弾突バトル!フリックス・アレイ 超X 段田バン視点第1話「その男、天崎翔也」

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段田バン視点第1話「その男、天崎翔也」

 

 段田バンフリックス研究所(通称段田ラボ)。

「うおおおお〜〜」
 バンは事務室のコンピューターの前で頭を抱えて唸っていた。
「どうすりゃいいんだ……!」

 バンの悩みのタネは、数日前に行われた『殿堂入りチャンピオンによるフリップゴッド挑戦バトル』での出来事にある。
 そのバトル自体は引き分けに終わったのだが、フリップゴッドにより『フリックス界を発展させたものを次期ゴッドとして認める』という提言がなされた事で、バンと同期のフリッカー達は沸き立ち、我こそはとフリックス界発展のために動いているのである。

「なぁ伊江羅博士〜なんか良い案無い?」
 バンは背もたれにだらんともたれ掛かりながら、少し離れた場所で何やら忙しなくキーボードを叩いてデータ打ち込み作業している伊江羅へ声を掛けた。
「これはお前の戦いだろう。何か指示があれば所員として仕事はするが、指示は自分で考えろ」
 作業する手を止めずに軽くバンの言葉をいなすと、伊江羅はメモリーにデータを保存してコンピュータの電源を切って立ち上がった。
「ちぇ、相変わらず冷たいなぁ……って、どっか行くの?」
「昨日言っただろう。スペリオルシステムについて、公式運営委員会にデータの提出を求められたと」
「あぁ、スペリオルの……なんか大袈裟だなぁ。たかだかフリックスの機構一つで」
「なにせ、数十年封印していたシステムを公的な場で出したんだ。何かしらのフォローは必要だろう」
「そんなもんかねぇ」
「まぁ、バンキッシュパンデミックを経験していないお前には分からない感覚だろうがな」
「パンデミックかぁ……」

 バンキッシュパンデミック……その昔フリップゴッドが犯した最大の過ち。
 最強のフリックスを提示する事で刺激を与え界隈を盛り上げるはずが、逆に滅びを招いてしまった事件。
 話には聞いているし、そもそもその後始末としてフリップゴッド捜索に関わったのはバン自身だ。
 しかし、当事者ではないのでそれがどれほどの事件だったのかはイマイチ分からない。

「お前もゴッドを目指すなら、くれぐれもパンデミックだけは気をつけるんだな」
「分かってるよ」
 バンの軽い返事を聞くと、伊江羅は部屋を出て行った。

「はぁ〜、やっぱ自分で考えるしかないよなぁ」
 バンは再び思考の海の中に入った。
「他のみんなは何やってんだろうな……」

 バンは思考の箸休めとして、あの日の会話を思い返してみる事にした。
 ……。
 …。
 回想シーン。

「でもフリックス界発展って具体的に何すりゃいいんだ?」
 バンの疑問に対してレイジと剛志が反応する。
「やっぱり新世代のフリッカーを育てる事じゃないかな?新規勢は大事だからね!」
「ガッハッハ!じゃったらワシらに分があるな!なんたってワシはゼロから人間をフリッカーへ育て上げたことがあるからの!!」
 剛志は、前作『キメラ』にて主人公ダンガの育ての親でもあるのだ。
 その経験があれば新世代を育てるのも造作もないだろう。
「んな事言ったら、俺だって弟子をとった事くらいあるっての」
 バンはバンで、前々作『トリニティ』のチャンピオン正本ハジメの師匠を務めた事がある。
 どちらもGFC優勝経験のあるフリッカーだ。
「アレは遠山フリッカーズスクールの特別講師イベントの参加者に、たまたま新人だった頃の正本ハジメがいたと言うだけだがな」
 伊江羅博士がやんわりとツッコミを入れる。
「それでも才能引き出せるように指南したのは変わりないだろ!」
 そんなバン達のやりとりに、今度はユウタとゲンゴが口を開いた。
「それを言ったら、イツキは遠山フリッカーズスクールの二代目校長。ユウタとオデもそこで講師をしてるから、育成と言う意味ではお前達よりリードしてるんだな」
「あの氷刃カイヤだって、元は僕の生徒だったからね!」
「氷刃カイヤはすぐに白井研究所にスカウトされたから在籍期間は短いんだな」
「そ、それは僕の教えがよかったからだよ!」
 ユウタとゲンゴの自己アピールを聞き、イツキが少し考えるそぶりをしてから言った。
「しかし、一人二人弟子を取ってチャンピオンに育て上げた所でフリックス界への影響はゴッドと言えるレベルなのかどうか、疑問ですね」
 その意見はこれまでの考えを根本から覆すものだった。
「確かに、その通りかも。チャンピオンなんて育てなくても誰か一人は必ずなるんだから……」
 リサが頷くと、バンは余計に方針が定まらなくなり唸るしか無くなったのだった。

