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オリジナルビーダマン物語 第6話

爆砕ショット!ビースピリッツ!!

第6話「打倒ヒンメルへの資格!」

 

 仲良しファイトクラブ。
クラブリーダーとして町内会に出席していたタケルは、新しい大会情報を仕入れて帰って来た。
しかも、その大会に出れば、ヒンメルと戦えると言う。
しかし、シュウは大会に出ないと言う……!

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オリジナルビーダマン物語 第5話

爆砕ショット!ビースピリッツ!!

第5話「卑劣!ブレーキ・オランギル!!」

 とある朝の爆球小学校。
「おはよう~!」
シュウが欠伸を噛みしめながら、教室に入ると転校初日で仲良くなった田村と吉川が絡んできた。
「おうおう竜崎!聞いたぜ、お前仲良しファイトクラブに入会したんだって?!」
「ん、まぁな」
眠気のせいで二人のテンションに合わせられず、目をこすりつつ生返事する。
「あんなショボくれたクラブに入るなんて、お前も酔狂だなぁ。あ、あれか?守野先輩に脅されたとか?」
田村と吉川がシュウの身の危険を案じるように言うので、シュウは慌ててフォローした。
「そんなんじゃねぇよ。確かに寂れてるし、名前もアレだけど……でも、メンバーはめっちゃ強いし設備もしっかりしてるからさ」
「そうかもしれないけど……」
シュウのフォローを聞いても、イマイチ腑に落ちない様子である。
「それにやっぱ、ヒンメルにリベンジするためにはどっかに所属しないとな!」
シュウの言葉に二人は目を丸くする。
「お前っ、やっぱあれマジだったんだ」
「ヒンメルと再戦する気なのか……!?」
なんだか必要以上に驚愕している二人を疑問に思いながらも、シュウは答える。
「ったり前だろ~!今度戦う時は絶対に負けねぇ!!」
「でも、それはマジでヤバいって!」
「なんでだよ、世界チャンピオンだからってビビる事はねぇ!ようはちょっと強いだけで、同じビーダーだ!」
「同じ、じゃないかもしれないんだよ……」
田村が、ちょっと口ごもる。
「へ?」
「これは、あくまで噂なんだけどな。いや、噂というのもおこがましい、都市伝説のレベルだ」
「なんだよ、良いから言ってくれよ?」
シュウが急かすと、田村は言いづらそうに口を開く。
「ヒンメルと戦うのは、危険かもしれないんだ」
「は……?」
田村の言葉に、シュウはキョトンとする。意味がわからないようだ。
「だから、普段ヒンメルは、かなり力を抑えている。でも本気になった時の力は凄まじく、対戦相手どころか周りのすべてを滅ぼしてしまうらしい」
「一度それで、都市一つを壊滅させたとか、させなかったとか……」
「……」
田村と吉川が教えてくれたヒンメルの情報を聞き、シュウは神妙な顔つきになる。
「ヒンメルが…」
「うん」
「ビーダマンで…」
「うん、うん」
「都市一つ壊滅させた……」
「うん、うん、うん」
「……」
あまりの恐怖の真実に、シュウはうつむいた。よく見ると、小刻みに体が震えている。
「シュウ……」
田村は、やはり言うべきではなかったかと後悔し、シュウの肩に手を置こうとする……。
「くくく……」
が、その瞬間シュウの口から笑いが漏れ出した。
「だーーっはっはっは!!なんだその話~!!ばっからしいい~!!!」
「シュ、シュウ……」
あまりに可笑しかったのか、シュウは腹を抱えて地面に転がる。
「だってさぁ、ビーダマンで都市一つ壊滅とか、どんだけ超人だよ!アニメの世界じゃねぇんだからさ~!!」
転がりながら、地面をバンバンと叩く。よほどツボったらしい。
「そ、そりゃあくまで都市伝説だから、誇張表現はしてるだろうけど」
「火の無い所に煙は立たないっていうだろ」
この反応は予想してなかったのか、二人はちょっとうろたえて弁解する。
さすがにバカにしすぎた事を感じたシュウは、ゆっくりと立ち上がった。
「あのさぁ、俺一回ヒンメルとバトルしてるんだぜ~?でも俺この通りピンピンしてるぜ!
そりゃ、あいつも完璧本気じゃなかっただろうけど、それでも本気出したからってそこまではないだろう~!」
「まぁ、信じる、信じないは勝手だけどさ……」
「とにかく、俺は大丈夫だって!クラブでガシガシ力つけて、大会でヒンメルをぶっ倒してやるぜ、なっはっはっは!」
余裕で高笑いするシュウに、田村と吉川は顔を見合わせることしかできなかった。
「それにしても……ぷっ、くくく……!あははは……!」
やっぱり我慢できなくなったのか、腹を抱え、しゃがみこんで笑いだした。
「ひーーー!ひーーー!腹いてぇぇぇ!!!!」
その時、しゃがみこんだシュウに覆いかぶざるような巨大な影が現れた。
「ほぅ…腹痛なら、保健室に行くか、竜崎?」
影から震えるような声が発せられる。
「あ……」
ビクッとして笑いを止めて見上げると、そこには担任の先生がこめかみをヒクヒクさせながら立っていた。
「もうHRは始まってる時間なんだがなぁ」
周りを見ると、いつの間にか田村も吉川も席についていた。
(う、裏切り者め……!)
シュウは慌てて立ち上がる。
「やべっ、ごめんなさい!腹痛くないです!怒った先生に怒鳴られる前に席につきます!!」
先生の口が開くよりも先に早口でそうつげて足早に自分の席についたのだった。

