弾突バトル!フリックス・アレイ ゼノ 第15話「地上の王者!ハンターフィーライン」

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第15話「地上の王者!ハンターフィーライン」

 

 武闘大会で優勝した弾介は世界の人々からのヘイトを買ってしまい親衛軍に捕らえられてしまう。
 どうにか脱出してフィランと合流するものの、王の命令で追ってきたシエルにフリックスを突きつけられてしまった。

「シエル……!」
「フィールドジェネレート!」

 フィールドが生成され、逃げ場がなくなりシエルに有利な空間になってしまう。

「悪く思わないでください弾介さん。私は、世界に害を成すものを殲滅し人々を守る義務があるのです」
「やるしか、ないのか……!」

 弾介は意を決してドラグカリバーをスケールアップさせるためのシュートを放つ。
 ウェイトタイムが経過し、シエルもシュートする、がその方向はドラグカリバーからズレておりそのまま弾介をスルーして後ろへ飛んでいった。

 バキィィ!!
 後ろで衝突音が聞こえる。
 そこには一体のモンスターがシェルガーディアンの攻撃を受けてフリップアウトし、撃沈していた。

「ふぅ、ダメですよ弾介さん、油断しては。ここはもう結界の外なんですから、いつモンスターに襲われるか分かりません」

 フィールドを解除し、シエルはニコリと笑った。先ほどの雰囲気とのギャップに二人は戸惑う。

「あ、あれ、シエル?」
「弾介さんもモンスターと戦いたかったでしょうけど、気付かない方が悪いんですよ」
「い、いや、そうじゃなくて」
「あんた、弾介を倒しにきたんじゃ」
「そんな事言いました?反逆者扱いされた弾介さんを追って、世界に害を成すモンスターを討伐する。これで命令はクリアです。あとは弾介さんと魔王討伐の旅を再開するだけですね」
「紛らわしい……」
「でも良かった……」

 ホッと一息ついてドラグカリバーを元に戻す。シエルも同じようにシェルガーディアンを手元に戻した。
 その時、フィランの持っていたキングスカリバーが輝き出し、その光が真っ直ぐにシェルガーディアンへ向かった。

「ひぃぃ!?なんですかこれ!!」
「あ、その光、ドラグカリバーと同じ……!やっぱりキングスカリバーは伝説の力と何か関係があるんだ!!」
「通常状態の伝説のフリックスに反応すると言う事でしょうか……?」
「って事は!フィラン、ちょっと貸して!」

 弾介はフィランからキングスカリバーを取り、そして縦横無尽にいろんな方向へと剣先を向けた。

「なにやってんのよ……」
「もしかした、どこかに反応するかも……!」

 ボウ……!
 ある方向に向けた時、キングスカリバーの剣先が微かに光った。辺りが暗くなって来たから確認出来たほどの淡い光ではあったが。

「あっちの方角だ!」
「この光の先に、レイズのウイングジャターユか、もしくはまだ見ぬもう一つの伝説のフリックスがあると言う事ですね」
「よし、目的地は決まった!早速出発しよう!」
「はい!しかし今日はもう遅いですし、一旦休みましょう。送迎用のペガサス付きのホテルのチケットがありますので」
「うん、そうしよう。お腹も空いたし……」
「ちょ、ちょっとちょっと!何トントン拍子で話進めてんのよ!」

 いきなり置いてけぼりくらったフィランが口を挟む。

「フィランはここで解散ですね。生憎ホテルは二人しか予約してないので」
「そう言う事じゃなくて!そのキングスカリバーはあたしのなんだからね!忘れないでよ!!」

 フィランは弾介の手からキングスカリバーを奪い取る。

「えぇ!?で、でもそれが無いと伝説のフリックスの場所が……」
「最初に約束したでしょ。キングスカリバーが伝説のフリックスならあんたのもの。そうじゃなければあたしのもの。伝説のフリックスの道標になるとは言え、伝説のフリックスそのものじゃないならあたしのものでしょ!」
「そんなぁ……!」
「まぁ、報酬次第ではあたしのキングスカリバーの力を使わせてあげない事もないけど?」
「……仕方ないですね。ホテルには一人増えると連絡入れましょう。一先ず迎えを呼ぶためのペガサスの羽根を……あら?」

