第102話「真のダントツ一番をめざして!」
真のダントツ一番決定戦。
ダントツウィナーズの三人の中で誰が一番強いかを決めるために急遽開かれたこの大会。
総当たり方式で、第一試合はバンとリサの戦いとなりリサが勝利した。
そして、第二試合はリサとザキのバトルだ。
しかし、その試合は一方的だった。
「プロミネンスドリフト!!」
「効くかぁ!!ダークホールディメンション!!」
バキィィィ!!!
ザキの容赦ない必殺の攻撃がリサをどんどん追い詰めていく。
「っ!はぁ、はぁ……!」
「その程度か?緩くなったなぁ!!」
バーーーーン!!!
ザキは一切攻撃の手を緩めずに攻撃をする。
「きゃあああああ!!!」
パリーーーン!!
リサのバリケードが全て破壊され、さらにウェイバーは転倒しスタンする。
そのあまりにも聞き迫る攻めにギャラリーは困惑した。
「な、なぁ?あの二人って一応チームメイトなんだよな?」
「そ、そりゃ、FICSで優勝したダントツウィナーズだぜ」
「でもさ、元チームメイトにあそこまで容赦なく戦えるもんなのか……?」
ザキはリサを見据えながら口を開く。
「お前らはどう思ってたのか知らねぇがなぁ。俺どんな時でも、お前らが敵でもあるって事を忘れた日はないぜ」
「私達が、敵……」
「ダントツウィナーズが結成された時からずっとなぁ!俺はこの瞬間を待ち侘びていた!世界一になって、思う存分お前らとやり合えるこの瞬間をなぁ!!」
ザキは必殺技を構える。
「喰らえぇぇ!!ダークホールジェノサイド!!!」
容赦のない本気の最大奥義がソルプロミネンスウェイバーをぶっ飛ばし、リサへ直撃した。
「きゃあああああ!!!」
『ダイレクトヒット!!勝者は伊江羅ザキ君だ!!』
元チームメイトにも関わらず、あまりに一方的かつ残虐な展開に会場はドン引く。
「来いよ、次はテメェの番だ」
ザキはバンを手招きする。
「ザキ……やっぱお前はこうじゃねぇとな!!」
かつてのザキを彷彿とさせる戦い方に、バンは少し嬉しくなりながらフィールドについた。
『さぁ、第3試合はバン君VSザキ君だ!!ストレートを得意とするバン君とスピンを得意とするザキ君の超パワー対決!』
「勝負だぜ、ザキ!!」
「少しは楽しませろよ」
二人がシュートの構えを取る。
『それでは行くぞ!3.2.1.アクティブシュート!!!』
バシュウウウウウ、バーーーーン!!!
爆発を伴う激突!お互いに大きく弾かれるが、場外は免れた。
そして、先手を取ったのは……。
『先攻はザキ君だ!』
「くっ!」
「ぶちかませ!!」
シュンッ、バキィ!!
「耐えろ!!」
ガッ!!
ザキのスピンシュート。凄まじい衝撃を受けながらも、バンはバリケードで耐える。
「うおおおお!!!」
そして、バンも反撃。
バキィ!!
同じようにぶっ飛ばす。
「ぐっ!!」
ザキも顔を歪めながらこれを耐える。
「はぁぁぁ!!!」
バキィ!!
再びザキの反撃。
ガッ!
ヴィクターはフェンスへ叩きつけられた。
「このぉ!!」
バキィ!!
バンの攻撃。今度は掠めるように突っ込んだ。
ドゴォ!!
バキィ!!
と、攻撃しては耐え、反撃しては耐えられ……と言うような互いにビートヒットを繰り返す展開が続いた。
『おおっとこれは珍しい展開!互いに殴り合いの泥試合!受けはダメージは小さいが、その消耗は激しいぞ!!』
バン残り2。
ザキ残り2。
ザキのターン。
「はぁ、はぁ……!」
「へっ、やるじゃねぇか!俺の命令通り、強くなって来やがったな」
かつて、GFCの準決勝で交わした言葉。バンは掛け値なくザキの認めるフリッカーへと成長していたのだ。
「ったりめぇだぜ!今度こそ、ダントツでお前に勝つ!!」
「それでこそ、俺の敵にふさわしい!!」
バキィ!!
「くっ!」
その拳の重さを直に感じながら、バンは想った。
これまで戦って来たライバル達のことを。
ザキは自分らの事を敵と思い、本気で潰そうとしているからこそここまでの強さをもっている。
しかし、バンは……。
「俺は、お前の事敵とは思ってないぜ!」
「はぁ?」
「お前だけじゃねぇ!オサムもマナブも操も剛志もレイジもゲンゴもユウタもイツキも、アルヤンイシャーンも拳弾倶楽部もユーロフリッカー騎士団もTSインテリジェンスもデザートハンターズもデウスリベンジャーズも、リサも!他にもみんなみんな!俺と戦ってくれる大事な仲間だ!!!」
「仲間だと?」
「仲間だからこそ、本気で戦ってぶっ倒したいんだ!!いつまでもずっと!!!」
そもそも敵は倒したいと思う相手ではない。『最初から存在してほしくない』と思うべき相手だ。
しかし、仲間は違う。
存在してほしくて、戦って、勝ちたい……そんな相手だからこそ強くなれる。
バン残り1。
ザキ残り2。
「ザキ!お前と仲間になれて、楽しかったぜ!!」
「っ!」
「いっけえええ!ストライクビートヴィクター!!」
バキィィィ!!!
