きることも、死ぬことも出来ない。それだけが、今の俺に残されたものだ。」
セシル「・・・・。」
 生きる意義を失ってしまったものが、最後にすがりつくもの。
 それは自分がやるべき仕事。
 仕事をする事によって得られる存在意義。
 その存在意義に生きる意義を見出すことが出来る。
 『ヒスイを探すこと』
 それは本当は何の意味も無い事なのかもしれない。
 さらなる絶望を生むだけなのかもしれない。
 でも、それをしなければ生きている意味は無いから・・。
 だから、何があろうとそれをするしかないのだ。
 辺りが暗くなった。
 ただでさえ薄暗い森なのだが、日が落ちた事によってさらにそれが増している。
クロウ「今日は、ここで野宿だな。この状態で動くのは、危険だ。」
セシル「ええ。」
 クロウの提案にセシルは素直に応じた。
 適当に薪を集め、それを燃やす。
 保存食もある程度たくわえがあったので、なんとか過ごせそうだ。
クロウ「・・・・。」
セシル「・・・。」
 焚き火をはさんで、座る二人。
 お互い、何も話さなかった。
 パチパチと音を鳴らし、炎が二人の顔を照らす。
セシル「ねぇ。」
 ふいに、口を開くセシル。
クロウ「なんだ?」
 表情一つ変えず、答える。
セシル「クロウとヒスイって、私が会う前から知り合いだったでしょ。いつから知り合いだったの?」
クロウ「お前と大差無い。あいつと出会ってすぐ、お前とも出会った。」
セシル「そうなんだ・・・。」
クロウ「あれは、俺がまだシャドウにいた頃だった・・・。」
 そしてクロウは、ゆっくりとヒスイとの出会いを話し出した。過去を懐かしむように。愛おしむように。
クロウ「俺はボスの命令で、伝説のビーダマンを探すように言われた。その先で会ったのが、あいつだった。」
>クロウ「おい・・!」
>ヒスイ「ふえ?」
> ヒスイが作業する手を止め、振り向く。
>クロウ「なんだ、貴様は?」
>ヒスイ「え!?き、君こそ何ですか!勝手に人の隠れ家に入ってきて!」
セシル「ふふ、クロウらしいね。」
 理不尽な言いかたにウケたのか、静かに吹き出すセシル。
クロウ「あいつも、頑固だったな・・・。そして、あいつのジェイドガンナーと初めてバトルした・・・。」
>クロウ「どうした?たいした事無いな」
>ヒスイ「ふふ・・!」
> ドドドドド!!
> ジェイドガンナーの怒涛の連射。10発くらいのビーダマが一気に発射され、ドライブショットを弾く。
>クロウ「バカな・・!なんだ、この連射は・・!いくらなんでも、ここまでの連射は・・・!」
セシル「やっぱり、ビーダーなんだね。バトルが全てって感じ。」
クロウ「まぁな。当然、この勝負は俺の勝ちだった。だが、俺は何か釈然としないものを感じたんだ。」
>クロウ「その程度の攻撃で・・。!?」
> ジェイドガンナーの攻撃で、アーマーが傷ついてしまった。
>クロウ「くっ!」
>ヒスイ「いけー!!」
> ジェイドガンナーの連射が続く。
> ガガガガガガ!!!
> 今度は、モロにうけてしまう。
> パキッ!パキッ!
> 徐々に破壊されていくアーマー。
>クロウ「くっ・・!調子に乗るなぁー!!!」
> クロウは思いっきりホールドパーツを締め付ける。
> パキーン!!!
> その衝撃で、アーマーが吹っ飛び、純粋な素体ZERO-Dになってしまった。
>クロウ「うおおおお!!!!」
> ドキューン!!!!
> しめ撃ちドライブショット発射。ジェイドガンナーの連射を吹き飛ばし、ジェイド
>ガンナーに直撃。
>ヒスイ「くっ!」
> その威力に、メガネの手から、ジェイドガンナーが吹っ飛ばされる。
>クロウ「はぁ・・・はぁ・・・!」
>ヒスイ「負けましたね・・。仕方ない・・・約束どおり・・・。」
>クロウ「くっそおおお!!!」
> クロウは、素体ZEROを地面に叩き付け、そのまま走り去った。
>ヒスイ「・・・・・。」
セシル「あの時、クロウは何を感じたの?」
クロウ「・・・.あの時の俺には、分からなかった。だが、今なら、なんとくなく分かるかもしれない・・・言葉には出来ないが。」
セシル「そう。だったら、このたびはクロウにとって意味のあるもの・・・だったのかもね。」
