第44話「ヒスイの正体」
ヒスイ「なんだって・・・!」
ゴルドン祭の真っ只中。ヒスイは大声を上げていた。
クロウ「どうした?」
ヒスイ「い、いえ・・・。なんでも。」
心なしか、ヒスイは心底焦っているかのように見える。
セシル「悩みがあるんだったら、人に話が方がすっきりするよ?」
ヒスイ「ほんとに、大丈夫ですから。気にしないでください・・・。」
セシル「そう?」
ヒスイ「それより、そろそろ宿に行きませんか?だいぶ日が暮れてきましたし。」
セシル「そうね。ミスコンなんかに出たから、ちょっと疲れちゃった。」
クロウ「・・・・。」
クロウたちは宿へと向かった。
運よく二部屋あいていたので、クロウ&ヒスイ、セシルに別れて部屋に入る。
ヒスイ「・・・・・。」
部屋に入り、ヒスイは窓の外を眺めながら沈黙している。
ヒスイ「(どうすれば・・・!)」
クロウはそんなヒスイを気にかける事無く黙々とデスサイズのメンテナンスをしている。
ヒスイ「(この期に及んで不足だと・・・!くそっ!しかし、病み上がりの今の状態では本気の力は・・・!)」
ヒスイは振り返り、メンテをしているクロウを眺めた。
ヒスイ「(待てよ・・・。そうだ、これなら・・・否応なしに・・!)」
コンコン、ガチャ。
突如、ドアがノックされ、開く。
セシル「きちゃった~。」
クロウ「ああ、お前か。飯にしては早いと思った。」
セシル「そういうことしか頭にないのね・・・。あ、それより。」
そして、セシルは窓際にいるヒスイに話しかける。
セシル「ヒスイ~。セラフィックホーネットのメンテナンスをお願いしたいんだけど・・・。」
クロウ「自分でやれ。」
セシル「むっ!やろうとしたけど出来なかったから頼んでるんでしょ!」
ヒスイ「・・・・。」
しかし、ヒスイはセシルの言葉が聞こえていないのか、何か考え事をしている。
セシル「ヒスイ?」
不審に思い、セシルはヒスイのそばによる。
セシル「どうしたの?」
ヒスイ「うわぁあ!!」
セシルの問いかけに、いきなり大声を出すヒスイ。
ヒスイ「い、いきなり耳元で呼びかけないでくださいよ・・・びっくりしたぁ。」
セシル「び、びっくりしたのはこっちよ。それに、いきなりじゃないよ。さっきからずっと呼びかけてたのに。」
ヒスイ「そうだったんですか?」
セシル「ずっと無視するなんて、ちょっとひどいんじゃない?」
ヒスイ「すいません、ちょっと考え事してたもので。それで、何か用ですか?」
セシル「あぁ、うん。セラフィックホーネットのメンテナンスをお願いしたいんだけど。」
クロウ「だから自分でやれ。」
セシル「だからやろうとしたけど出来なかったって言ったでしょ!」
ヒスイ「まぁまぁ。確かにあれだけのバトルをした後ですからね。消耗も激しいはずです。貸してください。」
セシル「うん、じゃあお願いね。」
セシルからホーネットを受け取り、メンテをはじめる。
セシル「それより、どうだったどうだった?」
クロウ「何が?」
セシル「何がって、さっきのミスコン!」
クロウ「あぁ。動きがちょっと粗かったな。もう少し相手のショットの弾道を読んで・・・。」
セシル「そうじゃなくて!」
ヒスイ「かわいかったですよ、セシルちゃん。ステージは女の子を変えるってよく言いますけど。ほんと、見違えるほどでしたよ。」
メンテする手を止めずにフォローする。
セシル「でしょー?やっぱりヒスイはよく分かってる・・・って!それじゃ普段はまるでかわいくないみたいじゃない!」
ヒスイ「そ、そういう風に捉えますか(汗)」
そして、その後、夕食を食べ、風呂に入り、特にこれといった事件が起こる事無く就寝した。
んで、その翌朝。
クロウ「ん・・・。」
その日はいつもよりも早く目覚めた。
しかも、思ったよりも目がさえている。寝なおすことは不可能だ。
時間を無駄にするのもなんなので、バックからデスサイズを取り出そうと。
クロウ「ない・・・?」
バックの中にはデスサイズは入っていなかった。
クロウ「!?」
しかも、よくみると、隣で寝ていたヒスイの布団がもぬけの殻だった。
クロウ「バカな・・・!」
ダッ!
