第6話「真の相棒になるために 対決!Mr.アレイ」
リサが段田家に居候して数日が経ったある日の放課後。
「ただいま~!」
バンが玄関を開けて帰宅したかと思うと、すぐに居間にカバンを置いて外に出ようとする。
「あ、おかえり」
出ざま、リサと遭遇する。リサは、バンの行く手を阻むように立っている。
「あぁ、リサ。ちょっと俺これから、公園で友達とバトルしてくるから。家でおとなしく留守番してろよ!」
そう言って、今にも駆け出しそうなバンにリサは不満気な表情をする。
「また、行くの?」
「おう!今日もドライブヴィクターでダントツだぜぇ!ってことで、そんじゃ」
片手をビシッと上げて、リサの横をすり抜けて行こうとする……が。
ギュッとリサに裾を掴まれてしまい、それ以上進めない。
「な、なに?」
「……」
リサは無言で、何かを訴えかけるようにバンを見つめてきた。
しかし、バンにはリサが何を言わんとしているのか理解できない。
「?」
「……」
「??」
「………」
「???」
「…………」
「????」
「……………」
しばらく、無言のリサと首を傾げるバンの睨み合いが続いた。
「もしかして、リサも行きたいのか?」
ようやくバンはリサの心情を理解した。
リサはコクリと頷く。
「だ、ダメダメ!お前は匿ってんだから、気軽に外に出たら危ないだろ!!」
「……」
バンに全否定されてシュンと萎れるリサ。
そういえば、リサを居候させてから、ずっと家から出していない。
匿ってるんだからむやみやたらに外出させるわけにはいかないのだが、やはりそれは不憫だ。
そう思ったバンは、少し考える。
「う~ん、でも確かにうちに篭ってるだけじゃ可哀相だよなぁ……」
しばらくうなっていると、いいアイディアが浮かんだようだ。
「そうだ!リサ、ちょっと来い!」
言って、バンはリサを奥の部屋に案内した。
公園では、いつものように子供たちがフリックスに興じていた。
「いっけぇ!俺のゴールデン・エレガント・ブラスター!!」
オサムはそこらの子供を相手にバトルしている。
「耐えろ!」
ガッ!
子供の攻撃をオサムのフリックスがあっさり耐える。
「よし、俺のターンだな。いけぇ!」
オサムの攻撃がヒットし、ゴールデン・エレガント・ブラスターを場外させた。
「ま、負けちゃった」
あっさり負けた事に唖然とする子供に対し、オサムが離しかける。
「いやぁ、なかなか筋が良かったぜ。もっと練習すればもっと強くなれる」
「ほんと?!よーし、もっと練習しよう!」
そう言って、子供は駆けていった。
「ふぅ、それにしてもバン遅いなぁ」
駆けて行く子供の背中を眺めながら、オサムはぼやく。
公園でバンを待っているのになかなか来ないものだから、暇潰しに子供達の練習相手をしてあげていたようだ。
「そうだね~、何かあったのかな?」
オサムの隣にやってきたマナブも疑問を表情に出す。
「ちぇっ、今日は思いっきり防御を重視したセッティングでバンの野郎をギタギタにしてやろうと思ったのに」
オサムが手に持った自分のフリックスを眺めながら言う。
「あ、来たよ」
とか言っているうちに、バンが公園に入り、駆けて来た。
「ほんとだ。って、あいつと一緒にいる子誰だ?」
バンの後を深く帽子を被った子が付いてきている。
バンと連れの子はオサム達の所まで来ると手に膝を付いて一息ついた。
「ごめん、遅くなった」
「全く、待ちくたびれたぜ」
謝るバンをオサムは軽く非難する。
「所で、その子は?」
マナブは早速バンの後ろにいる子について問いかけた。
「え、あぁ、えっと、この子は……」
バンは少し狼狽しつつ、目を泳がせつつ、口を開いた。
「俺の、遠い親戚の、リサ山リサ子!」
バンの自己紹介に、リサ子は密かに眉を顰めた。
(リ、リサ子……?)
