弾突バトル!フリックス・アレイ 第13話

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第13話「ダントツを望む者」

遠山フリッカーズスクール校長室。
伊江羅博士が段冶郎から非難を受けていた。
「リサを逃してしまうとは、失態だぞ!伊江羅!」
「申し訳ありません。しかし、シェイドスピナーが完成した今、既に計画はお身内を使う段階ではないかと……」
非難を受けながらも伊江羅博士の口調は挑発的だ。
「なんだと……!」
「最強のフリッカーと最強のフリックスは一つあればいい。それとも、スクールの総力を結集して作り上げた作品が信用出来ませんか?」
そう言われ、段冶郎は口ごもる。
「……まぁよい。だが、これ以上の失態は許さんぞ」
「承知しております」
伊江羅博士はうやうやしく頭を下げた。
「ところで、次に開催されるタッグバトル大会に、ザキは投入しないのですか?」
「ふん、あのような低レベルな大会に出すほどザキは安くない。ザキのデビューにはもっと相応しいものを用意しておる。それまでザキの調整を怠るな」
「かしこまりました」
伊江羅博士は再びうやうやしく礼をした。

その頃のバン達。

「やれぇ!ハンマーギガ!!」
ハンマーギガの重いシュートがドライブヴィクターに向かう。
「う、うわああああああ!!!!」

 バーーーーーーーン!!!!!

ハンマーギガの攻撃により、ドライブヴィクターはあっけなく場外してしまう。

「ドライブヴィクター!」
バンは慌ててヴィクターを拾いに行く。
「バ、バン!?」
「がっはっは!他愛も無いのぅ!!」
剛志は豪快に笑う。
「ぐ、ぐぐ……!」
ヴィクターを拾ったバンは悔しげに歯軋りした。

「さて、次は僕の番だね!」
レイジのターン。
ミラージュレイダーをフレイムウェイバーに照準を合わせてシュートする。

 バシュッ!カシュッ!

見事にマインヒットする、のだが、ミラージュレイダーはフレイムウェイバーを乗り上げ、そのまままっすぐ突き進んでフレイムウェイバーから距離をとった。
「え?」
「よし!この位置なら狙いにくいだろう!!」
「今のは……!」
これでフレイムウェイバーはHP2だ。そしてリサのターン。
(ハンマーギガのHPは残り1。ミラージュレイダーは下手に狙うとどうなるか分からない……だったら、まずはハンマーギガから!)

「いっけぇ!!」

 ガキンッ!!
攻撃は見事マインヒット。ハンマーギガ撃沈だ。
「さすがにやられてしまったか。じゃが、マインの位置的に反撃は受けやすいぞ」
「くっ!」
「次は僕のターンだね」
レイジのターン。
 バシュッ!カンッ!!
マインヒット。フレイムウェイバーのHPは残り1になる。

「私のターン……!」
リサのターン。レイダーめがけてシュートする。

バチッ!
マインヒットしつつ、距離を取ろうとする。しかし…
「しまった!」
手応えのなさすぎるミラージュレイダーに対して力加減をミスってしまい、そのまま自滅してしまった。
「そ、な……!」
これで、フレイムウェイバーも撃沈。
この勝負、バンとリサタッグの負けだ。

バトルが終了し、バンとリサは剛史らに帰り道を教えてもらい、見送られる形で屋敷を出た。
「がっはっは!なかなか良いバトルだったぞ!!」
「でも、僕と剛志のコンビネーションが一番だよね!」
勝利に喜ぶ二人の声を背中に受けながら、バンとリサはトボトボと帰路についた。

「負けちまったな……」
「うん」
「また、負けたな……」
「うん……」
バン達の足取りは重い。
修行の旅に出て、最初のバトルでもう負けてしまった。出鼻をくじかれてしまった。
「ダメだ!ダメだダメだ!!こんなんじゃ!!リサ、この近くにフリックスバトルが出来る奴がいないか、探そうぜ!!」
「え、う、うん……!」
そして、バンは山のふもとの村を駆け巡って、情報収集を始めた。

良い情報はすぐに仕入れられた。
村の小さな玩具店で非公式の店舗大会が行われていたのだ。
早速バンたちはその大会に参加する。
「いけぇ!ドライブヴィクター!!」

 バキィ!!

