スペシャル『ZEROへの復讐』 後編
テツとのバトルを終えたクロウ達は、この町の宿屋でくつろいでいた。
クロウは、ただボケ―っとして、セシルはテレビを見ながら備えられている和菓子に手を伸ばし、ヒスイはぶつくさ言いながら何かの作業をしている。
ヒスイ「・・・互換性はほぼ完璧。サイズ調整にも問題はない・・・だが・・・一番の核となるこのパーツを切り離すとなると、強度が・・・。」
順調そうに見えて、実は順調で・・・しかしやはり何か行き詰まっているようだ。
ヒスイ「はぁ・・・やっぱり無茶かなぁ・・・。」
手を止め、一息つく。
セシル「何が無茶なの?」
後ろから、いきなりセシルが覗きこんで来る。
ヒスイ「だから、特殊コアの互換・・・ってうわあぁ!!」
ビクッと反応し、飛びのく。
ヒスイ「い、いきなり後ろから声をかけないでくださいよ~。」
心臓に悪いと言わんばかりに自分の右胸に手を当てるヒスイ。
ヒスイ「右胸?」
慌てて手を添える場所を改める。
ヒスイ「ははは・・・・。」
セシル「慌てすぎ(汗)」
クロウ「っ!」
クロウはいきなり立ち上がる。
セシル「ど、どうしたの!?」
クロウ「聞こえなかったか?」
セシル「??」
クロウ「ビー玉の音だ。しかも何かを破壊するような音が、いくつもな。」
ヒスイ「なんですって!?」
クロウ「分かったら、さっさといくぞ。」
ヒスイ「は、はい!」
クロウ達は外に出た。
あれほど活気があった町は不気味なくらい静まり返っている。
セシル「な、何これ・・・!」
セシルは両手で口を押え、唖然とした。
当たり一面は荒れ果てており、所々にビー玉と同じくらいの大きさの傷がある。
ヒスイ「これは・・・。」
クロウ「・・・・。」
???「まだ人が残っていたか。」
ザッと。数人の人相の悪い連中が姿を現した。
クロウ「お前らは・・・。」
シャドウA「ん、お前は確か・・・シャドウを裏切ったもの。ちょうどいい、ついでにお前も始末するか。」
クロウ「粋がるな、ザコが。」
デスサイズを取り出すクロウ。
シャドウB「抜かせ!」
突然、クロウが話していた奴とは別の奴がクロウに向けて撃ってきた。
クロウ「!?」
不意打ちだが、クロウにとってはこんなものはたいした事は無い。
楽勝で撃ち落した。
シャドウB「ぐっ・・・!」
クロウ「見苦しい。」
バシュッ!!
シャドウBのビーダマンをあっさりと破壊してしまう。
シャドウA「きっさま~!!」
シャドウAはクロウに向かい、何発も連射する。
クロウ「ふん。」
それをあっさりかわし、そしてかわしざまに廃ビルに向かってビー玉を発射する。
シャドウA「どこを撃って・・・!?」
カンッ!!
しかし、クロウの撃ったショットは壁にぶつかったと同時に急激に向きを変え、シャドウAに襲い掛かる。
シャドウA「なんだと!?」
咄嗟の攻撃に反応できず、ビーダマンを破壊されるシャドウA。
シャドウT「くそっぉ、囲め囲め!!」
いきなり大勢のビーダーに囲まれてしまった。
クロウ「・・・・。」
カシャカシャ・・・。
デスサイズのフォームが変形する。
クロウ「はぁ!!」
ドンッ!!
クロウの放った玉は、急激にカーブを描き、周りのビーダーを一気になぎ倒して行った。
シャドウY「び、ビー玉が・・・曲がった・・・。」
シャドウH「オーマイガ!リモコンでもついてるのか、あのビー玉!」
クロウ「(旧ファンへのサービスか・・・くだらない。)」
シャドウL「く、くそぉ!
ドンッ!!
完全にビビってへっぴり腰になっているシャドウLがクロウに向かってショットを放つ。
クロウ「ふん。」
これも簡単に撃ち落そうと構えるクロウだが・・・。
カンッ!
撃ち落したのは、クロウではなかった。
クロウ「お前か。」
テツ「お前ら!シャドウのビーダーだな!」
テツがいきなり現れ凄い形相で、迫ってくる。
シャドウC「あん?だったらなんなんだ?」
テツ「そうか・・・シャドウか・・・やっと・・・やっと念願が叶うんだな・・・。」
思わず口元を緩めるテツ。
クロウ「おい・・・。」
いつもとは違う雰囲気に、少し違和感を感じるクロウ。
テツ「ククク・・・。さぁ、はじめよう。いくよ、トリプルダガー!」
テツの、その顔は、狂喜に満ちた殺人鬼の顔だった・・・。
テツ「はぁ!!!」
ズドドドド!!
トリプルダガーからビー玉が乱発射される。
狙いはめちゃくちゃ。まわりにあるもの全てを破壊するかのような勢いだ。
ヒスイ「うわっ!危ない!」
まわりは瓦礫やボロボロになった建物ばかりだ。そんな中で玉をめちゃくちゃに撃ったら、当然建物は崩れてしまう。
クロウ「ち!」
バシュッ!