 そして放課後。
 シュウはHRが終わると同時に学校を飛び出し、仲良しファイトクラブへと足を運んだ。
「こんちゃーっす!」
 勢い良くクラブの扉を開ける。
「あ、シュウ」
 中には、いつものようにラフな服装をした琴音がいた。備え付けのベンチに座って、グルムの手入れをしているようだ。
「あれ、ことねぇ一人?タケルは……?」
  いつもだったら、むしろ琴音の方が留守でタケルが一人で練習してる印象なのだが、今日は逆にタケルが見当たらずに琴音がいる。
「タケルは町内会の集まりで、いま公民館に行ってるの。それであたしが留守番。あんた、まだクラブの鍵持ってないでしょ?」
 琴音はポッケから銀色に光る鍵を取り出すと、指でクルクル回して見せた。
「あ、そういえば」
 クラブに誰もいないとなると鍵をかけざるを得ない。しかし、そうなるとシュウがクラブに入れなくなる。そこで琴音が留守番を頼まれたと言う事だ。
「ハイ、これ合鍵」
「お、おう……」
「それじゃ、あたしはこれで」
 無造作に鍵を渡され、キョトンとしているシュウを置いて琴音はとっとと出ていこうとする。
「って、どこ行くんだよ?!」
 シュウは、慌てて琴音の背中に疑問を投げかける。
「どこって、どこでもいいでしょ?」
 琴音は振り返って、しれっとした顔で言う。
「いや、クラブ活動しないのかよ!?」
「あたし、これから一人でデートなのよ」
「あ、そっかヒトデーか。じゃあしょうがないな」
「そういうわけだから、これで」
 片手を上げて、シレッした態度でシュウの横をすり抜けていこうとする。
「って、ちょっと待て!嘘だろそれ!?」
 シュウが琴音の背中に向かってツッコミを入れると、琴音は振り返ってバツの悪そうに笑った。
「バレたか」
「そりゃその格好見ればバレるわ!どう見ても、運動用の格好じゃんか。それに俺がここに来る前にことねぇは、グルムの手入れをしていた。ヒトデーするんならビーダマンより自分の手入れをするべきだ」
 シュウは、右手をアゴに添えて名探偵バリの推理を披露した。
「おぉ~すごいねぇ、シュウ!なんか名探偵バカヤロウみたい!!」
 名探偵バカヤロウとは、10年以上続いている推理ものの長寿アニメだ。主人公のメガネ少年の口癖が『バカヤロウ』なのが特徴。
「え、いやぁ~。実は子供の頃、ワトソン君に憧れてた時期があってさ~」
「あぁ、誰でも一度はそういう時期ってあるよね~!」
「そうそう、カッコイイもんなぁワトソン君……って話逸すんじゃねぇ!!なんでわざわざ嘘ついてまで外出ようとするんだよ。なんか言えない用事でもあるのか?」
「そういうわけじゃないけど。あたし、クラブで練習するより外で練習した方が好きなんだよね。昔からそうだったし」
「えぇ?!こんなに設備揃ってるのに、外のがいいの!?なんで??」
 初めて仲良しファイトクラブに入ったとき、その設備の充実さに感動したシュウとしては納得がいかないらしい。
 確かに、バトルするなら外の方が楽しくて気持ちいいけど、練習する分には設備が揃っているこの練習場の方が効率が良さそうなのだが。
「特に理由はないよ。言ったでしょ、昔からそうだったからってだけ」
 昔から……その言葉がなんとなく気になった。
 琴音は、前々からこのクラブにいるような感じだ。しかし、昔からクラブで練習してないって事は、最近クラブに入ったって方が自然な感じがする。
 ずっとクラブにいるのに、その設備を使わないのは少々もったいないし。
「ことねぇって、いつから……」
 シュウがその疑問を口にしようとした時、クラブの扉が勢い良く開いた。
「たのもーーーー!!!じゃん!!」