クロウは勢いよく立ち上がり、部屋を出る。そして、セシルの部屋をノックした。
クロウ「おい!おい!!」
ガチャ・・・。
しばらくして、セシルが眠そうに目をこすりながら出てくる。
セシル「なによ・・もう。こんな朝早くから・・・。」
クロウ「っ、ここには来てないのか!」
セシル「どうしたの?」
クロウ「いなくなっていたんだよ!ヒスイも、デスサイズも!」
セシル「えぇ・・!?」
クロウ「まさか、あいつ・・!」
セシル「ヒスイがそんな事するわけないよ!もしかしたら、誰かがまたクロウのバッグを漁ってて、それを見つけて追いかけたのかもしれないし。」
クロウ「・・・鍵がかかった部屋にか?」
セシル「・・・・・。」
クロウ「とにかく、どっちみちこのままでいるわけにはいかないな。行くぞ。まだ遠くへは行ってないかもしれない。」
セシル「うん。」
外へ出る。
その瞬間、強力なダブルバーストがクロウ目掛けてぶっ飛んできた。
クロウ「何!?」
間一髪でそれをかわす。ダブルバーストは旅館の壁にぶつかり、落ちる。
クロウ「ちっ!」
瞬時にそのダブルバーストが飛んできた方向を見る。そこには・・・。
クロウ「お前は!」
セシル「ヒスイ!」
ヒスイ「なんだぁ、思ったより早かったなぁ。」
クロウ「貴様!デスサイズをどうするつもりだ!」
ヒスイ「ぶっ壊すのさ。そして、武器を失ったお前を倒す。」
クロウ「!?」
ヒスイ「まぁ、ちょっと予定が狂っちゃったけど。いっか。」
ヒスイはデスサイズを落とし、そのまま踏みつけようとする。
クロウ「させるか!」
すばやく小石を拾い、デスサイズへ投げる。
その小石は見事ヒットし、ヒスイの足は地面を強く踏みしめる事に。
クロウは地面をけり、デスサイズを奪い取る。
クロウ「よし。」
ヒスイ「ちっ。」
したうちし、ヒスイはゆっくりと懐からジェイドグラスパーを取り出す。
ヒスイ「まったく、とことんてこずらせてくれるよ。」
銃口をクロウに向ける。
セシル「ま、待ってよ!なんでヒスイがクロウを狙うの!?私たち、仲間じゃなかったの!?」
ドンッ!!
ヒスイの放ったショットはセシルの頬を掠める。
ヒスイ「ごちゃごちゃうるさい。甘ったれのお譲ちゃんは黙ってな。」
セシル「っ!」
ヒスイ「俺はな、最初からお前らの事なんか仲間だとは思っていなかったんだよ。一緒に旅をしながら、ずっとチャンスを探していたんだ。クロウを倒すチャンスをな!」
クロウ「なに!?」
ヒスイ「今のクロウは、ビアスとの戦いでかなり弱っている。これ以上のチャンスはありえない。」
セシル「なんでよ・・・なんで・・・!」
セシルは目に涙を浮かべながらヒスイに問いかける。
セシル「なんで、クロウを倒さなきゃいけないの!?いったい、何の目的で・・・。」
ヒスイ「目的?そんなものはない。クロウを倒すこと自体が、俺の目的だからな!」
セシル「じゃあ理由は!なんの理由もなしにそんな事を目的にしたの!?」
ヒスイ「理由?・・・ふっ、そんな事、クロウが一番よく知っているはずだろ?」
クロウ「なに?」
ヒスイ「その顔じゃ分からないか。まぁ、覚えていろと言うほうが無理があるな。」
クロウ「早く言え。」
ヒスイ「俺は、お前の兄弟だ。数年前、お前に殺されかけたな!」
クロウ「なに!?い、生きていたのか・・!」
ヒスイ「(ほっ)ああ。俺も驚きだ。俺自身がこんなに生き汚いとは。」
クロウ「・・・・。」
ヒスイ「俺はお前に復讐するために今まで生きてきた。それだけを目標としてな!」
ドンッ!
