第36話「ローレン美術館窃盗事件!」
とある荒野。クロウ達は次なる町を目指して歩いていた。
セシル「ふぅ、もう休まない?随分歩いてきたし。」
ヒスイ「そうですね、日も傾いてきましたし・・・。」
クロウ「仕方ないな。」
この日は特に何も起こる事無く、クロウ達は就寝についた。
夜中、静まり返った荒野に寝袋を広げて安らかに眠るクロウ達。
その時、どこからか聞こえた物音に気づき、クロウは目覚めた。
クロウ「ん・・・・。」
見ると、何者かの人影がクロウ達の荷物をあさっていた。
クロウ「誰だ!」
瞬時に身を起こすクロウ。
???「っ!」
人影はビクッと体を震わせ、そのまま立ち去ってしまう。
クロウ「待て!」
慌てて追いかけるクロウだが、夜中と言う事もあって、見失ってしまった。
クロウ「ち・・・・。」
仕方なく戻るクロウ。
セシル「どうしたのぉ・・・。」
戻って見ると、さっきの騒ぎに気づいたのか、セシルとヒスイが起きていた。眠そうに目を擦っている。
クロウ「何者かが、俺達の荷物をあさっていた。」
ヒスイ「えぇ?!」
セシル「またぁ・・・!?」
ヒスイ「それで、その犯人は?」
クロウ「見失った・・くそ。」
ヒスイ「とにかく、荷物を確認しましょう!」
各自、自分達の手荷物を確認する。
ヒスイ「えっと・・・ジェイドグラスパーに、予備パーツ・・・工具にセメダイン・・・うん、全部揃ってますね。」
セシル「私も、特に無くなってるものはないかな・・・?」
クロウ「金は無事なのか?」
セシル「うん、貴重品はいつも肌身離さず持ってるから。」
ヒスイ「クロウの方はどうなんですか?」
クロウ「あぁ、何も盗まれてはいないようだ。」
ヒスイ「え・・。じゃあ、あのドロボーは一体何が目的だったんでしょう?」
セシル「ほんとにそんな人いたの?寝ぼけてたんじゃないの?」
クロウ「お前じゃあるまいし、そんなはずはない。」
セシル「何よそれ~!」
ヒスイ「う~ん、クロウがすぐに気づいたから、盗む暇がなかったのかもしれませんね・・・。」
3人はしばらく考えていたが、時間が時間と言う事もあり、眠気に負け、そのまま眠ってしまった。
・・・・。
・・・。
そして翌日。
クロウ達は再び歩き出した。次なる目的地へ向かって。
セシル「あ。」
セシルが小さな声を上げる。
そこには、三つの分岐点があったのだ。
セシル「えっと・・・なになに・・・。」
三つの道には立て札があり、目的地を記しているようだ。
しかし、そのうちの右と真ん中には『×』と書かれているだけで、目的地が書いてあるのは左の道だけだ。
セシル「何よ、これだけ分岐点があるのに一つしか道が無いんじゃない。」
ヒスイ「えっと、このまま行けば『ゴルドン』と言う町にいけるみたいですね。」
セシル「まぁ、一刻も早く町にいきたかったし、迷う事も無いわね。」
クロウ「異存は無い。」
と言うわけでゴルドンへ向かう事にしたメンバー。
しばらくすると、町が見えてきた。
セシル「あ、やっとついたね~!」
ヒスイ「ええ。」
3人は躊躇する事無く、軽い足取りでその中へと入っていく。
ヒスイ「・・・・なんか、物々しい雰囲気ですね。」
入ってすぐにその異変に気づいた。
昼も近いと言うのに町中は全く活気が無く、かわりに警備員と思われる人達が神妙な顔つきでうろついているのだ。
ヒスイ「何か、あったんでしょうか?」
しばらく町の中をいろいろと探索していたのだが、警備員の姿が視界から離れる事は無かった。
警備員は例外なく、皆緊張した顔つきで、その事件の重大さを物語っている。
その警備員の中で、クロウ達はある見知った人物を見つけた。
クロウ「あいつは・・・。」
ヒスイ「神鷹さん!」
ヒスイの声に気づいたのか、ツバキはこちらを振り向き、ニッと笑い駆け寄ってきた。
ツバキ「よぉ、久しぶりだな、お前ら!」
片手を上げ、気さくな笑顔で言う。さっきまで神経を張り詰めていたのが嘘のようだ。
