爆・爆ストーリー ZERO 第40話

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第40話「仕組まれたミスリード」
 ゴルドーの屋敷の前。
 ツバキは、静かに扉をノックする。
ツバキ「ゴルドー市長!自警団のものです!いらっしゃいますか!」
ゴルドー「はいはい、なんのごようですかぁ~。」
 ドア越しからゴルドーの声が聞こえ、ゆっくり扉が開く。
 その瞬間、ツバキとクロウ達は強引に家の中に入る。
ゴルドー「な、ななななななんなんですかぁ!?」
 ツバキは、ゴルドーに手帳と捜査令状を見せ付ける。
ツバキ「ゴルドー市長。ちょっと部屋の中を見させていただきますよ?」
ゴルドー「な、なんの権利があって、そんな・・・!」
ツバキ「いくぞ。」
 ツバキ達は、困惑するゴルドーにかまわず、ゴルドーの部屋へ向かった。
ゴルドー「なんなんですかぁ、きぃみたちはぁ!!」
 憤慨するゴルドーを完全に無視し、部屋の中を探る。
ツバキ「それで、どこだい、その看板って言うのは!」
セシル「これです!」
 セシルが『×』と書かれた看板を大量に持ってくる。
ツバキ「これが・・・。」
ゴルドー「な、なんですか、その看板は・・・!」
ツバキ「とぼけるな!」
ヒスイ「ネタはすべてあがってるんですよ!」
ゴルドー「な、なにを・・・なんのことをいっているのでぇすか!?」
ヒスイ「あなたが、犯人ですね?人魚の涙を盗んだ。」
ゴルドー「何を証拠に・・・。」
ヒスイ「この部屋にあった看板・・・。あれは、僕らがこの町にくる途中、何度も見てきました!」
ゴルドー「だから、なんだって・・・?」
ヒスイ「あなたは僕らが来る事を、あらかじめ知っていたんでしょう?そして、僕らの道のりにこの看板を仕掛け、グラビトンビレッジとゴルドンとの道のりをぐるぐるぐるぐると回るようにさせた。」
ツバキ「(なるほど、それでこいつらが何日もかけてグラビトンビレッジからゴルドンまで歩いたってわけか。)」
ゴルドー「何の事をいって。」
ヒスイ「そう、あなたはそうやって時間稼ぎをして、犯人がクロウになるように周到に盗みの用意をした。クロウとよく似た服を作り、自分の姿を町の人たちに見せつつ、うまく人魚の涙を盗めるように。」
ゴルドー「ぐっ・・・何故私がそんな事をしなければならない!動機が、ないではあぁりませんかぁ!」
セシル「動機ならあるじゃない!」
ヒスイ「きっとあなたは、人魚の涙を美術館ではなく、自分の手元に置いておきたいと思った。でも、いくら市長でもそんなわがままは通用しない。だから、盗んだんです。そして、その宝石をクロウのバックの中に入れた。これが、あなたのしたことの、全てですね。」
ゴルドー「ぅ・・ぁ・・。」
ツバキ「(あ~、なるほどぉ~。確かに一応筋が通って・・・あれ、ちょっと待て!?)」
 ツバキはちょっとした疑問を抱き、ヒスイに耳打ちする。
ツバキ「おい、それで?市長が犯人だって言う証拠は?」
ヒスイ「え?だから、この看板。」
ツバキ「いや、それは証拠にはならんだろ(汗)」
ヒスイ「そうなん・・・ですか?」
 きょとんとするヒスイ。ツバキは、開いた口が塞がらなかった。
ツバキ「まさか、お前、それだけのことで・・・。」
ヒスイ「えぇ・・・まぁ。」
ツバキ「(それは推理じゃなく、ただの憶測・・・いや、ガキの妄想じゃねぇか(汗))」
ゴルドー「わ、私は・・・犯人じゃない・・・犯人じゃないのに・・・!」
ツバキ「(も、もっとガキがいた!?てか、今の推理突っ込みどころ満載じゃねぇか!なんで反論できないんだ!?!?)」
ヒスイ「とにかく、これで真犯人が見つかり、クロウの無実が証明されたわけですね!さぁ、神鷹さん!逮捕をお願いします!」
ツバキ「い、いや・・・。」
 口を濁すツバキ。
ツバキ「(あ~、くそっ!もっと考えて行動すりゃよかったぁ~!!いつもの悪い癖でつい勢いだけで行動しちまったぜ~!!自信満々なこいつらの態度や、隊長の命令についのせられちまったんだなぁ・・・。あぁ、隊長になんて説明しよう・・・。)」
 まぁ、新米刑事ゆえの過ちって所だな。
 とかなんとかやってるうちに、扉が勢いよく開き、リカルドが突入した。
リカルド「話は全て聞かせてもらった。」
ツバキ「た、隊長・・・!」
リカルド「ゴルドー市長。まだ証拠は不十分ですが、容疑がある。署でお話を聞かせてもらいましょうか?」
 ゴルドーに近づくリカルド。しかし。
クロウ「待て。」