「ぐ、ぐぬぬ……!」

 ……。
 …。
 結局、回想してみても良いアイディアは浮かばない。
「う〜〜ん」
 腕組みして唸るだけの時間が続く。
 コト……と、後ろからそっとバンの目の前にコーヒーカップが置かれた。
 中には温かなマックスコーヒーが湯気を上げている。
 振り返ると、お盆を持ったリサが立っていた。
「一息ついたらどう?悩んだって簡単に良いアイディアは出ないよ」
「サンキューリサ」
 バンは一口マックスコーヒーを啜った。
 練乳たっぷりなコーヒーの甘さが、疲れ切った脳に染み渡る。
 やはり頭を使った後は糖分が必須だ。
「けど、焦るぜ。こう、やらなきゃいけない事が思い浮かばないってのは……」
「チャンピオンとしてなら、ただ強くなればよかったけど。ゴッドとなるとそれだけじゃダメなんだもんね……」
「そうなんだよなぁ。自分が強くなるだけでも、誰かを強くするだけでもダメってなると、何やりゃいいんだほんと……!」
「他のみんなはもう方針決まったのかな?」
「さぁな……そう簡単に手の内明かさないだろうし。ってか、リサはゴッド目指したりしないのか?」
 バンの問いにリサは小さく首を横に振った。
「私はバンのサポートで十分。それに、バンには早くゴッドになってもらわないと」
 そう言うリサの目はどこかバンを責めるように細くなった。
 その視線を受けたバンは罰が悪くなって目を背ける。
「あー、いや、あの時は俺もまさかこんなに長引くとは思わなかったから……なんなら別に撤回しても……」
「良いよ。私はバンを信じてるから、一度言った事は絶対に最後までやり通すって」
 言葉は優しいがどこか脅迫めいた口調に、バンは気まずそうに苦笑いした。
「あ、あぁ、やってやるさ」

 ビーー!
 その時、訪問者を知らせるチャイムが鳴った。
「おっ、誰だ?」
 コンピューターのモニターをインターホンと連動させる。
 そこには前々作『トリニティ』でのGFCチャンピオン、正本ハジメが立っていた。

『お久しぶりです、バン師匠』
「おぉ、ハジメか!どうしたんだよ、急に!」
 かつての弟子の姿を見てバンの顔が綻ぶ。が、ハジメはバンの返事を聞いて呆れ顔をした。
『どうしたじゃないですよ。今日はSGFCですよ、一緒に観戦に行くってメールで約束したじゃないですか』
「あっっっ!やべ、そうだった……!」
『大会終わったらエキシビジョンあるんだから忘れちゃダメじゃないですか……』
「あー、いや、ここんとこバタバタしててさ……ほんっと、この時期忙し過ぎだろ……」

 バンは思わずぼやいた。
 12月はFICS優勝者とのエキシビジョン、その後はフリップゴッドとのバトル、そしてSGFC優勝者とのエキシビジョン……と大型のスケジュールが詰まっているのだ。

『じゃあ外でタクシー待たせてるんで10分で支度してください』
「わぁったよ!リサ、10分で支度を……ん?」
 振り返り、リサの姿をよく見てみる。
 化粧はバッチリこなし、他所行き用のフォーマルな服も着こなしており、お出かけ準備は万端だった。
「私はとっくに準備出来てるよ」
「なんだよ、忘れてたの俺だけかよ……!」
 ハジメが10分で支度しろと言ったのは、後ろに立っているリサが既に準備出来ているのを確認したからだろう。

 バンは急いで支度して研究所前でハジメと合流し、会場へ向かった。

 会場に着き、バン達は貴賓席よりも更に上級な超貴賓席に座った。
 より会場が見渡しやすい特等席だ。

「そういや、ガンは一緒じゃないのか?」

 ガンとは、ハジメの経営しているフリッカー専用のクリニック兼訓練場の元生徒だ。本名は天領ガン。前々作『トリニティ』でも登場した。
 現在はハジメと共に、その訓練場の生徒達で結成されたチーム『バイエルン』の指導をしている。