そう、この子は変装したリサなのである。
服を変え、帽子を深く被せた事でリサである事を隠しているのだが、いくらなんでもその名前は……。
「しばらく俺んちに泊まりにきてるんだ。こいつもフリッカーだから、仲良くしてやってくれ!」
オサムとマナブは、しばらく怪訝な顔をしている。
(……大丈夫……かな)
だが、リサの心配とは裏腹に二人は笑顔でリサに向く。
「そっか、よろしくなリサ子!」
「よろしく、リサ子ちゃん」
二人は、バンの言う事を信じたようだ。
(大丈夫だった……?!)」
二人の意外な反応に驚きつつも、リサは頭を下げた。
「よ、よろしくお願いします」
それから、二人は特にリサ子に対して疑問を持つ事無く、皆で遊ぶ事になった。
「それじゃ、早速俺とバトろうぜ、リサ子!」
「う、うん!」
まずはオサムとリサがバトルをするようだ。
「リサ子ちゃんってどんなフリックス持ってるの?」
マナブの問いかけに、リサはフリックスを取り出して見せた。
ちなみに、フレイムウェイバーだとリサだとばれてしまうので、行く途中の玩具屋で市販の『インフェリアナックル』を購入して使う事にした。
「へぇ、インフェリアナックルかぁ。俺と同じタイプだな」
と言ってオサムはインフェリアナックルを見せる。買って素組みしたままのリサのものと違い、オサムのものは細かく改造してある。
オサムとリサがフィールドを挟んで対峙する。
「よし、じゃあ二人とも準備して!アクティブシュート!」
いつものようにマナブがレフェリーを務めるようだ。
アクティブシュートでリサが先手を取る。
「うぉ、やるなぁ……!」
「よーし……!」
リサがインフェリアナックルをセットして、構える。
「いけっ!」
少し強めにシュートする。
インフェリアナックルが勢い良くフィールドを滑り、マインを弾き飛ばしてオサムのインフェリアナックルへヒットさせた。
「マインヒット!これでオサムは1ダメージ」
しかし、ヒットした後もリサのナックルの動きは止まらない。
「え、ちょっと強すぎないか?」
リサのインフェリアナックルは自滅するんじゃないかってくらいの勢いでフィールドの端に向かっている。
「このままじゃ、場外するぞ!?」
ナックルがグングンフィールド端に向かっている……が、ギリギリの所でストップした。
「あっぶねぇ~。リサ……子にしては珍しいじゃん。ミスか?」
バンが冷や汗を拭いながら言う。
「いや、違う!あれを見て……!」
マナブが何かに気付いて、フィールドを指差す。
「?」
首をかしげながらバンもそれを見る。
「あ!マインと機体の位置が離れてる!」
「機体と機体を結ぶ線上にマインが無い。オサムにとってはかなりやりづいらいはずだよ」
そう、よほど特殊な機能でもない限り、フリックスは基本的にまっすぐ進む。
なので、マインヒットするためには、自機と相手機体を結ぶ線上にマインが位置していないとマインヒットの難易度がかなり上がってしまうのだ。
「マインヒットは、ただ成功させるだけじゃなく成功させた後の立ち位置が一番重要なんだ」
オサムもこれに気付いているのかシュート前に一考する。
「くっ、先手取られた状態でマインヒット出来ないのは痛いな……!相手はフィールド端にいるからイチかバチかフリップアウトも狙えそうだけど、この距離を狙うのはキツイぜ」
しかし、ここで一ダメージ与えなければ、今度はダメージレースで不利になる。
(すっげぇな、リサの奴。先手のメリットを最大限活かしてるぜ!)
