弾突バトル!フリックスアレイ ゼノ 第16話「海に来たんだから海に行こうぜ!」


第16話「海に来たんだから海に行こうぜ!」

 

 魔王主催の武闘大会の優勝賞品であるキングズカリバーに導かれ、ついに伝説のフリックスを手に入れた弾介達。
 その使い手として選ばれたフィランを新たに仲間に加えて新たなる旅が始まるのだった……のだが。

「あたし、弾介の事好きになったから」
「は?」

 あまりにもあっけらかんとした唐突な告白。そしていきなりの接吻に弾介は呆気にとられ、シエルは世界中を揺るがさんばかりの声量で絶叫した。

「えええええええええええ!!!!!」

 シエルを叫ばせた張本人であるフィランは怪訝な顔をした。

「何よ?」
「何よ?はこっちのセリフです!何やってるんですか!?」
「うっさいわねぇ。キスなんてこの世界じゃ挨拶みたいなもんでしょ?」
「え、そなの?」

 挨拶ならそんな大したことは無いか、と弾介はキョトンとした顔になる。

「そんな事ありません!き、キキ、キスなんてしちゃったら弾介さんに子供が出来ちゃいます!!!」
「ヴェッ、そなの!?」
「そんなわけないでしょ……」

 完全に錯乱しているシエルに言う事いちいち間に受ける弾介、そしてその元凶のフィランは二人の反応に対して他人事のように呆れている。

「ったく、キスくらいで狼狽すぎでしょ。ガキじゃあるまいし」
「そういうフィランこそ、子供なのにませすぎですよ……」
「あれ、言ってなかったっけ?あたしこう見えて18歳だから」
「ええええええ!?」

 サラッと判明した事実にシエルは再び声を上げる。

「どおりでしっかりしてると思ったけど、まさか年上だったとは……」
「うふふ、どうしたの弾介?ピチピチな幼女の見た目と大人の色香のギャップにメロメロかしら?」

 新しい驚きに呆然とする弾介へフィランが更に迫るが、シエルが割って入る。

「ああもう離れてください!密です!ソーシャルディスタンスです!!」
「ふふ、恋の病ならもう感染してるけど」
(誰が上手いこと言えと言った)

 わちゃわちゃする女二人に対して、弾介はもう状況についていけなくて心の中でツッコミに徹する事にした。

「大体、なんであんたが止めんのよ。あたしと弾介が付き合ったって何の問題もないじゃない」
「へぇあ!?あ、あぅ、ぐ……そ、その、あれです!私たちは魔王討伐という崇高な目的で旅をしているのです!そんな浮ついた態度ではいけません!恋愛なら世界が平和になってからすべきです!!」

 シエルは顔を真っ赤にしながら必死で言葉を紡ぐ。それを見てフィランはニヤリと笑いながら言った。

「ふーん、まぁそういう事にしとくわ。あたしももう少し恋の駆け引きを楽しみたいし。弾介、返事は後で良いわよ」
「う、うん、助かる」

 一先ず、一旦この件は保留となりこの後の行動について話し合う事にした。

「で、これからどうすんの?」
「とりあえず王宮へ戻って、地上の王者たる伝説のフリックスを手に入れた事を王様に伝えたい所ですが、もう遅いですし近くの宿屋で休みましょう」
「宿屋って、ここら辺って村とかあるの?」

 辺りを見渡しても人気のある雰囲気はしない。
 弾介達はキングスカリバーのワープで得体の知れない場所に飛ばされてしまったわけで、今どこにいるかも分からないのだ。

「はい、お二人がピラミッドの中にいる間にある程度の地理は調べられましたので。ここからちょっと歩いた先に橋がありまして、そこを渡ると小さな島があるようです。しかもリゾート地としてそこそこ栄えてるおかげか、かなり強力な結界も有してるようなので安心して休めますよ」
「リゾート地ねぇ、良いじゃない」
「やった!じゃあ早速行こう!!」

 目的地も決まり、早速歩き出そうとする弾介をフィランが止めた。

「あっと!ちょっと待ちなさい!!」
「へ?なに?」

「ノーパン清楚はともかく、あたしと弾介は指名手配中なんだから、そのまま一般人の前に顔出しちゃまずいでしょ」
「あ、そっか」
(ノーパン清楚って私の事……?)
「って事で、変装ターイム!」

