弾突バトル!フリックス・アレイ 第8話


第8話「銭湯で戦闘!?危うしリサ」
 
 
 
 ある日の夕食後の段田家。
 父はキッチンで洗い物。リサとバンは片付けたテーブルの上でフリックスをしていた。
 
「うりゃ、いけぇ!ドライブヴィクター!!」
 テーブルの上で縦横無尽に動き回るドライブヴィクターとフレイムウェイバー。
 とは言え、本気のバトルというよりも単なるお遊び的な、じゃれてるようなものだ。
「フレイムウェイバー!」
 
 カツン!カツン!
 と、子供のお遊びのように軽くぶつかり合う。
 
「おっしゃぁ、いっくぜぇ!!」
 バンは遊びに似使わない気合いを込めて、構える。
 ドライブヴィクターの狙う先にはフレイムウェイバーがいる。そして、その先には……流しで洗い物をしている父の姿があった。
 しかし、バンはそんな事お構い無しに、強力なシュートを放った。
 
「いっけえええええええ!!!!」
 
 バシュウウウウウウウ!!!
 ドライブヴィクターが空気を切り裂きながらフレイムウェイバーに突っ込んでいく。
 
 バキィィィ!!!!
 
 勢い良くフレイムウェイバーを弾き飛ばす。しかし、その程度ではドライブヴィクターの勢いは収まらない。
「あ、うわわ!止まれヴィクター!!」
 もう遅い。ドライブヴィクターは軌道を変えぬままキッチンへ向かい……。
 
「ん?」
 異変に気付いた父が顔を上げる。そこには、物凄い勢いで突っ込んでくるドライブヴィクターがあった。
「う、うわあああああ!!!!」
 咄嗟に右腕で顔を庇う。
 そして、ヴィクターは流しに突っ込み……。
 
 ドガアアアアアアアアン!!!!
 
 ヴィクターの運動エネルギーに、流しの水や洗剤が直撃し、大爆発してしまった。
 
「……」
「……」
「……」
 リビングは、一面水浸しの泡まみれ。バン、父、リサもビショビショになってしまった。
 
「あ、ヴィクターにウェイバー!」
 水浸しの部屋の中で、バンはヴィクターとウェイバーを見つけて、拾った。
「よかった、無事だったんだな。リサ、ほらウェイバー」
 リサにフレイムウェイバーを渡す。
「ありが、と……」
 リサは戸惑いながらもそれを受け取る。
 と、バンの後ろから巨大な影が迫ってきた……!
「よかった……だと……?」
 ゴゴゴゴゴ!と邪悪なオーラを纏いながら、それはどんどん大きくなっていく。
「あ。やべ」
 それに気付いたバンはゆっくりとその場を去ろうとする。
「くぉらああああばあああああん!!!!!!」
 しかし、そのオーラを纏った存在……バンの父は、素早く拳骨をバンのドタマにブチ落とした。
 
 ガッツーーーン!!!
 小気味良い音が鳴り響く。
「いってええええ!!!!」
 ぷっくりと膨らんだタンコブを両手で押えながら、バンはしゃがみ込んだ。
「ったく、お前と言う奴は!!もう金輪際家の中でフリックスをやるのは禁止だ!!!」
「えええええ!!!」
 バンは不満気な声をあげる。
「えええええ!!!じゃねぇ!!どうすんだよ、この有様を!!」
 父は激昂し、燦々たる状態のリビングを指す。
「そ、それは……ごめん……」
 バンは小さく素直に謝った。それに習ってリサも頭を下げる。
 
「う~、ベトベト……クチュンッ!」
 リサが小さくクシャミをする。体中の泡が鼻を刺激したようだ。
 
「とりあえず、まずは風呂だな……」
 父は洗剤でベトベトになった髪をボリボリ掻きながら風呂場へ向かった。
「ちぇ、本気で殴りやがってぇ……」
 バンは涙目でまだ痛む頭を擦る。
「これは、私たちが悪いから、しょうがないよ」
「まぁ、そうだけどさぁ……」
 リサに静かに咎められると、バンもようやく反省の色を見せた。
 
