弾突バトル!フリックスアレイ」カテゴリーアーカイブ

弾突バトル!フリックス・アレイ 第14話

第14話「最強タッグ結成!?」

 

 段田家。
 剛志達とのバトルの後、バンとリサはあっさり家に帰ってきていた。
 そんな、ある日の夕食後。二人はリビングでテレビを見ながらくつろいでいた。

『バトルフリッカーコウのフリックスニュース!!』

 テレビ画面に、フリックス大会の司会進行をしているバトルフリッカーコウが映し出された。
「おっ、バトルフリッカーコウだ!」
 バンが身を乗り出す。
「バン、見えない……」
 ちょうどその位置がリサの視界を遮るところだったらしい。リサが不満を漏らす。
「あ、ごめんごめん」
 バンは軽く謝りつつ、元の位置に戻る。
 番組はその間も軽快なBGMとともに進行している。

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第13話

第13話「ダントツを望む者」

 

 遠山フリッカーズスクール校長室。
 伊江羅博士が段冶郎から非難を受けていた。
「リサを逃してしまうとは、失態だぞ!伊江羅!」
「申し訳ありません。しかし、シェイドスピナーが完成した今、既に計画はお身内を使う段階ではないかと……」
 非難を受けながらも伊江羅博士の口調は挑発的だ。
「なんだと……!」
「最強のフリッカーと最強のフリックスは一つあればいい。それとも、スクールの総力を結集して作り上げた作品が信用出来ませんか?」
 そう言われ、段冶郎は口ごもる。
「……まぁよい。だが、これ以上の失態は許さんぞ」
「承知しております」
 伊江羅博士はうやうやしく頭を下げた。
「ところで、次に開催される藤堂財閥主催のタッグバトル大会に、ザキは投入しないのですか?」
「ふん、あのような低レベルな大会に出すほどザキは安くない。ザキのデビューにはもっと相応しいものを用意しておる。それまでザキの調整を怠るな」
「かしこまりました」
 伊江羅博士は再びうやうやしく礼をした。

 その頃のバン達。

「やれぇ!ハンマーギガ!!」
 ハンマーギガの重いシュートがドライブヴィクターに向かう。
「う、うわああああああ!!!!」

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第12話

第12話「タッグバトル!パワーVSパワー」

 

 遠山フリッカーズスクールからリサを取り戻すことが出来た。
 しかし、スクールの繰り出してきた最強のフリッカー『ザキ』の前にバンは破れ、Mr.アレイの手助けが無ければリサは救い出せなかった。
 バンの力では、リサを守る事が出来なかったのだ。

 小学校の昼休み、教室。
「……」
 あれ以来バンはどこか惚けていて、いつもの元気さがなかった。
席に座り、教室の外を眺めている。
「おい、バン知ってるか?フリックスの新製品の話」
「ん~?」
 オサムとマナブが話しかけるのだが、バンは生返事だ。
「インフェリアシリーズに新しい型が出るんだと」
「へ~」
 生返事だ。
「アッパー形状で結構強いらしいぜ」
 何を言ってもバンは気の抜けた言葉を返すだけで、まったく感情がこもっていない。
 そんなバンの様子に、オサムとマナブは顔を見合わせるしかなかった。

「やっぱ、こないだのアレが堪えてるのかな?」
 二人はバンから少しはなれ、こそこそと話す。
「だろうなぁ。でも、なんかバンらしくないぜ」
「うん……リサちゃんは助け出せたのに、いったい何があったんだろう?」
 心配する二人だが、惚けるバンには何もすることが出来ない。
 そのまま時間が過ぎていき、バンは帰路についた。

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第11話

第11話「地獄から這い上がるフリックス」

 

 スクールに連れ去られたリサを取り戻すために、スクールに潜入したバンはついにリサのいる地下独房へ辿り着く。
 しかし、そこには、一緒に謎の少年が卑下た笑みを浮かべながら膝をつくリサを見下ろしていた。
「リサ……!」
 失意のリサに駆け寄るバン。状況が分からない。あの少年と関係があるのか?
「大丈夫か?」
「……うん」
 リサは弱々しくうなずいたが、それ以上何も喋らない。
「へぇ、お前が侵入者か」
 ザキが、面白そうに言う。
「誰だお前は!リサに何をした……!」
 バンが食って掛かろうとすると、ザキの代わりに後ろから声がした。
『なに、楽しいフリックスバトルをしただけだよ。段田バン君』
「っ!」
 振り返ると、そこにはモニターがあり、段冶郎の顔が映し出されていた。
「お前は……?」
『ワシの名は遠山段冶郎。スクールの校長であり、リサの祖父じゃ』
 段冶郎……そういえば、公式サイトで見た事がある。

「お前が、リサに酷い事してきたって奴か……!」
『心外じゃな。ワシはただ、フリッカー達に最高の教育と最高の環境を与えてやったに過ぎん』
「うるせぇ!それだけだったら、リサが逃げ出すわけがないんだ!!リサは、泣いてたんだぞ!!」

『くだらん、ガキのわがままに付き合っていたらキリがないのう』
「なにをぅ……!」

 売り言葉に買い言葉、押し問答を続けるバンと段冶郎だが、段冶郎はバンに会話する価値がないと判断し、言葉の矛先をリサに向ける。
『リサ、残念じゃったのぅ』
「っ!」

 話を振られて、リサはビクッと反応する。
『生ぬるい事ばかり言っておるから、こうなったんじゃ。さぁ、約束じゃ。お前はスクールに戻り、また一から鍛え直すがいい』
「……」

 段冶郎の言葉に、返すことが出来ないリサは俯いて体を震わせている。
「待て待て待て!どう言う事だよ!!約束って、なんだよ!?」
 バンが吼えると、今度はザキがさも可笑しそうに口を開いた。
「俺に負けたらスクールに戻る。そういう約束だったからなぁ」
「……!」
 その言葉を受けて、バンはザキへと向き直る。
「お前が、リサに勝っただと……?」
 バンは、信じられないような、相手を憎むような、そんな表情でザキを睨みつける。
「ああ。つまらないバトルだったぜ」
『じゃが、テストとしては上々じゃ。ザキよ、今こそお前はスクール最強のフリッカーとして完成した!これからその腕を存分に振るってもらおう。一度ワシの所に来い、獲物を用意してやる』
 段冶郎がそう言うと、ザキはフッと笑って頷き、踵を返した。

「待てよ!」
 バンはザキの背中に向かって呼び止める。
 ザキは動きを止めた。
「お前がリサに勝っただと……だからリサはスクールに戻るだと……冗談じゃねぇ!リサはお前なんかにゃ負けないし、スクールにも戻るわけがねぇ!!」
「はぁ?……リサは、俺に負ければ大人しくスクールに戻ると言う条件でバトルし、そして負けた。これが現実だ。残念だったな、もうお前の出る幕じゃない。帰っていいぞ」
 振り返りもせず、一気にそう言う。
「帰って良いだとぉ……!」
「大人しく帰れば、不法侵入については目を瞑ってやる」
 ザキが言うと、段冶郎も同意した。
『そうじゃな。ザキはこれから大事なバトルがある。これ以上ガキに構ってられんからの』
 バンの不法行為すらも、ザキのバトルに比べたら瑣末な事らしい。それだけバンは軽く見られているのだ。

「ふ、ふざけやがって……!そんなに、バトルがしたいってんなら……俺が相手になってやる!!!」
 激怒したバンは啖呵を切る。
「お前が?」
 それを聞いて、初めてザキは振り返った。
「ああ!リサは、お前なんかに負けるようなフリッカーじゃねぇ!俺がお前に勝って、それを証明してやる!!!」
「……まぁいいだろう。お前如きに、大した時間は掛からないだろうからな」
 ザキはニタリと笑ってバンの挑戦を受けた。
「バン、ダメ!」
 が、リサがバンを止める。
「リサ、なんでだよ?」
「今の私たちじゃ、勝てない……!お願い、ここは引いて!」
 何故か、リサは必死に、懇願するようにバトルをやめさせようとする。
「一体、なんで……?」
「どうした、怖気づいたか?」
 バンがその理由を聞く前に、ザキが挑発する。
「んなわきゃねぇだろ!!」
 当然、その挑発に乗ってしまい、リサの言う事は聞かずじまいになる。
 リサは不安そうな表情だ。
「大丈夫だって。俺がダントツであいつをぶっ倒す。そして、帰ってまたフリックスバトルしようぜ!」
 バンはリサを安心させるように言うのだが、リサの表情は浮かないままだ。

 そして、バンとザキがフィールドを挟んで対峙した。
「アクティブシュート!!」

 バシュッ!
 最初は様子見なのか、ザキはあまり飛ばさず、ドライブヴィクターは真ん中付近まで進んだ。
「いいぞ、ドライブヴィクター!!」
 バンの先攻だ。
 ドライブヴィクターを思いっきり撃つ。
 
 バキィ!
 強い当たり、シェイドスピナーが大きく飛ばされる。
「よしっ!」
 フリップアウトにはならなかったが、マインヒットは出来た。このまま徐々に追い詰めていけばこっちが有利だ。
「くくっ……」
 それを見て、ザキは小さく笑った。
「な、なんだよ……」
「その程度か」
「な、なに……!」
「フリックスは高性能みたいだが、フリッカーの腕が全然だな。いいか、攻撃ってのは、こうやるんだ!!」
 ザキが、シェイドスピナーを構え、ドライブヴィクターに向かってスピンシュートを放つ。
 周りの空気を吹き飛ばしながら、ドライブヴィクターに迫ってくる。
 
 ブオオオオオオオオオオオオ!!!!!