「ちぃ、仕方ねぇ!」
オサムはシュートする事を諦め、自分のフリップマインをリサのナックルの傍へ置いた。
本来マイン再セットは相手にとって利用されづらく、そして相手が動かなかった場合に自分が利用しやすい場所に設置するのが定石だ。こうする事で相手は次のターン動かざるを得なくなる。
なので、相手機体の後ろに置く事が最適なのだが、リサのナックルはフィールド端にいるために真後ろには置けず、真横に置くしかなかった。
「リサ子ちゃんの機体がもう少し中央寄りだったら、マイン再セットもやりやすかったのに」
「フィールド端まで機体を飛ばしたのは、マイン再セットも封じるためかよ」
次はリサのターン。
リサがナックルの向きを調節して狙いを定める。リサのマインはかなり遠い位置。そして真横には再セットされたオサムのマインがあるだけ。
「さすがのリサ子ちゃんでも、この状態で攻撃するのは難しいかな」
「再セットしたらオサムに次のターン狙われちまうし、イチかバチかフリップアウト狙うしかないか」
脳筋のバンはフリップアウト狙いを予想するが、さすがにリサの力とナックルの性能ではこの距離でフリップアウトを狙うのは難しいだろう。
そうこうしているうちに、リサはナックルのシュートポイントに指を添えた。
「いけっ!」
小さく気合いを入れて弾く。オサムの機体とは照準をややズラしての強めのスピンシュートだ。
ナックルはスピンで真横にあったマインを弾き飛ばしつつ、更に進んだ。
「やっぱり、とりあえずマインを弾き飛ばして逃げに回るのかな」
いや、それだけではなかった。
ナックルは、マインにぶつかった反射でやや方向が変わり、更にスピンによる空力変化によって絶妙にカーブしながらオサムのナックルへ向かっていく。
「なに!?」
カツン……と弱々しくリサの機体がオサムの機体に接触する。
当たりは弱いが、接触は接触。マインヒットだ。
これでオサムのHPは1。
「く、くっそー!!こうなりゃ自棄だ!!!」
かなり近い位置に来てくれたリサの機体。
このままチマチママインヒットして言っても負けるのは目に見えているので、オサムは意を決して強シュートで攻めた。
しかし、当然ながら勢い余って同時場外。オサムの自滅扱いだ。
これでオサムのHPは0で撃沈。リサの完勝だ。
「す、すごい……!圧倒的だ」
(リサの奴、フレイムウェイバーじゃなくてもこんなに強いのかよ……!)
「そ、そんなぁ……この俺が、何の良い所もなく負けちまうなんてぇ……」
ほとんど何も出来ずに負けてしまったオサムはかなり凹んでいる。
「ま、まぁ、リサ子の奴は俺達よりも二つ年上だし、フリックスもかなり昔からやってたみたいだからなぁ」
バンがなんとなくフォローすると、オサムとマナブはハッとした目でリサを改めて見た。
「え、そうなの?!じゃあ俺達の先輩じゃん!」
「通りで、強いと思った……」
「じゃあさじゃあさ!俺達にいろいろと教えてくれよ!いや、教えてください先輩!!」
「えっ、えっ……?」
オサムにグッと近づかれて、リサは戸惑った。
「オサムは急に態度がころころ変わるなぁ」
「なんだよマナブだって知りたいだろ!」
「ま、まぁね」
「くぅ~、いいなぁバンの奴!こんな強い先輩が家に泊まりに来てくれるなんて!!」
オサムとマナブにご教授を求められ、リサはまんざらでもないような顔で頬を赤らめた。
(連れてきてよかったな)
楽しそうなリサを見ながら、バンはそう思うのだった。
そして、その様子を影から見守るものがいたのだが、バン達は全く気付いていなかった。
…。
……。
………。
そして、夜。
段田家では、バンの父ちゃんが食事の準備をしていた。
食事の準備と言っても、仕事帰りに買ってきた惣菜を付け合せるだけの簡易夕食だが。
「あれ、醤油切らしてんなぁ。おーい、バン!」
キッチンで作業していた父がリビングでリサと一緒にテレビを見ているバンに声をかけた。
「ん~?」
振り向きもせずに返事する。
「ちょっくらコンビニ行って醤油買ってきてくれ。製造元野田市の奴な」
「え~、今良いとこなのに~!」
明らかに不満気な声を上げる。
「飯抜きで良いのか?」
「うっ、分かったよ」
バンは渋々立ち上がり父からお金を受け取ると、外に出た。
醤油(キッコーマン)を買ったバンは、コンビニから出ると駆け足で家路を急いだ。
「早く帰らないと、番組終わっちまう!」
タッタッタ!!