クロウは、落ちてくる建物の破片をビー玉で撃ち落していく。
セシル「ちょっと、なんなのよ!?」
テツ「シャドウ・・・!潰す!絶対に!!」
完全に自分を失っているテツ。
カチャ・・・カチャ・・・。
玉切れになったようだ。
テツ「ちぃ!」
急いで補充しようとポッケに手を突っ込むテツ。
シャドウG「隙だらけだぜ!」
ガンッ!!
シャドウの攻撃がヒットし、トリプルダガーを落としてしまう。
テツ「しまった!」
慌てて拾い上げるテツ。
その時、大勢いるシャドウの中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
???「お久しぶりですね。」
テツ「?!」
クロウ「その声は・・・!」
そこに立っていたのは、直立している小さな猫だ。
クロウ&テツ「アババ・・・!」
アババは二人の姿を見て不敵に笑う。
アババ「ふふふ、クロウさん。シャドウを出て行った後も、元気そうで何よりです。」
クロウ「ふん。」
アババ「しかし、今回の私の目的はあなたじゃないわ。」
アババはテツに目を向ける。
テツ「・・・・。」
アババ「お兄さんに会いたいのですか?」
テツ「!?・・・兄ちゃんを、帰してくれるのか!」
アババ「それは、無理です。しかし・・・。」
テツ「しかし?」
アババ「はぁ!」
突如、アババの額から目が開き、テツを束縛する。
テツ「ぐぁ!」
テツは一瞬苦しみ、そしてそのまま意識を失い、倒れる。
アババ「お兄さんは今、あなたを必要としている。」
シャドウの一員がテツを抱え上げる。
アババ「さて、引き上げますよ。もうここには用はありませんからね。」
踵を返し、歩き出すシャドウの連中。
しかし、アババはすぐに立ち止まり、振り向きざまにこう言った。
アババ「クロウさん。あなたも私の目的である事に変わりはありません。また、お会いしましょう。」
クロウ「とっとと行け。」
アババは一瞬ニヤリと笑い、再び歩き出す。
クロウ「・・・・・。」
テツ「う・・・ん。」
ゆっくりと目を開けるテツ。
テツ「ここは・・・。」
体を起こし、辺りを見渡す。
殺風景な部屋にいろいろなコンピューターが置いてある。どうやら、研究室のようだ。
そしてテツがいる場所は研究室の隅に備え付けてあるベッドのようだ。
???「目覚めたか。」
コンピューター前の椅子に座っていた白衣の青年がテツの方に振り向いた。
テツ「え・・・!」
テツは、その青年の顔を見た途端、体中に衝撃が走った。
テツ「に・・・に・・・!」
???「久しぶりだな。テツ。」
テツ「兄ちゃん!?」
そうその白衣の青年は、数年の歳月により多少雰囲気は変わっているものの、紛れもなくテツの兄そのものだった。
テツは慌ててベッドからおり、白衣の青年に近づく。
テツ「ほ、ほんとに兄ちゃんなの!?」
カズマ「何をそんなに驚いてるんだ?」
テツ「だ、だって兄ちゃんはシャドウに捕らえられて・・・あ、そうだ!そんな事より早く帰ろう、兄ちゃん!」
カズマ「何故だ?」
テツ「な、何故って・・・。そ、そうか、まだアババに操られてるんだな!」
???「いいえ、彼は自分から望んでこの場にいるのですよ。」
突如、アババが現れる。
テツ「そ、そんなバカな!うそだろ、兄ちゃん!」
カズマ「こいつの言う通りだ。俺は操られてなどいない。俺は自分の意志でこの場にいるんだ。もとより帰る気など無い。」
テツ「な・・・!どうして・・・どうして・・・。」
カズマの言葉に呆然とするテツ。
カズマ「どうしてだと?おかしな事を聞く。見て分からないか?ここは素晴らしいところだ。最高の設備、最高のデータが揃っている。ここなら俺が望む研究が出来る。」
テツ「そんな・・・だって、兄ちゃんはシャドウを憎んでたはずだろ!なんで・・・!」
カズマ「・・・気づいたんだよ。ここの設備を見てからな。」
テツ「え・・・。」
カズマ「俺は、シャドウを憎んでいたわけじゃない。ただ、悔しかっただけなんだ。自分のビーダマンよりも強いビーダマンを持っていると言う事が。だが、ここで自らがより強いビーダマンを生み出せるとしたら、そんな細かい事はどうでもよくなってな。」
テツ「・・・・。」
テツは、カズマの言葉をただ黙って聞く事しか出来なかった。
テツ「(じゃあ、僕は・・・何のために・・・今まで・・・。)」
カズマ「そんな事よりテツ。お前をここに連れてきた理由を教えてやろう。」
テツ「え・・・!」
カズマ「俺に協力して欲しいんだ。新作のテストシューターとして。」
テツ「新作・・・。」
カズマはテツの前にあるビーダマンを見せる。
テツ「これは!」
カズマ「これこそ、新システムを搭載した試作ビーダマン。さぁ、こいつで裏切り者を始末してくるんだ。」
カズマの言う試作ビーダマンを手に取るテツ。
テツ「(そうだ。僕は今まで兄ちゃんのためにビーダマンをしてきた。だったら、コレからだって同じ。兄ちゃんが最高のビーダマンを作るために僕はビーダマンを続ければいいんだ。)」
