弾突バトル!フリックス・アレイ 超X 第23話「良い子のフリックス教室開催!」

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第23話「良い子のフリックス教室開催!」

 

 とあるご家庭の食卓。
 つけっぱなしになっているテレビから賑やかな音楽が流れてきた。

『全国のフリッカーの皆〜!元気にしてますかぁ〜?フリックス・アレイのホットな情報を伝える、フリックスニュースの時間で〜す!
今週からは休職中のバトルフリッカーコウに代わりまして、アイドルフリッカーの保科メイがお送りしま〜す!
では早速このコーナー![集え!フリッカー祭り]』

 煌びやかな衣装に身を包んだメイがマイクを持ってセットの後ろにある大きなモニターを指差す。
 そこには今後のイベントの情報が映し出されていた。

『このコーナーでは、フリックスに関連する様々なイベントを紹介しちゃいまーす!
皆さんの待ち焦がれている公式のGFCサマー大会はまだまだ先ですが、それまでにも楽しそうなイベントが目白押しですよぉ〜!』

 モニターにイベントのチラシが映し出される。

『直近のイベントはこちら!なんとあのチャンピオンである段田バン主催のイベントです!その名も[良い子のフリックス体験教室]!初心者大歓迎で、機体製作やバトルについていろいろ学べちゃいます!更にお昼はお弁当がついて参加費はたったの1000円!実質的にお昼代のみで参加出来ちゃいます!これはお得ですねぇ〜!機体レンタルや量産機や製作用の材料の販売もしてるので、手ぶらで気軽にご参加ください!飛び入り参加も大歓迎!
実は、メイたんもチラッと遊びに行くかもなので、よろしくです〜!
場所は千葉グランドホテル大ホール、日時は……』

 ……。
 …。
 かくして、保科メイの宣伝協力を得ながらバン達の新しい企画は着々と準備が進められていた。
 そしてイベント前日、バン達は会場にて最後の段取りをしていた。

「資材の搬入、設営、人員の確保もOK」
「警備計画もこれで良いだろう」
「お父さんやお母さん、美寧姉ぇも明日に向けてお弁当の仕込み頑張ってます」
「クラスの皆にも声掛けて、明日は何人か手伝いに来てくれる事になりましたよ」
「サンキュー!……ふぅ、急ピッチだったけど、これで粗方の準備は出来たな」
 バンはホッとしたように一息ついた。
「なんとか間に合いそうですね」
「それにしても、ほんと良い場所抑えられましたよねぇ。こんな所で土日開催出来るなんて」
 会場である千葉グランドホテル大ホール内をグルっと眺めながら、翔也は感心した。
「さすがバンさん」
「ははは、まぁ琴井さんのツテなんだけどな。でもまぁ、こういうのは中途半端なとこじゃ人は来ないし。豪華絢爛にやらねぇと!」
「映えは大事ですからね!」
「ギリギリの告知だが、予約も着々と集まっているようだな」
「当日参加もあるだろうし、こりゃ忙しくなりそうだ」
「メイたんの宣伝のおかげですね」
「まさかバトルフリッカーコウの番組の後任になってると思わなかったけど」
「でも、俺達にとっては心強い広報力だよな」
 大人気アイドルである前に友人でもあるメイなら細かなニュアンスの希望を伝えたりなどとしやすく融通が利く。
「うん!このイベントを成功させればイクヲリティーが発売したってなんとかなるかも!」
「あぁ、あんなものに頼らなくても俺達の力で新規フリッカー達をどんどん育て上げれば良いんだ!」
「フリックスのスクールはハードル高いって人は多いけど、こういうイベントなら参加しやすいだろうしね!」
「イクヲリティーが初心者フリッカーの能力を底上げするガジェットなら、初心者達のレベルを上げてしまえば需要は減らせる……力業だが、理には叶っているな」
「だろ?我ながらナイスアイディアだと思うぜ!」
 バンは得意げに胸を張る。
「……ところでバン、このイベントって採算取れるの?」
 そこへ、リサがおずおずと口を開いた。
「へっ、そんなの当然……大赤字に決まってるぜ!」
 バンの返答に、リサは呆れてため息をついた。
「だと思った」
「ま、まぁ心配すんな。いざとなればまたアクチュアルでハンター業でもやって稼ぐからさ……!確か、南房総の方で行政から害生物駆除の依頼が増えてんだっけ?」
「またそうやって……バンもそんなに若くないんだからね」
「そ、それを言うなよ……!!」
「だが確かに、突発的なものなら慈善事業でも可能だが、こう言ったものは広範囲に定着化させなければ意味がない。そうなると、資金繰りは課題だな」
「まぁ、販売ブースもあるし、琴井さんの協力でスポンサーもついたし、しっかりやってきゃどうにでもなるさ。とにかく今は新規フリッカーを増やして育てるのが先決だ!」
「でも、これだけ話が広がってるとなるとセレスティアの耳にも届いてますよね……」
 達斗が心配そうに呟くと、翔也が答えた。
「なに、あいつらが妨害に来たらそれこそチャンスじゃないか!俺達で返り討ちにすればいい!」
「翔也の言う通りだ!セレスティアに俺達の力を見せつけてやろうぜ!!」
「「はい!!」」
 バンの言葉に達斗と翔也は強く頷いた。

