第3話「流れつかみ星を見るか」
悪徳フリッカー・火蓬シデに敗れ、デストラクションを奪われたサトルに代わり
愛機奪還の勝負を申し出た指定暴力団・風月組の長兄、風月ホタル。
しかし、シデはバトルをする条件としてラックアップバトルでの勝負を提示。
ホタルは条件を呑むが、取り決めにより立直を封じられた
カープスクレイパーにとって、圧倒的に不利なバトルとなってしまった。
しかし、そんな逆境をものともせず一局目、初手で穴フリップアウトに叩き込む。
シデの圧倒的テクニックと盤面把握能力の前に、いちどは窮地に立たされるも
それを超えた機転と度胸で紙一重の応酬を制し、1局目の勝利をもぎ取ったのだった。
「ホタルの二脱で1局目は2点獲得、これで12-8か……」
「立直がなんぼのもんじゃい、4局勝ったらええことやろがいッ」
2局目を前に、ホタルは武者震いを交えて啖呵を切る。
「そうラッキーがうまいこと続いたらええけどなぁ」
相変わらず、狐のごとき不気味な笑みを浮かべて煽りを入れるシデ。
ホタルはカープをセットし鋭い眼光で彼をにらむが、すでに冷静になっていた。
(同じ手の通じるようなやつやない、こっからさっきとはちゃうバトルになる)
(前座にしては十分に盛り上がったわ、せやけど本番はここから。
これまでは生け簀で泳がせとったが、今はもうカープはまな板のうえにおる)
ドラ決めは局ごとに交互に行うため、今度はホタルがサイコロを振った。
そして賽の目は2、決め手ドラは自滅である。
「「3・2・1・アクティブシュート!」」
シデのシュートポイントへと一直線に走るカープを横目に
華麗な壁反射シュートでカープとすれちがい、飛んでいくRS-F。
当然、おおきな機動力の差で、RS-Fが苦も無く先手を取った。
「ちぇっ、やっぱそうくるんかい」
(1局目、2回目のアクティブと似たような展開や……。
壁反射できて障害物をも乗り越えるシデのRS-Fの軌道を
ホタルのカープではとてもやないケド捉えることはできんかっ)
にやけるだけでなにも言わぬシデは、不気味なほど静かにシュート。
ホタルのステップもむなしく、RS-Fは無駄のない軌道でマインヒットをキメる。
「……ま、とりあえずこんなもんやろ」
軽く余裕を見せるシデ。
そのナメたような態度に、ホタルは気分を害す。
「余裕ぶっこいとったら痛い目みるど」
「……せや、おれ気づいたことあるんやわ」
「じゃかしいわ、おまえ吠え面二度と見せへんゆーたな――」
そう言うと、ホタルはカープの向きをRS-Fにロックオンした。
「――なんべんでもおまえに吠え面かかせたるわいッ!」
「でけへんて」
ホタルがシュートするや否や、軽い動きでステップしたシデ。
カープの突進は外れ、勢い余ってフィールド場外へと飛び出した。
「……おまえ、口悪ゥなったらシュート雑になるねんなァ」
「チッ」
足元に転がる石つぶてにあたり、蹴飛ばす。
ホタルの自滅によりHPは1-6となり、一気に窮地へと陥ってしまう。
「あかん、ホタル落ち着けっ」
「さっきとは逆の流れやんか、いやー気持ちええで」
ホタルには、勝ちの勢いが付きすぎていたのだ。
そもそも1局目の勝ちは、ねらって得られたものでもなかった。
勢い任せにバトルしている自分の姿が、まだホタルには見えていない。
「くっ、こっからでも……巻き返してみせたる」
「強がりや」
シデがマイン同士を隣り合わせにセットし、2度目のアクティブシュート。
RS-Fは弱シュートですこし進むと、フィールドをつなぐ
障害物の手前で停止、カープはフィールド中央をやや超え停止した。
ホタルの先攻となったが、できることといえばビートヒット程度。
仮に全力でアタックし、転倒……または障害物を越えるように
吹き飛すことができればフリップアウトの目もあるが、まずこれは至難である。
一か八か、カープを全力でシュートするホタルだが、しかし実らず。
RS-Fをすこし吹き飛ばしたが、障害物を超えた地点で転倒することなく着地。
ビートヒットこそ決まったものの、カープは障害物に
フロントウエポンが引っ掛かり、無様に停止してしまう。
HPは1-5。依然、窮地をそのままにターンをシデへと譲ることとなった。
「……ふ、くっはは! これはツイとる、ツイとるでぇ」
「くそッ、なんやねんこれはッ!」
RS-Fの前には、マインがふたつ並んでいた。
それも左前にひとつ、そして右前にもひとつという様相。
図ってか図らずか、アクティブ前にシデがセットした形である。
そしてさらにこの盤面が、シデにとって機宜となったのが
左右のマインのあいだから、動けぬカープを捕捉しているという点。
すなわちRS-Fは、ただストレートシュートをするだけで
ふたつのマインに触れながらマインヒットを決めることができるのである。
「――立直!