一方その頃クロウ達は・・・。
セシル「はぁ、折角町に着いたのに・・・。」
荒野を歩いていた。
ヒスイ「仕方ないですよ。町があんな状態じゃ。」
クロウ「今日は野宿だな。」
セシル「はあぁ・・・今まさにシャドウに対して限りない怒りを感じてるわ。」
拳を握り締めるセシル。
???「ほぅ、俺達にたいして怒りを・・・。」
と、いきなり唐突に乱雑に現れた数人の男達。
ヒスイ「うわぁ!!」
セシル「な、なんなのよあんた達!?」
クロウ「さっきのセリフで分かるだろう。さっきの奴らの残りか?」
シャドウ1「いや、我々は、お前達を招待しに来たんだ。」
クロウ「招待?」
シャドウ2「そう、シャドウの闘技場にね。」
クロウ「!?」
ヒスイ「闘技場!」
クロウ「なんのつもりだ?挑戦のつもりか?」
シャドウ3「あなたも、いい加減ふっきりたいでしょう。いつまでも裏切り者として狙われるのではなく・・・。」
クロウ「つまり、正式にシャドウと決別するための?」
シャドウ1「そうだ。お前が勝てば、シャドウはもうお前を狙わない。」
クロウ「だが、俺が負ければ・・・ふん、よほど勝つ自信があるようだな。」
鼻で笑い、腕組をしてシャドウの男達を蔑むように見るクロウ。
シャドウ3「来て、いただけますね?」
クロウ「断る理由は無い。」
シャドウ3「では、案内します。」
クロウ達はシャドウの男達に連れられ、闘技場へ向かった。
シャドウ3「つきました。」
シャドウの男達につれられ、闘技場に来たクロウ達。
クロウ「ここか。」
中は、極一般的な闘技場で、殺風景な雰囲気が漂っている。
クロウ「それで、相手は誰なんだ?闘技場につれてきたんだ。当然バトルしに来たんだろ。」
シャドウ1「まぁな。」
クロウ「まさか、お前らなんて事は無いよな?いくらなんでも。」
シャドウ2「ああ。悔しいが、俺達じゃ相手にはならない。」
クロウ「じゃあ早く相手を出せ!」
シャドウ1「まぁ、そう焦るな。直に・・・。」
カッ、カッ、カッ・・・。
どこからか足音が聞こえてきた。
クロウ「ん・・・?」
足音が聞こえる方向。反対側の扉に、クロウ達は目を向けた。
シャドウ3「彼が、あなたの相手です。」
クロウ「奴が・・。」
カッ、カッ、カッ・・・。
徐々に近づいてくる足音。そしてついに、その影が見えてきた。
クロウ「・・・・。」
黙って、その影がはっきりするまで待つクロウ。そして・・・。
クロウ「!?」
セシル「え・・・。」
ヒスイ「そんな・・・っ!」
その影の正体は・・・。
クロウ「テツ・・・!」
テツ「・・・・。」
ヒスイ「ど、どうしてあなたが!?」
テツ「聞いてなかったのか?」
ヒスイ「え。」
テツ「僕が、君達の対戦相手だからだ。」
セシル「な、なんでよ!テツはシャドウを憎んでたんじゃないの!?」
テツ「あぁ、憎んでたさ。憎んでたとも・・・だが、それと今僕がここにいる事は関係ない。」
ヒスイ「どういう事ですか?」
クロウ「もういいだろう。こいつがシャドウを憎んでいようが、シャドウの仲間になろうが、俺達には関係ない話だ。問題なのは、今こいつは俺にとって倒すべき敵と言う事実だけだ。」
テツ「物分りが良いな。」
クロウ「興味が無いだけだ。俺は闘い以外に興味は無い。」
デスサイズを取り出すクロウ。
クロウ「やるぞ。」
テツ「まぁまて。」
手を出し、制止の合図をするテツ。
クロウ「なに・・・?」
テツ「悪いけど、君の前に、倒したい相手がいるんだ。」
テツはゆっくりと人差し指を突き出し、それをヒスイに向ける。
ヒスイ「え・・・?!」
テツ「君には借りがあるからな。それを返させて貰う。」
ヒスイ「え、でもあの時僕は負けて・・・。」
テツは無言でトリプルダガーを見せる。
ヒスイ「それは!」
そのトリプルダガーには無数のヒビが入っていた。
テツ「君とのバトルでついた傷だ。傷ものの勝利に意味は無い。今度こそ、無傷の勝利をもらう。」
ヒスイ「まぁ、構いませんよ。僕としてもリベンジしておきたいですし。」
テツ「リベンジ・・・か。果たして出来るかな?このビーダマンを相手に!」
テツはトリプルダガーを放り投げ、懐からビーダマンを取り出す。
ヒスイ「なに!?」
セシル「そのビーダマンは!」
テツ「新システム、ZERO2システムを搭載した新型ビーダマン。プロトツーだ!」
ヒスイ「新システム・・・?(まさか、今僕が計画中の・・・!?)」
その様子を研究室からモニターで見ているアババとカズマ。
アババ「ふふふ、なかなか面白くなりそうですね、カズマさん。」
カズマ「ちっ、テツの奴、余計な事を。」
アババ「まぁまぁ、このくらいのイベントがあった方が盛り上がりますよ。それに、あなたとしてもいいデータが入るでしょう?」
カズマ「まぁな。あのヒスイとか言う奴は、優秀な研究者らしいし、興味深いデータが取れそうだ。」
カズマはキーボードを叩き、コンピュータを操作する。
カズマ「さて、見せて貰おうか。
ヒスイ&テツ「ビー、ファイア!!」
ドンドンッ!!