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第10話

第10話「スクールの切り札!闇のフリッカー誕生!!」
 
 
 
 遠山フリッカーズスクールは、高層ビルの中に存在してた。
 その袂で二人の少年が、退屈そうな心配そうな表情で近くの植栽の傍で座っている。
「バンが潜入してから、もう40分か。大丈夫かな?」
「下手にこっちから連絡も取れないしね。待つしかないよ」
「あぁ~~、せめて中の様子でも分かればなぁ~~!!」
 オサムが頭を掻き毟りながら言う。バンほどではないがオサムも短気だ。
「落ち着いてよオサム」
「分かってるけどさ。あ~、なんか喉渇いてきた。マナブ、ちょっと近くのコンビニ寄ってくるから。なんか欲しいものとかあるか?」
「ん、そうだね。じゃあ何か冷たい物」
「おう!」
 片手を上げてオサムは駆けていった。
 まるで、行列にならんでいる二人組状態だ。
 
 一方のバンは……。
「おわわわ!!!」
 スクール内の廊下をひた走りながら、激動の時間を過ごしていた。
 
 天井に設置された無数の機械から無数のフリックスがどんどん射出されてくる。
「くっそー!なんだよこの機械は!!」
 咄嗟にドライブヴィクターで迎撃する。
 
 ドガアアアアアア!!!
 
 空中で激突し、ドライブヴィクターがそのフリックスたちを一掃していく。
 パワーの差は歴然だ!
「はぁ……はぁ……!」
 とは言え、こうもキリがないとさすがに体力の消耗が激しい。
「くそっ、あと一階で一番下なんだ……!諦めてたまるかぁ!!」
 体に鞭打って、バンは駆け出し最後の階段を降りる。
 ガンガンガンッ!
 乱暴に1段飛ばしで階段を駆け下りて、ついに最地下に辿り着く。
「ここか……?」
 スクールの中は殺風景な場所だったが、ここは更に殺風景だ。
 階段の隣にあるエレベーターから真っ直ぐに延々と伸びている廊下……その先に、謎の扉がある。
「……」
 他に特に分岐点も見当たらない。
 リサが居るとしたら、あそこだ。
 バンは、覚悟を決めてその道を歩いた。
 罠がないかどうか、慎重に周りを見ながら進む。
 そして、扉の前まで行きそうになった時。
「ここから先へ行かせるわけにはいかないな」
 突如、後ろから見知った声が聞こえた。
「その声はっ!」
 振り向くと、そこに居たのは白衣の男……伊江羅だった。
「……?」
 バンは面食らった。そいつは見た事のない男だった。
「お前が、スクールに侵入したと言う……段田バンか」
「誰だお前は!!」
 妙な違和感を覚えたが、今はそれについて考えている余裕はない。
「俺の名は伊江羅。このスクールでフリックスの研究開発をしている科学者だ」
「博士……か」
 バンは伊江羅の言葉を自分に分かる単語に置き換えて呟いた。
「まぁ、そのようなものだな」
 伊江羅は特に否定せずに言った。
「博士に用はない!そこをどけぇ!!」
 腕を振って、どくように威嚇するバンだが、伊江羅は鼻で笑うだけだ。
「それは出来ない。この先では私の研究開発の最終テストが行われている。科学者として邪魔立ては許さない」
「研究って……まさか、リサに!?」
 この先にリサがいる可能性が高い。そこで研究開発だと……!
「てめぇ!リサに何をしてるんだ!!!
「お前には関係ない」
「くっ!」
 伊江羅は微動だにする気配がない。
 このまま押し問答していても、時間が経つだけだ。
「こうなったら……勝負だ!!」
 バンはドライブヴィクターを突き出した。
 フリックス関係者に、言葉での戦いは意味がない。バトルをする事でしか決着はつけられないのだ。
「俺が勝ったら、そこをどけ!!」
「……いいだろう」
 伊江羅はそう言うと、懐から何かのスイッチみたいなものを取り出しそのボタンを押す。
 すると、天井に穴が空き、そこから長方体のフリックスのフィールドらしき台が降ってきた。
「一回勝負。こんな事に時間はかけられないからな」
「おお!」
 バンはドライブヴィクターを台の角に置く。

「アクティブシュート!!」
 

 バシュッ!
 先手はバンが取った。
「行けっ!!」

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第9話

第9話「リサを取り戻せ!潜入!遠山フリッカーズスクール」
 

 銭湯に行った前回の翌朝。
「おはよ~」
 眠い目を擦りながら、バンは既に食卓についているリサと父に挨拶した。
「おう」
「……」
 父は普通に対応するが、リサは少し気まずそうに目をそらす。
「?」
 リサの態度に疑問を感じるバンだが、特に気にせずに席についた。
「……」
 リサが気にしているのは、昨日の銭湯でのことだ。
 あの後、バンは父に思いっきり怒られ、そのままロクに話す事無く就寝した。
 一緒に住んでいる男の子に裸体を見られてしまったこと、そしてそのまま何も話せていない事で、リサはバンに対してどことなく気まずさを感じているのだ。
「父ちゃんって今日も仕事?」
「ああ。今人足りないからな、土曜は大体休日出勤だ」
「そっか」
 今日は土曜らしい。父ちゃんは仕事でも小学校はお休みだ。
「バンは、どっか出かけるのか?」
「ん。オサム達と遊ぶ約束してる」
「いつもどおりだな」
 予定調和な会話が淡々と進んでいく。
「あ、そだ。リサも来るだろ?」
 と、ふいにリサに話を振る。
「え」
 急に話を振られて頭が回らない。
「ほら、前に会っただろ、オサム達とフリックスバトル」
「……私は、今日は、いい」
 気恥ずかしさが抜けないのか、俯いて断りの言葉を呟いた。
「え、そうか。珍しいな」
 リサの態度に、ますます疑問を感じるバンだが、特に問い詰めることもしなかった。

 そして、バンはリサを一人留守番にして、公園に遊びに行った。
「いっけぇ!ドライブヴィクター!!」
 いつものように、フリックスで友達とバトルしまくっている。
「くっ!耐えろぉ!!」
 オサムはバリケードを構えて防御しようとする。
 しかし……!
「貫け!ドライブヴィクター!!」
 バンはバリケードを破壊しながらオサムのフリックスを状態させてしまった。
「おっしゃぁ、俺の勝ち~!」
 バンはドライブヴィクターを掲げて喜ぶ。
「だああああ!!せっかくバリケードしてんのにそれごと突破されたらどうしようもないぜ!!!」
 オサムは頭を抱えて唸った。
「まぁ、ヴィクターに対して真正面から力比べってのは無茶だよね」
「へっへっへ!ドライブヴィクターと俺はもう鬼にカネボウ!獅子にフカヒレ!もう誰にも負けないぜ!!」
 得意気になるバンに、マナブが突っ込んだ。
「金棒とヒレ、だよ」
「う、うるへ~!」
 フリックスは強くても頭は弱いのだ。

