弾突バトル!フリックス・アレイ ゼノ 第17話「火山口の死闘!ドラグカリバーVSウイングジャターユ」

Pocket

第17話「火山口の死闘!ドラグカリバーVSウイングジャターユ」

 

 せっかく海に来たんだから海に来ていた弾介達だが、そこでクラーケンの襲撃に遭ってしまう。
 三人のチームプレイで撃退したのだが、その後現れたのはレイズだった。

 そして、レイズとフィランの意外な関係性も……!

「あんた、もしかしてレイズ!?」
「ね、姉さん……!」
 2人の反応に、弾介とシエルも驚愕した。
「「ねえさん!?!?!?!?」」

 驚愕する2人を他所にフィランは嬉しそうにレイズへ歩み寄る。

「なぜ、姉さんがここに、こんな奴らと…!」
「それはこっちのセリフよ。いきなり家出したと思ったら、何年も音信不通で……まぁ無事だったのならいいわ。ほら、感動の再会よ。お姉ちゃんの胸に飛び込んできなさいな」

 フィランは悪戯っぽい笑みを浮かべながら両手を広げた。

(薄い)
 何がとは言わないが、シエルは密かにそう思っていた。

「フン、まぁそんな事はどうでもいい」
「あらっ」

 レイズはフィランを無視して弾介とシエルへ向き直った。

「ようやく貴様に会えた」
「ああ、僕も会いたかったぜレイズ!」
「誰だお前は?」

 レイズに言葉に返事をした弾介だが、レイズの方は弾介を認識していない。それもそのはず。

「あ、そっか!」

 そう言えば、今の弾介は変装していたんだった。水着なので髪留め外してメガネしてるくらいしか違いはないのだがそれでも印象はかなり変わるかもしれない。
 弾介はメガネを取って、再びレイズへ話しかけた。

「レイズ!あの時の決着をつけようぜ!」
「……最強の剣の使い手か。決着ならもうついている、お前に用はない」
「なに!?」
「用があるのは、貴様だ!」

 レイズはシエルを指差した。

「!?」
「究極の盾、俺と勝負しろ」
「ちょ、なんでシエルなの!?僕は!?」
「俺は伝説のフリックス全てを潰し、俺の力が頂点である事を証明する!既に倒した奴と戦っても仕方ない」
「んなっ!僕だってあれから強くなってんだぞ!!」

 レイズは弾介を無視してシエルへ話を続ける。

「さぁ俺と戦え、究極の盾」
「……断ったらどうなりますか?」
「なに?」
「私の目的はあくまで魔王討伐であり、あなたのように戦って強さを極める事ではありません。あなたとも、出来れば敵対ではなく協力関係を結びたい所なのですが……」

 シエルはなるべく刺激しないように慎重に言葉を選びながら話した。

「ふん、ならば……再び結界を破壊し、モンスターを呼び込むまでだ。貴様が戦う気になるようにな」
「っ!やはり、あのクラーケンはあなたが!」
「正義感の強いものを焚き付けるには1番手っ取り早い手段だからな」
「それだけのために……!」

 シエルが珍しく拳を握り締めてレイズを睨みつけた。
 平和を守ることを一番の目的に戦っているシエルとして、今回のレイズの行いは1番許し難い事なのだろう。

「シエル……」
「フッ、やる気になったようだな」
「伝説のフリックスと敵対したくはありませんが、民を傷つけようとするあなたを放っておくわけにはいきません!」
「それで良い」