 ……。
 ………。

「じゃーん!みんなの妹、フィリアちゃんに変身〜!キャハッ☆」

 フィランはかつて弾介達を騙すために変装したフリフリ幼女のフィリアへと姿を変えた。

「……恥ずかしくないんですか?」

 18歳と判明した今になって見ると、寒い。

「っさいわね、ほっといてよ!」
「それよりも、問題は……」
「フフフ、これは自信作よ」

 シエルはこめかみに汗マークを浮かべ、フィランはしたり顔になって弾介へ目を向ける。

「真実はいつも一つ!……って、なにこれ?」

 弾介の格好は、髪飾りを外して前髪を下ろし、大きな丸メガネに蝶ネクタイの七五三を思わせる子供スーツ(さすがに短パンではないが)で、宛ら子供になった高校生名探偵を彷彿とさせていた。

「そんな格好でホテルに入ったら殺人事件に巻き込まれそうですね……」
「フィラン、なんでこんな死神みたいな服持ってるのさ」
「死神って、失礼ね……。あたしの弟がいつかイケメンに成長した時のために用意したスーツなんだから、ありがたく着なさいよ」
「イケメンに蝶ネクタイって、どんなセンスしてるんですか……」
「ってか、フィラン弟いたんだ」

 天涯孤独なイメージのあるフィランから家族に関する情報が出てきたのは意外だ。

「まぁね。生き別れてからもう数年になるから、もういないようなものだけど」
「あ、ごめん、悪いこと聞いた……」
「言ったのはあたしからなんだから気にしなくて良いわよ。そんな事よりシエル、センスがどうこうってどういう意味よ?」

 話題の矛先がシエルへ移る。

「いえ、今どきスーツに蝶ネクタイって、お笑い芸人でもやらないかと……」
「はぁ!?これのかっこよさが分からないわけ!?」
「それはひょっとしてギャグで言ってるんですか!?」
「大体、ノーパンのあんたにセンスの事言われたくないわね」
「べ、別に好きで履いてないわけじゃないです!これは正装だから仕方なく……!」

 ヒートアップする2人に弾介が遠慮がちに声をかけた。

「あ、あのさ、そろそろ行かない?お腹も空いてきたし」
「あ、すみません!そうですね」
「ノーパンが余計なケチつけるから、話が進まないじゃない」
「フィランのセンスが悪いからですよ……

「どっちでもいいよ……」

 くだらないやりとりをしながらも、弾介達は目的地の島へ辿り着き、ホテルにチェックインした。
 シエルが慣れた感じで部屋を二つ頼み受付を済ませていると、フィランはエントランスの端にあるコーナーに目をつけた。
 そこには色とりどりの水着が掛けられているスタンドがあった。

「へぇ、ここって水着の貸し出しもしてるのね」

 フィランは弾介を連れて水着貸し出しコーナーに近づき、艶やかなオレンジ色のビキニを体に当ててみる。

「どう、弾介?」
「まぁ、似合ってるとは思うけど……」

 そんな2人のそばへ受付を済ませたシエルもやってくる。

「この島は海水浴場による観光業で成り立ってますからね。ホテルもそう言ったサービスに力を入れているようです」
「面白そうね、明日行ってみない?せっかくこういうとこ来たんだし」
「ダメです。早く王宮へ戻って報告をしなければ。迅速なホウレンソウは大切です」
「何よ、お硬いわねぇ……あっ、そうだ。確かキングスカリバー貸した時に『報酬に色をつける』って言ったわよね?」
「え、えぇ、まぁ……」
「だったらその報酬として、休暇を要求するわ!明日一日、ここで遊ばせなさい!」
「ええ!?それは……!」
「まぁいいんじゃないの、シエル。残り一つの持ち主は分かってんだし、一日くらい息抜きしても」
「しかし……」
「さっすが弾介!話が分かるわね!」

 ガバッとフィランが弾介に抱きつく。

「うわっと!」
「ふふ、なんだかんだ弾介も男ね、あたし達の水着姿が見たいんでしょ?」
「い、いや、そういうんじゃ……!」
「ちょ、いちいち弾介さんにくっつかないでください!」
「別に勝手でしょ。あっ、休暇を許可してくれないなら、また弾介にキスするわよ!しかも今度は唇に」
「いや、それは……!」

「ダメーーーーーー!!!!!」

 弾介が拒否するよりも先にシエルがホテル全体に響くかのような絶叫を上げた。

「うわ、ビックリした……!」
「周りの迷惑考えなさいよ……」
「はぁ、はぁ……フィランに言われたくないです……!わ、分かりました……明日一日、一日だけですよ?」
「ふふ、やったっ」
「なんか疲れるな……それよりお腹空いたし、部屋に行く前にご飯食べよう」