 ……。
 …。
 そうして段田バンによる採算度外視の初心者向けイベントが開催された。
 会場内はいくつかのブースで分かれており、フルスクラッチ製作ブース、ミキシングビルド製作ブース、3Dプリンターブース、バトルブース、販売ブース、飲食ブース……それぞれに少ない時間でかき集めた人材がスタッフとして配備されている。
 初心者に向けたものなのでスタッフはエキスパートである必要がない。ズコウケイ三人組やスナ夫、ミハル、うすと、モブ太なども手伝いに来てくれている。……それなりのお駄賃は貰ったようだが。
 客層は様々で、600シリーズを買ったがそこからどう改造すればいいか悩んでいるもの、機体製作をしたいもの、自機は持っているがバトルでなかなか勝てないもの、全くの初心者なので体験してみたいもの……などなど。
 達斗たちは各ブースを回り、それぞれの望む方向性やレベルに合わせて指南して行った。

 その最中、達斗はバトルブースで沈んだ表情でポツンと一人ぼっちでいる少女が目についた。
 ショートヘアで白いシャツに赤いノースリーブジャケット、ボトムはスカートに見えたがキュロットのようだ。歳は達斗と同じか少し上くらいだろうか?中性的な見た目で、一瞬少年にも見える。
 楽しげな空間の中に一人入り込めず幸の薄そうな顔をして俯いている少女の姿に、達斗は以前の自分を重ねたのか何か放って置けなくなり声を掛けた。

「あ、こんにちは……もし、何かフリックスで悩んでる事や分からない事があったら僕らになんでも言ってくださいね」
 声を掛けられた少女はハッと目を見開きながらも、すぐに目を逸らした。
「は、はい、あ、ありがとう、ございます……」
 声は綺麗だが、コミニュケーションに慣れてないのか吃っている。
 それでも、何度も目を泳がせながらも思い切って口を開いた。
「あ、あの、わ、わたし、バトルで、全然勝てなくて、それで、あの……よかったら、教えて、欲しいです……強くなる、方法……」
 少女はしきりに指を弄りながら、辿々しく言葉を紡いだ。
 それを聞いて、達斗は快く頷いた。
「うん、もちろん!一緒に頑張ろう!僕は神田……」
「あ、じんだ、たつとさん、ですよね……もちろん、知ってます。スプリング大会や赤壁ユース大会見てました……」
「そうなんだ、ありがとう!君は……」
「わ、わたし、二俣シオンって言います……よろしく、お願いします」
「うん、よろしく!それじゃあ早速バトルしてみよう!二俣さんの機体は……」
「あ、あります!これです……ロデオカストル」
 シオンはケースから機体を取り出す。タイヤを装備した、まるで馬のような機体だ。
「機動型かぁ、タイヤ機体って難しいけど使い熟すと強いんだよね」
「わ、わたし、強いシュートとか撃てないなら、それで……」
「うん、分かった!機動型には機動型の戦い方があるから、一緒に練習しよう!」
「は、はい!」
 早速達斗とシオンはフィールドについてバトルする事にした。
 マインと機体をセットしてアクティブシュートの構えを取る。