「なにいいいいいい!?」
 ほどなくして、風呂場から父の驚声が聞こえてきた。
「どうしたんだ、父ちゃん!?」
 その声を聞いて、バンとリサも駆けつける。
 風呂場では、流した水に手をつけながら唖然としている父の姿があった。
「お、お湯が出ねぇ……」
 
「えええええ!?」
 二人は驚いた。
 
 その原因を探るため、父は再びキッチンに戻る。
「あ~、こりゃさっきの衝撃で給湯器が完全にイカれてるなぁ」
 この家の給湯器はキッチンに備え付けてあり、流しから風呂場まで全てのお湯を担っているようだ。
「その、きゅうとうきがイカれてると、どうなるんだ?」
「家中の水道からお湯が出なくなる」
「な!?直んないの!?」
「こりゃ、明日業者に頼むしかなさそうだなぁ」
 父も完全にお手上げのようだ。
「そんなぁ……それじゃあ風呂に入れないじゃん!!」
「誰のせいだと思ってんだ」
 ゴツンッ!ともう一度バンの頭に拳骨を落とす。
「とは言え、このままじゃな……仕方ない。銭湯にでも行くか」
 
「??」
 父の提案に、二人は首をかしげた。
 
 父に連れられるままバンとリサは街灯に照らされた夜道を歩く。
 三人は洗面器を持っており、その中にはタオルやら洗剤やらが入っている。
「父ちゃん、こんな夜中に外に出てどこ行くんだよ?」
 父に持たされたのであろう洗面器と父の顔を交互に見ながら、バンが問う。
「だから、銭湯だっつっただろ?」
「せんとう……?戦うのか!?」
 バトルと聞いてバンの目が輝く。
「ちゃうわアホ!銭湯ってのは、風呂に入れてくれる店の事だ」
「ふ~ん」
 説明を受けてもまだピンときていない。
「昔一回連れてった事あるんだけどな。まぁ、あん時はお前幼稚園児だったから覚えてないか」
 父の言うとおり、バンには銭湯の記憶が残ってないらしい。
 しきりに首をかしげながら、『銭湯とはどんなものなのか?』と想像力を働かせている。
「って、それよりもだ」
 父が声のトーンを落として話題を変える。
「ん?」
「リサちゃんの、その格好はなんだ?」
 リサには、第6話でしたような変装をさせている。
「リサじゃねぇ!リサ山リサ子!ほら、スクールの奴らから匿ってんだから、外に出す時は変装させなきゃマズイだろ!」
「まぁ、そうだけど。その偽名はどうなんだ……?」
 リサも微妙な顔をしている。
 
 そうこうしているうちに、三人は濛々と湯気の立ち込める煙突のある建物、銭湯の前に辿り着いた。
「ここが、銭湯だ!」
「「おお~!」」
 三人は、『松の湯』とかかれた暖簾をくぐって中に入る。
 
「いらっしゃい!」
 番台に立っている男が威勢よくバンたちを迎える。
 銭湯の中は、仄かに熱気の混じった湿気が立ち込めていて、なんだかベトベトの体にはあまり心地よくなかった。
 
 父が受付を済ませ、いよいよ三人は更衣室の前に立つ。
「そんじゃ、リサ……子ちゃんは、ここで一旦別れるけど、一人で大丈夫かい?」
「うん」
 リサはうなずいた。
「あれ?なんでリサだけ別なんだ?一緒じゃないと危なくないか!?」
「一緒だともっとまずいんだよ……」
 相変わらずなバンの反応に、父は額を押えた。
 