 レイズとシエルが機体を取り出し、完全に臨戦状態になる。フィランはそれを見ながら何かを察したように呟いた。

「へぇ、そういう事。まさかあのレプリカが伝説のフリックスになるなんてね」

 そして、ふと弾介を見ると、弾介は一触即発なシエルとレイズを羨ましそうに眺めている事に気づいた。

「シエル、良いなぁ……僕も戦いたいのに」
「弾介、そんなにレイズと戦いたいの?」

 蚊帳の外でガッカリしている弾介へフィランが話しかけた。

「レイズとは前に戦ってあと一歩のところで負けたんだ。だからリベンジ出来ると思ったのに」
「ふーん……まぁ、それなら惚れた男のために一肌脱ぐか」
「へ?」
「レイズの姉として、レイズと戦えるように交渉してあげてもいいわよ?」
「ほ、ほんとに!?」
「ただし、今晩あたしと一緒に寝る事。これで手を打ってあげる」
「うっ、ぐ……背に腹は変えられない……!頼むよ!」
「……かなり引っかかる言い方された気がするけど。交渉成立ね」

 フィランはフッと笑うとシエルとレイズに割って入った。

「ちょっとちょっとレイズ、さっきから聞いてたらあんた随分とカッコつけるようになったのねぇ」
「姉さんには関係ない」
「関係ない事はないわよ。大体、なんでこのあたしがこんなポンコツノーパン御一行と一緒にいるか、考えなかったわけ?」
「なに……?」
(ポンコツノーパンはやめて……)
「あたしも持ってるのよね、伝説の機体って奴」

 フィランは不敵な笑みを浮かべながらハンターフィーラインを取り出した。

「そいつはまさか、地上の王者!?」
「そういう事。さぁどうするの?実の姉と戦える?」
「フン、ならば2人まとめて倒すまでだ。同時にかかってこい!」
「ちょっと待った!2VS1なんて卑怯だぞ!!」

 何故か弾介が異議を唱えた。三人が頭を抱える。

「は?」
「え?」
「なに言ってんの?」
「レイズばっかり卑怯だ!僕だってシエルやフィランと戦いたいのに!!ここは公平に2VS2のチーム戦にしよう!僕がレイズと組むから……」

 弾介はいそいそとレイズの隣に立ってドラグカリバーを構えた。

「バカかこいつは……」
「私、今頭がグニャってなりました……」
「ああもう弾介!!ややこしくなるから黙ってなさい!!」
「はい、すみません」

 フィランに怒られて弾介はスゴスゴと引き下がった。

「……話戻すわね。あんた、実の姉と戦うって本気で言ってんの?」
「……俺は誰が相手だろうと俺の上に立つ可能性のある奴は潰す!それが姉だろうと親だろうとな!」
「暫く見ない間に生言うようになっちゃって。昔はあんなに甘えん坊で可愛かったのに」
「なっ!」

 レイズの表情が強張る。

「どこに行くにしても何をするにしてもあたしの後ばっかり付いてきて、夜なんか添い寝してあげなきゃ寝付けないし、しまいには『僕、お姉ちゃんとけっこ……』」
「黙れぇぇ!!!」

 ズバンッ!!
 レイズの放ったウイングジャターユがフィランの頬を掠めて砂浜に突き刺さる。

「いい加減口を閉じろ……!」
「閉じないわよ。姉として弟の性根を叩き直す義務があるの」

 フィランは臆する事なくレイズを睨め付ける。

「まぁ、どうしても聞きたくないって言うなら一つ条件があるわ」
「なに?」
「明日の正午、あたし達と戦う前に弾介と1VS1で戦ってあげなさい」
「……なんだと?」
「言った通りの意味よ。弾介と戦うならこれ以上昔話はしないであげるし、弾介に勝てたらあたし達と戦ってあげる。悪い条件じゃないでしょ?」
「なぜ今更そんな雑魚と」
「雑魚だとぉ……!」

 ムキになろうとする弾介をシエルが無言で止めた。

「雑魚なら別にいいじゃない、また勝てばいいだけなんだから。それとも、一度勝った相手にリベンジされるのが怖いのかしら?やっぱり昔のままの弱虫レイズね」
「過去にそんな俺はいない!!昔も今も、俺は俺のままだ!!!」