 シエルはキャリージュエルを持ち、ペガサスの羽根を出そうとするのだが、何も出てこない。

「どうしたの?」
「すみませ〜ん、ホテルのチケット置いて来ちゃいましたぁ〜!」

 シエルは涙目になりながら言った。

「えぇー……」
「ポンコツか」
「ど、どど、どうしましょう!ここから最寄りの町まではかなり距離がありますし、歩いて行くにももう夜遅いですし……!」
「はぁ、別に心配いらないわよ。元々野宿するつもりだったんだから。こんな野っ原だとアレだし、近くの林にでもいきましょ」

 と言うわけで、野宿するにあたって資材の多い林へ移動することにした。

「フィラン、枯枝このくらいで良い?」
「そうね、これだけあれば一晩もつでしょ」

 林の中で簡単な拠点作り。テントはないが、落ち葉や枝を組み合わせて簡易ベッドを作り、夕飯を作るため石を組み合わせてコンロを作り、そこに枯れ枝や落ち葉を溜めた。

「そう言えばあんた魔法使えるのよね?火は出せないの?」
「攻撃に使えるほどではないですが、一応は」
「火種になれば十分よ」
「分かりました」

 シエルがライター程度の火を落ち葉に付ける。火は落ち葉から枯れ枝へ移り炎に変わった。

「おおー!」
「さて、っと」

 今度は平らな石をフライパン代わりにして火に掛ける。
 そこへまずは肉の脂肪を入れて十分に油を広げ、赤身や野菜などの食材を次々と置いていく。
 しばらくすると、肉はいい感じに焼けて、野菜はしんなりとして来た。
 肉の出汁と野菜の水分がいい感じに混ざり合い、素材の味を引き立てている。

「あー、良い匂い」
「どうよ。フィランちゃん特製の肉野菜炒めよ!盛り付け皿とかはないからこのまま食べましょ」
「これ、材料はどうしたんですか?」
「城下町のレストラン街でくすねて来たの。だから全部一級品よ!」
「ぬ、盗んできたんですか!?」
「人聞き悪いわね……元々捨てるものをもらっただけよ。あいつら、まだ食べられるのにちょっと見た目が悪いとか、小さい部位だからってすぐ捨てるんだから。こう言うところが本当に美味しいのに」

 弾介は我慢できなかったのか既にガッツいている。

「ほんとだ!美味しい!!」
「でっしょ〜!」
「……」

 シエルも恐る恐る野菜の切れ端を口に運んだ。

「おいしっ!適度な炒め加減でしんなりした野菜の繊維の中に肉汁が染み込んでいて、なんとも言えないハーモニーを奏でています!!」
「ふふん、温室暮らしじゃまず味わえないわね」
「むむむ、やりますね……!」
「うまうま!!」

 フィランの料理に舌鼓を打ち、その日は早めに就寝した。

 そして翌朝。

「あー、よく寝たー!さぁ、
シエルフィラン!早速伝説のフリックスを探しに出発だ!!」

 ガサガサと落ち葉のベッドから飛び起き、弾介は未だ眠そうにしているシエルとフィランへ声を掛けた。

「朝から元気ね……」
「うぅ、背中痛いです……」
「食べて寝れば元気も出るよ!さぁ、行こう!!」

 弾介に促され、二人ものろのろと起き上がった。
 そして、キングスカリバーの指し示す方角へ向けて歩みを進めた。

「うーん、キングスカリバーの光は、伝説の機体との距離が近くなればなるほど強くなるんだろうけど」
「歩けど歩けど、光は弱いままですねぇ……」
「あんた魔法使いでしょ、テレポートとか使えないの?」
「正確には司祭の娘です。あんな高等魔法使えてたら野宿なんかしないですよ……」
「確かに」
「うーん、そう言えばさ。キングスカリバーの出す光ってアクチュアルモードにしたらどうなるんだろう?」
「さぁ、大きくなるだけなんじゃないの?」
「しかし、何が起こるか試してみる価値はあるかもしれませんね。これまで、キングスカリバーで戦った事もなかったですし」
「まぁ、やるだけタダか。スケールアップ!」

