弾突バトル!フリックス・アレイ 第10話

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第10話「スクールの切り札!闇のフリッカー誕生!!」
 
 
 
 遠山フリッカーズスクールは、高層ビルの中に存在してた。
 その袂で二人の少年が、退屈そうな心配そうな表情で近くの植栽の傍で座っている。
「バンが潜入してから、もう40分か。大丈夫かな?」
「下手にこっちから連絡も取れないしね。待つしかないよ」
「あぁ~~、せめて中の様子でも分かればなぁ~~!!」
 オサムが頭を掻き毟りながら言う。バンほどではないがオサムも短気だ。
「落ち着いてよオサム」
「分かってるけどさ。あ~、なんか喉渇いてきた。マナブ、ちょっと近くのコンビニ寄ってくるから。なんか欲しいものとかあるか?」
「ん、そうだね。じゃあ何か冷たい物」
「おう!」
 片手を上げてオサムは駆けていった。
 まるで、行列にならんでいる二人組状態だ。
 
 一方のバンは……。
「おわわわ!!!」
 スクール内の廊下をひた走りながら、激動の時間を過ごしていた。
 
 天井に設置された無数の機械から無数のフリックスがどんどん射出されてくる。
「くっそー!なんだよこの機械は!!」
 咄嗟にドライブヴィクターで迎撃する。
 
 ドガアアアアアア!!!
 
 空中で激突し、ドライブヴィクターがそのフリックスたちを一掃していく。
 パワーの差は歴然だ!
「はぁ……はぁ……!」
 とは言え、こうもキリがないとさすがに体力の消耗が激しい。
「くそっ、あと一階で一番下なんだ……!諦めてたまるかぁ!!」
 体に鞭打って、バンは駆け出し最後の階段を降りる。
 ガンガンガンッ!
 乱暴に1段飛ばしで階段を駆け下りて、ついに最地下に辿り着く。
「ここか……?」
 スクールの中は殺風景な場所だったが、ここは更に殺風景だ。
 階段の隣にあるエレベーターから真っ直ぐに延々と伸びている廊下……その先に、謎の扉がある。
「……」
 他に特に分岐点も見当たらない。
 リサが居るとしたら、あそこだ。
 バンは、覚悟を決めてその道を歩いた。
 罠がないかどうか、慎重に周りを見ながら進む。
 そして、扉の前まで行きそうになった時。
「ここから先へ行かせるわけにはいかないな」
 突如、後ろから見知った声が聞こえた。
「その声はっ!」
 振り向くと、そこに居たのは白衣の男……伊江羅だった。
「……?」
 バンは面食らった。そいつは見た事のない男だった。
「お前が、スクールに侵入したと言う……段田バンか」
「誰だお前は!!」
 妙な違和感を覚えたが、今はそれについて考えている余裕はない。
「俺の名は伊江羅。このスクールでフリックスの研究開発をしている科学者だ」
「博士……か」
 バンは伊江羅の言葉を自分に分かる単語に置き換えて呟いた。
「まぁ、そのようなものだな」
 伊江羅は特に否定せずに言った。
「博士に用はない!そこをどけぇ!!」
 腕を振って、どくように威嚇するバンだが、伊江羅は鼻で笑うだけだ。
「それは出来ない。この先では私の研究開発の最終テストが行われている。科学者として邪魔立ては許さない」
「研究って……まさか、リサに!?」
 この先にリサがいる可能性が高い。そこで研究開発だと……!
「てめぇ!リサに何をしてるんだ!!!
「お前には関係ない」
「くっ!」
 伊江羅は微動だにする気配がない。
 このまま押し問答していても、時間が経つだけだ。
「こうなったら……勝負だ!!」
 バンはドライブヴィクターを突き出した。
 フリックス関係者に、言葉での戦いは意味がない。バトルをする事でしか決着はつけられないのだ。
「俺が勝ったら、そこをどけ!!」
「……いいだろう」
 伊江羅はそう言うと、懐から何かのスイッチみたいなものを取り出しそのボタンを押す。
 すると、天井に穴が空き、そこから長方体のフリックスのフィールドらしき台が降ってきた。
「一回勝負。こんな事に時間はかけられないからな」
「おお!」
 バンはドライブヴィクターを台の角に置く。