ステップできるもんならしてみぃや、ほら……もう触ったで」
「くっ」
ホタルは言われるがままにステップをしてみるが
カープのフロントウエポンは深く食い込んでおり動かない。
「くく、おまえプライドとかないんか」
「――ッ」
シデの煽りも束の間、RS-Fは
ふたつのマインを弾き飛ばしながらカープと接触。
しかも、カープのボディに乗り上げたまま停止した。
「ま、マイン……ヒット……! カープ、げ、撃沈や……」
サトルは意気消沈して判定を下すが、その瞬間、寒気を感じた。
シデの口角がゆっくりと上がっていく。
「こ……これはヤバい……!」
「――立直、『登頂』、『照弾』……裏ドラは乗らんが5点、満貫や」
「な、なんやと……!」
立直に加え、ふたつのマインに干渉しながら和了る2点の照弾(しょうだん)に
マウントスタンの形で和了る2点の役、登頂(とうちょう)まで付き5点の満貫。
リザルトは7-13となり、一気に差を付けられてしまった。
「……これで6点も差ァついた。
立直のできんおまえに、いったいここからなにができるんや?」
「あんまし調子乗ンなよ」
「ほ、ホタル……どないするんや」
立直のできないカープスクレイパーでは安定して点を得ることはできない。
1局目と同様の勝ちを3局、4局と続けてようやく2点差での辛勝。
3局、4局のどちらかで2点に及ばず、1点の和了をしたとなれば
延長戦に持ち込んで、さらに5局目でも勝ちをつかまなければならない。
勝利への道はとても暗く、そして険しいものとなってしまった。
「「3・2・1・アクティブシュート!」」
続く3局目、ドラはビートヒット。
ホタルはアクティブシュートで先手を取るものの
今度は近寄ってこないRS-Fにビートヒットしかできないシチュエーション。
「なんや、さっきまでとちごォて慎重やんけ、チョン押しかい」
「ホタル、気を付けろよ……なんか策があるんや」
「気ィつけたらどうこうなるもんかねぇ」
RS-Fはシデのシュートポイントから10cmほど進んだ地点。
カープはさらにその10cmほど手前に位置しており、落とそうと思えば
落とすこともできそうな状況ではあった。
しかし落とすことに失敗すれば、返しのターンでマインヒットか
あるいは最悪の場合、穴フリップアウトを受けてしまう危険をはらんでしまう。
「やるしかない」
ホタルはフリップアウトねらいを選択。
照準をRS-Fに向け、強烈な一撃を食らわせた。
が、シデはバリケードで受け止め、RS-Fを押し戻す。
バリケードをひとつブレイクはしたが、フリップアウトはかなわなかった。
「チッ、やってもた」
「ビートヒットか……これやとマズい」
「ようこそ、死へ……」
返しのターン、そのままマインヒットをキメたシデ。
これでHPは3-5、もはやふたたびマインヒットを受けることはできない。
「さて、こっからどないするか……見さしてもらおかな」
(RS-Fは穴からも遠いか。マインはねらえるケド
逆に返しのターンでマインされたら一貫の終わりや……)
「もう落とすしかないわ」
ホタルは不利なダメージレースをするつもりはない。
このまま、穴か全フリップアウトでの逆転をねらっている。
(角度的に穴はキツい。それにステップで逃げられる。
全落ちねらうとしたら、ステップの先を読んでシュートせな)
カープの照準をRS-Fに合わせ、シュート準備を終える。
しかし、シデはステップの構えをとらなかった。
「ええんか、ステップせんでも」
「バリケード、1個しかないからなぁ」
捕捉されているとは思えないひょうひょうとした態度。
かまうことなく、ホタルはカープを全力でシュートした。
