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爆・爆ストーリー ZERO 第44話

第44話「ヒスイの正体」
ヒスイ「なんだって・・・!」
 ゴルドン祭の真っ只中。ヒスイは大声を上げていた。
クロウ「どうした?」
ヒスイ「い、いえ・・・。なんでも。」
 心なしか、ヒスイは心底焦っているかのように見える。
セシル「悩みがあるんだったら、人に話が方がすっきりするよ?」
ヒスイ「ほんとに、大丈夫ですから。気にしないでください・・・。」
セシル「そう?」
ヒスイ「それより、そろそろ宿に行きませんか?だいぶ日が暮れてきましたし。」
セシル「そうね。ミスコンなんかに出たから、ちょっと疲れちゃった。」
クロウ「・・・・。」
 クロウたちは宿へと向かった。
 運よく二部屋あいていたので、クロウ&ヒスイ、セシルに別れて部屋に入る。
ヒスイ「・・・・・。」
 部屋に入り、ヒスイは窓の外を眺めながら沈黙している。
ヒスイ「(どうすれば・・・!)」
 クロウはそんなヒスイを気にかける事無く黙々とデスサイズのメンテナンスをしている。
ヒスイ「(この期に及んで不足だと・・・!くそっ!しかし、病み上がりの今の状態では本気の力は・・・!)」
 ヒスイは振り返り、メンテをしているクロウを眺めた。
ヒスイ「(待てよ・・・。そうだ、これなら・・・否応なしに・・!)」
 コンコン、ガチャ。
 突如、ドアがノックされ、開く。
セシル「きちゃった~。」
クロウ「ああ、お前か。飯にしては早いと思った。」
セシル「そういうことしか頭にないのね・・・。あ、それより。」
 そして、セシルは窓際にいるヒスイに話しかける。
セシル「ヒスイ~。セラフィックホーネットのメンテナンスをお願いしたいんだけど・・・。」
クロウ「自分でやれ。」
セシル「むっ!やろうとしたけど出来なかったから頼んでるんでしょ!」
ヒスイ「・・・・。」
 しかし、ヒスイはセシルの言葉が聞こえていないのか、何か考え事をしている。
セシル「ヒスイ?」
 不審に思い、セシルはヒスイのそばによる。
セシル「どうしたの?」
ヒスイ「うわぁあ!!」
 セシルの問いかけに、いきなり大声を出すヒスイ。
ヒスイ「い、いきなり耳元で呼びかけないでくださいよ・・・びっくりしたぁ。」
セシル「び、びっくりしたのはこっちよ。それに、いきなりじゃないよ。さっきからずっと呼びかけてたのに。」
ヒスイ「そうだったんですか?」
セシル「ずっと無視するなんて、ちょっとひどいんじゃない?」
ヒスイ「すいません、ちょっと考え事してたもので。それで、何か用ですか?」
セシル「あぁ、うん。セラフィックホーネットのメンテナンスをお願いしたいんだけど。」
クロウ「だから自分でやれ。」
セシル「だからやろうとしたけど出来なかったって言ったでしょ!」
ヒスイ「まぁまぁ。確かにあれだけのバトルをした後ですからね。消耗も激しいはずです。貸してください。」
セシル「うん、じゃあお願いね。」
 セシルからホーネットを受け取り、メンテをはじめる。
セシル「それより、どうだったどうだった?」
クロウ「何が?」
セシル「何がって、さっきのミスコン!」
クロウ「あぁ。動きがちょっと粗かったな。もう少し相手のショットの弾道を読んで・・・。」
セシル「そうじゃなくて!」
ヒスイ「かわいかったですよ、セシルちゃん。ステージは女の子を変えるってよく言いますけど。ほんと、見違えるほどでしたよ。」
 メンテする手を止めずにフォローする。
セシル「でしょー?やっぱりヒスイはよく分かってる・・・って!それじゃ普段はまるでかわいくないみたいじゃない!」
ヒスイ「そ、そういう風に捉えますか(汗)」
 そして、その後、夕食を食べ、風呂に入り、特にこれといった事件が起こる事無く就寝した。
 んで、その翌朝。
クロウ「ん・・・。」
 その日はいつもよりも早く目覚めた。
 しかも、思ったよりも目がさえている。寝なおすことは不可能だ。
 時間を無駄にするのもなんなので、バックからデスサイズを取り出そうと。
クロウ「ない・・・?」
 バックの中にはデスサイズは入っていなかった。
クロウ「!?」
 しかも、よくみると、隣で寝ていたヒスイの布団がもぬけの殻だった。
クロウ「バカな・・・!」
 ダッ!
 クロウは勢いよく立ち上がり、部屋を出る。そして、セシルの部屋をノックした。
クロウ「おい!おい!!」
 ガチャ・・・。
 しばらくして、セシルが眠そうに目をこすりながら出てくる。
セシル「なによ・・もう。こんな朝早くから・・・。」
クロウ「っ、ここには来てないのか!」
セシル「どうしたの?」
クロウ「いなくなっていたんだよ!ヒスイも、デスサイズも!」
セシル「えぇ・・!?」
クロウ「まさか、あいつ・・!」
セシル「ヒスイがそんな事するわけないよ!もしかしたら、誰かがまたクロウのバッグを漁ってて、それを見つけて追いかけたのかもしれないし。」
クロウ「・・・鍵がかかった部屋にか?」
セシル「・・・・・。」
クロウ「とにかく、どっちみちこのままでいるわけにはいかないな。行くぞ。まだ遠くへは行ってないかもしれない。」
セシル「うん。」
 外へ出る。
 その瞬間、強力なダブルバーストがクロウ目掛けてぶっ飛んできた。
クロウ「何!?」
 間一髪でそれをかわす。ダブルバーストは旅館の壁にぶつかり、落ちる。
クロウ「ちっ!」
 瞬時にそのダブルバーストが飛んできた方向を見る。そこには・・・。
クロウ「お前は!」
セシル「ヒスイ!」
ヒスイ「なんだぁ、思ったより早かったなぁ。」
クロウ「貴様!デスサイズをどうするつもりだ!」
ヒスイ「ぶっ壊すのさ。そして、武器を失ったお前を倒す。」
クロウ「!?」
ヒスイ「まぁ、ちょっと予定が狂っちゃったけど。いっか。」
 ヒスイはデスサイズを落とし、そのまま踏みつけようとする。
クロウ「させるか!」
 すばやく小石を拾い、デスサイズへ投げる。
 その小石は見事ヒットし、ヒスイの足は地面を強く踏みしめる事に。
 クロウは地面をけり、デスサイズを奪い取る。
クロウ「よし。」
ヒスイ「ちっ。」
 したうちし、ヒスイはゆっくりと懐からジェイドグラスパーを取り出す。
ヒスイ「まったく、とことんてこずらせてくれるよ。」
 銃口をクロウに向ける。
セシル「ま、待ってよ!なんでヒスイがクロウを狙うの!?私たち、仲間じゃなかったの!?」
 ドンッ!!
 ヒスイの放ったショットはセシルの頬を掠める。
ヒスイ「ごちゃごちゃうるさい。甘ったれのお譲ちゃんは黙ってな。」
セシル「っ!」
ヒスイ「俺はな、最初からお前らの事なんか仲間だとは思っていなかったんだよ。一緒に旅をしながら、ずっとチャンスを探していたんだ。クロウを倒すチャンスをな!」
クロウ「なに!?」
ヒスイ「今のクロウは、ビアスとの戦いでかなり弱っている。これ以上のチャンスはありえない。」
セシル「なんでよ・・・なんで・・・!」
 セシルは目に涙を浮かべながらヒスイに問いかける。
セシル「なんで、クロウを倒さなきゃいけないの!?いったい、何の目的で・・・。」
ヒスイ「目的?そんなものはない。クロウを倒すこと自体が、俺の目的だからな!」
セシル「じゃあ理由は!なんの理由もなしにそんな事を目的にしたの!?」
ヒスイ「理由?・・・ふっ、そんな事、クロウが一番よく知っているはずだろ?」
クロウ「なに?」
ヒスイ「その顔じゃ分からないか。まぁ、覚えていろと言うほうが無理があるな。」
クロウ「早く言え。」
ヒスイ「俺は、お前の兄弟だ。数年前、お前に殺されかけたな!」
クロウ「なに!?い、生きていたのか・・!」
ヒスイ「(ほっ)ああ。俺も驚きだ。俺自身がこんなに生き汚いとは。」
クロウ「・・・・。」
ヒスイ「俺はお前に復讐するために今まで生きてきた。それだけを目標としてな!」
 ドンッ!
 クロウに向かってパワーショットを放つ。
 カンッ!!
 すばやくデスサイズでこれを迎え撃つ。
クロウ「お前が俺にやられたのは、お前が弱かったからだ。それ以外の何者でもない。」
ヒスイ「黙れ!俺はお前を倒す!必ず!」
 ダッ!
 ヒスイは後ろへ後退しつつ、連射する。
クロウ「!?」
 クロウはその連射を交わすことで手一杯で、ヒスイを追いかける事は出来なかった。
 二人の間に絶対的な距離が生まれる。
 お互いに射程圏外に入ったのだ。
 このままでは攻撃が出来ない。
 お互い、圏内に入るまでジリジリと間合いを詰めなければならない。
クロウ「(このままでもでたらめに撃てば、当たる可能性はある。だが、その反動で出来る隙をつかれたら元も子もないな。)」
 ドキュンッ!!
 しかし、ヒスイは一瞬笑ったかと思うと、クロウに向かってビー玉を放つ。
クロウ「なに!?」
 しかもそのショットは正確にクロウの顔面に向かってくる。
クロウ「くそっ!」
 ガキンッ!!
 急いでそのショットをとめる。そのとき生じたリコイルで一瞬隙が出来た。
 その隙をついてヒスイがこちらに向かって全力疾走してくる。
ヒスイ「うおおおお!!!」
クロウ「ちぃ!」
 クロウは地面をけり、右へ移動する。
ヒスイ「!?」
 まっすぐ全力で進んできたヒスイにとって、これは十分な不意になる。
 しかし、動きを抑えていたクロウは十分にヒスイの動きに対応できる。
クロウ「はぁ!」
 ドンッ!!
 ヒスイの横腹へビー玉を打ち込む。
ヒスイ「くっ!」
 ガンッ!
 見事命中。しかし、それはジェイドグラスパーへ。
 とっさにビーダマンをたてにしたのだ。
ヒスイ「ふぅ・・・!」
 そして、その体制のままクロウへ連射。
クロウ「っ!」
 クロウは大きく後ろへ跳び、その連射をかわす。
 そして、飛びつつ空中でヒスイへパワーショットを放つ。
ヒスイ「はぁ!!」
 ズドドドド!!
 そのパワーショットはヒスイの連射により防がれる。
 ザッ!
 着地し、すばやく態勢を整える。
ヒスイ「さすがだな。病み上がりとは思えない。」
クロウ「当然だ。一度勝った相手に、負けるわけにはいかないな。」
 銃口をヒスイに向けたまま、ゆっくりと歩み寄るクロウ。
 ヒスイは一歩も動かず、ただクロウがくるのを待っている。
 一触即発。
 二人の間に、ただならぬ雰囲気が漂う。
 互いに牽制しあい、出方を伺う。
 下手に動けば返り討ちにあう。そんな緊張感を持って。
クロウ「・・・・。」
 そして、ついにクロウが動いた。
 ゆっくりとトリガーを押す。
 ヒスイもこれに対抗する。
 カンッ!
 ぶつかる玉。そして、クロウのビー玉とヒスイのビー玉が横にはじかれ・・・。
 そのままクロウの玉は壁にぶつかり、ヒスイに向かって飛んでくる。
ヒスイ「イングリッシュボール!?しかも、俺の玉とぶつかる事を想定して・・!」
クロウ「はぁ!」
 さらにクロウはショットを放つ。
 横からのショット、前方からのショットに、なすすべなく、ヒットしてしまう。
ヒスイ「くっ!」
 バーンッ!
 強烈な当たりに吹っ飛ぶヒスイ。だが、それでもなんとか踏ん張る。
ヒスイ「・・・・ジェイドグラスパー、リバースハンドミッション。」
 ジェイドグラスパーを逆手に持つ。本気モードだ。
クロウ「ようやく、本気か。」
ヒスイ「絶対に、お前を倒す!」


             つづく
 次回予告
ヒスイ「クロウ!今こそ、あのときの恨みを晴らしてやる!」
クロウ「いいぜ・・。もともと俺が撒いた種だしな。かかってこい!」
ヒスイ「次回!『過去を超えた戦い!』」
クロウ「極めろ、強さへの道!」

 

 

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爆・爆ストーリー ZERO 第43話

第43話「ゴルドン祭 女の戦い」
セシル「うわぁ~。すごい、にぎやかだね~!」
 クロウがビアスと戦ったその翌日。
 ゴルドンの街中は、さまざまな出店が出ており、ちょうちんやらなにやら・・・えと、一言で言えばお祭り雰囲気だ。
ヒスイ「今日は、お祭りか何かあるんでしょうか?」
 と、そのとき。
ツバサ「あ、みんな!」
 ツバサと出会った。
ツバサ「ちょうど、君たちの宿舎に行こうと思ってたんだ。どう、具合は?」
クロウ「あぁ、なんとかな。」
ツバサ「そっか。」
ヒスイ「それより、今日は何かあるんですか?にぎやかですけど。」
ツバサ「うん。今日は年に一度のお祭り、ゴルドン祭があるんだ。」
ヒスイ「ゴルドン祭ですか。」
セシル「(モグモグ)ふ~ん・・・そうなんだ。)」
 と、セシルは口をもごもごさせながら言う。ヒロインのやるべき事じゃない。
ヒスイ「って、セシルちゃん!?いつの間にたこ焼きなんか買ってきたんですか!?」
セシル「イカ焼きと、綿菓子も買ってきたよ。あ~、やっぱりお祭りは出店よね~♪」
クロウ「・・・太るな。」
セシル「何よ!」
クロウ「あまり余分なカロリーは取るな。アスリートとしての常識だ。」
セシル「むぅ~!そんな事言うんだったら、これ分けてあげない!」
 と、セシルはそっぽを向く。
クロウ「・・・・・。」
 クロウはちょいとさびしそうな顔をしたが、誰もそれには気づかなかった。
ツバサ「あははは。そうだ、向こうで射的やってたよ。もちろん、ビーダマンを使ったね。」
ヒスイ「へぇ、面白そうですね。」
クロウ「そうか?」
ヒスイ「たまにはいいじゃないですか。こういうのも。それに、病み上がりで、ちょうどいい調整になるのでは?」
クロウ「まぁ・・・。」
 そんなわけで、クロウ達は射的の屋台の前へとやってきた。
オヤヂ「へいらっしゃい!!」
 店の中には、さまざまな商品が並んである。ぬいぐるみ・・・おもちゃ・・・お菓子・・・デッカイ将棋の駒・・・などなど。
 クロウ達はオヤヂに金を払い、的の前に立つ。
オヤヂ「持ち玉は一人三発ずつだぞ。」
クロウ「さて・・・・。」
 クロウが狙うのはあのデッカイ将棋の駒だ。
オヤヂ「(ほぅ、あれを狙うとは・・・たいした肝っ玉だ。だが、相当なパワーがいるぜ・・・。)」
 ドンッ!
 ドライブダブルバーストが見事駒を倒す。
オヤヂ「なっ!」
ヒスイ「さすがですね。」
クロウ「当たり前だ。」
 その後・・・ヒスイはブリキのおもちゃ。ツバサはお菓子を次々とゲットしていく。
オヤヂ「(こ、こいつら・・・・できるぜ!)」
 たかだか祭りのゲームなのに、勝手に燃えるオヤヂ。
セシル「よーし、次は私ね!」
ヒスイ「がんばってください。」
セシル「大丈夫よ!私のビーダマンはコントロール重視だし。」
 セシルはヘッドのスコープを覗き込む。
セシル「・・・あのぬいぐるみを・・・!」
 ドンッ!!
 セラフィックから放たれた玉はぬいぐるみ・・・のとなりにあるケースにヒットした。
セシル「あ、あれ?」
ヒスイ「・・・僕の開発した、ホーネットが狙いをはずすなんて・・・。」
 ショックを受けるヒスイ。だが、今のはどう考えてもセシルの責任だろう

オヤヂ「おっ、だが、こいつはすげぇぜ!」
 ケースをセシルに渡す。
セシル「すごいって?」
オヤヂ「開けてみな。たぶん、この中にある賞品の中では一番の代物だ。」
セシル「ほんと!」
ヒスイ「怪我の功名ですね。」
 早速開けてみるセシル・・・。そのケースの中にはチケットのようなものが入っていた。
セシル「これは?」
オヤヂ「ゴルドン祭最大のイベント、ミスコンの出場権だ。どうだ、すごいだろう?」
セシル「・・・・。」
 もし、男がこれを手に入れたらどうすれば良いのだろうか?
ヒスイ「すごいん・・・ですか?」
オヤヂ「おうよ!なんたって、このミスコンに出て優勝すれば・・!」
セシル「すれば?」
オヤヂ「ストライクショット、ゴールド弾がもらえるのさ。」
ヒスイ「ストライクショット?」
 聞きなれない言葉に首をかしげる。
オヤヂ「なんだお前ら。ストライクショットを知らないのか?」
ヒスイ「ええ。」
オヤヂ「まぁ、つい最近ニュースでちょこっと発表されただけだから、無理もねぇか。ストライクショットっつーのはなぁ、昔、このビーダワールドに落ちてきた謎の隕石のことだ。」
セシル「隕石とビーダマンと、どう関係があるのよ?」
オヤヂ「お譲ちゃん、話は最後まで聞いたほうがいい。その隕石っつーのは、不思議な事にビー玉とほぼ同じ大きさで、ビーダマンを使って発射できるのさ。」
ツバサ「でも、隕石って事は石なんですよね?それを発射しても、摩擦でホールドパーツをいためるだけだと思いますけど・・・。」
オヤヂ「いや、それもさらに不思議な事なんだが、その石はビー玉とほぼ同じ材質なんだ。しかも、普通のビー玉とは全然性能が違う。しかも性能が違う玉が何種類もあるらしい。」
ヒスイ「なんで、そんなものが、隕石として・・・。」
オヤヂ「あぁ、だから不思議だって言っただろ?なぜ、宇宙から、こんな都合よくビーダマンで撃てる特殊なビー玉が落ちてきたのか・・・。単なる偶然か、はたまた何者かの陰謀なのか・・・。ドリームは膨らむばかりだぜ。」
 いきなりうっとりしだしたこのオヤヂ。絶対自分に酔ってる。
ヒスイ「で、そのゴールド弾って・・・。」
 遠慮がちにたずねる。
オヤヂ「あん?」
ヒスイ「い、いや、ゴールド弾って一体どんな効果があるのかなぁ・・と思いまして・・・。」
オヤヂ「効果?」
ヒスイ「え、だって、ストライクショットにはそれぞれ独自の性能があるんでしょう?」
オヤヂ「あぁ、そうだったな。ゴールドだんっつーのはなぁ、全身を金で覆われたビー玉だ。金ぴかボディが相手の目くらましになるって寸法よ!まさにゴルドンにはぴったりのストライクショットってぇわけだ。しかも、このゴールド弾は偽者が頻繁に出ているらしいんだ。その中で、本物のゴールド弾ってんだから、価値はでけぇぜ?」
ヒスイ「へぇ・・・!」
 オヤヂの話を聞き、興味を持ったヒスイたち。
 とりあえずセシルはミスコンに出る事にした。
セシル「でも、ミスコンってどんな事するんだろう?」
ヒスイ「それは、僕にもよく分かりません。とりあえず会場に行ってみないことには。」
セシル「で、会場は?」
ツバサ「え~っと・・・確か・・・こっちだったような気が・・・。」
 そして、散々迷いつつも、ようやく会場についた。
ヒスイ「あ、参加者は受付して、控え室に行くみたいですね。そこで、説明とか、着替えとかするんじゃないでしょうか?」
セシル「う~・・・ちょっと、緊張するけど、とにかく行ってみるね。」
 受付へと歩いていくセシル。
 ・・・・ほどなくして、アナウンスが流れ出し、ミスコンの説明がされた。
 まず、一次審査はお約束の水着審査。
 これは、単にステージの前に出て、自己紹介するだけのものだ。
 そして、二次審査はコスチューム審査。
 各個人が用意されたコスチュームを選んでステージに立つ。そして、簡単な質問に答えてもらうと言うもの。
 二次審査が終わった時点で投票を行う。
 んでもって最終審査は私服審査。
 私服でディレクトヒットバトルを戦うトーナメント戦。
 この私服審査を勝ったものがミスコンの優勝者となる。
ヒスイ「一次審査と二次審査の意味は!?」