「アクティブシュート!!」
 

 バシュッ!
 先手はバンが取った。
「行けっ!!」

   バンの攻撃はあっさりとバリケードで耐えられるが、マインヒットはできた。

「よし!」
「ふんっ、雑なシュートだ。完全に頭に血が上っているな」
 伊江羅はプロトアレイ01を使用している。
 
 バシュッ!ガンッ!
 伊江羅の攻撃がマインヒット!ドライブヴィクターのHPは残り2だ
「やるなっ!」
「科学者と思って甘く見ないほうがいいぞ」
「けっ!最初っから手加減するつもりはない!いくぜ!!」
 バンがフリップアウト狙いで思いっきりシュートする。
 
 バシュウウウウウ!!バキィ!!!
 見事猛攻がヒット!しかし……。
「なっ!耐えた!?」
 プロトアレイは、大きく飛ばされたものの、フリップアウトには至らなかった。
「そんなっ、絶対フリップアウトできると思ったのに……!」
「ドライブヴィクターは、最大攻撃力は高いが、その分ムラが大きい。上手くヒットさせなければその攻撃力は活かせない」
「くっ……!(こいつ、なんでそんなにドライブヴィクターの事に詳しいんだ?)」
 少し疑問を感じながらも、伊江羅のターンだ。

「だが、ここは少々位置が悪いな」

そう呟いて、自分のマインの位置をドライブヴィクターの後ろへ置き直した。

「な、なんだ!?」
「マイン再セットだ。さぁ、お前のターンだぞ」

「あ、あぁ、そっか…!」  

自分のターンにできることがなければマイン再セットすると言うのは定石だが、頭に血が上っていたバンはそんな事にも狼狽えてしまった。
 
 一方のリサは。
 閉じ込められた独房の前に鋭い目つきの少年が現れた。
「せいぜい、楽しませてくれよなぁ!」
 そう言って、少年はフリックスを取り出す。
「っ!」
 それは見た事もない黒いフリックスだった。
「はああああ!!」
 気合いを込めてフリックスを扉を閉じている南京錠へシュートする。
 
 バキィ!!
 そのフリックスの攻撃で南京錠は砕けてしまった。
「……」
「出ろ。バトルの始まりだ」
 少年に促されるまま、リサは檻から出た。
「おっと、変な事は考えるなよ?お前は俺と戦うために出してやったんだからなぁ」
「……」
 言われるまでも無く、変な事をする気はサラサラなかった。
 出られたものの、このまま逃げ出す事は不可能だろう。
 この少年とのバトルは避けられない。
 すると、後ろのモニターから段冶郎の声が聞こえてきた。

『リサよ。この少年こそ、我がスクールが総力を結集して作り上げた最強のフリッカー、ザキだ!』
「ザキ……」
 聞いた事もないその名を呟く。
 フリッカーを、作り上げた?その言葉の意味がイマイチ飲み込めない。
『お前の言う楽しいフリックスバトルというものを、ザキ相手にも見せるがいい。そして、ザキに勝ってみせよ。そうすれば、お前の望みは聞いてやろう』
 段冶郎はさも楽しそうに言う。
 リサが、自分の孫が、スクールナンバーワンのフリッカーが、目の前の得体の知れない少年に絶対に勝てないと、そう言っているような口ぶりだった。
 
「さぁ、やろうぜぇ。楽しいフリックスバトルって奴をよ」
 ザキが卑下た笑いを浮かべた。
「……」
 その態度に不快感を覚えつつも、リサはフレイムウェイバーを取り出す。
 
 リサとザキの間にはいつの間にかフィールドが出現していた。
 さすがはフリッカーズスクールいつでもどこでもバトルが出来るようにフィールドが出現する仕掛けをそこかしこに設置しているのだろう。
 

「おらいくぜ!アクティブシュート!!」

バシュッ!

同時にシュートする二人。リサは得体の知れない少年の攻撃を避けるようにしてフィールド端まで進んだ。

 先攻はリサだ。
 
 シュパァァァ!!
 フレイムウェイバーは華麗に滑ってマインに接触したのちにザキのフリックスに接触。更にザキのフリックスから見てフィールド端から遠い方角へ設置できた。
 この位置ならば、フリップアウトされる心配が少ない。マイン合戦になっても先攻をとったリサが有利だ。
「へぇぇ、上手いもんだなぁ。んじゃ、俺のターンだな」
 ザキが、黒いフリックスをスタート位置に置いて構える。
 狙いはもちろん、目の前にいるフレイムウェイバーだ。
「はあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 フリックスを構え、気合いを込める。すると、ザキの周りに闇のオーラが立ち込めだした。
「っ!」
「いくぜぇ……シェイドスピナァァァァ!!!!」
 
 ガッ、ズゴオオオオオオン!!!!!