フロントウエポンがRS-Fをすくい上げ、宙へとカチ上げる。
「よっしゃ、決まったッ」
「やったかっ!? このままバリケードをブレイクすればッ」
「早合点」
吹っ飛ばされたRS-Fを、シデは
まるで卓球のような反射速度でバリケードした。
ボディの軽いRS-Fは、いとも簡単に跳ね返ってフィールドへと舞い戻る。
バリケードのブレイクもなし。
「な、なんちゅう反射神経や……!」
「それもひとつしかないバリケードで……」
「ひとつで十分、おれは『シングルバリケーダー』や。
ふたつめのバリケードは残基にすぎん」
通常、バリケードがふたつあるうちは、両手でひとつずつ構えるもの。
しかし、ひとつのバリケードに神経を集中することで
強度は落ちるが反応速度をあげられる、ひとつ持ちのスタイルも存在する。
この手法は受け止めた際の衝撃のちいさい軽量機とは、こと相性が良いのだ。
シデはまさにこのスタイルのバリケード使い――シングルバリケーダーだった。
そしてRS-Fを跳ね返し、着地させた地点もまた秀逸。
なんと、RS-Fはマインのうえに鎮座、密着していたのだ。
このままカープに接触するだけでマインヒットは確定する。
「最悪や、これはもう……」
「――立直! どういう気分や、これからなぶり殺される気分は」
「関係ない」
ステップの構えをとるホタル、そしてシデがシュート。
マインの上から飛び立つように放たれるRS-Fと
カープを動かそうとバリケードに力を入れるホタルだったが
その瞬間、走った悪寒に間髪入れず、バリケードの向きを変更。
なんとホタルはステップで避ける選択を捨てたのである。
「なんでやっ、なんでステップで逃げへん!?」
「諦めたんや、いさぎええやんけ」
「これしかないんや……ッ」
RS-Fは着地し、ごく短い距離を走ったのちに
カープに乗り上げた、が――そこにあったはバリケード。
乗り上げるや否や、RS-Fはバリケードを
ブレイクするもカープの上から弾き飛ばされた。
がしかし、カープスクレイパー、撃沈。
「――和了や。立直、二爆、『破壊』。
……チッ、裏ドラ乗らんか、3点……4-16。
登頂だけやなく『半場』まで潰されて仕留め損ねるとは、スッキリせんわ」
「あ、あぶなかった……。もしホタルがステップでRS-Fから
カープを防御しとらんかったら、破壊はなくとも半場と登頂が付いとったんか……」
「もしそうなったら立直二爆半場登頂で6点……箱割って一撃死するとこやった」
もちろん、とっさに計算ができたワケではない。
だが、ホタルの死を予感したとっさのステップは
フィールド中心線を超えずに和了る2点の半場(はんば)と2点の登頂の複合を防ぎ
バリケードブレイクしながら和了る1点の破壊(はかい)に格下げさせる
捨て身の行動となって、すんでのところで一撃死を免れる結果となった。
「……ええやろ。飛びで仕留めそこなったんは
スッキリせんが、これでもうおまえにあとはない。
このオーラス……おれが勝とうが勝たまいが、おまえは次で死ぬだけや」
「12点のリードを奪われながら迎えるオーラス……絶望的や……」
「く……」
2局目の時点で、すでに流れはシデにあった。
元より有利な条件でのバトル、ホタルにとってツキもクソもないのだ。
このオーラスでどれだけいいバトルを繰り広げ、大勝を収めたとしても
点が届かなければ試合には敗北する……それがラックアップバトルである。
(跳満なんか、そうやすやすと出るもんやない。
たとえば……二爆無盾転覆半場ドラ1の複合。
バリケードを使わず、フィールドの半分だけで戦い
敵機を転倒させながらマインヒットだけで和了ってドラ乗せるっちゅー
