弾突バトル!フリックスアレイ」カテゴリーアーカイブ

弾突バトル!フリックス・アレイ 第7話 改訂版

第7話「流浪のフリッカー出現!野生のオフロードバトル!!」

 

 ある日の下校風景。
 バンとオサムとマナブが三人で並んで帰路についていた。

「それにしてもバンのドライブヴィクターほんと強いよなぁ」
 三人の話題は、ドライブヴィクターについてだった。
「おう!Mr.アレイとのバトルで使いこなし方も分かってきたし、ますます俺がダントツ一番だぜ!」
 バンはドライブヴィクターを取り出して二人に見せびらかす。
「今日の昼休みもバンの連戦連勝だったからなぁ。ちょっとずるいぜ」
 一人だけ市販品じゃなく特殊なワンオフものを使うというのは少しフェアじゃないかもしれない。
「なははは!でも、使いこなすの結構難しいんだぜ」
「確かに、昼休みに一回撃たせて貰ったけど、僕達じゃまともにシュートできなかったからね」
「だあぁあぁ!ますますバンが強くなるじゃねぇか!」
 マナブの言葉を聞いてオサムは頭を抱えて唸りだした。
「まっ、ドライブヴィクターも完全に使いこなした事だし。これで俺が正真正銘ダントツってわけさ!リサにだってもう負けねぇ!」
「うん、これで互角だね。あ、でも油断しない方がいいよ」
 突然、マナブの口調が重くなる。
「ん、どうしたんだよ?」
「ちょっと、最近、嫌な噂を聞いたんだ」
「噂?」
 バンとオサムが首をかしげた。
「二人とも流浪フリッカーの話って知ってる?」
「流浪フリッカー?」
「なんだそれ?」
 二人が首を傾げる。
「なんでも、強いフリッカーを求めて全国を旅しているフリッカーらしいんだけど。先日、隣町のチャンピオンがそのフリッカーに負けたらしいんだ」
 仰々しく語るマナブに、オサムは身震いした。
「ひゃ~おっかない話だなぁ」
「そいつ、強いんだなぁ。一体どんな戦い方してるんだろう?」
 バンの興味はまだ見ぬフリッカーの戦い方だ。
「詳しくは分からないけど、ただ奴が指定するフィールドが一癖あるらしいんだ」
「フィールドかぁ。なんか変な仕掛けしてるんじゃないだろうなぁ?」
「さぁ、そこまでは。ただ、隣町まで来てるって事はこの町に来ても不思議じゃないからね。注意しないと」

「あぁ、あんま係わり合いになら無い方が良さそうだな」
「何言ってんだよ。全国を旅して修行してるような奴なんだろ?!俺は是非戦ってみたいねぇ!」
 オサムとバンの意見は正反対のようだ。
「相変わらず物好きだな、バンは」
「そういうんじゃないけどさ。やっぱ強そうな奴とは戦ってみたいじゃん!」
「でも得体の知れない奴なんだぜ。関わってもしもの事があったらどうすんだよ」
「そん時はそん時だよ。イチイチビビッてたら戦えな……おっ!」
 ドンッ!
 オサム達との会話に夢中になって前を見てなかったバンは、前方にいた男の人にぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさ……おぉう!」
 反射的に謝りながらその人を見ると……その見上げるほどの長身っぷりに驚きの声を上げてしまった。
 しかもその人物、デカイだけでなく、服はボロボロの継ぎ接ぎだらけ、髪は伸ばしっぱなしの、まるで浮浪者のような格好をしていた。
「バ、バン、もう行こうぜ」
 あまり関わらない方がいいだろうと思ったオサムがバンを先へ促す。
「あ、うん」
 バンもいそいそとその人の横をすり抜けて歩みを進める。
「待ちたまえ!!!」
 そんなバンたちの背中に向かって、男は大声を上げた。
 ビクついて立ち止まる三人の前に、つかつかと男は歩んできた。
「お前達、フリックスは知っているか?」
「あ、あぁ……」
 その男の迫力にたじろぎながらも応える。
「ならば、この町で一番のフリッカーは?」
 そこまで聞いて三人はピンと来た。
 噂をすれば影と言うやつだ。
 この男は、あの流浪のフリッカーだ。

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弾突バトル!フリックス・アレイ第6話「真の相棒になるために 対決!Mr.アレイ」 改訂版

第6話「真の相棒になるために 対決!Mr.アレイ」

 リサが段田家に居候して数日が経ったある日の放課後。

「ただいま~!」
 バンが玄関を開けて帰宅したかと思うと、すぐに居間にカバンを置いて外に出ようとする。
「あ、おかえり」
 出ざま、リサと遭遇する。リサは、バンの行く手を阻むように立っている。
「あぁ、リサ。ちょっと俺これから、公園で友達とバトルしてくるから。家でおとなしく留守番してろよ!」
 そう言って、今にも駆け出しそうなバンにリサは不満気な表情をする。
「また、行くの?」
「おう!今日もドライブヴィクターでダントツだぜぇ!ってことで、そんじゃ」
 片手をビシッと上げて、リサの横をすり抜けて行こうとする……が。
 ギュッとリサに裾を掴まれてしまい、それ以上進めない。
「な、なに?」
「……」
 リサは無言で、何かを訴えかけるようにバンを見つめてきた。
 しかし、バンにはリサが何を言わんとしているのか理解できない。
「?」
「……」
「??」
「………」
「???」
「…………」
「????」
「……………」
 しばらく、無言のリサと首を傾げるバンの睨み合いが続いた。

「もしかして、リサも行きたいのか?」
 ようやくバンはリサの心情を理解した。
 リサはコクリと頷く。
「だ、ダメダメ!お前は匿ってんだから、気軽に外に出たら危ないだろ!!」
「……」
 バンに全否定されてシュンと萎れるリサ。
 そういえば、リサを居候させてから、ずっと家から出していない。
 匿ってるんだからむやみやたらに外出させるわけにはいかないのだが、やはりそれは不憫だ。
 そう思ったバンは、少し考える。
「う~ん、でも確かにうちに篭ってるだけじゃ可哀相だよなぁ……」
 しばらくうなっていると、いいアイディアが浮かんだようだ。
「そうだ!リサ、ちょっと来い!」
 言って、バンはリサを奥の部屋に案内した。

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第4話「リベンジ目指して!勝利は誰にも渡さない!!」改訂版

第4話「リベンジ目指して!勝利は誰にも渡さない!!」

 
 バンが通っている小学校。
 登校して、朝のHRが始まるまでの時間の教室はとっても賑わっている。

 それはバンとオサムとマナブの仲良しトリオも例外ではなかった。

「いやぁしかし、昨日の大会すごかったなぁ、バン!」
「うん、初出場で準優勝なんて、いい所行ったよね」
「くっそー、なんか差をつけられちまった気分だぜ」
 オサムとマナブは、口々にバンの準優勝という結果を称える。
 しかし、バンは不満気だ。
「冗談じゃないぜ。あんなの凄くもなんともねぇ、俺は決勝でリサに負けたんだぞ!ちくしょう!!」
 大会全体の結果よりも、リサに個人的に負けてしまった事がバンにとって最大の不満のようだ。
「次戦う時は絶対に負けねぇ!絶対にリベンジしてやるんだ!!」
 リベンジに燃えるバンに、マナブは冷静に言う。
「それにしても、あのリサって子、どこであそこまでのテクニックを身に着けたんだろう」
「へ?なにが?」
「いや、初めて観たはずのホールフィールドでも難なく対応してバンを翻弄してたし……普通のフリッカーはあそこまで上手い立ち回りは出来ないと思うけど」
「それは、リサが普通じゃなく強いフリッカーってだけじゃないのか?」
「まぁ、それは間違いないんだけど、どうしてそんなに強いのかって言う事を……」
 煮え切らないマナブに対して、バンは声をかぶせた。
「だからつまり、俺も同じくらい強くならなきゃ話にならないって事だろ!だったらもっともっと強くなりゃいいんだ!!」
 バンの言葉に、オサムが共感する。
「まっ、そういう事だな。バン!昼休みまた練習しようぜ!!」
「おう!!」
 なんだか元気のいい二人に、マナブはボソッと呟く。
「ほんと脳筋だよなぁ、こいつら……」

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第3話「力と技の対決!ドライブヴィクターVSフレイムウェイバー」 改訂版

第3話「力と技の対決!ドライブヴィクターVSフレイムウェイバー」

 

 ゴトーマガリカドーフリックス大会。
 予選のフリップボウリングも終了し、いよいよ本戦出場者が決定される。

『さぁ、フリップボウリングの集計が終わったぞ!!本戦進出者はこの8名だ!!』

 モニターにトーナメント表が表示され、そこに名前が記入されていく。
 最初に表示されたのは、バンだ。
「やったな、バン」
「まっ、当然だぜ!なんたってダントツだもんな!!」
 まぁ、パーフェクト叩きだしたんだから当然と言えば当然だ。
 そして、その次に表示されたのはオサムの名前だ。
「おっ、俺も予選通過だ!しかもいきなりバンとバトルか……!」
 オサムは自分の名前を見つけたようだ。
「やったな、オサム!これで決着つけようぜ!!」
「ああ!」
 そしてしばらくして、リサの名前が表示される。
 どうやら、バンとは別ブロックのようだ。
「あっ!」
「どうした?」
「いや……(リサとは、決勝までいかないと戦えないか)」

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第1話「ダントツ一番!段田バン!!」 改訂版

  第1話「ダントツ一番!段田バン!!」

 4月も半ばを過ぎた土曜の昼下がり。
 関東にある都心からやや離れたベッドタウン。千葉県千葉市の住宅地の一軒家で、父と息子が昼食をとっていた。

「どおだ?うめぇか、バン!」
 ガツガツと、丼飯をかきこむ息子に父親はにこやかな笑顔を向けている。
「おう!やっぱ父ちゃんの作る味噌汁ぶっかけ丼は最高だぜ!!」
 ご飯粒をホッペにいっぱいつけながら、息子……バンが元気良く答える。
「はっはっは!そうだろうそうだろう!なんたって、その味噌汁はご飯にぶっかけるために特別な味の調整をしてたからなぁ、そんじょそこらの味噌汁ぶっかけ丼とは訳が違うぜ!」
「こんなご馳走が食えるなんて、オレ父ちゃんの息子でよかった~!!」
 たかだか味噌汁ぶっかけ丼に歓喜しながら、バンはあっという間に平らげてしまった。
「ふぅ、ご馳走様~!」
 箸を置いて、食器を流しに持っていくと、バンはすぐさま出かける準備をし始めた。
「なんだ騒々しいな、どっか行くのか?」
「うん!これから中央公園に行って、皆とフリックスバトルしてくるんだ!」
 フリックスバトルに必要なものが入ってるであろう鞄を担ぐ。
「よし、準備オッケー!いってき……!」
「あ~、待て待て!出掛ける前に、母さんに挨拶してけ!」
「おおっと、そうだった!」
 体制を整え、神棚に飾られている20代後半くらいの女性の写真の前に座り、手を合わせる。
「母ちゃん、行ってくるよ……」
 しばらく想いを馳せるように目を閉じたのち、立ち上がる。
「じゃ、いってきます!」
「おう!」
 片手を上げて、元気良く家から飛び出して行った。
 父親は、その後ろ姿が見えなくなるまで眺めたあと、妻の写真の前に座る。
「繭子、お前が逝っちまってもう6年になるけど……あいつは、バンは元気に育っているよ。安心して見守っていてくれ」
 その言葉を聞いて、写真の中の繭子の顔が柔らかくなった……ような気がした。

 中央公園。
 住宅地の外れにあるそこそこ広い公園で、子供たちの遊び場になっている。
 今日も、子供たちがフィールドを囲ってフリックスバトルに興じていた。

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第39話

第39話「悪夢の覚醒!全てを飲み尽くす闇」
 
 
 グレートフリックスカップ関東予選もいよいよ折り返し地点。
 勝ち星もかなり溜まり、予選通過は確実かと思われたバンの前にあのザキがイツキとともに現れた。
 
「イツキ、それにザキ……!」
 かつてドライブヴィクターを破壊した宿敵、ザキの登場にバンは気を引き締めた。
「よぉ、久しぶりだなぁ。あの雑魚フリックス、どうにか治ったみたいで安心したぜ。またブッ壊す楽しみが増えた」
「なんだとぉ……!俺はもうあの時とは違う!!お前なんかにゃ負けないぜ!」
 ザキの挑発を受けて、バンは完全に頭に血が上ってしまった。
「ふふふ、自信たっぷりですねぇ。では、私達二人の挑戦、受けてもらえますか?」
「2VS1って事か……?」
 イツキの提案に、バンは目を見開いた。
「大会のルール上は可能ですよね。あなたが勝てば一気に星を二つ手に入れられますし、我々が勝っても星は一つしか手に入らない……何も損する事ばかりではないんですよ」
「そ、そりゃ分かってるさ」
 しかし、よりによってザキを含めた相手に、人数的に不利な条件で挑戦を受けていいものか
 何かよからぬことを考えているのは間違いないはずだ。
「警戒するのも無理はありません。なので一つ約束しましょう。このバトル、私は何もしません。機体とマインをフィールド上に置くだけです」
「なに!?」
 と言う事は、実質1vs1での戦いで、勝てば二つ星が手に入ると言う事だ。
 この約束が絶対なら、一気にバンにとって有利な条件となった。
「まぁ、自信が無いってんならそれでも良いんだけどな。俺一人に勝つ自信が無いってんならな」
 ザキのこの挑発が引き金となった。
 そう、ここで引き下がれば「星が二つ貰える条件なのに、ザキ一人に勝つ自信が無い」と言ってるようなものだ。
「だ、誰が!上等だ、受けてやるぜ!!」
 ここで、他に誰か仲間がいればブレーキとなってくれたのだろうが。
 バン一人では挑戦を受けると言う選択肢以外はありえなかった。
 
 三人はフィールドについて対峙した。
 マインをセットし、機体をスタート位置につける。
 ザキはシェイドスピナー、そしてイツキは……。
「フロードダズラーじゃない?」
 イツキは、観た事のない黒いフリックスをフィールドにセットしていた。
「私が所持している機体は一体だけではありませんから」
「……!」
 何かを企んでいる。しかし、それが分からない。
 でも、セットした以上逃げる事は出来ない。
 バンは覚悟を決めた。
 
「「アクティブシュート!!」」
 
 宣言通り、イツキは機体に触れようとはせず、バンとザキだけのアクティブシュートとなった。
 
「俺たちの新しい力を見せてやるぜ、ディフィートヴィクター!!」
「けっ、また打ち砕いてやるよ!!」
 ディフィートヴィクターはまっすぐ突っ込んでいくのに対して、シェイドスピナーはスタートからちょっと進んだだけの位置でスピンしている。
 バーン!!!
 二機は激突し、大きく弾かれるものの、ディフィートの方が進んでいる。
「先攻は貰ったぜ!それどころか、このまま弾き飛ばしてやる!!」
「甘いっっっ!!!」
 ヒュウウウウウウ……!
 回転を続けるシェイドスピナーの周りの風が変化した。
「ま、まさか……!」
「死ね……ブラックホールディメンション!!!」
 シェイドスピナーの猛回転が強烈な渦巻きを発生させた。
 
 ビュオオオオオオ!!!!
 勢いを失ったディフィートヴィクターはその引力に吸い寄せられるように、シェイドスピナーの渦巻きへ横っ腹を晒しながら近寄っていく。
「う、うわああああ!!!!!」
 バチーーーーン!!!!
 