街灯に照らされた夜道をわき目も振らずに走る。
そんなバンの前に、突如、長身の人影が舞い降りて立ちふさがってきた。
「おわぁ!!」
いきなりの出来事にバンは尻餅をつく。
「い、っててて……あ、危ないだろ!!」
飛び出してきた人間に悪態を付くバンだが、その人物の顔を認識した瞬間に目を見開いた。
「あ、お前は!」
その、男は……!
「Mr.アレイ……!」
Mr.アレイは表情も変えずに口を開いた。
「なかなか、調子が良いようだな」
Mr.アレイの言葉に応えるように、バンは勢い良く立ち上がった。
「あ、あぁ!調子は絶好調だぜ!あんたから貰ったドライブヴィクターのおかげでな!」
「貰った、か……」
アレイの言葉は何か含みがある。
「??」
意味を取りかねていると、アレイが厳しい口調で言った。
「お前にくれてやった覚えはない!」
「え、なにぃ!?」
「お前はドライブヴィクターを持つに相応しくない。さぁ、落し物は持ち主に返してもらおう」
アレイがバンに手を出してドライブヴィクターを要求する。
バシッ!
バンがその手を払いのける。
「ふざけんな!いきなりそんな事言われて、納得出来るかよ!!ドライブヴィクターは、俺の大事な相棒なんだ!!」
「ほう……ならば、試してみるか?お前が本当にドライブヴィクターのフリッカーとして相応しいかどうか」
「おう、望むところだ!!」
こんな夜道ではバトルは出来ないので、場所を変えて近くの広場でフィールドを設置してバトルする事にした。
「一回勝負。俺が勝てば、ドライブヴィクターは返してもらう」
「ああ!俺が勝ったらドライブヴィクターは俺のもんだ!」
バトルスタート!マインをセットし、お互いに機体をスタート位置に置く。
「そ、そのフリックスは……?!」
Mr.アレイが持っていたフリックスは今までに見た事の無いタイプだった。
「いくぞ」
バンの疑問に、Mr.アレイは答えずにバトル開始を催促する。
「っ!おう!!」
若干狼狽えながらも、バンはシュートを構えた。
アクティブシュート!
「ゆけっ、ブラッシュゲイザー!!」
「くっ!」
フィールド中央で2機のフリックスが激突する。
ドライブヴィクターはスピンで挑んだのだが、ブラッシュゲイザーと呼ばれたフロント重心っぽいフリックスはヴィクターの攻撃を完全に受け止めて、反転した。
「そんなっ!ドライブヴィクターと互角……!」
「いや、お前がドライブヴィクターを使っているままでは、こちらの方が上だ!」
「なにっ!?」
フィールドを良く見てみる。
進んだ距離はほとんど同じだが、シュートポイントの距離的には反転した分ブラッシュゲイザーの方が進んでいる。
「俺の先手だな」
「けっ!アクティブで勝ったくらいでいい気になるなよ!」
強がってみせるものの、フロント重心でがっしりとしたその角ばったボディはなかなかの重圧感があった。
その迫力に、バンは思わず唾を飲み込む。
「ブラッシュゲイザー……一体どんなフリックスなんだ……!」
脅威を感じながらも、バンはバリケードを構えた。
「はぁぁ!!!」
Mr.アレイのシュート。
ブラッシュゲイザーはドライブヴィクターを運び込むように進んでいく。
「グッ!」
道中マインにぶつかってしまったものの、バンはどうにかその攻撃をバリケードで防ぎ切った。
「は、はぁ……なんて重い一撃だ……で、でも耐えたぜ!!」
「だがマインヒットだ。このままでは不利だぞ」
「へんっ!たかだか1ダメージくらい、すぐに逆転してやるぜ!」
イキって構えるバン。
「相手がどんなフリックスでも、ぶっ飛ばすだけだ!いっけぇ!!」
バーーン!!