「あいつはチームバイエルンの引率してますからね。それに、この大会はバン師匠やリサさんと観戦したかったんで」
「そっか。確か、あいつの連覇が掛かってるんだったな」
「ナオト君の調子はどう?」
「絶好調ですよ。先日の赤壁杯では惜しくも優勝を逃しましたからね。だからプロ入り前のアマチュア最後の大会では絶対に優勝したいって意気込んでますよ」
「連覇すりゃあ、プロに行ってからもかなり箔がつくからな」
「……あいつには俺の夢を背負ってもらっている。だからこそ、師匠達と見届けたいんです」
 真剣に語るハジメの横顔を見て、バンは嬉しそうに笑った。
「いつまでも弟子だと思ってたら、お前もすっかり師匠の顔だな」
 バンの言葉にハジメはフッと微笑んだ。

 そして、いよいよスーパーグレートフリックスカップが始まる。
 場内は、観戦席が用意されているだけで選手の姿はない。
 ただし、中央には巨大なターゲットらしきものが聳え立っていた。
 そこへバトルフリッカーコウのアナウンスが響く。

『さぁ、今年もついにこの時がやってきた!!日本一のフリッカーを決める大会スーパーグレートフリックスカップ!!
出場するのは、シーズン大会を勝ち上がった8人のフリッカー達!そして前大会で優勝した闘将ナオト君!!
ナオト君は、且つてGFC3連覇を果たした正本ハジメ選手の愛弟子であり既にプロ入りが確定している!
今大会がアマチュア最後の試合だ!連覇して弾みを付けたいところ!』

 会場のモニターに、屋外で待機している闘将ナオトの姿が映し出される。
(しっかりやれよ、ナオト)
 ハジメはその姿へエールを送った。

『しかし、勝ち上がってきたフリッカー達も粒揃い!特に、幻の初代チャンピオン寺宝カケタ選手の息子、寺宝タカシ君は今大会最年少の7歳ながら、素晴らしい才能を発揮している!
小学生以下はバリケードが若干強化されると言うハンデを活かし、下克上は起こるのか!?』

 モニターに映し出された小さな男の子は少し恥ずかしげに俯いていた。

『それではルールの説明だ!バトル方式はお馴染みのFUGB!
フィールドは、この幕張メッセ全体だ!!
フィールドを駆け巡り、好きなタイミングで機体をアクチュアルモードに起動して、設置してあるターゲットを撃破したり
他フリッカーへダメージを与えればポイントが加算されていく!
ただし、今回は回復アイテム無し!そして撃沈されたらそのままバトル復帰が出来ない過酷なサバイバルバトルだ!
制限時間内により多くポイントを稼いだ2名のフリッカーで決勝戦を行うぞ!!』

 FUGBの詳細なルールはこちらを参照。

『そして最も得点の高いプラチナターゲットはこの展示場の中央に設置!各選手はそこから均等の距離になるような配置で屋外からスタートだ!プラチナターゲットを目指すも良し、会場内に散らばっているターゲットを探して倒しまくるも良し、敵フリッカーを撃破していくも良し!なんでも良いから高得点を目指してくれ!!』

 ルール説明も終わり、いよいよバトルが開始される。

『それでは、スーパーグレートフリックスカップ!バトルスタートだ!!』

 この合図共に選手達は一斉に駆け出した。
 機体をアクチュアルモードにして目につくターゲットを倒していくもの、機体を出さずに会場へ向かうものと、行動はさまざまだ。

「薙ぎ払え!ディバインスパルナ!!」
 その中で、ナオトはディバインスパルナの翼を広げて猛スピンし一気に複数のターゲットを撃破していく。

『さぁ、注目株の闘将ナオト君!早速ターゲットを撃破しまくりでスタートダッシュを決めた!!攻撃範囲の広いディバインスパルナならではの戦法だ!!』

(ゴールにあるプラチナターゲットの得点はかなり大きい。しかし、得点の総量で考えればフィールド内のターゲットを多く倒した方が圧倒的に多い。それらを無視してまでプラチナターゲットを目指す必要はない……!)  

 とは言え、皆が同じようにターゲットを撃破しまくっているとしたらプラチナターゲットをゲットしたものが有利になるので、完全に無視して良いわけではない。
 プラチナターゲットはあくまで狙えたら狙うオマケとして目指しつつ、道中で見かけたターゲットを残さず撃破していく。
 特に攻撃範囲の広さをウリとするナオトにとってはベストのスタイルなのだろう。

「はぁぁぁぁ!!」
 バキィ!!
 得点の高いヘビーターゲットを撃破した時だった。
 ディバインスパルナの側に設置してあるフリップマインが目に付いた。
「マイン……!」
 それに気付いた瞬間、背後から声が……!