クロウに向かってパワーショットを放つ。
カンッ!!
すばやくデスサイズでこれを迎え撃つ。
クロウ「お前が俺にやられたのは、お前が弱かったからだ。それ以外の何者でもない。」
ヒスイ「黙れ!俺はお前を倒す!必ず!」
ダッ!
ヒスイは後ろへ後退しつつ、連射する。
クロウ「!?」
クロウはその連射を交わすことで手一杯で、ヒスイを追いかける事は出来なかった。
二人の間に絶対的な距離が生まれる。
お互いに射程圏外に入ったのだ。
このままでは攻撃が出来ない。
お互い、圏内に入るまでジリジリと間合いを詰めなければならない。
クロウ「(このままでもでたらめに撃てば、当たる可能性はある。だが、その反動で出来る隙をつかれたら元も子もないな。)」
ドキュンッ!!
しかし、ヒスイは一瞬笑ったかと思うと、クロウに向かってビー玉を放つ。
クロウ「なに!?」
しかもそのショットは正確にクロウの顔面に向かってくる。
クロウ「くそっ!」
ガキンッ!!
急いでそのショットをとめる。そのとき生じたリコイルで一瞬隙が出来た。
その隙をついてヒスイがこちらに向かって全力疾走してくる。
ヒスイ「うおおおお!!!」
クロウ「ちぃ!」
クロウは地面をけり、右へ移動する。
ヒスイ「!?」
まっすぐ全力で進んできたヒスイにとって、これは十分な不意になる。
しかし、動きを抑えていたクロウは十分にヒスイの動きに対応できる。
クロウ「はぁ!」
ドンッ!!
ヒスイの横腹へビー玉を打ち込む。
ヒスイ「くっ!」
ガンッ!
見事命中。しかし、それはジェイドグラスパーへ。
とっさにビーダマンをたてにしたのだ。
ヒスイ「ふぅ・・・!」
そして、その体制のままクロウへ連射。
クロウ「っ!」
クロウは大きく後ろへ跳び、その連射をかわす。
そして、飛びつつ空中でヒスイへパワーショットを放つ。
ヒスイ「はぁ!!」
ズドドドド!!
そのパワーショットはヒスイの連射により防がれる。
ザッ!
着地し、すばやく態勢を整える。
ヒスイ「さすがだな。病み上がりとは思えない。」
クロウ「当然だ。一度勝った相手に、負けるわけにはいかないな。」
銃口をヒスイに向けたまま、ゆっくりと歩み寄るクロウ。
ヒスイは一歩も動かず、ただクロウがくるのを待っている。
一触即発。
二人の間に、ただならぬ雰囲気が漂う。
互いに牽制しあい、出方を伺う。
下手に動けば返り討ちにあう。そんな緊張感を持って。
クロウ「・・・・。」
そして、ついにクロウが動いた。
ゆっくりとトリガーを押す。
ヒスイもこれに対抗する。
カンッ!
ぶつかる玉。そして、クロウのビー玉とヒスイのビー玉が横にはじかれ・・・。
そのままクロウの玉は壁にぶつかり、ヒスイに向かって飛んでくる。
ヒスイ「イングリッシュボール!?しかも、俺の玉とぶつかる事を想定して・・!」
クロウ「はぁ!」
さらにクロウはショットを放つ。
横からのショット、前方からのショットに、なすすべなく、ヒットしてしまう。
ヒスイ「くっ!」
バーンッ!
強烈な当たりに吹っ飛ぶヒスイ。だが、それでもなんとか踏ん張る。
ヒスイ「・・・・ジェイドグラスパー、リバースハンドミッション。」
ジェイドグラスパーを逆手に持つ。本気モードだ。
クロウ「ようやく、本気か。」
ヒスイ「絶対に、お前を倒す!」
つづく
次回予告
ヒスイ「クロウ!今こそ、あのときの恨みを晴らしてやる!」
クロウ「いいぜ・・。もともと俺が撒いた種だしな。かかってこい!」
ヒスイ「次回!『過去を超えた戦い!』」
クロウ「極めろ、強さへの道!」
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