第87話「徹底マーク!狙われたストライクビートヴィクター」
亀山湖。ここでは、ダントツウィナーズとTSインテリジェンスの最後の試合が行われる。
特設された控室でダントツウィナーズが作戦会議をしている。
「TSインテリジェンスとの戦績は1勝1敗。ここはどうにか勝ち越しておきたい所だが……」
「問題ねぇって!アフターブーストは確かに凄いけど、俺には最強の新型機、ストライクビートヴィクターがあるんだぜ!」
「ストライクビートヴィクターはまだTSインテリジェンスと直接対決してないし、データも揃ってないはずだしね」
「だが油断はするな、相手は最新のテクノロジーは惜しみなく投入するチームだ。データが不足していると言う点では我々の方が不利になりやすい」
「俺達は元々データに頼った戦い方はしねぇんだ!大丈夫だって!!」
「それに、あの合宿の特訓で体力もついたしね」
「そうそう!データなんて俺たちのパワーでぶっ飛ばしてやるぜ!なっはっはっは!!」
……。
………。
そして、試合開始時間になる。
『さぁ、今回このルアー釣りの聖地亀山湖で行われる戦いは、ダントツウィナーズVSTSインテリジェンスの最終戦だ!ここまでの試合は1勝1敗!このバトルは負けられないぞ!?』
「ウィリアム、ジェームズ、作戦通り行くぞ」
「「ラジャー!!」」
「へんっ!どんな作戦だろうと関係ねぇ!ストライクビートヴィクターの力を見せてやるぜ!!」
両チーム試合の準備をする。
『さぁ、それでは行くぜ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「いくぜ!ストライクビートヴィクター!!」
「「「GO!サイバネティックアバター!!!」」」
インテリジェンスのサイバネティックアバターは三体が一丸となってストライクビートヴィクターへ突っ込んできた。
「え、わざわざ新ヴィクターに三機まとめて……?」
リサはインテリジェンスの行動に疑問を抱くが……。
「へっ!三体まとまれば耐えられると思ったのかよ!甘いぜ!!」
バキィィィ!!!
新型ヴィクターのパワーは半端ではない。一気にサイバネティックアバター三体を吹っ飛ばした。
『さすがは新型ストライクビートヴィクター!!次元の違うパワーでインテリジェンスの三体をまとめて場外!!』
「どうだ!これがストライクビートヴィクターのパワーだぜ!!」
「……あぁ、計算通り大したパワーだ」
「計算通り?負け惜しみ言ってんじゃねぇ!」
しかし、インテリジェンスは場外されたのにまるで予定通りといった感じに余裕の態度を崩さない。
『それでは仕切り直しだ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「またぶっ飛ばしてやるぜ!ストライクビートヴィクター!!」
先程と同じようにカッ飛ぶストライクビートヴィクター。
インテリジェンスも三体まとめてストライクビートヴィクターへ向かうが……その軌道はさっきと違っていた。
三体は時間差で突進し、まずはウィリアムの機体がカーブするようにヴィクターを掠めて向きを変え、ジェームズがその横っ腹へ一撃かます。
ヴィクターは泣き所を突かれて吹っ飛ばされてしまった。
そして、デイビットは悠々と遠くへ機体を進める。
『さぁ!インテリジェンスの見事な連携でストライクビートヴィクターの動きを封じ、デイビット君が先手を取った!』
「なに!?」
「フッ、これでチェックメイトだ。アフターブースト・オン!!」
「そんな、もう充填出来たの!?」
「ストライクビートヴィクターの強大な破壊力は、いわば諸刃の剣です」
「一撃で充填率は60%を超える」
「くそっ!」
デイビットはアフターブーストを発動させてストライクビートヴィクターを弾き飛ばす。
「くっ、耐えろ!!!」
バリケードで耐えようとするバン。
パキンッ!!