「ターゲット狩りもいいがよ!フリッカーの敵はフリッカーって事を忘れんなよ、チャンピオンさんよぉ!!」

 シュンッ!
 カラフルな矢印型のフリックスが素早く突進してディバインスパルナを弾き飛ばし、マインへぶつけた。
 攻撃後で変形しているスパルナをマインヒットするのは猫の額の面積を測るよりも容易だ。

「不用意に変形させたのが仇になったな!!」

『おおっと!矢作フリオ君のリバティアローがナオト君の虚を突いてディバインスパルナをマインヒットした!!』

 与えたダメージに応じてフリオに得点が加算され、受けたダメージに応じてナオトの得点が減点する。

「この俺に、不意打ちを成功させたそのスピードとコントロール……見事だ!さすがはSGFCに出場しただけはある」
 ナオトはダメージを受けてもなお余裕を崩さずに相手へ敬意を表する。
「余裕ぶってる場合じゃないぜ!このまま撃沈してやる!!」
「いや、それは無理だ」

 ナオトはアクティブフェイズになると、シュート準備なしでディバインスパルナのシュートポイントに手を添えた。

「やべ、逃げろ!リバティアロー!」
 ステップで逃げようとするフリオだが、既に変形してシュート準備の出来ているスパルナからは逃れられない。

「インスタントフィールド!」
 ナオトはシュート前にインスタントフィールドを展開させる。
 これはシュート中にのみ展開できる簡易の結界だ。この中から外へ出されてしまうと場外扱いになる。
「はぁぁぁぁ!ハリケーンブレイカー!!!」
 ナオトは広がったスパルナのウイングをリバティアローに密着させたまま思いっきり両手でスピンさせた。

「っ!だが、インスタントフィールド内は防御側のバリケードが強化される!耐え切ってやる!」
「無駄だ」

 ブォン!!
 遠心力で投げ飛ばされたリバティアローは、予測もつかない方向へ飛ばされてしまいフリップアウト。

「この技にバリケードは通用しない」

『ナオト君の必殺技炸裂ーーー!!!!相変わらずの威力だ!軽量機動型のリバティアローはフリップアウト+ビートヒットの合算により一撃で撃沈!!!リタイヤだ!!』

 ナオトのスーパープレイに沸き立つ会場。
 観戦しているバン達も感心した。
「凄い威力だね」
「正直、俺の必殺技『ガルドライトブレイク』を超えられましたよ」
 そう言うハジメの顔はどこか嬉しそうだ。
「あの技、ザキのダークホールジェノサイドと似てるなぁ」
「そういえば。両手でスピンして投げ飛ばすところとか」
「まぁ、それほどの威力は無いですけどね。ただ、ウィングがしなる分、こっちの方が飛ばす方向の予測がつきづらくなってますね」
「確かに。ザキの技は力任せに巻き込んじまうから、慣れちまえば方向は読めなくは無いんだよな」

 読んだところでバリケード破壊されるから意味はないのだが。

 そうこうしているうちに、更に大会は進行していく。

『さぁ、東エリアでも熱い激突が発生!寺宝タカシ君VS黒風キョウヘイ君がバチバチにやりあっているぞ!』

「ふっ、我が心の叫びと共鳴せよ!リゾネイトアザゼル!!」
 眼帯をつけた中二病少年はリゾネイトアザゼルと呼ぶ黒いフリックスをスピンシュートする。

リゾネイトアザゼル

 アザゼルは遠心力により羽を広げて軌道上にあるターゲットやマインを弾き飛ばしながらタカシの円形フリックスへ向かう。
「あれだけターゲットに接触してるのに勢いが落ちない……!」
 アザゼルの羽はフリー可動で何か物に当たると閉じるようだ。

 カッ!
 アザゼルの羽がタカシのフリックスを優しく撫でてマインヒット。
 しかし、羽の先にはフリップホールが設置してあった。
「ほぅ」
「これで自滅!マインヒットは無効だよ!!」

『これはタカシ君、上手いぞ!マインヒットを見越してフリップホールを設置し、自滅を誘ったか!』

「その程度の搦手、我が魔王には通用せぬ!」

 シュウウウウ……!
 アザゼルの回転力が弱まると同時に羽が閉じて行く。これでフリップホール回避だ。

「弱い回転力だと羽が閉じるようになってるなんて……!」
「攻撃時は広く、防御時は小さく、これこそフリックスバトルの最適解」
「でもそれなら……いけ!リベリオンボルケーノ!!」