「呑気なものだな!」
 突如、頭上から高圧的な声が聞こえた。
「っ!」
 ハッとして見上げると、木の枝の上にMr.アレイが腕組をして立っていた。
「み、Mr.アレイ……!?」
「前に、バンにドライブヴィクターを渡した奴だ……!」
 Mr.アレイは、シュタッ!と華麗に着地する。
 そして、つかつかとバンを見下ろせる位置まで歩いてきた。
「な、なんだよ!何か用か?」
 見上げながらも威勢の良いバンに、アレイは口を開く。
「守るべきものがありながらみすみす手放すとは、随分と滑稽なナイト様だな」
 Mr.アレイの言い回しは回りくどかった。だが、皮肉を言われている事は分かる。
「なんだと!!」
「金庫にでも入れて、大事にしていたつもりらしいが。見張りもつけずに放置とは愚にもつかん」
「……っ!」
 そこまで言われて、Mr.アレイの皮肉の中に、何か重大な意味がある事に気付いた。
「ま、まさか……!」
 全身から血の気が引くのを感じたバンは、咄嗟に駆け出した。

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第8話

第8話「銭湯で戦闘!?危うしリサ」
 
 
 
 ある日の夕食後の段田家。
 父はキッチンで洗い物。リサとバンは片付けたテーブルの上でフリックスをしていた。
 
「うりゃ、いけぇ!ドライブヴィクター!!」
 テーブルの上で縦横無尽に動き回るドライブヴィクターとフレイムウェイバー。
 とは言え、本気のバトルというよりも単なるお遊び的な、じゃれてるようなものだ。
「フレイムウェイバー!」
 
 カツン!カツン!
 と、子供のお遊びのように軽くぶつかり合う。
 
「おっしゃぁ、いっくぜぇ!!」
 バンは遊びに似使わない気合いを込めて、構える。
 ドライブヴィクターの狙う先にはフレイムウェイバーがいる。そして、その先には……流しで洗い物をしている父の姿があった。
 しかし、バンはそんな事お構い無しに、強力なシュートを放った。
 
「いっけえええええええ!!!!」
 
 バシュウウウウウウウ!!!
 ドライブヴィクターが空気を切り裂きながらフレイムウェイバーに突っ込んでいく。
 
 バキィィィ!!!!
 
 勢い良くフレイムウェイバーを弾き飛ばす。しかし、その程度ではドライブヴィクターの勢いは収まらない。
「あ、うわわ!止まれヴィクター!!」
 もう遅い。ドライブヴィクターは軌道を変えぬままキッチンへ向かい……。
 
「ん?」
 異変に気付いた父が顔を上げる。そこには、物凄い勢いで突っ込んでくるドライブヴィクターがあった。
「う、うわあああああ!!!!」
 咄嗟に右腕で顔を庇う。
 そして、ヴィクターは流しに突っ込み……。
 
 ドガアアアアアアアアン!!!!
 
 ヴィクターの運動エネルギーに、流しの水や洗剤が直撃し、大爆発してしまった。
 
「……」
「……」
「……」
 リビングは、一面水浸しの泡まみれ。バン、父、リサもビショビショになってしまった。
 
「あ、ヴィクターにウェイバー!」
 水浸しの部屋の中で、バンはヴィクターとウェイバーを見つけて、拾った。
「よかった、無事だったんだな。リサ、ほらウェイバー」
 リサにフレイムウェイバーを渡す。
「ありが、と……」
 リサは戸惑いながらもそれを受け取る。
 と、バンの後ろから巨大な影が迫ってきた……!
「よかった……だと……?」
 ゴゴゴゴゴ!と邪悪なオーラを纏いながら、それはどんどん大きくなっていく。
「あ。やべ」
 それに気付いたバンはゆっくりとその場を去ろうとする。
「くぉらああああばあああああん!!!!!!」
 しかし、そのオーラを纏った存在……バンの父は、素早く拳骨をバンのドタマにブチ落とした。
 
 ガッツーーーン!!!
 小気味良い音が鳴り響く。
「いってええええ!!!!」
 ぷっくりと膨らんだタンコブを両手で押えながら、バンはしゃがみ込んだ。
「ったく、お前と言う奴は!!もう金輪際家の中でフリックスをやるのは禁止だ!!!」
「えええええ!!!」
 バンは不満気な声をあげる。
「えええええ!!!じゃねぇ!!どうすんだよ、この有様を!!」
 父は激昂し、燦々たる状態のリビングを指す。
「そ、それは……ごめん……」
 バンは小さく素直に謝った。それに習ってリサも頭を下げる。
 
「う~、ベトベト……クチュンッ!」
 リサが小さくクシャミをする。体中の泡が鼻を刺激したようだ。
 
「とりあえず、まずは風呂だな……」
 父は洗剤でベトベトになった髪をボリボリ掻きながら風呂場へ向かった。
「ちぇ、本気で殴りやがってぇ……」
 バンは涙目でまだ痛む頭を擦る。
「これは、私たちが悪いから、しょうがないよ」
「まぁ、そうだけどさぁ……」
 リサに静かに咎められると、バンもようやく反省の色を見せた。
 
「なにいいいいいい!?」
 ほどなくして、風呂場から父の驚声が聞こえてきた。
「どうしたんだ、父ちゃん!?」
 その声を聞いて、バンとリサも駆けつける。
 風呂場では、流した水に手をつけながら唖然としている父の姿があった。
「お、お湯が出ねぇ……」
 
「えええええ!?」
 二人は驚いた。
 
 その原因を探るため、父は再びキッチンに戻る。
「あ~、こりゃさっきの衝撃で給湯器が完全にイカれてるなぁ」
 この家の給湯器はキッチンに備え付けてあり、流しから風呂場まで全てのお湯を担っているようだ。
「その、きゅうとうきがイカれてると、どうなるんだ?」
「家中の水道からお湯が出なくなる」
「な!?直んないの!?」
「こりゃ、明日業者に頼むしかなさそうだなぁ」
 父も完全にお手上げのようだ。
「そんなぁ……それじゃあ風呂に入れないじゃん!!」
「誰のせいだと思ってんだ」
 ゴツンッ!ともう一度バンの頭に拳骨を落とす。
「とは言え、このままじゃな……仕方ない。銭湯にでも行くか」
 
「??」
 父の提案に、二人は首をかしげた。
 
 父に連れられるままバンとリサは街灯に照らされた夜道を歩く。
 三人は洗面器を持っており、その中にはタオルやら洗剤やらが入っている。
「父ちゃん、こんな夜中に外に出てどこ行くんだよ?」
 父に持たされたのであろう洗面器と父の顔を交互に見ながら、バンが問う。
「だから、銭湯だっつっただろ?」
「せんとう……?戦うのか!?」
 バトルと聞いてバンの目が輝く。
「ちゃうわアホ!銭湯ってのは、風呂に入れてくれる店の事だ」
「ふ~ん」
 説明を受けてもまだピンときていない。
「昔一回連れてった事あるんだけどな。まぁ、あん時はお前幼稚園児だったから覚えてないか」
 父の言うとおり、バンには銭湯の記憶が残ってないらしい。
 しきりに首をかしげながら、『銭湯とはどんなものなのか?』と想像力を働かせている。
「って、それよりもだ」
 父が声のトーンを落として話題を変える。
「ん?」
「リサちゃんの、その格好はなんだ?」
 リサには、第6話でしたような変装をさせている。
「リサじゃねぇ!リサ山リサ子!ほら、スクールの奴らから匿ってんだから、外に出す時は変装させなきゃマズイだろ!」
「まぁ、そうだけど。その偽名はどうなんだ……?」
 リサも微妙な顔をしている。
 
 そうこうしているうちに、三人は濛々と湯気の立ち込める煙突のある建物、銭湯の前に辿り着いた。
「ここが、銭湯だ!」
「「おお~!」」
 三人は、『松の湯』とかかれた暖簾をくぐって中に入る。
 
「いらっしゃい!」
 番台に立っている男が威勢よくバンたちを迎える。
 銭湯の中は、仄かに熱気の混じった湿気が立ち込めていて、なんだかベトベトの体にはあまり心地よくなかった。
 
 父が受付を済ませ、いよいよ三人は更衣室の前に立つ。
「そんじゃ、リサ……子ちゃんは、ここで一旦別れるけど、一人で大丈夫かい?」
「うん」
 リサはうなずいた。
「あれ?なんでリサだけ別なんだ?一緒じゃないと危なくないか!?」
「一緒だともっとまずいんだよ……」
 相変わらずなバンの反応に、父は額を押えた。
 
 浴場は、湯気が濛々としていて、受付の時よりも熱気に包まれていた。
「ひゃ~!ひっろい風呂だ~!!!」
「バン、あんま騒いで他の人に迷惑かけるなよ」
「分かってるって!」
 ダッ!と湯船に飛び込もうとするバンの頭を父が掴んで止めた。
「待て。体洗うのが先だ」
「……は~い」
 
 父に言われたとおり、シャワーの前で体を洗う事にした。
 ゴシゴシゴシと石鹸の泡をタオルで体中に擦っていく。
「ふんふんふふ~ん♪」
 いつもと違うお風呂がなんとなく楽しいのか、いつもはめんどくさがる体洗いも鼻歌交じりになる。
「おっと」
 と、手が滑ってしまい、石鹸を落としてしまう。
 石鹸はツルーっと滑っていって、バンと同い年くらいの子の足元で止まった。
「ほら、気をつけろ」
 少年が石鹸に気付いてバンに渡す。
「ごめん、ありがとう」
 礼を言ってそれを受け取り、その少年の顔を見る。
「あ」
「あ~~!!」
 互いに顔を確認したところで思わず声が漏れた。
「「お前は、あの時の!!」」
 二人の声がハモって、響く。
 どうやら、顔見知りのようだ。
「あの時、皆のフリックスを破壊してた……!」
「お、俺の邪魔をした……!」
 少年は、なんとあの第1話で登場した、ゲンタだった!
  