バンは強烈なスピンシュートで、ブラッシュゲイザー目掛けてドライブヴィクターを放つ。
「スピンシュートか」
そのシュートを見て、Mr,アレイは侮蔑するように呟いた。
「?」
その意味が分からぬまま、ドライブヴィクターはどんどんブラッシュゲイザーに向かっていく。
「いけぇ!ぶっ飛ばせぇぇ!!」
「無駄だ!!」
「なにっ!?」
ガッ、キュルルルル!!!
ドライブヴィクターのスピンがヒットする。しかし、ブラッシュゲイザーはリアを滑らせてその攻撃を受け流してしまった。
「う、嘘だろ……!」
「ブラッシュゲイザーは、フロントに重心を置いて、リアからの攻撃を受け流す事が出来る。並のシュートは通用せん!!」
「ぐぐ……!」
しかし、それでもマインヒットは出来たのでブラッシュゲイザーは1ダメージ受けた。ダメージレースではまだ不利なものの絶望的な差ではない。
そして、Mr.アレイのターン。
「はぁぁ!!」
バキィ!!
至近距離からのブラッシュゲイザーのストレートアタック。たまらずドライブヴィクターはぶっ飛ぶ。
フリップアウトは免れたものの、かなり飛ばされてしまった。ブラッシュゲイザーからの距離も開いてしまう。
しかもマインヒットもしてしまった。これでバンのHPは1だ
「くっ!攻撃力なら俺も負けねぇ!!」
バシュッ!!
バンは渾身の力を込めてスピンシュートする。
しかし、回転をかける事を重点に置きすぎたせいで距離が稼げず、ブラッシュゲイザーに届く前に失速し、手前でクルクル回転してしまう。
「しまった!」
「スピンシュートは少ない移動距離で高い攻撃力を得られる技故に、遠距離を狙うには向かない。だが、それ以前にお前はドライブヴィクターを扱いきれていない!」
「なんだとっ!どういう意味だ!!」
「ドライブヴィクターは相棒なんだろう?だったら聞いてみるんだな」
挑発するようにMr.アレイは言う。
そして、アレイのターンだ。
先ほどの攻撃は失敗したものの、そのおかげでドライブヴィクターはマインからもブラッシュからも逃げるような形になってしまったのでマインヒットは狙いづらい。
「ここは確実に攻めるか」
あと1ダメージで勝てる状況でわざわざフリップアウトを狙う事もないとMr.アレイはマインをドライブヴィクターの後ろへセットした。
「くっそぉ、このままのペースじゃ負けちまう!負けちまうと、ドライブヴィクターが……!」
バンのターン。ドライブヴィクターの向きを調節して狙いを定めるのだが、焦ってしまって上手く狙いが定まらない。
「どうすりゃいいんだ……俺は……!」
“相棒に聞いてみるんだな”
ふいに、先ほどのアレイの言葉が蘇った。
「……」
その言葉に何かを感じ、バンは狙いを定めるのを一旦やめて、ドライブヴィクターを凝視した。
「ドライブヴィクター……お前は、俺に何かを伝えたいのか?」
ドライブヴィクターは何も言わない。だが、一瞬、ドライブヴィクターの剣先が街灯路に反射してキラッと光った。
「……ドライブヴィクターの特徴はフロントの鋭い剣……あ、まさか!」
ある事に気付いたバンは、向きを再び調節し、狙いを定める。
「頼むぜ、ドライブヴィクター!!」
バシュウウウウウ!!!
