第96話「溢れ出す黒きオーラ!憎しみの生み出した魔王!!」
FICS決勝会場の乗っ取りを企てるフクベに対して、フリップゴッド自らが悪を討つために立ち上がった。
「「3.2.1.アクティブシュート!!」
バシュウウウウウ!!!
今、神と悪魔が激突する……!
「プロトデーモンEX!!!」
「バンキッシュドライバー・キャノン!!!!」
ドゴォォォン!!!
爆音と爆炎が舞い上がる。
「インパクトキャノン!!!」
バゴオォォ!!!
バンキッシュドライバー・キャノンの必殺ギミック発動により、プロトデーモンEXが大きく弾かれた。
「なにぃぃ!!!」
ゴスッ!!
飛ばされたプロトデーモンEXはフクベの鳩尾にヒットし、フクベは倒れた。
バンキッシュドライバーキャノンも自らの技の反動でフリップゴッドの所まで弾かれたのだが、フリップゴッドは顔面にぶつかる寸前キャッチした。
「やった!ダイレクトヒットだ!」
勝負あり。フリップゴッドの一撃KOだ。
「ぐ、うぅ……」
「これで終わりだ、フクベ」
フリップゴッドはゆっくりと倒れたフクベを近づき、二つの鎮め玉を一つに合わせて翳した。
パァァァァ……!
と淡い光を放ち、それと同時にフクベの身体から黒いモヤのようなものが溢れ出し、鎮め玉へと吸収されていく。
「ぐ、ぐあああああ!!!」
一応ただの鎮静効果なだけなのだが、根がマイナスな人格のフクベにとってはマイナス要素をなくすと言う事は人格そのものを攻撃されているに等しいのだろう。
アンデッドが聖水かけられて苦しんでいるようなものだ。
「荒療治だが、これで改心してくれ」
「ふざ、けるな……!なんで俺が改心しなくちゃいけないんだ!俺は、被害者なんだぞ……!!」
ボゥ……。
その時、どこからどもなく黒い火の玉のようなオーラが無数に発生し、フクベの周りを取り囲み始めた。
「なんだ、これは!?」
「っ!」
そして、その火の玉から薄らと声が聞こえる……。
負けたくない……!
なんで勝てないんだよ……!
あいつ絶対反則してる……!
「これは、夏合宿の時の」
「ネガティブな感情の生き霊?」
「そうか、そういや佐倉城址公園は心霊スポットだった!それがフクベに影響して惹かれあったんだ!」
黒い魂はフクベの中へ入り込み融合していく。
パキンッ!
その余りの強大な力にフリップゴッドの持っていた鎮め玉が粉々に砕けてしまった。
「鎮め玉がっ!」
「そんな……!」
ゆらりとフクベが立ち上がる。
その姿は黒いオーラを纏って赤く鋭い瞳をした、別人だった。
「……」
フクベは無言で機体を構え、ゴッドの持っているバンキッシュ目掛けて放った。
バシュッ!!
「っ!!」
咄嗟のことに反応しきれず、バンキッシュキャノンのフロントが破壊されてしまう。
「ぐっ!!」
「そんな、フリップゴッドが!」
「これじゃ、もう止められないの……!?」
鎮め玉もバンキッシュキャノンも失い、フクベは更なる戦力を得て……まさに万事休すだった。
しかし……。
ポゥ……。
砕け散った鎮め玉は輝きだし、その光をストライクビートヴィクターとソルプロミネンスウェイバーへ送り出した。
「な、なんだ!?」
「どうして鎮め玉の光が」
「共鳴している?なぜだ、同じ素材を使っているわけでもないのに」
マエリア神父が首を傾げる。
「素材……?」
「この鎮め玉はチバニアンで発掘出来る特殊な成分の鉱物を原料にしているのです。しかし、それをフリックスに使うなど……」
「チバニアン……あっ!!!」
聞き覚えのある言葉に、バンはハッとした。
「そうだ!こいつならいけるかもしれないぜ、リサ!」
「うん!」
そう、ストライクビートヴィクターの素材はチバニアンで採掘し、ソルプロミネンスウェイバーはその時の余りを使っている。
つまり、鎮め玉と同じ効能を持っていてもおかしくないのだ。
しかもフリックスとして高い戦闘力も持っている。
「おっしゃ!いくぜ!」
バシュッ!!