 特にない

ツバサ「まぁまぁ。」
クロウ「・・・。」
 なぜかさめた顔をしているクロウ。
ツバサ「どうしたの?」
クロウ「興がそがれた。最終審査になるまで、俺は別のところで暇つぶししている。時間になったら呼んでくれ。」
 そういって、クロウは去っていってしまった。
ツバサ「相変わらずだね。」
ヒスイ「ええ。」

 そんなこんなでミスコンは厳かに開始された。
 一次審査。
 水着を着た参加者が次々と現れては消えていく。
Mr.ビーダ「さぁ、お次は!前回の優勝者!ゴルドンの女神!アリサ・ブルームさんです!」
アリサ「皆さん、ただいまご紹介に預かりましたアリサ・ブルームです。今回で参加は三度目になるんですが、まだ緊張してます。皆さんどうか、よろしくお願いします。」
 ぺこりと頭を下げ、そのまま去る(?)
ヒスイ「無難ですね。」
ツバサ「うん、無難だね。」
ヒスイ「それにしても、なんでMr.ビーダが司会を?」
ツバサ「それはきっと、あれだよ。『ビーバトルあるところにMr.ビーダあり』って奴だよ。きっと。」
ヒスイ「・・・・最後しかバトルやらないんですが。」

Mr.ビーダ「さぁ、お次は今回初出場のクレア・フォスターさんだ!」
 クレアさん登場。
 簡単に自己紹介をすます。
Mr,ビーダ「今度は・・・おおっと!今回飛び入り参加のセシル・エレスティアさんだぁ!!」
 セシル登場。
セシル「え・・えと・・・。」
 大観衆の前に緊張しまくるセシル・
セシル「が、が、がんばりますので・・・よろしくお願いします!!」
 とりあえず、ぺこりとお辞儀し、そのまま去る。

ヒスイ「・・・さすがに、慣れてないときついみたいですね。」
ツバサ「うん、あれじゃ、厳しいかもね・・・。」

 そんなこんなで、一次審査しゅうりょ~。
 次に二次審査が始まる。
 それぞれがそれぞれのコスに着替え、それぞれの質問に的確に答え、二次審査も終了する。

Mr.ビーダ「さぁ、お次は、お待ちかねの第三審査!バトルだぁ!!みんなぁ!燃えてるかぁ!!!」
 二次審査終了と同時にいきなりテンションがあがるMr.ビーダ。なんとなく気持ち分かる。

ヒスイ「やはり、本業の方が燃えるようですね。」
ツバサ「うん、僕も実は楽しみにしてたんだ。何か、すごいビーダマンの気配がするしね。」
ヒスイ「気配?」
ツバサ「なんていうのかな・・?ビーダマンが発してる気って言うか・・・。とにかく、すごいよ。クロウの持ってるデスサイズと同じようなものを感じる。」
ヒスイ「まさか、伝説のビーダマン?!」
ツバサ「それは、分からないけど。」
 二人とも、クロウの事をすっかり忘れている(爆)

クロウ「忘れるな。」

ヒスイ「あ、クロウ。」
 クロウがやってきた。
クロウ「まったく、気がついたら時間になってるし。呼んでくれと言っただろう。」
ヒスイ「ていうか、どこにいるのか分からないのに呼びようがないですし・・・。」
 確かに。
クロウ「(分かれよ。)」
 と、クロウは心の中でさも自分が正しいかのように突っ込む。だが、正しいのはどう考えてもヒスイだ。例外は無い。
 そんなくだらない事をしている間に、トーナメントの組み合わせが決定したようだ。

Mr.ビーダ「さぁ、お次のバトルは、セシル・エレスティアVS大輪ミエだぁ!年の功を見せ付けるのか、ミエ選手!それとも、若さで押すか!セシル選手!」
ミエ「(なんか、失礼な実況ね。)」
 女性に対して年齢の事を言うのは失礼である。
ミエ「まぁいいわ!久しぶりに、私のバトルを見せてあげる!」
リエナ「ミエさん・・・ビーダマンやったことあるんですか・・・?」
ミエ「昔ちょっとね。さぁ、行くわよ!パワフルマム!」
 とある方の要望に一年の時を経て応える事になった機体、パワフルマム。
 簡単にはプロトワンのリペイントと思ってもらって差し支えない。下手に変な妄想をすると怪我をする。
セシル「相手は年上・・・でも、私は負けない!行くわよ、ホーネット!」
ミエ「(何でみんな年の事を強調するの(泣))」
Mr.ビーダ「バトルはディレクトヒットバトル一本勝負!さぁ、DHBコアをつけてくれぇ!」
 DHBコアをつけるセシル。ミエはDHBアーマー。
Mr.ビーダ「さぁ、おっぱじめるぞぉ!ビー、ファイア!!」
 スタートと同時に連射するミエ。
ミエ「まだまだ私だって現役だって事見せてあげるわ!」
セシル「きゃっ!わわ・・!」
 必死でそれをよける。と言うか、ビビッて全然動いていない。それでも玉はセシルを避けている。

ヒスイ「鈍いですね。狙いが全然あってない。」
クロウ「あぁ、あの距離で狙いを外すとは。衰えとは、恐ろしいものだな。」
 ギロッ!
クロウ「っ!」
 クロウはステージから何か殺気がくるのを感じた。
クロウ「(なんだ・・・・これはロン以上の憎悪を感じる・・・!)」
 と、その刹那。
 カンッ!!
Mr.ビーダ「きまったぁ!!ホーネットのショットがパワフルマムのアタックポイントを撃破!!ミエ選手、途中で余所見したのが、まずかったようだ!」
セシル「や、やった!」
ミエ「はぁ・・・。若さには勝てないわね・・・。」
セシル「いえ、いい勝負でしたよ。」
ミエ「セシルちゃん・・。」
 ミエとセシルは熱く握手した。
Mr.ビーダ「おおっと!美しいぞ!これは、バトル後に生まれた女の友情だ!!これでこそ、ビーダー!ビーダー仲間に、年の差なんて関係ないのだ!!」
ミエ「(もういいわ!)」
 いい加減しつこいね(爆)

Mr,ビーダ「さぁ、バトルは進みに進んで、二回戦!セシル選手VSリエナ選手のバトルだぁ!」
リエナ「えっと・・・よろしくお願いします。」
 ぺこりとお辞儀をするリエナ。
セシル「あ、こちらこそ。」
 同じくお辞儀返し。
セシル「(あ、この子、あのお店の子だ。)」
 だからどうと言うわけでもない。
Mr.ビーダ「それじゃぁ、二人とも、ビーダマンを構えてくれ!」
 ホーネットを取り出すセシル。
セシル「いくわよ・・・!」
 そして、リエナは赤いビーダマンを取り出す。
クロウ「あ、あれは!」
 クロウはその赤いビーダマンに過剰な反応を示す。
リエナ「行きます!」
クロウ「ガーネット・・・ウィンド・・・!」
 そう、リエナの使っているビーダマンはアニメでおなじみガーネットウィンド。
ヒスイ「知ってるんですか、クロウ?」
クロウ「なぜ・・奴が・・!まさか、あいつシャドウの!?」
ツバサ「うん、あの子は元シャドウのビーダーのグレイの妹だよ。」
クロウ「・・・・あ、そういえばそうだったな。」
 クロウもリエナの事を見た事があるはずだった。単に忘れていただけだ。物語に何の影響も無い。これ以上追求することなく、観戦する事にする。
 誰もツバサが知っている事に関しては突っ込まない。

Mr.ビーダ「それじゃぁおっぱじめるぞぉ!ビー、ファイア!!」
 バトルが始まる・・・そう、はじまるのだ。
 二人の少女が乱雑にビー玉を発射する。

ツバサ「クロウ、この勝負どう見る?」
クロウ「・・・連射スピード、装填スピード・・・二人とも互角だな。」
ツバサ「となると。」
クロウ「残るは運か、もしくは先にスタミナ切れした方の負けだ。」
ヒスイ「・・?」
 と、そのとき、ヒスイは懐になにやら違和感を感じたようで、そのままクロウたちに気づかれないように何かを取り出す・・・。
ヒスイ「・・・どうしたんですか?・・・ええ・・・ええ。」

 ・・・・。
 ・・・。
 カンッ!!
Mr.ビーダ「きまったぁ!!リエナ選手の勝利だぁ!!」
リエナ「やった!」
セシル「負けちゃった・・・。」
 バトルに負けたので、セシルはステージを降り、クロウたちの元へとやってくる。
セシル「はぁ、負けちゃったよ。」
ツバサ「いや、でもいいバトルだったよ。」
セシル「ほんと!?」
ツバサ「うん。」
ヒスイ「・・・・・なんだって!?」
 ゴルドン際の最中、密かにどこかと連絡を取っていたヒスイはいきなり大声を出した。




       つづく

 次回予告

クロウ「この出会いは運命だったのか・・・。それとも、虚構で塗り固まれた罠だったのか・・・。だが、今となってはそんなものは関係ない。あるのは、目の前にある事実だけだ。
 次回!『ヒスイの正体』極めろ、強さへの道!」

 

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爆・爆ストーリー ZERO 第42話

第42話「夢の中の闇」
クロウ&ビアス「ビーファイア!!」
 伝説のビーダマン、デスサイズVS凶悪な力を持つメガディアブロスの戦いがついに始まってしまった。
リカルド「ビアス様が・・・ビーダマンを手に取った・・・・。」
 リカルドは震える声で言う。
ツバキ「隊長?」
バンザ「あのクロウって奴。地獄を見ることになるぜ。」
ツバサ「地獄を?」
ジョン「ビアス様の挑戦を受けたあいつはバカだっつーの。」
ツバサ「でも、クロウだって強い!」
ヒスイ「そうですよ!それにデスサイズは伝説のビーダマンですよ!」
リカルド「そんなことは関係ない。」
ヒスイ「?」
リカルド「このバトルに、俺たちの言う『強さ』は全く意味を持たないんだ。」
ツバサ「それってどういう・・・。」


クロウ「(あのビーダマンがどれほどの力か、まずは様子見だな。)」
 ビー玉を撃たず避けることを重視する事にしたクロウ。
ビアス「ふふふ。」
 だが、ビアスもビー玉を撃とうとしない。
クロウ「・・っ!撃たないのか?」
ビアス「・・・・・。」
 ビアスはただ笑うだけだ。
クロウ「ちっ。」
 このままじゃラチが空かないので撃つ事にする。
 パワーダブルバーストが勢い良くビアスに迫る。
ビアス「遅いな。」
クロウ「なんだと・・・!」
 ビアスは物凄いスピードで迫るクロウのショットをすんでのところでかわしてしまった。
クロウ「かわした!?」
ビアス「ふっ。」
 バシュッ!!
 驚愕するクロウの隙をつき、ショットをはなつ。
クロウ「っ!」
 とっさにかわすが、そのせいでバランスを崩してしまう。今撃たれたら確実にやられてしまう。
ビアス「・・・・。」
 ドンッ!!
 ビアスはバランスを崩したクロウにとどめの一撃を放つ。
クロウ「くそっ!」
 カンッ!!
 しかし、そのショットはデスサイズをかすめ、壁に激突する。
クロウ「・・・・貴様・・・ずらしたな・・・!」
ビアス「ふっ。」
クロウ「正直、貴様なんかに本気を出すつもりはなかった・・・だが、今のはむかついた!俺は、舐められるのが、見下されるのが一番嫌いなんだ!」
 ビアスを思いっきり睨みつけるクロウ。
クロウ「俺を本気にさせた、お前が悪いんだからな。」
ビアス「面白い。」
ヒスイ「(す、すごい・・・クロウ、今までに見たことのない気力です・・・・。)」
リカルド「無駄だな。どんなに気力をあげようと・・・。」
ツバサ「えっ?」
ツバキ「どういうことですか、隊長!?」
リカルド「ビアス様は・・・あのビーダマンは俺たちとは次元が違う・・・。いかにビーダーとしての腕を極めようと、1次元上の世界へ行く事は不可能だ。」
ツバキ「・・・・。」
ツバサ「そんな。」
クロウ「はぁ!!!」
 クロウは渾身の気合いを込め、ダブルバーストを放つ。
ビアス「ふんっ。」
 ビアスは余裕の表情でそれをかわす。
クロウ「うおおおお!!!」
 だが、クロウはひるまず、ダブルバーストを連射する。隙を与えないように。
 しかし、ビアスはそれをもかわしてしまう。
クロウ「(なんだ、あの動きは・・・!)」
ツバサ「あんな重厚そうなビーダマンなのに、あんなに動けるなんて・・・。」
ヒスイ「まるで、クロウのショットの軌道を予測しているようです。」
ビアス「予測などする必要はない。」
 ヒスイの一言に答えるビアス。
ビアス「単に向かってくる玉が遅いだけだ。遅い玉をかわす事など、誰にでもできる。」
クロウ「これでもまだ、そんな事がいえるのかぁ!!」
 ドンッ!!!
 さらに強力なショットを放つクロウ。そのショットは空気を切り裂きながら突進する。
ビアス「さぁ、そろそろやるか。」
 ギュイイイイイイン!!!!
 メガディアブロスのうねりが大きくなる。
セシル「な、なに?このおと・・・!」
ヒスイ「今まで聞いたことのない音です!」
ツバキ「あのビーダマンから出てるのか!?」
アキラ「く・・・来る・・!」
ブレン「あれが・・・!」
 突然、ブレン達が怯えだす。
ツバサ「あれって?」
リカルド「あれこそ・・・ビアス様の最強の技・・・!あの技の前には、どんなショットも無力に・・・!」
 ギャアアアア!!!!
ビアス「悪魔の咆哮!デスハウリングキャノン!!!!」
 ズドドドドド!!!!
 メガディアブロスから信じられないほどの連射が放たれる。
クロウ「な、なにぃ?!」
ヒスイ「なんなんです!あの連射スピードは!?」
 パワーもかなり凄まじい。
 クロウは成す術なくそのショットを受けてしまう。
クロウ「ぐわあああああ!!!!!」
 何発も強力なショットを体に受けるクロウ。だが、なんとか持ち堪える。
クロウ「ぐっ・・・!」
 そして、傷ついた体で、ビアスを見る。
 しかし、ビアスは動こうとしない。
 見ると、メガディアブロスのバレルが折れていた。あの時のクロウのショットがアタックポイントに命中したのだ。
ビアス「負けたか・・・。さすがにチャージし切れていない人魚の涙では、十分なエネルギー源にはなりえなかったようだ。・・・仕方がない。メガディアブロスのエネルギーはまた別のところで調達するか。」
 そう言って人魚の涙を放り、去っていった。
クロウ「くっ・・・この勝負・・・完全に俺の・・・!」
 ドサッ!
 さっき受けた衝撃が強かったのか、クロウは意識を失い、倒れてしまった。
ヒスイ「クロウ!」
 ・・・・。
 ・・・。
クロウ「ここは・・・どこだ?」
 気が付くと、クロウは暗闇の中にいた。いや、いたのではない。そこに自分自身の実体はない。あるのは視点だけ。だが、それも一般にいう「みている」とは違う感覚だ。
 視覚に溶け込んでいる?情報を飲み干している?
 それは、人知を超えた感覚だった。
 暗闇の中、一条の光が見えた。
 その光の先にある風景を見た。すると視点はその風景に溶け込まれて・・・・。
 数ヶ月前。クロウはシャドウへと入った。
アババ「あなたが、裏社会でも凄腕という噂の。」
クロウ「クロウ・アスカードだ。」
アババ「ふふふ、いい目をしているわ。いいでしょう、シャドウへの入団を許可します。」
 クロウがシャドウに入った理由。それは、シャドウで密かに開発されたという改良型素体ZEROを手に入れるためだった。
 いろいろと探りを入れてみたが、まったく手がかりは得られなかった。
クロウ「ちっ、どこにもないな。やはりあの噂はデマだったのか・・・?」
 その時、クロウの懐で、何か音がする。
 シャドウに入団したときに渡された通信機だ。アババから呼び出しを喰らったようだ。
 クロウはアババのいる部屋へと赴いた。
アババ「待っていましたよ、クロウさん。」
 そこにいたのは、アババだけではなかった。赤い髪をした目つきの悪い少年も一緒にいた。
 クロウはその少年を一瞥したが、大して気にすることなくアババに話し掛ける。
クロウ「それで、何のようなんだ?」
アババ「先ほど、光の三原色といわれている伝説のビーダマン・・・ガーランドブラスト、エメロードミラージュ、ガーネットウィンド・・・そのうちの一つが、レッドマウンテンにあるという情報を得ました。」
赤い髪「伝説のビーダマン?コバルトブレードじゃねぇのか?」
アババ「それとはまた違った種類のものよ。この世に色彩を与えたといわれる三原色ビーダマン・・・それもシャドウの求めるものの一つ。」
クロウ「で、俺たちにそれを取って来いと?」
アババ「ええ。クロウさんと炎呪さん。あなた方二人で・・・・。」
炎呪「ふざけるな!!」
 赤い髪の少年が怒鳴る。
アババ「どうしました、炎呪さん?」
炎呪「こんな新人と組んだところで、足手まといになるだけだ!」
アババ「ふふ、二人で行けといいましたが、協力しろとは言ってませんよ?」
炎呪「なに・・・?」
 アババはとあるビーダマンを取り出す。
クロウ「こ、これは・・・!」
 それこそ、クロウが求めていた・・・。
アババ「シャドウが総力を結集して作り上げた改良型素体ZEROです。見事原色ビーダマンを手に入れたら、これを差し上げましょう。」
クロウ「・・・!」
アババ「しかし、改良型素体ZEROは一つしかありません。」
 アババは意味深に笑う。
炎呪「ふん、なるほど。つまり、俺たち二人で奪い合えと。」
アババ「そうとってもらって構いません。」
炎呪「おもしれぇ。その改良型とやら、俺が手に入れてやるぜ。」
 炎呪とクロウはレッドマウンテンへと足を運んだ。そこまでの道のりはそれほど険しくはなかったので省略させて貰う。
 そして、その山の頂上、クロウと炎呪はついに赤く輝くビーダマンを見つけるのだった。
炎呪「これかぁ?伝説のビーダマンって奴は。」
 炎呪がそれを手にとろうとすると、一つのビー玉が炎呪の手をかすめた。
炎呪「!?」
 振り向くとそこにはビーダマンを構えたクロウが立っていた。
炎呪「貴様・・・!」
クロウ「忘れたのか?俺とお前は協力者ではない。お前に、そのビーダマンは渡さない。」
炎呪「ふん、いいだろう。先輩にたてついた事を、後悔させてやるぜ。」
 コバルトカイザーを取り出す炎呪。
炎呪&クロウ「ビーファイア!!」
 バーンッ!!
 勝負は一瞬でついた。
 ビーダマンを構えたまま笑みを浮かべるクロウとビーダマンを落とし、膝をつく炎呪。
クロウ「俺の勝ちだ。こいつはもらっていく。」
炎呪「バカな・・・!この俺が・・・!バカな・・・バカな・・・バカなあぁぁ!!!!」
 炎呪の咆哮を背に、クロウはシャドウ本部へと帰っていった。
アババ「見事です!これはまさしく、ガーネットウィンド!あなたがとってきたのですね?」
クロウ「ああ。このくらいどうって事ない。」
アババ「さすがは、裏社会随一のトップビーダー・・・。では、約束どおりコレを。」
 アババは改良型素体ZEROをクロウに渡した。
クロウ「こいつが・・・!」
 それからの俺は、どっぷりと闇に漬かっていった。
 あるいは、光を求めていたのか?
 光・・・・光・・・・。
 あそこに・・・この先に・・・かすかに見える・・・。
 かすかだが、目を覆いたくなるほどのまばゆい光が・・・。
 俺は・・・・そこに・・・・そこに・・・・・!!
セシル「クロウ!クロウ!!」
 クロウはうっすらと目をあけた。目の前にはセシルの顔があった。
クロウ「俺は・・・。」
ヒスイ「よかった。目がさめたみたいですね。」
 ヒスイが安堵のため息をつく。
 あたりを見ると、どうやら宿屋の部屋のようだ。
クロウ「メガ・・・ディアブロス・・・・。」
 自分が戦ったビーダマンの名前を口にしてみる。
クロウ「闇だ・・・。」
 クロウが闇につかっていたとするなら、あのビーダマンは、闇そのものだった。
クロウ「俺は勝った・・・だが、あれは勝ちではない。」
 勝ちではない。つまり負けだ。あの勝ち方は負けを意味していた。
クロウ「(光・・・俺が、光を求めたから・・・だから負けたのか?闇に勝てなかったのか?)」
 “お前の中に、弱さが生まれている”
 かつてロンに言われたセリフが思い出される。
クロウ「(俺は、弱くなっているのか?)」
 クロウはうつむき、ただじっと自分の手を見つめた。何かを問い掛けるように。
セシル「大丈夫?」
クロウ「え・・・。」
セシル「どうしたの、さっきからボーっとして。」
クロウ「あぁ・・・いや・・・。」
ヒスイ「やっぱり、まだ傷が痛むんですよ。無理はしないほうが良いです。」
クロウ「そうだな。」
 呟き、横になった。全ての現実を拒絶するには、一番有効な手段だったからだ。
クロウ「(俺は一体・・・どれだけ強くなれば良いんだ・・・?)」
       