「お前、なんでこんな所にいるんだ!あ、まさか今度は銭湯に来てる人のフリックスを破壊しようってんじゃないだろうな!?」
 相手がゲンタだと分かると、バンは好戦的な態度をとる。
「するかっ!ここは俺の憩いの場なんだよ!お前こそなんでこんな所に……!」
「俺は、家の風呂が壊れたから。……って、そんな事はどうでもいい!!」
 バンがキッ!とゲンタを睨む。
 その表情を見て、ゲンタも何かを悟る。
「そうだな。ここであったからには」
「おう!」
 二人が、どこに持っていたのか、フリックスを取り出した。
 
「「フリックスバトルだ!!」」
 
 二人の声は響き、それは女湯で湯船に使っていたリサの耳にも微かに届いた。
「フリックス?」
 他の人の耳には聞こえなかったようだが、フリックスに関して地獄耳のリサには聞こえたようだ。
 条件反射のように立ち上がり、その声が聞こえた場所に一番近い場所へと移動する。
「……」
 リサは、男湯と女湯を隔てる壁の前に立った。
 間違いない。フリックスと言う単語はそこから聞こえてきた。
 リサは周囲の目線など気にする事無く壁に耳をつけた。
「……」
 
「あの、お譲ちゃん……?何してるのかなぁ?」
 40代くらいのおばさんが声をかけてくる。
「おかまいなく……!」
 リサはそっけなく言うと、壁の向こうの音に意識を集中させた。
 
 そして、男湯ではフリックスを取り出した二人が一触即発の状態で対峙していた。
「お前のせいで、俺はスクールでのランクが下がって、今や落ちこぼれ扱いだ!その恨み、今こそ晴らしてやる!!」
「そんなの知るもんか!どんなバトルでも俺は負けない!!」
 どうやら、ゲンタはスクール生でバンに負けた事で落第してしまったようだ。
「で、ルールはどうする?こんな所フィールドなんてないだろ」
 バンが周りをキョロキョロしながら言った。
「この浴場全体がフィールドだ!」
 ゲンタが両手を広げて浴場を表す。
「え、でもマインとかフリップアウトの判定はどうするんだ?」
「湯船の枠や壁に当たったらフリップアウトだ。それから、マインはこいつだ!」
 バララララ!
 ゲンタはどこから持ってきたのか大量の石鹸を辺りに散りばめた。
「なるほど、おもしれぇ!やってやるぜ!!」
 
 フリックスバトルスタート!
「3.2.1.アクティブシュート!」
 適当な場所から向かい合ってシュートし、二機がすれ違いながら進む。そして、何となく目視で進んだ距離を確認した。
 先攻は、バンだ。すれ違ったため、ゲンタとの距離は結構離れている。
 
「かなり広いフィールドだからな。思いっきり撃たないと!」
 
 バシュウウウ!!
 バンは強めにシュートし、目の前にあるマインを弾き飛ばしてゲンタの機体にヒットさせた。
「おっしゃ!」
「ちっ」
 しかし、マインヒットした後もドライブヴィクターの勢いは止まらない。
 
「いぃ、ちょっ、止まらねぇ!?」
 想定外のスピードだったらしい。
 滑るようにドライブヴィクターは泡風呂の枠へと迫っていく。
「と、止まれ~!!」
 間一髪、枠に触れる手前で止まった。
「ふぃ~、危なかった……」
「バカな奴だな!風呂の中はお湯や石鹸のせいで滑りやすくなってる!通常よりもフリックスが動いてしまうのは常識だろ!」
 常識らしい。
「ぐぐ……!」
「次は俺の番だな」
 ゲンタがフリックスを置いて、狙いを定める。
「一気に決めてやるぜ!」
 
 バシュッ!
 
 ゲンタがドライブヴィクター目掛けてシュートする。
 しかし、少し慎重に行き過ぎたのか、ドライブヴィクターの手前で止まってしまった。
「ちっ、力加減が!」
「あぶねぇ……!」
 間一髪だった。少しでも当たっていればドライブヴィクターは湯船の枠にぶつかっていた。
 しかも、このルール。
 フリップアウトの判定が『落ちる事』ではなく『壁にぶつかる事』なので、相手機体にぶつかれば多少勢い良く突っ込まれても同時場外になりにくい特性を持っている。
 もちろん、同時に壁にぶつかる事がありえないわけではないが、それでも通常よりも同時状態の自滅になる確率が少ない。
 攻撃時は自滅を恐れずに果敢に攻めた方がいいだろう。
「とにかく、体制を立て直さないと!」
 バンはその場から逃げるようにドライブヴィクターの向きを調節して、構える。
「いけっ!」
 
 シュパアアアアア!!
 
 ドライブヴィクターがゲンタのフリックスから逃げて、流しの方へ向かう。
 
「おぉ、なんだありゃぁ?」
「石鹸が滑ってるのか?」
 その様子を周りの人達が物珍しそうにバン達のバトルを見ている。
 
「ババンバノンノンノン~♪」
 しかし、父だけはそんな事に気付かずに湯船に浸かって至福の時を満喫している。
 
「よし、いい位置!」
 ドライブヴィクターが流しの手前で止まる。ここなら簡単にフリップアウトはさせられない。
「ちっ!逃がすな!!」
 ゲンタがドライブヴィクターへシュートする。
  
 ガツンッ!
 見事マインヒットする。
 
「よっしゃ!」
「くっ!今度は俺の番だ!」
 バンのターン。
「いっけぇぇ!!」
 
 バシュッ!ガガガッ!!
 
 ドライブヴィクターの攻撃がヒット!しかし、ゲンタの機体は大きく動くものの持ちこたえる。
「うっ、くそぉ!」
「へへっ、チャンス!」
「あ!」
 気付くと、ドライブヴィクターは攻撃のリコイルで、壁際に追いやられていた。
 しかも、ゲンタは狙いやすい位置にいる。
「しまっ!」
「これで、終わりだ!!!」
 ゲンタのシュート。
 
 バシュウウウ!!!
 ゲンタのフリックスが真っ直ぐドライブヴィクターに向かっていく。
 
 しかし……。
 
 シャワアアアアアアアアアアア!!!
 突如、隣の流しからシャワーが流され、その水圧でゲンタのフリックスの狙いが逸れてしまう。
「あ!」
「ラッキー!」
 ゲンタのフリックスは大きく剃らされて、まったくの見当違いの場所で止まってしまう。
「くっそー!」
「よし!今度は俺の番だ!」
 ゲンタのフリックスへ向かってシュートする。
 
 カシュッ!
 
 が、狙いが逸れたのか、ゲンタのフリックスを掠めただけで、ドライブヴィクターは少し進んだどころ止まった。
「くぅぅ!やっぱ滑り過ぎて狙いづらい……!」
「よし、チャンスだ!」
 今度はゲンタのチャンスのようだ。
 ゲンタのフリックスとドライブヴィクターの延長線上には、サウナのドアがある。
 上手くぶつければ、ドライブヴィクターをあのドアに押し付ける事が出来る。
「おらあああ!!!」
 ゲンタの渾身のシュート!
 
 ガコッ!!
 
 しかし、やはりと言うか、ぶつかった時の重心はずれていたので、ドライブヴィクターは真っ直ぐには飛ばされず、やや斜めの方向に飛ばされる。
 
 ギュルルルル!!!!
 