 突然の出来事にビクッとした二人がその扉の方に視線を向けると、そこにいたのはパンクファッションでエアギターのポーズをした少年だった。
「「……」」
 ちょっと予想外な訪問者に一瞬思考停止する二人だったが、我に帰った琴音が遠慮がちに話しかける。
「えっと、あなた誰?うちのクラブに何か用でも……?」
「じゃんじゃんじゃじゃーーーん!!!」
「っ!?」
 質問に、エアギターで答える少年に、琴音は体をこわばらせる。
「オレっちは、ジャンジャンじゃーーん!道場破りに来たんじゃーーん!!」
 奇抜な格好、奇抜な言動の少年が発した答えは、聞き捨てならないものだった。
「道場破り?!」
 目の前の人間が戦う相手だと認識したシュウは、気持ちを戦闘モードに切り替えて身構えた。
「おもしれぇ!道場破りなんて生まれて初めて遭遇した!!やっぱクラブに入ってよかったぁ!」
「って、何面白がってんのよ?!そんな場合じゃないでしょ!?」
「分かってるって!ようは、返り討ちにすればいいんだよ!」
「全く……」
 琴音はノー天気なシュウに対してため息をつくと、じゃんじゃん言ってる少年に向き直った。
「あ~、悪いんだけど。今、ウチのリーダー留守にしてるから。また今度にしてくれない?」
「じゃじゃん!?それは、本当なのかじゃん!?」
 大袈裟に驚きショックを受けたパンク少年は、エアギターを地面に落としてしまった。エアだけど
「そ、ごめんね」
 琴音は、少年の傷心にはお構いなしに、素っ気なくシッシッという風に手で払う仕草をした。
「って、断るのかよ!?」
 琴音の対応を見て、シュウは二人の間に割って入る。
「だって、こんな面倒そうな奴。イチイチ相手にすることないでしょ」
「冗談じゃねぇ!挑戦されたってのに逃げられるかよ!!」
「タケルがいない間にこんな奴と関わって、もしクラブで何か問題起きたら、あんた責任取れる?」
「そ、それは……ええい!勝ちゃ良いんだよ!勝ちゃぁ!!」
 そんな二人のやりとりを聞いてないのか、パンク少年は不服そうな顔で帰り支度をしていた。
「それじゃあ、また今度にするじゃん!それまでせいぜい首を磨いて待ってるじゃん!!」
 踵を返して今にも扉に向かって歩きそうなパンク少年を、シュウが慌てて制止する。
「あああ!待った待った!お前の挑戦受けるぜ!!」
「ちょっ!」
「じゃん!?」
 シュウの言葉を聞いて、パンク少年は嬉々として振り返った。
「そ、それは本当じゃん?」
「ああ!挑戦してきた相手から逃げるなんて男じゃねぇからな!」
「なるほど!と言うことはつまり、あそこにいる女は男失格という事かじゃん?」
 パンク少年が、琴音を指さす。
「そうだな、ことねぇは女だからな!」
「納得じゃん!!」
 会話が謎すぎる……。
「はぁ……もう勝手にしなさいよ。あたしは知らないからね」
 と言いつつ、ベンチに座る琴音。外に出る予定だったが、こうなった以上は成行きを見守る必要があると思ったのだろう。
 そんなわけで、シュウとパンク少年のバトルが成立した。
「よっしゃ、バトルだ!……えっと、まだ名前聞いてなかったな。俺はシュウ!お前は?」
「さっき名乗ったじゃん?」
「え?うそぉ!?」
「名乗ったじゃん!」
「そっか……悪い、覚えてないんだ。もっかい言ってくれ」
「ジャンジャンじゃーーん!」
 少年は気を悪くしたのか、名前を言ってくれない。
「だから、悪かったから!名前教えてくれよ」
「だから、ジャン・ジャンじゃん!!」
「……」
 何度名前を聞いても、じゃんじゃんとしか答えてくれない。
 しかし、シュウは気づいた。
「もしかして、『ジャンジャンじゃん』ってのが名前なの?」
「違うじゃん」
「違うのか……」
「『ジャン・ジャン』が名前じゃん!」