リベリオンボルケーノ

 タカシは停止したアザゼルへシュート。
 カッ!ブォン!!
 ヒットした瞬間、リベリオンボルケーノの外周リングがバネの力で回転。それによって、アザゼルは先程とは逆方向に回転した。

「なに!?」
 アザゼルの羽が広がってフリップホールに被ってしまった。
「やっぱり、そのウィングは逆回転だと広がるようになるんだ!」

『おおっとこれは凄い!タカシ君はリベリオンボルケーノの回転ギミックを利用してリゾネイトアザゼルの弱点を突いた!!これでキョウヘイ君は一部フリップアウトダメージを受けるぞ!』

「ふっ、ここはこれ以上深追いするべきでは無いか。一時撤退だ」
 キョウヘイはリゾネイトアザゼルを回収してその場を去った。

 そして大会は更に進行していき、ついに展示場内に一人のフリッカーが突入してきた。
 金髪で青い目をしたハーフ少年だ。

『おおっと!ここで早くもプラチナターゲットへと辿り着いたフリッカーがいるぞ!ヒンメルギアを駆る古川ピース君だ!』

「ワオ!一番乗りは貰ったネ!」

『しかしポイントは現在最下位!どうやら、最初からプラチナターゲットに狙いを定めて道中のターゲットはほぼ無視してきたようだ!!』

「まずは会場に一つしかないプラチナターゲットをゲットする!他のターゲットは残り時間でじっくり狙えば良いだけネ!!」

 ピースは目の前にスケールアップ用の魔法陣を出現させ、自機であるヒンメルギアを構えてアクチュアル起動の準備をする。
 アクチュアル起動するためには3カウントほどのタイムラグがあるが他にライバルがいない状況なら余裕で狙えるだろう。

「3.2.1.……!」

 カウントが完了して今まさにヒンメルギアをシュートしようとした瞬間!

「ブライテンオービット!!!」

 場内に必殺技を叫ぶ声が聞こえ、ピースの後ろから猛スピンで飛んでくる一つの白いフリックスがあった。
「なっ!」
 ガッ!!
 白いフリックスは壁にぶつかるとその反射によって加速してプラチナターゲットを撃破!

『な、なんとぉぉ!!突如割り込んだ天崎翔也君のアペックスによってプラチナターゲットは撃破!天崎翔也君に大量得点が入るぞ!!』

「ノー!ミー以外にも速攻でプラチナターゲットを狙うフリッカーがいたなんて!!」

『しかも天崎翔也君は古川ピース君と違い道中でそこそこポイントを稼いでいる!このプラチナターゲットを撃破した事で闘将ナオト君に次いで暫定2位だ!!』

 衝撃の展開に会場は騒然とし、バン達も驚いている。
「大番狂せだ……!」
「天崎翔也、あんなフリッカーがいたなんて」

『えー、これまでのバトル映像をチェックするとすごい事が判明したぞ!なんと天崎翔也君はスタートからここまでずっとアクチュアルモードを維持!シュートとステップでターゲットを撃破しながらここまで来ている!』

「ホワイ!そんなっ、道中でポイントを稼ぎながらミーとほぼ同時にプラチナターゲットに辿り着けるわけがないネ!?」

『その秘密はシュートにあった!翔也君のアペックスはジャンプシュートやスピンを駆使して壁や障害物をスルーしながらショートカットしていたようだ!まさにフリックスの神業士!!』

「へへっ、やっぱアペックスはダントツにおもしれぇぜ!」
 翔也はニカッと笑った。
「ゆ、許さないネ!ミーが道中のポイントを犠牲にしてまで狙おうとしたプラチナターゲットを横取りするなんて!!」
 ピースは停止しているアペックスへ狙いを定めた。
「インスタントフィールド!撃沈させてやるネ!!」
 翔也がバリケードを構えるよりも素早くヒンメルギアをシュートする。
 これならフリップアウトは確実だろう。
 しかし……。

 ガッ!
 アペックスはヒンメルギアの攻撃を受け止め、微動しかしなかった。

「ホワァッツ!?」

『なんとなんと!ヒンメルギアの渾身の一撃をアペックスは受け止めた!!』

 この展開には驚きを隠せないバン達。
「バリケード無しで受け止めただと……!」
「普通、あれだけの機動力がある機体はその分防御力を犠牲にしてるはずなのに」
「機体内部に、何か仕掛けがあるのか……?」
「ここからだとどういうカラクリか分かんねぇな」