ブラッシュゲイザー目掛けて強烈なシュートを放つ。
今度はスピンではなく、ストレートシュートだ。
「むっ!」
その事に気付いたMr,アレイは警戒するのだが、もう遅い。
バキィ!!
ドライブヴィクターの攻撃がブラッシュゲイザーにヒットし、大きく飛ばされる。
かなりの勢いでフィールドの端へと滑って行くブラッシュゲイザー。これならフリップアウトも出来るはず。
「やっぱりそうか!俺、今まで使ってたフリックスでスピンが一番強いシュートだったから、お前もスピンが一番強いのかと思ってた。
お前の事を考えずに俺の戦い方をずっと強要してきた。でも違うんだ!ドライブヴィクターの特徴は、剣みたいなボディ!それを一番活かせるのはスピンじゃなくてストレートだったんだ!!」
バンの言葉を聞いて、Mr.アレイは口元を緩ませた。
「ようやく気付いたようだな。だが、だからと言って俺には勝てん!」
「へんっ!この状態で勝とうってのかよ!このままブッ飛びやがれ!!」
勢いよく飛ばされていくブラッシュゲイザーだが、Mr.アレイはすかさずバリケードを構えて防いでしまった。
「なにっ!?」
「俺はまだ体力に余裕がある、この程度の攻撃なら防ぎきれる!!」
バキィ!!
強度に余裕のあるバリケードによって、飛ばされたブラッシュゲイザーを見事に弾いた。
「次のターンで俺の勝ちだな」
「まだまだぁ!!」
バリケードによって弾かれたブラッシュゲイザーの先にはドライブヴィクターの剣先があった。
「なにっ!バリケードで弾いた後も勢いが尽きてないだと……!」
バリケードの強度に余裕があったのが逆に仇となり、飛ばされた勢いをあまり殺さずに反射させてしまったのだ。
そして、その先にあったヴィクターの細い先端にぶつかった事で、更に反射して方向が変わる。
「くっ!」
予想外な方向へ動いたブラッシュゲイザーに対して人間の反射神経で反応できるはずもなく、ゆっくりと場外していった。
フリップアウト!2ダメージで、ブラッシュゲイザーは撃沈だ。
これによってバンの逆転勝利となった。
「俺の勝ちだぜ!約束通り、ドライブヴィクターは……」
「ああ。お前のものだ。よく使いこなせた」
負けたにも関わらず、Mr,アレイは満足そうな表情だ。
「え、あぁ……。もしかしてお前、俺に気付かせるためにバトルを……」
バンが言い切る前に、アレイはバッ!と飛び上がってその場を去っていった。
「あ、待てよ!……ったく」
照れくさかったのかなんなのか真意は分からないが、密かにMr,アレイに感謝した。
「って、あぁ!いっけねぇ!!もうテレビ終わってんじゃん!!ってか、こんなに遅れちまって、父ちゃんにどやされる!!!」
当初の目的を思い出したバンは慌てて駆け出すのだった。
つづく
次回予告
炎のアタッカーユージンの競技玩具道場!!フリックスの特別編
うっすユージンだ!
今回は、バンとMr.アレイの白熱激バトルだ!!
新型フリックス『ブラッシュゲイザー』とMr,アレイのテクニックに翻弄されながらも、バンはドライブヴィクターの真の性能を引き出し、更にはエレメントまで覚醒させると言う熱い展開!
風のエレメント『ブリーズグライド』に雷のエレメント『サンダーラッシュ』
これらの効果については、また今後詳しく説明するとしよう
そんじゃ、今回はここまで!最後にこの言葉で締めくくろう!!
本日の格言!
『戦い方に迷った時は愛機に聞け!そこに答えがある!!』
この言葉を胸に皆も、キープオンファイティンッ!また次回!!