 凄まじい衝撃波を放ちながらシェイドスピナーがシュートされる。
 そして、フレイムウェイバーにぶつかり、フレイムウェイバーは大きく飛ばされてしまった。
 ギリギリ、フリップアウトは免れたものの、フィールドの角から、対角線上の反対側の角ギリギリまで、飛ばされてしまった。

「ちっ、決まらなかったか」
「……」
 リサは、唖然とした。
 確かにフレイムウェイバーもリサも防御は得意ではない。でもリサがつけた位置は、フリップアウトするために最も距離を有する位置だ。
 なのに、あいつは、そこからたった一撃で対角線上の角までフッ飛ばしてしまった。
 もし、もしも、少しでもフレイムウェイバーの位置が場外まで短い距離だったら……。
「あ!」
 さらに、あれだけのシュートを撃ったにも関わらず、シェイドスピナーの位置が、フレイムウェイバーが元いた位置からあまり動いていない。
 普通、強力なシュートを撃ったら、勢いで自分のフリックスも動いてしまうものなのに……。
 
 シュルシュルシュル……。
 更にシェイドスピナーを良く見ると、その場でクルクルと回転しているのが分かった。
「スピンシュート……」
 そうか。スピンシュートならば少ない移動距離で高い攻撃力を得られる。だからこそ、あれだけ強力なシュートを自滅を恐れずに放つ事が出来るのだ。
「さぁ、お前のターンだぜ」
「……」
 もし、そうだとしたら、一撃でもあの攻撃を受けたら、アウトだ。いつものマイン戦術は通じない。
 だったら……!
「いけっ!」
 
 シュッ!
 
 リサは、シェイドスピナーから最も近い角ギリギリにフレイムウェイバーをつけた。
 下手に攻撃を受けられないのならば、自滅を誘うしかない。
 スピンシュートは遠距離での狙い撃ちは難しい。
 そして、リコイルで横に弾かれる事が多い。
 つまり、角の敵を攻撃すれば、そのリコイルで同時場外をしてしまう確率が高いのだ。
 
「……」
 無論、それは奴が先ほどのように全力でシュートしてきた場合だ。
 もし、奴が全力スピンシュート以外の戦術を使ってきたら……。
「同時場外誘ってるってわけか?」
「っ!」
 見抜かれたっ!
 もう、この戦略は通じない……!
「いいぜ、乗ってやるよ」
 が、ザキはリサの作戦を見抜いたにも関わらず、敢えてその戦術に引っかかることを宣言した。
「え……!」
「よく見てな……どんな戦術も、どんなテクニックも、圧倒的な力の前には無意味だって事を教えてやるよ……!」
 ザキがシェイドスピナーを構える。
「はああああああ!!!!」
 先ほどと同じ、物凄い気合いだ。
 だが、それでは自滅してしまうはずだが……!
「……」
 リサは身構えた。嫌な予感がする。
 この戦術に隙はない。しかも相手は引っかかってくると言った。
 ならば、リサの勝ちはもうこの時点で決まったようなものだ。
 なのに、なのに、この不安はなんなのだろう。
 何かがある。シェイドスピナーとザキには、まだ誰も知らない何かが……。
 それがあるからこそ、奴はリサの作戦に自分から乗り、そして今も余裕の表情を浮かべているのだ。
 でも、それが何なのか分からない。
 どんな戦術も、テクニックも、パワーも、リサの作戦に乗ったまま攻略できるものが何一つ思い浮かばない。
「砕け……シェイドスピナァァァアァァァァ!!!!」
 
 ズギャアアアアアアアアアアア!!!!!
 
 シェイドスピナーが先ほど以上の回転でフレイムウェイバーに襲い掛かる!
 物凄い迫力だ。
 しかし、どんなにパワーが脅威でも、この状態ではパワーが強ければ強いほどリサの勝利が近くなる。
 
 ズビャアアアアアアアアアアア!!!!!
 空気を切り裂きながらどんどん迫ってくるシェイドスピナー。
 もう、このままぶつかるしかない。
 
「っ!」
 ぶつかる直前、リサは目を瞑った。
 
 ズガアアアアアアアン!!!!
 凄まじい衝撃音。シェイドスピナーの攻撃がフレイムウェイバーにヒットしたのだ。
 当然、フレイムウェイバーは場外してしまう。そして、シェイドスピナーも同じように……。
 
 リサは、恐る恐る目を開けた。
「えっ!?」
 そこには、信じられない出来事が起こっていた……!
 