爆・爆ストーリー ZERO 第41話

第41話「最強のビーダマン!?人魚の涙の力」
リカルド「バトルを盛り上げるか。」
 パチンッ!と指パッチンするリカルド。すると何故か地面からバトルフィールドが五つ出てくる。
 対立する五人と五人。バトルは自然と一対一の流れになる。
 クロウと対峙しているのは、「っつーの」が口癖のなんかすかした野郎だ。
クロウ「運が悪かったな。よりによって俺が相手とは。」
ジョン「それはこっちのセリフだっつーの!このジョン様のシューティングヴォルフの前には、どんな奴も敵わないっつーの!」

 セシルと対峙しているのは、アキラだ。
アキラ「俺は女が相手でも手加減はしない。」
 アキラとセシルは互いにDHBコアを装着している。他の皆と違い、ディレクトヒットバトルをするようだ。

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爆・爆ストーリー ZERO 第40話

第40話「仕組まれたミスリード」
 ゴルドーの屋敷の前。
 ツバキは、静かに扉をノックする。
ツバキ「ゴルドー市長!自警団のものです!いらっしゃいますか!」
ゴルドー「はいはい、なんのごようですかぁ~。」
 ドア越しからゴルドーの声が聞こえ、ゆっくり扉が開く。
 その瞬間、ツバキとクロウ達は強引に家の中に入る。
ゴルドー「な、ななななななんなんですかぁ!?」
 ツバキは、ゴルドーに手帳と捜査令状を見せ付ける。
ツバキ「ゴルドー市長。ちょっと部屋の中を見させていただきますよ?」
ゴルドー「な、なんの権利があって、そんな・・・!」
ツバキ「いくぞ。」
 ツバキ達は、困惑するゴルドーにかまわず、ゴルドーの部屋へ向かった。
ゴルドー「なんなんですかぁ、きぃみたちはぁ!!」
 憤慨するゴルドーを完全に無視し、部屋の中を探る。
ツバキ「それで、どこだい、その看板って言うのは!」
セシル「これです!」
 セシルが『×』と書かれた看板を大量に持ってくる。
ツバキ「これが・・・。」
ゴルドー「な、なんですか、その看板は・・・!」
ツバキ「とぼけるな!」
ヒスイ「ネタはすべてあがってるんですよ!」
ゴルドー「な、なにを・・・なんのことをいっているのでぇすか!?」
ヒスイ「あなたが、犯人ですね?人魚の涙を盗んだ。」
ゴルドー「何を証拠に・・・。」
ヒスイ「この部屋にあった看板・・・。あれは、僕らがこの町にくる途中、何度も見てきました!」
ゴルドー「だから、なんだって・・・?」
ヒスイ「あなたは僕らが来る事を、あらかじめ知っていたんでしょう?そして、僕らの道のりにこの看板を仕掛け、グラビトンビレッジとゴルドンとの道のりをぐるぐるぐるぐると回るようにさせた。」
ツバキ「(なるほど、それでこいつらが何日もかけてグラビトンビレッジからゴルドンまで歩いたってわけか。)」
ゴルドー「何の事をいって。」
ヒスイ「そう、あなたはそうやって時間稼ぎをして、犯人がクロウになるように周到に盗みの用意をした。クロウとよく似た服を作り、自分の姿を町の人たちに見せつつ、うまく人魚の涙を盗めるように。」
ゴルドー「ぐっ・・・何故私がそんな事をしなければならない!動機が、ないではあぁりませんかぁ!」
セシル「動機ならあるじゃない!」
ヒスイ「きっとあなたは、人魚の涙を美術館ではなく、自分の手元に置いておきたいと思った。でも、いくら市長でもそんなわがままは通用しない。だから、盗んだんです。そして、その宝石をクロウのバックの中に入れた。これが、あなたのしたことの、全てですね。」
ゴルドー「ぅ・・ぁ・・。」
ツバキ「(あ~、なるほどぉ~。確かに一応筋が通って・・・あれ、ちょっと待て!?)」
 ツバキはちょっとした疑問を抱き、ヒスイに耳打ちする。
ツバキ「おい、それで?市長が犯人だって言う証拠は?」
ヒスイ「え?だから、この看板。」
ツバキ「いや、それは証拠にはならんだろ(汗)」
ヒスイ「そうなん・・・ですか?」
 きょとんとするヒスイ。ツバキは、開いた口が塞がらなかった。
ツバキ「まさか、お前、それだけのことで・・・。」
ヒスイ「えぇ・・・まぁ。」
ツバキ「(それは推理じゃなく、ただの憶測・・・いや、ガキの妄想じゃねぇか(汗))」
ゴルドー「わ、私は・・・犯人じゃない・・・犯人じゃないのに・・・!」
ツバキ「(も、もっとガキがいた!?てか、今の推理突っ込みどころ満載じゃねぇか!なんで反論できないんだ!?!?)」
ヒスイ「とにかく、これで真犯人が見つかり、クロウの無実が証明されたわけですね!さぁ、神鷹さん!逮捕をお願いします!」
ツバキ「い、いや・・・。」
 口を濁すツバキ。
ツバキ「(あ~、くそっ!もっと考えて行動すりゃよかったぁ~!!いつもの悪い癖でつい勢いだけで行動しちまったぜ~!!自信満々なこいつらの態度や、隊長の命令についのせられちまったんだなぁ・・・。あぁ、隊長になんて説明しよう・・・。)」
 まぁ、新米刑事ゆえの過ちって所だな。
 とかなんとかやってるうちに、扉が勢いよく開き、リカルドが突入した。
リカルド「話は全て聞かせてもらった。」
ツバキ「た、隊長・・・!」
リカルド「ゴルドー市長。まだ証拠は不十分ですが、容疑がある。署でお話を聞かせてもらいましょうか?」
 ゴルドーに近づくリカルド。しかし。
クロウ「待て。」
 今まで黙っていたクロウが口を開く。
リカルド「なんだ?」
クロウ「ふん、ようやく主役の登場だな。」
リカルド「どういう意味だ?」
クロウ「これに見覚えがあるだろう?」
 クロウはセシルから看板を引っ手繰る。そして、看板の裏を見せ付ける。
ツバキ「これは・・!」
 看板の裏には、何かのマークが刻まれていた。
ツバキ「自警団のマーク。」
クロウ「そう。この看板はお前ら自警団の所有物だ。」
ツバキ「そうか、思い出した。この看板は、自警団の生活安全課の看板だ・・・!」
セシル「なんで、そんなものがここに?」
クロウ「誰かが持ち出し、ここにおいたんだろう。」
ツバキ「この看板を持ち出せるのは、生活安全課の人間と・・・隊長だけ。」
リカルド「・・・。」
クロウ「そいつが、この看板を使って、俺たちの足取りを止めていたんだ。俺は以前自警団に協力したことがあった。その事で俺の情報も自警団内にある程度あったろうしな。」
セシル「それとここにあるのと、どう関係があるのよ?」
ツバキ「持ち出すのは簡単だけど、戻したとき、どのような用途でそれを使ったのか、レポートをかかなきゃいけないんだ。」
クロウ「ああ、だからといって、いつまでもそこにおいとくわけにはいかない。おそらくそいつは、ボディガードとかなんとかいう大義名分で、この部屋に看板を隠したんだろう。」
リカルド「ふん、結局何がいいたいんだ?さっきから聞いてれば、事件とは関係のないことをだらだらと・・・。」
クロウ「・・・そして、恐らく。」
 クロウは、机の上においてある人魚の涙を手に取る。
クロウ「こいつは偽者だ。」
 バンッ!!
 思いっきり床にたたきつけた。
ツバキ「なに?!」
ゴルドー「あわゎゎ~!」
リカルド「なにをするんだ!」
 粉々になる人魚の涙。
クロウ「・・・なぜ、宝石がこの程度の事で砕けるんだ?」
リカルド「!?」
クロウ「どう見てもガラス玉だな、これは。」
ツバキ「な、なんで分かったんだ!?」
クロウ「セシルの証言でな。ゴルドーは、何時間も人魚の涙に口付けしていた・・・。何時間も・・・。宝石ってのは石なんだ。しかも、こんな何十カラットもありそうな人魚の涙となれば、そうとうな重量がある。そんな石を、何時間も手に持ったままでいられると思うか?」
ゴルドー「そういえば。」
リカルド「だからどうした?偽者だからなんだというんだ?」
クロウ「何故気づかなかった?いや、気づかなかったフリをしていただけだろうが。」
リカルド「なんだと?」
クロウ「この偽者の人魚の涙に触れたのは、俺とリカルドとゴルドーの三人だけ。俺はともかく、お前ら二人は人魚の涙を幾度となく見てき、そして実際に触れていたはずだ。ゴルドーの場合は、あれだけ大事にしていたんだ。本気で気づかなかった、ただのバカだと考えるのが打倒だろう。だが、お前が気づかないというのは不自然だ。」
リカルド「それはどうかな?俺だって人間だ。間違える事はある。」
クロウ「確かにな。だが・・・町の人の証言、聞いたぜ?あの時の人影は確かに黒い服を着ていたが、体格は俺よりも大きく、がっちりしていたと。そして、俺があの夜見た人影も、まさにそれだった。」
リカルド「ふん、バカな。所詮単なる憶測だな。それだけではなんの証拠にもならない。」
クロウ「だが、俺は確かに見たんだ。お前と良く似た人影が俺のバックの中に宝石を入れるところを!」
 ちょっと必死になって言う。
リカルド「ほう・・・。あんな暗闇の中、見えるわけがないだろう?」
クロウ「確かにお前の言うとおりだ。・・・本当は、はっきりと人影を認知できたわけじゃない。」
リカルド「ふん、所詮子供だ。・・・困ったものだな、口からでまかせを言って、人を犯人扱いするとは。」
 リカルドは勝ち誇ったように笑みを浮かべる。しかし、クロウの表情は崩れない。それどころか、余裕さえ感じられる。
クロウ「だが・・・何故分かった?あの日の・・・俺のバッグに宝石を入れられた時の様子が!」
リカルド「・・・っ!」
 目を見開くリカルド。それが全てを物語っていた。
クロウ「何が目的かは知らないが、お前はある理由でローレン美術館の人魚の涙を奪おうと思った。警備の指揮をとり、警備システムの管理も自由自在のお前なら、そう難しい事ではなかっただろう。恐らく、自警団員の中にも協力者はいるだろうしな。だが、ただ盗んだだけではすぐに足が付く。いくら自由に出入りできるとは言え、形跡は残るからな。怪しまれて調べられてはたまらない。

そんな時、俺たちがグラビトンビレッジを出たという情報を得た。そこでお前は、俺に罪をなすりつけようと考えた。あの看板を使って俺たちを遠回りさせながらゴルドンへ向かうように仕向け、その間にお前は俺と同じような服を作り、盗みに入った。わざと他人に見られるようにな。
そして、見事宝石を盗んだお前はすぐにそのレプリカを作った。当然だ。ものを盗みその罪をなすりつけても、それが元の場所に戻されては意味がないんだからな。
レプリカ宝石を俺のバッグに入れ、そして俺を犯人に仕立て上げ、レプリカ宝石を美術館に納め、何事もなかったかのようにする。それがお前の計画だった。」
リカルド「・・・・。」
クロウ「だが、計算違いが起きた。ゴルドーがレプリカ宝石を自分のものにしようとした事、そして、俺に保釈金が支払われた事。
誰にも触れられないで、美術館に展示されるだけならともかく、人の手が直接届くところに渡ってしまったら、レプリカだと気づかれるのは時間の問題だ。そして、俺が刑務所から出れば、真犯人探しに躍起になり、真犯人の手掛かりを掴むかもしれない・・・。そう思ったお前は、ターゲットを俺からゴルドーへ変え、犯人に仕立て上げようとした・・・。そうだろう?
さっき神鷹が俺達に近づいてきたとき、通信機を持っていた。お前の命令だな?尾行させたこと、ゴルドーの家へ入るのに協力させたことも。
だが、残念だったな。その行為が逆に自分が犯人だと証言してるようなものだったんだからな。」
リカルド「くっ・・・!」
ツバキ「隊長・・・!」
 リカルドは、クロウを睨み、不敵に笑う。
リカルド「ふん。・・・大人しく捕まっていればよかったものを・・・!」
 シャドーリボルバーを取り出し、銃口をクロウの顔に向ける。
クロウ「認めるんだな?」
 まったく動じず、淡々と言う。
 ドキュンッ!!
 その瞬間、シャドーリボルバーからビー玉が飛び出す。そのショットはクロウの頬をかすめ、壁にめり込む。
リカルド「これは脅しではない。」
ツバキ「隊長!一体どうして・・・!」
リカルド「・・・言う義務はない。」
 ドンッ!!
 再び火を吹くシャドーリボルバー。
クロウ「ちっ!」
 その隙に逃げ出すリカルド。
ヒスイ「あ!」
クロウ「待て!」
 リカルドを追いかけ、ゴルドーの家を飛び出すクロウ達。
ゴルドー「な・・・なんなんでぃすか(泣)」
 ゴルドーはめちゃくちゃになった部屋で、一人涙していた。
 タッタッタッタッタ!!
 ゴルドンの町の中をクロウ達は走っていた。全力で逃げるリカルドを追いかけているのだ。
リカルド「はぁ・・・はぁ・・・!」
ヒスイ「待て―!!」
 リカルドは、逃げながらもポケットから通信機を取り出す。
リカルド「例のものは入手した。だが、チャージし終わる前に見つかってしまった!至急応援を頼む!」
 そして、通信機をポケットにしまい、逃げる事に集中する。
セシル「はぁ、はぁ・・・でも、なんかおかしくない?」
 息を切らしながら、セシルは疑問を抱く。
クロウ「何がだ?」
セシル「美術館の宝石を奪う事や、レプリカを作る事が出来るなら、犯人をクロウに仕立て上げなくても、普通に盗んでレプリカを美術館におけばよかったんじゃなかったの?」
ヒスイ「確かに。罪をなすりつけようとした分、時間もコストも無駄にかかりますよね。」
クロウ「いや、それでも、美術館においていてもレプリカだとバレる可能性はある。」
ツバキ「あぁ、あの美術館には一流の鑑定士も来るしな。」
クロウ「そうなった場合、疑われるのは警備員・・特にその指揮をとっていたものだ。疑われて、自分の身の回りを調べられたら・・・。」
ツバキ「人魚の涙が見つかってしまうとそう言うわけか。」
クロウ「恐らく。だが、俺が犯人と決まってしまったら、美術館にある宝石がレプリカだと分かっても、リカルドが疑われる事はない。あいつはなんらかの理由で、自警団に長くいなければならなかったんだろう。」
ツバキ「・・・・。」
 そして、ついにリカルドを街の隅まで追い詰めた。
セシル「はぁ・・・はぁ・・・。」
ヒスイ「お、追い詰めましたよ・・・!」
 肩で息をする二人に対し、全く息を切らしていないクロウとツバキ。
クロウ「もう、逃げられないぜ。」
リカルド「ふ。」
 リカルドは不敵に笑い、指を鳴らす。
クロウ「なに!?」
 すると、リカルドの隣に四人の少年がやってきた。
リカルド「遅かったな。」
???「まぁ、そういうな。」
???「元々、お前のミスだろうが。」
???「来てやっただけでもありがたく思えっつーの。」
リカルド「まぁな。」
 そして、その少年達のうちの一人は・・・。
ツバキ「あ、アキラ・・!」
 自警団員の一人で、ツバキの同僚のアキラだった。
アキラ「さぁ、さっさと片付けようぜ!」
ツバキ「まさか・・・お前も、協力者だったのか・・!」
アキラ「ふん。」
クロウ「(やはり、自警団の中にも仲間はいたか。)」
ヒスイ「し、しかし何故、あなた達は人魚の涙を盗もうとしたんですか!?」
セシル「やっぱり、お金目当てなの!?」
 ドンッ!!
 アキラはヒスイに向かってショットを放つ。そのショットはヒスイの横をすり抜ける。
アキラ「お前達には関係ない。」
???「そうそう、仲良くおしゃべりなんかしてる場合じゃないっつーの。」
???「俺たちの今の状態、忘れたわけじゃないだろう?」
???「これは、戦いなんだぜぇ?お遊びなんかじゃない、お互いに全てをかけた・・・な。」
 ビーダマンを構えるリカルド達五人。
ツバキ「やるしかなさそうだな・・・。」
ヒスイ「で、でも、僕らは四人・・・不利です!」
クロウ「いってる場合じゃないだろう。来るぞ!」
リカルド「ブラックファイア!!」
 五人が一斉射撃する。
 クロウ達も迎撃するが、多勢に無勢、押されていく。
ヒスイ「くっ、僕らはここまで走ってきた分だけ体力の消耗があります・・・!」
セシル「それに比べて、向こうは四人体力を温存してるし。」
クロウ「あのくらいの距離、大した事はないだろう!ひるむな!」
 しかし、覇気がないのは、疲れているヒスイとセシルだけではなかった。
ツバキ「・・・・。」
 ツバキも、ショットに力が入っていない。
クロウ「どうした、おい!」
ツバキ「(隊長が・・・そんな・・・俺は、隊長に憧れて自警団に入ったのに・・・。)」
 そのとき、一つのビー玉がツバキに向かってすごい勢いで迫ってくる。
クロウ「っ!おい!!」
 しかし、気力のないツバキには、反撃する力はない。
 ガキンッ!!
 ツバキに玉が命中する直前、どこからか飛んできた玉がそれを撃ち落す。
アキラ「なにぃ!?」
ツバサ「さぁ、いくよ!セイクリッドガルダ!!」
 ダッ!
 ツバサがセイクリッドガルダを持って、クロウ達の元へ走ってきた。
クロウ「お前、なんで・・・。」
ツバサ「丁度今日が僕の釈放の日だったんだ。」
クロウ「そうか。」
ツバサ「でも、久しぶりに外に出た途端、いきなり大変な事に巻き込まれちゃったみたいだね。」
 といって、笑顔でクロウに顔を向ける。
クロウ「だが、そうたいしたことはない。そうだろう?」
 クロウも微笑しながら試すような目をツバサに向ける。
ツバサ「まぁね。」
 笑顔のまま当然のようにうなづき、ビーダマンを構え、敵陣へ向く。
ツバサ「今までしてきた事を、少しくらいは償えるかな?」
 仲間を得たクロウ達だが、リカルド達の余裕は変わらなかった。
リカルド「ふん、こっちも簡単に負けるわけにはいかないんでな。」
???「そうそう、あの機体を完成させ、ネオシャの繁栄のためにもな。」
???「さぁ、俺たちも本気をだすっつーの!」
???「そうだな。・・・いくか。」
 さらに激化する戦い。この勝負の行方は・・・そして、人魚の涙に秘められた謎とは・・・。
             