 なすすべなく、ディフィートヴィクターは弾かれて場外してしまった
 
「い、いきなりアクティブからブラックホールディメンションだと……!」
「アクティブでの場外は1ダメージ。壊して一気に終わせてもよかったが、思いの外そのFXシステムとやらは頑丈らしいな。まぁ、次で決めるか」
「同じ結果になると思うなよ……!」
「あぁ、違う結果になるだろうさ。今度は壊してやるよ」
「っ!」
 
 仕切り直しのアクティブ。
 バンとザキは機体をフィールドにセットし直した。
 
(このままじゃ、さっきと同じだ……ディフィートヴィクターとシェイドスピナー、パワーは互角だけど、力を打ち消し合った後にブラックホールディメンションを発動されたら、何もできない……どうすれば……!)
 いくら考えてもいい案が浮かんでこない。
(ええい、考えても仕方ねぇ!こうなったら!!!)
 
「「「アクティブシュート!!」」」
 
「やれぇ!シェイドスピナー!!」
「うおおおおお!!!ブースターインパクトォォォ!!!」
 
 バシュウウウウウウ!!!
 
 バキィィィ!!!!
 
 しょっぱなからブースターインパクトを発動したディフィートヴィクター。
 ブラックホールディメンションを発動される前に高速で激突する。
「むっ!」
 
 バーーーン!!!
 
 回転力が高まる前のシェイドスピナーはシャーシからボディが外れ、ボディが場外してしまった。
「や、やった……!」
 どうにかシェイドスピナーとの激突を制したバン。
 呆然としながらも勝利を噛みしめる。
「やったぜ、ヴィクター!へへっ、どうだザキ!これが俺たちの力だ!!」
 ザキへ向かって拳を突き出しながら快哉を叫ぶバンだが、ザキはそれに反応しない。
「……なるほど」
 ザキは無表情でシェイドスピナーのボディを拾い、フィールド上で回転を続けているシャーシにセットした。
 
「ボディとシャーシの接続が甘かったようですね」
 イツキが小声でザキに言う。
「まぁ、急ごしらえだったからな、仕方ねぇだろ。それに、大して支障はねぇしな」
「……そうですね、計画の件でいえば問題ありません」
「むしろ好都合だ。あいつがあれだけの力を持っている分にはな」
「まさしく。計算通りですね」
 その様子を、バンは怪訝な表情でみている。
「何話してんだ、あいつら?」 
 会話の内容は聞こえない物の、なんとなくよからぬことを考えてるのだろうと言う事は感じた。
 
「まぁいいぜ、次もブースターインパクトでブッ飛ばしてやる」
「段田バン」
 不意に、ザキが声をかけてきた。
「へ?」
「認めてやるよ。てめぇのパワーアップした力をよ」
「あ、……あ、あぁぁ!ど、どうだ!すげぇだろ!もうお前なんかにゃ負けないぜ!!」
 急に褒められたもんだから面食らってしまった。
「だが、その程度じゃ足りねぇ。全然足りねぇよ」
「な、なにぃ!ブッ飛ばされといてそういう事言うかよ!」
「だからよぉ、もう一歩上の力を見せろ。じゃないと、負けるぜ?」
「え、えっらそうに……!だったら見せてやるぜ!俺たちの本気のパワーをな!!」
 
 再び仕切り直しのアクティブだ。
 
「「アクティブシュート!!」」 
 

「観てろザキ!これが俺の本気だぁぁ!!!!」
 先ほど以上の力を込めてのブースターインパクトを放った。
 しかし……。
「見損なわせるなっっ!!!」
 
 ガッ!!
 シェイドスピナーはスピンで受け流し、ディフィートヴィクターはその勢いのまま場外してしまった。
「なにっ……!」
 これで、ディフィートヴィクターの残りHPは1だ。
「てめぇ、何ふざけた事してんだよ……」
 ガッ!
 ザキは怒りを露わにしてバンの胸倉をつかんだ。
「ぐっ!」
「あれがてめぇの考える一歩上の力か!あの程度で俺を倒せると本気で思ったのか!なめんじゃねぇ!!」
 バンは、苦し気に、悔しそうにザキを睨み返す事しかできない。
「ザキ様。お気を静めてください。騒ぎが大きくなると危険です」
「ちっ」
 イツキに言われて、ザキはつまらなそうにバンを手放した。
「……」
 惚けるバンへ、イツキは静かに口を開いた。
「しかし、今のはさすがの私も失望でしたね。ブースターインパクトは確かにパワーが強い。が、見切るのも簡単に出来てしまう。躱されてしまえばあとは自滅するだけだと言うのは火を見るよりも明らか。そんな事も考えないとはあまりにも浅慮です」
「くっ……!」
 イツキの冷静な分析はより一層堪えたのか、バンは視線を落とした。
 その視線の先にあったのは、力なく場外してしまったディフィートの姿だ。
 しかし、その姿にバンは違和感を覚えた。
 
 カタカタと、何かに吸い寄せられるようにフィールドの方へ動いているのだ。
「?」
 先ほどのショックなど好奇心で忘れてしまったバンは、ヴィクターと同様に吸い寄せられるようにフィールドを見た。
 フィールドには、先ほどからずっとスピンしているシェイドスピナーの姿があった。
 不発だったブラックホールディメンションの効力が、場外した後も続いていたのだ。
 
 バンが興味深げにシェイドスピナーを眺めている端で、イツキがそっとザキへ耳打ちした。
「ザキ様、これ以上は時間の無駄かもしれませんね。次の候補を探した方が」
「……いや」
 ザキは、バンの目が好奇心で輝いている事に気付いた。
「計画は続行だ」
 イツキにだけ聞こえる声で、そう言った。

(場外しても吸い寄せようとするなんて、なんて力だ……!でも、それって……)
 バンが何かにひらめきつつあったところで、ザキがシェイドスピナーを止めてスタート位置にセットした。
「おい、さっさと準備しろ。こんなくだらないバトル、すぐに終わらせてやる」
「あ、あぁ」
 ザキに促されるまま、バンもスタート位置に着いた。
 
「「アクティブシュート!!」」
 四度目のアクティブシュート。
 
「今度は失望させるなよぉぉ!!!」
 ザキは先ほどと同様に渾身の力でスピンシュートを繰り出した。
 そして、バンは。
「うおおおおお!!!!ブースターインパクトォォ!!!」
 ブースターインパクトを繰り出す。
「性懲りもなく同じ技ですか、どうやら我々はあなたを買い被りすぎたようです」
 イツキはあきれるように目を閉じた。
「いや、そうでもないぜ」
 対照的に、ザキは面白そうに口元を歪めた。
「っ!」
 バンは確かに先ほどと同じようにブースターインパクトを繰り出した。
 しかし、その方向は全く違う。
 シェイドスピナーを狙わずに見当違いの方向へヴィクターを放っていたのだ。
 
「まさかっ、自ら場外に!?」
「面白れぇ、合格だっっっ!」
 イツキには分からなかったが、ザキには分かったらしい、バンの狙いが。
 
 シェイドスピナーとはぶつからない方向へ突っ込んでいったディフィートヴィクターはフェンスへ激突した。
 そして、勢いを殺さないまま角度を変えて弾かれた。
 
「場外は免れたようですが、それではブラックホールディメンションの餌食になるだけですよ」
「まだまだぁぁ!!!」
 ディフィートヴィクターは、猛スピードでシェイドスピナーへ突っ込んでいく……が、それでもまだ狙いは逸れていた。
 
「さぁ、魅せてもらうぞ……ブラックホールディメンション!!」
 ディフィートヴィクターが場外へ向かう所でブラックホールディメンションが発動。
 すると、それに吸い寄せられるようにヴィクターの軌道が曲がり、スレスレでフィールド端をカーブしてシェイドスピナーを中心に旋回し始める。
「っ!」
「おっしゃぁ!!」
 
 ヴィクターは、旋回しながらスピードを増し、徐々にシェイドスピナーへと近づいている。
 
「まさか……ブラックホールディメンションの吸引力を逆に利用して、場外を免れながら加速している!」
「ブースターインパクトでフェンスに突っ込んだのは時間稼ぎ、そしてブースターインパクトの勢いならブラックホールディメンションの引力に負けずに、逆に利用できるってわけか」
 
「そうだ!スピードを増しながら旋回して回転の中心へ向かう!これがブラックホールディメンション封じ!!トルネードフリーズ!!!」
 
 ガッ!
 ヴィクターとシェイドが接触する。
 すると、密着して二機が回転し始めた。
「ヴィクターの旋回速度がシェイドのスピン速度に並び、そのまま接触する事で、相対的な速度差が0になり、衝撃を相殺しているとは……!?」
 イツキがこの現象を分析した。
 
 ガッ!ガガガガガガ、バーーーン!!
 しばらくもう回転した二機だったが、シェイドスピナーのボディの接続が耐えきれずにボディが吹っ飛び、それによってバランスが崩れて二機が弾かれて少し離れた位置で停止した。
 シェイドスピナーのボディも場外はせずにフィールドに残っている。
 
「収まった……!」
 場外は発生しなかったので、ヴィクターが先攻だ。
「おっしゃ、行くぜ!」
 バンはパージしたシェイドのボディへ狙いを定めた。
「いっけぇ!!!」
 シャーシが外れて防御力のないボディパーツを飛ばすのは簡単だった。
 シェイドスピナーはあっさりとフリップアウトしてしまった。
「っ?」
 しかし、それにバンは違和感を覚えた。
(なんでバリケードしなかったんだ?)
 防御力が下がっていたとはいえ、それでもバリケードをすれば防げた可能性はあった。
 しかし、ザキはそれをせずに棒立ち、あっさりと負けを受け入れてしまった。
 なんにせよ、これでシェイドスピナーはHP0
 バンは初めてシェイドスピナーを撃破したのだった。
 
「へっ、勝ったぜザキ!お前のシェイドスピナーになぁ!!」
 勝利宣言するバンに対して、ザキはニヤリと笑った。
「ああ、よくやった」
「?」
 様子がおかしい。
 ザキもイツキも、敗者としての雰囲気を出していない。
 それどころか「成功者」としての余裕すら醸し出している。
「……」
 バンはザキとイツキの視線の先を追った。
 そこにあったのは、イツキが使っている黒い機体。
 その、黒い機体が……!
 
「う、蠢いてる……!」
 ボコッ!ボコッ!とまるでマグマのような音を立てながら、うねっていた。
「ようやく来たか」
「えぇ、無事成功したようです」
「な、なんだよ、それ……なんでフリックスがそんな風になるんだよ……!」
 明らかな超常現象と、それを観ても落ち着き払っているザキとイツキの態度に、バンは慄いた。
「こいつはな、まだ生まれてなかったんだよ」
「生まれて、ない……?」
「そう、いわば卵のようなものでした。完成率は99%……しかし、特殊な製法で作られているため、最後の仕上げを完遂するためにはより強い衝撃を与え、殻を破る必要があったのです」
「強い衝撃で、殻を破る……?」
「それも並大抵のパワーでは不足です。そこで、ザキ様に次ぐパワーを身に着けたと思われるあなたに目を付けた。
この世で、アクティブシュートの激突を超える衝撃は存在しませんからね……それが、攻撃力のツートップの激突となれば、エネルギーは十分です」
「それで、俺を利用したのか……!」
「バトルロイヤル形式と言うのは好都合でした。あなたが仲間と分断する可能性が高い。ブレーキ役がいないので扱いやすい」
「くっ!」
 
 と、そうこう話しているうちに、黒い機体のうねりがさらに大きくなり、そして……。
  
 バーーーン!と外殻が弾けた。
 
 そこから出てきたのは、禍々しいまでのオーラを放っている暗黒の機体だった。
 
「覚醒した!これが、全てを飲み尽す闇……シェイドディバウア!!」
 ザキがその機体を手に取る。
 バンは、その姿の迫力に圧倒されてしまった。
「な、なんてプレッシャーだ……!」
「さぁ、続きを始めるか」
 ザキはシェイドディバウアを使ってバトルを続行しようとしている。
「なに言ってんだ!シェイドスピナーは撃破したし、そのシェイドディバウアを使えるのはイツキだろ!イツキは試合中何もしないって約束したじゃねぇか!!」
 悪役だからって口約束を破るような、そんな小物ではないはずだ。
 バンはバトル前の取り決めに従って、とりあえず勝ち星だけは受け取ろうとするが……。
 
「あぁ、約束は守るぜ。だがな……」
 ザキは、フィールド上に残っていたシェイドスピナーのシャーシをシェイドディバウアへ取り付けた。
「一体いつから……俺がシェイドスピナーの使用者だと錯覚していた?」
「な、に……!」
「私たちは最初から、シャーシを交換していたんですよ。チームメイト同士のパーツのカスタマイズは自由ですからね、そしてフリッカーが使用するフリックスはシャーシに依存します。あなたが倒したのはザキ様ではなく、この私だったのです」
 つまり、バンがいくらシェイドスピナーのボディを飛ばしても、それによってダメージを受けていたのはイツキの方で。
 シャーシを飛ばされなかったザキは、ノーダメージだったと言う事だ。
 
「さぁ、ここから本番だ。せめてもの情けだ。俺が1ダメージでも受けたらてめぇの勝ちにしてやるよ。それから、てめぇが負けても星は取らないでおいてやる」
「……!」
 ザキにとっては、星がどうこうと言うのはどうでもいい問題になっていた。
 それよりも、シェイドディバウアを使ってディフィートヴィクターを叩きのめし、バンを恐怖に陥れたいと言う気持ちの方が強いのだろう。
「どんな機体だろうと、俺がダントツ一番だ!!」
「おもしれぇ!ぶっ潰してやる」
 
 ディフィートヴィクターとシェイドディバウアがスタート位置につく。
 
「「アクティブシュート!!」」 
 
「カッ飛べぇ!!ブースターインパクトォォォ!!!」
「飲み尽せぇぇぇブラックホールディメンションッッッ!!!」
 
「た、タイムラグなしでブラックホールディメンション!?くっ、相手の勢いを利用して突っ込め!!」
 ヴィクターは先ほどと同じようにブラックホールディメンションの吸引力を利用してフィールドを外周しようとする。
 が。
 
 シュンッ、バーーーーン!!
 