 話も纏まったので、3人はレストランで食事を取ったのちに、部屋へ向かった。

「今回はちゃんと二部屋取れたんだね」
「はい、急な受付にも関わらず良い対応をしていただきました。さすがリゾート地です」
「そっか、じゃああたしと弾介はこっちの部屋ね。おやすみシエル、また明日〜」

 フィランが弾介の腕を掴んで部屋に入ろうとするのをシエルが止めた。

「フィランは私と一緒です!」
「やっぱりダメか」
「は、はは」

 シエルがフィランを引きずりながら、2人が部屋に入るのを見届けた後、弾介も部屋に入った。

「ドラグカリバー、昨日今日といろいろあったけどお疲れ様」

 入浴や歯磨きなど、一通り終えた弾介は就寝前にドラグカリバーを労いながらメンテナンスをしている。
 思えば、魔王主催大会を戦い抜いて優勝、そして指名手配されて王国を追われ、フィランと合流してピラミッド内を探索してハンターフィーラインを手に入れて、そして……。

「フィランに、告白された……」

 呟いてみると、実感が湧いてくる。フィランは、見た目小さいし女盗賊だし痛い目に合わされた事もあるが、美少女の部類ではあると思う。そんな女の子に告白されて嬉しくないわけがない。ない、はずだ。

「咄嗟のことで、正しい反応できなかったな……」

 男として、自分がどういう反応を示すべきか分かっていたはずだ。しかし思い返してみるとただ困惑していただけで何もしてなかったように感じる。

「明日は正しい反応が出来ると良いな。2人の水着姿が見られるなら、きっとエッチな気持ちにもなれるはずだし。そこからの勢いでどうにか……」

 今までだって、シエルに対してちゃんと思春期の少年らしい性的な反応は示してきていたのだ。恋愛となるとまた複雑になるが、繋がりがないわけではない。

「考えててもしょうがないや!寝よ寝よ」

 ドラグカリバーのメンテも終わったし、これ以上考えてても答えは出そうにない。
 って事で弾介はベッドに入って就寝する事にした。
 消灯して目を瞑ると、疲れた事もあってすぐに微睡に包まれた。
 しかし、意識が心地よい闇の中を漂い始めてから数十分後、微かな扉の開閉音と人の近づく気配を感じてうっすらと脳に覚醒の光が差し込んだ。
 そして、モゾモゾと何者かがベッドの中に侵入して、自分の上に柔らかな感触が……。

「ん、フィラン……」

 暗闇の中にフィランの顔の輪郭が浮かび、温かな息遣いを感じる。
 ぼんやりした頭で弾介は口を開く。

「なに、してんの?」
「夜這いに決まってんでしょ」
「えぇー……ってか、鍵掛けたはずなんだけど」
「あたしが盗賊って事忘れたの?あの程度の鍵開けなんて朝飯前よ」
「マジか……」
「そんな事より、せっかく若い男女が夜中に2人きりなんだからイイコトしましょ?」
「イイコトって……?」
「カマトトぶってもダメよ、そういうのいいから。見た目ロリなお姉さんの身体を好きにしていいのよ?本当は興奮してるくせに」
「う、うん、フィランは可愛いし、好きにして良いって言われたらエッチな気分にもなるよ……けど」
「なにその感想文みたいな反応」
「こういう時、どういう反応するのが正しいんだろう?」
「はぁぁ?」

 弾介のまるで検討違いな反応に、フィランは若干イラつきの入った声を上げた。

「いや、女の子にこんな事されたら興奮してエッチな事しようとするものだって、知ってるんだけどさ!けど、僕の年齢とキャラ的にはそれよりも恥ずかしがって紳士ぶろうとするって選択肢もあるし、どっちが良いのかなって」
「知らないわよ。好きな方選べば?」
「分からないんだ……こう言う気持ちも、それでどう反応してどう行動するものかって言うのも常識として知ってる。けど、ただ知ってるだけで、分からないんだ……」

 弾介が困ったような申し訳ないような顔で潮らしく言うもんだから、フィランも興が冷めたのか乱れた服を直して立ち上がった。

「フィラン?」
「ま、よく考えたらそういうお年頃か」
「……僕、やっぱりおかしいのかな。元の世界でもエッチな話とか恋話とかでクラスメイトが盛り上がっててもさ、一応空気を読んで合わせる事はしてたけど、共感する事は出来なくてさ、それで友達もあんまりいなくて……」