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爆・爆ストーリー ZERO 第39話

第39話「犯人の手掛かり」



セシル「き、きもちわる・・・!」
 セシルは今、ゴルドー市長の家のベランダにいた。
ゴルドー「ちゅっ!ちゅちゅちゅ、ちゅっ!」
 ゴルドーは延々と人魚の涙にキスをしてる。
 マジできもいきしょい。それを見た日には、河原に行って小石でも投げたくなるだろう。
セシル「う~・・・。」
 ちょっと気分が悪くなり、その場を離れる。
セシル「で、でも、あの男の人が持ってたの・・・クロウが持ってたものと同じ宝石だった。なんで、あの男の人が?」
 もう一度部屋をのぞいてみる。が、そこには既にゴルドーの姿はなく、宝石は机の上においてあった。
セシル「と、とにかく確かめてみなくちゃ。」
 運良く窓には鍵がかかっていなかった。セシルは十分回りに注意しながらそっと部屋の中に入る。
セシル「・・・やっぱり、あの宝石だ。」
 机に上においてある宝石を手にとった。
セシル「それにしても、ここは誰の家なんだろう?随分、お金持ちの家っぽいけど・・・。」
 セシルはあたりを見回してみる。この部屋はどうやら書斎のようで、本棚の中には難しそうな本がたくさんならんでいる。
 そして、机の上には、いろんなトロフィーやら賞状やらがおいてあった。
セシル「あ・・・。」
 何気なく上を見上げて、セシルは唖然とした。
 本棚の上の方に、『私が市長じゃ~!!』とでっかく書かれた習字が飾ってあったのだ。まぁ、あの市長ならやりかねないという方針で。
セシル「し、市長だったんだ・・・あの人(汗」
 宝石にちゅちゅやってた奴が市長だとは、とても信じられないが、事実なのだから仕方ない。
セシル「・・・あの宝石って市長のものだったんだ。あれ、でも美術館の美術品って言ってなかったっけ?」
 美術品なら、本来美術館に置くべきなのに、何故市長の家にあるのか。
 疑問に思いつつも、セシルは部屋の中を探索する。
セシル「あ、これって・・・。」
 次にセシルが見つけたのは、『×』と書いてある看板だった。しかもいくつもある。
セシル「どこかで見たことあるような気がするんだけど・・・。それにしても、なんでこんなものがこんなところに?」
 キィ・・。
 そのとき、部屋の扉がゆっくりと開く。
セシル「あっ!」
 セシルは慌ててその場を去り、ベランダへと身を潜める。
ゴルドー「ふんふんふふ~ん♪やっぱり人魚の涙ちゃんには、紅茶で乾杯が一番でぇすねぇ~♪」
 ゴルドーが、湯気の立つコップを持って鼻歌を歌いながら部屋に入ってきた。
ゴルドー「それじゃぁ、人魚の涙ちゃんにかんぱ~い!」
 その後も、ゴルドーは夜遅くになるまで人魚の涙を見続けていた。
セシル「(うぅ、私ずっとこのままなの・・・?(泣)」
 結局セシルはベランダで夜を過ごす事になってしまった。

 そして翌日、セシルはなんとかゴルドーの家を抜け出し、ヒスイを探していた。
セシル「はぁ・・・疲れた・・・。なんなのあの屋敷・・・。それにしても、ヒスイはどこに・・?」
ヒスイ「セシルちゃ~ん!」
 タッタッタ!
 言ってるそばから、ヒスイが前方から走ってやってきた。
セシル「ヒスイ!もう、今までどこ行ってたのよ!」
ヒスイ「それはこっちのセリフですよ!あの後元の場所に戻っても誰もいないし・・・。勝手にどこかにいかれたら困るじゃないですか!」
 まぁ、えてして迷子って言うのは、そうやってなるものなのだ。
セシル「・・・・・はぁ、もういいよ。なんか、物凄く不毛な気がしてきた・・・。」
ヒスイ「・・・・・確かに。」
 二人はどちらかともなく歩き出す。
セシル「あ、そんな事より。」
 セシルは、ヒスイに昨日のことを話した。
ヒスイ「えぇ、本当なんですか、それ!」
セシル「うん、間違いないよ!」
ヒスイ「だとしたら、その市長が怪しいですね。でも、まだ明確な証拠があるわけじゃないし・・・。とにかく、もっと情報を集めないといけませんね。」
セシル「情報かぁ・・・。でも、二人だけじゃ、ちょっと心もとないね。」
ヒスイ「大丈夫!それなら、いい方法があるんです!」
セシル「いい方法?」
 

 そして、そのまた翌日・・・。
 クロウが閉じ込められている牢屋の扉がゆっくりと開く。
クロウ「?」
 そして、そこに現れたのは、リカルドだった。
リカルド「おい、出ろ!」
クロウ「は・・?」
 正直、訳がわからない。
リカルド「何をしている。釈放だ。」
クロウ「なんだ?俺の無実が認められたのか?」
リカルド「バカか?・・・保釈金が払われたんだよ。」
クロウ「保釈金・・・。」
リカルド「分かったら、さっさと出ろ!」
 言われるままに、クロウは自警団事務所から出る。
 久しぶりの日の光のまぶしさに目を細めながらも、クロウは目の前にいる二人の姿を確認した。
クロウ「お前ら・・・。」
ヒスイ「ね、出てこれたでしょ?」
セシル「あ~、こんな簡単な事だったんだ。」
クロウ「やはり、お前が保釈金を?」
セシル「うん。10万ビーロくらいだったら、お小遣いのほんの一部だし。」
クロウ「そうか・・・。」
ヒスイ「でも、釈放と言っても一時的なものなんです。一週間後の裁判で無罪を勝ち得ないと、意味がありません!」
セシル「あと、4日しかない。なんとしてでも真犯人を見つけないと!そのために、クロウに保釈金を払ったんだから!」
クロウ「そうだな。」
ヒスイ「犯人の手掛かりは、ある程度掴んだんです。あとは、確証さえあれば・・・!」
クロウ「何、手掛かりだと!?」
ヒスイ「えぇ、恐らく、あの市長が怪しいです。」
 ヒスイは、一昨日セシルが見たものをクロウに伝えた。
クロウ「なるほど、確かに、あいつは胡散臭すぎるからな。」
 クロウは一回ゴルドー市長を見たことがあるのだ。
クロウ「そうと決まれば、聞き込みだな。事件当時のことを、もっと詳しく聞いてみるんだ。」
ヒスイ「はい!」
 こうして、クロウ達は、街中の人たちに聞きにまわった。
 ・・・・・。
 ・・・。
ヒスイ「えぇ!?見たんですか!!」
 そして、ついに事件当時、犯行現場で犯人の姿を見たという少年を見つけた。
少年A「うん。」
セシル「それで、どんな人だったの!?」
少年A「えっと、丁度、そこにいる人みたいな服装だったよ。」
クロウ「・・!」
少年A「でも、ちょっと体系が違ってたかな・・・?」
セシル「そ、それってもしかして、ちょっと背が低くて小太りで・・・。」
少年A「ううん、背は高かった。それで、体系もがっちりしてた・・・ような・・・。」
クロウ「はっきりしないな。」
少年A「だって、しょうがないだろ。暗かったし、それに一瞬の事だったから。」
ヒスイ「そうですか・・・。とにかく、ありがとうございます。」
 なかなか良い情報をくれた少年に礼を言い、その場を去るクロウ達。
セシル「う~ん、やっぱりむずかしいね、犯人を探すのって・・・。」
ヒスイ「犯人は、そのゴルドー市長に間違いないと思うんですよ。」
クロウ「ああ。」
セシル「うん、でもその確証は得られなかったし・・・。」
クロウ「さっきの話だと、俺が犯人である確証から遠ざかるが、市長が犯人であるという確証からの遠ざかる・・・。」
セシル「犯人は、全く別にいるのかなあ・・・?」
 その頃・・・ツバキは、自警団の訓練所で特訓していた。
ツバキ「はぁぁ!!!」
 ドンッ!ドンッ!!
 床に並べられたターゲットをどんどん倒していくツバキ。
ツバキ「はぁ・・・はぁ・・・!」
 構えを解き、一息つくツバキ。
 そのとき、強力なショットがツバキの頬をかすめ、倒れているターゲットにヒット。ターゲットは宙を舞う。
ツバキ「!?」
 反射的に後ろを振り向くツバキ。
ツバキ「た、隊長・・・!」
リカルド「なかなか調子いいようだな。」
ツバキ「はい!」
リカルド「どうだ?久しぶりに、俺とやらないか?」
 シャドーリボルバーをちらつかせるリカルド。
ツバキ「た、隊長とですか!?」
リカルド「たまには、俺も真剣にバトルがしたくなってな。」
ツバキ「は、はい!じゃあお手合わせ願います!」
リカルド「ルールはデスマッチだ。実戦を想定としたバトルで行くぞ!」
 距離をとり、ビーダマンを構える二人。
リカルド「いくぞ!」
 ドンッドンッドンッ!!
 片手撃ちによる連射を放つリカルド。パワーは低いが玉数は多い。
ツバキ「っ!」
 大きく動き、それを全て交わす。
ツバキ「はぁ!」
 カシャッ!
 素早くビー玉を一個装填し、ホールドについているパッドを思いっきりシメる。
 ドキュンッ!!
 強力な玉がリカルドへ向かう。
リカルド「リボルバーショット!!」
 カンッ!!
 さらに強力なショットで迎え撃つリカルド。その玉はツバキのショットをあっさり撃ち落し、そのままツバキへ向かっていく。
ツバキ「(あの技を使うとは・・・隊長、本気みたいだ。だったら、こっちも本気で行かないと失礼だな。)」
 ツバキは、アームをホルパーのパッドに干渉させ、固定する。
ツバキ「ジャッジメントショット!!」
 ジャッジメントショットが火を吹く。勢いよくリカルドへ向かっていく。
リカルド「リボルバーショット!!」
 再びリカルドのリボルバーショットが放たれる。
 バーンッ!!!
 二つのショットの威力はほぼ互角のようだ。お互いに相殺しあってしまった。
ツバキ「はぁ・・・はぁ・・・!」
リカルド「腕を上げたな、神鷹。」
ツバキ「(あんな強力な必殺ショットを連続で使っても、まだ息が切れてないなんて・・・さすが隊長だ。)」
リカルド「気を抜くんじゃない。実戦はこんなに甘いものではないぞ!」
ツバキ「はい!」
 二人は再び強力なショットを撃ちあう。
 ・・・・。
 ・・・。
ツバキ「はぁ・・・はぁ・・・・。」
 それから数十分。ツバキは床の上で仰向けになり、息を乱している。
リカルド「だらしないぞ神鷹。」
ツバキ「すいませ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
 リカルドの本気のパワーは半端ではない。
 こっちもそれに対抗するためには、毎回ジャッジメントショットを撃つしかない。しかし、必殺ショットは消耗が激しいのだ。
ツバキ「はぁ・・はぁ・・・ふぅ・・・。」
 ようやく息も整ったのか、ツバキは立ち上がる。
ツバキ「さすがです、隊長。自分はまだまだです。」
 と、リカルドに敬意を表する。
リカルド「まぁ、そう卑下するな。お前も筋は良い。」
ツバキ「ありがとうございます。」
リカルド「それより、お前にこのあと頼みたい事があるんだが・・・いいか?」
ツバキ「なんでしょう?」
 1時間後。
 ツバキは、クロウ達の後をつけていた。
ツバキ「・・・・・。」
 一時間前。(なんだこの書き方は(汗))
ツバキ「尾行?」
リカルド「あぁ。クロウアスカードが釈放された事は知っているな?」
ツバキ「はい、保釈金が支払われたとかで・・・。」
リカルド「そこでだ。前科者の奴がなんの罰も受けずに外に出て・・・何もしないわけがないだろう?」
ツバキ「しかし・・!」
リカルド「前にも言ったはずだ。仕事に私情を挟むなと。」
ツバキ「・・・。」
リカルド「それと、これを持っていけ。」
 リカルドは小さな機器をツバキに渡す。
ツバキ「これは?」
リカルド「トランシーバーだ。奴らが何かしようとしていた場合、これで俺に連絡を取れるようにな。」
ツバキ「・・・分かりました。」
 ヒスイ達は、片っ端から町の人に何かを聞いている。
ツバキ「(何を聞いているんだ・・・?まさか、事件のことか?)」
 ツバキは早速、町の人にヒスイ達が何を聞いていたのかを聞いてみた。
 やはり、事件当時のことだった。
ツバキ「(真犯人を探してるってわけか・・・。)」
 ジジ・・・!
 そのとき、ツバキの持っていたトランシーバーから声が聞こえる。
リカルド「どうだ、ツバキ。奴らの様子は・・・。」
ツバキ「えぇ、彼ら、真犯人を探すために町の人に聞き込みをしているようです。」
リカルド「ふん、犯人が聞き込みとは、笑い話にもならないな。」
ツバキ「と、とにかく、もう少し様子を見てみます。」
 そのとき、ふいにクロウ達の声が届いた。
クロウ「やはり、犯人はあの市長に間違いないはずだ。」
セシル「そ、そうよね。動機もはっきりしているし。」
ヒスイ「確証なら、元々ありますしね。」
クロウ「だったら、やるべきことは一つだ。」
 クロウ達の言葉を聞き、ツバキは、リカルドに連絡する。
ツバキ「隊長、クロウ達が真犯人の目星をつけたようです。」
リカルド「なに・・・?」
 そのとき、リカルドは必要以上に驚いているようだったが、ツバキは特に気にしなかった。
ツバキ「彼らは、ゴルドー市長が怪しいと睨んでいるようです。」
リカルド「ゴルドー市長が・・・。」
 その言葉を聞いた途端、リカルドが少し沈黙する。
リカルド「・・・そうか、なるほど・・・確かにその方が・・・。」
 と、独り言のようなものが聞こえた。
ツバキ「隊長・・?」
リカルド「あぁ、いや、確かにわずかな可能性を完全否定するのもなんだな・・・。よし、ツバキ。お前も奴らに協力しろ。捜査令状がなければ、何も出来ないだろうからな。俺もすぐにそっちに向かう。」
ツバキ「えっ、は、はぁ・・・(どうしたんだ、いきなり・・・?)」
クロウ「奴の家に乗り込むんだ。セシルの言った事が本当なら、証拠となる品はあるだろうからな。言い逃れは出来ないはずだ。」
ヒスイ「そうですね!」
セシル「でも、勝手に入ったらこっちが悪者になるんじゃ・・・。」
クロウ「既に悪者にされてるんだ。大して変わらないだろう。」
セシル「それはそうだけど・・・。」
クロウ「奴の犯行をはっきりと提示すれば、俺たちの罪など、薄れるはずだ。」
セシル「う~ん・・・。」
ツバキ「いや、それはさすがにまずいんじゃないか?」
 ツバキは、偶然を装い、クロウ達に話し掛けた。
クロウ「お前は。」
ツバキ「よっ、釈放おめでとう。それより、市長の家に乗り込みたいんなら、手を貸すぜ。」
ヒスイ「ほ、ほんとですか!?」
ツバキ「ああ、俺もお前が犯人だとは思ってないからさ。」
クロウ「・・・・・。」
 しかしクロウは、ツバキの腰についているトランシーバーを見逃さなかった。
クロウ「(・・・なるほど、そう言うことか。)」
 こうして、クロウ達とツバキはゴルドー市長の家へと赴くのであった。