 フィランが空中に手をかざすと、そこに魔法陣が現れ、キングスカリバーがフィランの前に浮き上がる。
 魔法陣に向かってキングスカリバーをシュートし、スケールアップさせた。

「……何も起きないわね」
「方角が違うからでは?」
「あ、そっか」

 フィランはキングスカリバーの向きを変えて方角を合わせると、キングスカリバーが全身輝き出す。

「な、なんだぁ!?」

 その輝きはどんどん強くなり、3人を包み込むほどになった。

「光が大きくなるかもとは言ったけど、ここまでなんて聞いてないわよ!?」

 そして、光は3人を包み込んだまま光速で移動。所謂、ワープをした。
 気がつくと、3人は見知らぬ地へ移動していた。

「な、何が何やら……ここは一体どこなんでしょう?」
「スケールアップはフリックスのサイズと能力を10倍にするから、キングスカリバーの光で導く能力も10倍になって光速ワープできるようになったと考えるのが妥当かな」
「妥当なの、それ?」

 背後には森があり、目の前には石で出来た大きな三角形の建造物があった。

「ピラミッド?」
「あからさまに怪しいわね……」

 入り口と思われる凹んだ場所は石の扉で固く閉じられており、入れそうにない。

「よし、壊そう!」

 弾介はドラグカリバーを扉に向かって構えた。

「ま、待ってください!もし衝撃で崩れたら中にあるかもしれない伝説のフリックスも潰れちゃいます!!」
「あ、そっか!」
「あんた、時々発想がバイオレンスよね……」

 しかし、そうなるとどうしたものか。
 キングスカリバーの光はこのピラミッドを指し示している。中に伝説の機体があるのは間違いなさそうだ。

「あ、ここに変な穴があります!」

 扉の隣に妙な形をした穴があった。
 覗いてみると、横に長く、奥にスイッチがある。

「奥にスイッチがあります。もしかしたらそれを押せば扉が開くかもしれません!」
「……って言っても、手は入らないし、届くような棒も無いしなぁ……!」
「スケールアップ前の機体なら入りそうですが……シェルガーディアンだと微妙に横幅が」
「ドラグカリバーも高さが合わないな……それにこんな所にシュートしたら取り出せないし」

 自然と、弾介とシエルの目線はフィランの持っているキングスカリバーへと向けられる。

「へ?だ、ダメよこれは!これあたしのなんだからね!!」

 フィランは慌ててキングスカリバーを隠した。

「試しにちょっと、穴に合うかだけ見てみようよ!」
「こんなとこシュートしたら取り出せなくなるかもしれないじゃない!」
「ほ、ほら!上手くピラミッドの中入れたら、中にはもっと値打ちの高いお宝があるかもしれないし!」
「報酬には色を付けますから!!」
「フィラン、最高!マジ、いい女!!」
「こんな絶世の美少女、私見たことありません!!」
「ああもう分かったわよ!うるさいわね!……とりあえず報酬には色を付けなさいよ」

 このままおべっか合戦になると面倒だと思ったのか、フィランは渋々了承した。
 穴の中にキングスカリバーの先端を入れて構える。

「な、なんだかドキドキします❤️」
「シエル、なんで顔赤らめてんの?」
「変な事考えないの。まったく、せっかく苦労して手に入れたのに」

 ため息つきながらもフィランはキングスカリバーを弾く。

「あ、紐かなんか結いつければ回収出来るんじゃ?」
「あんたそれ撃つ前に言いなさいよ!!!」

 時既に遅し、キングスカリバーは人の手が届かない穴の奥へと進んでいる。
 そして、カチッとスイッチが押された。
 その瞬間、バンッ!と勢いよく穴が閉じ、反対にピラミッドの扉がゆっくりと開かれた。

「やった!開いた!!」
「しかし、どちらにしても機体の回収は難しそうですね」
「はぁ、もういいわよ。その代わり中でたっぷりお宝ゲットしてやるんだから」
「よーし、早速突入だ!」

 三者三様の反応を示しつつ、3人はピラミッドの中へ潜入した。
 内装は外見と違わぬ、石造りで覆われた空間になっており、『いかにも』と言った感じのピラミッドだ。

「うわぁ!ピラミッドの中なんて初めて入ったからワクワクするなぁ!!」
「何はしゃいでんのよ、子供ね……」
「気を付けてください。こう言う迷宮にはトラップが仕掛けられていると言うのが相場ですから……」

 カチッ。

「あっ」

 とそんな事を言いながら歩いていたシエルの踏んだ石畳の一部が凹んだ。

「きゃっ!」

 シュン!シュン!!
 踏んだ地面が凹んだ事でバランスを崩したところへ、両サイドの壁から勢いよく槍が飛び出してきた。

 ビリビリ……!

