弾突バトル!フリックス・アレイ FICS 第85話「フクベの制裁 離反の代償」

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第85話「フクベの制裁 離反の代償」

 

 TSインテリジェンスVSデウスリベンジャーズの試合はTSインテリジェンスが制した。
 そのバトルでデウスリベンジャーズはフクベの命令に反し、正道なバトルに目覚めたのだった。
 しかし、それを見ていたフクベは……。

「この大バカ者が!!!」
 バチィィン!!!
 会場から控え室へ続く暗い廊下の隅で、打撃音が響く。
「ぐっ!」
 フクベに殴られたアルベルトはフラつきながらも立ち上がりフクベを睨み付ける。
「何だその目は?まだ私に逆らうと言うのか?」
「……別に、そういうわけじゃ」
「なんだその態度は!!!」

 再び腕を振り上げるフクベ、その前を二つの閃光が走った。

「……どういうつもりだ?」
 それは、デウスリベンジャーズの他の二人だった。アルベルトを守るためにフリックスをシュートしたのだ。
「オーナー……」
「俺達……」
 咄嗟の行動だったのだろう、上手い言い訳も思い付かずにただ震えて立っている。

「そうか、そうだな。フリッカーならフリッカーらしい仕置きがあるな」
「っ!」
 フクベは懐から機体を取り出してアルベルトへ向けて構える。
 生身の人間に対してダイレクトにフリックスをシュートするなんて、タダでは済まない。
「……正気か?」
「貴様を正気に戻すための折檻だ」

 無慈悲にもフクベは機体をシュートしてしまった。
「くっ!」
 衝撃を覚悟して目を閉じるアルベルト。

「いっけぇ!ストライクビートヴィクター!!」

 バキィィ!!
 突如、ストライクビートヴィクターが横からフクベの機体を吹っ飛ばした。
「なんだと!?」
「お前、なんで……!」
 思いもよらなかった人物の登場に、アルベルトは唖然とした。
「はは、いやぁ、試合観戦で来てたんだけど。試合終わった後トイレ行って帰ろうと思ったら道に迷っちゃってさ、ははは」
 呑気に笑うバンだが、そう言う話じゃない。
「そうじゃない!何で俺なんかを助けた!?」
「そんなの決まってんだろ。インテリジェンスとの試合見たぜ、良いバトルできるじゃねぇか!今度は俺がお前と戦いたい!」
 バンがアルベルトを助けた理由は至極単純だった。
 戦うためには怪我をされたら困る。ただそれだけのことなのだ。
「くだらない理由で余計な真似を!」
「それはそっちだろ!いくら試合に負けたからってやりすぎじゃねぇか!!そんなにやりてぇんなら、俺が相手になってやる!!」
「ほぅ、お前がか……アルベルト達の身代わりになると言うんだな?」
「ああ!でも俺は返り討ちにするぜ!!」
 バンがそう啖呵を切った時、他にも人が集まる気配がした。
「それなら、我々も立会人となろう」
 TSインテリジェンスとその監督だった。
「TSインテリジェンス……!」

「デウスリベンジャーズのオーナー、幸い俺たちはあんたが何をしてたかハッキリと目撃してない。が、容易に想像はつくし、叩きゃボロが出るだろう。ここは大人しく段田バンと公正にやり合った方が穏便に済むと思うぜ?」
 インテリジェンスの監督が言うと、フクベは不敵に笑った。
「ふん、いいだろう。だが、その意味が分かっているのか?私はアルベルト達へ制裁を加えるつもりだったのだぞ。つまり、私に負ければ貴様が相応の制裁を受ける事になる。そうだな、FICSへの参加を辞退してもらおう」
「望むところだ!その代わり、俺が勝ったらもう二度とアルベルト達に近づくな!!」
「……良いだろう」

「ま、待て段田バン!自分のケツくらい自分で拭く!お前が巻き込まれる事はない!」
「でもお前初心者じゃねぇか。あんな奴と戦って、才能潰したらもったいねぇよ。さっきも言っただろ、俺がお前と戦いたいからやってるんだ」
「お前……」

「では、話が纏まったところでフィールドへ移動しよう。なるべく運営の目の届かない場所が良いだろう」

 ……。
 ………。
 移動した先は徒歩10分程度の練習場だった。

「ここはイルミナスクールがスポンサーをしている練習場だ。思う存分戦える」

「よし!せっかくなら思いっきりやろうぜ!上級アクティブバトルだ!」
「ふん、好きにしろ」

 バンとフクベへ特殊な光学アーマーが纏われる。
「ムカつく奴だけど、幻の第一回チャンピオン……ちょっと楽しみだぜ」
 そして、二人が機体をセットする。

「じゃあいくぞ。3.2.1.アクティブシュート!!」

「いっけぇ!ストライクビートヴィクター!!」
「プロトデーモン!!」
 シャアアアアア!!!カッ!
 正面から激突する二機だが、デーモンがヴィクターを上へ受け流し、ヴィクターは勢い余って場外した。