渾身の力を込めた一撃。これならフリップアウトで逆転を狙えるか?
「俺もだ!段田バン!!!」
ガッッッ!!!
ザキもバンを認め、そして耐え切った。
「耐えられた!?」
「これで、俺の勝ちだ」
しかし……。
コテン……!
ジェイドディバウアはフリップアウトは耐えたものの、ゆっくりと転倒してしまった。
『おおっと!この土壇場でジェイドディバウアが転倒してスタン!!バン君、絶好の逆転チャンス!!』
お互いに残り1。あとは一撃食らわすだけで勝てる!!
「決めろおおおお!!!」
「受け止めろおおおお!!!」
ガッッッッッ!!!!!
ストライクビートヴィクターの一撃がモロにヒットする。
しかし、フロントがジェイドディバウア改の懐に潜り込んでしまい、密着したまま停止してしまった。
「あっ!」
『おおっとこれは惜しい!!密着しているのでビートヒットは不成立!バン君、千載一遇のチャンスを逃したか!?』
トドメの一撃を受け止められた。これでは次のターンマインを喰らって負ける……。
その時だった。
ッパン!!
時間差でヴィクターのバネギミックが暴発。
その衝撃でヴィクターがディバウアから離れた。
『な、なんとなんと!奇跡が起きた!!ヴィクターのバネギミックが暴発した事でビートヒットが成立!!これによって、ザキ君は撃沈!勝者はバン君だ!!!』
「ぅおっしゃああああああ!!!!!」
死闘を制したバンは雄叫びを挙げた。
「……おい」
ザキはそんなバンへゆっくりと近づき、そして手を出した。
「俺の負けだ」
「ザキ……」
バンはその手を握って笑った。
「へへへっ!サンキュー!!」
そして、バンは拳を掲げて宣言した。
「やっぱり俺がダントツ一番!!」
しかし、それに意を唱える声が届く。
「バン、大事な事忘れてない?」
リサが不満げな顔でフィールドについていた。
「……あっ、そうだった!」
『さぁ、大変な事になったぞ!!真のダントツ一番決定戦は三人の勝ち星が同数で一巡目を終えてしまった!と言うわけで、二巡目行きます!!こうなったら徹底的にやってくれ!!』
「おっしゃ!今度こそ勝つぜ、リサ!」
「そうはいかないよ!」
『3.2.1.アクティブシュート!!』
「カッ飛べ!ストライクビートヴィクター!!」
「いけっ!ソルプロミネンスウェイバー!!」
……。
そして。
この三人はまたもお互いに勝ったり負けたりしながら同数で二巡目を終え。
次の三巡目は全員引き分けで決着つかず、
そして、四巡目、五巡目も一向に決着がつかず、延々とバトルを繰り返していた。
「わ、私、もうダメ……」
5時間くらい経過したところでリサがギブアップ。
バンとザキの一騎打ちとなった。
「へへ、だらしねぇぜリサ……!」
「おめぇはまだまだいけるよなぁ??」
「ったりねぇだろ!」
『さぁ、決着のつかないリーグ戦は根比べの様相を呈して来た……リサ君はリタイアし、バン君とザキ君の一騎打ちだぞぉ……』
バトルフリッカーコウの実況も覇気がなくなっている。
『この勝負、いつまで続くんだぁ〜!!!』
そして、何周目かの何度目にもなる仕切り直しアクティブ。
『3.2.1.……アクティブ、シュ〜〜……』
「おらぁ……」
「いけぇぇ……」
バンとザキももう、力の入らないシュートを放つ。
「うぐっ……」
バタッ!
バンはあまりの疲労に撃った瞬間仰向けに倒れる。
「なにっ」
それが上手い具合に逸れた軌道となり、ザキの虚を突く形でシェイドディバウアは穴の上で停止。
『おおっと、ジェイドディバウア自滅で撃沈……よって、この、バトル……』
言い切る前に、バトルフリッカーコウもパタリと倒れてしまった。
……。
………。
夢を見ていた。
目の前にたくさんのフリッカー仲間がいて、世界中を飛び回って、毎日ずっと、何度でもバトルし続ける夢を……。
「やっぱり俺が、ダントツ一番だ〜……グゥ……」
バンはフィールドの前で眠りコケながら、幸せそうに寝言を呟いた。
おわり
CM