爆・爆ストーリー ZERO 第45話

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第45話「過去を超えた戦い」
クロウ「ようやく本気か・・・。」
ヒスイ「絶対に、お前を倒す!」
 リバースハンドミッションに組み替えたヒスイ。
 間髪いれずに連射。怒涛のビー玉の嵐が襲い掛かる。
 クロウはそれを横にかわし、近くにあるビルに身を隠す。
 ヒスイは躊躇せず走り出し、クロウが隠れている陰に向かった。
 しかし、そこにクロウはいない。身を潜めたのではなく、そのまま走って行ったのだ。
ヒスイ「くっ!」
 見ると、クロウはすでに射程外まで離れていた。
ヒスイ「逃がすか!」
 シールドを付け替える。これにより射程範囲を広げられる。
ヒスイ「食らえ!」
 ドンッ!!
 狙いを定めた締め撃ち。まっすぐクロウの背中へ飛んでいく。
 しかし、クロウは振り返ろうとしない。
 諦めたのか?
 確かに、いまさら立ち止まって振り返ったところで、その飛んできた玉を撃ち落すことは不可能だろう。
 だったら、背中を見せたままでも、なるべくスピードを落とさずに走る事で受けるダメージを和らげようとしているのか。
 いや、違った。クロウは走りながらビーダマンを横に向け、壁にむかって発射。それも一発だけでなく、何度も何度も。
 キュンッ!キュンッ!!
 その玉は跳ね返り、クロウの後ろを通る。
 カキンッ!
 ついに、クロウのイングリッシュボールがヒスイのショットを止めた。
ヒスイ「!?」
 ここで、足をとめ、振り返る。
 ヒスイも射程内までやってくる。
クロウ「はぁ!」
ヒスイ「はぁ!」
 今度は駆け引き無しの直球勝負だ。
 クロウのパワーダブルバーストとヒスイの超速連射が激突する。
 カンッ!カンッ!!
 お互い、わざとはずして相手を狙おうと言う考えはなく。あくまでパワーと連射の総合力を競っている。
クロウ「はぁ!!」
 ドンッ!!
 ここで、クロウが上空へ向かって強力なドライブショットを一発だけ放つ。
ヒスイ「?」
 そして、そのドライブショットは上昇の頂点を過ぎ、重力の法則で自由落下する。
 その落下して来た玉がクロウの目の前を過ぎた瞬間、クロウはその玉目掛けてドライブショットを放つ。
 カンッ!!
 接触する二つのドライブショット。その瞬間、ものすごい勢いでぶつかった玉がぶっ飛んで行く。
クロウ「リプルションブレイカー!!」
ヒスイ「なに!?」
 