 シエルは、よろけたおかげで間一髪その槍を回避したが……。

「ひぃぃぃ!!」
「あんたが気を付けなさいよ」
「だ、大丈夫シエル!?」

 シエルはガバッと身体を抑えて座り込んだ。

「は、はい、なんとか……ですが、その、服が……」

 槍の刃が掠めた事で、シエルの服が所々破けている。

「うわわ!」

 胸にスカート、前垂れと際どい部分もめくれそうになっているのを手で抑えているのでかなり危ない格好だ。弾介は慌てて目を逸らした。

「すみません〜、服は自動で直るのですが、時間がかかるので私は戦線離脱しますぅ……。あ、弾介さん念のため伝説の力測定器を渡しておきますね……」

 シエルは涙目で破れた服を抑えつつ、小股で外へと歩いていった。

「シ、シエル……」
「ポンコツノーパンめ」

 と言うわけで、弾介とフィランの二人でダンジョン探索する事になった。

「シエル、大丈夫かな」
「まだ入り口付近だったし問題ないでしょ。あれでも一応司祭の娘とか言ってるし」
「うん、だと良いけど」
「むしろ身の危険があるのはあたしたちの方だと思うけど」

 シエルのことを心配しつつも弾介達は足を進めて行く。
 内部はやや薄暗いが、仄かな灯りがある

「それにしても、もうちょっと迷宮っぽいと言うか分かれ道とかあると思ったけど」
「うん、通路がちょっと狭くて閉塞感はあるけどここまでずっと一本道だね。でも遺跡っぽいのに灯りが付いてるけど、誰か管理してるのかな?」
「あんた蛍光石も知らないの?外からの光を吸収伝達して内壁を照らしてんのよ。電気が発達してなかった頃はこう言う作りの建物が主流だったの」
「へぇ、そんな便利なものがあるんだ。さすが異世界!」
「まぁ、伝達率は悪いし光量は天気に左右されるからそんなにいいものじゃないんだけどね」

 と、そんなダンジョン探索とは思えない和やかな雰囲気で駄弁りながら進んで行くと。
 どん詰まりにたどり着いた。これ以上は進めそうにないがそもそも進む必要がなさそうだ。
 なぜなら。

「どうやらここが終点みたいね」
「えぇ!?こんなもんなの!?もっとこう、トラップとかモンスターとか配置してるものなんじゃ!」
「知らないわよそんなの。ほら、目的は達成出来そうよ」

 フィランの指差す先には祭壇があり、そこには一機のフリックスが神々しく光を灯しながらそこに飾られていた。
 弾介はシエルから渡された伝説の力測定器を翳すと見事に反応を示した。

「伝説のフリックスで間違いないか……はぁぁ……」
「ため息つきたいのはこっちの方よ。全然金目のものなんてないし、何のためにこんな所まで来たのやら」
「とっとと取って戻ろう。とにかくこれで3つ目が手に入ったんだ。魔王討伐まであと少し……」

 弾介はため息をつきつつもトボトボと祭壇に上がり、伝説の機体に手を伸ばす。

「って、弾介!一応少しは警戒しなさいよ」
「へ?」

 フィランの声に耳を傾けながらも弾介は勢いのまま機体を手にとってしまった。
 ゴゴゴゴゴ……!
 その瞬間、ピラミッド全体に地響きが鳴り始めた。

「な、なんだぁ!?」
「どう考えても罠でしょこれ!だから言ったじゃない!」
「やった!何が出てくるんだろう!!」
「『やった』って言った!?今あんた『やった』って言ったでしょ!?」