「いくよ!」
「はい!」
 すると、シオンはおもむろにロデオカストルの後ろにあるスイッチを入れた。
 カチッ!
「(カチッ?)」
 シャアアアアア!!
 すると、モーター音と共にロデオカストルのタイヤが回転を始めた。
「で、電動!?」
「わ、私、シュート苦手なので……」
「あ、うん、珍しいな……でも……いや、とにかくやろう!」
 達斗はシュートを構え、シオンは回転するタイヤを浮かせた状態で機体を構えた。

「「3.2.1.アクティブシュート!!」」

「いけっ、ヴァーテックス!」
 バシュッ!
 達斗は普通にシュート。
「がんばれ、ロデオカストル!」
 シャアアアアア!!
 シオンはロデオカストルを手放し、接地したロデオカストルは電動の力で走り出した。

 フリックスのレギュレーションに収まるバッテリーとモーターでは大したパワーは出せず、人力シュートの方が圧倒的に強い。
 ガッ!!
 スプリントヴァーテックスの接触で向きを変えられたカストルはそのまま場外へ使って走り、アクティブアウト。
 しかも、地面についてからもさらに走り続けたせいで……。

「オーバーアクティブアウトだ……」
 距離を測るまでもなく一発撃沈だろう。
「あぁ、待って〜……!」
 シオンはトテトテと走って行くロデオカストルを追いかけた。

 どうにか機体を回収して、達斗とシオンは問題点を話し合う事にした。
「い、いつもこうなんです……」
 凹むシオンへ、達斗は気を使いながら言葉を選ぶ。
「う、うーん、まぁ電動で走りっぱなしだとどうしても自滅しちゃうよ。電源は切ってシュートした方が」
「で、でも、わたし、シュートは苦手で……」
「シュートにも色々種類があるし、力がなくても戦略次第で……」
「まぁまぁタツ」
 達斗が代替案を提示しようとしたところで後ろから翔也に声をかけられた。
「翔也、いつの間に」
 翔也は俯くシオンへ親しげに声を掛けた。
「シオン、って言ったっけ?電動機体、良いじゃん!これならシュートしなくても機体は動くしな!」
「で、でも、走りっぱなしだと自滅が……」
「へへへ、俺に任せとけって!ちょっと待ってな」
 そう言いながら、翔也はフィールドに手をかける。
 何処から持ち出したのかいろんな廃材を使ってフィールドに貼っていく。
「よし、出来た!」
 翔也の改造したフィールドは全周が楕円になるようにフェンスで囲まれており、フリップホールが追加されたフィールドだった。

「な、なにこのフィールド……!?」
「どうだ!これならきっとそのロデオカストルでも勝てるはずだぜ!」
「そ、そうでしょうか……?」
「モノは試しだ。みんなー!おもしれぇフィールド作ってみたからバトルしてみないかー?早いモノ勝ちだぜ!!」

 翔也が呼び掛けると早速ドッとフリッカー達が集まってバトルを始めた。

「うわ、なんだこのフィールド!?」
「自滅しないで思いっきり撃てるぞ!」
「でもフリップアウトが難しいなぁ」
「だったらマインヒットだ!」

 いつもと違うタイプのフィールドに戸惑いながらも皆攻略法を探して行く。
「さ、シオンもバトルしてきな!」
 翔也が背中を押す。
「は、はい……!」
 恐る恐るシオンもフリーバトルに参加しにいった。

