第7話「流浪のフリッカー出現!野生のオフロードバトル!!」
ある日の下校風景。
バンとオサムとマナブが三人で並んで帰路についていた。
「まさかバンもエレメントを手に入れるなんてなぁ~」
三人の話題は、バンが手に入れたエレメントについてだった。
「おう!Mr.アレイとのバトルで使えるようになったんだ!」
バンは淡く黄色に光る宝石のような形をしたそれを二人に見せびらかす。
「ちょっと見せてみて」
マナブがバンからエレメントを貸してもらう。
「う~ん、見た感じ、ただの宝石の玩具みたいに見えるけど」
「でも、これに秘められた力は凄いんだぜ!その力でMr.アレイに勝ったんだから!」
「その効果で今日の昼休みもバンの連戦連勝だったからなぁ。ちょっとずるいぜ」
どうやらバンは、昼休みのクラスメイトとのバトルでエレメントを使いまくったらしい。
「なははは!」
さすがにエレメント無しの相手にエレメント使うのは卑怯臭い。その事をオサムに咎められ、バンは笑って誤魔化した。
「シュート後に効果発動して、もう一回シュート出来るなんて強すぎだろ」
「でも、発動後のシュートではダメージは与えられないし、使ったらHPを3も消費する。ディシジョンには向かない、完全フリップアウト戦術用の効果みたいだね」
「だあぁあぁ!ますますバン向きじゃねぇかぁ!!」
マナブの分析を聞いてオサムは頭を抱えて唸りだした。
「まっ、エレメントも手に入れた事だし。これで俺が正真正銘ダントツってわけさ!リサにだってもう負けねぇ!」
「うん、これで互角だね。あ、でも油断しない方がいいよ」
突然、マナブの口調が重くなる。
「ん、どうしたんだよ?」
「ちょっと、最近、嫌な噂を聞いたんだ」
「噂?」
バンとオサムが首をかしげた。
「二人とも流浪フリッカーの話って知ってる?」
「流浪フリッカー?」
「なんだそれ?」
二人が首を傾げる。
「なんでも、強いフリッカーを求めて全国を旅しているフリッカーらしいんだけど。先日、隣町のチャンピオンがそのフリッカーに負けたらしいんだ」
仰々しく語るマナブに、オサムは身震いした。
「ひゃ~おっかない話だなぁ」
「そいつ、強いんだなぁ。一体どんな戦い方してるんだろう?」
バンの興味はまだ見ぬフリッカーの戦い方だ。
「詳しくは分からないけど、ただ奴が指定するフィールドが一癖あるらしいんだ」
「フィールドかぁ。なんか変な仕掛けしてるんじゃないだろうなぁ?」
「さぁ、そこまでは。ただ、隣町まで来てるって事はこの町に来ても不思議じゃないからね。注意しないと」
「あぁ、あんま係わり合いになら無い方が良さそうだな」
「何言ってんだよ。全国を旅して修行してるような奴なんだろ?!俺は是非戦ってみたいねぇ!」
オサムとバンの意見は正反対のようだ。
「相変わらず物好きだな、バンは」
「そういうんじゃないけどさ。やっぱ強そうな奴とは戦ってみたいじゃん!」
「でも得体の知れない奴なんだぜ。関わってもしもの事があったらどうすんだよ」
「そん時はそん時だよ。イチイチビビッてたら戦えな……おっ!」
ドンッ!
