弾突バトル!フリックス・アレイ FICS 第94話「激震の悪あがき!フクベ、最後の逆襲!!」

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第94話「激震の悪あがき!フクベ、最後の逆襲!!」

 

 ダントツウィナーズVSユーロフリッカー騎士団の決勝戦を控えたある日。
 千葉県佐倉市佐倉城址公園では、着々と会場の準備が進められていた。

 フィールドの準備、客席や観客の動線の確保、看板や装飾の取り付け、屋台に入る団体への交渉などなど。
 意外と会場の用意はいろいろとやる事が多い。

 なんと言っても決勝戦だ。
 最高の舞台で戦ってもらい、それをより多くの人々へ伝えたい。
 そんな思いを胸に、全ての運営スタッフが総動員で準備に取り掛かっている。
 普段は象徴的な扱いで実作業には加わらないフリップゴッドも、今回は現場に出て動いている。
 主には確認と承認作業ではあるが、このような大舞台になると、それも大変な仕事だ。

「フリップゴッド、フリーバトルコーナーで使うフィールドですが、こちらで大丈夫でしょうか?」
「うん、問題無い。ただ、小さい子が使う事も考えて、角はちゃんと軟質性素材でガードするのを忘れないようにね」
「はい」

 一つ一つの作業を見て周り、あらかたチェックを終えたフリップゴッドはベンチに座ってホッと一息ついた。

「ふぅ……」
 すると、隣に人が座る気配を感じた。
「お疲れ様です、遠山さん」
 見ると、そこにはマエリア神父が座っていた。
「神父……どうしてここへ」
「遠山さんの大舞台、その集大成を見届けようと思いましてね」
「いやぁ、それはどうも」
「……それと、良くないお告げを受けたのです」
「良くない……まさか……!」
「確証は何もありませんが、酷く胸騒ぎがするのです」
「フクベはデウスリベンジャーズから手を引いた……しかし、手詰まりになったわけではない」
「何も起こらなければ良いのですが。遠山さん、もしもの時は大会の成功だけを考えるのです。何があっても」
「……はい」
 フリップゴッドは神妙な表情で頷いた。

 ……。
 ………。
 一方の段田家。

「うめ、うめ!」
 バンとリサは食卓につき、父特製のスペシャル超豪華味噌汁ぶっかけご飯を食べていた。

「どぉだ!今回はゲンを担いでカツ入り味噌汁ご飯だぞ!精がつくだろ!!」
「おぉ!やっぱ父ちゃんの飯は最高だ!!」
「……カツと味噌汁ってこんなに合うんだ……」
「カッカッカッ!そこが腕の見せ所よ!カツの衣自体にあらかじめ味噌味を付けつつ、汁気を吸ってもふやけない様に分厚く揚げる!それによって、表面は味噌汁の味が染み込み、それでいて噛めばサクサク、肉汁ドバー!それをご飯と一緒にかっこめば、テイスティングパラダイスの出来上がりって寸法よ!」

 本当にそれは美味いのか?

「くぅぅぅ!!濃厚な味噌汁とカツと肉の脂がたまらねぇぇ!!!」
 いや、豚汁と言うものがあるのだから、味噌汁にトンカツ入れたって美味いに決まっているのだ。

「それにしても早いもんだなぁ、バンとリサちゃんが世界大会の決勝を戦うなんて。しっかりやれよ!」
「はい!」
「あっまり前だぜ!」
「でも決勝はまだ先なのに、明日出発するなんて忙しないなぁ」
「早めに現地入りして、会場の空気に慣れるためだって」
「アジア予選と違って同じ千葉県だから必要ないだろうけど、何せ決勝戦だから念には念を入れるみたいです」
「なるほどなぁ、しっかり考えてるもんだ……。あ、そうだ、父ちゃんが渡したお守りもしっかり持ってけよ!」
「分かってるよ」
 バンは首にぶら下げてる勾玉を見せながら言った。

 ……。
 ………。
 そして翌日、ダントツウィナーズは現地入りし、会場の視察に来た。

「おーーー!もうすっかり出来てんじゃん!」
「やっぱり決勝戦となると規模が違うね」
「あ、屋台だ!……って、まだお店は入ってないのか」
「遊びに来たんじゃねぇぞ、はしゃぐな」
「良いじゃねぇかよ」
「まぁ、場の空気に飲まれないならなんでも良いさ。とにかく、この地をホームグラウンドと思えるくらいリラックスして過ごせ。ここからは自由時間だ」
 伊江羅博士に言われ、バンは待ってましたと駆け出す。
「おっしゃ!リサ、探検しようぜ!!」
「あ、待ってバン!前見て前!」
「へっ、おわぁ!!」
 リサに言われて前を見ると、男の人にぶつかりそうになった事に気付いてバンは急ブレーキをした。