「い、いけっ、ロデオカストル!!」
 シャアアアアア!!!
 電動で走るロデオカストルはフェンスにぶつかる事で自滅を免れる。しかも常に動いているのでフリップホールの上で停止する事がない。
「うわわ、なんだこの機体!?」
 防御中、常に動いているため相手も狙いを定められない。
「えっと、『シュート』、です!」
 そして攻撃は、常に動いているので直接手で触れなくても『シュート』と宣言をする事でそこから3秒間はシュート状態という扱いで攻撃判定が発生する。
 シオンは縦横無尽に動くロデオカストルの軌道を見極めて適切なタイミングでシュートを宣言して的確にダメージを与えて行く。
 そして、マインヒットやビートヒット、フリップホールによるフリップアウトを決めてついに……。

「やった、初めて勝てた……!」
 シオンは喜びに満ちた顔で機体を回収する。
 そんなシオンへ翔也はサムズアップした。
「くっそー、でもその機体の動きは分かったぞ!もう一回勝負だ!」
 負けた少年がリベンジを申し込むが。
「待てよ、順番だろ順番!次は俺!」
 次々とシオンへ挑戦したがる子達が群がった。
 戦う側としても電動で動きっぱなしの機体は面白いターゲットのように見えるのだろう。しかも強いとなれば攻略のしがいもある。

「よかったな、タツ。皆楽しそうだ」
 そんな盛り上がってる様子を眺めながら翔也は達斗に話しかけた。
「うん。でも、いいのかな、こんなイレギュラーなやり方で……公式大会じゃこんな都合良いフィールドなんて使わないだろうし、なんかズルしてるみたいっていうか」
 達斗は少し腑に落ちないようだ。
「細かい事気にすんなよ。公式大会だって特殊フィールドはよく出るし、電動機体が有利になるフィールドが使われる可能性だってゼロじゃ無いだろ?それに、アクチュアルバトルなら先にフィールドジェネレートすれば自分の得意なフィールドで戦えるし」
「まぁ、それもそうだろうけど……でも、シュートが苦手だからってどうしてそこまで電動に拘るんだろう?」
「そんなの簡単さ。ほら、シオンの手をよく見てみろ」
「え?」
 翔也に言われるまま、達斗はシオンの手を見てみた。爪が鮮やかに飾り付けられている。
「爪の色が、塗られてる」
「マニキュアな。しかも結構凝ってるし、派手にシュートしたら傷付いたり飾りが取れちゃうだろ」
「そうか、それでシュートの代わりに電動モーターで……」
「手でシュートしたくないならカタパルトランチャーって方法もあったけどさ。でも、シオンの目を見て思ったんだ、周りをよく見てるなって」
「え」
 そういえば、シオンは内気特有の仕草でよく目が泳いでた。でもそれは言い方を変えれば『周囲をよく観察している』と言う事でもある。
「ああ言う走りっぱなしの機体は直接干渉出来ない分、動きの変化をよく観察して時間内にいいタイミングで攻撃に切り替えなきゃいけない。って事は、普通のバトルよりもかなりの観察力が必要になる。シオンならそう言うバトルに向いてるって思ってさ」
「翔也……」
 おはじきバトルであるフリックスにおいてシュートを一切せずに電動で動かしっぱなしにすると言うのは肯定し難い非常識な行為だ。しかし翔也は、それをあっさりと認めた上に会って間もないシオンの得意分野だと見抜いたのだ。
「シュート出来なきゃ勝てなくなるほど、フリックスバトルは不自由なもんじゃないぜ!」
「凄いな、翔也は……僕なんか、全然気付かなかった……!」
「まぁな!でも、あの子に気付いたのはタツだろ?俺は見逃すとこだった」
「え」
「今回のイベントは減点方式で考えた方がいい。100人に楽しんでもらえるプラス以上に、楽しんでもらえなかった1人によるマイナスの方がデカい。初心者の印象ってのは一生引き摺るからな」
 今回の目的は新規ユーザーの獲得と育成をして、今後発売するであろうイクヲリティーへの需要を下げるためだ。
 初心者や新規ユーザーがコンテンツに対して抱くマイナス印象は、ベテランユーザーが抱くマイナス印象よりも感情を占める割合が大きくなり今後に大きく響く事になる。
 楽しんでいるユーザーをさらに楽しませる事以上に、楽しめていないユーザーを出さない事の方が大事なのだ。
「確かに……!」
 ガッシャーン!
 と、その時、派手な音と共に歓声が聞こえる。
「おっしゃー!俺の勝ち!!」
「すげー!あのボス機体に勝った!!」
「あ、あぁ、負けちゃった……!」
 連勝を続けていたシオンだが、ついに挑戦者に敗北したようだ。……いつの間にかボス扱いされていたようだが、これは勝ち抜き戦フリーバトルあるあるなノリだろう。
 達斗と翔也が見に行くと、ロデオカストルがフリップホールの上に停止していた。