オサム達との会話に夢中になって前を見てなかったバンは、前方にいた男の人にぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさ……おぉう!」
反射的に謝りながらその人を見ると……その見上げるほどの長身っぷりに驚きの声を上げてしまった。
しかもその人物、デカイだけでなく、服はボロボロの継ぎ接ぎだらけ、髪は伸ばしっぱなしの、まるで浮浪者のような格好をしていた。
「バ、バン、もう行こうぜ」
あまり関わらない方がいいだろうと思ったオサムがバンを先へ促す。
「あ、うん」
バンもいそいそとその人の横をすり抜けて歩みを進める。
「待ちたまえ!!!」
そんなバンたちの背中に向かって、男は大声を上げた。
ビクついて立ち止まる三人の前に、つかつかと男は歩んできた。
「お前達、フリックスは知っているか?」
「あ、あぁ……」
その男の迫力にたじろぎながらも応える。
「ならば、この町で一番のフリッカーは?」
そこまで聞いて三人はピンと来た。
噂をすれば影と言うやつだ。
この男は、あの流浪のフリッカーだ。
三人はこそこそと話す。
「なぁ、こいつ、マナブが言ってた……」
「うん。まさかほんとに現れるなんて……」
「ここは適当に嘘付いてやり過ごした方が良さそうだぜ。なんかめんどそうな奴だし」
と、マナブとオサムが話している間に
「この町一番のフリッカーはこの俺だ!!」
バンがその男に話していた。
「「ええええええええ!!!」」
オサムとマナブは素っ頓狂な声を上げてバンを引っ張る。
「おい、バン!どういうつもりだ!!」
「どういうも何も、俺はほんとの事を言っただけだぜ!」
オサムの非難に、バンはシレッとする
「そうじゃなくて、なんであんな怪しげな奴と……」
オサムが言い切る前に、男が声をあげる。
「そうか!お前がこの町一番のフリッカーか!」
それに応えるようにバンがオサム達を押し退けて前に出る。
「おう!!最強のフリッカー、段田バン様だ!」
「バンと言うのか!俺の名は、鷺沢操(さぎさわみさお)!全国を旅してフリックスバトルの修行をしている者だ。段田バンよ、貴様に挑戦状を叩きつける!!」
操が、デカイ人差し指をバンに突きつける。
「ああ!望むところだぜ!!」
二人はなかなかに気が合うようで、なんだかドンドン話が進んでいっている。
危機感を覚えているのはマナブとオサムだけである。
「お、おいマナブ、まずいんじゃないか!?」
「う、うん。だけどもう止められそうにないよ」
二人してアタフタと話し合うのだが、操とバンはもうバトルする気満々なようだ。
オサムとマナブは、もう事の成り行きを見守る事しかできない。
「早速バトルだ!場所はどうする?」
「丁度いい戦場がある。ついて来い!!」
言って、大男は歩いていく。
「おう!!」
バンも意気揚々とその後についていった。
「あ、バン!」
「ま、待って!」
オサムとマナブも慌ててその後を追った。
操が連れてきた場所は、町外れの河川敷だった。
大橋の下には、いつの間に立ててあったのか、テントと焚き火の跡があった。
「ここは今の俺の塒だ」
「今の……」
操の発言が一瞬分からなかった。
「いろんな町を転々としているからな」
「あぁ、なるほど」
流浪のフリッカーなら、塒は常に変わっている。
今の操はここを拠点に活動しているようだ。
「「バーーーン!!」」
と、遠くからオサムとマナブが叫びながら走ってきた。
「オサムにマナブ、お前らも来たのか?」
バンの所までやってくると、オサムとマナブは肩で息をして呼吸を整えた。
「来たのか?はねぇだろ……勝手に先に行きやがって」
「い、一応、心配だから見にきたんだ」
「そっか、ごめんごめん」
バトルの事ばっかり考えて二人の事が頭から抜けていた事をバンは謝った。
「はっはっは!ギャラリーも揃った所で、始めるかぁ!!」
操が豪快に笑いながら言う。
「ああ。でも、フィールドは?」
「ふふふ……お前の目は節穴か?ここにあるであろう!!」
と、操は河原の大きな石が積まれている場所を指差す。
だが、三人にはそこにフィールドがあるようには見えない。
