第92話「意地と意地のぶつかり合い!TSインテリジェンスVSユーロフリッカー騎士団!!」
柏スタジアム。
ここではいつにも増して大きな熱気に包まれていた。
何故なら……。
『さぁ、ここ柏スタジアムで行われるのはTSインテリジェンスVSユーロフリッカー騎士団の最終戦!!これに勝った方が優勝争いに加わる事が出来る大事な試合だ!!』
盛り上がるのは当然の対戦カードだ。
客席には他のFICSチームも観戦に来ている。
『これまでの戦績は、なんとTSインテリジェンスがユーロフリッカー騎士団に対して二連勝している!このまま全勝するのか!?それともユーロフリッカー騎士団が意地を見せるのか!?』
客席のバン達。
「へぇ、意外だな。アドルフの奴ら負けてんのか」
「ユーロフリッカー騎士団は元々有名でデータが揃いやすいからTSインテリジェンスにとっては有利だったろうしね」
しかも、対応力の高いユーロフリッカー騎士団ならば必ず対策を取ったであろう二戦目は不幸にも不戦敗になったし、この試合は是が非でも勝ちたいだろう。
ユーロフリッカー騎士団もTSインテリジェンスもいつになく気合の籠った表情でお互いを睨め付けている。
「TSインテリジェンス……我々は騎士として、いや、フリッカーとして必ず勝つ!!行くぞ、ジークボルグ・ツヴァイ!!」
「グルームエクスカリバー!」
「フォルツァロンギヌス」
ユーロフリッカー騎士団は新型機をそれぞれ掲げる。
「新型……」
「この終盤で導入するとは」
「データに基づいたAIの判断では勝利の確率はどうあっても50%……だが、あとは俺達の力で100%にする!」
『それでは、いくぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「「「いけぇぇぇ!!!」」」
両チームともに気合の入った凄まじいシュート。
六体のフリックスがフィールド中央でぶつかり合い、弾け飛んだ。
全ての機体が場外に出るか穴の上で停止した。
『なんとなんと!!両チームともにすごい気迫!!全機体自滅でダメージは無しだ!!!』
「……データだけに頼らず、鍛えてきたようだな」
「充填率52%……一回の激突でここまでとは、さすがだ」
『さぁ、仕切り直しだ!3.2.1.アクティブシュート!!』
その後も何度も仕切り直しアクティブをし、そのたびに場外が発生する。
いつもと違う様子に客船も唖然とする。
「す、すげぇ、あのユーロフリッカー騎士団とTSインテリジェンスがこんな戦い方をするなんて」
気品に溢れ威風堂々とした騎士団とデータに基づいて論理的に戦うインテリジェンスがここまで泥臭い戦いをするのは予想外だった。
「プライドもデータも通用しないくらい互角なんだと思う」
「表面的な要素じゃケリはつかない。となると……」
「最後に勝負を決めるのは、気合いって事か」
『3.2.1.アクティブシュート!!』
「そこだ!」
ス……!
アドルフは少し向きをずらしながらシュートする。
そして、ウィリアムのサイバネティックアバターを場外させた。
「なに!?」
『おおっと、ここで動きがあった!アドルフ君は咄嗟に激突の角度を変えてウィリアム君を場外!それを見越したのか、ジャン君とガレス君はちょん押しで自滅を免れた!』
「データ通り、さすがのアドリブ力だ。チームの連携も見事」
「フッ」
「ならばこちらは!」
再び仕切り直し。
『3.2.1.アクティブシュート!!』
「ウィリアム、ジェームズ!フォーメーションだ!」
「「ラジャー!!」」
インテリジェンスは三体が連携してロンギヌスを狙い、場外させた。
『おおっと!今度はインテリジェンスがジャン君のロンギヌスを場外させたぞ!』
「本領発揮か」
「勝負はこれからだ」
仕切り直し。
『3.2.1.アクティブシュート!』
「相手がまとまってるならやりやすいぜ!エクスカリバー!!」
「狙え!ロンギヌス!!」
今度はエクスカリバーがインテリジェンスのフォーメーションを崩し、そこをロンギヌスが突いた。
『おおっと!今度はユーロフリッカー騎士団が落としていく!!』
バキィィ!!
次はインテリジェンスがアフターブーストを使ってエクスカリバーを落とす。
と言った具合に、お互いチームで連携しながら相手機体を一体ずつ交互に落としていくと言った試合展開が続いた。
そして……!
『さぁ、激しいアクティブ合戦となったTSインテリジェンスVSユーロフリッカー騎士団との戦いもいよいよ大詰めか!?残りHP1の状態でアドルフ君とデイビット君のリーダー同士の一騎打ちとなった!』
「頼むぜ、アドルフ」
「リーダーならきっと勝てます!」
「データアンノウン。ここから先は未知の領域」
「データを超えてください!リーダー!!」
各チームメンバーがリーダーへ望みをつなぐ。
『さぁ、いくぞ!運命のアクティブ!!3.2.1.アクティブシュート!!』
「行けっ!ジークボルグ!!」
「充填率100%……!」
デイビットは左手でゴーグルを脱ぎ捨て、シュートしながら叫ぶ!
「アフターブースト・オン!!」
ボウンッ!!
サイバネティックアバターが白煙を上げながら急加速し、ジークボルグを押し込んでいく。
『サイバネティックアバター凄い加速!!!ジークボルグをどんどん押し込んでいく!!これは、勝負有りか!?』
「決まった!?」
「まさか……!」
しかし、土俵際ギリギリでアドルフの口元に笑みが浮かぶ。
カチッ!
「トライアンフアッパー!!!」
ガッ!!!
後もう一歩のところでジークボルグのバネギミックが発動し、サイバネティックアバターを跳ね上げる。
突っ込んだ勢いのまま跳ね上げられたサイバネティックアバターは、そのままジークボルグを飛び越えて場外した。
『決まったああああ!!!土俵際ギリギリの攻防戦!制したのはアドルフ君のジークボルグ!よって勝者はユーロフリッカー騎士団だぁぁぁ!!!!』
「リーダー……」
「惜しかったですね……」
「あぁ。だが、良いバトルだった」
そう言って、デイビットはアドルフへ握手を求めた。
「おめでとう、ユーロフリッカー騎士団。君達の勝ちだ」
アドルフはその手を強く握る。
「いや、ギリギリの勝利だった。素晴らしい戦いをありがとう」
お互いの友情を確認し合いつつ、TSインテリジェンスはステージから降りて控えへ向かった。
そこでは監督が神妙な顔で待っていた。
「皆、よく頑張った。結果は残念だったが……」
監督が言い切る前に、デイビット達は監督へ深々と頭を下げた。
「「「今まで、本当にありがとうございました!!!」」」
それを見て、監督は思わず涙ぐむ。
「グスッ。ばかやろ、顔上げろバカ。らしくねぇんだよ。……あー、でもなんだ。契約はこれで終わりだが、お前らは立派に成長した。だから、なんつーか……そう、これからも頑張れよ!!」
そう言って、監督は三人の肩を叩き激励した。
『さぁ、これで優勝を争う二チームが決定したぞ!!
現在、ダントツウィナーズとユーロフリッカー騎士団が暫定トップ!そしてこの二チームはまだ最終戦を終えていない!
つまり、次の試合が優勝決定戦となる!!』
アドルフ達が観戦席を見上げ、バン達と目を合わせる。
「やっぱり勝ち上がってきたね、ユーロフリッカー騎士団……」
「けっ、どうって事ねぇな」
「あぁ、上等だぜ!!絶対に俺達が優勝だーー!!!」
つづく
CM