 今まで黙っていたクロウが口を開く。
リカルド「なんだ?」
クロウ「ふん、ようやく主役の登場だな。」
リカルド「どういう意味だ?」
クロウ「これに見覚えがあるだろう?」
 クロウはセシルから看板を引っ手繰る。そして、看板の裏を見せ付ける。
ツバキ「これは・・!」
 看板の裏には、何かのマークが刻まれていた。
ツバキ「自警団のマーク。」
クロウ「そう。この看板はお前ら自警団の所有物だ。」
ツバキ「そうか、思い出した。この看板は、自警団の生活安全課の看板だ・・・!」
セシル「なんで、そんなものがここに?」
クロウ「誰かが持ち出し、ここにおいたんだろう。」
ツバキ「この看板を持ち出せるのは、生活安全課の人間と・・・隊長だけ。」
リカルド「・・・。」
クロウ「そいつが、この看板を使って、俺たちの足取りを止めていたんだ。俺は以前自警団に協力したことがあった。その事で俺の情報も自警団内にある程度あったろうしな。」
セシル「それとここにあるのと、どう関係があるのよ?」
ツバキ「持ち出すのは簡単だけど、戻したとき、どのような用途でそれを使ったのか、レポートをかかなきゃいけないんだ。」
クロウ「ああ、だからといって、いつまでもそこにおいとくわけにはいかない。おそらくそいつは、ボディガードとかなんとかいう大義名分で、この部屋に看板を隠したんだろう。」
リカルド「ふん、結局何がいいたいんだ?さっきから聞いてれば、事件とは関係のないことをだらだらと・・・。」
クロウ「・・・そして、恐らく。」
 クロウは、机の上においてある人魚の涙を手に取る。
クロウ「こいつは偽者だ。」
 バンッ!!
 思いっきり床にたたきつけた。
ツバキ「なに?!」
ゴルドー「あわゎゎ~!」
リカルド「なにをするんだ!」
 粉々になる人魚の涙。
クロウ「・・・なぜ、宝石がこの程度の事で砕けるんだ?」
リカルド「!?」
クロウ「どう見てもガラス玉だな、これは。」
ツバキ「な、なんで分かったんだ!?」
クロウ「セシルの証言でな。ゴルドーは、何時間も人魚の涙に口付けしていた・・・。何時間も・・・。宝石ってのは石なんだ。しかも、こんな何十カラットもありそうな人魚の涙となれば、そうとうな重量がある。そんな石を、何時間も手に持ったままでいられると思うか?」
ゴルドー「そういえば。」
リカルド「だからどうした?偽者だからなんだというんだ?」
クロウ「何故気づかなかった?いや、気づかなかったフリをしていただけだろうが。」
リカルド「なんだと?」
クロウ「この偽者の人魚の涙に触れたのは、俺とリカルドとゴルドーの三人だけ。俺はともかく、お前ら二人は人魚の涙を幾度となく見てき、そして実際に触れていたはずだ。ゴルドーの場合は、あれだけ大事にしていたんだ。本気で気づかなかった、ただのバカだと考えるのが打倒だろう。だが、お前が気づかないというのは不自然だ。」
リカルド「それはどうかな?俺だって人間だ。間違える事はある。」
クロウ「確かにな。だが・・・町の人の証言、聞いたぜ?あの時の人影は確かに黒い服を着ていたが、体格は俺よりも大きく、がっちりしていたと。そして、俺があの夜見た人影も、まさにそれだった。」
リカルド「ふん、バカな。所詮単なる憶測だな。それだけではなんの証拠にもならない。」
クロウ「だが、俺は確かに見たんだ。お前と良く似た人影が俺のバックの中に宝石を入れるところを!」
 ちょっと必死になって言う。
リカルド「ほう・・・。あんな暗闇の中、見えるわけがないだろう?」
クロウ「確かにお前の言うとおりだ。・・・本当は、はっきりと人影を認知できたわけじゃない。」
リカルド「ふん、所詮子供だ。・・・困ったものだな、口からでまかせを言って、人を犯人扱いするとは。」
 リカルドは勝ち誇ったように笑みを浮かべる。しかし、クロウの表情は崩れない。それどころか、余裕さえ感じられる。
クロウ「だが・・・何故分かった?あの日の・・・俺のバッグに宝石を入れられた時の様子が!」
リカルド「・・・っ!」
 目を見開くリカルド。それが全てを物語っていた。
クロウ「何が目的かは知らないが、お前はある理由でローレン美術館の人魚の涙を奪おうと思った。警備の指揮をとり、警備システムの管理も自由自在のお前なら、そう難しい事ではなかっただろう。恐らく、自警団員の中にも協力者はいるだろうしな。だが、ただ盗んだだけではすぐに足が付く。いくら自由に出入りできるとは言え、形跡は残るからな。怪しまれて調べられてはたまらない。