 レイズの否定の仕方にはどこか違和感を覚えた。

「いいだろう。今回は試合とは違う、徹底的に叩き潰して今度こそ再起不能にしてやる」
「ああ、望む所だ!!」
「日時は明日の正午と言ったな。ならば場所は俺が指定する。この島のプロメス火山の頂上でどうだ?」
「え、でもあそこは立ち入り禁止で……!」
「戦えるんならどこでもいいさ!あの時の僕じゃないってのを見せてやる!!」
「ふん、少しでも時間に遅れれば俺は躊躇なくこの島を襲う。忘れるなよ」

 それだけ言うと、レイズはウイングジャターユを拾い、踵を返して去っていった。
 それを見届けた後、弾介達もホテルの部屋に戻った。
 そして、就寝するまで、三人は弾介の部屋で集まりレイズ戦への準備をすることにした。

「さぁ、ようやく念願のレイズへのリベンジマッチに漕ぎつけたぞ!!早速準備しなきゃ!」

 弾介はウキウキと言った感じてますドラグカリバーの改造を始める。
 ヤスリを使ってフロントを鋭くし、変形ソードの接続部であるボルトをキツく締めた。

「ちょ、弾介さん、伝説の機体にそんな手を加えて大丈夫なんですか……?」
「伝説の機体だろうとなんだろうと、作ったのは僕なんだ。勝つために改造するのは僕の自由だよ」
「それは、そうかもしれませんが、でもあまり形を変えちゃうと伝説の機体として認められなくなるとか無いですかね……?」
「そんなの知らないよ。別に伝説の機体じゃなくなったって、強い方がいいに決まってるし」
「いくら強くても伝説の力じゃなきゃ魔王討伐がぁ!」
「そもそも伝説の力ってのも曖昧よねぇ。あの子の持ってるウイングジャターユだって、元はあたしが作ったレプリカなんだし」
「レプリカ!?あれで!?」
「見た感じ、パパの機体とニコイチになってるっぽいから、正確にはあたしが作った時とは別物になってるけど」
「パパ……10年前に魔王をたった1人で封印した英雄、ブレイのウイングガルーダですね」
「そう言えば、前に聞いた事ある」
「……まぁ、名前だけなら有名だし、そりゃ知ってるわよね」

 フィランは少し悲しげな表情で呟いた。

「フィラン、無理にとは言いませんが聞かせてもらえませんか?何故レイズは伝説のフリックスを倒そうとしているのか、魔王を封印した後英雄ブレイはどうしているのか」
「……そもそもレイズと会ったのは数年ぶりなんだから、今のあいつが何を考えてるかなんて分からないわよ」

 シエルの問いにフィランはため息混じりに答えた。

「ただ、心当たりはあるわね」
「え?」
「魔王をたった1人で封印したパパは、英雄として祭り上げられたわ。レイズもパパをヒーローとして慕ってた。ウイングジャターユはその頃レイズにせがまれて作ったのよ。パパと同じフリックスが欲しいってね」

 昔を懐かしんで微笑ましい表情になるフィランだが、すぐに悲しげに目を伏せる。

「でも、魔王をたった1人で倒せるほどの力を恐れる人も現れたわ。魔王を倒した英雄が次の魔王になるんじゃないか、そんな風に根も葉もない事を言う人まで出てきて、あたし達一家は村八分にあって、存在しないものとして扱われ始めた」
「ひ、酷い……!」
「それでも一家で細々と暮らしていたんだけど……でも、周りから存在を認められないままで生きてくには無理があったのよね。パパは魔王と戦った時の古傷から病を発症、なんて事ないただの風邪だったんだけど、治療さえ受けさせてもらえれば、すぐに治るような、軽い……」