「あぁもう……!」
 じれったい。
「苗字がジャンで名前がジャンなのじゃん!」
「な、なるほど……」
 深く追求するとめんどくさそうだから、納得しておいた。
「と、とにかくルールを決めよう……えっと……」
「あそこに丁度いいリングがあるんだから、シャドウヒットバトルにするじゃん!」
 ジャンは目ざとくクラブに設置してあるリングに目をつけて指差す。
「え、あぁ。俺も好きなルールだからな。いいぜ!」
(にやり、じゃん)
 ルールが決まった途端、ジャンは口元に笑みを浮かべたのだが、シュウはそれに気付かなかった。
 お互いにバトルのためにビーダマンを準備する。
「お前のビーダマン変わってるなぁ~」
 ジャンの取り出したビーダマンは見た事ないものだった。
「ブレーキ・オランギル!オレっちのイカしたオリジナルビーダマンじゃん!」
「へぇ~、面白そうじゃん!」
「マネするなじゃん!」
「してねぇよ!」
「あ~、はいはい。いいから始めるわよ」
足に紙風船を括り付け、二人はリングに上がった。
そして、対角線上の角に行って対峙する。
「それじゃ、バトルを始めるわよ。準備はいい?」
琴音がレフェリーを務めるようだ。
「ああ、いいぜ」
「じゃん!」
二人とも準備はOKだ。
「レディ・ビーファイト!」
琴音の合図とともに二人が動き出す。
「いっけぇ!!」
まずはシュウが先手とばかりにパワーショットを放つ。
「おおっと!」
が、ジャンが間一髪でそれをかわす。
「なかなかパワーは強いようじゃん!だったら、オレっちのショットを受けてみるじゃん!」
ギシギシギシ……!
ジャンが、機体が軋むほどの力でホールドパーツをシメつける。
「あ、あんなにシメ付けて……!きっと、凄いパワーショットがくるに違いないぞ!?」
身構えるシュウ。しかし……
「うりゃああああ!じゃん!!」
ポコンッ!
オランギルから発射されたショットは、パワーショットとは程遠い、弱ショットだった。
「おろっ?」
ヒョロヒョロと飛んできたオランギルのショットが、ポテッと地面に落ちる。
「……なんじゃこりゃ、よえぇぇ~!あんだけシメ付けといてそれかよ~!!」
拍子抜けしたと同時に、シュウは落ちたビー玉を指差して笑い出した。
「シュウ!油断しないで!!」
外からの琴音の言葉にハッとして、ジャンを見る。
ジャンは次のショットの構えに入っていた。
「あいつ、今度はノーマルショットか。シメ撃ちであの程度なんだから、今度は……」
ドンッ!!
しかし、ノーマルショットにも関わらずさっきのシメ撃ちとは違い、普通に威力のあるショットが発射された。
「なにっ!」
油断してたから多少反応が遅れたが、なんとか撃ち落とす。
「な、なんだよ、なんで同じ機体なのにこんなに威力が違うんだ……?」
「まだまだ行くじゃん!」
ジャンが今度は機体をシメ始めた。
「シメ撃ち……って事は、弱いショットが来るのか?」
ドンッ!!
放たれたショットは、シメ撃ちとしてふさわしいパワーショットだった。
「うわわわ!!」
慌ててそのショットを転がりながらよけていくシュウ。
「く、くそぉ……!」
「ぷくく、まだまだオランギルの力の半分も見せてないのに、情けないじゃん!」
「な、なんだとぉ!ふざけやがって…確かにちょっとびっくりしたけど、パワーならこっちの方が上なんだ!喰らえ!!」
ドンッ!!
シュウがパワーショットを発射する。
「よければどうって事ないじゃん!」
「くっそぅ、チョコマカと!!」
逃げ回りだしたジャンをシュウはパワーショットを撃ちながら追いかけ回す。
「単純な奴じゃん!このまま決めるじゃん!!」
「ふざけるなぁ!!」
「ふふふ……じゃん!」