「なんだよ、でっかい石しか無いじゃん……」
だが、マナブがある事に気付く。
「ん……まさか、あの石?」
マナブの視線の先には、平べったくて一際大きな石があった。
「気付いたようだな。そう、あそこの平らな石がフィールドだ!」
「「「なにぃ?!」」」
操に言われ、三人は驚きの声を上げた。
「まさか、自然を利用したフリックスフィールド……そんなものが……!」
「何を驚いておる?俺は常に旅をしてきた。長い旅路にフィールドのような大荷物は持っていけないし、旅先でまともなフィールドがあるとも限らない。いつでもどこでもバトルが出来るように、自然の中からフィールドを見出すのは造作も無い」
操は当たり前のように言っているが、普段整地された人工のフィールドでしか戦わないバン達にとっては新鮮だ。
「へぇぇぇ!すっげぇ!本当にすげぇ!こんなところでもフリックスバトルできるんだぁ!!」
バンは、操が指定したフィールドをジロジロと眺めながら興奮した。
「へっへへ、頑張ろうな!ドライブヴィクター!!」
バンはドライブヴィクターを取り出して、気合いを入れた。
「ほう、なかなか良いフリックスだな。オリジナルか?」
操が興味深げにドライブヴィクターを見る。
「ああ!世界に一つだけの相棒!ドライブヴィクターだ!!」
「なるほど、面白い」
自慢げに話すバンに対し、操はニヤリと口元を緩ませた。
「んで、お前のフリックスは?全国を旅してるってんだ、きっとすげぇフリックスなんだろ?」
「これだ」
操が巾着袋からフリックスを取り出す。
「俺の愛機、カラミティ・デスガランだ!」
操の取り出したフリックスは、継ぎ接ぎだらけでお世辞にも整ったフリックスとは言えないものだった。
「な、なんか凄い変な形してるなぁ」
「うん、何かを切り貼りしたみたいな……」
カラミティ・デスガランを怪訝そうに見る三人に対して操は言う。
「それは当然だ!こいつは、今まで倒したフリッカーから奪ったフリックスの良いとこどりをして切り貼りしたフリックスなのだからな!」
操の発言を聞いて、バン達は更に驚く。
「な、なにぃ!?奪っただとぉ!?」
バン達の反応に対して、操は淡々としている。
「それがどうした。勝者は敗者から全てを得ることができ、敗者は全てを失う……当然の摂理ではないか」
なにも悪びれない操に対し、バンは怒声を上げる。
「ふ、ふざけるな!フリックスは大事な相棒だぞ!たった一回バトルに負けたからって奪っていいもんじゃない!!」
「つまり、お前はバトルに勝っても何も得ないと言うのか?」
バンの怒声を聞き、操は侮蔑の視線をバンに向けた。
「当たり前だ!俺達のフリックスバトルは、そんな事のためにあるんじゃねぇ!!」
その視線を跳ね返すようにバンは更に声を荒げた。
「甘いな。この世の中は弱肉強食。強いものが弱いものを糧にして、更なる力を得る仕組みになっている」
「だから相手のフリックスを奪ってもいいってのかよ!冗談じゃねぇ!!」
激怒するバンの肩をオサムが掴む。
「バン、やめとけ。やっぱこいつヤバイ奴だ。バトルは……」
制止しようとするオサムだが、バンはオサムの手を払いのける。
「さぁ、勝負だ!お前なんかに負けるか!!」
バンはヴィクターを突きつけて啖呵を切った。
操はそれを見てニヤリと笑う。
「あっちゃ~……」
制止を振り切られ、オサムは額を押えた。
「まぁ、こうなった以上止めるのは難しいだろうね」
マナブは、この戦いを見守る決意をしたようだ。
「そうだな……」
オサムもバンを止めるのを諦め、傍観に入る。
バンと操が平らな岩を間に対峙する。
「3本勝負、2本先取したほうの勝ちだ」
操が簡単にルールを説明する。
「おお!!先攻はそっちからで良いぜ!初っ端からぶっ飛ばしてやる!!」
「いいだろう」
操が岩の上にデスガランを置いて、狙いを定めてシュートする。
シュンッ!
デスガランは、スムーズに進み、真ん中で止まった。
「さぁ、お前の番だ」
「けっ、狙いやすい位置だぜ!」
バンは、ヴィクターを岩のフィールドに置いて、狙いを定めてシュートする。
シュッ、ガガガッ!!
