第84話「甦る魂」
千葉ポートアリーナ。
今日、ここではTSインテリジェンスVSデウスリベンジャーズのバトルが行われる。
試合が開始されまではそれぞれ用意された控え室で作戦会議などの準備を行っている。
デウスリベンジャーズの控えでは、フクベがアルベルト達へ指示していた。
「アメリカのガキどもの前に、取り繕うのは無意味だ。徹底的にやれ、いいな」
「で、ですが、もしそれで出場停止になったら……」
「そのカウントダウンはもう始まっている。なら、残された時間で少しでも多くの傷跡を残せ!それがお前達の使命だ。ユーロフリッカー騎士団に続いて、TSインテリジェンス……それに加えて我々も大会から消えればFICSなどと言ったふざけたものはもう二度と開催出来なくなる。ふははは!」
本戦参加の5チームのうち半数以上が大会中に消えてしまうような事態が起こってしまえば、印象は最悪。大会は途中で中止せざるを得ないだろう。
第一回大会でそんな事になればもう二度と世界大会なんて開けなくなる。
それこそがフクベの復讐のプランだったのだ。
「……」
“俺は泥食った事無いし、生きる事は大事かもしれねぇ……けど、俺達のフリックスにだって魂があるんだ!!壊されて良いわけがねぇ!!!”
“うおおおおお!!!アンリミテッドブースターインパクトォォォォ!!”
アルベルトはフクベの指示を聞き流しながら、前回の試合の事を思い出していた。
(なんでだ、なんであいつの攻撃を思い出すたびに、熱くなるんだ……!)
「アルベルト!聞いてるのか!!」
「……ん、あぁ。わかっていますよ、オーナー」
アルベルトの生返事で作戦会議は一応終了した。
……。
………。
『さぁ、本日の試合はTSインテリジェンスVSデウスリベンジャーズの二戦目だ!一戦目では機械トラブルに見舞われて惜しくも敗北してしまったインテリジェンス!今回こそは技術大国のテクノロジーを見せ付けるのか!?』
「よぉ、裏でこそこそしてくれたみたいだが、残念だったな?ここでお前らは消える」
「こそこそしていただけ、と思わない方が良い」
「なに?」
「試合になれば分かる」
それだけ言うとデイビットは機体をセットした。
「ハッタリが」
アルベルト達もセットした。
『さぁ、そろそろおっ始めるぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』
「一撃で沈めてやる!デーモンシュレッダー!!」
初っ端からいきなり破壊する気満々の切り裂きシュートを放つ。
それに対してデイビット達も真正面から受けて立った。
ギュムッ、パァン!!
イービルリッパーの攻撃は刺さらず、まるで弾力のあるゴムのように弾かれてしまった。
「なに!?」
「ハッタリはそちらのようだな」
『さぁ、激しいぶつかり合いの末に、先手を取ったのはインテリジェンスだ!!』
「バカな……何故俺達の刃が……!」
「データを取られた事は気付いているんだろう?なら、それを告発のためだけに使うと思うか」
「対策は万全です」
「くっ、てめぇ……!」
「位置関係良好、全機マインヒット可能」
「ラジャー。まずはジャブを入れる」
バシュッ!
インテリジェンスの攻撃。難なくリベンジャーズ全員をマインヒットした。
「この野郎!!」
ガッ!!
デウスリベンジャーズの攻撃。しかし切り裂けない。
当然ダメージを与えるためのシュートではないので何の攻撃も成功しない。
「ちくしょう!なんでだ!!」
「君達が特殊素材を使っているように、我々もそれを無効化する素材をコーティングした。もはや君達は何の不正もしていない、ただのフリッカーでしかない」
「なに!?」
「相手が不正をしているなら、それを封じて同じ公正の土俵へ引きずり上げる。テクノロジーにはそう言う使い方もあるのです」
「この俺が、フリッカーに……!?」
インテリジェンスのターン。
「アフターブースト充填率40%」
「まだ使用タイミングではないな。マインヒットで攻める」
「「ラジャー!!」」
バシュッ!バチィィン!!