 フィランの声が震えるが、それでもフィランは続けた。

「……レイズがあたしの前からいなくなったのは、パパが死んだ少し後だった。置き手紙も残さず、形見のウイングガルーダを持っていって、それっきり」

 暫く沈黙が続き、これで話が終わった事を察したシエルは静かに謝った。

「すみません、こんな悲しい話だとは思わなかったので……」
「別に、あたしも吐き出したかったし。それに、過去は過去。今はとにかく生きていられるだけで儲けもんだって思ってるから」
「……レイズが伝説のフリックスを狙ってるのは、復讐って事なのかな?」
「それにしては違和感がありますね、復讐が目的ならわざわざ伝説のフリックスを狙わずとも魔王軍に入るなり、1人で村を襲うなり、手っ取り早い手段はあると思うのですが……」
「違和感と言えば、フィランの昔話に怒った時も、恥ずかしがってると言うよりも過去の自分そのものを無かった事にしたいみたいだった」
「レイズの気持ちや目的が分かれば、仲間に引き入れるヒントになりそうなものですが……」

 唯一の身内であるフィランの話を聞いても、レイズの行動には謎が多い。

「そんなの分かるわけないでしょ。とにかく、バトルに勝って力を示して、舎弟にでもなんでもすれば簡単じゃない」
「実の弟の事なのに、あっさりしてますね……」
「今のあたしにとっては実の弟よりも未来の旦那様よ。って事で弾介、約束はちゃんと覚えてるわよね?」
「うっ……わかってるよ」
「約束?」
「実は……」

 弾介はシエルにフィランと交わした約束について話した。

「ええええ!弾介さんなんて約束してるんですか!?」
「だって、レイズと戦うためにはこれしかなかったから」
「弾介さんが戦わずとも私が戦えば良かったじゃないですか!」
「僕が戦いたかったんだもん!!(シエルを危険な目に合わせるわけにはいかないよ!)」

「弾介、本音と建前が逆」
「あ……」 

「はぁぁぁ……普段はまともなのになんでバトルの事になるとこの人はいっつもいっつも、もぉぉ〜〜〜!!」

 シエルは頭を抱えて唸った。

「ご、ごめん……」
「ってか、あたしと弾介が寝るからってあんたに何の問題があるのよ?」
「問題大アリです!もし間違いが起きたらどうするんですか!」
「間違いって?具体的に何よ?」
「知りません!」

 フィランがニヤニヤしながら尋ねるとシエルは顔を赤くしてそっぽを向いた。

「ふふん、気持ちはどうあれ、こう言うのは先に既成事実作ったもの勝ちよ」

 ……。
 ………。

 そして夜。
 約束通り、弾介とフィランは同じベッドに入っているのだが……。

「フフ、弾介。熱い初夜にしましょ」
「やだよ、明日に備えて寝たいんだから」
「そう連れない事言わないの」

 ゴソゴソと弾介へ迫るフィランだが、弾介の反対側で別の少女の声がした。

「ひゃっ!フィラン、押さないでください!落ちちゃいます〜」
「しょうがないでしょ、狭いんだから……って、なんであんたがいるのよ!!」

 弾介の反対側の隣にはシエルがちゃっかり入っていた。

「フィランと弾介さんが一緒に寝る約束したのは分かりました。けど、私も一緒に寝ちゃいけないって事にはなりませんよね!」
「そう来たか……ふん、だったらそれはそれであたしと弾介のまぐわいを横でじっくりみてなさい!ねぇ、弾介」
「スー、スー……」