ツバキ「どうしたんだよ、こんなところで?」
ヒスイ「いやぁ、僕らは旅の途中、たまたまここに来ただけで・・・。」
セシル「神鷹さんこそ、どうしてここに?」
ツバキ「この町、ゴルドンは、俺の勤務している自警団の本部があるんだ。」
セシル「へぇ。」
ツバキ「それにしても、あれから随分長い間グラビトンビレッジに滞在してたんだな?」
ヒスイ「え?」
ツバキ「グラビトンビレッジに滞在してたんだろ?だってお前ら飯食い終わった後グラビトンビレッジに向かって行ったじゃねぇか。」
ヒスイ「えぇ、まぁグラビトンビレッジに滞在してた事には間違いはないんですが・・・。でもグラビトンビレッジを出たのは何日も前ですよ。」
ツバキ「じゃ、なんで今更ゴルドンに来てるんだ?(汗)」
セシル「どういう事?」
ツバキ「・・・・ちなみに、最短ルートだとここからグラビトンビレッジまで徒歩で2時間もかからないぞ?」
徒歩で二時間・・・約10Kmくらいだろう。
ヒスイ「え・・・・僕らグラビトンビレッジを出てから何週間もかけてここまでたどり着いたんですけど・・・。」
ツバキ「そうとう遠回りしてたみたいだな・・・。」
呆れ顔になるツバキ。
ヒスイ「それより、何か事件でもあったんですか?随分警備が厳しいみたいですけど。」
ツバキ「あぁ、ちょっとな・・・。」
と、ツバキがだるそうに口を開こうとしたとき。
警備員「神鷹さ~ん、ちょっといいですか~!!」
同僚であろう警備員に声をかけられた。
ツバキ「おっと、呼ばれちまった。わりぃ、またあとでな!」
片手を上げ、呼ばれたほうへ走っていくツバキ。
クロウ達はその後姿をただ眺めている事しか出来なかった。
町で起こった事件については気になるのだが、時間が経つ事によっておとづれる空腹には敵わない。
ヒスイ「そろそろお昼ですね。」
セシル「私もうお腹ぺっこぺこ~。」
ヒスイ「鋼の砦や、荒野では、買いだめしておいた保存食しか食べてませんでしたからね。たまにはいいものを食べないと。」
セシル「じゃあ今日はちょっと奮発して、ステーキでも行く?」
ヒスイ「いいですね~!」
これから行なうイベント、食事に胸躍らせる二人。
クロウ「・・・。」
そんな二人に、クロウは同感するでもなく、呆れるでもない目をする。
とまぁそんな感じで3人は、町にあるちょっと豪華なレストランへと足を運んだ。
しかし・・・。
セシル「えぇ~!!」
レストランの前で、セシルは不満そうな声を上げる。
セシルの前には、タキシードを来た紳士っぽい人が申し訳なさそうに頭を下げている。
紳士「申し訳ありません。本日はこれで休業とさせていただいておりますんで・・・。」
セシル「そんなぁ・・・。」
これで三軒目だった。どういうわけか、あれからいろいろとレストランをまわっているのだが、どこもお休みのようだった。それどころか、この町にあるお店と言うお店、家と言う家は皆しまっている。
お店の中にチラッと、警備員がいるのが見えた。
ヒスイ「取調べでもしてるんでしょうか?」
クロウ「ああ・・・。」
セシル「そんな事堂でもいいよ。お休みならもうここに用はない!」
ご機嫌斜めのセシルは、そのまま踵を返す。
紳士「本当に申し訳ありません。」
セシルの背中に向かって、もう一度深々と頭を下げる紳士。
ヒスイ「もういいですから、頭を上げてください。」
ヒスイは、一応フォローし、既に歩き出しているセシルの後を追う。クロウもそれに続いた。
セシル「まったく、なんなのよもう~。」
町の中を歩きながらセシルはブツブツと文句を言っている。
ヒスイ「まぁまぁ。一応、食料のストックはあるんですし、そこら辺で食事にしましょう。」
セシル「い・や・っ!せっかく町についたのにまたまともなもの食べられないなんて耐えられない!」
世の中には雪山で遭難し、食料云々でもめている人達もいるというのに・・・。これだから金持ちのおじょうちゃんは。
ブオオオオオ!!!