 外周する暇もなく、一瞬で吸い寄せられてしまい、ディフィートヴィクターはフィールドの外へ弾き飛ばされてしまった。
 
「なっ……!」
「まぁ、こんなもんか」
 
 あっけなく場外させられてしまい呆然とするバン。
「どうです?これが、『スクールなんかの生み出した強さ』です」
イツキは、バトル前にバンがゲンタへ言った『スクールなんかにいたんじゃ強くなれない』と言う言葉を皮肉るように言った。
「……」
バンはその言葉に反論する事は出来なかった。

 ザキはそんなバンを一瞥して鼻で笑うと、シェイドディバウアを拾って踵を返した。
「いくぞ、イツキ。もう用はない」
「はい」
 二人並んで去っていく背中を、バンはただただ眺めているだけしかできなかった。

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第38話

第38話「スクールの呪縛!リサの決別」
 
 
『さぁ、第1回グレートフリックスカップ関東予選もいよいよ中盤!
そろそろ折り返し地点の一時間が経過するぞ!!もっとも勝ち星を得るフリッカーは一体だれになるのか!?』
 
 会場内各所で激しいバトルが繰り広げられている。
「「アクティブシュート!!」」
 
「いっけぇ!ディフィートヴィクター!」
「後がないんだ!頑張れ、ツインファング!!」
 バンのディフィートヴィクターが二つの牙を持つフリックスを弾き飛ばした。
「おっしゃあ俺の勝ちぃ!!」
「くっそぉ!最後の星だったのにぃ……!」
 ツインファングを使っていた少年は涙ながらにバンに星を渡した。
 
「へっへっへ、これで20勝!この調子なら楽勝で予選突破だな!」
 集まった星を眺めながらバンはにやにやしながら歩いている。
「リサや剛志達は順調かなぁ?」
 
 一方の剛志とレイジは
「合体技じゃ、レイジ!」
「うん!」
 グランドギガとファントムレイダーの二段攻撃によって、二つのフリックスがはじけ飛んだ。
「ヘッドスクエア!」
「スロースティックビルダー!!」
 フロントが大きい赤いフリックスと、割り箸を接着したフリックスが同時にHP0になる。
「わしらの勝ちじゃな!フロントヘビーでなかなかなパワーじゃったが、まだまだじゃ!」
「そっちのフリックスも良い機動力だったけど、バランス調整が甘いよ!」
 剛志とレイジが得意気に言うと、負けた二人は悔し気に口をゆがめた。
「くっそー、とにかくフロントを重くすれば攻撃力が上がると思ったのに!!」
「お金が無かったからって材料を割り箸一膳だけで作ったのは失敗だったかも……」
 がっくりと肩を落としてその場を去る。
 これで剛志とレイジも大分星が集まってきた。
「今ので18個か」
「順調だね、剛志!」
「チーム戦の分、シングルで戦うよりは多少非効率的じゃが、わしらにとってはこれが一番の戦い方じゃな!」
「うん!」
 
 そして、リサは……。
「ブレイズウェイバー!」
 ブレイズウェイバーが、鋭く切り込んで敵機とマイン両方にヒットする。
「しまったっ!」
 これで相手のHPは0でリサの勝利となった。
「くぅう、Fend offは受け流し性能には自信あるんだけどなぁ」
「マインヒットは受け流し重視の機体と相性が良いから。今回は私の運が良かったよ」
「ちぇっ、まぁそういう事にしとくわ。ほら、星」
 リサに負けたモブ少年は潔く星を渡してくれた。
「ありがとう」
 快くそれを受け取って、リサと少年は別れた。
 
「これで星は15個……マインヒットがメインの戦術だとどうしても長引いちゃうな」
 他のフリッカーの星の数は分からないが、それでもなんとなく自分の勝ち星の集まりが悪いと感じてしまう。
 戦えば確実に勝ってはいるものの、フリップアウトできる確率が低いとバトルは長丁場になりがちで、こういう時間制限付きのルールでは若干不利となる。
「上手く多人数戦に持ち込めればマインヒット重視の戦術でも星を集めやすいんだけど……」
 そんな事をぼやきながら歩いていると、後ろからふいに声を掛けられた。
「見つけましたよ、先輩!」
 声がした方向を振り向いてみると、そこには一人の背の低い少年がいた。
 年齢は9歳くらいだろうか、バンよりも年下に見える。
 しかし、見た目の幼さとは反して、その雰囲気には若干大人びたものを感じさせた。
「っ!」
 そして、リサはその少年に見覚えがあった。
「遠山カップには出場していなかったので、もう引退したのかと思ってましたが……ここで会えて安心しましたよ。お久しぶりです、リサ先輩」
「ゆう……くん……」
 少年の名を呟くリサ。二人は知り合いのようだ。
「はい。もう、1年ぶりでしょうか……あの時はお世話になりました」
 ゆうと呼ばれた少年は丁寧に頭を下げた。
「う、うん、久しぶりだね……」
 返事をするものの、リサは罰が悪そうに目をそらした。
「スクールの新入生だった頃、リサ先輩に指導してもらった日々は忘れません。
あの頃の僕はリサ先輩の足元にも及ばないほど弱かったですが……。
もう一度戦うためにスクールの辛い訓練に耐えてきて……ようやくSランクになったんです」
 ゆうはSランクの証である銀バッジをリサに見せつけた。
「そ、そっか……頑張ったんだね」
 リサは後輩の頑張りに目を細めながらも、それでもどこか複雑そうな顔を見せる。
「残念ながら三武将には選ばれませんでしたが、それでもリサ先輩との再戦を夢見て、ここまで来ました」
「ゆうくん……」
「お願いします。僕と今ここで戦ってください!」
「……うん、分かったよ」
 リサはゆうのお願いに小さくうなずいた。
 
 二人はフィールドを挟んで対峙する。
「頼むぞ、オルカシャーク」
 ゆうは観た事のない黒いフリックスを取り出した。
「それは?」
「あなたを倒すために開発した新型です。フレイムウェイバーの形状を参考にして、炎のフレイムウェイバーに対抗するために水棲生物であるシャチとサメをモチーフにしました」
 確かに、オルカシャークの形状はフレイムウェイバーのように曲線状で、攻防のバランスに優れていそうだ。
(オルカシャーク……確かに強そうな機体……でも、私だってあの頃のままじゃない)
 リサはブレイズウェイバーをギュッと握りしめた。
 
 そして二人はマインと機体をセットする。
 
「「アクティブシュート!!」」
 
 中央で正面から激突するブレイズウェイバーとオルカシャーク。
 しかし、互いに流線型なフロント形状の上に、意図的に重心をずらしての激突だったため、その衝撃は反らされ、互いに回転しながらディフェンスフェンスに激突して停止。
 パッと見ではほぼ同距離だが……
「ドロー……?」
 いや、僅かにオルカシャークの方が奥へ進んでいる。
「これは、僕が……いや……!」
 しかし、物理的な距離はオルカの方が進んでいるものの、回転してシュートポイントを奥の方へ向けているブレイズウェイバーの方が、「スタート地点からシュートポイントの距離」で勝っていた。
 リサの先攻だ。
「さすがですね、リサ先輩」
「ううん、これは運が良かっただけ」
「いえ、さすがのコントロール力です。腕は衰えていないようで、安心しましたよ……でも、それだけの腕を持ちながら、どうして逃げたんです?」
「!?」
 ゆうは奥歯を噛みしめ、感情を押し殺しながらリサを睨みつけた。
「わ、わた、しは……」
 その言葉に、リサは完全に動揺してしまった。
 ロクな返事も出来ないまま、指は震え、視界の焦点が定まらないままシュートする。
 バシュッ!
 ブレイズウェイバーは、オルカシャークにヒットし、フェンスを利用してバウンドしてマインへ向かう……が、ギリギリのところでマインに届かなかった。
「あっ!」
 力加減をミスしてしまった。いつものリサでは絶対にやらない事だ。それだけゆうの言葉は精神的に揺さぶられてしまったのだろう
「僕はずっとあなたと並び立つためにっ!そのためだけに這い上がろうと必死だった!でも、這い上がった頃には、あなたはいなかった……!!僕らを捨てて逃げていた!!!」
「ち、ちがっ!」
 バシュッ!!
 オルカシャークが難なくブレイズウェイバーをマインヒットする。
「何が違うんですか!?」
「私は、ただ……楽しいフリックスバトルが、したかっただけで……」
 それを聞いて、ゆうの表情はさらに険しくなった。
「楽しくなかったと……?僕らとの、スクールでのフリックスが……?」
「ゆうくん……」
「僕は、リサ先輩と一緒にフリックスが出来て、楽しかった……スクールの訓練は辛い事の方が多かったけど、でも、それを乗り超えて強くなれた時は嬉しかった!辛かったことも全部楽しかった事だと思えた!だからここまで頑張れた!!
なのにあなたはそれを否定するんですかっ!!スクールのトップでありながら、それを否定して、逃げて、置き去りにして……それがどういう意味か……!」
「……!」
 憎しみのこもったゆうの言葉に完全に気圧されたリサは、震える指でブレイズウェイバーをチョンオシしてしまった。
「あ」
 これでゆうのターンに移ってしまう。
「あなたはっ!僕たちを侮辱したんだ!!
フリップスペル!フレイムヒット発動!!」

 フレイムヒット……シュート前に自分のマインを再セット可能。ただし変形向き変えせずに撃たなければならない。

 バキィィ!!!
 ゆうは容赦なくブレイズウェイバーをマインヒットする。
 これでもうリサは後が無い。
「楽しくないから逃げた!?辛いから逃げた!?そんなあなたに、トップフリッカーを目指す資格はない!!」
「わたし、は……」
「これでもうはっきりした。スクールトップでもなければ、ここで僕に負けるあなたにフリッカーとしての価値は無い。スクール生として一からやり直すか、今ここで引退してください!」
「私の、価値……」
 
 ゛倒したい相手はたくさんいる、まだ勝ったことない奴だっている。でも、やっぱり俺は、初めての大会で、初めて負けちまったあのバトルは忘れられねぇ。リサじゃなきゃダメなんだ。リサとじゃなきゃ……!”
 
 不意に、決勝前夜にバンに言われた言葉を思い出した。
 その一言一句を脳内で反芻し、リサはゆっくりと顔をゆうの方へ向けた。
「やめないよ」
「先輩?」
 その顔は、先ほどの動揺し切った顔とは違い、凛としていた。
「私は、フリックスを辞めないし、スクールに戻る気もない」
「あなたは、どこまで逃げ続ける気なんですか……!」
「ううん。これは逃げるためじゃない。確かに、最初は逃げるためだった……でも今は違うの。私は、私を一人のフリッカーとして、ライバルとしてみてくれている、そんなフリッカーと戦うために今ここにいるの。スクール生としてじゃなく、一人のフリッカーとして迎え撃つために」
「スクール生としてじゃなく、フリッカーとして……?」
「だから、ゆうくん。君にだって負けないよ。先輩だからじゃない、私は、フリッカーだから!!」
 そう強く言うと、リサはブレイズウェイバーを構えた。
「いけぇ!!」
 バシュッ!!
 リサはスピンシュートでマインを弾き飛ばした。
 マインはオルカシャークのヘッドに激突し、そのまま乗り越えて場外してしまった。
 
 そして、そのマインはリサのだったので、リサはオルカシャークの後ろへマインをセットした。
「オルカシャークのヘッドを逆に利用したっ!」
「昔、ゆうくん達とフリックスをしてた時も楽しかったよ。でも、今の強くなったゆうくんと戦うのはもっと楽しい!」
「リサ先輩」
「無責任な先輩でごめんね。でも、ゆうくんの成長も、今こうして戦えることも、私はすっごく嬉しいよ!」
 リサが満面の笑みでそう語りかけると、ゆうの表情も穏やかになった。
「あの頃のままですね」
「え?」
「きっと僕は、この瞬間をずっと望んでいたんだ。本当は、恨んでたわけじゃない。スクールに戻ってほしかったわけじゃない。ただ、戦いたかっただけなんだ……」
 ゆうは目を閉じて、つぅと一筋の涙を流した。
 そして、それを乱暴に拭うと、キッとリサをねめつけた。
「だからこそ、勝つのは僕です!!」
 ゆうはオルカシャークを構えた。
 ブレイズウェイバーとオルカシャークの線上にマインはない。が、数センチ先まで飛ばせれば場外させる事は出来る。
「いけぇ!!オルカシャーク!!!」
 ゆうは渾身の力でオルカシャークをシュートした。
 バキィ!!
 オルカシャークのヘッドがブレイズウェイバーの懐に潜り込み、掬い上げた。
「アッパー攻撃!?」
「オルカシャークは、マインヒットだけの機体じゃないんです!!」
 