「さすがにバッテリー切れか」
「え、えへへ、ちょっと調子に乗っちゃいました」
 照れ笑いしながら、シオンは機体のバッテリーを替える。どうやら単四電池のようだ。
「で、でもありがとうございます!お、お二人のおかげで、す、凄く、楽しいです!」
 詰まり詰まりになりながらも、シオンは満面の笑みでお礼を言った。
「いやそんな、こっちこそ良かったよ!」
「へへへ、楽しんでもらえて何よりだ!そう言えばそのマニキュア、綺麗だよな。良く似合ってる」
 こう言う事を臆面もなく言えちゃうのがさすが翔也だ。
「あ、はい、ありがとう、ございます……これ、弟がしてくれたんです……わ、わたし、地味で自信ないから……じ、自分の目に見える場所を、オシャレすれば、自信が出るんじゃないか、って……」
「そっか、いい弟さんだな」
「……はい」
 翔也の言葉に対して、シオンの声は沈んだ。それを察した翔也は話題を変える。
「そうだタツ、せっかくだからシオンとバトルしてみろよ。さっきのバトルのやり直しって事で」
「え、う、うん……そうだね!ロデオカストルがどれだけ強くなったか、僕も試してみたい!」
「は、はい!是非お願いします!」
「そうだシオン。バトル中でもバッテリー交換出来るように、フリップスペルは『ピットイン』を搭載してた方がいいかも」
 翔也がアドバイスし、スペルプレートを渡す。単四電池なら一本11g程度なのでピットインでの交換は可能だ。
「は、はい、ありがとうございます!」

 二人は再び順番待ちをしてからフィールドに着いた。
 勝ち抜き戦でボス扱いされたシオンと達斗とのバトルと言う事で周りにはギャラリーが集まっている。

「よし、いくぞ!」
「はい!」
 二人は準備を終えて機体を構える。

「「3.2.1.アクティブシュート!!」」

「いけぇ!スプリントヴァーテックス!!」
 バシュッ!
「いけ、ロデオカストル!」
 シャアアアアア!!!

 ヴァーテックスはシュートし、ロデオカストルは走り出す。
 ヴァーテックスの停止した位置とロデオカストルが走り出してから3秒後の位置で距離を比べて先攻を決める。
 先攻は達斗だ。フェンスがあるおかげで遠慮なく奥まで機体を進められた。

「相手は動きっぱなしだから早く狙いを定めないと……!」
 速度はそこまで速く無いが、動き続ける機体を狙うのは難しい……!どうにか良いタイミングはないものか……。
 カスッ!
 タイミングを見計らっていたら、ロデオカストルがマインに擦った。
「今だ!!」
 バシュッ、ガッ!
 ロデオカストルにヴァーテックスがヒット!しかし、ロデオカストルは既にマインに触れていたのでマインヒット扱いとなる。
 シオンHP12。
「そ、それなら……ここで『シュート』です!」
 シオンも良いタイミングでシュートを宣言。
「避けろ!スプリントヴァーテックス!」
 達斗はステップで身を翻そうとするが、シャーシにグリップを取り付けているヴァーテックスではせいぜい向きを変えるのが精一杯で躱しきれずにマインヒットする。
 達斗HP12。
「やるなぁ……!」
 次の達斗のターンはなかなかロデオカストルがマインの近くに行かず、仕方なく達斗はビートヒットを決めた。
 シオンHP11。
「ここです!『シュート』」
 続くシオンのターンは再びマインヒットを決める。
 達斗HP9。
「負けるもんか!」
 バシュッ!!
 今度は気合でマインヒットを決めた。
 シオンHP8。
「お、お願いします、ロデオカストル……『シュート』!」
 再び良いタイミングでマインヒットする。
 達斗HP6。
「こ、このままじゃジリ貧だ……どうすれば……!」
 バシュッ!
 焦りながらシュートするが……。
「げっ!」
 ミスってしまい、スプリントヴァーテックスはフリップホールの上で停止してしまった。自滅だ。
 達斗HP4。