バンとリサは黒いオーラを纏うフクベへシュートする。
しかし、次から次へと湧き出る無数の生き霊どもに阻まれて届かない。
「くそっ!こいつら邪魔なんだよ!!」
「ちっ、舐め腐った魂どもが!」
ザキがスピンシュートを放つ。
「ブラックホールディメンション!!!」
ブラックホールを起こすほどの超スピン!これによって生き霊の勢いが減っていく。
「そうか、生き霊はザキのスピン攻撃に弱かったんだったな!」
「いいから、早くやれ!」
「わ、分かってるよ!」
今度こそと、バンとリサが構える。
「ぐおおおお!!!」
フクベもプロトデーモンEXを構えた。
「カッ飛べ!ストライクビートヴィクター!!」
「いけー!ソルプロミネンスウェイバー!!」
バシュウウウウウ!!!
三人は同時にシュートを放った。
そして、ヴィクターとウェイバーがプロトデーモンを押し込んでフクベの身体へぶつける。
「ガアアアアアア!!!!」
断末魔を上げながらフクベは倒れて気絶。
黒いオーラがフクベの身体から離れて、浮き上がり不気味な人形へと変貌した。
「やったか!?」
「いや、なんだあれは……!」
フクベの方はどうにかなったが、代わりに強大な黒い魂が雄叫びをあげて暴れ回る。
「くっ!もしかして、余計厄介なことになったか!?」
「どうにかあれを鎮めないと……!」
その時だった。
「ふぁーあ、なんぢゃなんぢゃ騒がしいの」
ポワァ……と淡い光を放ちながら、一人の少女が現れる。
ゆるキャラ以上萌えキャラ未満な愛らしい見た目と薄らと透けた体から、人間では無く霊体の類だとわかる。
「なんだ?また生き霊か?」
「でも、なんだか様子が違うみたいな」
バンの言葉が気に障ったのか、少女はプンスカしながら答えた。
「生き霊とは失礼ぢゃの。わちは佐倉市の守り神『カ・ムーロ』ぢゃ!」
「カ・ムーロ?あの、二次元と三次元を行き来する力を持つって言う、佐倉城に伝わる妖怪の!?」
カ・ムーロはとても有名なので誰しもが知っている御伽噺だが、まさか本当に存在していたとは。
「妖怪ではないのぢゃ!……そんな事よりなんぢゃこのセンスない城は。勝手にわちの住処を魔改造しおって!そなたらには祟りが起こるのぢゃ!!」
「ちょ、ちょっと待って!俺たちじゃねぇって!あいつあいつ!!」
一応守り神とか名乗る奴に恨まれたらとんでもないと思い、バンは黒く漂うオーラを指さした。
「此奴か!許せぬ!!」
「ガアアアアアア!!!」
カ・ムーロちゃんに指さされると、黒きオーラは雄叫びを上げながら突っ込んできた。
「あ、危ない!」
しかし、カ・ムーロちゃんは動じない。
「大妖術!ふぶけ!千本佐倉!!」
カ・ムーロちゃんの妖術の光が真の佐倉城を形作り、黒いオーラを吸収し、消滅させた。
「これにて、一件落着なのぢゃ」
「す、すげぇ……なんだこれ……」
「ふぁ〜わ……力を使ったらまた眠くなったのぢゃ……ではまた4000年後に、おやすみなのぢゃ」
デウスエクスマキナの如く、いきなり現れていきなり事態を収束させたかと思ったら、カ・ムーロちゃんは再び眠りについてしまった。
とりあえずこれにて一件落着。
バン達は要塞から脱出した。
要塞から出ると、戦闘員達は全て無力化され、スタッフ達も無事に救出されていた。
「おっ!バン達出てきた!!」
「大丈夫か!?」
「おう!みんなのお陰で勝てたぜ!!」
「「おっしゃああああ!!!」」
俺達のFICSを取り戻せた事に、一同は盛り上がる。
「思ったよりも被害は少ないし、今から大急ぎで準備を進めれば明日の決勝戦は開始できそうだ」
フリップゴッドがホッとしたように言う。
「良かったですね、遠山さん」
「えぇ、フリッカー達のおかげです。……マエリア神父、フクベの事は」
「……恐らく精神的にかなりのダメージを受けているでしょう。ここは私は引き受けましょう」
「よろしくお願いします」
「ご安心を。信じる心を持ち続けていれば、主は必ずや彼をも救うはずです」
こうして、フクベとの確執は一応の決着を迎えた。
そして、ダントツウィナーズとユーロフリッカー騎士団が対峙をする。
「トラブルはあったが、休戦はここまでだ。明日の決勝楽しみにしているぞ、ダントツウィナーズの諸君」
「おお!勝負だぜ!ユーロフリッカー騎士団!!」
つづく
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