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爆・爆ストーリー ZERO 第38話

第38話「地獄から蘇りし聖なる翼」
 ゴルドンの町中、ヒスイとセシルは、謎の二人組に・・・。
ヒスイ「あなた達は・・・!」
ジュウ「前触れもないまま~♪おとづれる、凶悪な犯罪 見逃さずに犯人を捕らえて~ 牢屋越しに笑うよ その罪は決して消えない 大きな過ち 誰もまだ知り得ない真実の答えを welcome deep piece 無限の光に一番遠い場所 この罪を償えばいつかは出られるの?リングのように繰り返した~・・・。」
ヒスイ「ストーップ!!」
 またも何かの替え歌を歌い始めたジュウをヒスイは慌てて止める。
ジュウ「な、なんだよ。折角気持ちよく歌ってたのに。」
ヒスイ「歌とか別にいいので・・・。」
ジュウ「それより、話は聞いたぜ。まさか、お前が犯罪を犯してしまうとは・・・。」
 と、ヒスイとセシルの間にいるであろう人を指差す。が、そこには誰もいない。
ジュウ「あれ?もう一人は?」
ジャベンス「いないでごわすな。」
ヒスイ「クロウならもう、既に・・・。」
ジュウ「なに~?!もう自警団に捕まったって!?」
ジャベンス「先を越されたでごわすな。」
ヒスイ「(まだ途中までしか言ってないのに・・・。)」
ジュウ「だが、共犯者であるお前ら二人がまだ捕まっていない!正義の味方としてこれは見逃せない!」
ヒスイ「え、いや、ちょっと・・・!」
ジュウ「問答無用!いくぞ、スパイラルビースト!!」
 ジュウが取り出したビーダマン。それは以前のビーストウェーブとは違っていた。
ヒスイ「そ、そのビーダマンは・・・!」
 更に鋼の砦に行く前に見た新ビーストとも違っている。
ジュウ「おいらはこのスパイラルビーストで、更に自分の正義に磨きをかける事を誓ったんだ!」
 

 数日前。
 ズゴー!バゴー!!
 とある山奥でビー玉が岩を砕く音が聞こえる。
ジュウ「うおおお!!」
ジャベンス「ごわすごわ~す!!」
 ジュウとジャベンスが特訓しているようだ。
ジュウ「ジャスティスタイフーン!!!」
 ジュウの放った二発の横回転玉が共鳴し、嵐を生み出す。
ジュウ「う~ん・・・・。」
 巻き起こった嵐を見ながら、ジュウは思案しているようだ。
ジャベンス「どうしたでごわすか?ジュウあんちゃん。」
ジュウ「もっと強くならないとなぁ。」
ジャベンス「ジュウあんちゃんは今でも十分強いでごわすよ!」
ジュウ「それでも鋼の烏には敵わなかった・・・。」
 敵わなくて当然である。
ジャベンス「それは・・・。」
ジュウ「このままじゃ、正義を貫く事なんて出来ない!もっと磨きをかけないと!」
ジャベンス「ごわす!」
ジュウ「決めポーズに!」
ジャベンス「ごわ・・・・え?」
 ジュウは、拳を握り締め、叫ぶ。
ジュウ「決めポーズ・・・それはヒーローたるもの必要不可欠の儀式!いわば、おいらの心が風に乗って飛んでいくために必要悪なもの!」
ジャベンス「言ってる意味が良く分からないでごわすが・・・。」
ジュウ「決めポーズ・・・あぁ、なんて魅惑な響きなんだ・・・決めポーズ・・・あぁ、決めポーズ・・・決めポォ~ズ♪」
 ついには歌い出してしまう始末。もう手の付けようがない。
ジャベンス「(ジュウあんちゃん・・・なんてかっこいいんだ!わしもいつか、ジュウあんちゃんのように・・・!)」
 この兄弟を止める事が出来るものは現れるのだろうか。
???「楽しそうですね。」
 と、ジュウ達の前に現れたのは、緑色の髪にメガネをかけたちょっと背の低い少年だ。
ジュウ「ん、ヒスイ・・・?(いや、違うか)」
 パッとみヒスイと見間違えたが、まったくの別人だ。
???「?」
ジュウ「あぁ、えっと・・・。」
???「君もビーダーなんですか?」
ジュウ「ああ、まぁ・・・。」
???「じゃあ僕と勝負しましょう!僕、いろいろなビーダーと戦って、いろいろなビーダマンを見てみたいんです!」
 目的までヒスイとそっくりだ。
ジュウ「(こいつ一体・・・?)まぁ、おいらももっと強くなりたかったし、いいよ!」
???「よし、じゃあバトルはターゲットバグシューティングです。」
 ???はどこから取り出したのか、大量のターゲットバグを放出した。
ジュウ「!?」
???「それぞれ、10個ずつターゲットバグを自分の陣地に置き、先に相手のバグを全てヒットさせた方の勝ちです。」
ジュウ「分かった。じゃあ始めよう!」
ジャベンス「じゃあいくでごわすよ!ビー、ファイア!」
???「いきますよ・・・エメラルドガンナー!!」
 ???が取り出したビーダマンは緑色で、巨大なゴムローラーが特徴的なビーダマンだ。
ジュウ「(・・・ジェイドガンナーと似てる・・・でも、どこか違う・・・。)」
???「いけー!!」
 巨大ローラーの力による超速連射。???はどんどんバグをヒットしていく。
ジュウ「しまった!」
 いつの間にか三つもゲットされているジュウ。
ジュウ「負けるもんか!!」
 ジュウも得意のドライブショットで???のショットを弾き、相手のバグをヒットする。
ジュウ「どうだ!」
???「やりますね!」
 飛び交うビー玉。しのぎを削る二人。バトルはほぼ互角で、激しさを増していく。
ジュウ「いっけー!!」
???「エメラルドガンナー!!」
 そして、いつの間にか、残ったターゲットは、ジュウは4つ。???は2つだ。
ジュウ「よし、あと二つ!絶対にゲットしてやる!!」
???「さすがにちょっとまずいかな・・・。」
 ???はそう呟き、ポケットからバネのようなものを取り出し、トリガーにつける。
ジュウ「(なんだ?」
???「ハーフスプリング装着!ハーフストロークショット!!」
 ズドドドド!!!
 エメラルドガンナーからさっきとは比べ物にならないほどの連射の嵐が吹き荒れる。
ジュウ「な、なにぃ!!」
 その連射の嵐にターゲットバグは愚か、ジュウまでも吹っ飛んでしまった。
 ドサッ!!
 飛ばされ、仰向けになるジュウ。
ジュウ「・・・み・・・見えた・・・新たなる正義の力の形が・・・!」
 

ジュウ「・・・と、いうわけで完成したのがこの・・・スパイラルビーストだ!」
 スパイラルビーストを掲げて自慢げに語る。
セシル「つまり、コピーしたってこと?」
ジュウ「そゆこと。」
セシル「久しぶりに出たわね、その設定・・・。」
ジャベンス「多分、多くの人たちには忘れ去れてると思うでごわす・・・。」
セシル「だよね・・・。」
ヒスイ「(今のこいつの話・・・まさか・・・!)」
 ヒスイはジュウのコピー能力云々よりもジュウが出会った少年の方が気になっていた。
ヒスイ「(廃棄処分した例のサンプルが・・・?まさかな、ゾンビじゃあるまいし・・・。だが、一応確認しておいたほうがいいかもな・・・。)」
ジュウ「んなことより勝負だ!絶対にお前らの悪事を・・・!」
ヒスイ「すいません!僕ちょっと用事ができました!」
ジュウ「は?」
ヒスイ「セシルちゃん、あとお願いします!」
 そういって、ヒスイはその場を去っていった。
ジュウ「お、おい!逃げるのか!」
セシル「待ってよヒスイ!」
 ヒスイを追いかけようとするセシルだが、ジュウに捕まってしまう。
ジュウ「お前まで逃がすか!こうなったらお前だけでも逮捕してやるぅ!」
セシル「えぇ・・・!?」
ジュウ「いくぞスパイラルビースト!!」
 スパイラルビーストを構えるジュウ。
 そして、片方のローラーを固定して地面に向かってショットを放つ。
セシル「?!」
 地面にめり込んだジュウのショットはキュルキュルと横回転する。
ジュウ「どうだ!このスパイラルビーストは、片方のローラーを固定して撃つ事で横回転を与えることができるんだ!」
 ジュウはもう片方のローラーを固定してまだ横回転している玉に向かって撃つ。
 ギュワアアアアア!!!
ジュウ「これにより左右の回転がよりしやすくなった!食らえ!ジャスティスタイフーン!!」
 ゴオオオオオオオ!!
 久しぶりにジャスティスタイフーン炸裂!
セシル「キャアアア!!!」
 その衝撃波に、セシルはあっけなく吹っ飛ばされてしまった。
ジュウ「正義は勝つ!」
 ジュウは新しいへんてこな決めポーズをとる。
ジャベンス「やったでごわすな!・・・でも、吹っ飛ばしたら逮捕できないんじゃ・・・。」
ジュウ「あ゛・・・。」
 

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爆・爆ストーリー ZERO 第37話

第37話「アリバイと濡れ衣」
警備員A「ローレン美術館美術品窃盗罪で、お前を逮捕する!」
クロウ「なに・・・!」
 突如言い渡された宣告。正直訳が分からない。
 だが、ここで呆然としているわけにはいかない。訳も分からずに捕まるわけには行かないのだ。
クロウ「ちぃ!」
 クロウは素早くデスサイズを取り出すと地面に向かって撃った。
 ドーンッ!!
 巻き起こる砂煙。
警備員A「うわっ!なんだぁ!?」
警備員B「ゲホッ!ゲホッ!!」
 突如起こった砂煙に警備員達は動揺する。その隙にクロウ達は地面を蹴り、走り出す。
セシル「ちょ、ちょっとなんなのよいきなり!?」
ヒスイ「なんで、クロウが窃盗犯だなんて・・・!」
クロウ「この宝石・・・なるほど、そう言う事か。」
ヒスイ「え?」
クロウ「とにかく別れるぞ!俺と一緒にいたら、お前らまで犯人扱いだ!」
セシル「だ、だけど・・!」
クロウ「いいから!俺についてくるな!」
 そう言って、クロウは分岐点でヒスイ達と別れる。

クロウ「はぁ・・・はぁ・・!」
 案の定、警備員達はヒスイとセシルは無視し、クロウを執拗に追いかける。
警備員達「待て―!!」
クロウ「(ちっ、このまま逃げてもラチがあかないな。それに、この町にいる以上、逃げ道はどこにもない・・・。)」
 そう思ったクロウは立ち止まった。
 そして、警備員達へ向かってビー玉を撃つ。
警備員達「うわっ!!」
 それに、少しひるむ。
クロウ「はぁ!!」
 再びショット。しかし、それは警備員の集団の中から飛んできた連射により防がれる。
クロウ「なに・・・!」
???「おい、貴様・・・。」
 一人の男が一歩前に出てきた。
クロウ「!?」
 ゴツイ、岩のような男だった。
警備員C「り、リカルド隊長!」
 その男の名はリカルドと言うようだ。
リカルド「いい加減、大人しくしねぇと・・・俺のシャドーリボルバーが火を吹くぜ?」
 リカルドはシャドーリボルバーと言うビーダマンの銃口をフッと軽く吹く。
クロウ「面白い、やれるものなら、やってみろ。」
リカルド「・・・いい目をしているな。窃盗犯であるのがもったいないくらいだ・・・。いいだろう、一斉射撃だ!!」
警備員達「はい!」
 警備員達は一斉にビーダマンを構える。
警備員A「いくぞ、シャドーバスター!!」
 ズドドドドド!!
 シャドーバスターは、自警団員に支給される量産ビーダマンのようだ。ミドルバレル等の市販品にはない機能を持つが、所詮は量産型。
クロウ「パワーのない連射がどれだけ攻めようが、圧倒的パワーの前には無力だ。」
 クロウの言った通り、ドライブダブルバーストがすべての玉をふっ飛ばす。
警備員B「くそっ!強すぎる!」
警備員A「ぐわ!」
 クロウのショットが警備員Aにヒットしたようだ。
警備員H「アキラ!大丈夫か!?」
 警備員Aの名前はアキラと言うようだ。
アキラ「あ、ああ・・・なんとかな。」
リカルド「こいつぁ、ちっと・・・厄介かもな・・・。まさかあのショットを使わせるとは・・・。」
クロウ「?」
 チャキ・・・!
 リカルドはシャドーリボルバーのブースターを後ろに下げる。すると、ホルパーも後ろに下がる。
クロウ「(なんだあれは・・・?)」
リカルド「このショットを使わせたのは、数年前の連続殺人犯、ジャック・ギルドーだけだぜ・・・。」
 ドンッ!!!
 そして放たれるショットはとんでもない威力を持っていた。
クロウ「なに!?」
リカルド「リボルバーショット!!」
 リボルバーショットのパワーに守られ、後ろから警備員達のショットが無数に襲ってくる。
クロウ「くっ!!」
 ギリギリのところでリボルバーショットは撃ち落せたが、その後から来る無数のショットまでは防ぎ切れない。
クロウ「ぐわああ!!」
 無数の玉がデスサイズにヒットし、クロウは吹っ飛んでしまう。
クロウ「くっ!」
 仰向けに倒れるクロウ。そこへ、リカルドがゆっくり近づいてきて・・・・。
リカルド「惜しかったな?」
 カチャ・・・。
 手錠をかけた。
 クロウは、もはや抵抗は無駄だと悟り、無言で立ち上がり、大人しく連行される。
リカルド「さぁ、大人しく例のものを渡して貰おうか。」
クロウ「・・・・。」
 片手は手錠をかけられているので、もう方方の手で宝石を取り出し、それを渡す。
 と同時にもう片方の手にも手錠をかけられる。
???「おぉ~犯人が捕まったのでぇすねぇ~!!」
 と、そこに金ぴかの服を来た小太りの男の人が現れる。
リカルド「ゴルドー市長。」
ゴルドー「さすがは我が町の自警団隊長!私は信じていましたよぉ。」
リカルド「少々てこずりましたが、なんとか。」
 リカルドは取り返したばかりの宝石をゴルドーに渡す。
ゴルドー「おお~!!我が愛しの人魚の涙ちゅわぁ~ん!」
 その宝石は人魚の涙と言う名前らしい。その人魚の涙にゴルドーは何度も何度もいとおしそうに口付けする。
ゴルドー「それにしても・・・。」
 ゴルドーは口付けをやめ、リカルドの方を向く。
ゴルドー「だから言ったではあぁりませんかぁ!こんな大事な宝石は、あんな警備の薄いローレン美術館に展示せず、私の元へ置いたほうが良いと!」
リカルド「し、しかし、この宝石は市のものですし・・・市宝は市の指定した美術館に展示すると言う決まりが・・・。」
ゴルドー「うるちゃーい!市のものは市長である私のもの!とにかく、こんな事件が起こってしまった以上、もうあの美術館には預けておけないのでぇす!と言うわけで、この人魚の涙は私の手元に置いておくでぇす!文句はあぁりませねぇ?」
 人魚の涙を大事そうに抱え、横目でリカルドを睨むゴルドー。
リカルド「まぁ、市長の意見なら・・・。」
 従わざるを得ないのだろう。それ以上リカルドは何も言わなかった。
ゴルドー「ふふふふんふふ~ん♪」
 ゴルドーは人魚の涙を自分の手元に置ける事が嬉しかったのだろう。そのままスキップして去って行った。
 その後、本部への道のりを無言で歩き続けるクロウとリカルド。
 そこへ・・・・。
ツバキ「あれ、クロウじゃねぇか。」
クロウ「・・・・。」
リカルド「神鷹か。事件は解決した。すぐに本部へ戻れ。」
ツバキ「はっ!リカルド隊長!」
 ツバキは、姿勢を正し、敬礼する。
 しかし、すぐに姿勢を崩し、クロウへ話し掛ける。
ツバキ「お前・・その手錠・・・まさか、あの窃盗犯は・・・。」
リカルド「こいつの仕業だ。」
 クロウの代わりにリカルドが答える。
ツバキ「そんなっ!何かの間違いじゃ・・っ!」
リカルド「証拠はある。こいつはあの宝石を持っていた。・・・しかも、聞き込みによれば、事件当時、こいつと似たような奴が美術館近くで挙動不審にうろついてるのを見た奴がいると・・・お前も聞いただろ?」
ツバキ「それは、そうですが・・・しかし、こいつはそんな事する奴じゃ・・・!」
リカルド「神鷹!・・・仕事に私情を挟むな!」
ツバキ「・・・はい。」
 リカルドの一喝でツバキは口を閉じた。
 そして、本部へたどり着き、クロウは薄暗い牢屋へ閉じ込められる事になった。
リカルド「一週間後に裁判が行なわれ、お前の刑が決まる。・・・5億ビーロもする人魚の涙を盗み、更に公務執行妨害、ビーダマン障害罪と、罪を重ねてきたんだ。簡単に出られるとは思わないほうが良いぞ。」
 リカルドはそれだけ言って、牢屋の扉を閉め、鍵をかけた。
クロウ「・・・・・。」
 クロウは、特に何をするでもなく、ただボーっと突っ立ってた。
クロウ「また、逆戻りか。」
 前にも経験がある。クロウは幼い頃、閉じ込められた事があるのだ。それに比べれば、今回の牢屋はたいした事はないのかもしれない。
 その時、牢屋の隅で、何かが動く気配がした。
クロウ「?」
 振り向くと、そこには人影が・・・。
???「やぁ、久しぶりだね。」
クロウ「お前は・・・。」
 

 その頃、ヒスイとセシルは・・・。
ヒスイ「ふぅ・・・。追ってが来なくなりましたね。」
セシル「クロウ、大丈夫かな?」
ヒスイ「心配ですね・・・。」
???「おーい!!」
 その時、どこからか声が聞こえてきた。
ヒスイ「?」
 その声の主は走ってきているようだ。荒い息遣いが聞こえてくる。
ヒスイ「って、神鷹さんじゃないですか。」
ツバキ「はぁ、はぁ・・・・!お前ら、何のんびりしてんだ!?」
セシル「え?」
 さっきまで必死で逃げてたものにたいしてのんびりしてるとは失礼極まりない発言だ。
ヒスイ「どうしたんですか?」
ツバキ「大変だ、クロウの奴が窃盗犯として捕まっちまったんだよ!」
ヒスイ「えぇ!?」
セシル「逃げ切れなかったの・・・?!」
ツバキ「ん・・・てことは、お前らも知ってるのか、クロウが窃盗犯って疑われてるの。」
ヒスイ「ええ、まぁ・・・。」
セシル「それで私達、さっきまで逃げてたんだけど。」
ツバキ「まさか、クロウが窃盗犯ってのは、本当に・・・!?」
ヒスイ「いえ、そんなはずはないです!僕らがこの町に来たのは、ついさっきですよ。ものを盗む余裕なんて・・・。」
ツバキ「だよな・・・。でも、聞き込みによれば、クロウと似たような奴を事件当時ローレン美術館で見たって証言もあるし・・・。」
ヒスイ「そんなバカな・・・。その事件っていつ起こったんですか?」
ツバキ「1、2週間前くらいだったかな?」
ヒスイ「丁度僕らが鋼の砦を出て、ゴルドンへ向かっている途中ですね・・・。」
セシル「なんだ、アリバイは十分じゃない。」
ツバキ「いや、それを証明するための証拠、または証言がなければアリバイは成立しない・・・。」
セシル「えっ?!」
ヒスイ「まぁ、そうですよね・・・。」
ツバキ「一週間後に、裁判がある・・。そこでなんとか無実を証明しなければ、クロウは一生牢屋から出られないな。」
セシル「そ、そんなっ!」
ヒスイ「(なんだと・・・!)」
ツバキ「・・・悪いな、俺もそろそろ仕事に戻らないといけないんだ。俺が言えるのはこれだけだ。」
 そう言ってツバキは歩いて言ってしまう。
ヒスイ「ど、どうしましょう・・・このままじゃ・・・。」
セシル「・・・よし!こうなったら・・・!」
 セシルは、何かを決意したようだ。
ヒスイ「どうしたんですか?」
セシル「聞きこみよ聞きこみ!このまま手をこまねいていてもしょうがないもん!私達も事件をいろいろ調査して、クロウの無実を証明するの!そして、クロウに濡れ衣を着せた真犯人を見つけてやる!」
ヒスイ「そうですね、今僕らに出来る事をしないと!」
???「おい、お前ら!」
 その時、いきなり頭上からけたたましい声が聞こえてきた。
???「非道な悪事を重ねる旅人よ!今日こそおいらの鉄拳が唸りをあげるぜ!」
???「ごわすごわす!」
セシル「あなた達は・・・。」
ヒスイ「まさか・・・!」
 突如ヒスイ達の前に現れた謎の人物は一体・・・!
        