「いぃ!?」

「アクティブアウト!4ダメージ」
 これでHPは残り11だ。

「くそ、受け流し機体か」
「無駄な攻撃、ご苦労な事だ」
 いちいちイラッとくる。
「だったら、これだ!」
 バンは左手をまっすぐ伸ばして、それをサイトにする。
 狙い重視のシュートの構えだ。

「3.2.1.アクティブシュート!!」

「そこだ!ヴィクター!!」
 今度は力任せのシュートではなく、しっかりと相手を掬い上げられるように狙ってシュートだ。
 それが功を奏して、プロトデーモンを掬い上げてバネで弾き飛ばした。
 掬い上げさえすればプロトデーモンの防御力は大した事無い。

「アクティブアウト!プロトデーモンに4ダメージだ」
 これで両者ともに残り11。

 その後、アクティブシュートでお互い自滅して残り9。
 次のアクティブではバンが先攻。攻撃を仕掛けるも上に受け流されて乗り越えてビートヒット。
 その反撃でフクベがマインヒットを決める。
 バンは残り6、フクベは残り8だ。

「だぁぁ、めんどせぇ機体だなぁ!!!」
「フッ、かつてGFCで戦った相手もそんな反応だったな。相手の攻撃を無効化して勝つのは気持ちがいいものだ」
「性格悪……!」
 しかし、それもフリックスバトルの競技性だ。
「だったら、乗り上げを利用してやるぜ!」
 バンは敢えてヴィクターのフロントを持ち上げてシュートした。
 そして、プロトデーモンの上に乗って停止する。

「これでスタンだ!」
 敵機のシャーシの上に自機のシャーシが乗ったまま停止すればスタンとなり、相手は次のターン動けなくなる。
「いっけぇ!!」
 バチィィン!!
 密着した状態でマインヒットを決めるのは楽勝だ。
 これでフクベは残り5。
「ふん」
 フクベも反撃でマインヒットする。バン、残り3。

「やべぇ、これで決めねぇと……!」
 バンは力を込めてシュートする。
「ストライクビートインパクト!!」
 ガッ!!
 運良く掬い上げに成功してプロトデーモンをぶっ飛ばす。
 しかし、バリケードで防がれてしまった。
 ビートヒットでフクベの残りは4だ。
「無駄だ!」
「まだまだ!!」
 防いだは良いが、プロトデーモンは転倒してスタンしてしまった。再びバンの攻撃だ。

「これならもう受け流せないぜ!いっけえええ!!!」

 バキィィィ!!
 転倒して無防備なプロトデーモンを難なくフリップアウト。
 これでバンの勝利だ。

「へへーん!どうだ!俺の勝ちだぜ!!」
「バカな……!」
「約束だ!もうアルベルト達には近寄るな!!」
「ふん、良いだろう。だが、勘違いするな。私が手を引くと言う事は、こいつらはまたゴミの生活に戻ると言う事だ。お前はただ不幸な子供を増やしただけだ!!」
 悪足掻きにとフクベが吠えるが、それを監督が威圧した。
「良い大人が負け惜しみ言ってんじゃねぇよ。とっとと約束守って失せろ!」
「……」
 フクベは面白くなさそうに舌打ちすると、去っていった。

 これでアルベルト達は自由の身だが、それは今までのような何の保証もない生活に戻されると言う事だ。
 それ故に素直には喜べない。

「なぁ、お前ら。俺のとこに来ねぇか?」
 そんなアルベルトへ監督が提案する。
「今日の試合、なかなか見所があったぜ。俺のとこで訓練すれば良いフリッカーになれる」
「……イルミナスクールとやらか。俺らが入れるようなところじゃないだろ」
「勘違いするな。俺は雇われの身でイルミナスクールとは関係無い。まぁ、FICS開催中はインテリジェンスとしてお前らとは敵同士だがな」
「……いいのか?」
「その代わり、FICSが終わったら俺の仕事を手伝ってもらうぜ」
 ニッと笑う監督へ、デウスリベンジャーズ達は顔を見合わせたのちに、頭を下げた。
「よろしく、頼む……!」
「おう!」
 こうして、アルベルト達は完全に解放された。
「へへ、やったな!でもその前に俺たちとバトルだぜ!しっかり強くなって来いよ!!」
「もちろんだ!」
 バンとアルベルトはガシッと握手した。

 

つづく

 

CM

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