 浴場は、湯気が濛々としていて、受付の時よりも熱気に包まれていた。
「ひゃ~!ひっろい風呂だ~!!!」
「バン、あんま騒いで他の人に迷惑かけるなよ」
「分かってるって!」
 ダッ!と湯船に飛び込もうとするバンの頭を父が掴んで止めた。
「待て。体洗うのが先だ」
「……は~い」
 
 父に言われたとおり、シャワーの前で体を洗う事にした。
 ゴシゴシゴシと石鹸の泡をタオルで体中に擦っていく。
「ふんふんふふ~ん♪」
 いつもと違うお風呂がなんとなく楽しいのか、いつもはめんどくさがる体洗いも鼻歌交じりになる。
「おっと」
 と、手が滑ってしまい、石鹸を落としてしまう。
 石鹸はツルーっと滑っていって、バンと同い年くらいの子の足元で止まった。
「ほら、気をつけろ」
 少年が石鹸に気付いてバンに渡す。
「ごめん、ありがとう」
 礼を言ってそれを受け取り、その少年の顔を見る。
「あ」
「あ~~!!」
 互いに顔を確認したところで思わず声が漏れた。
「「お前は、あの時の!!」」
 二人の声がハモって、響く。
 どうやら、顔見知りのようだ。
「あの時、皆のフリックスを破壊してた……!」
「お、俺の邪魔をした……!」
 少年は、なんとあの第1話で登場した、ゲンタだった!
  
「お前、なんでこんな所にいるんだ!あ、まさか今度は銭湯に来てる人のフリックスを破壊しようってんじゃないだろうな!?」
 相手がゲンタだと分かると、バンは好戦的な態度をとる。
「するかっ!ここは俺の憩いの場なんだよ!お前こそなんでこんな所に……!」
「俺は、家の風呂が壊れたから。……って、そんな事はどうでもいい!!」
 バンがキッ!とゲンタを睨む。
 その表情を見て、ゲンタも何かを悟る。
「そうだな。ここであったからには」
「おう!」
 二人が、どこに持っていたのか、フリックスを取り出した。
 
「「フリックスバトルだ!!」」
 
 二人の声は響き、それは女湯で湯船に使っていたリサの耳にも微かに届いた。
「フリックス?」
 他の人の耳には聞こえなかったようだが、フリックスに関して地獄耳のリサには聞こえたようだ。
 条件反射のように立ち上がり、その声が聞こえた場所に一番近い場所へと移動する。
「……」
 リサは、男湯と女湯を隔てる壁の前に立った。
 間違いない。フリックスと言う単語はそこから聞こえてきた。
 リサは周囲の目線など気にする事無く壁に耳をつけた。
「……」
 
「あの、お譲ちゃん……?何してるのかなぁ?」
 40代くらいのおばさんが声をかけてくる。
「おかまいなく……!」
 リサはそっけなく言うと、壁の向こうの音に意識を集中させた。
 
 そして、男湯ではフリックスを取り出した二人が一触即発の状態で対峙していた。
「お前のせいで、俺はスクールでのランクが下がって、今や落ちこぼれ扱いだ!その恨み、今こそ晴らしてやる!!」
「そんなの知るもんか!どんなバトルでも俺は負けない!!」
 どうやら、ゲンタはスクール生でバンに負けた事で落第してしまったようだ。
「で、ルールはどうする?こんな所フィールドなんてないだろ」
 バンが周りをキョロキョロしながら言った。
「この浴場全体がフィールドだ!」
 ゲンタが両手を広げて浴場を表す。
「え、でもフリップアウトの判定はどうするんだ?」
「湯船の枠や壁、それに当たったらフリップアウトだ」
「なるほど、オッケー!やってやるぜ!!」
 