そんな時、俺たちがグラビトンビレッジを出たという情報を得た。そこでお前は、俺に罪をなすりつけようと考えた。あの看板を使って俺たちを遠回りさせながらゴルドンへ向かうように仕向け、その間にお前は俺と同じような服を作り、盗みに入った。わざと他人に見られるようにな。
そして、見事宝石を盗んだお前はすぐにそのレプリカを作った。当然だ。ものを盗みその罪をなすりつけても、それが元の場所に戻されては意味がないんだからな。
レプリカ宝石を俺のバッグに入れ、そして俺を犯人に仕立て上げ、レプリカ宝石を美術館に納め、何事もなかったかのようにする。それがお前の計画だった。」
リカルド「・・・・。」
クロウ「だが、計算違いが起きた。ゴルドーがレプリカ宝石を自分のものにしようとした事、そして、俺に保釈金が支払われた事。
誰にも触れられないで、美術館に展示されるだけならともかく、人の手が直接届くところに渡ってしまったら、レプリカだと気づかれるのは時間の問題だ。そして、俺が刑務所から出れば、真犯人探しに躍起になり、真犯人の手掛かりを掴むかもしれない・・・。そう思ったお前は、ターゲットを俺からゴルドーへ変え、犯人に仕立て上げようとした・・・。そうだろう?
さっき神鷹が俺達に近づいてきたとき、通信機を持っていた。お前の命令だな?尾行させたこと、ゴルドーの家へ入るのに協力させたことも。
だが、残念だったな。その行為が逆に自分が犯人だと証言してるようなものだったんだからな。」
リカルド「くっ・・・!」
ツバキ「隊長・・・!」
 リカルドは、クロウを睨み、不敵に笑う。
リカルド「ふん。・・・大人しく捕まっていればよかったものを・・・!」
 シャドーリボルバーを取り出し、銃口をクロウの顔に向ける。
クロウ「認めるんだな?」
 まったく動じず、淡々と言う。
 ドキュンッ!!
 その瞬間、シャドーリボルバーからビー玉が飛び出す。そのショットはクロウの頬をかすめ、壁にめり込む。
リカルド「これは脅しではない。」
ツバキ「隊長!一体どうして・・・!」
リカルド「・・・言う義務はない。」
 ドンッ!!
 再び火を吹くシャドーリボルバー。
クロウ「ちっ!」
 その隙に逃げ出すリカルド。
ヒスイ「あ!」
クロウ「待て!」
 リカルドを追いかけ、ゴルドーの家を飛び出すクロウ達。
ゴルドー「な・・・なんなんでぃすか(泣)」
 ゴルドーはめちゃくちゃになった部屋で、一人涙していた。
 タッタッタッタッタ!!
 ゴルドンの町の中をクロウ達は走っていた。全力で逃げるリカルドを追いかけているのだ。
リカルド「はぁ・・・はぁ・・・!」
ヒスイ「待て―!!」
 リカルドは、逃げながらもポケットから通信機を取り出す。
リカルド「例のものは入手した。だが、チャージし終わる前に見つかってしまった!至急応援を頼む!」
 そして、通信機をポケットにしまい、逃げる事に集中する。
セシル「はぁ、はぁ・・・でも、なんかおかしくない?」
 息を切らしながら、セシルは疑問を抱く。
クロウ「何がだ?」
セシル「美術館の宝石を奪う事や、レプリカを作る事が出来るなら、犯人をクロウに仕立て上げなくても、普通に盗んでレプリカを美術館におけばよかったんじゃなかったの?」
ヒスイ「確かに。罪をなすりつけようとした分、時間もコストも無駄にかかりますよね。」
クロウ「いや、それでも、美術館においていてもレプリカだとバレる可能性はある。」
ツバキ「あぁ、あの美術館には一流の鑑定士も来るしな。」
クロウ「そうなった場合、疑われるのは警備員・・特にその指揮をとっていたものだ。疑われて、自分の身の回りを調べられたら・・・。」
ツバキ「人魚の涙が見つかってしまうとそう言うわけか。」
クロウ「恐らく。だが、俺が犯人と決まってしまったら、美術館にある宝石がレプリカだと分かっても、リカルドが疑われる事はない。あいつはなんらかの理由で、自警団に長くいなければならなかったんだろう。」
ツバキ「・・・・。」
 そして、ついにリカルドを街の隅まで追い詰めた。
セシル「はぁ・・・はぁ・・・。」
ヒスイ「お、追い詰めましたよ・・・!」
 肩で息をする二人に対し、全く息を切らしていないクロウとツバキ。