神がかりをやってようやく6点、それでもイーブンで延長戦や。
こいつにそんな神がかりできるワケあらへん、ましてや立直もでけんねんからな)
(仮にシデが自滅でオーラス捨てたとしても、4局目の『墓穴』で4点。
8-12のままであいつに勝ち逃げされてしまう。
HP2以下で両機同士の接触なしに自滅したら『チョンボ』やから
相手機に接触しつつ自滅せなあかんとはいえ、機動力の高いRS-Fなら
わざと相手に墓穴をくれてやってベタオリってこともできてまうやろな……)
墓穴(ぼけつ)とは、相手の自滅により
和了ったときに付く役であり、その点数は何局目での和了かによって変動する。
たとえば、1局目での墓穴であれば1点、オーラス4局目なら4点。
勝ち逃げを防ぐために、試合の後半になればなるほど重い役となっていく。
さらに、ラックアップバトルでは麻雀などと同じく
チョンボ――すなわちペナルティがあり、反則やイカサマなどが発覚すれば
即座に相手に1点を支払ったうえで、悪質な場合は和了放棄や
局のやりなおしという、圧倒的に不利となる代償を支払う取り決めがある。
そしてサトルの考えるように、自滅による
勝ち逃げにおいても興を削がれるため、このチョンボが成立する。
故意の自滅か否かを区別するために、HP2以下のときに
相手機に接触することなく自滅した場合にのみチョンボとなるのだ。
なお、アクティブシュートで両機が接触し、穴や一部フリップアウトとなった場合
ラックアップバトルにおいては自滅扱いにはならず、墓穴も成立しない。
(墓穴をねらわれたら厄介やが、それは考えることやない。
問題は次のバトル、おれのカープのようなアタックタイプのフリックスが
おおきい点数で和了るためには、『一撃』とか、『直撃』みたいな
攻撃力の求められる先手必勝の大技をキメるしかないってことや)
攻撃力の高いフリックスは、すぐに決着を付けられれば点数が高くなりやすい。
だがその一方で、バトルが長引けば長引くほど
器用なことがやりにくい分、安い和了になりがちである。
そのためホタルはなるべく短期決戦で、あわよくばアクティブで
勝負を決しにいくぐらいの心意気を持ち、カープをフィールドにセットした。
シデがサイコロを振り賽の目は4、ドラはアクティブアウト。
(立直でけんと点の奪い合いで一歩及ばん……速攻でやるしかない。
やれることがすくな――立直、でけん……?)
一瞬、カープの目が光ったように見えた。
――その瞬間、ホタルの脳裏に光芒よぎる。
(せや……できることが、まだあったやんけ……!
蜃気楼つかっとってもできることが、まだあった……ッ)
「これからおまえのフリックスの奏でる音は、鎮魂歌みたいなもんやな」
シデの煽りで止まっていた空気が動きだす。
「ほざいとれや」
「「3・2・1・アクティブシュート!」」
「そっちやッ――」
「――なにッ」
シデはRS-Fを中央からだいぶそれた方向へとシュートする、が
ホタルは間髪入れずその軌道上へカープをシュート、接触したのち場外させた。
「あ、アクティブアウト!? ホタル、ええぞッ」
「な……なんで反応できたんや……!」
「アクティブの構えをとったとき、殺気を感じんかった。
……おまえ、わざと自滅するつもりやったやろ」
「く……」
(せやけど、まあええ。どうせベタオリするつもりやったんや。
思わぬアクティブアウトやが、早和了ねらえて好都合っちゅーもんや)
ホタルのアクティブアウトにより6-2、開幕から展開はおおきく動く。
「ゆーたやろ、余裕ぶっこいとったら痛い目みるて」
「これでもうシデのベタオリ自滅はない……!