 フリックスバトルスタート!
 先攻は、バンだ。
 
「かなり広いフィールドだからな。思いっきり撃たないと!」
 
 バシュウウウ!!
 バンは強めにシュートした。
 すると、ドライブヴィクターは思ったよりも勢い良く進んでいく。
 
「いぃ、ちょっと早過ぎないか!?」
 想定外のスピードだったらしい。
 滑るようにドライブヴィクターは泡風呂の枠へと迫っていく。
「と、止まれ~!!」
 間一髪、枠に触れる手前で止まった。
「ふぃ~、危なかった……」
「バカな奴だな!風呂の中は、お湯や石鹸のせいで滑りやすくなってる!通常よりもフリックスが動いてしまうのは常識だろう!」
 常識らしい。
「ぐぐ……!」
「次は俺の番だな」
 ゲンタがフリックスを置いて、狙いを定める。
「一気に決めてやるぜ!」
 
 バシュッ!
 
 ゲンタがドライブヴィクター目掛けてシュートする。
 しかし、少し慎重に行き過ぎたのか、ドライブヴィクターの手前で止まってしまった。
「ちっ、力加減が!」
「あぶねぇ……!」
 間一髪だった。少しでも当たっていればドライブヴィクターは湯船の枠にぶつかっていた。
 しかも、このルール。
 フリップアウトの判定が『落ちる事』ではなく『壁にぶつかる事』なので、多少勢い良く突っ込まれても同時フリップアウトになりにくい特性を持っている。
 もちろん、同時に壁にぶつかる事がありえないわけではないが、それでも通常よりも同時フリップアウトの判定負けになる確率が少ない。
 攻撃時は自滅を恐れずに果敢に攻めた方がいいだろう。
「とにかく、体制を立て直さないと!」
 バンはその場から逃げるようにドライブヴィクターの向きを調節して、構える。
「いけっ!」
 
 シュパアアアアア!!
 
 ドライブヴィクターがゲンタのフリックスから逃げて、流しの方へ向かう。
 
「おぉ、なんだありゃぁ?」
「石鹸が滑ってるのか?」
 その様子を周りの人達が物珍しそうにバン達のバトルを見ている。
 
「ババンバノンノンノン~♪」
 しかし、父だけはそんな事に気付かずに湯船に浸かって至福の時を満喫している。
 
「よし、いい位置!」
 ドライブヴィクターが流しの手前で止まる。ここなら簡単にフリップアウトはさせられない。
「ちっ!逃がすな!!」
 ゲンタがドライブヴィクターへシュートする。
  
 ガツンッ!
 見事ヒットする。が、互いに反動で動いただけでフリップアウトには至らない。
 
「くっ!」
「よっしゃ!今度は俺の番だ!」
 バンのターン。
「いっけぇぇ!!」
 
 バシュッ!ガガガッ!!
 
 ドライブヴィクターの攻撃がヒット!しかし、大きく動くものの持ちこたえる。
「うっ、くそぉ!」
「へへっ、チャンス!」
「あ!」
 気付くと、ドライブヴィクターは攻撃のリコイルで、壁際に追いやられていた。
 しかも、ゲンタは狙いやすい位置にいる。
「しまっ!」
「これで、終わりだ!!!」
 ゲンタのシュート。
 
 バシュウウウ!!!
 ゲンタのフリックスが真っ直ぐドライブヴィクターに向かっていく。
 
 しかし……。
 
 シャワアアアアアアアアアアア!!!
 突如、隣の流しからシャワーが流され、その水圧でゲンタのフリックスの狙いが逸れてしまう。
「あ!」
「ラッキー!」
 ゲンタのフリックスは大きく剃らされて、まったくの見当違いの場所で止まってしまう。
「くっそー!」
「よし!今度は俺の番だ!」
 ゲンタのフリックスへ向かってシュートする。
 
 カシュッ!
 
 が、狙いが逸れたのか、ゲンタのフリックスを掠めただけで、ドライブヴィクターは少し進んだどころ止まった。
「くぅぅ!やっぱ滑り過ぎて狙いづらい……!」
「よし、チャンスだ!」
 今度はゲンタのチャンスのようだ。
 ゲンタのフリックスとドライブヴィクターの延長線上には、サウナのドアがある。
 上手くぶつければ、ドライブヴィクターをあのドアに押し付ける事が出来る。
「おらあああ!!!」
 ゲンタの渾身のシュート!
 