 あまり強い当たりではなかったのだが、なにぶん床が滑るのでドライブヴィクターは大きく飛ばされてしまう。
「くっ!止まれ!!!」
 
 ギュルルル…ザッ!!
 ドライブヴィクターが突如、ブレーキをかけられたように止まってしまった。
「っ!」
「止まった?」
「なんか知らないけど、ラッキー!よし、行くぜ!」
 バンがシュートする。
 
 ザクッ!
 
 しかし、ドライブヴィクターはバンのシュートを受けたにも関わらず全く進まない。
「え?」
「なるほどな。そこは砂風呂だ!もうお前は動けない!」
「なっ!!」
 見てみると、ドライブヴィクターがいる場所には砂が敷き詰めてあり、近くには砂に埋もれて気持ち良さそうに眠っているお爺さんがいた。
「喰らえ!!」
 ゲンタのシュート。
 
 ドンッ、バキィ!!
 
 砂に埋もれて動けないドライブヴィクターにゲンタのフリックスがマインヒットする。これでバンは残り1だ。
 そして、ゲンタのフリックスはその反動で砂風呂から脱出し、ツルツルと滑って離れていく。
 見事なヒット&アウェイだ。
「くっ!フリップアウトはさせられないけど、このままじゃ、ダメージレースで……!」
 バンは動けない。ゲンタはヒット&アウェイで嬲り殺してくる。
 このままの状態では、負けは必至だ。
 
「一かバチか、脱出するしかねぇ!!」
 ザッ!
 
 バンが力を込めて構える。
 しかし、柔らかい砂に邪魔されて、上手く構えられない。
 まるで、ゴルフのバンカーだ。
「くそ、邪魔なんだよ……!」
 バンは邪魔な砂をどけようと、手で掻くのだが柔らかい砂はどんなに掘ってもすぐにヴィクターに纏わり付いてくる。
「砂……砂をなんとか……そうだ!!」
 ダッ!とバンはその場を離れた。
「なんだ、逃げるのか!」
「誰が逃げるか!!」
 バンが向かったのは、流しだ。
 そこで、シャワーを体いっぱいに浴びる。
「うおおおおおお!!!!!」
 気合いを込めてシャワーを浴びた後に、元の場所に戻る。
 そして……。
 
「ぶるあああああああ!!!!!」
 体を震わせて体中に付着した水分を放出した。
 
「な、なんじゃぁ!?」
 飛沫が掛かり、眠っていた爺さんが目を覚ますのだが、バンは気にしない。
 
「い、一体何を……!」
 見ると、バンの周りの砂が、水分を含んで硬くなっていった。
「これなら……!」
 ザッ、ザッ!
 バンは、ヴィクターのシュートポイント付近の砂を掘る。
「よし、いっくぜぇ!!」
「うっ!」
「いっけええええ、ドライブヴィクターーーー!!!!」
 
 ドゴォ!バシュウウウウウウウウウ!!!!
 
 ヴィクターが砂を吹き飛ばしながら、ゲンタのフリックスへとブッ飛んでいく。
「ブッ飛ばせええええええ!!!!」
「くっ!耐えろおおおおおおお!!!!」
 
 バゴオオオオオオ!!!
 
 爆音を上げながら、ゲンタのフリックスが弾け飛んで行く。
「ぐっ!」
 
 ドゴオオオオオオオオオオ!!!
 
 そして、壁に激突。埃が巻き上がる。
 判定で、フリップアウトだ。
 
「なっ!」
「やったぜ、俺の勝ちだ!!」
「バカな……。元スクールのAクラスの俺が、こんな奴に二回も負けるなんて……」
 ゲンタが膝を突く。
「俺は、俺は、これからどうすれば……!」
「……」
 素っ裸のまま、本気で悔しがっている。
 バンはそんなゲンタにかける言葉も無い。
 
 そうこうしているうちに、巻き上がった埃が晴れてきた。
 その先に、人影が見える。
 人影?
 この先は、壁だったはずだが……。
 
「あ」
 埃が晴れ、人影の主と目が合う。
 なんと、先ほどの衝撃で男湯と女湯を隔てていた壁に穴が空き、境界線がなくなっていたのだ。
 そして、そこに立っていたのは……。
 
 生まれたままの、一線纏わぬ姿の、あられもない姿の、リサだった……。
 
「……」
「……」
「……」
 三人は、状況を把握しきれずフリーズする。
 
 リサが、ゆっくりと視線を落として、自分の体を見る。
 徐々に体が赤くなっていくのは、熱気のせいだけではないのだろう。
「ひ……」
 小さく、リサが声を漏らした。
「?」
 バンが首を傾げる。
「ひゃぅ……!」
 蚊の鳴く様な悲鳴を上げて、リサは自分の体を抱きかかえるようにしゃがみ込んだ。
 すると、奥の女湯の様子が良く見えた。
 
 リサがしゃがんだせいで、他の女性客達も異変に気付いたらしい。
 
「「「きゃあああああああ!!!!」」」
 と、絹も切り裂けるような悲鳴を上げて、メチャクチャに物を投げ込んでくる。
 
「「う、うわあああ!!」」
 バンとゲンタは、慌ててその場から後ずさる。
 
 すると、今度は見知らぬおじさん連中に囲まれる。
 皆、物凄い形相でバンとゲンタを睨んでいる。
「あ、あははは……」
 思わず苦笑いするバン。
「「「君たち、何をやってるんだ!!!」」」
 
「「ご、ごめんなさ~~~い!!!」」
  
 
 夜道。
 こってり大人達に絞られ、ようやく開放されたゲンタはブツクサ文句を言いながら帰路についていた。
「ちっ、なんで俺ばっかりこんな目に……ちくしょう!!」
 苛立ちを抑えられぬゲンタは、足元にあった空き缶を蹴っ飛ばす。
「……」
 
 “ひゃぅ……!”
 
 そして、なんとなく先ほどのリサの姿を思い出して顔を紅くする。
「あああもう!!」
 頭を振ってその妄想を振り払……おうとして、一旦やめた。
 もう一度、あの記憶を呼び覚ます。
「待てよ、あいつ……」
 あの女の子には見覚えがあった。
 そうだ。
 スクールでナンバーワンだった、遠山リサ。
 でも、今はスクールを逃げ出して、指名手配になっているはず。

 ゲンタの口元がニヤリとつりあがる。
「あんな所にいやがったのか……」
 この事を上に報告すれば、手柄を上げられる。
 ゲンタは、ほくそ笑むのだった。
 
 
 
      つづく
 
 次回予告


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弾突バトル!フリックス・アレイ 第7話

第7話「流浪のフリッカー出現!野生のオフロードバトル!!」
 
 
 ある日の下校風景。
 バンとオサムとマナブが三人で並んで帰路についていた。
 
「まさかバンもエレメントを手に入れるなんてなぁ~」
 三人の話題は、バンが手に入れたエレメントについてだった。
「おう!Mr.アレイとのバトルで使えるようになったんだ!」
 バンは淡く黄色に光る宝石のような形をしたそれを二人に見せびらかす。
「ちょっと見せてみて」
 マナブがバンからエレメントを貸してもらう。
「う~ん、見た感じ、ただの宝石の玩具みたいに見えるけど」
「でも、これに秘められた力は凄いんだぜ!その力でMr.アレイに勝ったんだから!」
「その効果で今日の昼休みもバンの連戦連勝だったからなぁ。ちょっとずるいぜ」
 どうやらバンは、昼休みのクラスメイトとのバトルでエレメントを使いまくったらしい。
「なははは!」
 さすがにエレメント無しの相手にエレメント使うのは卑怯臭い。その事をオサムに咎められ、バンは笑って誤魔化した。
「シュート後に効果発動して、もう一回シュート出来るなんて強すぎだろ」
「でも、発動後のシュートではダメージは与えられないし、使ったらHPを3も消費する。ディシジョンには向かない、完全フリップアウト戦術用の効果みたいだね」
「だあぁあぁ!ますますバン向きじゃねぇかぁ!!」
 マナブの分析を聞いてオサムは頭を抱えて唸りだした。
「まっ、エレメントも手に入れた事だし。これで俺が正真正銘ダントツってわけさ!リサにだってもう負けねぇ!」
「うん、これで互角だね。あ、でも油断しない方がいいよ」
 突然、マナブの口調が重くなる。
「ん、どうしたんだよ?」
「ちょっと、最近、嫌な噂を聞いたんだ」
「噂?」
 バンとオサムが首をかしげた。
「二人とも流浪フリッカーの話って知ってる?」
「流浪フリッカー?」
「なんだそれ?」
 二人が首を傾げる。
「なんでも、強いフリッカーを求めて全国を旅しているフリッカーらしいんだけど。先日、隣町のチャンピオンがそのフリッカーに負けたらしいんだ」
 仰々しく語るマナブに、オサムは身震いした。
「ひゃ~おっかない話だなぁ」
「そいつ、強いんだなぁ。一体どんな戦い方してるんだろう?」
 バンの興味はまだ見ぬフリッカーの戦い方だ。
「詳しくは分からないけど、ただ奴が指定するフィールドが一癖あるらしいんだ」
「フィールドかぁ。なんか変な仕掛けしてるんじゃないだろうなぁ?」
「さぁ、そこまでは。ただ、隣町まで来てるって事はこの町に来ても不思議じゃないからね。注意しないと」
 