クロウ「もう、逃げられないぜ。」
リカルド「ふ。」
 リカルドは不敵に笑い、指を鳴らす。
クロウ「なに!?」
 すると、リカルドの隣に四人の少年がやってきた。
リカルド「遅かったな。」
???「まぁ、そういうな。」
???「元々、お前のミスだろうが。」
???「来てやっただけでもありがたく思えっつーの。」
リカルド「まぁな。」
 そして、その少年達のうちの一人は・・・。
ツバキ「あ、アキラ・・!」
 自警団員の一人で、ツバキの同僚のアキラだった。
アキラ「さぁ、さっさと片付けようぜ!」
ツバキ「まさか・・・お前も、協力者だったのか・・!」
アキラ「ふん。」
クロウ「(やはり、自警団の中にも仲間はいたか。)」
ヒスイ「し、しかし何故、あなた達は人魚の涙を盗もうとしたんですか!?」
セシル「やっぱり、お金目当てなの!?」
 ドンッ!!
 アキラはヒスイに向かってショットを放つ。そのショットはヒスイの横をすり抜ける。
アキラ「お前達には関係ない。」
???「そうそう、仲良くおしゃべりなんかしてる場合じゃないっつーの。」
???「俺たちの今の状態、忘れたわけじゃないだろう?」
???「これは、戦いなんだぜぇ?お遊びなんかじゃない、お互いに全てをかけた・・・な。」
 ビーダマンを構えるリカルド達五人。
ツバキ「やるしかなさそうだな・・・。」
ヒスイ「で、でも、僕らは四人・・・不利です!」
クロウ「いってる場合じゃないだろう。来るぞ!」
リカルド「ブラックファイア!!」
 五人が一斉射撃する。
 クロウ達も迎撃するが、多勢に無勢、押されていく。
ヒスイ「くっ、僕らはここまで走ってきた分だけ体力の消耗があります・・・!」
セシル「それに比べて、向こうは四人体力を温存してるし。」
クロウ「あのくらいの距離、大した事はないだろう!ひるむな!」
 しかし、覇気がないのは、疲れているヒスイとセシルだけではなかった。
ツバキ「・・・・。」
 ツバキも、ショットに力が入っていない。
クロウ「どうした、おい!」
ツバキ「(隊長が・・・そんな・・・俺は、隊長に憧れて自警団に入ったのに・・・。)」
 そのとき、一つのビー玉がツバキに向かってすごい勢いで迫ってくる。
クロウ「っ!おい!!」
 しかし、気力のないツバキには、反撃する力はない。
 ガキンッ!!
 ツバキに玉が命中する直前、どこからか飛んできた玉がそれを撃ち落す。
アキラ「なにぃ!?」
ツバサ「さぁ、いくよ!セイクリッドガルダ!!」
 ダッ!
 ツバサがセイクリッドガルダを持って、クロウ達の元へ走ってきた。
クロウ「お前、なんで・・・。」
ツバサ「丁度今日が僕の釈放の日だったんだ。」
クロウ「そうか。」
ツバサ「でも、久しぶりに外に出た途端、いきなり大変な事に巻き込まれちゃったみたいだね。」
 といって、笑顔でクロウに顔を向ける。
クロウ「だが、そうたいしたことはない。そうだろう?」
 クロウも微笑しながら試すような目をツバサに向ける。
ツバサ「まぁね。」
 笑顔のまま当然のようにうなづき、ビーダマンを構え、敵陣へ向く。
ツバサ「今までしてきた事を、少しくらいは償えるかな?」
 仲間を得たクロウ達だが、リカルド達の余裕は変わらなかった。
リカルド「ふん、こっちも簡単に負けるわけにはいかないんでな。」
???「そうそう、あの機体を完成させ、ネオシャの繁栄のためにもな。」
???「さぁ、俺たちも本気をだすっつーの!」
???「そうだな。・・・いくか。」
 さらに激化する戦い。この勝負の行方は・・・そして、人魚の涙に秘められた謎とは・・・。
             


つづく



 次回予告


クロウ「俺たちとリカルド達のバトルは、さらに激しさを増していった。」
ヒスイ「そしてバトルは、それぞれ一対一で戦う事に!」
クロウ「そして、そのバトルの果てに待っていたものは・・・・強大な力だった。」
ヒスイ「次回!『最強のビーダマン!?人魚の涙の力』
クロウ「極めろ、強さへの道!」
  

 

 

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