「フレイムウェイバー!!」

 カキンッ!!!

その大会で、バンとリサは圧倒的な力を見せてトーナメントを勝利した。
「へっへ~ん、やったぜ!!」
結果は、リサが優勝でバンが準優勝だ。
「決勝では惜しくもリサに負けちまったが、でも久々に連戦連勝できてスッキリしたぜ!」
「うん!」
胸にシコリは残るものの、連敗続きだったのでこの勝利は心の栄養となったようだ。
そんな、二人の前に一人の男が現れた。
「なるほど、あのレベルの大会が妙に盛り上がっていると思ったら、お前が参加していたのか」
「お前は、鷺沢操!」
7話で登場した流浪のフリッカーだ。今はここを旅しているようだ。
「パッと参加者を見た時は大した実力者もいなかったから参加しないでおいたんだが、お前が出るのであれば参加するべきだったな」
「へっ、それは残念だったな!ワンツーフィニッシュは俺達がいただいたぜ!」
メダルを突きつけて自慢げになるバン。
「ふん。しかし、らしくないな。その程度の大会で勝利したくらいで浮かれているとは」
「うっ!べ、別にいいだろ!どんなバトルだって勝てりゃうれしいんだよ!!」
「確かにな。だが、今のお前の喜びは陰りが見えるぞ」
「な、なんだよ!喧嘩売ってんのかよ!!」
遠まわしな操の言い方に、バンはムッとする。
「かもしれんな。せっかく赴いた地で望むようなハイレベルなバトルができず、少々欲求不満なのだ。付き合え」
「ああ、やってやるぜ!」
と、言うわけで、バン達は再びあの玩具店に移動し、店のフィールドを借りてバトルをする事にした。

思わぬバトルの開始に、子供達がやんややんやと集まってくる。
「なんだなんだぁ!?」
「もう大会は終わったのに」
「あ、あの人って大会で準優勝したお兄ちゃんだ!」
「もう一人も強そうだぞ!」
「こりゃ、面白いバトルが見れそうだ!!」
店主的にも、これは良い宣伝になりそうなので、喜んでフィールドを提供してくれた。

「よし、バトルスタートだ!」
アクティブシュートでバンが先手を取った。
「一撃でぶっ飛ばしてやる!ドライブヴィクター!!」

 バシュッ!!ガンッ!!
ドライブヴィクターのアタックがヒットする。が、逆にヴィクターのほうが弾かれてしまう。
「なにっ!こいつ、前よりも防御力がアップしてやがる」
「お前に負けた俺は、もっと強くなって立ちはだかる。前に自分で言った事だろう!」
操のターン。

 バシュッ!!バキィ!!!
至近距離からのデスガランの一撃!これは重い!ヴィクターが大きく弾かれてしまう。
「ヴィクター!!……あっぶねぇ!負けるかと思った……」
「むっ?」
「負けられねぇ!絶対!負けられねぇ!!」
バンのターン。

バシュッ!カキンッ!!

攻撃がヒットするが、またも見事に防御されてしまう。
「くっそぉ!!なんでだよ!!これじゃ、負けちまう……!」

そしてお互いに決め手に欠けるままマインヒットでジワジワ削りあってHP1になる。

「くそ、後がねぇ!どうにかしないと負ける…!くそ!」
「……」
操のターン。
しかし、操は押し黙ったまま動かない。
「どうした?動かないのかよ!」
「なるほど、それがお前の陰りか」
「なにっ!」
「お前、勝ちたいのではなく『負けたくない』のだな」
「っ!?」
図星をつかれ、バンは目を見開く。
「失望したぞ、段田バン」

 “あまり失望させるな”