合図とともに乱れ飛ぶ数々のビー玉。
ヒスイ「はあぁ!!」
しかし、若干連射で勝るジェイドがおしていく。
テツ「連射型か・・・。だが、これならどうだ?」
バッ!
テツは素早くその場を離れる。
ヒスイ「っ!」
ヒスイは素早くテツの移動先を目で追うが、既にテツは射程外まで離れていた。
テツ「ふふふ。」
カチャカチャ・・・。
いきなりテツはビーダマンをばらし始める。
クロウ「なに・・・!?」
ヒスイ「バトル中にカスタマイズ?!」
テツ「よし。」
テツの手が止まる。
テツ「デルタコア装着!プロトツーパワーモード!」
ドンッ!!
プロトツーから物凄いパワーショットが放たれる。
ヒスイ「コア自体をカスタマイズした!?」
テツ「これが、新システムZERO2システムの力だぁ!」
ちなみに、プロトツーのシールドはショルダーにつき、バイザーも変化している。
ヒスイ「ぐっ!」
ヒスイはデルタコアを装着したプロトツーに押されていく。
テツ「ふん、圧倒的なパワーの差に、連射で対抗しても無駄なんだよ。」
ヒスイ「なに・・・!」
テツ「これで、終わりだ。」
ギシギシ・・・・!!
デルタコアのホールドパーツをシメるテツ。
ヒスイ「ぐっ!リバースハンド・・・!」
テツ「遅い!!」
ドキュンッ!!
ついにテツの最大パワーのショットが放たれる。
ヒスイ「う、うわああぁぁ!!!」
バーンッ!!!
そのショットはヒスイとジェイドに見事命中。
その反動で一気に吹っ飛んでしまうヒスイ。
セシル「ヒスイ!!」
テツ「ふっ・・・最高だ・・・。」
カズマ「俺の作った新システムは。もっとも、炎呪の仕入れたデータがなければ完成はしなかったが。」
アババ「ふふふ。」
テツ「さあ、次はお前の番だ。クロウ・アスカード!」
クロウを指差すテツ。
クロウ「ようやく俺の番か。待ちくたびれたぞ。」
デスサイズを取り出し、テツと向きあうクロウ。
テツ「ふ・・・ローラーコア、装着。」
カシャッ!
プロトツーのコアにローラーがつく。そして、シールドはトリガーパッドになる。バイザーも変化。
クロウ「・・・・。」
テツ「ビー、ファイア!!」
ズドドドド!!
さっきまでとは比べ物にならないほどの連射でクロウを攻め立てるテツ。
クロウ「むっ!」
その連射に多少ひるむクロウだが、すぐに立て直す。
クロウ「直接バトルにおいて、連射はパワーに弱い・・・さっきお前がいった言葉だな?」
ドンッ!!
クロウは、パワーダブルバーストでテツの連射を全て弾き飛ばした。
テツ「!?」
そして、さらに放ったクロウのパワーショットにより、テツは吹き飛ばされる。
テツ「ぐっ・・・!」
仰向けに倒れるテツ。
そんなテツに銃口を突きつけるクロウ。
クロウ「憐れだな。」
テツ「・・・・。」
クロウ「愚かな人間は、憐れだ。」
テツ「どっちが・・・。」
クロウ「?」
テツは素早く身を翻し、その場を離れる。
テツ「は・・・あ・・・!」
そして、素早くカスタマイズ。
テツ「ロングコア装着!」
そしてシールドはヘッドとバレルにつける。
クロウ「ふん。」
ドキュッ!
試しに軽くパワーショット。
テツ「っ!」
それをかわすテツ。
テツ「いかに早いショットでも、集中すればかわせる!」
クロウ「だが、それではお前も反撃は出来ない。」
テツ「どうかな?」
ドンッ!!
再びクロウのパワーショット。
テツ「ふんっ!」
テツはそれをかわしつつ、クロウへ狙い撃ち。
クロウ「なに!?」
カンッ!!