その時、クロウ達の前を大きな猫の形をした車が勢い良く現れ、急停止した。
セシル「きゃっ!な、な、なに!?」
いきなりの事に、尻餅をつくセシル。
???「よーし、じゃあ今日はここで開店よ~!」
中から元気のいい大人の女の人の声が聞こえる。
???「でもミエさん、ここ町の中ですよ?いいんでしょうか・・・・。」
ちょっと気の弱そうな女の子の声も聞こえてきた。
ミエ「だいじょーぶだいじょーぶ!」
???「それより、見失ったヤマト達の心配はせぬのか・・・。」
年寄りらしき声も聞こえてくる。
ミエ「それもだいじょーぶよ!ウェン君とリー君が必ず見つけて、私達にすぐ知らせてくれるから!今は彼らを信じて、私達は商売商売!」
そんなやりとりが聞こえた後、車の扉が開く。
ミエ「それじゃリエナちゃん、椅子と机運んでね~。」
リエナ「はい。」
女の子が椅子を持って車の中から出てくる。
続いて机を持ったデブ猫も出てきた。
ほんの三分としないうちに車およびそのまわりはオープンカフェへと変貌してしまった。
あまりの素早さに呆然と見ている事しか出来なかったクロウ達。
ヒスイ「な、なんか、知りませんが・・・。」
セシル「お店、みたいね・・・。」
ヒスイ「とにかく、行ってみましょうか?」
セシル「ええ。」
3人は、テーブルの上を拭いている女の子に声をかけた。
ヒスイ「あの・・ここは・・・カフェなんですか?」
リエナ「ええそうですよ。移動オープンカフェ、キャットカフェです。」
女の子はにっこり笑う。
セシル「じゃあ、せっかくだからここで食事しようか?」
ヒスイ「そうですね。」
リエナ「あ、ありがとうございます。三名様ですね?」
ヒスイ「はい。」
リエナ「それでは、少々お待ちください。」
リエナはメニューをクロウ達に渡すと、店の中に入って行った。
ヒスイ「なかなか感じのいい子でしたね。」
セシル「うん。・・・さて、何食べようかな~?」
セシルは、意気揚々とメニューを開く。
セシル「え~っと、アジの開き定食に、アジサンド、アジライスにアジ丼・・・・アジラーメンに・・・・。」
徐々にセシルの口調が遅くなる。
セシル「アジうどん・・・。」
ヒスイ「アジしかありませんね(汗)」
クロウ「・・・・。」
しばらくして、リエナがおしぼりと水を持ってやってきた。
リエナ「ご注文はお決まりでしょうか?」
セシル「私は、アジハンバーグ定食ね。」
ヒスイ「僕はアジサンド。」
クロウ「アジチャーハン。」
リエナ「かしこまりました。」
頭を下げ、店の中へ戻るリエナ。注文をミエに伝えているのだろう。
そして数分後。クロウ達の前に料理が運ばれてきた。
テーブルの上でおいしそうな香りを漂わせている。
セシル「おいしそ~、いただきま~す!」
空腹は最高の調味料とは良く言ったものである。さっきまでアジばっかりで多少引いていた事などすっかり忘れ、3人は目の前の料理と格闘した。
セシル「おいし~!」
ヒスイ「えぇ、意外といけますね。」
あっという間に平らげてしまった。
食事を終えたクロウ達は再び街の中を探索する。
ヒスイ「相変わらず、警備員がはびこってますねぇ・・・。」
セシル「うん、町の人達、あまり外に出てないみたいだし。」
ヒスイ「気のせいか、なんか僕ら警備員ににらまれてるみたいですし・・・。」
クロウ「まぁ、町の外の人間を疑うのは自然な事だしな。」
ドシュッ!バシュッ!!