クロウ「どうだろうな。」
> 俺は組織を裏切った。だが、後悔はしていない・・・より強くなるために、自らが選んだ道なのだから・・・。
>ヒスイ「やっ!」
> 突如、目の前にヒスイが現われる。
>クロウ「なんだ・・お前か・・・いきなり目の前に現われるな。」
>ヒスイ「まぁまぁ。・・そんな事より・・・。」
> ヒスイは、クロウにビーダマンを渡す。
>クロウ「これは・・・!」
>ヒスイ「前のバトルで、君のビーダマン壊しちゃったから、直しときました。ちょっと手を加えましたけど・・・。」
> 確かに、クロウの改良型素体ZEROのビーダマンだが、それは、前に使っていたビーダマンとは全く違う、新型と言っていいようなものだった。
>ヒスイ「レクイエム・・・。」
>クロウ「?」
>ヒスイ「メタルレイヴンレクイエム・・・それが、このビーダマンの名前です。」
>クロウ「メタルレイヴン・・・レクイエム・・・。」
>ヒスイ「そう言えば、名前聞いてませんでしたね?」
>クロウ「クロウだ。」
>ヒスイ「僕は、ヒスイです。よろしく!」
> ヒスイと名乗った少年は、握手を求めるように、手を出す。
>クロウ「・・・・。」
> しかし、クロウはなかなかその手を握ろうとはしない。
>クロウ「(レクイエムか・・・。シャドウは捨てた事だし、今度はこいつを利用して強くなるのも、悪くないな・・・)」
> そう思い、手を握るクロウ。
>クロウ「ああ。こちらこそ・・・よろしくな。」 
セシル「それで、ヒスイと旅をする事にしたんだ。」
クロウ「ああ。あの頃はヒスイを利用する事しか考えて無かった・・・だが、今はどうなんだろうな・・・。」
セシル「え?」
クロウ「利用するだけの存在なら、こんなに躍起になって探す必要は無いはずだ・・・だが・・・。いや、やはり俺は利用しているのかもしれない。奴を探すことによって、俺は自分の存在意義を見出そうとしている。生きために利用しているんだ。」
セシル「ヒスイは仲間。そういったのはクロウでしょ?」
クロウ「・・・・。」
セシル「簡単に自分の発言を覆さないで。クロウは変わったの。前みたいな冷たい人間じゃない。改良型ヒューマノイドでもない。私たちと同じ、人間よ。」
クロウ「・・・そうだと、いいが・・・。」
セシル「私は・・・例え、クロウが・・・・。え?」
 見ると、クロウは目をつぶって寝息を立てていた。
 今日は、本当にいろんな事があって、疲れたのだろう。
 セシルは、そっとクロウに毛布をかけてやった。
 そして、クロウの寝顔を見ながら、思った。
セシル「(神様・・・どうか、奪わないでください。私から、大切なものを・・・。)」
 その願いは聞き入れてくれるのかどうか分からない。
 それでも願うしか無い。
 明日になれば、すべてが分かるかもしれない。
 それはきっと怖い。
 分からないままでいたいのかもしれない。
 もし、真実が自分の中で生まれかけた幸せを奪うようなものだとしたら・・・。
 知らない方がいいのかもしれない。
 でも、それは単なる時間稼ぎ。
 知らなかったら、それでも徐々に幸せはなくなってしまうのだ。
 全ては明日、決まる。
 セシルの願いは神様に聞き入られるのか・・・・。
 クロウは、答えを導き出せるのか・・・。
 この旅のこの物語の結末は・・・・答えは・・・・。
 全ては、この世界の創造主のみが知る。
 全ては、観測者によって決定される。
 物語の終結は、近い。
 一体、どんな答えが待っているのだろう?
 どんな答えを・・・決定してくれるのだろうか・・・?
             つづく
 次回予告
クロウ「ヒスイと出会い、シャドウを抜けたあの日。あの日から全てが始まった・・・。さまざまな人と出会い、戦い・・・。さまざまな出来事と遭遇し・・・。
この旅で俺は何かを得ることが出来たのだろうか?あるいは、俺は本当に強くなれたのか・・・?
 次回、最終話『強さへの道』極めるべき強さは、一つでは無い・・・。」




 

 

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