「っ?!」
しかし、シュートした瞬間、ヴィクターの動きは大きくブレ、狙いがそれるどころか、真ん中に届きもしなかった。
「な、なんだぁ?!どうなってんだよ……!」
「威勢が良い割には、腕は良くないみたいだな」
「ぐぐ……!」
次は操のターンだ。
操はじっくりとヴィクターに狙いを定めてシュートする。
「終わりだ!」
ガッ!
見事その攻撃はヒットし、ヴィクターを場外させてしまう。
「ああ!」
バンは急いで地に伏せたヴィクターを拾う。
「まずは一勝」
「そんな……!」
その様子を見ていたオサム達も驚きを隠せない。
「なんでだ?あのバンのシュートが、相手に届きもしないなんて」
「ヴィクターのあの動き……そうか!」
マナブは何かに気付いたようだ。
「なんだ?」
「あの岩のフィールドが曲者なんだ。どんなに平らって言っても、自然に出来た岩の表面はどうしてもゴツゴツしてて粗い。しかもプラスチックのフィールドと比べて摩擦抵抗の高いから、ヴィクターの機動力が著しく下がってしまったんだ!」
「でも、あの操って奴は普通にシュートしてたぜ」
「きっと、シャーシをローグリップタイプにカスタマイズしてたんだ。そして、ウェイトもライトタイプにしているんだと思う」
「ウェイトを?」
「うん。フリックスは、ボディ、シャーシ、ウェイトの三つを自由にカスタマイズ出来る。そのうち、ウェイトはヘヴィ、バランス、ライトの三つの種類があるけど。普通にバトルするときは皆ヘヴィを選ぶ」
「そりゃ、重い方が攻撃力も防御力も強いからな」
「だけど、摩擦力が強いこのフィールドは重くするより軽くして機動力を稼いだ方が攻撃力が出るんだ!」
「な、なるほど……!」
オサムとマナブの会話は操とバンの耳にも届いている。
「ほう、見事な分析だ」
「くっそぉ、カスタマイズなんて全然考えてなかった!えっと、ウェイトを軽くすればいいんだな」
バンは、ヴィクターをバラして中のウェイトをヘヴィからライトに交換する。
「これでバッチリだぜ!」
カスタマイズ完了。
「だが、それがお前たちの限界だな」
「なにっどういう意味だ!」
「今に分かる」
と言いながら、操はチラッと空を見上げる。
先ほどまでピーカン晴れ空には、少しずつ暗雲が立ち込めていた。
「いくぜ、第二回戦だ!」
今度はバンが先攻だ。狙いを定めてシュートする。
シュッ!
先ほどとは違い、上手くシュートできた。
「おっしゃ!カスタマイズは成功だ!これで互角だぜ!!」
「それはどうかな?」
操のターン。狙いを定めてシュートする。
ガガッ!
しかし、操のシュートは先ほどのバンのように安定しないものだった。当然ヴィクターに攻撃が届かない。
「なんだぁ?シュートミスかよ!」
相手のミスを笑うバン。しかし、操の表情には余裕がある。
それを見抜いたマナブは思案する。
「なぁ、今度はバンの方が優勢じゃないか?」
オサムがそんなマナブに話しかける。
「いや、これは……操は、ウェイトをヘヴィにして、シャーシをハイグリップタイプにカスタマイズしてる!?」
「え、なんでだよ?さっきのカスタマイズがこのフィールドじゃベストだったんじゃないのか?」
「分からない。だけど、こういった状況を熟練している彼だ。きっと何かある。バンッ!気をつけて!!」
嫌な予感がするマナブはバンに声援を送る。
「けっ、問題ないぜ!どーせ、俺と同じカスタマイズじゃ勝てないと思ってセッティング変えただけだろ!すぐに決めてやるぜ!」
意気揚々とヴィクターの向きを変えつつ狙いを定める。
と、その時……。
ポツ……ポツ……と雨粒が落ちてきて。
ザアアアアアアアアア!!!と土砂降りになった。
「あ、雨だ……!」
「大丈夫か、バン」
マナブとオサムが心配する。
「こんな雨くらいどうって事ねぇ!いっけぇ!ドライブヴィクター!!」
バシュッ!シュパアアアアアア!!!!