 ゴロゴロと転がりながらフィールドの外へと飛ばされていくブレイズウェイバー。
「っ!!」
 リサは必死にそれをバリケードで防ぎ切った。
「は、はぁ、はぁ……!」
 どうにか場外は防げたものの、元々体力の少ないリサは今の衝撃でかなり消耗してしまった。
「防がれた!?でも、次で決める!」
「どうにか防げたけど、次受けたら……!」
 首の皮一枚繋がったブレイズウェイバー。
 しかし、次フリップアウト狙いの攻撃を受けてしまえば、バリケードを突破されてしまうだろう。
(このターンで決めないと……)
 とは言え、フリップアウトするためには場外までの距離が遠いし、バリケードを突破できるパワーもない。
 が、マインヒットを決めても反撃を喰らえば終わってしまう。
 リサは消耗した体力ながら、集中力をフルに使って盤面を観た。
 そして、ある事に気付いた。
(あの穴……角度が急だけど、ブレイズウェイバーなら、もしかしたら)
 リサの目に入ったのは、中央付近に二つ設置してある穴だ。あの上に機体が一部でも止まれば場外扱いとなる。
 しかし、その穴は敵機との線上にはない。普通に狙うと絶対に行かない位置だ。しかも狙う方向だけじゃなく力加減も考えないといけない。
 かなり難易度の高い状況だ。
「ブレイズウェイバー……」
 リサは手元にあるブレイズウェイバーを見た。
 スクールから出て知り合ったたくさんの仲間達。そんな仲間たちと作り上げた、愛すべき機体。
 リサは、その性能にすべてをかける事にした。
「お願い、ブレイズウェイバー!」
 バシュッ!!
 リサは、オルカシャークではなく、それよりもかなり方向がズレているディフェンスフェンスへ向かってシュートした。
「ど、どこを狙って!?」
 困惑するゆうだが、ブレイズウェイバーは壁にぶつかると、側面に備え付けられたバネの力によってバウンドした。
「バウンドした!?」
 急角度に反射したブレイズウェイバーは、回転しながらオルカシャークの横っ腹にヒットする。
 予想だにしなかった攻撃にオルカシャークは無抵抗のまま弾き飛ばされ、そのまま穴の上に止まってしまった。
「あ、あぁ……!」
 これでフリップアウトで2ダメージ。オルカシャークは残りHPを失い、撃沈してしまった。
 
 バトル終了。リサの勝利だ。
「ありがとう、ブレイズウェイバー」
 リサはブレイズウェイバーを手に取って、いつくしむように抱きしめた。
「……リサ先輩」
 ゆうはオルカシャークを拾った後、リサへ話しかけてきた。
「ありがとうございました」
 そして、深々と頭を下げる。
「ゆうくん……私のほうこそ、楽しかったよ」
 リサは頭を下げているゆうへ手を差し出した。
 それに気付いたゆうは頭を上げてその手を取って、握手した。
「先輩。僕はずっと、スクールトップとしてのリサ先輩しか見ていなかった。でも今度は、一人のフリッカーとしてあなたを超えます」
「うん、楽しみにしてるよ。また、バトルしようね」
「はい。出来れば本戦でもう一度」
 ゆうはもう一度一礼してから、踵を返して歩いて行った。
 その後ろ姿を見ながら、リサは思った。
(これでもう、私はスクール生としてじゃなく、本当に一人のフリッカーとして吹っ切れたような気がする。バン、楽しみにしてるよ)
 
 そして、その頃バンは……。
 
「ふぅ、そろそろディフィートヴィクターもメンテしないとガタが来てるな……」
 連戦連勝だが、さすがにメンテもなしに戦い続ければヴィクターとは言え消耗してくる。
 バンは近くの休憩エリアへ脚を運び、そこでメンテをすることにした。
  
 休憩エリアではバンと同じように機体を修理する目的のフリッカーが大勢集まっていた。
「っひゃ~、結構集まってんなぁ。やっぱ長丁場だから、みんなメンテしなきゃダメなんだろうな。うっし、まだ時間あるししっかりやらねぇとな!」
 バンはドカッと席に座り、ディフィートヴィクターをバラした。
 FXシステムはただでさえパーツが多い。一つ一つしっかりチェックして、汚れを落としたり破損個所のチェックをしないといけないので多少時間がかかるのが難点だ。
「ここは良いな……あ、右サイドパーツ大分消耗してんな……予備に変えとくか」
 パーツケースから新品のサイドパーツを取り出してヴィクターに取り付ける。
 どうしても横っ腹は敵機からの攻撃を受けやすい場所だからその分破損率も高い。
「あとは、フロントのスプリングにグリスアップして……っと!よし、完璧!これで試合中に壊れる事はないぞ!!」
 ディフィートヴィクターを組み直して、メンテ完了!気合を入れ直す意味も込めてヴィクターを掲げたところで、隣のバトルエリアで悲鳴が聞こえてきた。
「うわぁ、何すんだ!!」
「壊す事ないだろぉ!!」
 その声に、バンは反応した。
「な、なんだ?まさかスクール生が……!」
 嫌な予感がして、バンは休憩エリアから駆け出して声が聞こえた方向へ向かった。
  
 そこには……。
「へっへっへ!これがスクールのバトルって奴だぜ!大体、壊れるようなフリックス持ってんのが悪いんだよ!」
 ゲンタが見た事ない緑色のフリックスを手に持ちながら得意気になっていた。
「げ、ゲンタ……!お前も参加してたのか!!」
 ゲンタはバンの姿を確認するとギョッとする。
「げげっ、お前!くぅぅ、毎度毎度余計な所で現れやがって!」
「まだこんなやってんのかよ、進歩ねぇな」
「進歩が無い?はんっ、笑わせる。それはこいつを見てから言いなっ!」
 ゲンタはバンに緑色の新型フリックスを見せつけた。
「クローリングカメレオン!新型機だぜ?俺だって進歩してんだ。もうお前には負けないぜ」
「機体の問題じゃないっての」
 とにかく、ここであったが百年目と言わんばかりに二人はフィールドに着いた。
 
「「アクティブシュート!!」」 
 
 ガッ!ガガガ!!!
 ヴィクターとカメレオンが中央で激突!一瞬、カメレオンが押し込んでくる。
「どうだ!」
「押し込んだ!?」
「カメレオンはフロント重心!激突すれば押し込む力が強い!」
「へっ、でもこっちだって負けるか!!」
 
 一瞬押し込まれたヴィクターだが、すぐにフロントのバネ蓄勢ギミックを発動させて、カメレオンを弾き飛ばした。
「なにぃ?!」
 その勢いのままカメレオンは場外してしまった。
 アクティブシュートでの場外は自滅扱いなのでカメレオンは1ダメージだ。
「へへーん、俺のヴィクターにパワーで勝てると思うなよ!」
「ちっ、そういやお前パワーバカだったな……だったらこうだ」
 カメレオンを拾ったゲンタは、フロントのパーツを可動させて、リアに移動する。
「へ、変形した!?」
「こいつは、重心をフロントからリアに変形出来るんだ。カメレオンみたいに、相手に合わせて戦い方を変えられるんだぜ!」
「卑怯なお前にピッタリだな!」
「なんだと……!見てろよ!!」
 
「「アクティブシュート!!」」
 
「またぶっ飛ばしてやるぜ!!」
 再び激突する二機。
 しかし、フロントが軽くなったカメレオンは、そのままフロントを浮かしてヴィクターを飛び越えた。
「なに!?」
 そしてヴィクターよりも遠い位置で停止した。
「よし、これで俺の先攻だな」
「くっそぉ……!」
「見てろよ、こいつの真骨頂!」
 ゲンタはカメレオンの変形を中途半端な位置で止める。
「そ、その形態は!?」
「こいつが、恐怖のハンマーモードだ。中途半端に上部に設置したハンマーが、相手との激突で振り下ろされてそのまま相手を破壊する!」
「な、なんだと!攻撃するんなら、相手をブッ飛ばせばいいじゃないか!なんでわざわざ破壊するような攻撃をするんだ!!」
「うるせぇ!これが、俺の……スクールの戦い方だ!!」
「……やっぱりお前、なんも進歩してねぇ!!」
 バンは拳に力を込めた。
「来いよ!どんな攻撃が来ても、俺は耐えてやる!!」
「抜かせっ!!」
 バシュッ!
 クローリングカメレオンのハンマー攻撃がさく裂。
 重量物を上部から受けたヴィクターは、さすがに耐えきれるはずがない……と思いきや、ヴィクターは無傷だった。
「た、耐えた……!」
「FXシステムを舐めるなよ…!こいつは上部にも防御パーツを付けてんだ!そんな攻撃ビクともしねぇぜ!」
「ば、バカな!」
 そしてバンのターン。
「見せてやるぜ!誰に教わったわけでもない俺の戦い方を!俺のシュートを!ヴィクターの力を!!」
 グッ!と力を込めて、ヴィクターをシュートした。
「フリップスペル!デスペレーションリバース発動!
アンリミテッドブースターインパクト!!」

 
 バシュウウウウ!!!
 バンの必殺技さく裂!凄まじい勢いでクローリングカメレオンを弾き飛ばした。
 そしてヴィクターはスペルの効果で自滅は阻止。
 
 これでカメレオンは撃沈。バンの勝利だ。
 
「なっ、くそ……!」
「どぉだ!これが俺の力だ!!」
「ち、ちくしょう!!」
 ゲンタはカメレオンを拾ってそのまま走って逃げてしまった。
 
「へへへっ、観たか!スクールなんかにいたんじゃ、強くなれねぇんだよ!!」
 そんな風に得意気になるバンは後ろから、不意に声を掛けられた。
「ふふふ、それはどうでしょうね」
「っ!」
 バンは振り返った、そこにいたのは、イツキとザキだった。
「ザ、ザキ……!」
「あなたの強さは凄まじいものがあります。だからこそ、スクール生として勝負がしたいですね」
 イツキとザキが、不敵な笑みでバンの前に立ちはだかる……!
 
 
     つづく!
 
 次回予告
 
「俺の前に立ちはだかったイツキ、そしてザキ!こいつらが、2VS1で勝負を挑んできた!へっ、上等だぜ!何企んでんだか分からねぇけど受けてやる!!
ディフィートヴィクターの力で二人ともブッ倒してやるぜ!!
 
次回!『悪夢の覚醒!全てを飲み尽くす闇』
 
次回も俺がダントツ一番」

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第37話

第37話「バトルロイヤル!それぞれの戦い!!」
 
 
 いよいよグレートフリックスカップの関東予選大会が開催された。
 ルールはバトルロイヤル制で、もっとも勝ち星を獲得した上位8名が本戦に進出できる。
 
 そして、剛志とレイジの前に早くも、親友コンビを名乗る天童と亀山と言うフリッカーがタッグ戦を挑んできた……!
 
「わしら二人にタッグ戦を挑んでくるとはいい度胸じゃ!」
「僕と剛志のコンビネーションを見せてあげるよ!」
 フィールドを挟んで、四人が対峙する。
「憧れの二人と戦えるなんてっ!」
「楽しみだな~!」
 天童はチビで早口、亀山は小太りでのんびりとした口調をしている。
(あの二人、一見凸凹コンビじゃが)
(案外そういうコンビの方がバランスが取れてるもんね)
 剛志とレイジは互いに顔を見合わせながら頷いた。
((油断は禁物!))
 
「「「「アクティブシュート!!」」」」
 
 四機が同時にフィールドで駆ける。
 バッ!
 ファントムレイダーが飛び出して遠くへ進んだ。
「よしっ!」
「良いぞレイジ!先手はもらった……」
「そうはさせないっ!!!」
 シャアアアアア!!!
 ぶつかって減速したはずのチャージングレディバグが、ゆっくりとフィールドの端まで進んでいた。
「なにぃ?!」
「俺のっ、チャージングレディバグは直進重視のメガダッシュシャーシ搭載!だから機動力なら負けないっ!!!」
 
 カッ!
 レディバグは、フィールド端に設置している段差に接触して自滅することなくストップした。
 
「先手は俺たちだっ!」
 先手を取ったのは天童、亀山コンビだ。
「な、なんちゅう機動力じゃ……!」
「ファントムレイダーが、後手になるなんて」
 
 公式大会でのチーム戦のルールは、ターンはチームごとに行い、先手はアクティブで最も遠くに進んだフリッカーの所属するチームからになる。
 そして、チームのターンでは好きな順番で一回ずつシュートできるが、最初に撃ったメンバーのフリックスが停止したらその時点でターン終了となる。
 なので、シュートしてから停止するまで時間がかる機体なら時間差シュートが可能だが、基本は同時にシュートした方が良い。
 
「じゃあ僕から~いくよ~!!」
 バシュッ!!
 まず、亀山がスライディングタートルをフィールド中央に向かってスピンシュートした。
 
「なんじゃ?一機しか撃たんのか?」
「しかも攻撃が外れてる。次のターンで狙い撃ちされるよ」
 剛志とレイジがターンの準備をしようとするのを、天童が制した。
「待ったっ!まだ俺たちのターンはっ!」
「終わってないんだなぁ~~」
「え?」
 
 言われて気づいた。
 スライディングタートルはフィールドの中央でずっとスピンしている。
 最初に撃ったスライディングタートルが停止するまで、チームのターンは続くのだ。
 
「な、なんてスピン持続力じゃ!?」
「僕のスライディングタートルはメガスピンシャーシを搭載してるから~、スピン力が高いんだ~~」
「それじゃ、タートルのスピン力が落ちないうちにっ!!」
 天童がスピンを続けるタートルへ向かってレディバグをシュートした。
 
 ガッ!!
 二機がぶつかり、互いに軌道がそれる。
 そしてそのままレディバグはファントムレイダーへ、スライディングタートルはグランドギガへ激突した。
 しかも、フッ飛ばされた二機はそのままマインにぶつかってしまう。
 