『さぁ、インテリジェンスが着実にマインヒットで攻めていく!デウスリベンジャーズは一方的にやられているぞ!?大丈夫か?』
「くそっ!」
吐き捨てるアルベルトへ、フクベからの通信が届いた。
「アルベルト、ここは引け。切り裂きが通じないならバトルする意味がない。早急に対策を練るぞ」
フクベの指示は棄権だった。
「……じょうだんじゃねぇ」
「なに?」
「冗談じゃねぇぞ!こんな奴らに負けっぱなしでいられるかっっ!!」
「貴様、命令に反する気か?ゴミのような生活に戻りたいのか?」
「うるせぇぇぇ!!!」
アルベルトは通信を切った。
「ちょ、アルベルト、不味いって!」
「オーナーに逆らったら俺達は……!」
デウスリベンジャーズの他メンバーはアルベルトの行動に焦る。
「お前ら!あいつらにコケにされたままで悔しくねぇのかよ!!俺は、俺はせめてあいつらに勝たねぇと気がすまねぇ!!」
インテリジェンスを睨み付け、そして思案する。
(だが、どうすりゃいい?このバトルはどうすりゃ勝てるんだ?相手をぶっ飛ばすか?いや、それも散々やって通じなかった……あいつらは、俺達にどうやって攻撃をしてきた?思い出せ!刃物も何もないくせに俺達に攻撃を通した奴らのやり方を……!)
アルベルトは必死に思い出す。
今までの対戦相手が自分たちへ何をしてきたかを……直接攻撃の通じない自分たちに……!
「あれか……!」
アルベルトは、フィールド上のマインに目を向けた。
「そうか、あれがフリッカーの武器なのか」
「アルベルト?」
「お前ら、あれを狙え。それが奴らを倒す手段だ」
「わ、わかった!」
バシュッ!!
アルベルトの指示で、イービルリッパー達はインテリジェンスの機体に接触したのちにマインに当たった。
それによってマインヒットが発生。
『おおっと!ここに来てデウスリベンジャーズがマインヒットを決めた!これによってインテリジェンスは1ダメージ受けるぞ!!』
「こう言う事か」
「飲み込みがいいな」
「これで互角だ!ぶっ潰してやるから覚悟しろ!」
絶対的に不利なくせにイキがるアルベルト。
しかし、初めてのマインヒットにしては巧妙で、しっかりとマインを場外させて反撃を喰らいづらい立ち位置にしている。
「この立ち位置ではマインヒット反撃は不可能です」
「……筋は良いようだな」
「アフターブースト充填率68%」
「ギリギリ発動は可能か。なら、一か八か攻めるぞ」
「「ラジャー!!」」
バシュッ!!
インテリジェンスがリベンジャーズ達へ真正面から突っ込む。
「っ!そのまま来やがった!?」
「「「レディ……アフターブースト・オン!!」」」
バシュウウウウウ!!!
白煙を上げながらサイバネティックアバターが急加速し、イービルリッパーを押し込む。
「させるかよぉ!!!」
アルベルト達はバリケードを張ってそれを耐え抜こうとする。
「「「「うおおおおおお!!!!!」」」」
気合いと気合いのぶつかり合い。
この押し相撲を制するのは……。
「た、耐えた……!」
アフターブーストの勢いが衰える。デウスリベンジャーズのバリケードが根比に勝ったのだ。
「やはり充填率が足りなかったか」
「いや……」
ググ……!
イービルリッパーはバリケードと挟まれていた事で、サイバネティックアバターのフロントに掬い上げられていた。
「へっ、俺達の勝ちだぜ……」
そう言いながらバリケードを引っ込めるアルベルト達。
しかし、バリケードの支えがなくなった事で、イービルリッパーはサイバネティックアバターのフロントからずり落ちて、場外の地面に接触してしまった。
「な、なに!?」
『決まったあああ!!まさにギリギリの競り合い!それを制したのはTSインテリジェンスだ!!!』
「……負けたか」
「良いバトルだった」
呆然とするアルベルトへデイビットが手を差し出す。
「……けっ」
その手は握らず、アルベルトは踵を返して歩いて行った。
「……次は負けねぇからな」
ボソッと、それだけ言い残して。
つづく
CM