バンのシュートによってヴィクターが雨粒をフッ飛ばしながらカッ飛んで行く。
「いけえええええええ!!!!」
ガッ!!!
ヴィクターは見事デスガランにヒットする。
しかし……。
「いいっ!?」
ヴィクターのアタックを受けたにも関わらず、デスガランはあまり動かなかった。
それどころか、ヴィクターがリコイルで跳ね返され、ツルツルと滑っていく。
「うわわ、止まれヴィクター!!」
なんとか、フィールドの端で止まる。
「ふぃ~、危なかった……でも、なんでだ?ヴィクターのセッティングはフィールドに合ってるんじゃないのか?」
バンの疑問にマナブが答える。
「雨だ!岩の上に溜まった水が、ヴィクターのシャーシ裏側に薄い膜を作って、極端に摩擦抵抗をなくしている!そのせいで滑りすぎてヴィクターの攻撃力がなくなってるんだ!」
「な、なんだって?!」
マナブの解釈に操が更に付け加える。
「そして、デスガランはヘヴィウェイトをつける事でこの雨の中でも十分な防御力を得ている。野外でのバトルは常に状況が一変する。一つのセッティングがいつまでも通じる道理は無い!」
操の発言には確かな説得力があった。
「なるほど、さすがは百戦錬磨の流浪フリッカー。彼は旅を通じてさまざまな状況でのバトルを経験している。環境変化への状況判断はピカイチなんだ」
恐るべし、鷺沢操……!
そして、操のターンだ。
「ヴィクターは虫の息……決めるぞ、デスガラン!!」
ヴィクターに狙いを定める。
「こ、このままじゃ……!」
追い詰められるバン。
「ゆけぃ!!」
操のシュート。勢い良くデスガランがヴィクターに向かってくる。
「くそっ、ありったけの力で防御するしかねぇ!」
バンは気合いを込めてヴィクターの防御力を上げようとする。
しかし……。
「いや、防御しない方が良い!!」
「え?」
突如のマナブからの言葉に気を取られたバンはヴィクターへの防御力アップを解いた。
「あ!」
ガッ!
防御力を解いてしまった状態で、デスガランの攻撃がヒットする。
当然、ヴィクターは大きく飛ばされて場外してしまう。
「う、嘘だろ……!」
「俺の勝ちだ!」
操が勝利を確信する。しかし……。
「いや、まだだ!」
ギュルルルル!!!
ヴィクターをブッ飛ばしたデスガランの勢いが止まらない。
「なにっ!」
そう、敢えてヴィクターの防御力を減らしたことで、攻撃後のデスガランの勢いがあまり減らなかったのだ。
デスガランはそのまま勢いよく場外してしまう。
「同時、場外……でも、この場合は判定でシュートしたフリックスの負けになる」
オサムが呆然と呟いた。
そう、自滅したフリックスの攻撃は完全に無効となり、攻撃されたフリックスは元の位置に戻すのがルールなのだ。
「ふぃ……」
バンはホッと一息つく。
「……首の皮一枚繋がったか」
操はゆっくりと地に落ちたデスガランを拾う。
「だが、次で終わりだ!」
「そうはいくかっ!」
第三ラウンドが始まる前に、バンはとりあえずヴィクターのセッティングを変更する。
シャーシはハイグリップ。ウェイトはヘヴィ。デスガランと同じセッティングだ。
「頼むぜ、ドライブヴィクター!絶対に負けられないんだ!!絶対に!!!」
先攻はバン。
ドライブヴィクターをシュートして、操のシュート位置の手前にヴィクターを付ける。
「特攻作戦か」
「さぁ来い!次のターンで倒してやる!!」
操のターン。
目の前にいるヴィクター目掛けてデスガランで攻撃する。
バキィ!!
デスガランの攻撃を受けて飛ばされるヴィクターだが、位置的にフィールドの真ん中に飛ばされてしまう。
「よし、良い位置!決めるぜ」
「それは無理だ!この状況は俺が一番理解している!!このターンでは決まらない!!」
「いや、決める!!俺は、負けるわけにはいかないんだ!!」
バシュッ!!