「くっ!」
「そんなっ!二体同時にマインヒットされた……!」
「あの角ばったボディのサイドアタックはなかなかもんじゃな……!」
「これが僕たちの~、コンビネーションさ~」
「しかも、二体を分断したっ!これならさすがの君達でも、チームプレイできないはずっ!」
 そう、レイダーとギガの位置は若干離れてしまった。しかも、タートルもレディバグも、そしてマインも若干距離が離れており攻撃がしづらい位置にある。
 しかし剛志とレイジは余裕の表情だ。
「ふんっ、この程度で」
「僕たちの友情は崩せないよ!」
 そう言って、剛志とレイジは、お互いの機体のパーツをバラし始めた。
「っ!?」
「パーツが分解した?」
 
 そして、ギガとレイダーのサイドパーツを交換した。
「チーム同士でパーツを交換するなんて……!」
「そんなフリックス、初めて見た~」
 
「これがFXシステムの強みじゃ!見せてやるぞ!」
「僕らのコンビネーション!」
 バシュッ!!
 レイジがレイダーを若干ドリフト気味にシュートし、レディバグへアタックする。
 弱い当たりだったが、レディバグはそのままするするとタートルの方へ移動する。
「あぁ、レディバグ~!!」
「機動力の強さが仇になったね!」
 そして、そのタートルへはグランドギガが突っ込んでいた。
「グッドタイミングじゃ、レイジ!!」
 ガッ!!!
 グランドギガがタートルへ激突するとほぼ同時にレディバグもタートルの方へ近づいてきた。
 バキィィ!!!
 そのまま二機が吹っ飛び、フリップアウト。グランドギガはフィールド端の段差でストップした。
 
「二機同時にフリップアウト……!」
「これが、タッグバトル専門家の力……!」
 剛志とレイジのテクニックに、天童と亀山は茫然自失。
 戦意を失った二人は、その後の仕切り直しアクティブでも失敗し、あっさりと撃沈されてしまった。
 
「やったね、剛志!」
「わしらの勝ちじゃな」
「うん~僕たちの完敗だ~」
「でもっ、いい経験が出来たっ!ありがとう!!」
 天童と亀山は潔く勝ち星を二人に渡した。
 
 一方のリサも別のフリッカーと対峙していた。
 相手はどうやら女子のようだ、弓道着を着ており、女子にしてはやや長身で、凛とした顔つきをしている。
「私の名前は、鶴巻由美。見たところ、この会場での女性の参加は私たち二人だけのようだ。ここで、女性フリッカー最強を決めるのはどうだ?」
「あ、遠山リサ…です……。う、うん、面白そう、かも」
 人見知りなリサはオドオドしながら由美の提案に答えた。
(遠山リサ……どこかで聞いた事あるような。しかし、ずいぶんと気が弱そうだ。これでは戦う前から負けているも同じ)
 
 リサと由美がフィールドにフリックスをセットする。
「赤城、推して参る!」
「ブレイズウェイバー……いくよ」
 
「「アクティブシュート!!」」
 シュンッ!!
 赤城は素早く正確なシュートで突進してきた。
「早いっ!」
「心を静め、確実に射る。それが鶴巻流奥義!」
 ガッ!!
 やや赤城が進んだ地点でブレイズウェイバーに接触する。
 しかし、ウェイバーは反射するように軌道を変えた。
「躱された!?」
 が、先手を取ったのは赤城の方だ。
「少々驚かされたが、私の先手だ」
 先ほどのアクティブシュートを見たところ赤城はフリップアウトを狙えるような攻撃力を持っているように思えない。
 が、マイン合戦になれば先手を取った方が圧倒的に有利だ。
「マインの位置は遠い。しかしっ!」
 赤城はボディ上面の甲板のようなプレートを回転させて横向きにした。
「プレートが、回転……!?」
「これで横幅が広まり確実にマインヒットが出来る!」
 カンッ!
 難なくマインヒットし、反撃されないようにマインを遠くへ飛ばした。
「さぁ、これで反撃は出来ないはず」
 ブレイズウェイバーから赤城を結ぶ線上にはマインが無い。ちょうどブレイズ、赤城、マインで正三角形でも結べそうな位置合いだ。普通の機体の普通のシュートではマインヒットは不可能。
「……」
 リサはブレイズウェイバーを構えながら、ジッと盤面を見据えた。
 その表情をみて、由美はひるむ。
(こ、この集中力……!先ほどの気弱な態度からは想像も出来ない……!)
 
「いけっ!」
 バシュッ!!
 リサはブレイズウェイバーをスピンシュートさせ、赤城に激突しその反射で見事にマインにもぶつかった。
 これで一対一だ。
「……まさか、この状態でマインヒットを……」
「やったっ!」
 小さく喜ぶリサの様子は、先ほどの凄まじい集中力を見せたものと同一には思えなかった。
「っ!だが、ダメージレースでは私が有利っ!」
 ブレイズウェイバーの真横のやや離れた位置にマインがある。横幅を広めればギリギリ届きそうに見える距離だ。
「集中力なら、弓道で鍛えた私に分がある!」
 バシュッ!!
 ブレイズウェイバーとマインを掠めるように撃ったはずだった。
 しかし、掠めたのはブレイズウェイバーだけで、マインにはギリギリ届かない。
「な……距離が、足りなかった……この私が、見誤った!?」
 しかも、勇み足過ぎてフィールドの端まで進んでしまった。
 この位置ではブレイズウェイバーですらフリップアウトできてしまいそうだ。
 由美は慌ててフリップバリケードをセットする。
「ブレイズウェイバー!!」
 ブレイズウェイバーのストレートシュート。しかし、赤城へは若干重心をずらしてぶつけたためか、由美にとって予想外な方向へ反射したため、バリケードを躱されてしまい、そのままフリップアウトした。
 
「この私が、負けた……!」
 由美は茫然としながらリサとブレイズウェイバーを眺める。
「ありがとう、ブレイズウェイバー」
 愛おしそうに愛機を手に取るリサを見て、由美はある事に気付いた。
(遠山リサ……そうか、最近スクールを抜け出したと噂される、あの……ふっ、敵わないわけだ)
 由美はリサの方へ近づき、握手を求めた。
「良いバトルだった」
 リサは戸惑いながらもその手を取る。
「うん、私も、楽しかった」
「だが、これで終わったわけじゃない。リベンジは必ずさせてもらうぞ」
 そう言って、由美は踵を返して別のフリッカーを求めて歩いて行った。
 
 
 そして、バンは……。
「いっけぇ!!ディフィートヴィクターー!!!」
 バキィィ!!
 ディフィートヴィクターがスポンジと軟質透明プラとバネを搭載したフリックスを場外へフッ飛ばした。
「バカな!Fendoffの受け流しが通用しない!?」
「バネなら俺のディフィートヴィクターにだって入ってるんだぜ!!」
 バンは調子よく勝ち星を稼いでいた。
 
「へへへ、これで星は6つ!なんだ楽勝じゃん!この調子でダントツで予選突破だぜ!」
 集めた星を見ながら歩いていると、目の前に見慣れた背中を見つけた。
「あ、お前は操!!」
 鷺沢操だ。操はゆっくりと振り返った。
「段田バン。やはり来ていたか」
「当然だぜ!もう星6個も手に入れちゃったもんね!お前はどうだよ?」
「ふっ、俺は7つだ」
「んなっ!べ、別に数じゃねぇだろ!!そんなんでダントツになったと思うなよ!!」
 勝手な事を言い出すバンに、操はあきれ顔になる。
「先に吹っ掛けたのはお前であろう」
「うっせ!勝負だ!俺の方が上だって事を証明してやるぜ」
「当然だ。ここで話しかけておいてバトルしないという手もない」
 二人がフィールドにつこうとした時だった。
「見つけたぞぉぉ!!鷺沢操ぉぉぉ!!!」
 そこへ、赤毛でツンツン頭の目つきの悪そうな少年がやってきた。
「なんだ?知り合いか」
「……貴様は、紅月刃也」
 操は少々渋い顔をした。あまりいい関係ではなさそうだ。
「へっへっへ。ようやく見つけたぜ!てめぇ、あの時の借りを返してやるぜ!!」
「あの時って?」
 バンが聞くと操はデスガランを取り出して言いにくそうに答えた。
「かつて、俺がバトルに勝利しフリックスを奪ったものの一人だ」
 つまり、そのフリックスのパーツもデスガランに使われている。
「あぁ!今度こそてめぇを倒して、奪われたフリックスの仇を取ってやる!」
 もう操は相手のフリックスを奪ったりはしない。が、改心した操にとってあの過去は苦い黒歴史のようなものだろう。
 しかし、操は堂々とした態度を崩さなかった。
「ふん。あの条件はバトル前に互いに承認したものだ。一度取り決めたものについて後からとやかく言われるつもりはない。恨むなら、己の弱さを恨め」
「あぁ、恨んださ!だからこそ、俺はお前を倒す力を手に入れられたんだ!!この、クリムゾンブレイズをなぁ!!!」
 刃也がクリムゾンブレイズと呼ばれた赤いフリックスを見せる。
 竜と刀をモチーフにしたようだが、どこかツギハギのようにも見えた。
「その機体は……」
「お前を倒すためにな!俺も修業したんだよ!片っ端からバトルを仕掛けて、奪ったフリックスから完成させたのがこいつだ!!」
「……ふっ、っはっはっはっは!!!」
 その言葉を聞いて、操は笑い出した。
「何がおかしい!」
「いや……強さを得るために、恨みを持った相手の影を踏むとは……片腹痛い。良いだろう。受けて立つ!」
 
 バンはほったらかしで、操と刃也の戦いが始まった。
「いくぞ、3・2・1・・・・」
「くらえ!クレセントエッジ!」
 ピカッ!!
 シュートする直前、クリムゾンブレイズの角が光を反射して操の目をくらませた。
「くっ!」
「アクティブシュート!!」
 その隙にアクティブシュートする。
「ちっ!」
 やや遅れてデスガランもシュート。
「その程度の小細工で俺は負けん!!」
「そうかな?ナックルストラカー!!!」
 ガッ!!
 クリムゾンブレイズの右サイドに取り付けられたナックルがデスガランを殴り飛ばし、先手を取った。
「この勝負、もらったぜ!」
「甘い!デスガランを簡単にフリップアウトさせられると思うな!」
 マインヒットしようにもマインはやや離れた位置にある。フリップアウトを狙うしかダメージ手段はないが……。
「甘いのはお前だ!クロノウイング展開!」
 右翼が広がる。
「変形した?!」
「さらに、インフェルノブリンガー展開!!」
 左翼も広がる。
「そして、サムライブレード抜刀!!」
 フロントに刀のようなパーツも飛び出した。
「喰らえ!トリプルブレイカー!!」
 ババババ!!!!
 両翼と刃を広げた状態でのスピンアタック。
 広範囲攻撃によってあっさりとマインヒットしてしまった。
「くっ!」
「どうだ!これが俺様の力だ!!」
「ふ、大したものだ……だが、所詮は付け焼刃!!」
 ギンッ!と刃也をにらみつける。
「なに!?」
「俺の歩んできた道……そう簡単にまねできると思うな……」
 明らかに今までとは違う気迫が操を包み込む。
「な、なにが来ようが関係ない!アークディフェンダーの鎧とデュアルライナーシャーシのブレーキがあれば耐えきれる!」
「他者を糧とする道……それは決して己の力のみで成し得るものではない。それを自覚せぬものに、勝利はないっ!!」
 バシュウウウウ!!!
 渾身の力を込めて操はシュートした。
 ガンッ!!
 凄まじい衝撃によってクリムゾンブレイズがブッ飛ぶ。
「な、なんてパワーだくそ!!」
 慌ててバリケードでガードする刃也だが……。
「よし、防御まにあ……」
 クリムゾンブレイズがバリケードにぶつかった瞬間。
 
 パキィィィン!と取り付けられたパーツがはじけ飛んでしまった。
「な、に……!」
 砕けた欠片が細かすぎて、どこへ飛んだか分からない物もある。
 破損しても負けにはならないが、パーツを紛失した場合は試合放棄扱いとなる。操の勝利だ。
「そんな、バカな……」
 わかる範囲でなるべく欠片をかき集めながら、刃也はつぶやいた。
「パーツの継ぎ足しは、どうしても接着面の強度が下がる。覚悟のないものがそう簡単にまねできるものではない。ましてや、他者から奪ったパーツを自分の力だと思い込んでいるものには、到底不可能だ」
「くっ……」
 刃也は、悔し気に奥歯をかみしめたが、すぐに力の抜けた表情になり、どうにかかき集めたクリムゾンブレイズを操へ差し出した。
「俺の負けだ。また持っていけよ」
「……」
 それを見て、操は何も言わずに踵を返した。
「お、おい!どういうつもりだ!?」
「……俺が奪うのは、お前の時間と労力だ。それでそいつを完璧に仕上げろ。そしてもう一度俺と戦え」
 それだけ言って、操は去っていった。
 
 一方、置いてけぼりにされていたバンは……。
(う~、なんか俺場違いだな……このまま待ってるのもあれだし、別の対戦相手探すか)
 そう思って歩き出したところで後ろから二人の少年に声をかけられた。
「バン!」
「やっと見つけた」
「へ?」
 振り向くと、そこにはよく見知った顔があった。
「お、お前らは……オサムにマナブじゃねぇか!」
「久しぶりだね、バン」
「ここで会えるのを楽しみにしてたぜ」
 思いもよらぬ知り合いに、バンは面食らってしまった。
「あ、あぁ、まさかお前らが参加してるなんて思わなかったぜ。大丈夫なのかよ、フリックスは」
 オサムもマナブも、大会開催前にゲンゴにフリックスを破壊されてしまっている。精神的にもかなりダメージを受けていたはずだが……。
「……治せなかった……僕たちの力不足のせいで壊れたのに、治すことも出来なかった」
 マナブとオサムは、ギュッと拳を握りしめた。
「でも、だからこそ俺達は新しいフリックスを手に入れたんだ!壊れていったあいつらに報いるためにも、今度こそ本気で強くなるために!」
 そう答えるオサムとマナブの手には見た事のないフリックスが握られていた。
「だからその力を、バン。君にぶつけて、強さを確かめたいんだ」
「お前ら……へへっ、分かったぜ。お前らの気持ちは俺にだってよく分かる!勝負だぜ!!」
 
 バンVSオサム&マナブチームのバトルが始まる!
 