と、その時、近くの広場でビー玉がぶつかり合う音が聞こえてきた。
ヒスイ「あ、バトルやってるみたいです。」
セシル「なんか安心するよね~。こういう普通の光景見てると。」
クロウ「ああ。」
ヒスイ「ちょっと行って見ましょう!」
クロウ達は、子供達のバトルを見学しに行った。
さすがにバトルに参加するのは大人げないだろう。
子供A「行くぞ、ユンカーバイオレット!」
子供B「ブラックブラッド!」
競技は、バトルホッケーのようだ。二人の持つオリビーがいいバトルをしている。
ヒスイ「へぇ、なかなか興味深い改造ですね・・・。あの子のビーダマンは、可動式ラバーでドライブ、非ドライブを選べるようにしてありますね。そして一方は、フットとホールドパーツを直結してフットの広がりでパワーを調節出来るようにしてありますね。単純ながらもいい改造です。」
セシル「ふ~ん。」
あまり興味なさそうなセシル。
ヒスイ「あ、そだ。改造で思い出しました。セシルちゃん、ちょっとセラフィックホーネットを貸して下さい。」
セシル「え?いいけど・・・。」
セシルはヒスイにホーネットを渡す。受け取ったヒスイは、カチャカチャとホーネットに手を加える。
ヒスイ「これでよし。」
セシル「何をしたの?」
ヒスイ「セラフィックホーネットをZERO2用に改造したんですよ。これでカスタマイズの幅が広がります。」
セシル「へぇ・・・よく分からないけど、ありがと、ヒスイ!」
ヒスイ「(よく分からないんですか・・・(汗))」
クロウ「俺も、デスサイズのメンテでもするか・・・。」
と行って、クロウはバッグからデスサイズを取り出し・・・。
クロウ「ん?」
クロウは一瞬怪訝な顔をして、バッグからデスサイズではなく、青く輝く石を取り出した。
クロウ「なんだこれは・・・?」
セシル「あ~、どうしたの?その宝石。」
ヒスイ「随分高そうですけど。」
クロウ「いや、分からん。何故かバッグに入ってた。」
ヒスイ「えぇ?なぜかって・・・なんでそんなものが?」
クロウ「知るか。」
セシル「でも綺麗ね~。見た感じ、3億ビーロはくだらないと思うよ?」
ヒスイ「さ、さ、3億ビーロって・・・・。」
セシル「うん、だってこう言う宝石、前にも見た事あるし。」
クロウ「そんなバカな。そんなものが俺のバッグに紛れ込んでるわけないだろ。」
セシル「それはそうだけど・・・。」
???「見つけたぞ!あいつだ!!」
その時、どこからかけたたましい声が聞こえてきたかと思うと、おびただしい数の警備員達がクロウ達を取り囲んだ。
セシル「な、な、な、なに!?!?」
ヒスイ「なんなんですか、あなた達は!?」
クロウ「・・・・・。」
そして、一人の警備員がクロウを指差し、こう叫ぶ。
警備員「ローレン美術館美術品の窃盗罪で、お前を逮捕する!」
クロウ「なに・・・!」
つづく
次回予告
ヒスイ「あわわ~!クロウが捕まっちゃいました~!!」
セシル「クロウが窃盗犯だなんて、絶対何かの間違いよ!よーっし、私達が絶対に真犯人を突き止めてやるわ!」
ヒスイ「で、でもどうやって?」
セシル「と、とにかく聞きこみあるのみよ!」
クロウ「次回!『アリバイと濡れ衣』極めろ、強さへの道!」
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