 弾介は素早くフィランのところへ戻り、辺りを警戒する。
 地響きが静まると、今度は奥から泥人形、マミー、宙に浮かぶ仮面、コウモリ……と言ったピラミッドにふさわしいモンスター達がゾロゾロと現れた。

「うわっ、いっぱい出てきた!」
「どこから湧いて出てんのよもう……!」
「お楽しみは最後に残ってたって事か」
「お楽しみって……まぁ普通に考えて元々は人が利用してた施設だったんだろうし、入り口や宝物庫以外に罠を設置してるわけないわよね……」
「なんでもいいや!フィランは下がってて!いくぞ、ドラグカリバー!!フィールドジェネレート!!」

 弾介はドラグカリバーをアクチュアルモードにして向かってくるモンスター達と戦う。
 ドラグカリバーはさすがの攻撃力で次々とモンスター達をフリップアウトして行くが、倒しても倒してもその数は一向に減らない。
外からどんどんフィールドの中に入ってくる。

「くっ!いつまで湧き出てくるんだ……!ドラグカリバー!ライトニングラッシュ!!」

 弾介はフリップスペルを活用して目の前にいるモンスター達を一掃した。
 しかし、攻撃に夢中になりすぎて防御が手薄になってしまう。

「っ!きゃああああ!!!」

 宙に浮かぶ仮面がドラグカリバーの攻撃をすり抜けて弾介の後ろにいるフィランへ照準を定めた。

「しまった!」

 ギュイイイイイイン!
 画面の目が光り、そこからビームが一直線にフィランへ向かう。

「っ!アクチュアル解除!!」

 バッ!
 弾介はアクチュアルモードを解除してフィランへ飛びかかってそのビームを躱そうとしたが、肩を掠めてしまった。

「ぐっ!」

 顔を顰めつつも弾介はフィランを庇いながら地面に転がる。
 ゴロゴロと転がらながら壁にぶつかると、いきなりそこが凹み弾介とフィランは吸い込まれるようにその隠し扉の中へと入っていった。

「い、ててててて……!」

 隠し扉の先は、埃っぽい倉庫のような部屋だった。

「こんなとこに隠し部屋があったとは……」
「ったく、何考えてんのよ!わざわざアクチュアルモードを解除して敵からの攻撃を受けるなんて」
「だって、ドラグカリバーはウェイト状態で咄嗟に動けなかったし、アクチュアルモードのままじゃフィランを守れなかったから」
「……戦力外のあたしなんか守る必要ないでしょって事。そんな怪我までして」
「こんな怪我大した事ないよ!ちょっと掠めただけだし」
「あんたじゃないわよ、それ」

 フィランに言われて、弾介は自分が手に持っているものに気づいた。
 ずっと手に持っていた伝説の機体は先ほどゴロゴロ転がったせいで潰れて破損していた。

「あああああ!!伝説の機体がああああ!!!どうしよおおおおお!!!」
「バカね、あたしなんかほっとけば良かったのに。あたしの命なんか伝説の機体に比べたら安いもんでしょ」

 フィランが少し自虐気味に言うと弾介は真剣な表情で言った。

「そんな事ないよ!!伝説の機体なんかなくたって、魔王は僕だけでも倒す!フィランの方がずっと大切だよ!!」
「ぇ、たいせ……」

 弾介の言葉に、フィランは面食らったように目を見開き頬を染めた。

(フィランとはまだ正々堂々とバトルした事ないし)
「……ふん、それ貸しなさい」
「へ?」

 フィランは弾介の手から伝説の機体を取った。

「どうするの?」
「このくらいなら直せるわよ。工具とか材料は持ってるでしょ」

「う、うん」

 弾介はキャリージュエルから工具類を取り出してフィランに渡した。
 フィランは手際良く作業し、機体を元通り修繕してしまった。

「まっ、こんなもんでしょ」
「凄い!元通りだ!」
「伝説だろうとなんだろうとフリックスには変わりないって事ね」
「やっぱりフィランを助けてよかった!ありがとう!!」
「ふん」