 弾介は中学生男子だ。ともなれば話題はどうしても異性に関連する事になる。そこで気取って興味ないフリをすれば仲間外れになるので一応弾介も話題に乗るためにそういう言った情報は仕入れている。
 だが、知っているという事と共感する事は違う。表面だけ合わせていても友達は作れない。
 その事を思い出したのか、弾介は寂しい表情になった。

「弾介……それ、ハッキリ言うけど」
「……」
「すっっっっごい普通!」
「え?」
「あんたくらいの年齢なら割とありがちよ、だから気にする必要なし」
「そ、そなの?」
「えぇ。それよりも、自分の考えが人と違う、特別って思う方が問題よ。行き過ぎると拗らせちゃうからね」
「う、うん、気を付ける」
「はぁ、あたし何のために来たのやら……少しアプローチの仕方変えるか。じゃ、弾介おやすみ」
「おや、すみ」

 ドッと疲れたのか、フィランは肩を落としながらゆっくりと部屋を出て行った。

「……」

 それを見送った弾介はトイレに入っていった。

 ……。
 ………。

 そして翌日。見事な快晴で、ホテル前の海水浴場は水着を着た人々でごった返していた。

「うわぁ!海なんて久しぶりに来たなぁ!!」

 一応変装のためにメガネはかけているが、弾介は水着姿で1人砂浜に足を踏み入れてシエルとフィランが来るのを待っていた。

「おっまたせ〜!」

 暫くすると元気の良さそうな少女の声が聞こえてきた。
 振り向くとそこには水着姿のフィランが……。

「って、フィラン!?その水着……!」
「ふふん、どう?あたしの身体に1番似合うものを選んでみたわ」
「なんでそんな水着があるの!?」

 フィランの選んだ水着は露出の少ない紺色のワンピース型の水着……スクール水着だった。

「男って変に露出してるより案外こういうのの方が好きなんでしょ?」
「僕にそんなマニアックな趣味はない……」

 とは言え、水着は水着。つるぺたとは言え、ワンピース型水着は女の子らしいスレンダーなラインが強調されているし。そもそもフィランは普段が露出度が高いので露出を下げつつ身体のラインを強調する今の姿はそれはそれで魅力的だ。

「……けどまぁ、似合ってるし魅力的だとは思うよ」
「っ!」

 弾介の素直な発言に、フィランは顔を赤くして逸らした。

「と、当然でしょ!……ったく、油断するとすぐ不意打ちするんだから……!」
(……良かった、間違ってなかったみたいだ)

 弾介の言葉が嬉しかったのか、フィランは顔のにやけを抑えられずにいる。
 それを見て、弾介はホッとした。
 昨日の夜、一応シミュレーションしてどう受け答えするかの予習はしておいた。これでもう間違った反応や言動はしないはずだ。

「お、お待たせしました……」

 少し遅れて遠慮がちにシエルの声が聞こえてきた。

「あ、」

 慣れない水着にもじもじしながら現れたシエルの姿を見て、弾介は口を開いて固まった。

「ど、どうでしょう……?」

 シエルの水着はピンク色のフリルのついたビキニにボトムはミニのスカートを付けている。
 シエルのスタイルの良さと可憐さを最大限活かすようなチョイスだ。

(凄く似合ってる、可愛いよ)

 弾介はシミュレーションした通りの感想を言った。

(あれ?)

 つもりだった。

(言葉が、出ない……)

 顔を赤くするだけで言葉を発さない弾介に代わり、フィランが少し悔しそうに憎々しげに言った。

「やるわね、ノーパン」
「い、今はさすがに穿いてます!!……けど、久しぶりに穿いてるので少し落ち着かないです。これって脱ぐのはダメですかね?」
「ダメに決まってるでしょ」
「っ!!」