バンのシュートがデスガランを攻撃する。
デスガランはヴィクターにぶつかられ、飛ばされるもののフィールドの端でなんとか踏みとどまった。
「勝負は振り出しだな。だが、このままダメージレースで俺の勝ちだ!」
「まだまだああああ!!!」
バチ……!バチバチバチ!!!
突如、ドライブヴィクターから雷のようなエフェクトが走る。
「な、なに!?なんだこれは!!」
今まで見た事の無い現象に、操は動揺する。
「エレメント発動!サンダーラッシュ!!!」
サンダーラッシュ。HPを3消費する代わりに、もう一度フリックスをシュート出来る雷属性のエレメントだ!
バンは再びドライブヴィクターの狙いを定める。
「バカな!二回シュートだと!?そんな事が可能なのか……!!」
「これが、俺とドライブヴィクターの絆だあああああ!!!!!」
バーーーーーン!!!
二回シュート炸裂!見事、カラミティデスガランを場外に弾き出した。
「……バカな」
操は落ちたデスガランを拾おうともせず、呆然と立ち尽くした。
「「やったあああ!!」」
「やったね、バン!!」
「すげぇぜ!!」
バン、オサム、マナブの三人は腕を組んで小躍りしながら勝利を味わう。
「……」
操はその様子を見るでもなく、ただただ惚けていた。
「操」
そんな操に、バンはデスガランを拾って、差し出した。
「……」
「良いバトルだったぜ!」
バンは操にデスガランを差し出すのだが、操はそれを受け取ろうとしない。
「それは、受け取れん」
「え?なんでだよ、お前のフリックスだろ」
「俺はバトルに負けた。それは、もうお前のものだ」
操が自分で定めたルールに則れば、負けた操のフリックスはバンのものになる。
しかし……。
「俺は、厭だ!」
バンはそれを拒否した。
「何故だ?そのフリックスは、負けてしまったものの、性能は決して低くは無い。少なからずお前の力になるはずだ」
「そうじゃない!俺は、またお前と!カラミティデスガランを使うお前と、もう一度戦いたいんだ!これを奪っちまったら、戦えなくなるだろ!?」
「なんだと……?負かした相手と、また戦いたいと言うのか?」
バンの発言が信じられないと言う顔をする操。
「ああ!だって、俺に負けたお前は、もっともっと強くなろうとするはずだろ!だから、次に戦う時はもっと強いお前と戦えるんだ!なのに、そのチャンスを奪うなんて、勿体ねぇよ!」
「……」
それを聞いて、ようやく操は理解した。
バンの気持ちを。何故、フリックスを奪うのが間違いだと言ったのかを。
「そうか……」
操は、バンからデスガランを受け取ると、静かに踵を返して歩いていった。
「あ、操!」
バンは慌てて呼びかけたが、操は振り向きもせずにそのまま立ち去ってしまった。
降りしきる雨の中、一人橋の上を歩く操は、バンの言葉を思い返していた。
”次に戦う時は、もっと強いお前と戦えるんだ!”
「得るためではなく、戦うために戦う……それがあいつの強さか」
そう呟いた操の表情は穏かだった。
つづく
次回予告
炎のアタッカーユージンの競技玩具道場!フリックスの特別編
うっすユージンだ!元気にフリックスやってるかな?
今回の話の肝は、フリックスのカスタマイズ!!
フリックスは、ボディ、シャーシ、ウェイトの三つの要素で出来ていて、それぞれを組み替える事が出来るんだ。
ボディは攻撃力や防御力が関わってくるし、シャーシは移動特性、ウェイトは重量を変えられるぞ
状況に合わせてベストのセッティングにする事が勝利の秘訣ってわけだ!
そんじゃ、今回はここまで!
最後にこの言葉で締めくくろう!
本日の格言!
『セッティングに最強は無い!状況判断を忘れるな!!』
この言葉を胸に、皆もキープオンファイティンッ!また次回!!