 蛇足説明 リプルションブレイカーとは前方に対してゼロ速度で順回転しながら落下してくる玉を、通常のドライブショットでビリヤードのようにはじいてしまう技なんですが。原理としては、同じ質量のものがぶつかり合った場合、その運動エネルギーはぶつかったものに変換される。さらに、同じ方向へ順回転しているもの同士をぶつける事で、もともとの玉のスピードに回転の反動が+され、威力がますものです。
 そのクロウの必殺ショットはヒスイの連射をすべてはじいていく。
ヒスイ「バカな・・・!バカナァ!!!」
 バーンッ!!
 強烈なショットがヒットし、ヒスイは吹っ飛び仰向けになる。
クロウ「俺の勝ちだな。」
 ザッ・・・ザッ・・・!
 ゆっくりとクロウが歩いてくる。
ヒスイ「くそっ!」
 ダメージが大きすぎるせいか、すぐに立ち上がれない。
 そこへクロウがやってきて、ヒスイを見下ろし、顔面へ銃口を突きつける。
ヒスイ「くっ・・・!」
 観念するヒスイ。しかし、クロウは何故か撃たなかった。
クロウ「・・・・!」
 苦悩の表情。それはさっきまでのクロウからは感じられなかったものだ。
 明らかにためらっている。止めを刺す事を。手が、小刻みに震えていた。
クロウ「(どうしたんだ、俺は・・・。)」
 しかし、このチャンスを逃すほどヒスイは甘くなかった。
 バッ!!
 素早く身を翻し、立ち上がる。そして、その場を少しはなれて体制を立て直す。
ヒスイ「は・・・あ・・・!」
クロウ「・・・・。」
ヒスイ「お前も甘いな。」
クロウ「ちっ!」
 再びジェイドを構えなおす。
ヒスイ「俺はお前を倒すことに対して躊躇はしない!」
 カンッ!
 そこへ、どこからか飛んできた玉がジェイドにヒットする。その玉は非常に弱かったので動じる事はなかったが。
ヒスイ「なんだ?」
 ヒスイはその玉が飛んできたほうをにらみつけた。
セシル「い、いい加減にしてよ!もう争うのはやめて!」
ヒスイ「黙れ。お前には関係ない。」
クロウ「そうだ。これは俺達の問題だ。」
セシル「そうじゃなくて・・・!あなた達にどんな事情があろうと、私には関係ないし、それをどうこう言う資格はない。でも、こんな街中で戦ってるのを、黙って見てるわけには!」
 確かに、こんな街中でバトルされたら非常に迷惑だ。
ツバサ「だったら、ここは僕に任せてよ。」
 いきなり、唐突に。ツバサが現れた。
クロウ「お前・・・。」
ツバサ「こんな大騒ぎされたら。誰だって気になって見にくるよ。」
 ツバサの言うとおり、今まで気づかなかったが、まわりには大勢の人が集まっている。
ツバサ「また自警団沙汰になるまえに。ここは競技ルールは僕に任せたほうがいいと思うよ?」
ヒスイ「ルールによるな。」
ツバサ「大丈夫。だいたいの事情は分かったよ。・・・完璧に決着がつけられるようなルールにしてあげる。君が納得の行くようなね。ついてきて。」
 そして、ツバサは歩き出した。
 ツバサに連れられてやってきたのは、Bコロシアムのような施設だった。
 そこには、巨大な鉄球が二つ、吊らされていた。
ツバサ「あの鉄球は、下にあるロープを切る事で、落ちるんだ。」
クロウ「なるほど。二人とも鉄球の下に行き、先に相手側のロープを切ったほうの勝ちと言うことか。」
ツバサ「うん。」
セシル「だ、ダメよ!そんな危険なルール!」
 当然止めようとするのだが。
ヒスイ「ふん、面白そうだ。どの道、こいつは殺すつもりでいたんだからな。」
セシル「ヒスイ!」
 ヒスイとクロウはセシルの言葉を無視し、鉄球の下へ行く。
 ピッ!
 ツバサはいつの間にか手に持ったリモコンのスイッチを入れる。すると、何故かしたから牢屋らしきものが出てきて、クロウとヒスイを閉じ込める。
ツバサ「これで、お互い逃げる事は出来ない。ビー玉を発射するだけの隙間はあるから、そこから狙ってくれ。」
クロウ「ああ。分かった。」
セシル「な、なんでこんなルールにしたのよ!」
 今度はツバサに食って掛かる。
 そんなセシルに、ツバサは冷静に言葉を返す。
ツバサ「今、彼らを止める事は出来ないよ。どんなルールであれ、彼らは最後まで相手を傷つけなければ気がすまない。僕に出来るのは、いかにまわりに被害が出ないようにするかだけなんだ。」
セシル「でも・・・!」
ツバサ「大丈夫だよ。命にはかかわらないと思うから。」
セシル「え?」
 ツバサはセシルに耳打ちする。
セシル「な、なんだ・・・。よかった。」
 安堵のため息をつく。
セシル「でも、わざわざ二人のためにこんな用意したの?」
ツバサ「ううん。これはもともと別のバトルのために用意したんだ。・・・まだ、僕の翼が汚れていた頃のね。」
セシル「・・・・。」
クロウ「準備はいいぞ。始めてもいいか?」
ツバサ「え、あぁ。ごめんごめん!それじゃ、行くよ!ビー、ファイア!!」
 ツバサの合図とともにクロウとヒスイがビー玉を撃ち合う。
 パワーと連射の嵐が吹き荒れている。
ヒスイ「必ず、お前を殺す!あの苦しみを・・・虚無を!お前に味わわせてやる!」
クロウ「確かに、悪いのは俺だ。だが、俺はどんな事をしてでも生き続ける!それは理屈じゃない、本能だ!そして、このバトルをそのための糧にする!」
 バシュッ!!
 二人のショットは正確で、ロープにあと少しで当たるのだが、ことごとく止められてしまう。
ヒスイ「負けるわけには行かない!ここで負ける事は今までやってきた事の全てを否定する事になる!」
クロウ「それはお互い様だ!俺も、死ぬわけには行かない!」