 弾介は何故かシエル達から身体を背けた。

「どうしたのよ、弾介?」
「弾介さん?」
「い、いや……さて!せっかく海に来たんだし、海に行くぞ!!」

 弾介は取り繕うように声を上げて海原へと走っていった。

「……何を言ってるんでしょうかね?」
「へぇ……そういうこと」

 弾介の様子がおかしい事に首を傾げるシエルに対してフィランは何かを察したようだ。

「フィラン、何か知ってるんですか?」
「うっさいバカ」

 ギュム!
 フィランはシエルの胸を乱暴に揉んだ後に弾介の後を追って駆け出した。

「ひゃああああ!何するんですかああああ!!!」

 シエルも涙目になりながら胸を抑えて2人を追いかけた。

「うおおお!!!!」

 弾介は波打ち際を駆けながらドラグカリバーを構えた。

「いっけえええ!!ドラグカリバー!!!」

 バシュッ!バシャッ、バシャッ!!
 ドラグカリバーは水切りしながら進んでいき、途中波に弾かれて弾介の手元に戻った。

「よし、いいぞドラグカリバー!」
「せっかく海に遊びに来たのにこんな時でもフリックスやるのね」
「海に来たからこそだよ!この水面に波に砂浜に、いつもと違うフリックスバトルが出来るんだから練習にもってこいさ!」
「まぁ、その方が弾介らしいか。いいわ、あたしも付き合ったげる。もっとこの子使いこなせるようにもなりたいしね」

 フィランもハンターフィーラインを構えた。

「いっくぞ!アクティブシュート!!」

 弾介とフィランが対峙して同時にシュートする。
 ガッ!
 空中で二機が激突!ハンターフィーラインがドラグカリバーを拘束して着地した。

「いぃ!?さすが伝説のフリックス、凄い拘束力だ……!」
「ふふふ、もう逃げられないわよ」
「この状態じゃ、機体の向きを変えられない……!ストームグライドかウェーブブラッドがあれば抜け出せるけど、今回は付けてないし……そうだ!」

 弾介は拘束されたままドラグカリバーをシュートした。
 その先には丁度大きめの波が来ている所だった。
 ザバアアアア!!!
 波に流された勢いでハンターフィーラインは拘束を解いてしまった。

「どうだ!」
「さすが、やるわね!でもだったらまた捕まえるだけよ!」
「捕まるもんか!!」
(これはこれで、砂浜で追いかけっこするカップルみたいでいいわね)

 再びドラグカリバーを拘束しようと迫るハンターフィーラインだが、突如シェルガーディアンが割って入った。

「げっ!」
「せっかくなので私も混ぜてください!」
「シエル!よし、3人で特訓だ!!」
「何よもう!良いところだったのに!!だったらあんたから先に撃破するわよ!」
「そうはいきません!シェルガーディアンに拘束技は無効です!シェルタースピン!!」

 シェルガーディアンはボディを回転させて掴んできたハンターフィーラインを遠心力でぶん投げてしまった。

「やるな、シエル!よーし、今度は僕だ!!」

 砂浜にいるシェルガーディアン目掛けてシュートを放つ。しかし、シェルガーディアンはドラグカリバーの攻撃にびくともしない。

「なに!?」
「海岸の砂浜は柔らかいので、いつもより衝撃を吸収するんです!」
「そ、そうか……!」
「だったら固めるまでよ!」

 ハンターフィーラインが両腕で水を含んだ大量の土を運んであたり一面を濡らした。
 水分を含んで硬くなった事で路面による防御力は下がったはずだ。

「ハンターフィーラインにそんな使い方が!?」
「今よ弾介!」
「よーし!いっけえええ!!!」

 バキィ!!
 硬い路面ならドラグカリバーの攻撃が通じる。シェルガーディアンはなすすべなく弾き飛ばされてしまった。

「きゃあ!……やりますね!」
「あはは!やっぱり海って面白いなぁ!」
(絶対本来の海の楽しみ方じゃないわよね、コレ)