残りHPは2、今下手に自滅したらチョンボやからな」
「せやけど、リザルト12点の差をどう取り返すん?」
冷静にRS-Fをセットするシデだが
その表情にはかすかに苦みが混じっていた。
だがそれを知ってかホタル、すかさず宣言する。
「――『流星』ッ」
「な、この土壇場で、アクティブアウトで流星やとッ!?」
「できることを……やるだけや」
流星とは、いわゆる『鳴き』のひとつであり
宣言した直後、全フリップアウトで和了った際に
一定の飛距離に達した場合に付く役でもある。
点はその飛距離に応じて変動し、50cmなら1点
100cmで3点の満貫、そして150cmなら役満という大技である。
しかし、宣言をすることで流星ねらいであることを知られてしまうため
たいていの場合はフリップアウトで相手フリッカーの胴体と接触させて和了る
1点の『直撃』に格下げされてしまう危険性が高く、成立させるのは容易ではない。
なお、流星のような『鳴き』の宣言と立直の宣言を
ひとりが同一の局においてその両方を宣言することはできない。
つまり鳴くことによって立直宣言の権利を失うというデメリットが発生するが
もとより蜃気楼を必須とするカープスクレイパーを使うことで
立直宣言権のないホタルにとってはこのデメリットはないに等しいのだ。
「「3……」」
(先手は取れんでもええ、そのあとなら全場外でも受けたるわい)
「「2……」」
(それでもつくんはせいぜい『完封』か『箱割』……ええとこ3点や)
「「1……」」
(なんも気にするこたない、このアクティブさえ乗り切れば……)
「「アクティブシュート!」」
(『流星』と『一騎打』さえ付かんかったらええんや……!)
シデはかすかな可能性を恐れていた。
普段であれば気にも留めないほどのちいさな“ほつれ”。
カウントのさなか、彼はその可能性をあまりに意識しすぎていた。
「――!」
一瞬、脳内にアクティブアウトを受けるビジョンが浮かぶ。
次にシデが見たのは、強烈なオーラを放ちながらにらみつけるカープだった。
「くそっ」
シデは焦って前方、しかしながらかなり横へシュート。
とにかく、アクティブアウトを避けることを優先した。
「カープ、そこやっ!」
しかし、RS-Fの逃げたそこをカープが鋭く貫く。
まるでどこへ向かうべきか、最初から知っていたかのように。
「ああっ、そんなアホなことがッ!」
直撃を受けたRS-Fは宙へ舞う。
思わぬ方向へと吹き飛ばされたことで反応が間に合わず
もはや身体にぶつけ直撃を受けることで安手に落とすこともかなわない。
場外へとむなしく散っていくその様を、シデは見ていることしかできなかった。
「あ……アクティブ、アウトッ!」
「一騎打『出落』ドラ1……それに――」
「――ッ!」
シデはとっさに吹き飛ばされた自機へと向かって走る。
「――触るなッ!」
「させるかっ!」
ホタルの叫びに一瞬ひるんだスキをついて、サトルがシデを抑えた。
抵抗するシデをキッとにらんだホタルは、RS-Fへと歩み寄り
フィールドの場外地点からその距離を計測、静かに立ち上がる。
「――『小流星』……6点の跳満や」
「や、やった……やったなホタルッ」
「くっ」
完封に加え、アクティブアウトだけで
撃破し和了る3点の満貫役、一騎打(いっきうち)に
通常ターンに突入することなく和了る1点の出落(でおち)。
さらに飛距離が50cmに達したことで1点の小流星(しょうりゅうせい)も複合し
ホタルは計6点を獲得、これによってリザルトは10-10のイーブンとなった。
(こ、この土壇場で、イーブンへ持ち込みやと……!?
ありえん、こんなん……こんなふざけたことッ)
「シデ――おまえは土壇場でカープから目ェそらした。
おれとカープに恐怖し、その感情を表に出してしもうた。
それがこのオーラスの……おまえの敗因や」
なすすべなしと思われたオーラスで、ホタルはシデの心が生んだ
そのわずかな“ほつれ”をつかんで勝利、延長戦への切符を手にする。
依然、立直のできないホタルにとって、不利であることに変わりはないが
ここでつかみ取った糸を放すことなく、手繰り寄せることができるのだろうか。
ホタルは、ふたたびカープをフィールドへとセットするのだった。
つづく