 色目使って弾介の方を見るフィランだが、弾介は既に寝息を立てていた。

「寝てますね」
「ああもう、いいとこだったのに!」
「明日もありますし仕方ないですよ。私達も寝ましょう」
「はぁ、仕方ないか」

 さすがにフィランも諦めてそのまま就寝する事にした……のだが。

「ぐがーーーーぐごーーーーー!!!」
「うぅ〜ん、パパ……パパァ……!」

 弾介のイビキとシエルの寝言にフィランは耳を塞ぐ。

「ああもう、うるさい!寝られないじゃないの!!」

 ……。
 ………。
 朝。

「ふぁ〜、よく寝た!」
「はい、バッチリ疲労回復です!」
「これで今日のバトルはバッチリだ!さぁ、シエル、フィラン……フィラン?」
「……」

 しっかり睡眠して気分爽快な弾介とシエルに対し、フィランは目元に濃いクマを作ってボーッとしていた。

「どうしたの、フィラン?もしかして寝られなかった?」
「ダメですよ、ちゃんと寝ないと」
「誰のせいだと思ってんのよ……」

 フィランはもう2度とこいつらとベッドを共にしない事を決意した。

 そして、身支度を済ませて一行はプロメス火山の頂上を目指す。
 ゴツゴツした岩山を三人は歩きにくそうに登っている。
 所々から噴き出す蒸気の熱に弾介は汗を拭う。

「ここがプロメス火山か、あっついなぁ」
「元々この島はこの火山のマグマが海で固まって出来たものなのですが、まだ火山活動は停止してないので一般人の立ち入りは禁止されてるんです」
「逆に言えば、ここならバトルしても一般人に被害は及ばないって事か。やっぱりレイズは伝説の機体を倒す事、いや勝つ事しか考えてないんだな」

 自分の目的のために周りへ被害を出す気はないのと同時に邪魔ものなく戦いたいと言う気持ちからこの地を選んだのだろう。
 そんな事を話しながら弾介達はついに頂上にたどり着いた。
 頂上はさらに足場が悪く、そして眼前には巨大な穴と溶岩がまるで地獄の入り口のように存在感を放っていた。

「来たか」

 火山口付近では既にレイズが仁王立ちしており、弾介達を睨みつけた。
 弾介もレイズの姿を認識するなり啖呵を切る。

「レイズ!今日こそリベンジしてやるからな!!」
「フン、雑魚が。約束通り戦ってやるが、こいつを始末したら次は貴様達2人だ!覚悟しておけ!」

 レイズは弾介を一瞥するとすぐにシエルとフィランを指差した。

「え!?」
「あんた、弾介と戦った後ぶっ続けであたし達とやるつもり?」
「一戦交えた後の俺なら倒せると思っているのか?舐めるなよ、そもそも俺は今すぐに三人まとめて倒すことも出来るんだからな」
「うわぁ、自信過剰……我が弟ながら引くわー」
「分かりました。弾介さんの後にお相手します。しかし、あなたはどうしてここまで伝説のフリックスへ執着するのですか?」
「俺はただ……英雄に堕ちたくないだけだ。そのための強さをお前達と魔王を潰す事で証明する!」
「英雄に堕ちる……?」

「ええい!後の事ばかり話すな!!今は僕とのバトルだろ!!」

 レイズの視界に弾介は無理矢理割って入った。

「良いだろう。始めるぞ」

 レイズと弾介は手をかざしてアクチュアルモードを起動するための魔法陣を出現させ、レイズはマインをセットした。

「「3.2.1.アクティブシュート!!」」

 魔法陣を通過した二機が10倍にスケールアップして着地する。

「フィールドジェネレート!」

 まずウェイトカウントが経過したレイズが先制でフィールド生成する。これで若干レイズが有利になるのだが。

「相手のフィールドだろうとぶっ飛ばせばいいだけだ!いっけぇ!!」

 バギィ!!
 ドラグカリバーがウイングジャターユへ突進し、弾き飛ばす。
 大きく飛ばされるウイングジャターユ、フリップアウトするほどではないが、ビートディスタンスでダメージを受ける距離は確実に飛ばされたと思われた。しかし……。

「甘いな」

 ビュウウウ……!
 微かに風が吹いた。すると、ウイングジャターユのウイングが微かに開き、空中を大きく旋回しながら飛ばされる前の位置付近へと着地し、ドラグカリバーと密着した。
 これでダメージは無しだ。

「っ!弾き飛ばしたのに、戻った!?」
「どうなってんのよ」
「き、きっと風です!山の頂上は気圧が低いので……!」
「そう、低気圧故の強風を利用してるのさ。ウイングジャターユの翼は風を読むセンサーにも使えるんでな」
「っ!」

