弾突バトル!フリックス・アレイ FICS 第89話「リサの苦悩 ダントツウィナーズの一員として」

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第89話「リサの苦悩 ダントツウィナーズの一員として」

 

 ダントツウィナーズVSデザートハンターズの最終戦。
 チームの中で出遅れてると焦ったリサはウェイバーに慣れない高火力改造を施した影響でいつものバランスが崩れ、チームの足を引っ張り敗北してしまった。

 自責の念に苛まれたリサは思わずその場から駆け出してしまった。

「……」
 飛び出したは良いものの、行く宛もなく、リサはトボトボと田舎道を歩いていた。
(私、ダントツウィナーズ失格なのかな……)
 先程の試合を思い返すと、暗澹たる気分になる。
 役に立たなかったどころか、自分が出しゃばりさえしなければ勝てた試合だった。
 足を引っ張ったと言うレベルじゃない。
 且つて、チームワークを乱す行動をとったザキをチームにとって害だと断じた事があったが、その言葉が自分に返ってくるとは。

 ガサッ……。
「よっ!」
「っひゃらぁ!?!?」
 突如、物音がしたかと思ったら、背の高い男の人に後ろから肩を叩かれた。
「おいおい、そこまで驚く事ないだろ。傷付くなぁ」
 普通は驚く。
 振り向くと、そこには知っている男が不満げな顔をしていた。
「フ、フリップゴッド」
「今日の試合珍しく不調だったじゃないか。腹でも壊したのか?」
「……」
「まぁいいや。ここで立ち話もなんだし、そこの神社で腰下ろそうぜ」

 フリップゴッドはリサを連れて近くの神社へ向かった。
 房根神社は長い階段の上にある。さすがに登るのは怠かったので、1番下の段で腰を下ろした。

「ふぅ〜、ここら辺は空気が綺麗で良いなぁ」
 座るなり、フリップゴッドは深呼吸した。
「あの、どうしてフリップゴッドがここへ……」
「おいおい、その呼び方はよしてくれ。一応僕はリサの叔父なんだぜ」
「え?」
「あ、そうか。そういや言ってなかったな。僕は君のお祖父さん、遠山段治郎の次男坊だ。それにしても、兄貴の奴いつの間にこんな可愛い子こさえてたんだ……ってか、結婚したんだなぁ」
「あ、いや、あの、私、死んだお父さんに施設から引き取られて……」
「うぇ!?そうだったのか!!なんだ通りで、ウチの家系でこんな可愛い子が生まれるわけないと思った。いやぁ、兄貴の葬式にチラッと顔出して以来ずっと疎遠だったから、そこらへんの事情疎くてな。悪い事聞いたな」
「あ、いえ……」
「まぁそんな感じでさ。人生もフリッカー事情もいろいろあって当たり前なんだ。ちょっと上手くいかなかったくらい気にしなくて良い」
「……気にしないなんて、出来ないです。私が負けるだけなら良いけど、私のせいでチームが負けてしまったから……」

「そうか……勝ちたかったんじゃなく、戦犯になりたくなかったんだな」
「え?」
「でも、結果は足を引っ張ってしまった」
「……はい。バンもザキもどんどん強くなってるのに、私がそれに置いていかれたら、もうダントツウィナーズの一員でいられなくなるから。だから頑張ったんです、二人と並び立てるように、チームとして……」

「なるほど。……でも、それも本心じゃないだろう?」
「え?」
「チームのために……だったら、別に君が強くならなくとも貢献出来る方法はあったはずだ。なのに君はそれをせず、余計な事をしてしまった。それは、純粋な奉仕精神からじゃないだろう」
「……」

「本当にチームのことだけを考えているんだったら、チームメイトが強くなっていく姿を見て喜びこそすれ、焦ったりなんかはしない。よく思い出してみるんだ、あの二人が強くなっていく姿を見て、本当は何を思ったか」
「わ、私は……」
「チームのために遅れたくないとか、並び立ちたいとか、そんなのは建前だろう?」
「建前……」

 自分にはない圧倒的パワーを持つストライクビートヴィクターにダークネスディバウア改、それを手に入れた二人がいればチームは安泰だ。
 チームが勝つ事だけを考えるなら、無理に並び立とうとせずとも、二人のサポートに回れば良い。貢献度は低いが、それでもチームとして勝てればそれで良いじゃないか。

 ズキッ……!
 そこまで考えてリサの胸が痛んだ。
「……」
「君は、チームとして勝ちたかったわけでも、足を引っ張りたくなかったわけでもない」
「私は……チームが負ける事よりも、悔しかったんだ……二人に負ける事が……」

 ようやく、リサは自分の中のモヤモヤの正体に気付いた。
「それで良いんだ。自分が1番になりたいと思うもの同士が時にはライバルとして、時には仲間として戦う。それがフリッカーなんだ」
「でも、FICSはチーム戦で……」
「勘違いしちゃいけない。チームメンバーはチームのためにいるんじゃない、チームがメンバー一人一人のためにあるんだ。だから、堂々とその望みを持っていれば良いんだ」
 ゴッドにそう言われて、リサは憑き物が取れたような顔になる。
「はい!……私、ダントツウィナーズが優勝する事も大事だけど、それ以上にバンやザキにも負けたくない!!二人よりも活躍してチームを優勝に導きたい!!!」

 リサはハッキリとその望みを大きく声に出した。

「リサ、へへっ!そうこなくっちゃな!!」
 と、いつの前にか、バンとザキが目の前にいた。
「バ、バン……ザキ……」
「ったく、探したぜ。……ってか、なんでフリップゴッドがリサと一緒にいるんだ!?」
「ははは、まぁちょっと休憩にね」

「ふーん、まぁいいや。とにかく、そう言う事なら協力するぜ!!」
「え」
「強くなりてぇんだろ!今度はリサの番だ!!なっ、ザキ?」
「まぁ、敵としてもチームメイトとしても強いに越した事はないからな」
 ザキもぶっきらぼうに言った。
「で、でも、私、自分勝手な事言ってるし……」
「別に良いじゃねぇか!俺達はチームなんだし!」
「……チーム」
「ただ自分が強くなりたい、なんて願いは確かに自分勝手だが。それを許容し合って強くなっていくのも、チームの形さ」
「叔父さん……」

「あっ、そうだ!ストライクビートヴィクター作った時のあの素材って確か余ってたよな!?あれをウェイバーに使えばもっと強くなれるんじゃないか?」
「単純な奴だ。そのための設計は考えてあるのか?」
「そんなのこれから考えれば良いだけだろ!!」
 やいのやいの言いながら、バンとザキは歩いていく。

「リサ!早く行こうぜ!プロミネンスウェイバーパワーアップ大作戦だ!!」
 バンに促され、リサは笑顔で頷いた。

「うん!」

 

    つづく

 

 

CM

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