ジャンは不敵に笑ったかと思うと、トントンと足踏みした。
「スキあり!」
そこを、狙いうとうとするシュウだが、ジャンは素早く移動する。
「鬼さんこちら~、じゃん!」
「待ちやがれぇ!!」
ジャンの挑発に乗って、追いかけるシュウ。
そして、さっきまでジャンが立っていた場所に行った瞬間……!
ズルッ!!
「うわっ!!」
ズデーーーン!!
ど派手にすっころんでしまった。
「いってててて……!」
「さて、スキありじゃん」
「げぇ!」
慌てて立ち上がろうとするシュウだが、ジャンのショットの方が早かった。
バーーーン!!
シュウの紙風船が割られてしまった。
「くそっ、負けた……」
シュウはがっくりと項垂れて、リングを降りる。
「ぷくく、オレっちのオランギルは最強じゃん!」
「くっそー!あんなふざけた野郎に負けるなんてえええええ!!!」
悔しさを抑えきれず、頭を抱えて喚く。
「ま、実力の差って奴じゃん!!じゃじゃじゃじゃじゃーーーん!」
ジャンは、エアギターで勝利のファンファーレを鳴らす。エアだけど。
「アホくさ……」
琴音はその様子を、奥のベンチで頬杖付きながら、つまらなそうに眺めていた。
「さてと……それじゃあ、このクラブの看板はいただいていくじゃん!」
「えっ?!」
いきなりのジャンの発言にシュウは面食らう。
「ちょっ!」
さすがに琴音も、この言葉は聞き捨てならなかった。
「ま、まてよ!看板取るなんて、聞いてねぇぞ!?」
「何驚いてるじゃん?最初に道場破りって言ったじゃん。オレっちが勝ったからには、道場を破らせてもらうじゃん!」
「そりゃ、そうだけど……!」
「じゃ、文句ないじゃん」
「ぐぐ……!」
負けた身として、シュウは返す言葉もない。
「待ちなさいよ」
見かねた琴音が、ベンチから立ち上がってこちらにやってきた。
「何かじゃん?」
「シュウはまだこのクラブに入ってまもない新人なの。そんな新人一人に勝ったくらいでクラブを破ったと思わないで欲しいわね」
「ほぅ、じゃあ他に強い奴がいると?」
「あたしがやるわ。少なくとも、シュウよりも大先輩よ」
「面白い!コテンパンにやっつけてやるじゃん!!ちょっとメンテしたいから、5分後に同じルールで勝負じゃん!」
「OK」
それだけ言うと、ジャンはちょっと離れて機体のメンテを始めた。
「ちょっ、大丈夫なのかよことねぇ!お前俺に勝った事無いのに……!」
琴音は、シュウに一度も勝った事がない。そんな琴音がシュウに勝ったジャンに勝てるわけがないのだ。
「はぁ……あんた、実力であいつに負けたと思ってる?」
「へ?」
「あんたは、ハメられたのよ。あいつの卑怯な手に」
「卑怯な、手……?」
「あいつのビーダマンのコアについている爪。アレはダミーの爪よ、シメればシメるほど、ビー玉にブレーキをかけるの」
「あ、そういえば、それでシメ撃ちしたのにスピードが遅かったのか!」
「そうやって相手を油断させて、相手のペースを崩す。それがあいつのやり方」
「うぐぐぐ……セコイ奴だなぁ……!」
「あとそれから」
琴音は、リングに近づくと、シュウが転んだ場所の路面を指で触れた。
そして、その指をシュウの鼻先に近づける。
「これ、嗅いでみて」
「へ?」
いわれるままに、シュウは琴音の指を嗅いだ。
「クンクン……香ばしい。って、これごま油の匂い!?」
「そ、多分あいつ。靴の底にごま油をセットしてたのね。それで、シュウを挑発して追いかけっこさせて、転ばせたと」
「なんじゃそりゃああああ!!」
「本来だったら、ビーダーとしての腕も力も、シュウの方が上。だけど、こんな簡単な手にひっかかってるようじゃ、まだまだね」
「……くそ」
シュウは再びがっくりと項垂れた。