バリケードを壊しながらもどうにかフリップアウトは堪える。
「よ、よし……!」
「「GO!サイバネティックアバター!!」」
安心したところで他二体のサイバネティックアバターがダメ押しに攻撃してきてストライクビートヴィクターを場外へ押し出した。
「あーーーー!!!!」
『なんとなんと!ダントツウィナーズの要であるストライクビートヴィクターがここで大ダメージ!これは意外な展開だ!いや、これこそがTSインテリジェンスの脅威の戦略か!?』
「そんな、強くなったヴィクターが……!」
「ストライクビートヴィクターのパワーは確かに脅威だ。だが弱点の無い機体は存在しない」
「確かなデータを元に対策を練り、チームで力を合わせれば倒せない相手ではありません」
「デ、データっつったって、お前らロクにストライクビートヴィクターのバトルを見てないんじゃ……あっっ!!!」
バンは思い出す。
そうだ、あの時のフクベとのバトル……インテリジェンスは立会人を務めながら密かにデータを集めていたのだ。
「お前ら、あの時……!」
「悪く思うな。フクベは共通の敵ではあるが、君もフリッカーとしてはライバルなんだ」
「この野郎!セコイ真似しやがって!!!」
「バカか、敵チームの前でみすみす手の内明かすような真似するからだ」
憤るバンへ、ザキが諌める。
「そ、そりゃそうだけどさぁ。あの時は仕方なかったって言うか……」
「悔やんでも仕方ないよ。とにかく私とザキでバンをサポートしよう」
「けっ」
『さぁ、仕切り直しだ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「いくぜ!今度こそ負けるか!!」
「バン、ここは慎重に!」
ヴィクターを守るようにプロミネンスウェイバーが前に出る。
「無駄だ!アフターブースト!!」
ジェームズのサイバネティックアバターがアフターブーストでプロミネンスウェイバーを退けた。
「うっ!」
「リサ!!」
そして、サイバネティックアバター三体がストライクビートヴィクターを受け止め、囲うように迫り停止した。
『さぁ、今回のアクティブで先手を取ったのはダントツウィナーズだ!ノーマークのザキ君がフィールド奥へ進んだぞ!!』
「ナイスザキ!よーし、突破してやるぜ!!」
攻撃ターンがくればこっちのもの。
バンは目の前にいるウィリアムの機体へ向かってアタックを仕掛ける。
バシュッ!!
「アフターブースト・オン!!」
ウィリアムはストライクビートヴィクターがぶつかる瞬間にアフターブーストを発動させた。
「なに!?」
「アフターブーストは、防御にも使えるのです」
ガッ、ガッ!
それでも弾き飛ばされはするが、アフターブーストで勢いをある程度相殺したおかげで耐え切り、アフターブーストの残り香を利用してヨロヨロとストライクビートヴィクターへ近づいて停止した。
「これで次のターン、ストライクビートヴィクターは仕留められる。プロミネンスウェイバーとダークネスディバウアは攻撃が通じる立ち位置ではない。パーフェクトだ!」
作戦通りに事が進んでいる。これで勝ちは確定したとデイビットはニヤリと笑う。
しかし……。
「甘いな。パワーアップしたのがこいつだけと思うな」
「なに!?」
「はぁぁぁぁ!!!!」
ドンッ!!!
ザキはダークネスディバウアを変形させ、両手を使って猛烈なスピンをさせながら遠くにいるサイバネティックアバターとストライクビートヴィクターが固まっているエリアへ突進させた。
スピンとは思えない凄まじい機動力だ。
「やれぇぇ!!ダークネスディバウア改!!!」
バキィィィ!!!
スピン力に加えて高い機動力と衰えないトルクで、ストライクビートヴィクターとまとめてサイバネティックアバター三体を同時に場外へ吹っ飛ばしてしまった。
『なんとなんと!!密かにダークネスディバウアもパワーアップしていた!スピン機の欠点である機動力を補った凄まじい性能で、ストライクビートヴィクターごとインテリジェンスを全て撃沈!
勝ったのはダントツウィナーズだ!!』
「あ、あんな伏兵がいたとは……」
「ふっ、データに溺れたな。ダントツウィナーズ、大したチームだ」
勝利を喜び合うダントツウィナーズ。
「すっげぇ!いつのまにダークネスディバウアをパワーアップさせてたんだよ!?」
「もしかして、合宿の時に炎で焼かれたのを利用して、ブラッシュアップしたの?」
「さてな」
「なんだよ、だったら最初から教えてくれりゃ良かったのに」
「お前に言ったら情報が漏れるからな」
「なっ、てめ……!!」
「ふん」
嫌味を言われてムッとするバンを無視してザキは歩き出した。
「あ、待てこらザキーー!!!」
つづく
CM