そのショットはデスサイズに命中。だが、威力は弱いので耐えられた。
テツ「ロングコアは命中率重視。これならかわしながらでも狙える!」
クロウ「なるほど・・・。」
ず・・ずがが・・・・。
瓦礫のしたから音がする。何かが動くような。
ヒスイ「い・・ててて・・・。」
ヒスイだ。ヒスイが瓦礫のしたから這い上がってきた。
ヒスイ「ふぅ・・・・酷い目に合った。」
パンパンと服の埃をはたき、辺りを見渡す。
ヒスイ「まさか僕の計画してたシステムが既に実現化してたなんて、ちょっとショックかも・・・。まぁでも、おかげでいいヒントになったし。これでなんとか開発出来るかもしれない。」
ガサ・・・。
とりあえずその場から動くヒスイ。
ヒスイ「それにしてもここは・・・。」
まわりには、かなりボロボロだが、いろいろなコンピューターや機器がある。
ヒスイ「昔の研究室みたいなものかな・・・。さすがにコンピューターは使えないけど、でも、道具や材料は揃ってる。これなら・・・!」
ドキュンッ!バシュッ!!
クロウとテツのバトルはさらに激しさを増していた。
クロウ「はぁ!!」
テツ「うおおお!!!」
クロウのショットはかわされ、テツのショットは耐えられる。
お互いに決めてがない状況で、バトルはかなり長引いている。
さすがに疲労がたまってきたのか、息が乱れてきた。
クロウ「はぁ・・・はぁ・・・。」
テツ「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
当然、クロウよりもテツの方が疲労度は高い。
アババ「うーん、少しテツさんも疲れが増してきたようですね。」
カズマ「ふん、不甲斐ない。もうあれを使うか?」
アババ「どうぞ、ご自由に。」
カズマは、キーボード上にあるボタンを押す。
テツ「!?」
突然、天井からビームがテツに向かって落ちてくる。
セシル「な、なに!」
テツ「ぐあああああ!!!!!」
絶叫するテツ。相当体に負担がかかっているのだろう。
しかし、そのビームはダメージを与えるためのものではないようだ。
徐々にテツの体に変化が起きる。
テツ「ぐうううぅぅ!!!」
体中の筋肉と言う筋肉が発達し、大きくなる。
セシル「パワーアップしてるの!?」
クロウ「・・・・・。」
そして、ビームがおさまる。
テツ「・・・は・・・あ・・・。」
チャキ。
クロウに銃口を向けるテツ。
ドキュンッ!!
さっきとは比べ物にならないほどのパワーショットが放たれる。
しかもロングコアにより狙いは正確だ。
クロウ「ちぃ!」
止むを得ずそれをかわすクロウ。
長引いたバトルで疲労したクロウに、パワーアップしたテツ。
どう考えてもクロウの方が不利な状況だ。
テツ「勝つんだ・・・・勝ってこのビーダマンの強さを証明する・・・!兄ちゃんのために!」
クロウ「っ!」
テツ「うおおおおお!!!」
絶叫し、パワーを上げるテツ。その気力は肉眼ではっきりと見えるほどの黄色い靄を生み出していた。
セシル「な、なに・・・これ・・・?」
クロウ「(肉眼で確認できるほどの大きな気を生み出すとは・・・。)」
テツ「くらえええええぇぇぇ!!!!」
ドキュンッ!!
最大のパワーを込めたショットを放つテツ。
クロウ「っ!?」
もはやクロウにはそれを対処する術は無い。
テツの放ったショットは凄い勢いでクロウのデスサイズ向かって飛んでくる。
ズドドドド!!!
その時、どこからか怒涛の連射がテツのショットを防ぐ。
クロウ「なに・・!」
セシル「あれは!」
カキンッ!!
そしてついにテツのショットを弾いた。
テツ「ちぃ!」
一同、ビー玉が飛んできた方向を向く。
そこに・・・立っていたのは・・・。
クロウ「随分と、長引いたな。」
ヒスイ「ええ、思ったより梃子摺ってしまいました。」
ヒスイは、いままで見た事の無い緑色のビーダマンを持っていた。
テツ「ち、まだ生きていたか。」
ヒスイ「見せてあげますよ。究極のジェイド・・・・ジェイドグラスパーの力を!!」
ヒスイ「さぁ、いきますよ!ジェイドグラスパー!!」
クロウ「ジェイド・・・。」
テツ「グラスパーだと・・!」
ヒスイは、テツに狙いを定め、連射する。
テツ「うっ!」
その連射は、今までのジェイドの連射を遥かに凌駕するほどのものだ。
カンッカンッカンッ!!
テツは成す術なくその連射を全て受ける。
テツ「(威力は多少落ちているが、連射力は半端じゃない・・・!)」
ヒスイ「君のおかげです。ジェイドグラスパーが完成したのは!」
テツ「どういう・・・事だ?」
ヒスイ「僕もずっと計画していたんです。特殊コアを互換させるシステムを・・・。でも、互換出来ても、強度に問題が出てきた。当然です。コアを互換させるために、ヘッドとコアを切り離したんですから。でも、君のプロトツーを見て気づきました。腕についているリング・・・それが、ZERO2システムの鍵だったんです!」
ジェイドを掲げながら自慢気に語るヒスイ。
ヒスイ「ホールドパーツの摩擦を極限まで減らしたベアリングコア。そして、トリガーの摩擦を減らしたネオベアリングブースターの力で、限界まで連射スピードを極めた最強の連射マシンです!」
クロウ「説明はいいから、さっさと始末をつけるぞ。」
テツ「ぐっ・・・!」
すこしたじろぐテツ。
テツ「ま、負けるもんか・・・デルタコア装着!」
プロトツーにデルタコアを装着させるテツ。
テツ「パワーで一気に決めてやる。」
クロウ「無駄だ。どう足掻こうが、もうお前に勝ち目は無い。」
テツ「黙れ!!」
ドンッ!!