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オリジナルビーダマン物語 第4話

 

爆砕ショット!ビースピリッツ!!

第4話「佐倉姉妹!天才メカニックと瞬速の狼」

 タケルとの激闘の末、シュウは仲良しファイトクラブへの入会を許可された。
しかし、連戦続きのブレイグはボロボロになっていた。

仲良しファイトクラブ。
タケルが、ブレイグを不憫に思いながら言う。
「とりあえず、お前のブレイグ修理しないとな」
「そ、そうだ。俺、結局ブレイグを直せなくて……」
「安心しろ。クラブ専属のメカニックを紹介してやる。そのくらいの故障ならすぐに直してくれるはずだぜ!」
タケルがポンと胸を叩く。
「メカニック……?」
「あぁ。とりあえず、今日の所はもう遅い。明日の放課後ここに来てくれ。そしたらラボに案内してやるから」
「分かった!」
と言うわけで、今日のところはお開きになった。

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オリジナルビーダマン物語 第3話

爆砕ショット!ビースピリッツ

第3話『愛機への想い ストライクブレイグVSシフトレックス』

「お前は、うちのチームに必要無い」
 淡々とそう告げると、タケルは踵を返してしまった。
「え、ええええええええ!!!」
 シュウは慌ててタケルを追いかけて、肩を掴む。
「ちょ、待ってよ!いきなりなんだよ?!」
 タケルはシュウの手を払い、ゆっくり振り返る。
「さっき言ったとおりだ。悪いが、お引き取り願う」
 そう言って、再び踵を返す。
「俺が、さっき負けたからか……弱いから、いらないってのかよ……!」
 拳を握り締めてタケルを睨みつける。
「……」
 しかし、タケルは何も応えない。
「さっきのバトルは俺の本気じゃない!お前だって分かってるだろ!?ブレイグがあそこで壊れなけりゃ……!」
「そういう事じゃねぇ!!!」
 突然、タケルが怒鳴り、シュウの胸倉を掴んだ。
「っ!?」
「お前の戦い方。セッティング。あれはなんだ?」
「なに……って……」