 ガコッ!!
 
 しかし、やはりと言うか、ぶつかった時の重心はずれていたので、ドライブヴィクターは真っ直ぐには飛ばされず、やや斜めの方向に飛ばされる。
 
 ギュルルルル!!!!
 
 あまり強い当たりではなかったのだが、なにぶん床が滑るのでドライブヴィクターは大きく飛ばされてしまう。
「くっ!止まれ!!!」
 
 ギュルルル…ザッ!!
 ドライブヴィクターが突如、ブレーキをかけられたように止まってしまった。
「っ!」
「止まった?」
「なんか知らないけど、ラッキー!よし、行くぜ!」
 バンがシュートする。
 
 ザクッ!
 
 しかし、ドライブヴィクターはバンのシュートを受けたにも関わらず全く進まない。
「え?」
「なるほどな。そこは砂風呂だ!もうお前は動けない!」
「なっ!!」
 見てみると、ドライブヴィクターがいる場所には砂が敷き詰めてあり、近くには砂に埋もれて気持ち良さそうに眠っているお爺さんがいた。
「喰らえ!!」
 ゲンタのシュート。
 
 ドンッ、バキィ!!
 
 砂に埋もれて動けないドライブヴィクターにゲンタのフリックスがヒットする。
 そして、ゲンタのフリックスはその反動で砂風呂から脱出し、ツルツルと滑って離れていく。
 見事なヒット&アウェイだ。
「くっ!フリップアウトはさせられないけど、このままじゃ、ダメージレースで……!」
 バンは動けない。ゲンタはヒット&アウェイで嬲り殺してくる。
 このままの状態では、負けは必至だ。
 
「一かバチか、脱出するしかねぇ!!」
 ザッ!
 
 バンが力を込めて構える。
 しかし、柔らかい砂に邪魔されて、上手く構えられない。
 まるで、ゴルフのバンカーだ。
「くそ、邪魔なんだよ……!」
 バンは邪魔な砂をどけようと、手で掻くのだが柔らかい砂はどんなに掘ってもすぐにヴィクターに纏わり付いてくる。
「砂……砂をなんとか……そうだ!!」
 ダッ!とバンはその場を離れた。
「なんだ、逃げるのか!」
「誰が逃げるか!!」
 バンが向かったのは、流しだ。
 そこで、シャワーを体いっぱいに浴びる。
「うおおおおおお!!!!!」
 気合いを込めてシャワーを浴びた後に、元の場所に戻る。
 そして……。
 
「ぶるあああああああ!!!!!」
 体を震わせて体中に付着した水分を放出した。
 
「な、なんじゃぁ!?」
 飛沫が掛かり、眠っていた爺さんが目を覚ますのだが、バンは気にしない。
 
「い、一体何を……!」
 見ると、バンの周りの砂が、水分を含んで硬くなっていった。
「これなら……!」
 ザッ、ザッ!
 バンは、ヴィクターのシュートポイント付近の砂を掘る。
「よし、いっくぜぇ!!」
「うっ!」
「いっけええええ、ドライブヴィクターーーー!!!!」
 
 ドゴォ!バシュウウウウウウウウウ!!!!
 
 ヴィクターが砂を吹き飛ばしながら、ゲンタのフリックスへとブッ飛んでいく。
「ブッ飛ばせええええええ!!!!」
「くっ!耐えろおおおおおおお!!!!」
 
 バゴオオオオオオ!!!
 
 爆音を上げながら、ゲンタのフリックスが弾け飛んで行く。
「ぐっ!」
 
 ドゴオオオオオオオオオオ!!!
 