「おいおい、気を付けろよ。決勝を控えた
大事な身体なんだからな」
「って、フリップゴッド!」
「よっ、頑張れよ決勝戦。このために僕ら君らに引き摺り出されたんだからさ」
「言い方よ……」
「はっはっはっ!……でも本当に君達には感謝しているんだ。あの時僕を連れ出してくれなければ、僕はきっといつまでも罪悪感の檻に閉じ込められたままで、本当の意味での贖罪も出来なかったと思う」
「フリップゴッド……」
「僕はフリックスを生み出したものとして、そして殺してしまったものとしての責任がある。だからこそ、この大会の成功を祈る義務があるんだ」
「あぁ!絶対成功させてる!そんでもって、俺がダントツ一番だ!!」
「俺達が、だろ」
「はははは、その息だ!さぁ、もう一踏ん張り頑張るかな!」
 フリップゴッドが仕事に戻ろうと踵を返した時。

 ピーガガガ……とスピーカーノイズの様なものが聞こえ、城址公園内で放送の声が響いた。

『随分と都合の良い事をほざくな、フリップゴッドよ』

「なんだ!?」
「この声は……」
「フクベ……!」

『貴様の罪は重く、そして消える事はない!表舞台に返り咲き、華やかな大会など開いて良い立場ではないはずだ!!』

「な、なんだてめぇ!もうFICSから手を引くんじゃなかったのかよ!!」

『デウスリベンジャーズからは手を引いた。だが、FICSは必ず潰す!今この瞬間、決勝会場は私が乗っ取ったのだ!大会など、開かせてなるものか!!』

「何言ってんだ?寝ぼけるのも大概にしろ!!」

『すぐに分かる』

 ゴゴゴゴゴ!!
 突如地響きが巻き起こった。

「なんだ、地震!!」
「みんな、待避だ!!」

 フリップゴッドは咄嗟にスタッフ達を非難誘導する。

 ゴゴゴゴゴ!!
 城址公園の中心が隆起し、そこから建造物のようなものが現れ始める。

「あ、あれは!?」
「まさか……!」

 それは、まるで江戸時代の天守閣のような建物だった。
 いやと言うかむしろあれは1873年に廃城したとされる……。

「伝説の佐倉城が、復活した……!?」

『もはやこれはただの佐倉城ではない!FICSを潰すために生まれた、佐倉要塞だ!』

 フクベがそんな訳の分からない事を宣っていると、どこからか大量の戦闘員風の男が現れてスタッフ達を確保し要塞の中へ連れ去っていく。

「な、なにをするんだ!!」

『悪いが、スタッフの皆様は大会期間が終わるまで軟禁させてもらう。これでFICS決勝は開催されず、全世界から肩透かしな大会だったと言う烙印を押されるのだ!はっはっはっ!!』

 ただ大会が開かれないよりも、決勝が中止という方が印象は悪いだろう。
 このタイミングでフクベが動いたのはそう言う事だったのだ。

「ふざけるな!そんな事をして、こっちが警察に訴えればお前は社会的に終わるぞ!!」

『やれるものならやってみろ。そんな事をすれば、より事態はややこしくなる。関係者への事情聴取、原因の究明、安全性の再チェック、損害賠償を決める裁判……これらが全て終わるまで大会などやっている場合ではない。そして、世間からの印象はより悪くなる。警察沙汰になったホビー大会としてな!!』

「こいつ、自分がどうなってもフリックス潰す気なのかよ……!」
「ちっ、ふざけた真似しやがる!」
「おっしゃ!やってやる!あの城攻略して、俺達でフクベをぶっ倒す!!」
「うん、それしかないね。内々で解決しなきゃ!」

「ちょ、ちょっと待て!いくらなんでも危険だ!奴は何をしてくるか分からない!下手をすれば自爆テロだって……!」
「それでも、俺達の大会は俺たちで取り戻さねぇと!」
「何してこようが、フリックスに敵う訳がねぇしな」
「うん。向こうだって私達に対してはフリックス以外で対抗出来る戦力はないはず。だったら私たちは負けない!」

「君達……」

「おっしゃ、行こうぜ!!」
 ダッ!
 バン達は要塞目指して駆け出して行った。

「絶対に、FICSは潰させねぇ!!!」

 

    つづく

 

CM

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