 レイズはそのままシュートしてマインヒットする。そして再び弾介がアクティブフェイズになった。

「そう何度も都合良く風が吹くもんか!!」

 バキィ!!
 再びウイングジャターユを弾き飛ばす。今度は風が吹いてない。

「これでどうだ!今度は風がないぞ!!」
「山の空気は常に流れている。そして、ウイングジャターユの翼は微弱な風をも確実に捉え、力に変える!!」

 ウイングジャターユは華麗に空中旋回し、着地する。

「またダメか!」
「今度はこちらの番だ」

 バキィ!
 ウイングジャターユがドラグカリバーの横っ腹を小突き、その先にあるマインにぶつけた。
 バチンッ!
 ビートディスタンスに加えてマインヒットのダメージも受けてしまった。

「ぐぐ……くそっ!」

 弾介は半ばヤケと言った感じでフロント剣を延長させる。

「いっけぇ!ドラグリーチスティンガー!!」

 バーーーン!!
 必殺の一撃でウイングジャターユが勢いよく吹っ飛ばされる。
 勢いが強すぎるためか、今度は風を掴むことが出来ず、そのままビートヒット+ディスタンスダメージを受けてしまった。

「どうだ!これなら風に乗れないぞ!!」
「確かに、風の流れを上回る勢いで弾かれれば成す術なく飛ばされるしかない。だが、この戦い方を続けていれば前回の二の舞だ」
「っ!」

 前回のバトルを思い出し、弾介は悔しげにフロント剣を畳んだ。
 その後、決定的な攻撃を加える事も出来ず、ドラグカリバーはウイングジャターユに嬲られ続ける。

「さっきまでの威勢はどうした?」
「耐えろ!ドラグカリバー!!」

 どうにかバリケードを駆使して致命傷は避けているものの、防戦一方のジリ貧だ。

「何やってんのよ弾介!必殺技で応戦しなさいよ!」
「いえ、ドラグリーチスティンガーは機体への負担が大きいので連発できないんです。前回もそれが原因で自滅してしまったので」
「だからって、このままやられっぱなしじゃ負けちゃうわよ!」
「弾介さんもきっと起死回生の考えがあるはず。信じましょう」

 そうこうしている間に、ドラグカリバーのHPはあと僅か。ウイングジャターユもあれから多少はHP減っているが、その差は歴然だ。

「これで終わりだな」
「くっ!」
「昨日も言ったが、これは試合じゃない。今度こそ完膚なきまでに再起不能にしてやる」

 レイズはウイングジャターユの翼を広げて狙いを定めた。

「死ね!スプレッドウイング!!」

 ウイングジャターユが一直線にドラグカリバーへと迫る。このままでは……。

「今だ!ブレードカタパルト!!」

 ウイングジャターユがぶつかる瞬間、弾介は素早くドラグカリバーの剣を斜めに上げて、ウイングジャターユへ正面を向けた。

「なにぃ!?」

 ウイングジャターユはドラグカリバーフロントを乗り上げ、そのまま剣をジャンプ台のようにして飛び上がった。

「やった、成功だ!」
「まさか、あの剣にそんな使い方が」
「ホテルでやってた改造はこのためだったのね」

「舐めるなぁ!!」

  飛び上がったジャターユはそのまま場外へ向かっていくのだが、翼が風を捉えて旋回しようとする。

「まだだぁ!!!」

 そこを目掛けて、弾介はシュートを放ちドラグカリバー路面のギャップを利用して飛び上がった。
 そして、宙を漂うウイングジャターユのシャーシドテッ腹へ剣を突き刺す。

「無防備な空中なら耐えられないな!!」
「うっ!」
「いけぇ!フライングソードスティンガー!!」

 バーーーーン!!!