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爆・爆ストーリー ZERO 第36話

第36話「ローレン美術館窃盗事件!」
 とある荒野。クロウ達は次なる町を目指して歩いていた。
セシル「ふぅ、もう休まない?随分歩いてきたし。」
ヒスイ「そうですね、日も傾いてきましたし・・・。」
クロウ「仕方ないな。」
 この日は特に何も起こる事無く、クロウ達は就寝についた。
 夜中、静まり返った荒野に寝袋を広げて安らかに眠るクロウ達。
 その時、どこからか聞こえた物音に気づき、クロウは目覚めた。
クロウ「ん・・・・。」
 見ると、何者かの人影がクロウ達の荷物をあさっていた。
クロウ「誰だ!」
 瞬時に身を起こすクロウ。
???「っ!」
 人影はビクッと体を震わせ、そのまま立ち去ってしまう。
クロウ「待て!」
 慌てて追いかけるクロウだが、夜中と言う事もあって、見失ってしまった。
クロウ「ち・・・・。」
 仕方なく戻るクロウ。
セシル「どうしたのぉ・・・。」
 戻って見ると、さっきの騒ぎに気づいたのか、セシルとヒスイが起きていた。眠そうに目を擦っている。
クロウ「何者かが、俺達の荷物をあさっていた。」
ヒスイ「えぇ?!」
セシル「またぁ・・・!?」
ヒスイ「それで、その犯人は?」
クロウ「見失った・・くそ。」
ヒスイ「とにかく、荷物を確認しましょう!」
 各自、自分達の手荷物を確認する。
ヒスイ「えっと・・・ジェイドグラスパーに、予備パーツ・・・工具にセメダイン・・・うん、全部揃ってますね。」
セシル「私も、特に無くなってるものはないかな・・・?」
クロウ「金は無事なのか?」
セシル「うん、貴重品はいつも肌身離さず持ってるから。」
ヒスイ「クロウの方はどうなんですか?」
クロウ「あぁ、何も盗まれてはいないようだ。」
ヒスイ「え・・。じゃあ、あのドロボーは一体何が目的だったんでしょう?」
セシル「ほんとにそんな人いたの?寝ぼけてたんじゃないの?」
クロウ「お前じゃあるまいし、そんなはずはない。」
セシル「何よそれ~!」
ヒスイ「う~ん、クロウがすぐに気づいたから、盗む暇がなかったのかもしれませんね・・・。」
 3人はしばらく考えていたが、時間が時間と言う事もあり、眠気に負け、そのまま眠ってしまった。
 ・・・・。
 ・・・。
 そして翌日。
 クロウ達は再び歩き出した。次なる目的地へ向かって。
セシル「あ。」
 セシルが小さな声を上げる。
 そこには、三つの分岐点があったのだ。
セシル「えっと・・・なになに・・・。」
 三つの道には立て札があり、目的地を記しているようだ。
 しかし、そのうちの右と真ん中には『×』と書かれているだけで、目的地が書いてあるのは左の道だけだ。
セシル「何よ、これだけ分岐点があるのに一つしか道が無いんじゃない。」
ヒスイ「えっと、このまま行けば『ゴルドン』と言う町にいけるみたいですね。」
セシル「まぁ、一刻も早く町にいきたかったし、迷う事も無いわね。」
クロウ「異存は無い。」
 と言うわけでゴルドンへ向かう事にしたメンバー。
 しばらくすると、町が見えてきた。
セシル「あ、やっとついたね~!」
ヒスイ「ええ。」
 3人は躊躇する事無く、軽い足取りでその中へと入っていく。
ヒスイ「・・・・なんか、物々しい雰囲気ですね。」
 入ってすぐにその異変に気づいた。
 昼も近いと言うのに町中は全く活気が無く、かわりに警備員と思われる人達が神妙な顔つきでうろついているのだ。
ヒスイ「何か、あったんでしょうか?」
 しばらく町の中をいろいろと探索していたのだが、警備員の姿が視界から離れる事は無かった。
 警備員は例外なく、皆緊張した顔つきで、その事件の重大さを物語っている。
 その警備員の中で、クロウ達はある見知った人物を見つけた。
クロウ「あいつは・・・。」
ヒスイ「神鷹さん!」
 ヒスイの声に気づいたのか、ツバキはこちらを振り向き、ニッと笑い駆け寄ってきた。
ツバキ「よぉ、久しぶりだな、お前ら!」
 片手を上げ、気さくな笑顔で言う。さっきまで神経を張り詰めていたのが嘘のようだ。
ツバキ「どうしたんだよ、こんなところで?」
ヒスイ「いやぁ、僕らは旅の途中、たまたまここに来ただけで・・・。」
セシル「神鷹さんこそ、どうしてここに?」
ツバキ「この町、ゴルドンは、俺の勤務している自警団の本部があるんだ。」
セシル「へぇ。」
ツバキ「それにしても、あれから随分長い間グラビトンビレッジに滞在してたんだな?」
ヒスイ「え?」
ツバキ「グラビトンビレッジに滞在してたんだろ?だってお前ら飯食い終わった後グラビトンビレッジに向かって行ったじゃねぇか。」
ヒスイ「えぇ、まぁグラビトンビレッジに滞在してた事には間違いはないんですが・・・。でもグラビトンビレッジを出たのは何日も前ですよ。」
ツバキ「じゃ、なんで今更ゴルドンに来てるんだ?(汗)」
セシル「どういう事?」
ツバキ「・・・・ちなみに、最短ルートだとここからグラビトンビレッジまで徒歩で2時間もかからないぞ?」
 徒歩で二時間・・・約10Kmくらいだろう。
ヒスイ「え・・・・僕らグラビトンビレッジを出てから何週間もかけてここまでたどり着いたんですけど・・・。」
ツバキ「そうとう遠回りしてたみたいだな・・・。」
 呆れ顔になるツバキ。
ヒスイ「それより、何か事件でもあったんですか?随分警備が厳しいみたいですけど。」
ツバキ「あぁ、ちょっとな・・・。」
 と、ツバキがだるそうに口を開こうとしたとき。
警備員「神鷹さ~ん、ちょっといいですか~!!」
 同僚であろう警備員に声をかけられた。
ツバキ「おっと、呼ばれちまった。わりぃ、またあとでな!」
 片手を上げ、呼ばれたほうへ走っていくツバキ。
 クロウ達はその後姿をただ眺めている事しか出来なかった。
 町で起こった事件については気になるのだが、時間が経つ事によっておとづれる空腹には敵わない。
ヒスイ「そろそろお昼ですね。」
セシル「私もうお腹ぺっこぺこ~。」
ヒスイ「鋼の砦や、荒野では、買いだめしておいた保存食しか食べてませんでしたからね。たまにはいいものを食べないと。」
セシル「じゃあ今日はちょっと奮発して、ステーキでも行く?」
ヒスイ「いいですね~!」
 これから行なうイベント、食事に胸躍らせる二人。
クロウ「・・・。」
 そんな二人に、クロウは同感するでもなく、呆れるでもない目をする。
 とまぁそんな感じで3人は、町にあるちょっと豪華なレストランへと足を運んだ。
 しかし・・・。
セシル「えぇ~!!」
 レストランの前で、セシルは不満そうな声を上げる。
 セシルの前には、タキシードを来た紳士っぽい人が申し訳なさそうに頭を下げている。
紳士「申し訳ありません。本日はこれで休業とさせていただいておりますんで・・・。」
セシル「そんなぁ・・・。」
 これで三軒目だった。どういうわけか、あれからいろいろとレストランをまわっているのだが、どこもお休みのようだった。それどころか、この町にあるお店と言うお店、家と言う家は皆しまっている。
 お店の中にチラッと、警備員がいるのが見えた。
ヒスイ「取調べでもしてるんでしょうか?」
クロウ「ああ・・・。」
セシル「そんな事堂でもいいよ。お休みならもうここに用はない!」
 ご機嫌斜めのセシルは、そのまま踵を返す。
紳士「本当に申し訳ありません。」
 セシルの背中に向かって、もう一度深々と頭を下げる紳士。
ヒスイ「もういいですから、頭を上げてください。」
 ヒスイは、一応フォローし、既に歩き出しているセシルの後を追う。クロウもそれに続いた。
セシル「まったく、なんなのよもう~。」
 町の中を歩きながらセシルはブツブツと文句を言っている。
ヒスイ「まぁまぁ。一応、食料のストックはあるんですし、そこら辺で食事にしましょう。」
セシル「い・や・っ!せっかく町についたのにまたまともなもの食べられないなんて耐えられない!」
 世の中には雪山で遭難し、食料云々でもめている人達もいるというのに・・・。これだから金持ちのおじょうちゃんは。
 ブオオオオオ!!!
 その時、クロウ達の前を大きな猫の形をした車が勢い良く現れ、急停止した。
セシル「きゃっ!な、な、なに!?」
 いきなりの事に、尻餅をつくセシル。
???「よーし、じゃあ今日はここで開店よ~!」
 中から元気のいい大人の女の人の声が聞こえる。
???「でもミエさん、ここ町の中ですよ?いいんでしょうか・・・・。」
 ちょっと気の弱そうな女の子の声も聞こえてきた。
ミエ「だいじょーぶだいじょーぶ!」
???「それより、見失ったヤマト達の心配はせぬのか・・・。」
 年寄りらしき声も聞こえてくる。
ミエ「それもだいじょーぶよ!ウェン君とリー君が必ず見つけて、私達にすぐ知らせてくれるから!今は彼らを信じて、私達は商売商売!」
 そんなやりとりが聞こえた後、車の扉が開く。
ミエ「それじゃリエナちゃん、椅子と机運んでね~。」
リエナ「はい。」
 女の子が椅子を持って車の中から出てくる。
 続いて机を持ったデブ猫も出てきた。
 ほんの三分としないうちに車およびそのまわりはオープンカフェへと変貌してしまった。
 あまりの素早さに呆然と見ている事しか出来なかったクロウ達。
ヒスイ「な、なんか、知りませんが・・・。」
セシル「お店、みたいね・・・。」
ヒスイ「とにかく、行ってみましょうか?」
セシル「ええ。」
 3人は、テーブルの上を拭いている女の子に声をかけた。
ヒスイ「あの・・ここは・・・カフェなんですか?」
リエナ「ええそうですよ。移動オープンカフェ、キャットカフェです。」
 女の子はにっこり笑う。
セシル「じゃあ、せっかくだからここで食事しようか?」
ヒスイ「そうですね。」
リエナ「あ、ありがとうございます。三名様ですね?」
ヒスイ「はい。」
リエナ「それでは、少々お待ちください。」
 リエナはメニューをクロウ達に渡すと、店の中に入って行った。
ヒスイ「なかなか感じのいい子でしたね。」
セシル「うん。・・・さて、何食べようかな~?」
 セシルは、意気揚々とメニューを開く。
セシル「え~っと、アジの開き定食に、アジサンド、アジライスにアジ丼・・・・アジラーメンに・・・・。」
 徐々にセシルの口調が遅くなる。
セシル「アジうどん・・・。」
ヒスイ「アジしかありませんね(汗)」
クロウ「・・・・。」
 しばらくして、リエナがおしぼりと水を持ってやってきた。
リエナ「ご注文はお決まりでしょうか?」
セシル「私は、アジハンバーグ定食ね。」
ヒスイ「僕はアジサンド。」
クロウ「アジチャーハン。」
リエナ「かしこまりました。」
 頭を下げ、店の中へ戻るリエナ。注文をミエに伝えているのだろう。
 そして数分後。クロウ達の前に料理が運ばれてきた。
 テーブルの上でおいしそうな香りを漂わせている。
セシル「おいしそ~、いただきま~す!」
 空腹は最高の調味料とは良く言ったものである。さっきまでアジばっかりで多少引いていた事などすっかり忘れ、3人は目の前の料理と格闘した。
セシル「おいし~!」
ヒスイ「えぇ、意外といけますね。」
 あっという間に平らげてしまった。
 食事を終えたクロウ達は再び街の中を探索する。
ヒスイ「相変わらず、警備員がはびこってますねぇ・・・。」
セシル「うん、町の人達、あまり外に出てないみたいだし。」
ヒスイ「気のせいか、なんか僕ら警備員ににらまれてるみたいですし・・・。」
クロウ「まぁ、町の外の人間を疑うのは自然な事だしな。」
 ドシュッ!バシュッ!!
 と、その時、近くの広場でビー玉がぶつかり合う音が聞こえてきた。
ヒスイ「あ、バトルやってるみたいです。」
セシル「なんか安心するよね~。こういう普通の光景見てると。」
クロウ「ああ。」
ヒスイ「ちょっと行って見ましょう!」
 クロウ達は、子供達のバトルを見学しに行った。
 さすがにバトルに参加するのは大人げないだろう。
子供A「行くぞ、ユンカーバイオレット!」
子供B「ブラックブラッド!」
 競技は、バトルホッケーのようだ。二人の持つオリビーがいいバトルをしている。
ヒスイ「へぇ、なかなか興味深い改造ですね・・・。あの子のビーダマンは、可動式ラバーでドライブ、非ドライブを選べるようにしてありますね。そして一方は、フットとホールドパーツを直結してフットの広がりでパワーを調節出来るようにしてありますね。単純ながらもいい改造です。」
セシル「ふ~ん。」
 あまり興味なさそうなセシル。
ヒスイ「あ、そだ。改造で思い出しました。セシルちゃん、ちょっとセラフィックホーネットを貸して下さい。」
セシル「え?いいけど・・・。」
 セシルはヒスイにホーネットを渡す。受け取ったヒスイは、カチャカチャとホーネットに手を加える。
ヒスイ「これでよし。」
セシル「何をしたの?」
ヒスイ「セラフィックホーネットをZERO2用に改造したんですよ。これでカスタマイズの幅が広がります。」
セシル「へぇ・・・よく分からないけど、ありがと、ヒスイ!」
ヒスイ「(よく分からないんですか・・・(汗))」
クロウ「俺も、デスサイズのメンテでもするか・・・。」
 と行って、クロウはバッグからデスサイズを取り出し・・・。
クロウ「ん?」
 クロウは一瞬怪訝な顔をして、バッグからデスサイズではなく、青く輝く石を取り出した。
クロウ「なんだこれは・・・?」
セシル「あ~、どうしたの?その宝石。」
ヒスイ「随分高そうですけど。」
クロウ「いや、分からん。何故かバッグに入ってた。」
ヒスイ「えぇ?なぜかって・・・なんでそんなものが?」
クロウ「知るか。」
セシル「でも綺麗ね~。見た感じ、3億ビーロはくだらないと思うよ?」
ヒスイ「さ、さ、3億ビーロって・・・・。」
セシル「うん、だってこう言う宝石、前にも見た事あるし。」
クロウ「そんなバカな。そんなものが俺のバッグに紛れ込んでるわけないだろ。」
セシル「それはそうだけど・・・。」
???「見つけたぞ!あいつだ!!」
 その時、どこからかけたたましい声が聞こえてきたかと思うと、おびただしい数の警備員達がクロウ達を取り囲んだ。
セシル「な、な、な、なに!?!?」
ヒスイ「なんなんですか、あなた達は!?」
クロウ「・・・・・。」
 そして、一人の警備員がクロウを指差し、こう叫ぶ。
警備員「ローレン美術館美術品の窃盗罪で、お前を逮捕する!」
クロウ「なに・・・!」