「パワータイプのビーダマンにハイパワーパックを装着して、お前はただ力任せに撃つだけ。
しかも、そんな明らかに負担が掛かるような事をしておきながら、機体の破損にも気付かなかった!」
「それは……」
 正論なので言い返せない。
 返事に窮していると、タケルは更に続ける。
「ちょっと強い奴と戦えて目標が出来たからって、少し調子に乗りすぎてるんじゃないか?
ビーダマンバトルは、ビーダーだけで戦ってるわけじゃない。ビーダーと、ビーダマンが一緒になって戦うものなんだ」
「だ、だけど、俺だってわざとじゃ……!」
 言い訳の隙を与えずにタケルはさらに畳み掛ける。
「それに、バトルは相手がいるから初めて出来るんだ。なのにお前は、対戦相手である俺の事を全く見ちゃいなかった!俺と戦いながら、ヒンメルしか見えていなかった!!」
「っ!!」
 それが、シュウにとって一番の図星だった。
「それがどれだけ失礼な事か。バトルを侮辱しているか!俺を侮辱しているか!ブレイグを侮辱しているか!ヒンメルを侮辱しているか!分かってるのか!?」
「ぐ……!」
 シュウは思わずタケルから目をそらす。
「そんな基本的な事も分からない奴が、俺は一番嫌いなんだよ!!」
「あ……」
 タケルに言われて、シュウは今度こそ言葉を完全に失ってしまった。
 俯いたまま、ただ拳を握らせる事しか出来ない。
「練習の邪魔だ。帰ってくれ」
 タケルは、さっきの怒声とは裏腹に、穏かにそう告げる。
「……」
 シュウは、言われるままにクラブを出て行った。

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オリジナルビーダマン物語 第2話

爆砕ショット!ビースピリッツ

第2話「入会!仲良しファイトクラブ」

「世界チャンピオンのヒンメル!!道を教えて欲しかったら、この俺に勝ってみせろ!!」
 シュウは、偶然道を訪ねてきた世界チャンピオンに対し、ブレイグを突きつけて啖呵を切った。

「……」
「……」

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オリジナルビーダマン物語 第1話

 爆砕ショット!ビースピリッツ!!
 
 
第1話「ビー・ファイト!」
 
 
「いけぇ!ストライクブレイグ!!」
 ドギューーーン!!!
 ストライクブレイグと呼ばれたビーダマンから強力なパワーショットが放たれ、相手のビーダマンに直撃する。
 「おっしゃあ!勝ったぜ!!」
 ブレイグを持った少年は、ガッツポーズを決めた。
 とある町のとあるデパートの屋上では、卓球台くらいの大きさの台がいくつも設置してあり、そのうちの一つの台の両端で二人の少年が対峙していた。
 そして、その周りを、老若男女、さまざまな人達が歓声を上げながら、見守るように集まっている。
 