 不安定な空中で受けた強烈な一撃にウイングジャターユはたまらず吹っ飛ぶ。
 バリケードも空中制御もないまま勢いに任せて場外へと弾き出され、一気に撃沈するほどのダメージを受けてしまった。

「なん……だと……!」

 撃沈し、戦闘不能になったウイングジャターユを手に取りレイズは呆然としている。

「やった……やった……やっっったああああああ!!!!!!」
「やりましたね弾介さん!」
「やるじゃない弾介!」

 念願のリベンジ成功に弾介は飛び上がり仲間達と喜びを分かち合った。

「バ、バカな……俺が……」

 レイズは失意の目で膝をついた

「さぁレイズ、あんた負けたんだから大人しくあたし達の言うこと聞きなさいよね!」
「……それは出来ない」
「はぁ?」
「まぁ、そう言う約束してなかったしね……」

 あくまで約束は弾介とレイズが戦う事であって、その結果どうするかは決めてなかったのだ。

「それはそうだけど、でも命を賭けた戦い仕掛けた上に負けておいて何も無しってのは虫が良すぎでしょ」
「……そうだ。俺は死んだも同然だ」

 そう言いながら、レイズはフラフラと火山口へと歩いていく。
 それをフィランが腕を掴んで止めた。

「ちょ、あんた何考えてんのよ!早まった事はやめなさいよね!」
「おれは、親父とは違う……一人で生きれる力を証明しなければ、生てはいけない……」
「は?」

 レイズの呟きにフィランが顔を顰めた直後だった。
 突如火山口から地響きと共に爆風が吹き出した。

「うわっ、なんだ!?」
「ま、まずいです!空噴火が始まりました!!」
「からふんか?」
「この火山は溶岩の質量が大きいので噴火の代わりにガスだけが噴出する空噴火が頻繁に起こるんです!これに巻き込まれたら……!」

 シエルの説明が終わるよりも前に辺りに暴風が吹き荒れはじめる。

「うわぁ!」
「ちょ、悠長に説明してる場合じゃないわよ!」
「み、みなさん!アクチュアルモードを起動しましょう!それなら私達は無害ですし、フリックスならこの程度難なく耐えられます!」
「あ、そうか!よし!」

 三人はフリックスをアクチュアルモードにする。
 どんな熱風が吹き荒れようと、これでフリッカーは安全だ。

「あ、レイズ……!」

 しかし、ウイングジャターユのHPが0のレイズは生身でこの暴風を受けるしかない。

「っ!」

 ついに、風に耐えきれずにレイズの体が飛ばされてしまう。
 ガッ!

「レイズ!」

 飛ばされる瞬間、弾介は即座にアクチュアルを解除してレイズの腕を掴んだ。

「だ、弾介さん!危ないですよ!?」

「なんの、つもりだ……!」
「大丈夫か、レイズ!」
「はなせ。俺はもう死んでいる」
「死んでなんかない!だから、また僕と戦えるんだ!!もう一度、何度でも、レイズとウイングジャターユと、戦いたいんだ!!」
「また、たたかう、だと……?」
「まだ一勝一敗なんだ……決着がつくまで絶対に死なせない……!!」
「……」

 暴風に耐えながらも必死にレイズの腕を掴む弾介だが、さすがに生身では無理があったのか次第に身体が風に負けて浮き上がる。

「う、うあああああ!!」

 遂に、弾介もレイズも二人とも風に飛ばされそうになるが……。

「ハンターホールド!!」

 ガシッ!!
 ハンターフィーラインのアームが弾介の胴体を掴んだ。

「フィラン!」
「ったく、あんたならやると思ったわよ」
「ありがとう!」
「レイズ、あんたも絶対手を離すんじゃないわよ!」
「……」

 レイズは虚な瞳で弾介とフィランを交互に見る。そして

「俺は、今度こそ、生きる。そのために、誰の手も掴まない」

 レイズはそう呟くと、腕を捻って弾介の手を外した。

「なに!?」

 そして、そのまま風に飛ばされていってしまった。

「レイズーーーーー!!!!!!」

 

     つづく

 目次 前の話へ 次の話へ

 

 

CM

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

JPEG,PNG,GIF形式の画像を投稿できます(投稿時はコメント入力必須)