 ヒンメルギアが密着したまま翔也のアクティブフェイズになる。
「よーしいくぞ、アペックス!!」
 翔也はインスタントフィールドを展開し、密着したヒンメルギアを投げ飛ばすようにスピンした。
 ヒンメルギアはなす術なくフリップアウト。撃沈まではしなかったが大ダメージを受けてしまった。

『フリップアウト!!!この大ダメージにより、天崎翔也君は闘将ナオト君のポイントを上回ったぁぁぁ!!!』

「おっしゃ!」
「オーマイガッ!!」

 そして、バン達の近くの超貴賓席より少し劣る一般特別指定席の方で大きな歓声が上がった。

「うおおおおおすげえええ!!!」
「その調子だよ!翔也君!!!」
「がんばれーーーー!!!」
「うひひ」
 翔也のクラスメイト達だ。
 琴井スナ夫の財力によって周りの席はほぼ貸切状態となっており、垂れ幕まで掲げての大袈裟な応援団と化している。

(へぇ、あいつ結構慕われてんだな)
 天崎翔也の応援団を眺めながら、バンは妙に感心したのだった。

「「「いいぞいいぞ翔也♪がんばれがんばれ翔也〜♪」」」

 特に目立っているのは、今野ミハルを中心とした複数の女子達によるチアガールコスプレだった。

「なんでわざわざチアガール?」
 モブ太が突っ込む。
「応援といったらチアに決まってるでしょ!それよりほら、動画撮って!後でチックトップスに投稿してバズり狙うんだから!」
 ミハルに促されてモブ太はミハル達の動画を撮る。
「いや、なんで試合じゃなくて応援を撮らなきゃいけないんだろ……」
「あ、こら!ローアングル過ぎ!アンスコ映ったら垢BANされるでしょ!」
「気にするところそこなの!?」
 不満げにチア集団を撮影するモブ太へスナ夫がフォローを入れるように話しかけた。
「ふっ、試合なら僕の雇ったカメラマンがしっかり撮影しているから、あとでデータを送ってあげるよ、ベイベー」
「そう言う問題なのかなぁ……」
 疑問に思いつつも状況に流されるモブ太だった。

 ピーーーー!
 そして、会場にサイレンが鳴り響く。

『さぁ、バトル終了だ!!決勝戦へ駒を進めるのは……一位はなんと今大会初出場の天崎翔也君!そして二位は闘将ナオト君だ!!』

 観戦席のバン達。
「意外な結果になったな」
「バトルロイヤルはランダム要素が大きいですからね。本番は直接対決ですよ」
 ハジメは少しだけ悔し紛れにそういった。

 ……。
 …。

『スーパーグレートフリックスカップ!いよいよ決勝戦を始めるぞおおお!!!』

 展示場内に特設のステージとフィールドが用意されおり、そこへナオトと翔也が立っている。

『勝ち上がったのは、今大会のダークホース!誰も予想のつかなかった見事な戦いで一位通過した天崎翔也君!彼の戦いはこの決勝戦でも我々を魅了してくれるのか!?
そしてそして、対するは前評判の最も高かったこの男!前回チャンピオンの闘将ナオト君!!なんとしてでも勝利して来期のプロ入りへ向けて弾みをつけたい所!
決勝戦のルールは上級アクティブバトル!己の力を最大限発揮して戦い抜いてくれ!!』

 翔也とナオトが機体をセットし、準備完了する。

『それでは、準備OKだな!?いくぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「いけ!アペックス!!」
「お前の格を見せ付けろ!ディバインスパルナ!!」

 ガッ!!
 ナオトが力押しでアペックスを圧倒して先手を取った。

「おらぁぁ!!」
 間髪入れずに羽を広げてマインヒットを決める。

『これは早業!闘将ナオト君、いきなりマインヒットを決めた!翔也君、残りHP12だ!』

「なら俺もっ!アペックス!!」

 ガッ!
 翔也はスピンでマインヒットをしつつその反動で反撃されやすい位置まで遠ざかった。

『翔也君もマインヒット!片や変形、片や機動力による攻撃!実力は互角か!?』

 バトルフリッカーコウの実況にナオトの口元がヒクつく。
「互角?はっ、冗談!フリップスペル、サンダーラッシュ!!