「「「アクティブシュート!!!」」」
 
 バキィィ!!
 ディフィートヴィクターが二機のフリックスを同時に弾き、遠くへ進んだ。
「よし!俺の先手だ!」
「さすが、バン!なんてプレッシャーだ……!」
「だけど、そう簡単には負けない!」
 バンのターン。
「お前らにとっちゃ負けられない戦いかもしれねぇけど。俺は手加減する気ねぇぜ!いっけぇぇ!!!!」
 バンはマナブの白いフリックスへ向かってシュートした。
「いなせ!マイティリアクター!!」
「なに!?」
 ガッ!
 ディフィートヴィクターはマイティリアクターと呼ばれた機体のサイドに接触したかと思ったら、上へ持ち上げられ、更にマイティリアクターはスピンする事で完全に攻撃を受け流してしまった。
 どうにかその先にあるマインにぶつかる事でマインヒットダメージは与えられたが、フリップアウト狙いだったためショックは大きい。
「な、なんて防御力だ……!俺の攻撃が通じねぇなんて!」
「薄い刃のようなフロント形状とスピンシャーシで相手の攻撃を受け流す。それがマイティリアクターの力さ!」
「そんじゃ、今度は俺たちのターンだな!」
 オサムだけフリックスを構えている。マナブは撃つ気は無いようだ。
 それを悟ったバンは、オサムからの攻撃を耐える位置でバリケードを構えた。
「いけぇ!ブーストファルコン!!!」
 バシュウウウウ!!!
 ブーストファルコンと呼ばれた青いフリックスが勢いよくディフィートヴィクターへ突っ込む。
 途中にあったマインを弾き飛ばしながらも勢い衰えずにディフィートヴィクターをぶっ飛ばす。
「くっ!」
 ガガガ!!
 上手くバリケードした事でフリップアウトは免れたが、マインのダメージを受けてしまった。
「くそ、惜しい……!」
「あぶねぇ……バリケードしてなかったらフリップアウトされてたぜ。なんだよ、マジで強くなってんじゃん……面白れぇ!!」
 俄然楽しくなってきたバンは張り切ってヴィクターを構える。
「だけどっ、俺はぜってぇ負けねぇ!!受け止めたお前らの強さを、何倍にでもして返してやるぜ!!」
 バンは前かがみになって力を溜める。
「来るか、あれがっ!?」
 そのシュートの強さはオサムもマナブもよく分かっている。
 しっかりとバリケードを構えた。
 
「いくぜ!ブースターインパクトォォォ!!!!」
 
 ガッ!
 まず、マインにぶつかったのちにブーストファルコンにぶつかる。
「耐えてやるぜ!」
「まだまだあああ!!」
 そのまま押し込み、その先にいるマイティリアクターにヒット、ブーストファルコンはマイティリアクターに掬い上げられるようにバリケードを乗り越えてフリップアウト。
 マイティリアクターはマインヒット受けたので、二機ともHP1だ。
 
「さすが、バンだぜ……」
「うん……こんなに楽しいバトルは、初めてだよ」
「ああ!俺も、お前らと戦った中で、今日が一番楽しい!!」
 仕切り直しアクティブだ。
「これで決着付けるぜ!」
「「おう!!」」
 
「「「アクティブシュート!!」」」
 
「「「いっけええええええ!!!!!!」」」
 渾身のシュートを放った三人。
 中央付近で三機が激突。
「ぶっとべええええ!!!!!!」
 ディフィートヴィクターが一気にブーストファルコンとマイティリアクターを場外させた。
 
 バンの勝利だ!
「ちぇ、負けちまったか」
「うん、やっぱりバンは強いね」
 オサムとマナブは悔しそうに、それでいてどこかすっきりとした表情だ。
「いやぁ、でもお前ら強かったぜ!負けるかと思った!!」
「バン……」
「まだまだ大会は終わってねぇんだ!!こっからが本番だぜ!」
「うん!」
「そうだね!」
 ガシッ!
 三人は拳をぶつけ合い、友情を確かめ合った。
 
『さぁ、群雄割拠なバトルロイヤル!各地でフリッカー達の熱いバトル!壮絶なドラマが繰り広げられている!!果たして、予選を突破する上位8名になるのは誰なのか!?!?』
 
 
 
      つづく
 
 次回予告
 
「予選も中盤に差し掛かり、俺は超順調!!連戦連勝でどんどん勝ち星を手に入れてるぞ!!でも、時間制限があるからただ勝ちゃいいってわけでもないんだよなぁ。
それに、スクールの奴らの動きも気になるし……と、そんな事思ってたらそこにいたのはゲンタ!?またお前と戦うのかよ!
そして、リサが対峙しているフリッカーは……!
 
 次回!『スクールの呪縛!リサの決別』
 
次回も俺が、ダントツ一番!!」

 
 

弾突バトル!フリックス・アレイ 第36話

第36話「群雄割拠!グレートフリックスカップ開催!!」
 
 
 
 ユウタ、ゲンゴ、イツキのスクール三武将との挑戦を受けたバン達。
 今後のスクールによる破壊活動を賭けた決戦のつもりで挑んだのだが、結果は引き分けに終わってしまった。
 しかし、このバトルは奴らにとってただのデータ収集のためのテストバトルに過ぎなかった。
 そして明かされる真の決戦の場、日本一のフリッカーを決める大会『グレートフリックスカップ』
 一体、どんな戦いが待っているのか……!
 
 
「くっそー!勝手な事ばっかり言って、とっととどっか行きやがって!なんなんだよあいつら!!」
 三武将が去っていった公園の出口を観ながら、バンは地団太を踏んだ。
「グレートフリックスカップ……日本一を決める大会が開かれると言っとったな。そこで決着を付けるつもりなのか」
「けっ!なんだって構うもんか!戦えるんなら、俺がダントツ一番だ!!」
 神妙につぶやく剛志の横でバンは意気込んだが、リサがうつむいて口を開いた。
「でも、私達のデータを取られちゃった……ごめん、私のせいで……」
 確かに、嫉妬心に駆られてイツキの甘い罠にかかってしまったのは迂闊だったかもしれない。しかし、それは今言っても仕方がない事だ。
「気にする事ねぇって!リサだけのせいじゃねぇよ!」
 落ち込むリサへバンがフォローしていると、なぜかその後ろでレイジが得意げに咳ばらいをした。
「ふっふっふ、その通りさ」
「なんじゃ?」
「どうしたんだよレイジ?気持ち悪い顔して」
 バンの悪口も気にせず、レイジはニヤッと笑って言った。
「データを取られたのは僕たちだけじゃないって事さ」
「え?」
「それってどういう……」
 一同があっけに取られているのも構わず、レイジは一人で話を進める。
「藤堂家の情報網、なめてもらっちゃ困るね」
 そう言って、レイジは公園の端にある植え込みの方へ向かい、ガサゴソと草の中を探る。
 そして、草の中から小さなビデオカメラを取り出した。
「おまっ、それ!」
「さっきのバトルを、撮影しとったんか……!」
「万が一に備えて、セットしておいたんだ。備えあれば憂いなしって言うしね」
「抜け目ないやっちゃなぁ……」
 ちゃっかりしているレイジに対し、剛志は呆れとも感心ともつかないため息をついた。
「とにかく、あいつらが僕らのデータでより強いフリックスを作るんだとしたら、僕らだってこのデータで……!」
「あ、そっか!そのデータがあれば……リサ!」
 レイジが言い切る前に、バンは何かを思いついたのかリサへ向きやった。
「え?」
「せっかくだから、赤のウェイバーをパワーアップしちゃえよ!」
「パワー、アップ……?」
 急に話を振られて、リサはきょとんとしている。
「おっ、そうじゃな!このデータとレイジのとこの設備があれば」
「うん。ちょうどこの時期は研究所に空きがあるし……出来るかもしれない」
「よっしゃぁ!早速やろうぜ!!」
 バン達は、三武将たちへの警戒心はどこへやら。完全に新ウェイバー開発へと盛り上がっている。
「……ありがとう、皆」
 そんな彼らへ、リサは小さく礼を言った。
「さっ、ぼさっとしてないぜ行くぜリサ!!」
 バンはリサの手を取って、剛志、レイジとともに研究所へ駆け出した。
 
 
 ……そして、数時間後。
 
 ビー!ビー!とけたたましい音を立て、大仰な機械の中から一台のフリックスが排出される。
 炎のように揺らめく赤いボディに、緑色のラインが入ったフリックス……紛れもないウェイバーだ。 
 しかしその形状は、フレイムウェイバーよりも洗練されており、見るからに性能アップしているのが分かる。
 
「ついに、完成したなリサ!」
「うん……これが私の新しいフリックス……ブレイズウェイバー」
 リサは恐る恐るそのブレイズウェイバーを手に取ってみた。
「ほぉ、初成型にしてはなかなかな出来じゃな」
 剛志がリサの手の上にあるブレイズウェイバーを眺めながら感心した。
「まだだよ。テストバトルして問題が無いかチェックしないと、完成とは言えない」
 既にブレイズウェイバーが完成した気でいる一同へレイジが釘を刺した。
「形造るだけなら簡単なんだ。でも、ちゃんとバトルで性能を発揮できないと完成とは言えない」
「そ、そうじゃな。わしらもここでつまずいたんじゃしな」
 
 と言うわけで、ブレイズウェイバーのテストバトルを始めた。
 テスト用のフィールドの四隅で、四人がそれぞれスタート位置にフリックスを置いている。
 
「へへっ、テストバトルだからって手加減はしないぜ、リサ!」
「うん!……これからよろしくね、ブレイズウェイバー」
 リサは優しくブレイズウェイバーを撫でた。
 
「それじゃ、行くよ!」
 
 
「「「3.2.1.アクティブシュート!!」」」
 
 バシュッ!!!
 
 四機のフリックスがそれぞれのスタート位置から勢いよくシュートされる。
「カッ飛べ!ディフィートヴィクター!!」
「ブチかますんじゃ!グランドギガ!!」
 ヴィクターの軌道の先にはギガがいる。このままでは正面衝突だ。
「いぃ!邪魔なんだよ!!」
 
 ガッ!!
 ヴィクターとギガは互いに大きく弾き飛ばされて後退した。
 そこをファントムレイダーが通り過ぎる。
「一番は貰ったよ!」
「くっ!」
 しかし、ファントムレイダーへブレイズウェイバーが素早くツッコミ、横っ腹を霞めるように接触した。
 するとファントムレイダーはバランスを崩して横転、ブレイズウェイバーは加速して一気にフィールドの角までたどり着き、停止した。
「そんな!」
「なに!?」
「なんじゃ、今の動きは……!」
「すごい、ブレイズウェイバー……」
 リサ自身も、この動きには驚いている。
 何はともあれ、一番はリサ、二番はレイジ、三番はバン、四番は剛志だ。
 
「けっ!アクティブシュートで一番になったってバトルに勝てるとは限らないぜ!」
「……」
 リサは慎重に狙いを定めて、シュートした。
 
 シュンッ!!
「「「なにっ!?」」」
 
 一同は目を疑った。
 ブレイズウェイバーは素早く、手近なマインにぶつかり、そのまま直進。
 そして、そのままディフィートヴィクター、グランドギガ、ファントムレイダー……と次々にヒットしてしまった。
 
「……い、一回のシュートで俺達全員マインヒット……!」
「なんじゃ?敵機にぶつかる度に、角度を急激に変えて加速しおったぞ……!」
「これが、ブレイズウェイバーの力?」
 この中で一番驚いているのは何を隠そうリサだろう。
 
「フレイムウェイバーは、元々ポテンシャルの高い機体だった。それがFXシステムと融合する事で凄まじい進化を遂げたんだ」
「たった一回のテストでここまでの性能を発揮するとは。さすが元スクールナンバーワンの実力者じゃ」
「よし、性能に問題はなかったし。テストはここまでにしよう」
 そう言って、レイジは自機を回収した。
「なんだよ!最後までやんないのかよ!」
「あくまで性能が発揮できるかどうかのシュートチェックだったからね。せっかく完成したばかりの機体に無理はさせられないし。あとは微調整して、仕上げをしないと」
「ちぇっ、つまんねぇの」
 バンは不満そうにしていたが、リサはいつくしむようにブレイズウェイバーを手に取った。
 
 
 ……。
 ………。
 
 ブレイズウェイバーの仕上げも終わり、日もとっぷり暮れていたのでバンとリサは急いで家路についた。
 
「くぉら二人とも!!今何時だと思ってんだ!!」
 玄関にたどり着くと、いきなり父の大目玉を喰らってしまった。時刻は夜7時半。小学生はとっくに家に帰ってテレビでも観てなきゃいけない時間だ。
「「ご、ごめんなさい!!」」
 二人は必死に頭を下げて謝った。
「この物騒なご時世にフラフラしてんじゃねぇ!」
「フ、フラフラしてたわけじゃねぇよ、ちょっと外せない用があったからさ……!」
「いっちょまえな事言いやがって。何もなかったから良かったけどよ」
「たはは……俺、腹減った。晩御飯なに?」
 バンは図々しくもお腹を摩りながら玄関を上がった。
「はぁ、まぁいいか。リサちゃんも、お腹空いたろ。もう怒ってないから飯にしよう」
「は、はい」
 リサは遠慮がちに靴を脱いで玄関を上がった。
「っと、そうだ。その前にいいものを渡さないとな」
「え、なになに?いいもの!?」
 バンがギラッとした目を父に向ける。
「おめぇじゃねぇよ。リサちゃんにだ」
「私に?」
 父は台所から、A4くらいの厚めの封筒をリサに渡した。
「お祖父さんからだ。今月分の通信学校の教材。あと一応養育費も受け取ったから、確認よろしく」
「あ、はい」
 リサは慣れた手つきで封筒を受け取った。もう何度か繰り返したような感じだ。
「え?なんだよそれ……祖父さんって、スクールの校長の事だよな?なんでそんなもんがこっちに郵便よこすんだよ」
 バンは事情が呑み込めずにきょとんとしている。
「あれ、お前に言ってなかったか?数ヶ月前から、リサちゃんのお祖父さんに事情は伝えたんだよ。そんで、毎月通信教材と養育費が送られてくるって事になったんだよ」
「なっ!なんでそんな勝手にスクールと連絡なんか取っちゃってんだよ!あいつらはリサに酷い事してたんだぞ!!」
「アホ。これが大人の責任だ。世の中はお前個人の正義感だけで動いてるわけじゃねぇんだよ」
「でもっ、リサをあんなところに返す事になったら…!」
「そうならないように話し合いをして、譲歩した結果がこれなんだよ。本人だって納得してるし、実際リサちゃんはここにいる。何も問題ないだろ」
 ここまで正論を言われてしまえば、バンもうなずかざるをえない。
「ま、まぁそうだけどさ……でも俺に黙ってる事ねぇじゃねぇか」
「だから、それは単純に忘れてたんだ。すまん」
「わ、私も、なんとなく話題にするタイミングが無くて……」
 それに、下手にスクールからの援助を受けてる事を知ったら、バンがどんな反応をするか分かったものじゃないだろう。
「まぁでもお前介入すると話がややこしくなりそうだから結果良かったかもしれないけどな」
「う、うっせー!」
 