 仕切り直しアクティブ。
「「3.2.1.アクティブシュート!」」

 バシュッ!
 シャアアアアア!!!

 再び達斗が先攻。
「あの動き、どうにかしないと……!でも、フリップアウトは出来ないし……そうだ!」
 達斗は姿勢を低くしてスプリントヴァーテックスと目線を合わせてロデオカストルの動きを注視する。
 ポゥ……!
 すると、何も無い空間に光の点が見えた。恐らく、そこがロデオカストルが通過する点……!

「あの技をやるか、タツ……!でも、このフィールドじゃ簡単にフリップアウト出来ないぜ」
 翔也も達斗の狙いを察した。

「いっけえええ!!フラッシングクエーサー!!!」
 バシュウウウウウ!!!
 達斗の必殺シュート!ヴァーテックスに備えられた照準に合わせてシュートする事で的確に敵機の弱点を突く大技だ!

 バキィィィ!!!
 ヴァーテックスのフロントが見事にロデオカストルへヒットし、ロデオカストルは大きく吹っ飛ばされてフェンスに叩きつけられる。
「っ!で、でも、フリップアウトは出来ないはず……あっ!」
 確かに、これだけの攻撃を受けても場外は出来なかった。しかし……!
 コテンッ!
 壁にぶつかった衝撃でロデオカストルは転倒してしまった。
 シャアア……!
 タイヤが虚しく空回りする。
「そうか、スタンかっ!」
 翔也が叫ぶ。
「これで動きを封じたぞ!」
 動きを封じてしまえばあとは簡単だ。
 達斗は軽くシュートして攻撃。ロデオカストルをフリップホールの上に停止させた。
 シオンHP1。

 再度仕切り直しアクティブシュートをして、達斗が先攻を取る。

「いけっ!」
 バッテリーも弱まって速度の落ちたロデオカストルを難なくビートヒットして撃沈。達斗の勝利となった。

「ふぅ、勝てたぁ……」
 達斗はヴァーテックスを回収して一息付いた。
「さ、さすがです、たつとさん……お、お見事でした!」
「いやぁ、でもギリギリだったよ。負けるかと思った」
 達斗とシオンは固く握手をした。

「やったな、タツ!」
「うん、なんとか勝てたよ」
「じゃなくて、ほら」
 翔也が周りを親指で指す。
 二人の熱いバトルに歓声が湧き上がっており、会場の熱気は急上昇していた。
「このイベント、一日目は大成功になりそうだな」
「うん!」
 達斗は大きく頷いた。
「あ、あの、たつとさんにしょうやさん!今日は、ありがとうございました!おかげで、楽しかったです……!また明日も、よろしくお願いします!」
 シオンは硬くなりながらも感謝を言葉にして何度も頭を下げる。
「うん、こちらこそ!」
「次は俺ともやろうぜ!」
「はい!では、失礼します……!」
 シオンはまたも何度も頭を下げながらそそくさと帰り支度をして去っていった。
 それからも、特に問題が起きることはなくイベントは大盛況のままつつが無く進んで行った。

 ……。
 …。
 会場の外で、一人の中性的な少年が冷めた目で立っている。
「スプリントヴァーテックスに、神田達斗か……大した事なさそうだな」
 その少年は手に黒いグローブをはめ、白いシャツに青いノースリーブのジャケットを着ている。
「……別に恨みはないけど、プロフェッサーFの命令だ。潰させてもらうよ」

 そんな物騒な事を呟いていた。

 

    つづく

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