           つづく

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爆・爆ストーリー ZERO スペシャル 後編

スペシャル『ZEROへの復讐』 後編
 テツとのバトルを終えたクロウ達は、この町の宿屋でくつろいでいた。
 クロウは、ただボケ―っとして、セシルはテレビを見ながら備えられている和菓子に手を伸ばし、ヒスイはぶつくさ言いながら何かの作業をしている。
ヒスイ「・・・互換性はほぼ完璧。サイズ調整にも問題はない・・・だが・・・一番の核となるこのパーツを切り離すとなると、強度が・・・。」
 順調そうに見えて、実は順調で・・・しかしやはり何か行き詰まっているようだ。
ヒスイ「はぁ・・・やっぱり無茶かなぁ・・・。」
 手を止め、一息つく。
セシル「何が無茶なの?」
 後ろから、いきなりセシルが覗きこんで来る。
ヒスイ「だから、特殊コアの互換・・・ってうわあぁ!!」
 ビクッと反応し、飛びのく。
ヒスイ「い、いきなり後ろから声をかけないでくださいよ~。」
 心臓に悪いと言わんばかりに自分の右胸に手を当てるヒスイ。
ヒスイ「右胸?」
 慌てて手を添える場所を改める。
ヒスイ「ははは・・・・。」
セシル「慌てすぎ(汗)」
クロウ「っ!」
 クロウはいきなり立ち上がる。
セシル「ど、どうしたの!?」
クロウ「聞こえなかったか?」
セシル「??」
クロウ「ビー玉の音だ。しかも何かを破壊するような音が、いくつもな。」
ヒスイ「なんですって!?」
クロウ「分かったら、さっさといくぞ。」
ヒスイ「は、はい!」
 クロウ達は外に出た。
 あれほど活気があった町は不気味なくらい静まり返っている。
セシル「な、何これ・・・!」
 セシルは両手で口を押え、唖然とした。
 当たり一面は荒れ果てており、所々にビー玉と同じくらいの大きさの傷がある。
ヒスイ「これは・・・。」
クロウ「・・・・。」
???「まだ人が残っていたか。」
 ザッと。数人の人相の悪い連中が姿を現した。
クロウ「お前らは・・・。」
シャドウA「ん、お前は確か・・・シャドウを裏切ったもの。ちょうどいい、ついでにお前も始末するか。」
クロウ「粋がるな、ザコが。」
 デスサイズを取り出すクロウ。
シャドウB「抜かせ!」
 突然、クロウが話していた奴とは別の奴がクロウに向けて撃ってきた。
クロウ「!?」
 不意打ちだが、クロウにとってはこんなものはたいした事は無い。
 楽勝で撃ち落した。
シャドウB「ぐっ・・・!」
クロウ「見苦しい。」
 バシュッ!!
 シャドウBのビーダマンをあっさりと破壊してしまう。
シャドウA「きっさま~!!」
 シャドウAはクロウに向かい、何発も連射する。
クロウ「ふん。」
 それをあっさりかわし、そしてかわしざまに廃ビルに向かってビー玉を発射する。
シャドウA「どこを撃って・・・!?」
 カンッ!!
 しかし、クロウの撃ったショットは壁にぶつかったと同時に急激に向きを変え、シャドウAに襲い掛かる。
シャドウA「なんだと!?」
 咄嗟の攻撃に反応できず、ビーダマンを破壊されるシャドウA。
シャドウT「くそっぉ、囲め囲め!!」
 いきなり大勢のビーダーに囲まれてしまった。
クロウ「・・・・。」
 カシャカシャ・・・。
 デスサイズのフォームが変形する。
クロウ「はぁ!!」
 ドンッ!!
 クロウの放った玉は、急激にカーブを描き、周りのビーダーを一気になぎ倒して行った。
シャドウY「び、ビー玉が・・・曲がった・・・。」
シャドウH「オーマイガ!リモコンでもついてるのか、あのビー玉!」
クロウ「(旧ファンへのサービスか・・・くだらない。)」
シャドウL「く、くそぉ!
 ドンッ!!
 完全にビビってへっぴり腰になっているシャドウLがクロウに向かってショットを放つ。
クロウ「ふん。」
 これも簡単に撃ち落そうと構えるクロウだが・・・。
 カンッ!
 撃ち落したのは、クロウではなかった。
クロウ「お前か。」
テツ「お前ら!シャドウのビーダーだな!」
 テツがいきなり現れ凄い形相で、迫ってくる。
シャドウC「あん?だったらなんなんだ?」
テツ「そうか・・・シャドウか・・・やっと・・・やっと念願が叶うんだな・・・。」
 思わず口元を緩めるテツ。
クロウ「おい・・・。」
 いつもとは違う雰囲気に、少し違和感を感じるクロウ。
テツ「ククク・・・。さぁ、はじめよう。いくよ、トリプルダガー!」
 テツの、その顔は、狂喜に満ちた殺人鬼の顔だった・・・。
テツ「はぁ!!!」
 ズドドドド!!
 トリプルダガーからビー玉が乱発射される。
 狙いはめちゃくちゃ。まわりにあるもの全てを破壊するかのような勢いだ。
ヒスイ「うわっ!危ない!」
 まわりは瓦礫やボロボロになった建物ばかりだ。そんな中で玉をめちゃくちゃに撃ったら、当然建物は崩れてしまう。
クロウ「ち!」
 バシュッ!
 クロウは、落ちてくる建物の破片をビー玉で撃ち落していく。
セシル「ちょっと、なんなのよ!?」
テツ「シャドウ・・・!潰す!絶対に!!」
 完全に自分を失っているテツ。
 カチャ・・・カチャ・・・。
 玉切れになったようだ。
テツ「ちぃ!」
 急いで補充しようとポッケに手を突っ込むテツ。
シャドウG「隙だらけだぜ!」
 ガンッ!!
 シャドウの攻撃がヒットし、トリプルダガーを落としてしまう。
テツ「しまった!」
 慌てて拾い上げるテツ。
 その時、大勢いるシャドウの中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
???「お久しぶりですね。」
テツ「?!」
クロウ「その声は・・・!」
 そこに立っていたのは、直立している小さな猫だ。
クロウ&テツ「アババ・・・!」
 アババは二人の姿を見て不敵に笑う。
アババ「ふふふ、クロウさん。シャドウを出て行った後も、元気そうで何よりです。」
クロウ「ふん。」
アババ「しかし、今回の私の目的はあなたじゃないわ。」
 アババはテツに目を向ける。
テツ「・・・・。」
アババ「お兄さんに会いたいのですか?」
テツ「!?・・・兄ちゃんを、帰してくれるのか!」
アババ「それは、無理です。しかし・・・。」
テツ「しかし?」
アババ「はぁ!」
 突如、アババの額から目が開き、テツを束縛する。
テツ「ぐぁ!」
 テツは一瞬苦しみ、そしてそのまま意識を失い、倒れる。
アババ「お兄さんは今、あなたを必要としている。」
 シャドウの一員がテツを抱え上げる。
アババ「さて、引き上げますよ。もうここには用はありませんからね。」
 踵を返し、歩き出すシャドウの連中。
 しかし、アババはすぐに立ち止まり、振り向きざまにこう言った。
アババ「クロウさん。あなたも私の目的である事に変わりはありません。また、お会いしましょう。」
クロウ「とっとと行け。」
 アババは一瞬ニヤリと笑い、再び歩き出す。
クロウ「・・・・・。」
テツ「う・・・ん。」
 ゆっくりと目を開けるテツ。
テツ「ここは・・・。」
 体を起こし、辺りを見渡す。
 殺風景な部屋にいろいろなコンピューターが置いてある。どうやら、研究室のようだ。
 そしてテツがいる場所は研究室の隅に備え付けてあるベッドのようだ。
???「目覚めたか。」
 コンピューター前の椅子に座っていた白衣の青年がテツの方に振り向いた。
テツ「え・・・!」
 テツは、その青年の顔を見た途端、体中に衝撃が走った。
テツ「に・・・に・・・!」
???「久しぶりだな。テツ。」
テツ「兄ちゃん!?」
 そうその白衣の青年は、数年の歳月により多少雰囲気は変わっているものの、紛れもなくテツの兄そのものだった。
 テツは慌ててベッドからおり、白衣の青年に近づく。
テツ「ほ、ほんとに兄ちゃんなの!?」
カズマ「何をそんなに驚いてるんだ?」
テツ「だ、だって兄ちゃんはシャドウに捕らえられて・・・あ、そうだ!そんな事より早く帰ろう、兄ちゃん!」
カズマ「何故だ?」
テツ「な、何故って・・・。そ、そうか、まだアババに操られてるんだな!」
???「いいえ、彼は自分から望んでこの場にいるのですよ。」
 突如、アババが現れる。
テツ「そ、そんなバカな!うそだろ、兄ちゃん!」
カズマ「こいつの言う通りだ。俺は操られてなどいない。俺は自分の意志でこの場にいるんだ。もとより帰る気など無い。」
テツ「な・・・!どうして・・・どうして・・・。」
 カズマの言葉に呆然とするテツ。
カズマ「どうしてだと?おかしな事を聞く。見て分からないか?ここは素晴らしいところだ。最高の設備、最高のデータが揃っている。ここなら俺が望む研究が出来る。」
テツ「そんな・・・だって、兄ちゃんはシャドウを憎んでたはずだろ!なんで・・・!」
カズマ「・・・気づいたんだよ。ここの設備を見てからな。」
テツ「え・・・。」
カズマ「俺は、シャドウを憎んでいたわけじゃない。ただ、悔しかっただけなんだ。自分のビーダマンよりも強いビーダマンを持っていると言う事が。だが、ここで自らがより強いビーダマンを生み出せるとしたら、そんな細かい事はどうでもよくなってな。」
テツ「・・・・。」
 テツは、カズマの言葉をただ黙って聞く事しか出来なかった。
テツ「(じゃあ、僕は・・・何のために・・・今まで・・・。)」
カズマ「そんな事よりテツ。お前をここに連れてきた理由を教えてやろう。」
テツ「え・・・!」
カズマ「俺に協力して欲しいんだ。新作のテストシューターとして。」
テツ「新作・・・。」
 カズマはテツの前にあるビーダマンを見せる。
テツ「これは!」
カズマ「これこそ、新システムを搭載した試作ビーダマン。さぁ、こいつで裏切り者を始末してくるんだ。」
 カズマの言う試作ビーダマンを手に取るテツ。
テツ「(そうだ。僕は今まで兄ちゃんのためにビーダマンをしてきた。だったら、コレからだって同じ。兄ちゃんが最高のビーダマンを作るために僕はビーダマンを続ければいいんだ。)」
 一方その頃クロウ達は・・・。
セシル「はぁ、折角町に着いたのに・・・。」
 荒野を歩いていた。
ヒスイ「仕方ないですよ。町があんな状態じゃ。」
クロウ「今日は野宿だな。」
セシル「はあぁ・・・今まさにシャドウに対して限りない怒りを感じてるわ。」
 拳を握り締めるセシル。
???「ほぅ、俺達にたいして怒りを・・・。」
 と、いきなり唐突に乱雑に現れた数人の男達。
ヒスイ「うわぁ!!」
セシル「な、なんなのよあんた達!?」
クロウ「さっきのセリフで分かるだろう。さっきの奴らの残りか?」
シャドウ1「いや、我々は、お前達を招待しに来たんだ。」
クロウ「招待?」
シャドウ2「そう、シャドウの闘技場にね。」
クロウ「!?」
ヒスイ「闘技場!」
クロウ「なんのつもりだ?挑戦のつもりか?」
シャドウ3「あなたも、いい加減ふっきりたいでしょう。いつまでも裏切り者として狙われるのではなく・・・。」
クロウ「つまり、正式にシャドウと決別するための?」
シャドウ1「そうだ。お前が勝てば、シャドウはもうお前を狙わない。」
クロウ「だが、俺が負ければ・・・ふん、よほど勝つ自信があるようだな。」
 鼻で笑い、腕組をしてシャドウの男達を蔑むように見るクロウ。
シャドウ3「来て、いただけますね?」
クロウ「断る理由は無い。」
シャドウ3「では、案内します。」
 クロウ達はシャドウの男達に連れられ、闘技場へ向かった。
シャドウ3「つきました。」
 シャドウの男達につれられ、闘技場に来たクロウ達。
クロウ「ここか。」
 中は、極一般的な闘技場で、殺風景な雰囲気が漂っている。
クロウ「それで、相手は誰なんだ?闘技場につれてきたんだ。当然バトルしに来たんだろ。」
シャドウ1「まぁな。」
クロウ「まさか、お前らなんて事は無いよな?いくらなんでも。」
シャドウ2「ああ。悔しいが、俺達じゃ相手にはならない。」
クロウ「じゃあ早く相手を出せ!」
シャドウ1「まぁ、そう焦るな。直に・・・。」
 カッ、カッ、カッ・・・。
 どこからか足音が聞こえてきた。
クロウ「ん・・・?」
 足音が聞こえる方向。反対側の扉に、クロウ達は目を向けた。
シャドウ3「彼が、あなたの相手です。」
クロウ「奴が・・。」
 カッ、カッ、カッ・・・。
 徐々に近づいてくる足音。そしてついに、その影が見えてきた。
クロウ「・・・・。」
 黙って、その影がはっきりするまで待つクロウ。そして・・・。
クロウ「!?」
セシル「え・・・。」
ヒスイ「そんな・・・っ!」
 その影の正体は・・・。
クロウ「テツ・・・!」
テツ「・・・・。」
ヒスイ「ど、どうしてあなたが!?」
テツ「聞いてなかったのか?」
ヒスイ「え。」
テツ「僕が、君達の対戦相手だからだ。」
セシル「な、なんでよ!テツはシャドウを憎んでたんじゃないの!?」
テツ「あぁ、憎んでたさ。憎んでたとも・・・だが、それと今僕がここにいる事は関係ない。」
ヒスイ「どういう事ですか?」
クロウ「もういいだろう。こいつがシャドウを憎んでいようが、シャドウの仲間になろうが、俺達には関係ない話だ。問題なのは、今こいつは俺にとって倒すべき敵と言う事実だけだ。」
テツ「物分りが良いな。」
クロウ「興味が無いだけだ。俺は闘い以外に興味は無い。」
 デスサイズを取り出すクロウ。
クロウ「やるぞ。」
テツ「まぁまて。」
 手を出し、制止の合図をするテツ。
クロウ「なに・・・?」
テツ「悪いけど、君の前に、倒したい相手がいるんだ。」
 テツはゆっくりと人差し指を突き出し、それをヒスイに向ける。
ヒスイ「え・・・?!」
テツ「君には借りがあるからな。それを返させて貰う。」
ヒスイ「え、でもあの時僕は負けて・・・。」
 テツは無言でトリプルダガーを見せる。
ヒスイ「それは!」
 そのトリプルダガーには無数のヒビが入っていた。
テツ「君とのバトルでついた傷だ。傷ものの勝利に意味は無い。今度こそ、無傷の勝利をもらう。」
ヒスイ「まぁ、構いませんよ。僕としてもリベンジしておきたいですし。」
テツ「リベンジ・・・か。果たして出来るかな?このビーダマンを相手に!」
 テツはトリプルダガーを放り投げ、懐からビーダマンを取り出す。
ヒスイ「なに!?」
セシル「そのビーダマンは!」
テツ「新システム、ZERO2システムを搭載した新型ビーダマン。プロトツーだ!」
ヒスイ「新システム・・・?(まさか、今僕が計画中の・・・!?)」
 その様子を研究室からモニターで見ているアババとカズマ。
アババ「ふふふ、なかなか面白くなりそうですね、カズマさん。」
カズマ「ちっ、テツの奴、余計な事を。」
アババ「まぁまぁ、このくらいのイベントがあった方が盛り上がりますよ。それに、あなたとしてもいいデータが入るでしょう?」
カズマ「まぁな。あのヒスイとか言う奴は、優秀な研究者らしいし、興味深いデータが取れそうだ。」
 カズマはキーボードを叩き、コンピュータを操作する。
カズマ「さて、見せて貰おうか。
ヒスイ&テツ「ビー、ファイア!!」
 ドンドンッ!!
 合図とともに乱れ飛ぶ数々のビー玉。
ヒスイ「はあぁ!!」
 しかし、若干連射で勝るジェイドがおしていく。
テツ「連射型か・・・。だが、これならどうだ?」
 バッ!
 テツは素早くその場を離れる。
ヒスイ「っ!」
 ヒスイは素早くテツの移動先を目で追うが、既にテツは射程外まで離れていた。
テツ「ふふふ。」
 カチャカチャ・・・。
 いきなりテツはビーダマンをばらし始める。
クロウ「なに・・・!?」
ヒスイ「バトル中にカスタマイズ?!」
テツ「よし。」
 テツの手が止まる。
テツ「デルタコア装着!プロトツーパワーモード!」
 ドンッ!!
 プロトツーから物凄いパワーショットが放たれる。
ヒスイ「コア自体をカスタマイズした!?」
テツ「これが、新システムZERO2システムの力だぁ!」
 ちなみに、プロトツーのシールドはショルダーにつき、バイザーも変化している。
ヒスイ「ぐっ!」
 ヒスイはデルタコアを装着したプロトツーに押されていく。
テツ「ふん、圧倒的なパワーの差に、連射で対抗しても無駄なんだよ。」
ヒスイ「なに・・・!」
テツ「これで、終わりだ。」
 ギシギシ・・・・!!
 デルタコアのホールドパーツをシメるテツ。
ヒスイ「ぐっ!リバースハンド・・・!」
テツ「遅い!!」
 ドキュンッ!!
 ついにテツの最大パワーのショットが放たれる。
ヒスイ「う、うわああぁぁ!!!」
 バーンッ!!!
 そのショットはヒスイとジェイドに見事命中。
 その反動で一気に吹っ飛んでしまうヒスイ。
セシル「ヒスイ!!」
テツ「ふっ・・・最高だ・・・。」
カズマ「俺の作った新システムは。もっとも、炎呪の仕入れたデータがなければ完成はしなかったが。」
アババ「ふふふ。」
テツ「さあ、次はお前の番だ。クロウ・アスカード!」
 クロウを指差すテツ。
クロウ「ようやく俺の番か。待ちくたびれたぞ。」
 デスサイズを取り出し、テツと向きあうクロウ。
テツ「ふ・・・ローラーコア、装着。」
 カシャッ!
 プロトツーのコアにローラーがつく。そして、シールドはトリガーパッドになる。バイザーも変化。
クロウ「・・・・。」
テツ「ビー、ファイア!!」
 ズドドドド!!
 さっきまでとは比べ物にならないほどの連射でクロウを攻め立てるテツ。
クロウ「むっ!」
 その連射に多少ひるむクロウだが、すぐに立て直す。
クロウ「直接バトルにおいて、連射はパワーに弱い・・・さっきお前がいった言葉だな?」
 ドンッ!!
 クロウは、パワーダブルバーストでテツの連射を全て弾き飛ばした。
テツ「!?」
 そして、さらに放ったクロウのパワーショットにより、テツは吹き飛ばされる。
テツ「ぐっ・・・!」
 仰向けに倒れるテツ。
 そんなテツに銃口を突きつけるクロウ。
クロウ「憐れだな。」
テツ「・・・・。」
クロウ「愚かな人間は、憐れだ。」
テツ「どっちが・・・。」
クロウ「?」
 テツは素早く身を翻し、その場を離れる。
テツ「は・・・あ・・・!」
 そして、素早くカスタマイズ。
テツ「ロングコア装着!」
 そしてシールドはヘッドとバレルにつける。
クロウ「ふん。」
 ドキュッ!
 試しに軽くパワーショット。
テツ「っ!」
 それをかわすテツ。
テツ「いかに早いショットでも、集中すればかわせる!」
クロウ「だが、それではお前も反撃は出来ない。」
テツ「どうかな?」
 ドンッ!!
 再びクロウのパワーショット。
テツ「ふんっ!」
 テツはそれをかわしつつ、クロウへ狙い撃ち。
クロウ「なに!?」
 カンッ!!
 そのショットはデスサイズに命中。だが、威力は弱いので耐えられた。
テツ「ロングコアは命中率重視。これならかわしながらでも狙える!」
クロウ「なるほど・・・。」
 ず・・ずがが・・・・。
 瓦礫のしたから音がする。何かが動くような。
ヒスイ「い・・ててて・・・。」
 ヒスイだ。ヒスイが瓦礫のしたから這い上がってきた。