 グゥゥゥ……!
 突如、バンの腹から大きな音が鳴った。
「は、腹減った……」
「んじゃ、この話はこれでお終いだな。今度こそ飯にすっぞ!」
 
 
 飯も食い終え、風呂にも入ったバンは自室のベッドに腰かけて寛いでいた。
「いよいよ全国大会か……ディフィートヴィクター、頑張ろうぜ」
 手に持ったディフィートヴィクターへ語り掛けると、それにこたえるようにヴィクターはボディで光を反射した。
 
 コンコンッ、と遠慮がちに扉がノックされた。
「バン、ちょっといい?」
 扉越しでリサの声が聞こえる。
「おう」
 バンが短く返事をすると、リサはゆっくりと扉を開いて中に入った。
「どうしたんだ、リサ?」
「うん、ちょっと話がしたいなって」
「そっか。まぁ、座れよ」
 バンに促され、リサはそっとバンの隣へ座った。
「……ごめんね、バン」
「え?」
 開口一番、リサがポツリと謝ると、バンは訳が分からないような顔をする。
「その、おじいさまから援助されてた事、黙ってて」
「あぁ、その事か。別にいいよ。冷静に考えりゃ、俺には直接関係ないしな。今のこの状況に不満なんてないし」
 熱が冷めたのか、バンの返答はあっさりしたものだった。
 知らされてなかったのはちょっと気に入らないが、知らされていようがいまいが、今の状況が変わるわけじゃないと思い直したのだろう。
「それだけじゃなくて、今までの事とか、いっぱい迷惑もかけてきたし、お世話になりっぱなしで……」
「大した事じゃねぇよ。俺達が勝手にやった事だし、俺はむしろ感謝してんだ。今までリサと出会ってからのいろんな事、すっげぇ楽しかった……」
 バンは想いを馳せるように天を仰いだ。
「バン……そうだね、いろんな事があったね」
 リサもバンと同じように今までの事を思い出しているのだろう。しんみりとした表情になる。
「スクールの事とか、いろいろあるけどさ。次の大会、純粋に楽しみなんだ。どんなすげぇ奴らと戦えるのかワクワクしてる」
「うん、私も」
「それに、今だって俺の気持ちは変わらない……」
 そう言って、少し間を置いたバンの表情をリサは覗き込んだ。
「え?」
「俺は……あの時からずっとリサの事だけを考えてきた」
「わ、わたしだけを……?」
 真剣な眼差しでそういわれ、リサは気恥ずかしくなったのか少し顔をそらした。
 
「あぁ。俺は、お前を……大会で倒す事だけを考えてきたんだ!」
 バンはグッと拳を握りしめた。
「バン……」
「倒したい相手はたくさんいる、まだ勝ったことない奴だっている。でも、やっぱり俺は、初めての大会で、初めて負けちまったあのバトルは忘れられねぇ。リサじゃなきゃダメなんだ。リサとじゃなきゃ……!」
 力のこもったバンの言葉に、リサはそらした顔をバンの方へ向けた。
「リサ、俺はお前を倒してダントツ一番になる。大会で勝負だぜ」
「うん。私だって、負けない」
 
 そして、時間は流れ……。
 いよいよ、グレートフリックスカップが開催される日となった。
 
 大会は、バン達の住む日本の第二の首都千葉県の幕張で開かれる。
 海浜幕張駅から徒歩で数分、幕張メッセの横を通り、海の方へ向かうと見えてくる『千葉マリンスタジアム』が会場だ。
 
 スタジアム内では、既に多くのフリッカーたちで埋め尽くされている。
 
「っひゃ~!すげぇ人だなぁ」
 バンが周りを見渡しながら感心する。
「全国大会とは言え、こんなに集まるんだね……」
 隣にいるリサも、この人ごみには驚いている。 
「剛志やレイジ達はもう来てるのかな?」
 どやらバンとリサは剛志、レイジとは別行動だったようだ。
「多分、もう来てると思うけど。この中じゃ、見つけられそうにないね」
「まぁ、勝ちすすみゃいずれぶつかるか」
「うん」
 そう考え、バンとリサは大会の進行を待つ事にした。
 
 そして、しばらくすると場内のライトが北側に設置されたステージへ集中し、良く知った声がマイクを通して響き渡る。
 
『みんなー!!フリックスの全国大会、第1回グレートフリックスカップへようこそーー!!!僕は、司会進行を務める、バトルフリッカーコウだ!!』
 バトルフリッカーコウが耳が痛くなるほどの声量で叫ぶとフリッカーたちは負けじと歓声を上げた。
 それに満足したコウは進行を続ける。 
『今回エントリーしてくれたフリッカーたちは、ゆうに3000人を超えている!!』
 
「ま、マジかよ……!」
「フリックスの競技人口って、そんなに増えてたんだ」
 バンとリサで驚くポイントが微妙にズレている。
 
『そんじゃ、早速予選のルールを説明しよう!簡単に言えば予選はバトルロイヤルだ!!
大会開始してから2時間、ここにいるすべてのフリッカー達と自由にバトルしてくれ!
ただし、バトルに負けたら、エントリーした時に渡した3つの星のうち、1つを勝者へ渡す事になる』
 
「星って、これか」
 バンはポケットからプラ製の小さな星型の物体を取り出して眺めた。
 
『全ての星が奪われて0個になった時点で、脱落!それ以降バトルには参加できないぞ!
そして、制限時間終了した時点でもっとも星を多く獲得したフリッカーの上位8名が本戦進出だ!!』
 
「とにかく、勝って勝って勝ちまくってダントツになればいいんだろ、簡単だぜ!!」
 
『ところが、そう簡単にはいかないぞ!バトルのルールは普通のアクティブバトルだが、一つのフィールドで同時に参加できる人数は4人まで可能なんだ!
つまり、タイマンだけじゃなく、3人以上の多人数戦も起こり得るんだ!そういう場合は、一人の勝者が一気に星を獲得できるから美味しいぞ!
そして、バトル前に申請をすれば、タッグとして参加する事も可能だ!その際は獲得した星は二人で分け合う事になる。
獲得した星の数が奇数だった場合は、どっちが多く獲得するか二人で相談してくれ』
 
 それを聞いて、バン達とは離れた場所にいる剛志とレイジがほくそ笑んだ
「なるほど、それはありがたいのぅ」
「ここは協力した方が良さそうだね、剛志」
 
『バトルを介さない星のやり取りは原則禁止だ!判明した時点で失格にするぞ!!それじゃ、そろそろ準備をしよう。フィールドオープン!!』
 
 バトルフリッカーコウがぱちんと指を鳴らすと、地面から無数の台が出現した。
 
『このフィールドが、君たちが戦う場所だ!!基本的に、同じフィールドで連続してバトルする事は出来ない!譲り合って使ってくれよ!』
 最低限のマナーだろう。
『そんじゃ、そろそろおっぱじめるぜ……!グレートフリックスカップ予選……レディ、ゴー!!!』
 
 
 その合図とともにフリッカーたちはいっせいに我先にとフィールド目掛けて駆け出した。
 少しでも早くフィールドについてバトルをした方が有利だからだ。
 
「バン、私たちも急ごう!」
 リサがバンを急かすが、バンは神妙な面持ちで立ち尽くしている。
「バン?」
「リサ、ここからは別行動しようぜ」
「え?」
「この大会、俺にとってリサは倒したいライバルなんだ。だから、タッグは組めねぇ。それに、こんな早々と決着付けたくねぇしな」
「バン……」
「本戦で会おうぜ、リサ」
 そう言って、バンは別方向へ駆け出した。
 それをしばらく眺めていたリサも、少し寂しそうな表情をしながらも、頷いて反対方向へ歩みを進めた。
 
 一方、剛志とレイジはバン達とは正反対にタッグとして行動を開始していた。
 
「いけぇ!グランドギガ!!」
「ファントムレイダー!!!」
 
 バキィ!!
「うわわ!俺のミルフィーユラキエータ!!」
「ツインファング~!!」
 いかにもモブっぽい少年が使っている、積層フリックスとオレンジ色のフリックスがスッ飛んだ。
「これでわしらの勝ちじゃな!!」
 早くも星をゲット。
 
「順調だね、剛志!」
「おう!タッグ戦が出来るなら怖いもの無しじゃ!」
 そんな二人へ、二人の見知らぬ少年が話しかけてきた。
「あっ、きみたちはっ!!!」
「まさか~、タッグバトルの達人の~、剛志とレイジだ~」
 身長130センチくらいの小さく、早口な少年と小学生にしては脂肪が付き過ぎで、のんびりした口調の少年だ。
 
「なんじゃ?お前らは」
「僕は~、亀山~」
「俺はっ!天童っ!」
 太ってる方は亀山、ちびの方は天童と言うらしい。
「僕たちは~~、君たちに憧れて~」
「タッグバトルにハマったっ!親友コンビさっ!」
 正反対の二人だが、なんとなく息が合っている
「へぇ」
「わしらになぁ」
「鍛えに鍛えたっ!タッグバトルの成果っ!」
「試させてよ~」
 二人が、フリックスを取り出しながら勝負を挑んできた。
「ええぞ、望むところじゃ!」
「うん!返り討ちにするよ!」
 
「よしっ!いくぞっ!チャージングレディバグ!!」
「頑張ろう~、スライディングタートル~!」
 二人の持っている機体は緑と赤の見た事もないフリックスだった。
 
 
 
     つづく!
 
 次回予告
 
「ついに始まったグレートフリックスカップ予選!ルールはバトルロイヤル!いきなりこんなにバトルが出来るなんて、楽しみだぜ!!ガンガン勝ちまくって、絶対本戦に出場してやるぜ!!
さぁ、俺の相手は誰だぁ!?……って、お前ら、まさか……!俺の前に現れたのは、良く知っている予想外の二人だった!
 
 次回!『バトルロイヤル!それぞれの戦い!!』
 
次回も俺が、ダントツ一番!!」
 
 




弾突バトル!フリックス・アレイ 第35話

第35話「三武将出現!決戦へのカウントダウン!!」
 
 
 
 バン達の前に現れたユウタ、ゲンゴ、イツキ……三人はスクールでトップクラスの成績を収めたフリッカー『三武将』だった。
 
「三武将……?そのお前らが俺達に何の用だ!」
 バンがイツキをにらみつけると、イツキは侮蔑の視線を向けた。
「分かりませんか?あなた方が対立している組織のトップ三人がこうして現れたんですよ。目的は一つしかありえないでしょう」
 イツキが意味深にそう言うとユウタとゲンゴは口元に笑みを浮かべた。
「つまり、ここで決着を付けるって事か……!」
「……我々の挑戦、受けますよね」
「当然だぜ!!」
「そうじゃな、わしらとこいつはまだ決着がついとらんかったからな!」
「うん!」
 剛志とレイジはユウタを見る。
「あはは、そういえばそうだったねぇ!楽しみだなぁ!」
「今日はオデもいるから、公平にチームバトルが出来るんだな」
 と言うわけで早速対戦カードが決まった。
 剛志&レイジVSユウタ&ゲンゴだ。
 
 二組がバトルフィールドに付く。
(ふふふ、見させてもらいますよ。あなた方の力を……)
 イツキは密かにほくそ笑んだ。
 
 チーム戦のルールは、基本は通常と同じだが
 ターンがチームごととなっており、アクティブシュートでより進んだフリッカーの所属するチームから先攻。
 チームのターンになったら、チームから一人だけシュートする。
 シュートが終わったら相手チームのターン……と言う具合だ。
 