 
 一方のバンと伊江羅のバトルは熾烈を極めていた。
「ば、ばかな……!」
 バンは、唖然としていた。伊江羅のバトルに。
「ふ、俺がドライブヴィクターの弱点を付けるのがそんなに不思議か?」
「こいつ、まるでドライブヴィクターの事を知り尽くしているみたいだ……!」
「それだけではないぞ!」
「なにっ!」
「喰らえ!!」
 
 バシュッ!ガキンッ!!
 プロトアレイの攻撃がヒット!ドライブヴィクターが大きく飛ばされる。
「耐えてくれ!!」
 ギリギリ、フィールドの端で耐えた。
「よし、決まらなかったらこっちのもんだぜ!」
「それはどうかな?」
「なにっ!……あっ!」
 気付いた。
 ドライブヴィクターはフィールドの端、そしてプロトアレイはそのドライブヴィクターからかなり近い位置に居る。ここからフリップアウトさせるにはかなり距離がある。
「一撃じゃ決まらなくても……!」
「だが、その次のターンで俺は再びお前を追い詰めるぞ。ドライブヴィクターの動きはお見通しだ」
「くっ!」
 そうなれば、徐々にドライブヴィクターはフリップアウトに近づいていく。
「それでも全力シュートでフリップアウトさせれば……!」
「甘いな。ドライブヴィクターは攻撃力のムラが大きい。今の消耗した状態でベストの攻撃力を相手にぶつけられるのか?」
「うっ!」
 痛いところを突かれて狼狽える。
「ドライブヴィクター……」
 バンは、縋る思いでドライブヴィクターを見る。
 すると、ドライブヴィクターは廊下のライトに反射してピカッと光った。
「あ……そうだな。ビビッてる場合じゃねぇよな!!」
 そういうとバンは、ドライブヴィクターの上で左腕を真っ直ぐ突き出した。
「なにを……」
 手の影が、ドライブヴィクターの上に真っ直ぐ伸びる。
「よし……そこだ!!」
 バンは、右手でドライブヴィクターを構えて、シュートする。
 
 シュバアアアアアアアアアア!!!!
 
 ドライブヴィクターは真っ直ぐブッ飛んで行き、プロトアレイにヒットする。
 
 バキィ!!!

「なに!?」
 
 強い衝撃を受けて、プロトアレイは大きく飛ばされた。
 
「いっけええええええええ!!!!!」
 
 そして、プロトアレイはたまらずフリップアウトしてしまった。
「……」
「おっしゃぁ!やっぱり俺がダントツ一番だぜええええ!!!」
 ドライブヴィクターに頬ずりしながら喜ぶバンを見ながら、伊江羅は悟った。
「なるほど、左腕の影をサイト代わりにして狙いをつけたのか。ふっ、面白い事をする……」
 光が真っ直ぐ進むのと同じく、影も真っ直ぐ伸びる。その性質を利用したのだ。
「約束だ!すぐにこの扉を開け」
「いいだろう。もう、全て終わっている頃だろうしな」
「なにっ!?」
 伊江羅は不敵に笑うと、扉を開いた。
 バンは伊江羅を押し退けて、その中に入る。
「なんだ、ここは……!」
 そこに広がっていた光景は、まるで刑務所のような、檻がたくさんあるところだった。
「ここは、反省房。スクールに歯向かった者を閉じ込める場所だ」
「そ、そんなところにリサを……くそっ、すぐに助け出してやる!」
 バンは、ダッ!と駆け出す。
 そして、その先にリサの姿を見つけた。
「あ、いた!リサーーーー!!!」
 リサの名を叫び、その場所へと近づく。
 しかし、何か様子がおかしい。
 近づくたびに少しずつ状況が分かる。リサと、もう一人誰かいるようだ。バトルをしていたのか……?
 そして、バンは全ての状況を把握できる距離に辿り着いた。
「な、なんだこれは……!?」
 そこで、バンが見たものとは……?
 
 
 
      つづく

 

 次回予告

 

BGM:フリー音楽素材 Senses Circuit

 

炎のアタッカーユージンの競技玩具道場!フリックスの特別編

 

うっす、ユージンだ!

今回は衝撃的な展開だったね!

突如現れた謎の少年、ザキ!その力はあのリサをも圧倒するほどのものだった!

彼の扱うシェイドスピナーは、どうやら回転攻撃を得意とするようだけど……

まだまだ隠された能力がありそうだ!今後も要チェックだぜ!!

 

そんじゃ、今回はここまで!

最後にこの言葉で締めくくろう!!

本日の格言!

『諦めかけた時にこそ逆転のチャンスがある!』

 

この言葉を胸に、皆もキープオンファイティンッ!また次回!!

 

 

 

 

 

 

 




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