ヒスイ「死ぬわけにはいかないだと・・・!お前のせいで、どれだけの人が傷ついてきたのか・・・それを分かって言っているのか!?」
クロウ「関係ないな。生き物は他の生き物の命を糧にして生きている。それと同じように、俺は生きていくために必要な強さを、他のビーダーを倒す事で得てきた。ただそれだけだ。お前のように、ただの感情で相手を殺すのとはわけが違う。」
ヒスイ「黙れ!お前の罪は許されない・・・!俺は許さない!屁理屈を並べるな!!」
 二人のショットは勢いを増していくばかりだ。
 なかなか決着がつきそうにない。
ヒスイ「ふっ、このスペースじゃ、あの技は使えないだろう。リバースハンドミッション!!」
 ヒスイは逆手にジェイドを持ち替える。
ヒスイ「この勝負!もらった!」
 必殺の連射で攻めるヒスイ。しかし・・。
クロウ「それはどうかな?」
 クロウは、まったく見当違いの方向へビー玉を放つ。
クロウ「お前がその技を出すのを待っていた。」
ヒスイ「まさか・・・しまった!」
 カンッ!!
 クロウが放った玉はイングリッシュボールで、壁にぶつかり、そのままロープへ向かう。
 しかし、リバースハンドミッションで手首に負担をかけているヒスイはすばやく反応することが出来なかった。
 ビシッ!!
 そのショットはロープを掠めた。が、その事でロープは徐々に切れていく。
ヒスイ「あ・・あ・・・!」
ツバサ「勝負あったね。この状態なら、ロープが切れるのは時間の問題。」
 どんどん細くなっていくロープ。
ヒスイ「そんな・・・そんな・・・・死ぬのか・・・俺が・・・この、俺が・・・・!」
クロウ「・・・・。」
 ブチッ!
 ついに、鉄球を支えていたロープが切れてしまった。
ヒスイ「うああああ!!」
 両手をかざし、しゃがむ。
 その瞬間・・・!
 バーンッ!!!
 すごい音がした。
 しかし、ヒスイは何の衝撃も感じなかった。それほどまでにあっさりと死んでしまったのだろうか。
ヒスイ「・・・。」
 目を開ける。体は別になんともない。その代わり、自分が入っている檻の外に、鉄球が落ちているのが目に入った。
ヒスイ「なに・・・?」
 クロウを見ると、ビーダマンを構えていた。もう撃つ必要はなかったはずなのに・・・。
 考えられる事はただ一つ。クロウが鉄球を撃ち、そらしたのだ。
ヒスイ「なぜ・・・助けたんだ?」
クロウ「・・・さぁな。ただ、俺は自分の本能に従っただけだ。それに俺の目的は、バトルに勝って強くなる事。そして、俺のとってのバトルは、ロープを切る事だけだからな。」
ヒスイ「・・・・。」
クロウ「正直に言えば、俺の中に生まれた甘さ。初めて芽生えた、人を求める心。それが、いつの間にか本能になっていた。俺の気づかないうちにな。全て、お前のせいだが。」
 そして、クロウはデスサイズを置いた。
クロウ「撃てよ。ロープを。」
ヒスイ「え。」
クロウ「俺のバトルは終わった。だが、お前は終わっていないだろう?お前のバトルは先にロープを切ることじゃない。俺を殺すことだ。」
ヒスイ「・・・・。」
クロウ「死にたくはないが、仕方がない。」
 クロウはヒスイを助けた事を後悔していない。ただ、自分の中に甘さが生まれた時点で、死を意味する。その事を認めた上での覚悟だった。
ヒスイ「・・・・。」
 ジェイドを構えるヒスイ。しかし、撃たない。
 ポツポツと。地面にしずくが落ちる。
セシル「ヒスイ・・・。」
 泣いているのだ。ヒスイが。涙を流し。
ヒスイ「僕も・・・出来ません・・・。だって・・・僕も楽しかったから!クロウと一緒に旅をするのが!クロウと一緒にバトルするのが!・・・だけど、だけどそれじゃあ意味がないから。恨みを晴らさなければ、一緒にいる意味はないから・・・!だから・・・だから・・・!!」
 ザッ!
 膝をつき、地面に手をつく。
ヒスイ「殺さなきゃ・・・・意味がないから・・・でも・・・でも、いつの間にか、ずっとこのままでいたいって思ってる自分がいて・・・どうすればいいのか、分からなくて・・・どう・・・すれば・・・!」
クロウ「・・・・。」
ヒスイ「憎かったのに!憎かったのに・・・!憎かった相手と一緒にいて楽しいって思うなんて・・・僕は・・・狂っています・・・!」
ツバサ「・・・。」
 ツバサは無言で、リモコンのスイッチを押す。
 すると、檻が下がっていく。
 クロウは、ゆっくりヒスイの元へ歩み、手を差し出す。
ヒスイ「・・・クロウ。」
 涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げるヒスイ。
クロウ「憎かったら、いつでも俺を殺せ。寝込みを襲おうが、病み上がりを襲おうが、どんな卑怯な手を使ってもかまわない。俺も、いつでも全力で迎え撃つ。だがその代わり、俺は、お前を利用する。生きるために必要だからな。」
ヒスイ「・・・・。」
 ヒスイは震える手でクロウの手を取った。
ヒスイ「ありがとう・・・クロウ・・。」
         つづく
 次回予告
ジョー「うおおおおお!!!次回はひっさびさに俺の出番だ!燃えるぜぇ!!!」
ツバサ「久しぶりだね、ジョー!君とまた戦えるのを楽しみにしてたよ!僕の磨きをかけた聖なる翼を見せてあげるよ!」
ジョー「俺だって!あのつらく厳しい修行(?)の成果を見せてやる!!」
ツバサ「次回!『謎の失踪 本当のはじまり』」
ジョー「ってあれ?サブタイと俺ら関係ねぇじゃん!」

 

 

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