「あぁ、あんま係わり合いになら無い方が良さそうだな」
「何言ってんだよ。全国を旅して修行してるような奴なんだろ?!俺は是非戦ってみたいねぇ!」
 オサムとバンの意見は正反対のようだ。
「相変わらず物好きだな、バンは」
「そういうんじゃないけどさ。やっぱ強そうな奴とは戦ってみたいじゃん!」
「でも得体の知れない奴なんだぜ。関わってもしもの事があったらどうすんだよ」
「そん時はそん時だよ。イチイチビビッてたら戦えな……おっ!」
 ドンッ!
 オサム達との会話に夢中になって前を見てなかったバンは、前方にいた男の人にぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさ……おぉう!」
 反射的に謝りながらその人を見ると……その見上げるほどの長身っぷりに驚きの声を上げてしまった。
 しかもその人物、デカイだけでなく、服はボロボロの継ぎ接ぎだらけ、髪は伸ばしっぱなしの、まるで浮浪者のような格好をしていた。
「バ、バン、もう行こうぜ」
 あまり関わらない方がいいだろうと思ったオサムがバンを先へ促す。
「あ、うん」
 バンもいそいそとその人の横をすり抜けて歩みを進める。
「待ちたまえ!!!」
 そんなバンたちの背中に向かって、男は大声を上げた。
 ビクついて立ち止まる三人の前に、つかつかと男は歩んできた。
「お前達、フリックスは知っているか?」
「あ、あぁ……」
 その男の迫力にたじろぎながらも応える。
「ならば、この町で一番のフリッカーは?」
 そこまで聞いて三人はピンと来た。
 噂をすれば影と言うやつだ。
 この男は、あの流浪のフリッカーだ。
 
 三人はこそこそと話す。
「なぁ、こいつ、マナブが言ってた……」
「うん。まさかほんとに現れるなんて……」
「ここは適当に嘘付いてやり過ごした方が良さそうだぜ。なんかめんどそうな奴だし」
 と、マナブとオサムが話している間に
 
「この町一番のフリッカーはこの俺だ!!」
 バンがその男に話していた。
「「ええええええええ!!!」」
 オサムとマナブは素っ頓狂な声を上げてバンを引っ張る。
「おい、バン!どういうつもりだ!!」
「どういうも何も、俺はほんとの事を言っただけだぜ!」
 オサムの非難に、バンはシレッとする
「そうじゃなくて、なんであんな怪しげな奴と……」
 オサムが言い切る前に、男が声をあげる。
「そうか!お前がこの町一番のフリッカーか!」
 それに応えるようにバンがオサム達を押し退けて前に出る。
「おう!!最強のフリッカー、段田バン様だ!」
「バンと言うのか!俺の名は、鷺沢操(さぎさわみさお)!全国を旅してフリックスバトルの修行をしている者だ。段田バンよ、貴様に挑戦状を叩きつける!!」
 操が、デカイ人差し指をバンに突きつける。
「ああ!望むところだぜ!!」
 二人はなかなかに気が合うようで、なんだかドンドン話が進んでいっている。
 
 危機感を覚えているのはマナブとオサムだけである。
「お、おいマナブ、まずいんじゃないか!?」
「う、うん。だけどもう止められそうにないよ」
 二人してアタフタと話し合うのだが、操とバンはもうバトルする気満々なようだ。
 オサムとマナブは、もう事の成り行きを見守る事しかできない。
 
「早速バトルだ!場所はどうする?」
「丁度いい戦場がある。ついて来い!!」
 言って、大男は歩いていく。
「おう!!」
 バンも意気揚々とその後についていった。
 
「あ、バン!」
「ま、待って!」
 オサムとマナブも慌ててその後を追った。
 
 操が連れてきた場所は、町外れの河川敷だった。
 大橋の下には、いつの間に立ててあったのか、テントと焚き火の跡があった。
「ここは今の俺の塒だ」
「今の……」
 操の発言が一瞬分からなかった。
「いろんな町を転々としているからな」
「あぁ、なるほど」
 流浪のフリッカーなら、塒は常に変わっている。
 今の操はここを拠点に活動しているようだ。
 
「「バーーーン!!」」
 と、遠くからオサムとマナブが叫びながら走ってきた。
 
「オサムにマナブ、お前らも来たのか?」
 バンの所までやってくると、オサムとマナブは肩で息をして呼吸を整えた。
「来たのか?はねぇだろ……勝手に先に行きやがって」
「い、一応、心配だから見にきたんだ」
「そっか、ごめんごめん」
 バトルの事ばっかり考えて二人の事が頭から抜けていた事をバンは謝った。
「はっはっは!ギャラリーも揃った所で、始めるかぁ!!」
 操が豪快に笑いながら言う。
「ああ。でも、フィールドは?」
「ふふふ……お前の目は節穴か?ここにあるであろう!!」
 と、操は河原の大きな石が積まれている場所を指差す。
 だが、三人にはそこにフィールドがあるようには見えない。
「なんだよ、でっかい石しか無いじゃん……」
 だが、マナブがある事に気付く。
「ん……まさか、あの石?」
 マナブの視線の先には、平べったくて一際大きな石があった。
「気付いたようだな。そう、あそこの平らな石がフィールドだ!」
 
「「「なにぃ?!」」」
 操に言われ、三人は驚きの声を上げた。
「まさか、自然を利用したフリックスフィールド……そんなものが……!」
 
「何を驚いておる?俺は常に旅をしてきた。長い旅路にフィールドのような大荷物は持っていけないし、旅先でまともなフィールドがあるとも限らない。いつでもどこでもバトルが出来るように、自然の中からフィールドを見出すのは造作も無い」
 操は当たり前のように言っているが、普段整地された人工のフィールドでしか戦わないバン達にとっては新鮮だ。
「へぇぇぇ!すっげぇ!本当にすげぇ!こんなところでもフリックスバトルできるんだぁ!!」
 バンは、操が指定したフィールドをジロジロと眺めながら興奮した。
「へっへへ、頑張ろうな!ドライブヴィクター!!」
 バンはドライブヴィクターを取り出して、気合いを入れた。
「ほう、なかなか良いフリックスだな。オリジナルか?」
 操が興味深げにドライブヴィクターを見る。
「ああ!世界に一つだけの相棒!ドライブヴィクターだ!!」
「なるほど、面白い」
 自慢げに話すバンに対し、操はニヤリと口元を緩ませた。
「んで、お前のフリックスは?全国を旅してるってんだ、きっとすげぇフリックスなんだろ?」
「これだ」
 操が巾着袋からフリックスを取り出す。
「俺の愛機、カラミティ・デスガランだ!」
 操の取り出したフリックスは、継ぎ接ぎだらけでお世辞にも整ったフリックスとは言えないものだった。
「な、なんか凄い変な形してるなぁ」
「うん、何かを切り貼りしたみたいな……」
 カラミティ・デスガランを怪訝そうに見る三人に対して操は言う。
「それは当然だ!こいつは、今まで倒したフリッカーから奪ったフリックスの良いとこどりをして切り貼りしたフリックスなのだからな!」
 操の発言を聞いて、バン達は更に驚く。
「な、なにぃ!?奪っただとぉ!?」
 バン達の反応に対して、操は淡々としている。
「それがどうした。勝者は敗者から全てを得ることができ、敗者は全てを失う……当然の摂理ではないか」
 なにも悪びれない操に対し、バンは怒声を上げる。
「ふ、ふざけるな!フリックスは大事な相棒だぞ!たった一回バトルに負けたからって奪っていいもんじゃない!!」
「つまり、お前はバトルに勝っても何も得ないと言うのか?」
 バンの怒声を聞き、操は侮蔑の視線をバンに向けた。
「当たり前だ!俺達のフリックスバトルは、そんな事のためにあるんじゃねぇ!!」
 その視線を跳ね返すようにバンは更に声を荒げた。
「甘いな。この世の中は弱肉強食。強いものが弱いものを糧にして、更なる力を得る仕組みになっている」
「だから相手のフリックスを奪ってもいいってのかよ!冗談じゃねぇ!!」
 激怒するバンの肩をオサムが掴む。
「バン、やめとけ。やっぱこいつヤバイ奴だ。バトルは……」
 制止しようとするオサムだが、バンはオサムの手を払いのける。
「さぁ、勝負だ!お前なんかに負けるか!!」
 バンはヴィクターを突きつけて啖呵を切った。
 操はそれを見てニヤリと笑う。
 