操の台詞とMr.アレイの台詞が重なる。
「う、あ……」
バンは、ヨロヨロと後ずさった。
「負ける事を恐れず、ただ勝ちたいとだけ願い、そして相手の勝ちたいと言う願いも一身に受け止め、それ自体を楽しむ。それがお前の強さだったはずだ。それとも、それは俺の買いかぶりか?」
「……」
「何があったかは知らんが。少なくとも俺はお前からそれを学んだ。そして更に強くなった!その強さを持った俺の前に、今のお前では力不足だ!!」
「今の、俺……」
操の言葉に、バンはここ最近の自分を振り返ってみた。
(今の俺と、昔の俺、何か違うのか……あいつの言うとおり、俺は負けるのが怖くなってた。だから、自分より弱い相手に楽勝した事で安心していた。勝ったのが嬉しかったんじゃない。負けなくて安心したんだ。だけど、それじゃ……)
バンはハッとした。
(そうだ、俺は……!)
そして、バンは操をキッと見据える。その瞳に迷いはなかった。
「操……ドーンと来い!強くなったお前の、最大限のパワーで!!」
「フッ、ようやく陰りが消えたな。だが良いのか?今の状態で俺の全力シュートを受けたら、負けてしまうかも知れぬぞ?」
「構うもんか!それよりも、俺はお前の全力シュートを受けてみたい!!そして、絶対に耐えて勝ってやるんだ!!」
「よかろう!!」
操がデスガランを構える。
「はあああああああああ!!!!」

 バシュウウウウウウウウウウ!!!
操の渾身のシュートが放たれる。
物凄い勢いだ。
「うおおおおおおおおお!!!!」
バンも気合いを入れてこれを耐える。
ヴィクターがフッ飛ばされる。フィールドを滑りながら、場外へと向かう。
「バ、バン!」
「堪えろ!ドライブヴィクター!!!」

 キュルルルル!ピタッ!
間一髪。フィールドの端でヴィクターは堪えた。
「よっしゃ!」
「耐えたか……!だが、今の防御でかなりの体力を消耗したようだな。次のターン、全力で撃てるのか?」
全力で防御したために、バンは息切れしている。シュートの攻撃力にも影響が出そうだ。
「撃ってやる……!今の俺の全力を!!」
ヴィクターを構えて、気合いを込める。

「うおおおおおおおおおお!!!!いっけええええええええ!!!!!」

 ズゴオオオオオオオオオン!!!!
 ヴィクターが空気を吹き飛ばしながらもう突進していく。

バキイイイイイイイ!!!!
そして、デスガランを一気に場外まで弾き飛ばしてしまった。
「おっしゃ!!」
「いや、まだだ!!」
が、デスガランをフッ飛ばしたは良いが、ヴィクターの勢いがとまらない。
「いぃ!!」
シュートの勢いのまま、場外へと滑っていく。
「と、止まれヴィクター!!」
バンの願い空しく、ヴィクターは場外してしまった。

バトル終了。バンの自滅で、操の勝利。
「くっそー、負けちまったか~」
「詰めが甘かったようだな」
「ちぇっ、まぁでも、楽しかったぜ!」
バンと操が握手をする。
「そうだよな、全力でフリックスを撃てば、勝っても負けても楽しいんだよな!」
「バン……」
「当たり前だ」
「よっしゃ、リサ!行こうぜ!」
バンはリサに呼びかけて駆け出す。
「え、う、うん!」
リサも慌てて追いかける。

「もう誰に負けようが怖くねぇ!何回でも負けて、何回でも勝ってやる!!だけど、最後には俺がダントツ一番だああああ!!!」

つづく

 次回予告

 

BGM:フリー音楽素材 Senses Circuit

 

炎のアタッカーユージンの競技玩具道場!!フリックスの特別編

 

うっす、ユージンだ!

今回、新たに登場したエレメント『シャイニングヒール』は、ディシジョン戦術において圧倒的な強さを持っていた『フレイムバレット』に対抗するためのエレメントだ。

自分以外のターン終了後に発動可能で、そのターンで受けた数値的ダメージをすべて無効化できる。しかもHPが0になっても発動できるから、フレイムバレットを受けた後に発動すれば4ダメージ無効化出来るのだ。

ほかのエレメントを持つ相手に対しても実質的にHPが11あるのと同じになる。

速攻でディシジョンするフレイムバレットとは反対に、守りでディシジョン勝利するタイプのエレメントと言えるね

 

そんじゃ、今回はここまで!最後にこの言葉で締めくくろう!

 

本日の格言!

『敗北こそ、勝利への近道だ!』

 

この言葉を胸に皆もキープオンファイティンッ!また次回!!

 

 

 

 




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