第101話「開幕!真のフリックス世界一決定戦!!」
ダントツウィナーズ優勝パレード、そのステージで段田バンはとんでもない宣言をしてしまった。
「俺たちダントツウィナーズは……今日をもって、解散を宣言するぜ!!!」
「「「なにぃぃぃ!!!!!????」」」
世界中のフリッカー達が悲鳴を上げた。
『ちょ、ちょちょちょ、バン君!?それは、何かの冗談かい!?』
バトルフリッカーコウは慌ててバンへ問い正す。
「冗談でこんな事言えるかよ!俺も、リサも、ザキも、もうダントツウィナーズじゃねぇ!」
その言葉に驚いていた客席から徐々に野次や文句が飛び交うようになる。
「ふざけんなー!」
「俺たちがどれだけ応援してたと思ってんだ!」
「ダントツウィナーズのこれからの活躍楽しみにしてたんだぞー!!」
『皆様!落ち着いてください!!』
「聞いてくれ、皆!!」
バンが声を張り上げると、シンと静まり返った。
「俺達ダントツウィナーズは、FICSで優勝して世界一になったけど……でも、ダントツ一番になった気がしねぇんだ!!」
『ダントツ一番に、なった気がしない……?』
「俺は、ダントツウィナーズで戦うためにフリッカーになったわけじゃねぇ!俺がダントツ一番になるために戦ってんだ!!だから、リサとも、ザキとも、ちゃんと戦わねぇと世界一になんかなれねぇ!!」
バンの発言に同意するようにリサも口を開いた。
「私達もバンと同じ気持ちです!ダントツウィナーズとしてFICSで優勝したのはとても名誉な事だけれど、それよりも自分自身が世界一になりたい!」
「そういうこった。FICSが終わった以上、もうダントツウィナーズで馴れ合う理由はねぇ。元々こいつらとは敵同士だったんだ。ようやくとことんやれるぜ!」
「って事で今から、俺、リサ、ザキの三人で真のダントツ一番決定戦を開催するぜ!!」
バンは拳を突き上げて勝手にそんな事を宣言した。
『え、えぇ!?今から、いやちょっとそれは……』
「ふ、はははは!!面白いじゃないか!!」
「フォフォフォ!さすがはFICS優勝チーム、考える事が派手で良い」
ステージにフリップゴッドと遠山段治郎が上がってきた。
「フリップゴッド!それにじいさんも……」
「ダントツウィナーズ!いや、バンにリサにザキ。君達の気持ち分かるぜ。フリッカーならとことんやりたいよな!」
「おう!あったりまえだぜ!」
「会場の事なら心配はいらん!ワシが話をつけてやろう」
「おぉ、さっすがじいさん!太っ腹だぜ!!」
「その代わり、見応えのあるバトルをするんじゃぞ」
「おう!!」
こうして、フリップゴッドや遠山段治郎の協力もあり、優勝パレードのための特設会場はそのままダントツウィナーズの中で真のダントツ一番決定戦のための試合会場へと変貌した。
……。
………。
『さぁ、急遽!本当に急遽決まりました!ダントツウィナーズの三人による真のダントツ一番決定戦!!
大会形式は総当たり戦!最も勝ち星の多いフリッカーの優勝だ!そしてバトルルールは上級アクティブバトル!思う存分戦ってくれ!!!』
ワーーーーー!!!!
『まず最初のバトルは、段田バン君VS遠山リサ君だ!』
「リサ!いつかのデパートでの決着着けようぜ!」
「うん!」
『では、いくぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「ブッちぎれ!ストライクビートヴィクター!!」
「ソルプロミネンスウェイバー!!」
バキィ!!