ホールドをめちゃくちゃにシメ、ショットを放つテツ。
クロウ「ふん。」
ヒスイ「いきますよ!」
ズドドドド!!
クロウのパワーダブルバースト、ヒスイの超連射の二段攻撃がテツを襲う。
テツ「う・・・ぐぐ・・・!!」
テツのショットは全く通じない。
ズガガガガ!!
そして、クロウとヒスイのショットがテツに命中。
テツ「うわあああ!!!」
その勢いに吹っ飛ばされるテツ。
テツ「うううぅぅ・・・!」
倒れながらも、体を押えながらなんとか立ち上がるテツ。
カズマ「ふん、不甲斐ないな。」
モニターでその様子を見ているカズマは、テツの姿を鼻で笑った。
アババ「手厳しいですね。あの子はあなたの弟ですよ?」
カズマ「関係ない。俺は強いビーダマンが作れればそれでいい。」
テツ「負けられないのに・・・負けられないのに・・・・!」
テツはよろよろと、クロウ達から離れ、壁の方へ歩いていく。
その壁には、青いボタンがついていた。
テツ「僕は・・・兄ちゃんのために・・・!」
カズマ「!?」
アババ「ほう、面白くなりそうですね。」
カズマ「まさか・・・あいつ・・・!」
カズマは、テツの行動に動揺している。
アババ「どうしました?」
カズマ「や・・・やめ・・・やめろ・・・!」
テツ「は・・・あ・・・。」
テツは、壁についているボタンに手を伸ばしている。
カズマ「やめろぉ!!!」
ガタンッ!
勢い良く立ち上がるカズマ。その勢いで椅子は倒れてしまう。
アババ「どうしました?」
アババが微笑しながらたずねる。
カズマ「・・・・!」
カズマはそんなアババを無視し、部屋を出ていく。
クロウ「一体何をする気だ・・・?」
テツはついに壁についているボタンを押した。
ポチッとな。
その瞬間、天井からさっきよりも巨大なビームがテツに命中する。
テツ「うおおおおお!!!!」
バババババ!!!
ビームを受け、更に巨大化するテツ。その姿は既に人間のそれとはかけ離れている。
クロウ「なに・・・!」
しかも、半端な巨大化ではない。テツは既に闘技場の天井に頭がつくくらいに巨大になっていた。
テツ「ぐがあああ!!!」
完全に理性を失ったテツは、ビーダマンなど持たずにめちゃくちゃに暴れまくる。
ヒスイ「くっ!なんて展開ですか!」
クロウ「止めるぞ、このまま暴れられたら、建物が崩れる。」
セシル「崩れちゃったら私達下敷きじゃない!?」
クロウ「だから、止めるんだ。」
巨大テツに向かって銃口を向けるクロウ。
クロウ「はぁ!!」
ドンッ!!!
強力なダブルバーストがテツの顔目掛けてぶっ飛ぶ。
テツ「ぐがあ!!」
バシッ!!
しかし、テツはあっさりそれを叩き落とす。
クロウ「ちっ、さすがに物量の差がありすぎるか!」
ザッ!
その時、一人の白衣を着た男が闘技場に入ってきた。
クロウ「お前は・・・?」
男はクロウ達を無視し、テツを見て愕然とする。
カズマ「遅かったか・・・。」
そうつぶやいて膝をつく。
テツ「僕は・・・兄ちゃんの・・・ために・・・!!」
そう叫び、更に暴れまくるテツ。暴れ、暴れ、暴れまくる。Get up・・・
カズマ「ぐぐ・・・!」
そんなカズマの様子を見て、セシルはある事に気づく。
セシル「あなた・・・もしかしてテツのお兄さん?」
カズマ「・・・ああ・・。」
小さくうなずき、立ち上がるカズマ。
パンッ!
その瞬間、セシルはカズマの頬を思いっきり打った。
セシル「あなたの・・・あなたのせいで・・・テツのビーダー人生が・・・!」
怒りに震えながら、カズマを責める。
カズマ「・・・・。」
カズマは少しうつむく、その叱責を甘んじて受けている。
セシル「テツはね、今まであなたを助ける事だけを考えてビーダマンをしてきたの!そして、今もあなたのビーダマンを完成させるため・・・ただそれだけのために私達と戦って、そして今苦しんでるのよ!」
カズマ「・・・分かってるさ・・・・。俺は最低な人間だ。あの日・・・シャドウに負けたあの日から、俺は狂ってしまった・・・全てを利用し、強さだけを追い求める狂人となってしまった・・・。」
バンッ!!