「あっちゃ~……」
 制止を振り切られ、オサムは額を押えた。
「まぁ、こうなった以上止めるのは難しいだろうね」
 マナブは、この戦いを見守る決意をしたようだ。
「そうだな……」
 オサムもバンを止めるのを諦め、傍観に入る。
 
 バンと操が平らな岩を間に対峙する。
「3本勝負、2本先取したほうの勝ちだ」
 操が簡単にルールを説明する。
「おお!!先攻はそっちからで良いぜ!初っ端からぶっ飛ばしてやる!!」
「いいだろう」
 操が岩の上にデスガランを置いて、狙いを定めてシュートする。
 シュンッ!
 デスガランは、スムーズに進み、真ん中で止まった。
「さぁ、お前の番だ」
「けっ、狙いやすい位置だぜ!」
 バンは、ヴィクターを岩のフィールドに置いて、狙いを定めてシュートする。
 
 シュッ、ガガガッ!!
「っ?!」
 しかし、シュートした瞬間、ヴィクターの動きは大きくブレ、狙いがそれるどころか、真ん中に届きもしなかった。
「な、なんだぁ?!どうなってんだよ……!」
「威勢が良い割には、腕は良くないみたいだな」
「ぐぐ……!」
 次は操のターンだ。
 操はじっくりとヴィクターに狙いを定めてシュートする。
「終わりだ!」
 
 ガッ!
 見事その攻撃はヒットし、ヴィクターを場外させてしまう。
「ああ!」
 バンは急いで地に伏せたヴィクターを拾う。
「まずは一勝」
「そんな……!」
 
 その様子を見ていたオサム達も驚きを隠せない。
「なんでだ?あのバンのシュートが、相手に届きもしないなんて」
「ヴィクターのあの動き……そうか!」
 マナブは何かに気付いたようだ。
「なんだ?」
「あの岩のフィールドが曲者なんだ。どんなに平らって言っても、自然に出来た岩の表面はどうしてもゴツゴツしてて粗い。しかもプラスチックのフィールドと比べて摩擦抵抗の高いから、ヴィクターの機動力が著しく下がってしまったんだ!」
「でも、あの操って奴は普通にシュートしてたぜ」
「きっと、シャーシをローグリップタイプにカスタマイズしてたんだ。そして、ウェイトもライトタイプにしているんだと思う」
「ウェイトを?」
「うん。フリックスは、ボディ、シャーシ、ウェイトの三つを自由にカスタマイズ出来る。そのうち、ウェイトはヘヴィ、バランス、ライトの三つの種類があるけど。普通にバトルするときは皆ヘヴィを選ぶ」
「そりゃ、重い方が攻撃力も防御力も強いからな」
「だけど、摩擦力が強いこのフィールドは重くするより軽くして機動力を稼いだ方が攻撃力が出るんだ!」
「な、なるほど……!」
 
 オサムとマナブの会話は操とバンの耳にも届いている。
「ほう、見事な分析だ」
「くっそぉ、カスタマイズなんて全然考えてなかった!えっと、ウェイトを軽くすればいいんだな」
 バンは、ヴィクターをバラして中のウェイトをヘヴィからライトに交換する。
「これでバッチリだぜ!」
 カスタマイズ完了。
「だが、それがお前たちの限界だな」
「なにっどういう意味だ!」
「今に分かる」
 と言いながら、操はチラッと空を見上げる。
 先ほどまでピーカン晴れ空には、少しずつ暗雲が立ち込めていた。
 
「いくぜ、第二回戦だ!」
 今度はバンが先攻だ。狙いを定めてシュートする。
 
 シュッ!
 
 先ほどとは違い、上手くシュートできた。
「おっしゃ!カスタマイズは成功だ!これで互角だぜ!!」
「それはどうかな?」
 操のターン。狙いを定めてシュートする。
 
 ガガッ!
 しかし、操のシュートは先ほどのバンのように安定しないものだった。当然ヴィクターに攻撃が届かない。
「なんだぁ?シュートミスかよ!」
 相手のミスを笑うバン。しかし、操の表情には余裕がある。
 
 それを見抜いたマナブは思案する。
「なぁ、今度はバンの方が優勢じゃないか?」
 オサムがそんなマナブに話しかける。
「いや、これは……操は、ウェイトをヘヴィにして、シャーシをハイグリップタイプにカスタマイズしてる!?」
「え、なんでだよ?さっきのカスタマイズがこのフィールドじゃベストだったんじゃないのか?」
「分からない。だけど、こういった状況を熟練している彼だ。きっと何かある。バンッ!気をつけて!!」
 嫌な予感がするマナブはバンに声援を送る。

「けっ、問題ないぜ!どーせ、俺と同じカスタマイズじゃ勝てないと思ってセッティング変えただけだろ!すぐに決めてやるぜ!」
 意気揚々とヴィクターの向きを変えつつ狙いを定める。
 と、その時……。
 
 ポツ……ポツ……と雨粒が落ちてきて。
 
 ザアアアアアアアアア!!!と土砂降りになった。

「あ、雨だ……!」
「大丈夫か、バン」
 マナブとオサムが心配する。
 
「こんな雨くらいどうって事ねぇ!いっけぇ!ドライブヴィクター!!」
 
 バシュッ!シュパアアアアアア!!!!
 
 バンのシュートによってヴィクターが雨粒をフッ飛ばしながらカッ飛んで行く。
「いけえええええええ!!!!」
 
 ガッ!!!
 ヴィクターは見事デスガランにヒットする。
 しかし……。
 
「いいっ!?」
 ヴィクターのアタックを受けたにも関わらず、デスガランはあまり動かなかった。
 それどころか、ヴィクターがリコイルで跳ね返され、ツルツルと滑っていく。
「うわわ、止まれヴィクター!!」
 なんとか、フィールドの端で止まる。
「ふぃ~、危なかった……でも、なんでだ?ヴィクターのセッティングはフィールドに合ってるんじゃないのか?」
 バンの疑問にマナブが答える。
「雨だ!岩の上に溜まった水が、ヴィクターのシャーシ裏側に薄い膜を作って、極端に摩擦抵抗をなくしている!そのせいで滑りすぎてヴィクターの攻撃力がなくなってるんだ!」
「な、なんだって?!」
 マナブの解釈に操が更に付け加える。
「そして、デスガランはヘヴィウェイトをつける事でこの雨の中でも十分な防御力を得ている。野外でのバトルは常に状況が一変する。一つのセッティングがいつまでも通じる道理は無い!」
 操の発言には確かな説得力があった。
「なるほど、さすがは百戦錬磨の流浪フリッカー。彼は旅を通じてさまざまな状況でのバトルを経験している。環境変化への状況判断はピカイチなんだ」
 恐るべし、鷺沢操……!
 
