第95話「フリップゴッド出撃!罪も恨みも受け止めて」
フクベによって会場を乗っ取られそうになったバン達。
一刻も早く会場を取り戻すために、フクベの建設した佐倉要塞へ向かった。
「ここから先へはいかせはせん!!」
しかし、戦闘員の大群や自走するフリックス型メカが行方を阻む。
「どけゃぁぁぁ!!!」
ズドーーーン!!
ザキのシュートで複数体一気に爆散するが、それでも次から次へ湧き出てキリが無い。
「ちぃ、蟻かこいつらは」
「一体どれだけの人数雇ってるんだろう」
「フリックス公式からの慰謝料をロクでもない事に使いやがって!」
シュンッ、シュンッ!チュドーーーン!!
その時、複数のフリックスが飛んできて戦闘員やメカ達をぶっ飛ばし、要塞への道が開ける。
「お、お前ら!」
それは、GFC、アジア予選、FICSで戦ったライバル達だった。
「ここは俺たちに任せろ!」
「早く行くったい!」
「ダントツウィナーズ!必ず決勝戦で会うぞ!」
「おう、サンキュー皆!!」
皆の協力でダントツウィナーズは要塞の中に突入した。
要塞の中は和風な作りで、忍者屋敷を彷彿とさせる仕掛けで満載だった。
隠し扉に落とし穴に、槍が飛び出してくる事もあった。
もちろん、自動でフリックスを発射する罠もたくさんあり、バン達はそれらを掻い潜って進んでいく。
「なんか、遠山フリッカーズスクールに突入した時のこと思い出すなぁ」
「それって、バンが私を助けようとした時の?懐かしいね」
「楽しんでる場合か」
「や、別に楽しんでねぇけどさ」
……。
………。
数々のトラップを乗り越えて、バン達は遂にフクベの待つ最上階に辿り着いた。
「ここかー!!!」
勢いよく部屋の扉を開ける。
そこにはフクベが余裕の表情で仁王立ちしていた。
「思ったより早かったな」
「あったりまえだ!お前なんかにゃ負けねぇ!!」
「私達には、今まで戦ってきた皆が助けてくれるから!どれだけお金かけて人を集めても大した力にはならないよ!」
「とっとと観念して投降しろ、三下が」
「投降……出来ると思うか?今更!ここまで来た以上、最後の最後までお前らに嫌がらせを続ける!!この身が朽ち果てようとな!!!」
「な、なんだよ、なんでそこまですんだよ!フリップゴッドに負けたからって、その程度でこんなに恨むか、フツー!?頭おかしいんじゃねぇのか!?」
「それとも、何か他に大きな理由があったりするの……?」
気に障ったのか、フクベは一瞬眉をピクリと動かしつつ口を開いた。
「その程度?何か他に理由だと?知った様な口を!私にとっては、これが全てだったのだ!!」
「フリックスが、全て……そこまで……」
「違う。『勝つ事が』だ!」
「勝つ事?」
「私は根っからのぼっちでな、勝つ事でしか人と関わりを持つ事が出来なかった……。だからどんな手を使ってでも、あらゆるゲームで勝ち続けた。勝って相手を煽る瞬間だけが、唯一ぼっちから解放される時間だった……。フリックスもその中の一つだ」
なんか、不幸な身の上話風に言ってるが……。
(友達がいないから勝つ事に固執したんじゃなくて)
(そんな性根だから友達がいなかったのでは?)
因果が逆だったかもしれねぇ。
「フリックスで必ず勝つために、相手の攻撃を全て無効化する扁平機体を開発した私は無敵だった。攻撃が通じずに、グダグダした試合にイラつき自滅していくバカな奴らを見るのは実に楽しかった」
「は?」
何言ってんだこいつ。
「だと言うのに、フリップゴッドの開発したバンキッシュドライバーによってそれが崩されてしまった……あの楽しかった時間を奪われたのだ……許せるはずがない……!」
ダメだ。聞けば聞くほど、ただの純粋悪だこいつ。
「どんな身の上話が飛び出してくるかと思ったら」
「ただのドクズじゃねぇか」
さすがにダントツウィナーズはドン引きした。
「こんなののために、俺達のフリックスをめちゃくちゃにされてたまるかよ!」
「もう遅い」
フクベの話に意識を逸らされていたせいで、後ろへの警戒が薄れていた。
フクベはリモコンを取り出してボタンを押した。
すると、ダントツウィナーズの背後からフリックスが射出され襲いかかる。
「しまった!」
咄嗟のことにバン達は反応出来ない。
しかし……。
「ボーンメイデン!!」
他のフリックスが飛んできて、そのフリックスを弾き飛ばしバン達は救われる。
「ま、マエリア神父!それに、フリップゴッドも……」
ボーンメイデンをシュートしたのはマエリア神父のようだった。そしてその隣にはフリップゴッドもいる。
「皆、無事で良かった」
「フクベさん、何故このような事を……!あなたは自分の罪を認め、神へ懺悔したはずなのに」
「罪だと?最も罪深い男がのうのうと表舞台に復帰していると言うのに、何故私だけが懺悔を続けなきゃならないんだ!!!」
フクベはフリップゴッドを指差して叫ぶ。
「この男がっ、罪を認め贖罪を続けない限り、私は永遠に被害者だ!!被害者である以上加害者を永久に罰する権利があるんだよ!!!」
そこまでフクベに言われてしまい、フリップゴッドは静かに口を開いた。
「フクベ、確かに僕は君に対して罪を犯してしまった……それは本当に過ちだと思っている。だが、ここまでの事をする以上、君はもはや被害者ではない!ただの悪党だ!!」
フリップゴッドばこれまでの自分の罪に対する殊勝な態度を捨てて断言した。
「遠山さん……」
「バン、リサ、あの勾玉は持っているかい?」
「へ?勾玉って、もしかして父ちゃんがお守りでくれた奴か?」
「どうしてそれをフリップゴッドが?」
「元々それは僕のもので、君のお父さんに頼んで君達へ預けてもらったんだ。僕が軽率にそれを使えないようにしつつ、いざと言う時は君たちを守るためにね」
「どう言う意味?」
軽率には使いたくないが、いざと言う時は使えるようにもしたい。
かなり都合の良い話だが、一体どう言う事なのだろうか。
その疑問に対して答えたのはマエリア神父だった。
「その石は、本当の名を『鎮め玉』と言います。マイナスな感情に侵された相手を鎮静させる成分を持つパワーストーンなのですが、いささか効果が強力で、相手の人格を破壊しかねない」
「僕は以前、フクベとコンタクトを取った時に咄嗟にそれを使ってしまってね……だが、鎮静するためとはいえ、人格の破壊は暴力も同じだ。だから使いたくなかった」
バンとリサから鎮め玉を受け取ったフリップゴッドはフクベを睨め付ける。
「だが、もう罪から逃げるのはやめだ!僕は、罪を犯してでも悪に立ち向かう!大切な子供達を守るためなら、罪悪感など怖くない!!」
「フンッ、また繰り返すか。さすが罪人だ!加害意識の塊め!!だが、そう簡単に行くと思うな!」
フクベがプロトデーモンEXを構えると、フリップゴッドもバンキッシュドライバー・キャノンを構えた。
「「3.2.1.アクティブシュート!!」
バシュウウウウウ!!!
今、神と悪魔が激突する……!
つづく
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