カズマは、自分で自分の頬を思いっきり殴った。
カズマ「俺はバカだ・・・失いそうになって・・・・初めて、本当に大切なものに気づくなんて・・・。」
ズドーンッ!!
テツの攻撃が地面を揺らす。
カズマ「くっ!」
クロウ「ちぃ!」
ヒスイ「ど、どうすれば・・!」
カズマはテツに向かって叫ぶ。
カズマ「テツ!もうやめろ!やめるんだ!!」
テツ「僕は・・・兄ちゃんのために・・・!」
テツは聞く耳を持っていない。目は血走っており、何も見えていないようだ。
カズマ「俺のせいなのか・・・俺の・・・!」
クロウ「おい、どういうこった?」
ヒスイ「テツはなんで、あんな事に!」
カズマ「・・・あの壁に備え付けていたボタン・・あれは肉体を極限まで強化する装置・・・いざと言うときのための切り札だったんだ・・・。あれだけは使うなと言ったのに・・・!あいつは、昔から俺の言う事はなんでも聞いていたのに。最後の最後で、俺の言う事を無視しやがった・・・!全ては俺のために・・・!俺が最強のビーダマンを作るために・・・!」
クロウ「だが、この行為は無意味だ。早く止めなければ。」
ヒスイ「そうですよ!このままじゃ、テツも危ないかもしれません!」
セシル「何か、テツを元に戻す方法はないの?」
カズマ「解除装置なら・・ある!」
クロウ「ほんとか!?」
カズマ「だが、それは今、テツの後ろの壁にある。今のテツの後ろにまわりこむのは、難しい・・・。」
テツはむちゃくちゃに暴れまくっている。あれに近づくのは無謀だ。しかし、後ろの壁にまわりこむには、テツのすぐ横を通り過ぎないといけない。
カズマ「・・・・・。」
クロウ「よし、俺が行こう。」
一歩前に出るクロウ。
ヒスイ「え。」
クロウ「あの程度の動き、俺なら簡単に見切れる。」
走るために構えるクロウ。
カズマ「待て。」
しかし、それをカズマは止めた。
クロウ「なんだ?」
カズマ「俺が行く。」
クロウ「なんだと・・・?」
カズマ「これは、俺の責任だ。テツは、兄として、俺が救う。」
クロウ「ほう・・・。」
カズマ「それに、俺はテツの動き、癖、何もかも知り尽くしているんだ。ここは俺が行ったほうが得策だ。」
ヒスイ「分かりました!じゃあ僕達は、君の援護にまわります!」
カズマ「頼むぜ。」
ダッ!
テツ目掛けて走り出すカズマ。
テツ「うが・・!」
既に野獣と化しているテツの目はカズマの姿を捉えた。
テツ「うがあああ!!!」
しかし、テツの目には、それが誰なのかは分からない。分かっているのは、認識しているのは、それが自分の敵だと言う事だけ。
テツはむちゃくちゃに腕を振り回し、カズマの進行を阻む。
カズマ「くっ!」
ヒスイ「ジェイドグラスパー!!」
ヒスイは、手首のスナップをきかせてジェイドを宙へ放り投げる。
そして手のひらを上にして、ジェイドをキャッチ。
ヒスイ「リバースハンドミッション!!」
邪魔となる手がなくなり、ジェイドのマガジンはがら空きだ。そこ目掛けて片方の手でビー玉を凄い勢いで装填。そしてもう片方の手でトリガーを押しまくる。
ヒスイ「うおおおおおお!!!!」
ズドドドドド!!!
ヒスイの猛連射がカズマの横をすりぬけ、テツの手に乱雑にヒットする。
テツ「ぐううぅぅ・・・!!」
一瞬ひるむテツ。
その隙をついて走り出すカズマ。
テツ「ぐあああ!!!」
しかし、テツはそれを逃さずに、カズマを押しつぶそうと、手のひらを叩きつけ・・・!
セシル「いっけー!!」
ドンッ!!
セラフィックホーネットから放たれた玉がテツの人差し指にヒット。
僅かに右にずれる人差し指。その事で、カズマは間一髪潰されずにすんだ。
カズマ「は・・あ・・!」
カズマは息を切らしながらも走り続けた。
そして、ついに、テツの後ろにまわりこみ、解除用のボタンを目の前にする。
カズマ「これで・・止まる。」
カズマは解除用のボタンに手を伸ばし・・・。
ふわ・・・。
ここで、カズマは重力を感じなくなった。
カズマ「え・・・・。」
腰には、何かが巻き付いているような感覚。
カズマ「うっ!」
カズマは、テツの右手に捕まってしまっていた。
カズマ「しま・・・た・・・。」
テツ「ぐが!」
カズマを握り締め、ニヤリと笑うテツ。
クロウ「千載一遇のチャンス・・・逃したか。」
ヒスイ「ど、どうすれば・・・!」
巨大テツに囚われてしまったカズマ。
もはや、クロウ達に成す術はないのか!?