ストライクビートヴィクターが真っ直ぐ突っ込み、ソルプロミネンスウェイバーを弾き飛ばす。
「先手は貰ったぜ!」
「甘いよ、バン!」
スピンしながら飛ばされたウェイバーは壁にぶつかり、その反射でヴィクターよりも奥へと進んだ。
『先手を取ったのはリサ君だ!見事にバン君のアタックを受け流したぞ!!』
「げぇ!?」
「いけっ!ウェイバー!!」
リサは間髪入れずにヴィクターへアタックし、難なくマインヒットを決める。
バン、残り12。
「へん、マインヒットくらいくれてやるぜ!いけぇ!ヴィクター!!」
フリップアウトしてしまえば取り戻せる!と意気込んでシュートするバンだが……。
ス……とリサはステップでウェイバーの向きを変えてヴィクターの攻撃から微妙に重心をズラし、攻撃を受け流す。
リサ、残り14。
「いぃ!?」
「いけっ!」
再びリサのマインヒット。
バン、残り9。
「このぉ!!」
またもリサはステップを駆使してバンの攻撃を受け流す。
リサ、残り13。
「リサ、まさか決勝の時のガレスのテクニックを……!」
「私の方がバンのシュートをよく見てるんだから、あのくらい簡単に出来るよ!」
「くぅぅ、同じチームって、敵に回すとこんなに厄介なのかよ……!」
手の内が完全にバレてる上にリサのテクニックがあれば、バンの攻撃を無効化するなど楽勝だろう。
そして、元々もっているマインヒット技術を駆使すれば隙がない。
「でも、そうこなくっちゃ面白くないぜ!!」
「いくよ、ウェイバー!!」
バチンッ!!
またも難なくマインヒット!バン、残り6。
「手の内がバレてるからってなんだ!そんなもの!」
バンはグッと力を込めた。
「ブッちぎれ!!ブースターインパクト!!!」
バゴオォォ!!!
必殺の一撃。そのスピードにはリサも反応しきれずにマトモに食らってしまう。
そして、本体全てが場外。リサ、残り7。
「どぉだ!おいついたぜ!!」
「は、反応出来なかった……さすがだね、バン」
「押してダメならもっと押す!それが俺のやり方だぜ!!」
めちゃくちゃな理屈だが、それが通用してしまうフリッカー。それが段田バンなのだ。
「なら私は、もっと押してくるバンをもっと翻弄するよ!」
得意技と得意技のぶつかり合い!
それこそがフリックスバトルだ。
『それでは、仕切り直し行くぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「「いけええええ!!!」」
チッ……!
ぶっ飛ばそうとするヴィクターと翻弄しようとするウェイバーが掠めてお互い場外する。
バン、残り4。
リサ、残り5。
「まだまだ!!」
「ウェイバー!!」
仕切り直しアクティブ。またも同時場外してしまう。
バン、残り2。
リサ、残り3。
「くそっ、またかよ!」
「バン、このまま続いたら私の勝ちだよ?」
「わぁってる!今度こそ俺がぶっ飛ばす!!」
「無理だよ」
リサは急に真顔になった。
「っ!」
「私は、ずっとバンを見てきた。バンの動き、癖、目線……いろんなものを、ずっと。バンが思ってるよりも、ずっと見てたんだよ」
「え……」
「バンは、私の事、見てくれてた?」
「リサを……」
バンはこれまでのリサと一緒に過ごしてきた時間を思い返す。
初めて大会で戦って負けた事。スクールから保護した事、タッグバトル大会に出た事、GFCでリベンジした事、そして、ダントツウィナーズで仲間として戦った事……。
「決まってんだろ。俺だって……俺の方がリサをずっと見てきたんだ!」
「バン……」
仕切り直し。
『3.2.1.アクティブシュート!!』
「いくぜ、リサ!!」
「いくよ、バン!!」
機体名ではなく、お互いの名前を叫びながらのシュート。
より相手を見て、相手を想ったものが勝つ。そんなアクティブシュートだった。
その、想いの結果は……!
「絶対逃さねぇ!リサアアアア!!」
バキィィィ!!!
逃げようとするプロミネンスウェイバーをヴィクターは見事に捉えて場外へ弾き飛ばす。
これでアクティブアウトだ。
「どうだリサ!俺だって、ずっとリサを見てきたんだぜ」
バンにそう言われ、リサは嬉しそうに微笑む。
「……うん、そうみたいだね。ふふ」
「な、何笑ってんだよ」
「ううん、なんでもない」
そう言いながら、リサは一瞬目を瞑り、そしてゆっくり開きながら言った。
「でも、この勝負……」
「あっ!」
バンも気付く。
「私の、勝ちだよ」
『おおっと!アクティブアウトかと思いきや、ストライクビートヴィクターの先端がフリップホールへ僅かに被っている!これは同時場外扱いになるのでお互いに2ダメージ!よって、HPを1残したリサ君の勝利だ!!』
「そ、そんなぁ……!」
まるで初めてリサと戦った時をなぞったような結末になってしまった。
「バン、私の事ばかり見過ぎたからだよ」
そう言いながらリサはウインクをして踵を返した。
「なっ!」
バンは顔を赤くして叫ぶ。
「う、うるせええええ!!!次は俺が勝つからな!!!」
つづく
CM