 そして、壁に激突。埃が巻き上がる。
 判定で、フリップアウトだ。
 
「なっ!」
「やったぜ、俺の勝ちだ!!」
「バカな……。元スクールのAクラスの俺が、こんな奴に二回も負けるなんて……」
 ゲンタが膝を突く。
「俺は、俺は、これからどうすれば……!」
「……」
 素っ裸のまま、本気で悔しがっている。
 バンはそんなゲンタにかける言葉も無い。
 
 そうこうしているうちに、巻き上がった埃が晴れてきた。
 その先に、人影が見える。
 人影?
 この先は、壁だったはずだが……。
 
「あ」
 埃が晴れ、人影の主と目が合う。
 なんと、先ほどの衝撃で男湯と女湯を隔てていた壁に穴が空き、境界線がなくなっていたのだ。
 そして、そこに立っていたのは……。
 
 生まれたままの、一線纏わぬ姿の、あられもない姿の、リサだった……。
 
「……」
「……」
「……」
 三人は、状況を把握しきれずフリーズする。
 
 リサが、ゆっくりと視線を落として、自分の体を見る。
 徐々に体が赤くなっていくのは、熱気のせいだけではないのだろう。
「ひ……」
 小さく、リサが声を漏らした。
「?」
 バンが首を傾げる。
「ひゃぅ……!」
 蚊の鳴く様な悲鳴を上げて、リサは自分の体を抱きかかえるようにしゃがみ込んだ。
 すると、奥の女湯の様子が良く見えた。
 
 リサがしゃがんだせいで、他の女性客達も異変に気付いたらしい。
 
「「「きゃあああああああ!!!!」」」
 と、絹も切り裂けるような悲鳴を上げて、メチャクチャに物を投げ込んでくる。
 
「「う、うわあああ!!」」
 バンとゲンタは、慌ててその場から後ずさる。
 
 すると、今度は見知らぬおじさん連中に囲まれる。
 皆、物凄い形相でバンとゲンタを睨んでいる。
「あ、あははは……」
 思わず苦笑いするバン。
「「「君たち、何をやってるんだ!!!」」」
 
「「ご、ごめんなさ~~~い!!!」」
  
 
 夜道。
 こってり大人達に絞られ、ようやく開放されたゲンタはブツクサ文句を言いながら帰路についていた。
「ちっ、なんで俺ばっかりこんな目に……ちくしょう!!」
 苛立ちを抑えられぬゲンタは、足元にあった空き缶を蹴っ飛ばす。
「……」
 
 “ひゃぅ……!”
 
 そして、なんとなく先ほどのリサの姿を思い出して顔を紅くする。
「あああもう!!」
 頭を振ってその妄想を振り払……おうとして、一旦やめた。
 もう一度、あの記憶を呼び覚ます。
「待てよ、あいつ……」
 あの女の子には見覚えがあった。
 そうだ。
 スクールでナンバーワンだった、遠山リサ。
 でも、今はスクールを逃げ出して、指名手配になっているはず。

 ゲンタの口元がニヤリとつりあがる。
「あんな所にいやがったのか……」
 この事を上に報告すれば、手柄を上げられる。
 ゲンタは、ほくそ笑むのだった。
 
 
 
      つづく
 
 次回予告



BGM:フリー音楽素材 Senses Circuit

炎のアタッカーユージンの競技玩具道場!フリックスの特別編


うっす、ユージンだ!

元気にフリックスやってるかなぁ?

元気が過ぎるバン達は、銭湯だろうがどこだろうが構わずフリックスバトルやっちゃうみたいだねぇ!

でも、他人に迷惑のかかる場所でのバトルは絶対にダメだぞ!ユージンとの約束だ!


ってなわけで、今回はここまで!

最後にこの言葉で締めくくろう!


本日の格言!

『あっちもこっちもバトルバトルバトル!フリックスなら負けないぜ!』


この言葉を胸に、皆もキープオンファイティンッ!また次回!!


 

 




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