 ちょっとおかしな感じだが、海水浴を楽しむ3人。
 その時だった。
 ゴゴゴゴゴ……!と海面が盛り上がり、何か巨大な生物が現れようとしている。

「な、なんだ!?」
「サメ、ですかね?」
「こんな浅瀬にサメなんか出ないでしょ」

 3人が身構えると、海面から現れたのは巨大なイカともタコともつかない軟体生物だった。

「これは、クラーケン!?」
「魔王軍のモンスターか!」
「そんなっ、この島はまだ結界が張られてるはずなんですが……!」
「そんな事言ってる場合じゃないわよ!」

 クラーケンは砂浜に上がり、パニックになる民衆達を無数の触手で次々と捉えていった。

「みんなを助けなきゃ!」
「はい!って、きゃあああ!!」
「っ!」

 クラーケンから伸びた触手はフィランやシエルも捕らえてしまう。

「フィラン!シエル!!」
「ちょっ、離しなさいよ!!」
「うぅ、激しく動かないでぇ、水着がズレますぅ……!!」
「先に2人を助けないと、ドラグカリバー!!」

 弾介はドラグカリバーをスケールアップさせてシュートし、シエルとフィランを捕らえている触手を切り落とした。

「大丈夫、2人とも!?」
「ごほっ、えぇなんとか」
「うぅ、ヌルヌルしますぅ……」

 ズ、ズズ……!
 クラーケンは人々を捉えたままゆっくりと海へと戻って行こうとする。

「あいつ、帰ろうとしてんのか!?」
「まずいです!あのまま海に入られたら人々が溺れてしまいます!!」
「倒す前に、食い止めるしかなさそうね……!ハンターフィーライン!ハンターホールド!!」

 フィランはハンターフィーラインをスケールアップさせてクラーケンを掴む。
 しかし、クラーケンはフィーラインに掴まれたまま歩みを止めない。

「くっ、なんで力なの!?これじゃ止められない……!」
「どうすればいいんだ……!」
「そうだ、フィラン!一旦ハンターフィーラインを回収してください!」
「はぁ?何言ってんのよ!人の命より伝説のフリックスの方が大事だっての!?あんた、魔王討伐さえできればそれで良いって思ってんじゃないでしょうね?」
「違います!私は、全ての人々を守るために生きているんです!絶対に目の前の人達を見捨てる事はしません!!」

 フィランは盗賊ではあるが最低限の倫理観は持っている。だからこそ、人命よりも伝説のフリックスを優先させるような言い方をしたシエルに食ってかかったのだが、シエルも真摯な表情で引かない。

「フィラン、シエルの皆を守りたいって気持ちは本物なんだ。だから信じてくれ」
「……分かったわよ」

 フィランがハンターフィーラインを回収すると、クラーケンの歩みの速度が上がる。このままでは海に入られてしまう。

「フィラン、これをハンターフィーラインに取り付けてシュートしてください!」

 シエルはシェルガーディアンのシャーシを取り出し、フィランに渡した。

「これは」
「シェルガーディアンのシャーシはグリップ力が高いんです、だから……」
「そうか!ハンターホールドと組み合わせれば!」
「なるほど、考えたわね!」

 フィランはシェルガーディアンのシャーシをハンターフィーラインにセットしてシュートした。

「いっけぇ!ハンターホールド!!」

 ガッ!!
 ハンターフィーラインの拘束にシェルガーディアンのグリップが加わり、クラーケンの動きを完全に抑え込んだ。

「あとは頼んだわよ、弾介!」
「任せろ!ライトニングラッシュ!!」

 ライトニングラッシュによる連続シュートで触手を次から次へと切り落として人々を救い、そして最後にクラーケンの脳天目掛けて必殺技をぶちかました。

「いっけぇ!ドラグリーチスティンガー!!!」

 ドラグカリバーの剣突き刺さり、クラーケンは倒れてそのまま消滅してしまった。

「ふぅ、倒したぁ!」
「やりましたね、フィラン!!」
「あんたもやるじゃない、シエル」

 この戦いで、フィランとシエルは少しお互いを認め合えたようだ。

「それにしても、伝説のフリックスの力を合わせると、こんな性能を発揮するのか……!」

 二機力を合わせただけでこの力だ。四つの力が揃えばもっと凄い力を発揮するかもしれない。

「しかし、どうして結界の強いこの島でモンスターが発生したのでしょう……」
「さぁ、結界だって絶対じゃないんだから、どっか壊れてたんじゃないの?」
「この島は財政が潤沢で管理もしっかりしているので、滅多な事は起こらないと思っていたのですが……」

 シエルが思案していると、3人のところへ近づく足音があった。

「ふん、貴様を誘き寄せるために、わざわざ結界を破壊してモンスターを投入したが……不必要だったようだな。まさか遭遇出来るとは」
「っ!あ、あなたは!!」

 3人がその方向を向くと、そこにはレイズが立っていた。

「レイズ……!」
「久しぶりだな、ようやく会えた」

 レイズがシエルの顔を見てニタリと笑う。

「ん?レイズ……?」

 と、フィランが怪訝な顔をしてレイズの顔をマジマジと見つめた。
 そして、素っ頓狂な声を上げてレイズを指差す。

「あ、あーーー!!!あんた、もしかしてレイズ!?」
「ね、姉さん……!」

 2人の反応に、弾介とシエルも驚愕した。

「「ねえさん!?!?!?!?」」

     つづく

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CM

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