 そして、操のターンだ。
「ヴィクターは虫の息……決めるぞ、デスガラン!!」
 ヴィクターに狙いを定める。
「こ、このままじゃ……!」
 追い詰められるバン。
「ゆけぃ!!」
 操のシュート。勢い良くデスガランがヴィクターに向かってくる。
 
「くそっ、ありったけの力で防御するしかねぇ!」
 バンは気合いを込めてヴィクターの防御力を上げようとする。
 しかし……。
「いや、防御しない方が良い!!」
「え?」
 突如のマナブからの言葉に気を取られたバンはヴィクターへの防御力アップを解いた。
「あ!」
 
 ガッ!
 防御力を解いてしまった状態で、デスガランの攻撃がヒットする。
 当然、ヴィクターは大きく飛ばされて場外してしまう。
 
「う、嘘だろ……!」
「俺の勝ちだ!」
 操が勝利を確信する。しかし……。
「いや、まだだ!」
 
 ギュルルルル!!!
 ヴィクターをブッ飛ばしたデスガランの勢いが止まらない。
「なにっ!」
 そう、敢えてヴィクターの防御力を減らしたことで、攻撃後のデスガランの勢いがあまり減らなかったのだ。
 デスガランはそのまま勢いよく場外してしまう。
 
「同時、場外……でも、この場合は判定でシュートしたフリックスの負けになる」
 オサムが呆然と呟いた。
 そう、自滅したフリックスの攻撃は完全に無効となり、攻撃されたフリックスは元の位置に戻すのがルールなのだ。
 
「ふぃ……」
 バンはホッと一息つく。
「……首の皮一枚繋がったか」
 操はゆっくりと地に落ちたデスガランを拾う。
「だが、次で終わりだ!」
「そうはいくかっ!」
 
 第三ラウンドが始まる前に、バンはとりあえずヴィクターのセッティングを変更する。
 シャーシはハイグリップ。ウェイトはヘヴィ。デスガランと同じセッティングだ。
 
「頼むぜ、ドライブヴィクター!絶対に負けられないんだ!!絶対に!!!」
 先攻はバン。
 ドライブヴィクターをシュートして、操のシュート位置の手前にヴィクターを付ける。
「特攻作戦か」
「さぁ来い!次のターンで倒してやる!!」
 操のターン。
 目の前にいるヴィクター目掛けてデスガランで攻撃する。
 
 バキィ!!

 デスガランの攻撃を受けて飛ばされるヴィクターだが、位置的にフィールドの真ん中に飛ばされてしまう。
「よし、良い位置!決めるぜ」
「それは無理だ!この状況は俺が一番理解している!!このターンでは決まらない!!」
「いや、決める!!俺は、負けるわけにはいかないんだ!!」
 
 バシュッ!!
 バンのシュートがデスガランを攻撃する。
 
 デスガランはヴィクターにぶつかられ、飛ばされるもののフィールドの端でなんとか踏みとどまった。
「勝負は振り出しだな。だが、このままダメージレースで俺の勝ちだ!」
「まだまだああああ!!!」
 
 バチ……!バチバチバチ!!!
 
 突如、ドライブヴィクターから雷のようなエフェクトが走る。
「な、なに!?なんだこれは!!」
 今まで見た事の無い現象に、操は動揺する。
「エレメント発動!サンダーラッシュ!!!」
 
 サンダーラッシュ。HPを3消費する代わりに、もう一度フリックスをシュート出来る雷属性のエレメントだ!
 バンは再びドライブヴィクターの狙いを定める。
「バカな!二回シュートだと!?そんな事が可能なのか……!!」
「これが、俺とドライブヴィクターの絆だあああああ!!!!!」
 
 バーーーーーン!!!
 
 二回シュート炸裂!見事、カラミティデスガランを場外に弾き出した。
 
「……バカな」
 操は落ちたデスガランを拾おうともせず、呆然と立ち尽くした。
 
 
「「やったあああ!!」」
「やったね、バン!!」
「すげぇぜ!!」
 バン、オサム、マナブの三人は腕を組んで小躍りしながら勝利を味わう。
 
「……」
 操はその様子を見るでもなく、ただただ惚けていた。
「操」
 そんな操に、バンはデスガランを拾って、差し出した。
「……」
「良いバトルだったぜ!」
 バンは操にデスガランを差し出すのだが、操はそれを受け取ろうとしない。
「それは、受け取れん」
「え?なんでだよ、お前のフリックスだろ」
「俺はバトルに負けた。それは、もうお前のものだ」
 操が自分で定めたルールに則れば、負けた操のフリックスはバンのものになる。
 しかし……。
「俺は、厭だ!」
 バンはそれを拒否した。
「何故だ?そのフリックスは、負けてしまったものの、性能は決して低くは無い。少なからずお前の力になるはずだ」
「そうじゃない!俺は、またお前と!カラミティデスガランを使うお前と、もう一度戦いたいんだ!これを奪っちまったら、戦えなくなるだろ!?」
「なんだと……?負かした相手と、また戦いたいと言うのか?」
 バンの発言が信じられないと言う顔をする操。
「ああ!だって、俺に負けたお前は、もっともっと強くなろうとするはずだろ!だから、次に戦う時はもっと強いお前と戦えるんだ!なのに、そのチャンスを奪うなんて、勿体ねぇよ!」
「……」
 それを聞いて、ようやく操は理解した。
 バンの気持ちを。何故、フリックスを奪うのが間違いだと言ったのかを。
「そうか……」
 操は、バンからデスガランを受け取ると、静かに踵を返して歩いていった。
「あ、操!」
 バンは慌てて呼びかけたが、操は振り向きもせずにそのまま立ち去ってしまった。
 
 
 
 降りしきる雨の中、一人橋の上を歩く操は、バンの言葉を思い返していた。
 
 ”次に戦う時は、もっと強いお前と戦えるんだ!”
 
「得るためではなく、戦うために戦う……それがあいつの強さか」
 そう呟いた操の表情は穏かだった。
 
 
 

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弾突バトル!フリックス・アレイ第6話

第6話「エレメント覚醒 対決!Mr.アレイ」
 

 
 
 リサが段田家に居候して数日が経ったある日の放課後。
 
「ただいま~!」
 バンが玄関を開けて帰宅したかと思うと、すぐに居間にカバンを置いて外に出ようとする。
「あ、おかえり」
 出ざま、リサと遭遇する。リサは、バンの行く手を阻むように立っている。
「あぁ、リサ。ちょっと俺これから、公園で友達とバトルしてくるから。家でおとなしく留守番してろよ!」
 そう言って、今にも駆け出しそうなバンにリサは不満気な表情をする。
「また、行くの?」
「おう!今日もドライブヴィクターでダントツだぜぇ!ってことで、そんじゃ」
 片手をビシッと上げて、リサの横をすり抜けて行こうとする……が。
 ギュッとリサに裾を掴まれてしまい、それ以上進めない。
「な、なに?」
「……」
 リサは無言で、何かを訴えかけるようにバンを見つめてきた。
 しかし、バンにはリサが何を言わんとしているのか理解できない。
「?」
「……」
「??」
「………」
「???」
「…………」
「????」
「……………」
 しばらく、無言のリサと首を傾げるバンの睨み合いが続いた。
 
「もしかして、リサも行きたいのか?」
 ようやくバンはリサの心情を理解した。
 リサはコクリと頷く。
「だ、ダメダメ!お前は匿ってんだから、気軽に外に出たら危ないだろ!!」
「……」
 バンに全否定されてシュンと萎れるリサ。
 そういえば、リサを居候させてから、ずっと家から出していない。
 匿ってるんだからむやみやたらに外出させるわけにはいかないのだが、やはりそれは不憫だ。
 そう思ったバンは、少し考える。
「う~ん、でも確かにうちに篭ってるだけじゃ可哀相だよなぁ……」
 しばらくうなっていると、いいアイディアが浮かんだようだ。
「そうだ!リサ、ちょっと来い!」
 言って、バンはリサを奥の部屋に案内した。
 
  
 公園では、いつものように子供たちがフリックスに興じていた。
 
「いっけぇ!俺のゴールデン・エレガント・ブラスター!!」
 オサムはそこらの子供を相手にバトルしている。
「耐えろ!」

 ガッ!

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弾突バトル!フリックス・アレイ 第5話

第5話「謎の組織 遠山フリッカーズスクール」

 夕暮れに照らされた河川敷。
 リサを襲っていた謎の黒服の男を撃破したバンは、リサと二人っきりになる。


「さて、っと」
 少しの間気まずい空気が流れていたが、バンがやや強引に口を開く。
「邪魔者もいなくなった事だし。リサ、勝負しようぜ!」
 ドライブヴィクターを突き出して、バトルを申し込む。
「今度は負けねぇからな!」
 しかし、リサは反応が無い。呆然と虚空を見つめたまま、直立している。
「……」
 せっかく、強引に気合いを入れたのに、出鼻を挫かれてしまい、バンは更に居心地の悪さを感じる。
「き、聞いてんのかよ、おい……」
 と、肩に手を置こうとした瞬間。
「うっ、うぅ……」
 リサの肩が震え、瞳から大粒の涙が零れ始めた。
「うぇ!?」
 思わぬ反応に、バンは仰け反ってしまった。
「うぅ、ひっく……ひっく……」
 声を押し殺しながら、リサは泣き続ける。
「あ、えっと……」
 バンは、どうしていいのか分からず後頭部を掻いた。

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