 ドゴオオオオオ!!!
 まるで見計ったかのように爆音が響き、煙の中から巨大なゴーレムが出現した。

「な、なんだぁ!?」
「見たところ、こいつが親玉って感じね」
「だったらぶっ倒して脱出してやる!いけっ、ドラグカリバー!!」

 弾介はドラグカリバーをアクチュアルモードにして巨大ゴーレム向けてシュートする。
 カキンッ!
 しかし、その攻撃は軽い音とともに弾かれてしまった。

「ぜ、全然効いてない……!」
「防御が硬いと言うより不思議な力で守られてるって感じね。って事はどこかに泣き所があるはず」

 ゴーレムをじっくりと観察する……までもなく、その胴体の中央に赤い玉を発見した。

「あそこを狙うぞ!ドラグカリバー!!」
「グオオオオオ!!」

 弱点と思われる場所に狙いを定めようとするが、ゴーレムは大暴れして隙がない。

「うわわ!くそ、全然狙えない!」
「なにやってのよもう……!」
「んなこと言ったって」

 その時、フィランの手にある伝説の機体が輝き出し、フィランの目の前に浮かび上がった。
 そして、アクチュアルモードを起動するための魔法陣も現れる。

「え、な、なにこれ?どう言うこと??」
「あれは、シエルの時と同じ……!フィラン!その機体をシュートするんだ!多分使いこなせるはず!」
「え、なに多分って!いい加減な事言わないでよ!」
「いいから早く!!」
「わ、分かったわよ」

 弾介の迫力に押されて、フィランは構えた。

「いっけぇ……ハンターフィーライン!!」
(え、なんで、あたし、機体名が頭に浮かんで)

 ハンターフィーラインと呼ばれたそのフリックスはまるで猫科の肉食獣の様に両腕を広げて突っ込み、ゴーレムの脚を捕捉した。

「拘束ギミック!?」

 脚を取られたゴーレムはそのまま胴体を晒したまま倒れてしまった。

「今よ弾介!」
「よし!」

 露わになった弱点めがけ、弾介はじっくり狙いを定めてシュートを放った。

「ドラグリーチスティンガー!!!」

 必殺の一撃はピンポイントにゴーレムに埋め込まれた赤い玉へ直撃し砕いた。
 すると、ゴーレムの体が砂のように崩れさった。

「やったぁ!!!」
「ふぅ、これで一安心ね」

 ゴーレムを倒した事で、ピラミッド全体が前のように静寂化した。
 親玉を倒した事で他のモンスターも機能停止したのだろう。
 こうなったらもう何も苦労することなく外に出る事が出来る。
 弾介とフィランは難なくピラミッドの外に出て、待機しているシエルと合流した。

「シエル、お待たせ」
「弾介さん!だ、大丈夫でしたか?」
「うん、どうにか!伝説のフリックスも手に入れたよ!」
「良かったです……それで、その機体は?」
「それが……」

 弾介はフィランへ目配せする。フィランは手に持ったハンターフィーラインをシエルに見せた。

「えぇ!?なんでフィランが伝説のフリックスを!?あ、そうか!スられたんですね!?取り返さないと」
「あーいや、そうじゃなくて……」

 フィランに対して身構えるシエルを弾介は止め、フィランはあっけらかんとした顔で言う。

「なんかあたし、選ばれたみたい。この機体に」
「はあああああ!?」

 フィランの言葉にシエルは自身の清楚キャラも忘れて素っ頓狂な声を上げた。

「そんな……せっかく伝説のフリックスを四つ見つけたのに、そのうち二つは敵の手に渡ってしまうなんて……」
「敵って何よ……」

 頭抱えて凹むシエルへフィランは呆れ顔になる。

「はぁ、別にいいわよ。あたしも協力したげる。その魔王討伐の旅に」
「ほ、ほんとですか!?それは助かります!!けど、どうして……?」
「別に、魔王討伐になんか興味はないんだけどね」

 フィランはさりげなく弾介へと近づく。

「???」
「あたし、弾介のこと好きになったから」
「は?」
「え?」

 フィランの告白に呆気に取られてるうちに、弾介の頬へフィランの唇が押し付けられた。

「!?!?」
「ええええええええ!!!!!!」

 再び、シエルの絶叫が響き渡った。

 

    つづく

 

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CM

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