 サンダーラッシュ……発動後ターン終了し次のターン二回シュートできる。ただし、効果終了までバリケードを使えない。

『おおっとここでサンダーラッシュ発動!翔也君のターンになるぞ!!』

(何かしてくるな……一か八かフリップアウト狙ってみるか)
 バリケードのない相手ならフリップアウト狙えるかもと強シュートを放つもアペックスのパワーでは届かず。
 それでも反撃を防ぐために距離は取れた。
「たはははは、やっぱ無理か」
 ダメ元だったので翔也の反応は軽い。

『ナオト君はビートヒットを受けて残り11!そしてサンダーラッシュ発動!2回シュートできるぞ!』

 ナオトは一回目のシュートでスパルナをアペックスの近くまで移動させ、そして二回目のシュートで必殺技を放った。

「ハリケーンブレイカー!!」
「くっ!」
 どこに飛ぶか予測もつかない必殺技。翔也は防ぐ事を諦めたのかただ飛ばされて行くアペックスを凝視していた。
「……」
 これで翔也の残りHPは6となった。

 そして仕切り直しアクティブだ。
『3.2.1.アクティブシュート!!』
 バシュッ!ガッ!
 ナオトが難なく先手を取る。
「ブチかませ!ディバインスパルナ!!」
「躱せ!アペックス!!」
 翔也はステップでアペックスを回転させて身を翻して回避する。
「早い!?いや、俺の動きを予測してスピンで躱した……!的確な動きだ」

『のおっと!翔也君、見事なステップでディバインスパルナの攻撃を躱した!ここから挽回は出来るのか!?』

「よーし面白くなってきたぁ!フリップスペル発動!ブレイズバレット!!

 ブレイズバレット……3秒以内にシュートし、マイン二つ以上と干渉しながらマインヒットすればマインヒットダメージが2倍になる。

『のおっと!?翔也君はここでブレイズバレットを発動!しかし、マインも敵機もバラバラに離れている!この状態でどう成功させるつもりなんだぁ!?』

「血迷ったか……?」
「せっかくの大舞台なんだ。のぼせ上がった方がおもしれぇ!」

 翔也は敵機ではなく、マインに向かってアペックスをスピンシュートした。

「ブライテンオービット!!」
 ガッ!
 マインにぶつかり、反射で軌道を変えてフェンスに激突、そのバウンドで更に加速してディバインスパルナへ激突し、停止。
 更に、アペックスに弾き飛ばされたマインはもう一つのマインへぶつかった。
 これで二つ以上のマインが干渉した事になる。

「なに!?」
 仰天するナオト。

「おっしゃいけえええ!!」
「「「いいぞいいぞ翔也〜♪」」」
 翔也の活躍に観戦席は更に盛り上がる。

『お見事!!翔也君、奇跡的な軽業で不可能と思われた状況からブレイズバレットを成功させた!!
これでナオト君は6ダメージ受けて残りHP5!ダメージレースまさかの逆転だ!まだまだ予断を許さないぞ!!』

 観戦席のバン達。
「あの機体、特別な攻撃機能積んでるってわけじゃなさそうだが、フリッカーのやりたいシュートをダイレクトに伝えてるんだな」
「フリックスの原点って感じがするね」
「原点か……」
 その時、バンはアペックスの異変に気付いた。ボディに亀裂が走っているのだ。
(さすがに、機体がついていかないか……!)

 が、バトルは進行していく。
「見事だ、天崎翔也!だが、この位置は俺の距離だ!」
「っ!」
 アペックスはディバインスパルナと接触したまま停止している。
「こいつで決める」
 ナオトはディバインスパルナを変形させてウイングを広げた。

 広げたウイングの側面をアペックスへと接して、両手を使ってスピンする。
「ハリケーンブレイカー!!」
 両手を使ったアックススラッシュだ。
 アペックスをあらぬ方向へと投げ飛ばす!

『ナオト君!トドメの決め技炸裂!!どこに飛ぶか分からないスピン投げ飛ばし技に翔也君はなすすべ無しか!?』

「踏ん張れ!アペックス!!」
 ガッ、ギャギャギャ!!
 アペックスはスピン機とは思えないグリップ力を発揮してブレーキをかける。
 勢いは止まらないが、減速した隙にバリケードを構えて受け止めた。

 ガッ、スポンッ!!