ヒスイ「ふぅ・・・・酷い目に合った。」
 パンパンと服の埃をはたき、辺りを見渡す。
ヒスイ「まさか僕の計画してたシステムが既に実現化してたなんて、ちょっとショックかも・・・。まぁでも、おかげでいいヒントになったし。これでなんとか開発出来るかもしれない。」
 ガサ・・・。
 とりあえずその場から動くヒスイ。
ヒスイ「それにしてもここは・・・。」
 まわりには、かなりボロボロだが、いろいろなコンピューターや機器がある。
ヒスイ「昔の研究室みたいなものかな・・・。さすがにコンピューターは使えないけど、でも、道具や材料は揃ってる。これなら・・・!」
 ドキュンッ!バシュッ!!
 クロウとテツのバトルはさらに激しさを増していた。
クロウ「はぁ!!」
テツ「うおおお!!!」
 クロウのショットはかわされ、テツのショットは耐えられる。
 お互いに決めてがない状況で、バトルはかなり長引いている。
 さすがに疲労がたまってきたのか、息が乱れてきた。
クロウ「はぁ・・・はぁ・・・。」
テツ「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
 当然、クロウよりもテツの方が疲労度は高い。
アババ「うーん、少しテツさんも疲れが増してきたようですね。」
カズマ「ふん、不甲斐ない。もうあれを使うか?」
アババ「どうぞ、ご自由に。」
 カズマは、キーボード上にあるボタンを押す。
テツ「!?」
 突然、天井からビームがテツに向かって落ちてくる。
セシル「な、なに!」
テツ「ぐあああああ!!!!!」
 絶叫するテツ。相当体に負担がかかっているのだろう。
 しかし、そのビームはダメージを与えるためのものではないようだ。
 徐々にテツの体に変化が起きる。
テツ「ぐうううぅぅ!!!」
 体中の筋肉と言う筋肉が発達し、大きくなる。
セシル「パワーアップしてるの!?」
クロウ「・・・・・。」
 そして、ビームがおさまる。
テツ「・・・は・・・あ・・・。」
 チャキ。
 クロウに銃口を向けるテツ。
 ドキュンッ!!
 さっきとは比べ物にならないほどのパワーショットが放たれる。
 しかもロングコアにより狙いは正確だ。
クロウ「ちぃ!」
 止むを得ずそれをかわすクロウ。
 長引いたバトルで疲労したクロウに、パワーアップしたテツ。
 どう考えてもクロウの方が不利な状況だ。
テツ「勝つんだ・・・・勝ってこのビーダマンの強さを証明する・・・!兄ちゃんのために!」
クロウ「っ!」
テツ「うおおおおお!!!」
 絶叫し、パワーを上げるテツ。その気力は肉眼ではっきりと見えるほどの黄色い靄を生み出していた。
セシル「な、なに・・・これ・・・?」
クロウ「(肉眼で確認できるほどの大きな気を生み出すとは・・・。)」
テツ「くらえええええぇぇぇ!!!!」
 ドキュンッ!!
 最大のパワーを込めたショットを放つテツ。
クロウ「っ!?」
 もはやクロウにはそれを対処する術は無い。
 テツの放ったショットは凄い勢いでクロウのデスサイズ向かって飛んでくる。
 ズドドドド!!!
 その時、どこからか怒涛の連射がテツのショットを防ぐ。
クロウ「なに・・!」
セシル「あれは!」
 カキンッ!!
 そしてついにテツのショットを弾いた。
テツ「ちぃ!」
 一同、ビー玉が飛んできた方向を向く。
 そこに・・・立っていたのは・・・。
クロウ「随分と、長引いたな。」
ヒスイ「ええ、思ったより梃子摺ってしまいました。」
 ヒスイは、いままで見た事の無い緑色のビーダマンを持っていた。
テツ「ち、まだ生きていたか。」
ヒスイ「見せてあげますよ。究極のジェイド・・・・ジェイドグラスパーの力を!!」
ヒスイ「さぁ、いきますよ!ジェイドグラスパー!!」
クロウ「ジェイド・・・。」
テツ「グラスパーだと・・!」
 ヒスイは、テツに狙いを定め、連射する。
テツ「うっ!」
 その連射は、今までのジェイドの連射を遥かに凌駕するほどのものだ。
 カンッカンッカンッ!!
 テツは成す術なくその連射を全て受ける。
テツ「(威力は多少落ちているが、連射力は半端じゃない・・・!)」
ヒスイ「君のおかげです。ジェイドグラスパーが完成したのは!」
テツ「どういう・・・事だ?」
ヒスイ「僕もずっと計画していたんです。特殊コアを互換させるシステムを・・・。でも、互換出来ても、強度に問題が出てきた。当然です。コアを互換させるために、ヘッドとコアを切り離したんですから。でも、君のプロトツーを見て気づきました。腕についているリング・・・それが、ZERO2システムの鍵だったんです!」
 ジェイドを掲げながら自慢気に語るヒスイ。
ヒスイ「ホールドパーツの摩擦を極限まで減らしたベアリングコア。そして、トリガーの摩擦を減らしたネオベアリングブースターの力で、限界まで連射スピードを極めた最強の連射マシンです!」
クロウ「説明はいいから、さっさと始末をつけるぞ。」
テツ「ぐっ・・・!」
 すこしたじろぐテツ。
テツ「ま、負けるもんか・・・デルタコア装着!」
 プロトツーにデルタコアを装着させるテツ。
テツ「パワーで一気に決めてやる。」
クロウ「無駄だ。どう足掻こうが、もうお前に勝ち目は無い。」
テツ「黙れ!!」
 ドンッ!!
 ホールドをめちゃくちゃにシメ、ショットを放つテツ。
クロウ「ふん。」
ヒスイ「いきますよ!」
 ズドドドド!!
 クロウのパワーダブルバースト、ヒスイの超連射の二段攻撃がテツを襲う。
テツ「う・・・ぐぐ・・・!!」
 テツのショットは全く通じない。
 ズガガガガ!!
 そして、クロウとヒスイのショットがテツに命中。
テツ「うわあああ!!!」
 その勢いに吹っ飛ばされるテツ。
テツ「うううぅぅ・・・!」
 倒れながらも、体を押えながらなんとか立ち上がるテツ。
カズマ「ふん、不甲斐ないな。」
 モニターでその様子を見ているカズマは、テツの姿を鼻で笑った。
アババ「手厳しいですね。あの子はあなたの弟ですよ?」
カズマ「関係ない。俺は強いビーダマンが作れればそれでいい。」
テツ「負けられないのに・・・負けられないのに・・・・!」
 テツはよろよろと、クロウ達から離れ、壁の方へ歩いていく。
 その壁には、青いボタンがついていた。
テツ「僕は・・・兄ちゃんのために・・・!」
カズマ「!?」
アババ「ほう、面白くなりそうですね。」
カズマ「まさか・・・あいつ・・・!」
 カズマは、テツの行動に動揺している。
アババ「どうしました?」
カズマ「や・・・やめ・・・やめろ・・・!」
テツ「は・・・あ・・・。」
 テツは、壁についているボタンに手を伸ばしている。
カズマ「やめろぉ!!!」
 ガタンッ!
 勢い良く立ち上がるカズマ。その勢いで椅子は倒れてしまう。
アババ「どうしました?」
 アババが微笑しながらたずねる。
カズマ「・・・・!」
 カズマはそんなアババを無視し、部屋を出ていく。
クロウ「一体何をする気だ・・・?」
 テツはついに壁についているボタンを押した。
 ポチッとな。
 その瞬間、天井からさっきよりも巨大なビームがテツに命中する。
テツ「うおおおおお!!!!」
 バババババ!!!
 ビームを受け、更に巨大化するテツ。その姿は既に人間のそれとはかけ離れている。
クロウ「なに・・・!」
 しかも、半端な巨大化ではない。テツは既に闘技場の天井に頭がつくくらいに巨大になっていた。
テツ「ぐがあああ!!!」
 完全に理性を失ったテツは、ビーダマンなど持たずにめちゃくちゃに暴れまくる。
ヒスイ「くっ!なんて展開ですか!」
クロウ「止めるぞ、このまま暴れられたら、建物が崩れる。」
セシル「崩れちゃったら私達下敷きじゃない!?」
クロウ「だから、止めるんだ。」
 巨大テツに向かって銃口を向けるクロウ。
クロウ「はぁ!!」
 ドンッ!!!
 強力なダブルバーストがテツの顔目掛けてぶっ飛ぶ。
テツ「ぐがあ!!」
 バシッ!!
 しかし、テツはあっさりそれを叩き落とす。
クロウ「ちっ、さすがに物量の差がありすぎるか!」
 ザッ!
 その時、一人の白衣を着た男が闘技場に入ってきた。
クロウ「お前は・・・?」
 男はクロウ達を無視し、テツを見て愕然とする。
カズマ「遅かったか・・・。」
 そうつぶやいて膝をつく。
テツ「僕は・・・兄ちゃんの・・・ために・・・!!」
 そう叫び、更に暴れまくるテツ。暴れ、暴れ、暴れまくる。Get up・・・
カズマ「ぐぐ・・・!」
 そんなカズマの様子を見て、セシルはある事に気づく。
セシル「あなた・・・もしかしてテツのお兄さん?」
カズマ「・・・ああ・・。」
 小さくうなずき、立ち上がるカズマ。
 パンッ!
 その瞬間、セシルはカズマの頬を思いっきり打った。
セシル「あなたの・・・あなたのせいで・・・テツのビーダー人生が・・・!」
 怒りに震えながら、カズマを責める。
カズマ「・・・・。」
 カズマは少しうつむく、その叱責を甘んじて受けている。
セシル「テツはね、今まであなたを助ける事だけを考えてビーダマンをしてきたの!そして、今もあなたのビーダマンを完成させるため・・・ただそれだけのために私達と戦って、そして今苦しんでるのよ!」
カズマ「・・・分かってるさ・・・・。俺は最低な人間だ。あの日・・・シャドウに負けたあの日から、俺は狂ってしまった・・・全てを利用し、強さだけを追い求める狂人となってしまった・・・。」
 バンッ!!
 カズマは、自分で自分の頬を思いっきり殴った。
カズマ「俺はバカだ・・・失いそうになって・・・・初めて、本当に大切なものに気づくなんて・・・。」
 ズドーンッ!!
 テツの攻撃が地面を揺らす。
カズマ「くっ!」
クロウ「ちぃ!」
ヒスイ「ど、どうすれば・・!」
 カズマはテツに向かって叫ぶ。
カズマ「テツ!もうやめろ!やめるんだ!!」
テツ「僕は・・・兄ちゃんのために・・・!」
 テツは聞く耳を持っていない。目は血走っており、何も見えていないようだ。
カズマ「俺のせいなのか・・・俺の・・・!」
クロウ「おい、どういうこった?」
ヒスイ「テツはなんで、あんな事に!」
カズマ「・・・あの壁に備え付けていたボタン・・あれは肉体を極限まで強化する装置・・・いざと言うときのための切り札だったんだ・・・。あれだけは使うなと言ったのに・・・!あいつは、昔から俺の言う事はなんでも聞いていたのに。最後の最後で、俺の言う事を無視しやがった・・・!全ては俺のために・・・!俺が最強のビーダマンを作るために・・・!」
クロウ「だが、この行為は無意味だ。早く止めなければ。」
ヒスイ「そうですよ!このままじゃ、テツも危ないかもしれません!」
セシル「何か、テツを元に戻す方法はないの?」
カズマ「解除装置なら・・ある!」
クロウ「ほんとか!?」
カズマ「だが、それは今、テツの後ろの壁にある。今のテツの後ろにまわりこむのは、難しい・・・。」
 テツはむちゃくちゃに暴れまくっている。あれに近づくのは無謀だ。しかし、後ろの壁にまわりこむには、テツのすぐ横を通り過ぎないといけない。
カズマ「・・・・・。」
クロウ「よし、俺が行こう。」
 一歩前に出るクロウ。
ヒスイ「え。」
クロウ「あの程度の動き、俺なら簡単に見切れる。」
 走るために構えるクロウ。
カズマ「待て。」
 しかし、それをカズマは止めた。
クロウ「なんだ?」
カズマ「俺が行く。」
クロウ「なんだと・・・?」
カズマ「これは、俺の責任だ。テツは、兄として、俺が救う。」
クロウ「ほう・・・。」
カズマ「それに、俺はテツの動き、癖、何もかも知り尽くしているんだ。ここは俺が行ったほうが得策だ。」
ヒスイ「分かりました!じゃあ僕達は、君の援護にまわります!」
カズマ「頼むぜ。」
 ダッ!
 テツ目掛けて走り出すカズマ。
テツ「うが・・!」
 既に野獣と化しているテツの目はカズマの姿を捉えた。
テツ「うがあああ!!!」
 しかし、テツの目には、それが誰なのかは分からない。分かっているのは、認識しているのは、それが自分の敵だと言う事だけ。
 テツはむちゃくちゃに腕を振り回し、カズマの進行を阻む。
カズマ「くっ!」
ヒスイ「ジェイドグラスパー!!」
 ヒスイは、手首のスナップをきかせてジェイドを宙へ放り投げる。
 そして手のひらを上にして、ジェイドをキャッチ。
ヒスイ「リバースハンドミッション!!」
 邪魔となる手がなくなり、ジェイドのマガジンはがら空きだ。そこ目掛けて片方の手でビー玉を凄い勢いで装填。そしてもう片方の手でトリガーを押しまくる。
ヒスイ「うおおおおおお!!!!」
 ズドドドドド!!!
 ヒスイの猛連射がカズマの横をすりぬけ、テツの手に乱雑にヒットする。
テツ「ぐううぅぅ・・・!!」
 一瞬ひるむテツ。
 その隙をついて走り出すカズマ。
テツ「ぐあああ!!!」
 しかし、テツはそれを逃さずに、カズマを押しつぶそうと、手のひらを叩きつけ・・・!
セシル「いっけー!!」
 ドンッ!!
 セラフィックホーネットから放たれた玉がテツの人差し指にヒット。
 僅かに右にずれる人差し指。その事で、カズマは間一髪潰されずにすんだ。
カズマ「は・・あ・・!」
 カズマは息を切らしながらも走り続けた。
 そして、ついに、テツの後ろにまわりこみ、解除用のボタンを目の前にする。
カズマ「これで・・止まる。」
 カズマは解除用のボタンに手を伸ばし・・・。
 ふわ・・・。
 ここで、カズマは重力を感じなくなった。
カズマ「え・・・・。」
 腰には、何かが巻き付いているような感覚。
カズマ「うっ!」
 カズマは、テツの右手に捕まってしまっていた。
カズマ「しま・・・た・・・。」
テツ「ぐが!」
 カズマを握り締め、ニヤリと笑うテツ。
クロウ「千載一遇のチャンス・・・逃したか。」
ヒスイ「ど、どうすれば・・・!」
 巨大テツに囚われてしまったカズマ。
 もはや、クロウ達に成す術はないのか!?
ヒスイ「どうすれば・・・このままじゃ・・・!」
セシル「もう、ダメなのかな・・・?」
 完全に諦め切っているヒスイとセシル。ていうか、カズマの心配jはしないのね(笑)
クロウ「さて、やっと動けるな。」
 デスサイズを構えるクロウ。
セシル「え?」
ヒスイ「どういう事ですか?」
クロウ「ようやく、デスサイズで制御ボタンを狙えるという事だ。」
 狙いを定めるクロウ。
ヒスイ「まさか・・・今までの事は全て予測して!?」
クロウ「当然だ。」
 ドンッ!!
 答えて、クロウはビー玉発射。
 ビー玉は、テツの横をすり抜ける。
 カンッ!!
 壁にぶつかったクロウのショットはそのままイングリッシュ反射して、制御ボタンに命中。
 その瞬間、再び天井から青いビームが落ちてきてテツに命中。
テツ「あああああ!!!!!」
 突如苦しみだすテツ。カズマを放り投げ、頭をかかえる。
カズマ「ぐっ!」
 なんとか無事に着地するカズマ。
テツ「いうううううう!!!」
 徐々に元の大きさに戻っていくテツ。
カズマ「やった・・・のか?」
テツ「う・・・。」
 完全に元に戻ったテツはそのまま気を失ってしまった。
カズマ「テツ!」
 仰向けに倒れたテツに駆け寄るカズマ。
カズマ「おい、しっかりしろ!」
 必死でゆすぶるが、テツはピクリともしない。
ヒスイ「大丈夫、気を失ってるだけですよ。」
カズマ「・・・・・・・。」
 テツの頬にポタポタとしずくが落ちる。
 それはカズマの涙だ。
 カズマは倒れているテツの顔を見ながら、泣いていた。
カズマ「ごめん・・・ごめんよ、テツ・・・兄ちゃんが、自分勝手だったせいで・・・!」
 その時、テツの目がゆっくりと開いた。
テツ「兄・・・ちゃん・・・。」
カズマ「テツ!?」
テツ「ごめん・・・ね・・・僕・・・負けちゃった・・・。」
カズマ「何言ってんだよ・・・悪いのは全部俺だ・・・お前は何も悪くない・・・。謝るのは、俺の方なんだ。」
テツ「兄ちゃん・・・。」
カズマ「ごめんな。今まで、辛い思いをさせて・・・。」
???「ふん、所詮あなたも人間と言うわけですね。」
 突如、後ろから声をかけられた。
 振り向くとそこにはアババが立っていた。
カズマ「貴様・・・!」
アババ「人間らしい心を持ったものに、用はありません。消えてください。」
 いつの間にか、アババのまわりに大勢のビーダーが集まり、ビーダマンを構える。
クロウ「それはこっちのセリフだ。」
アババ「なんですって?」
クロウ「これで俺はシャドウと決別が出来たわけだ。そう言う事だから、貴様こそ俺の前から消えて貰う。」
 クロウはデスサイズを構えて、パワーショットを放つ。
 ドーンッ!!
 クロウのパワーショットにより、アババとその周りのビーダー達は一気に吹っ飛ばされてしまった。
アババ「ぎゃああああああああ!!!!!」
 ・・・・・。
 ・・・。
 闘技場を出て、少し歩き、荒野へ出た。
ヒスイ「それじゃ、ここでお別れかな?」
 分岐点にたどり着き、足を止める五人。
テツ「そうだね。」
セシル「それで、これからどうするの?」
テツ「・・・ビーダマンは続けるよ。今度は、自分のために。自分が納得のいく強さを手に入れるまで。」
カズマ「そして俺は、テツの夢を、サポートしようと思っている。」
ヒスイ「そうですか。頑張ってください!」
テツ「うん!」
 ヒスイとテツは固く握手をかわす。
 二人の間に芽生えた友情は、この先、二度と出会わないとしても、決して変わる事は無いだろう。
クロウ「それじゃ、行くぞ。いつまでも別れを惜しんでてもキリがないからな。」
ヒスイ「そうですね。」
テツ「うん。行こう、兄ちゃん。」
カズマ「ああ。」
 再びそれぞれの道に向かって歩き出す五人。
 人生と言うものは、不思議なものである。
 それぞれがそれぞれに、全く違う道を進んでいても、それぞれがそれぞれに影響しあっている。
 例えもう二度と会えなくても、その出会いはきっと、いつまでもその道に影響していく、どんなに小さな事でも影響していくのだ。
 あるいは、一度もあった事が無いような人にも知らず知らずのうちに、影響されているのかもしれない。
 だから、僕らは歩くのだ。人生と言う長い長い道のりを。
 その先にあるものは、死と言う悲しい終焉しかない。
 それでも僕らは歩く。大事なのは終焉ではない。終焉にたどり着く過程だから。
 その瞬間を、どうか大切にしてほしい。
 何が起こるか分からない人生を、楽しんで欲しい。
 例え辛い事や苦しい事が起きても、それは、その人生を歩いている自分にしか味わえないものだから、大切にしてほしい。
 楽しい事は、楽しいって事だけじゃないって事に、気づいて欲しい。
 そこに、意味なんか無い。生きる事に意味なんか無い。だけど・・・・意味なんて、元々必要ないのだから。
 だから、僕らは歩き続けるのだと・・・・。
           完

 

 

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