ヒスイ「どうすれば・・・このままじゃ・・・!」
セシル「もう、ダメなのかな・・・?」
完全に諦め切っているヒスイとセシル。ていうか、カズマの心配jはしないのね(笑)
クロウ「さて、やっと動けるな。」
デスサイズを構えるクロウ。
セシル「え?」
ヒスイ「どういう事ですか?」
クロウ「ようやく、デスサイズで制御ボタンを狙えるという事だ。」
狙いを定めるクロウ。
ヒスイ「まさか・・・今までの事は全て予測して!?」
クロウ「当然だ。」
ドンッ!!
答えて、クロウはビー玉発射。
ビー玉は、テツの横をすり抜ける。
カンッ!!
壁にぶつかったクロウのショットはそのままイングリッシュ反射して、制御ボタンに命中。
その瞬間、再び天井から青いビームが落ちてきてテツに命中。
テツ「あああああ!!!!!」
突如苦しみだすテツ。カズマを放り投げ、頭をかかえる。
カズマ「ぐっ!」
なんとか無事に着地するカズマ。
テツ「いうううううう!!!」
徐々に元の大きさに戻っていくテツ。
カズマ「やった・・・のか?」
テツ「う・・・。」
完全に元に戻ったテツはそのまま気を失ってしまった。
カズマ「テツ!」
仰向けに倒れたテツに駆け寄るカズマ。
カズマ「おい、しっかりしろ!」
必死でゆすぶるが、テツはピクリともしない。
ヒスイ「大丈夫、気を失ってるだけですよ。」
カズマ「・・・・・・・。」
テツの頬にポタポタとしずくが落ちる。
それはカズマの涙だ。
カズマは倒れているテツの顔を見ながら、泣いていた。
カズマ「ごめん・・・ごめんよ、テツ・・・兄ちゃんが、自分勝手だったせいで・・・!」
その時、テツの目がゆっくりと開いた。
テツ「兄・・・ちゃん・・・。」
カズマ「テツ!?」
テツ「ごめん・・・ね・・・僕・・・負けちゃった・・・。」
カズマ「何言ってんだよ・・・悪いのは全部俺だ・・・お前は何も悪くない・・・。謝るのは、俺の方なんだ。」
テツ「兄ちゃん・・・。」
カズマ「ごめんな。今まで、辛い思いをさせて・・・。」
???「ふん、所詮あなたも人間と言うわけですね。」
突如、後ろから声をかけられた。
振り向くとそこにはアババが立っていた。
カズマ「貴様・・・!」
アババ「人間らしい心を持ったものに、用はありません。消えてください。」
いつの間にか、アババのまわりに大勢のビーダーが集まり、ビーダマンを構える。
クロウ「それはこっちのセリフだ。」
アババ「なんですって?」
クロウ「これで俺はシャドウと決別が出来たわけだ。そう言う事だから、貴様こそ俺の前から消えて貰う。」
クロウはデスサイズを構えて、パワーショットを放つ。
ドーンッ!!
クロウのパワーショットにより、アババとその周りのビーダー達は一気に吹っ飛ばされてしまった。
アババ「ぎゃああああああああ!!!!!」
・・・・・。
・・・。
闘技場を出て、少し歩き、荒野へ出た。
ヒスイ「それじゃ、ここでお別れかな?」
分岐点にたどり着き、足を止める五人。
テツ「そうだね。」
セシル「それで、これからどうするの?」
テツ「・・・ビーダマンは続けるよ。今度は、自分のために。自分が納得のいく強さを手に入れるまで。」
カズマ「そして俺は、テツの夢を、サポートしようと思っている。」
ヒスイ「そうですか。頑張ってください!」
テツ「うん!」
ヒスイとテツは固く握手をかわす。
二人の間に芽生えた友情は、この先、二度と出会わないとしても、決して変わる事は無いだろう。
クロウ「それじゃ、行くぞ。いつまでも別れを惜しんでてもキリがないからな。」
ヒスイ「そうですね。」
テツ「うん。行こう、兄ちゃん。」
カズマ「ああ。」
再びそれぞれの道に向かって歩き出す五人。
人生と言うものは、不思議なものである。
それぞれがそれぞれに、全く違う道を進んでいても、それぞれがそれぞれに影響しあっている。
例えもう二度と会えなくても、その出会いはきっと、いつまでもその道に影響していく、どんなに小さな事でも影響していくのだ。
あるいは、一度もあった事が無いような人にも知らず知らずのうちに、影響されているのかもしれない。
だから、僕らは歩くのだ。人生と言う長い長い道のりを。
その先にあるものは、死と言う悲しい終焉しかない。
それでも僕らは歩く。大事なのは終焉ではない。終焉にたどり着く過程だから。
その瞬間を、どうか大切にしてほしい。
何が起こるか分からない人生を、楽しんで欲しい。
例え辛い事や苦しい事が起きても、それは、その人生を歩いている自分にしか味わえないものだから、大切にしてほしい。
楽しい事は、楽しいって事だけじゃないって事に、気づいて欲しい。
そこに、意味なんか無い。生きる事に意味なんか無い。だけど・・・・意味なんて、元々必要ないのだから。
だから、僕らは歩き続けるのだと・・・・。
完
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