 勢いも収まり、どうにか耐え切った。
「よし……!」
「なんだと……!」

 観戦席のバン達。
「アレを防いだ……!」
「天崎翔也君って、12歳だっけ?バリケードは強化されてるとは言え、あの技の軌道を読むなんて」
「まさか、さっき一回受けただけでもう見切ったのか……?」

『なんとなんと!ナオト君渾身の決め技を翔也君は耐え切った!!何と言う対応力!!』

(いや、これは……!)
 しかし、実は耐え切れていなかったと言う事にバンは気付いた。
 カシャ……と何か小さなものが翔也の足元に落ちているのだ。
「なっ!」
 よく見てみるとそれは長方形の物体……フリックスのシャーシだった。
「ボディの亀裂でシャーシの接続が緩んだのか……!」

『ああっとこれは!耐えたと思われたアペックスだが、シャーシがすっぽ抜けて場外!全フリップアウトの判定はシャーシと接続している部位が全て場外している事。つまり、シャーシだけが落ちたこの状態は……全フリップアウト判定で6ダメージ!
翔也君撃沈で、優勝はディバインスパルナの闘将ナオト君だぁぁ!!
これでナオト君はSGFC二連覇!来期のプロ転向への弾みを付けたぞ!!!』

 観戦席のバン達。
「連覇はしたが、ナオトの奴不完全燃焼だろうな。帰ったらフォローが大変そうだ」
 ハジメは、師匠としてナオトの心情を察して苦笑する。
「天崎翔也君も惜しかったね。アペックス、いい機体なんだけど」
「コンセプトは悪くないが、やりたい事に対して強度が足りなかったか……見た感じ素人の工作っぽいしな」
「まぁ、『高性能な機体を手にできる環境にあるか否か』も勝敗を決する上で重要なファクターですしね」
「そりゃな……ちょっと不公平な気もするが」
 バンはステージ上で心底楽しげに笑いながらナオトと握手をしている翔也を見て思った。

(誰もが楽しくシュートできて、使いこなせればどんな相手とも互角に戦えて、勝っても負けても楽しいと感じられる機体、それが誰でも手に入るようになれば……)

 ……。
 …。
 そして、優勝者特典のエキシビジョンとしてナオトVSバンの戦いとなる。

「やったな、連覇おめでとさん」
「どうも、ありがとうございます」
 ナオトのテンションが少し低い。
「……にしても、決勝の相手なかなか凄かったな。さすがに素人設備で開発した機体じゃ強度が持たなかったみたいだが、もしちゃんとしたとこでチューンを受けてたら……」
 バンの煽るような言葉にナオトは臆さずに返答した。
「過程は変わっていたでしょうね。だが、結果は変わらない」
 プライドと自信に満ちたナオトの返答にバンは笑った。
「言うじゃねぇか!それでこそ俺の孫弟子だ!さぁ、やろうぜ!!」

『それではいくぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「いけっ!ディバインスパルナ!!」

「飛ぼうぜ!ディフィートヴィクター!!」

 どうやら、GFCでのエキシビジョンはハンデとして旧世代ヴィクターを使用しているようだ。

 ……。
 …。
 大会が終わり夕暮れ時。
 翔也はクラスメイト達と共に帰路についていた。

「いやぁ、惜しかったなぁ翔也!後一歩だったのに」
「でも二位でも凄いよ!」
「実質的なアマチュア最強だしね!」
 皆口々に翔也を褒め称える。
「はははサンキュー!惜しかったけどめっっちゃ楽しかったぜ!けどアペックスには悪い事したな、俺がもっとちゃんと作ってれば……帰ったら念入りにチューンナップしてやらないと!そうすりゃ次こそは優勝だ!!」
 破損したアペックスを手に持ちながら、翔也は決意を新たにする。

 が、そんな翔也の前に一人の男が立ち塞がった。
「悪いが、いくらその機体を改良してもお前のシュートについていけないぜ」
「え?」
 翔也達がその男の姿を確認すると目を丸くして叫んだ。

「「「だ、段田バン!!?」」

「な、なんで段田バンがここに!?いや、って言うかアペックスが俺のシュートについていけないってどう言う事ですか!?」
 情報量が多すぎてさすがの翔也も動揺を隠せない。
「まっ、素人の限界って奴だ。だが、俺ならその限界を超えられる」
「……?で、でしょうね……?(汗)」
 そりゃそうだ。素人が出来ない事を玄人が出来るのは当たり前であり、意味深にドヤ顔で言う事ではない。
 遠回しな言い方のせいでバンの言葉の意図が分からずに余計混乱してしまう。
 バンは咳払いして仕切り直した。
「オホン、まぁあれだ。俺と取引しないか?その機体の限界を超えさせてやる代わりに、俺はお前をスカウトしたい」

「限界を超える……スカウト……」
 未だ全く意味の分からない言葉の羅列ではあるが、翔也の顔が徐々に不敵な笑みを浮かべ出した。

「なんだかよく分からないけど、それダントツに面白そうっすね」

 

    つづく

 

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