 四人がフィールドの中央付近にマインをセットする。
「それじゃいくぞ!」
 
 
「「「「アクティブシュート!!」」」」
 
 バッ!!
 フィールドの中央で、ベノムエロシオンとタイダルボアがグランドギガと激突するが、グランドギガは二機の攻撃を受け止めた。
 そしてファントムレイダーはこの三機を後ろから飛び越えて相手側の陣地へ機体一個分進んだ。
「よし!」
「よくやったぞレイジ!わしらの先攻じゃ!!」
「剛志が攻撃を受け止めてくれたおかげだよ!」
 一方後攻になってしまったユウタは悔しそうに地団太を踏んだ。
「くっそー!ファントムレイダーがいなかったら僕たちの先攻だったのに!!」
「ファントムレイダーも凄いけど、オデ達のシュートを二つ受け止めるグランドギガもなかなかなんだな……!」
「グランドギガのハンマーは、ハンマーギガの二倍じゃからな!」
 剛志&レイジのターンだ。
「剛志、レイジ!一気に決めちまえ!」
 バンが外野から応援する。
「剛志、お願い」
「おう!」
 位置的に剛志の方が攻撃に適している。
 まずはグランドギガをベノムエロシオンの方へ向けた。ベノムエロシオンの後ろにマインがあったからだ。
「まずは確実に……いくぞ!!」
 ドンッ!!
 剛志が強めにグランドギガをシュートする。この勢いなら、フリップアウトは無理でもマインにぶつける事は可能なはずだ。
 しかし……。
 ぶよんっ!
 柔らかい音がして、グランドギガのハンマーがベノムエロシオンに飲み込まれてしまった。
「な、なんじゃと?!」
「剛志のアタックが吸収された!?」
「オデのベノムエロシオンは防御型。摩擦力の高いシャーシとスライム状のボディで、どんな攻撃も受け止めるんだな!」
 ゲンゴが自分のフリックスの解説をした。
「あのボディは、スライムじゃったんか……!」
「それで前にディフィートの攻撃も受け止めたのかよ!」
 エロシオンの防御力にバン達は戦慄した。
 そして今度はゲンゴとユウタのターンだ。
「よーし、ゲンゴやっちゃえ!」
「じゃ、いくんだな!」
 ゲンゴは、グランドギガと密着したままのベノムエロシオンの向きを変えてマインへ照準を合わせた。
「喰らうんだな!!」
 バシュッ!!バーーーン!!
 そのままシュートしてマインにぶつける。マインは弾かれてその場から離れる。
 グランドギガにマインヒット1ダメージ。
「くっ!」
「剛志!!」
 次は剛志&レイジのターンだ。
「よくも剛志を……!」
 レイジがファントムレイダーのボディを掬い上げモードに切り替えてからベノムエロシオンに狙いを定める。
「落ち着くんじゃレイジ!その位置からベノムエロシオンを狙ってもどうにもならん!ワシの事はええから、タイダルボアを狙うんじゃ!!」
「剛志……分かった」
 剛志に諭され、レイジはレイダーを乗り上げモードに戻してタイダルボアに狙いを定めた。
 レイダーとタイダルボアの間にはマインがある。これをぶつければマインヒットだ。
「いけっ!」
 カンッ!
 レイダーがマインを弾き飛ばしてタイダルボアにヒットさせた。
 タイダルボアに1ダメージ与えるが、レイダーは勢い余ってフィールドの端まで進んでしまった。
「やるじゃん。でもこの位置なら!」
 ユウタが反撃にとレイダーに向かって強烈なシュートを放つ。
「た、耐えろレイダー!」
「無駄だよ!」
 バキィ!!!
 タイダルボアの一撃でレイダーは場外してしまう。
 これでファントムレイダーのHPは1だ。
 
 そして再びアクティブシュート。
「いけっ、ファントムレイダー!!」
「甘いんだなっ!」
 ファントムレイダーで先攻を取ろうとするものの、先読みされてベノムエロシオンで受け止められてしまった。
「そんなっ!」
「レイジ、ワシに任せろ!」
 グランドギガがタイダルボア目掛けて突き進み、先攻を取ろうとするのだが……。
「同じ事繰り返すわけないでしょ!」
 タイダルボアはグランドギガとはギリギリぶつからない軌道でシュートされていた。
「なにっ!?」
 グランドギガはフィールド中央よりやや相手側で止まったが、タイダルボアはそのまま突き進む。
「あの勢いじゃ、場外するぞ!」
 しかし、その前にマインにぶつかってブレーキが発動しストップした。マインは場外だ。ゲンゴのマインだったらしく、場外した後マインはゲンゴの手に回収された。
「あいつ、マインでもアタックブレーキシステムを発動できんのかよ……!」
「えへへ、僕たちのターンだね!頼むよ、ゲンゴ!」
「よくやったんだな、ユウタ!」
 ゲンゴはファントムレイダーと密着させたままのベノムエロシオンをフィールド中央側にあるマイン目掛けてシュートした。
 
 バーン!!!
 
 ベノムエロシオンは難なくマインヒットして、ファントムレイダーを撃沈させた。
「そ、そんな……!」
「レイジ!」
 
「ウソだろ、レイジが負けちまうなんて……!」
 外野でバンも愕然とする。 

「それじゃ、マインを置くんだな」
 ゲンゴは、ベノムエロシオンとグランドギガの対角線上の先へマインを置いた。
「くっ!」
 剛志のターンだが、この位置からではベノムエロシオンを倒せない。
 一か八かタイダルボアを狙う。
「いくぞ!!」
 バシュッ!!
 しかし、タイダルボアとグランドギガは同時に場外してしまった。
「くっ……!」
「はい、これでグランドギガは残りHP1だね」
 シュートしたフリックスが場外した場合は、シュートしたフリックスのみに1ダメージ入る。マインヒットもフリップアウトも全て無効だ。
 
 外野のバン達。
「つ、剛志!何やってんだしっかりしろぉ!!」
「剛志、がんばって!」
 必死に声援を送るが、剛志の表情から焦りは消えない。
「ふふ、これで終わりですね」
 イツキが言う。
「何言ってんだ!まだ勝負は……!」
「あの二人はチーム戦のエキスパートです。それも、最後のアクティブシュート時に最も力を発揮する」
「っ!」
 
 仕切り直しのために三人がスタート位置に機体を置く。
「それじゃ、そろそろ決めようか、ゲンゴ」
「んだな」
 ゲンゴとユウタが目線で合図をする。
 
「「「アクティブ、シュート!!!」」」
 
「いくぞ、グランドギガ!!」
 剛志は渾身の力を込めてグランドギガをシュートした。
「いくよゲンゴ!フォーメーションシュートだ!」
「だな!!」
 バシュッ!!
 シュートしたタイダルボアとベノムエロシオンは、二列になる。そしてベノムエロシオンがタイダルボアのリアに食らいついたまま突進した。
「な、なんじゃそのシュートは!?」
「必殺の合体シュートさ!ベノムエロシオンの粘着性を利用して、タイダルボアに食いつかせる事でシュートの直後、二つのフリックスがくっついたまま突進する!」
「二機分の重量でアタック出来るんだな!!」
 
 バーーーン!!
 ベノムエロシオン分の重量とグリップ力を得たタイダルボアのアタックを受けたグランドギガは、たまらずスッ飛んでしまった。
 
「ぐぅぅ……!」
 力なく、グランドギガは地面に伏した。
 これで剛志&レイジの負けだ。
「そんな、僕と剛志が負けるなんて……」
「なんて技じゃ……そんな力があるなら、なんで最初から使わんかった」
「奥の手は最後までとっとくものだからね」
「それに、この技は躱されると逆にこっちが不利になるんだな」
 もし、味方二機がくっついたままフィールドに残った場合、仮に先攻を取れてもシュートがしづらいし
 逆に先攻を取られたら、マインヒットで、一気に二台ダメージを受けてしまう可能性がある。
「だから、確実にとどめをさせるタイミングで使うのがベストだったんだな」
「くっ……テクニックやパワー、機体性能だけじゃなく、戦略も一流じゃと言う事か……悔しいが完敗じゃ」
「剛志……」
 剛志とレイジは悔しげにうつむいた。
 
「さて、これで我々の一勝ですね」
 イツキが余裕の表情で言う。
「くっそぉ!まだ俺達がいる!負けねぇぞ!!」
「では、私の相手はあなたが?」
「おう!俺がブッ飛ばしてやる!!」
「待って、バン」
 勢いよく駆け出そうとしたバンの裾をリサが引っ張る。
「な、なんだよ?」
「私にやらせて」
 リサは力強い瞳でバンにそう申し出た。
「え?」
 そしてリサはゆっくりとイツキを観る。静かだが、視線に強い怒りが込められている。
「ふふふ、やめておいた方が良いと思いますよ。私も実力ではユウタやゲンゴに劣りません。素直に新型を使う段田バン君に任せた方が……」
「私は、フレイムウェイバーを信じてる!新型じゃなくても、負けない!!」
 リサはハッキリと断言した。
「リサ……分かったぜ。お前に任せる」
 リサの決意を感じたバンは、バトルを譲った。
「でも、絶対に負けんなよ!」
「うん!」
 
 リサとイツキがフィールドについた。
 マインをセットして、機体を構える。
(相手の機体性能は分からないけど、フレイムウェイバーじゃきっと力負けする……ここは軌道をズラして先攻を狙って……!)
 リサはフレイムウェイバーの向きを、イツキからの対角線上から若干外した。
 
「「アクティブ・シュート!!」」
 
 バシュッ!
 二人が同時に機体をシュートする。
 リサの狙い通り、フレイムウェイバーはイツキのシュートした赤いフリックスにぶつからないような軌道でまっすぐ進む。
 
「リサ得意の狙い撃ちじゃな!」
「まずはぶつからないように、確実に先手を取ってダメージレースに持ち込むんだ!」
「さすがだぜリサ!」
 
「甘いですよ」
 イツキがニヤッと笑う。
「食い止めなさい、フロードダズラー!!」
 キュッ!
 突如、フロードダズラーが軌道を変えてカーブした。
「なにっ!?」
「カーブするフリックスじゃと!」
「そんなの、聞いた事ないよ……!」
 
「あっ!」
「フロードダズラーからは逃げられませんよ」
 ガッ!!
 フロードダズラーはフレイムウェイバーにヒットし、フレイムウェイバーは弾かれてしまった。
「くっ!」
 それによって、先攻はフロードダズラーが勝ち得た。
「私もあなたと同じくマインヒットを重視するフリッカーなのでね。先手を取ってしまえばあとはダメージレースで私が完全有利」
「……!」
 しかし、マインの位置はフロードダズラーとフレイムウェイバーの線上からは完全に外れている。
「へんっ、その位置からじゃ、マインは狙えないぜ!!」
 外野のバンが煽る。しかしイツキは動じない。
「それは、どうでしょうかね?」
 そう言って、イツキはフレイムウェイバーから狙いを外して、マインへ狙いを定める。
「マインにだけぶつけたってマインヒットにはならねぇぞ!?」
「ふふふ」
 そして、イツキはマインに向かってフロードダズラーをシュートした。
 カッ!
 フロードダズラーはマインにぶつかると、そのまま方向転換してフレイムウェイバーへ向かってきた。
「え!?」
「また、曲がった!?」
 
「フロードダズラーのシャーシはステアリングシャーシ。シュート前にタイヤの向きを調節する事でカーブシュートを撃つ事が出来るんですよ」
 イツキがそう説明するのと同時にフレイムウェイバーがマインヒット。1ダメージだ。
「これで1ダメージ」
「っ!」
 リサのターン。
 フロードダズラーの位置はフレイムウェイバーから近いが、マインが線上にない。
「ヤバいぜリサ。これじゃマインヒット狙えねぇ……」
「フリップアウトもこの位置からじゃと難しいな」
 リサは真剣に自分と相手の位置関係を見極めた。
 集中して、ベストのラインを探す。
(……フレイムウェイバーはカーブは出来ない……けど!)
 そして、意を決してフロードダズラーに向かってシュートした。
「いけっ!」
「マインは狙わないのか!?」
 カッ!
 フレイムウェイバーはフロードダズラーにかすめるようにヒットすると、その反射で方向転換してマインにぶつかった。
 フロードダズラーに1ダメージだ。
「そうか!リサにはこのヒット&アウェイ戦法があったんだ!」
「ほう……」
 その後も、フロードダズラーとフレイムウェイバーは互角の立ち合いで、互いにマインをヒットさせていった。
 
 そして、互いにHPは1の状態。バトルは終盤戦だ。
「凄いぜリサ!相手に一歩も引いてねぇ!」
「ふふふ、さすがです。ですが、忘れていますよ」
「……」
 リサはイツキが何を言いたいのか理解しているようだ。
「先攻を取った私に対してダメージレースを仕掛けても勝ち目はないと」
「あぁ、そうだったぁ!」
 バンが頭抱えて叫ぶ。
「……」
「どうやら、あなたは承知の上だったようですが」
「……悔しいけど、これが私とフレイムウェイバーのベストだから」
「勝ち負けよりもベストを尽くす。素晴らしい心掛けです」
 チャキ……!
 イツキがフレイムウェイバーへ狙いを定める。
「ふふふ」
 ドンッ!!
 そしてシュート……したのだが、フロードダズラーはカーブしてフレイムウェイバーから逸れる。
「え?!」
 そしてそのまま場外してしまった。

 自滅1ダメージでフロードダズラー撃沈。フレイムウェイバーの勝利だ。
「おめでとうございます。あなたの勝利ですよ、リサさん」
「てめっ、どういうつもりだ!わざと自滅したな!!」
「そうカッカしないでください。ささやかなお礼のつもりですから」
「お礼……?」
「ゲンゴ。撮れましたか?」
 イツキが言うと、ゲンゴは懐から小さなビデオカメラを取り出した。
「バッチリなんだな!」
「それは!」
「良いデータを撮らせていただきました。これで最強のフリックスが完成する」
「じゃあ、お前らは最初からそのつもりで勝負を挑んできたってのか!?」
「えぇ。大事なのはバトル内容であって結果ではない。どちらにしてももう我々が一般人のフリックスを破壊する必要はないのですから」
「なんだと!?」
「僕達がフリックスを壊してたのは、スクールの授業の一環だったんだよ」
「破壊したフリックスに応じて、成績が決まるんだな」
「ですが、それも終わり。我々三人が成績上位になり『三武将』のランクを得ました。三武将としての最初の任務が、このデータ収集のためのバトルだったわけです」
「じゃあ、もうお前らとの戦いは、終わったのか……?」
 バンが釈然としない表情で呟く。
「何言ってんのさ。これから始まるんだよ!本当の戦いがね」
「本当の戦い?」
「うん。大事な大会が近いってのに、ザコなんか相手にしてられないもんね!あぁ、楽しみだなぁ」
「大会だって?」
「グレートフリックスカップ。フリッカー日本一を決める大会ですよ。直に正式な告知があるでしょう。そこですべての決着がつけられます」
「……」
 もうスクール生は破壊活動をしない。そして、近いうちに日本一を決める大会が始まる。……更に、スクールでは最強のフリックスを作るためのデータを集めていた。
 一気にいろんな情報を得て、バン達は混乱していた。
 
「では、失礼します」
「大会、楽しみにしてるからねー!それまでフリックス壊さないでよー!」
「なんだな!」
 三人は踵を返して去って行った。
 
 
 
 
     つづく
 
 次回予告
 
「ついに!ついに来たぜ!日本一を決める大会、グレートフリックスカップ!
絶対に勝って、俺がダントツ一番だ!!
 
次回!『群雄割拠!グレートフリックスカップ開催!!』
 
次回も俺がダントツ一番!!」
 
 
 
 
 

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