 『さぁ、盛り上がってまいりました!!ビーダマンバトル大会波木町ナンバーワン決定戦も、いよいよクライマックス!!』
 
 フィールドのすぐ横にあるステージの上には、煌びやかな衣装を着た男がマイクを持って叫んでいる。
 その声に呼応するように、周りの人々の歓声も大きくなる。
 『勝ちあがったのは、前回の準優勝者、早川ハヤミ君!前回、惜しくも決勝で敗れてしまった雪辱を果たし、優勝する事が出来るのか!?
そして、もう一人は、なんと今回初出場でここまで勝ちあがってきたガッツボーイ!竜崎修司君!!
ビーダマンの経験は少ないながら、その秘めたるポテンシャルは並々ならぬものを感じるぞぉ!!』
 ハヤミは、修司に向かって指を指し、啖呵を切る。
「負けるわけにはいかない!前回の準優勝者の誇りを賭けて!!」
「オレだって、ここまで来たら絶対優勝してやるぜ!!」
  修司も負けじと気合いを入れる。
 『両者とも、ファイティングスピリッツはまんぱんなようだ!決勝戦、ルールはディレクトヒットバトル!
 互いにビー玉を撃ち合い、先に相手のビーダマンにビー玉をヒットさせた方の勝ちだ!!』
「DHBか……オレの得意ルールだぜ。いくぞ、ゼンダグラップラー!」
 ハヤミがゼンダグラップラーと呼ばれた機体を構える。
 ゼンダグラップラーとは、市販されている一般的なビーダマンの機種で、スタンダードな性能をしているので扱いやすい。
 やや大きめのボディをしているので、大きなお友達の手にフィットする。
「頼むぞ、ストライクブレイグ……!」
  一方の修司は、市販では無さそうな特徴的なビーダマンを構えた。
 
『レディ……ビー・ファイトォ!!』
 
「「うおおおおお!!」」
 スタートの合図と共に、二人が一斉にビー玉を発射する。
 テーブルの上をビー玉が何発も何発も飛び交う。
「いけぇ!当たれぇぇ!!」
  修司から発射されるビー玉は、数は少ないもののもの凄いスピードでブッ飛んでいく。
「ちっ!」
 しかし、ハヤミはその玉をうまくかわし、素早く反撃に転じる。
『激突!!バトル開始早々、怒涛の鬩ぎ合いだ!!』
 両端から途絶える事なく発射される玉が、ぶつかり合い、はじけ飛ぶ。
「いけぇぇ!!」
「かわせ、ブレイグ!!」
 ハヤミから発射された連射攻撃を、修司が右へ避ける。
「そこだ!」
 しかし、避けきった後の一瞬の隙をついてハヤミが追い打ちをかけてきた。
「しまっ!」
 修司は、移動した直後で体勢が崩れ、咄嗟に反応できない。
『おおっと!これは上手い!!ハヤミ君の見事なコンビネーションプレイ!!今までの連射攻撃は、誘導のための布石だったのか!?これは修司君大ピンチだぞぉ!!』
「くっ、ぬおおおお!!」
 修司は避けるのを諦め、パワーショットでこれを弾き飛ばす。
『間一髪!!修司君、ギリギリのところでハヤミ君のショットを弾き飛ばした!!』
「は……あ……!」
「やるな、でも今のでかなり精神的ダメージを受けたはず。このまま攻めるぞ!!」
『ハヤミ君!攻撃の手を緩めず、再び怒涛の連射!!さっきは間一髪セーフだったとはいえ、これは修司君も万事休すか!?』
「ブレイグゥ……!」
 グングン目前に迫ってくるハヤミのショット。
「(どうする、また撃ち落すか?でも、凌いだところで同じ事の繰り返しだ。だったら……!)」
 修司は避けようとはせず、足を踏ん張り、迎撃の態勢を取った。
『ブレイグ!再びハヤミ君のショットを撃ち落とす作戦かぁ!?』
「甘い!このショットを防御したって、次に生まれる隙をついて……!」
「誰が防御なんかするかぁ!!」
「えっ!?」
「男だったら攻撃あるのみ!!いっけええええええ!!!!」
 ドンッ!!!
 ブレイグから強力なショットが撃ち出される。しかしそれは、ハヤミのショットの横を通りぬけていった。
『ブレイグ渾身のパワーショット!!しかし、そのショットは外れてしまった!このまま決まってしまうかぁ!?』
「いや、まだだ!」
「なにっ……!!」
『なんとぉ!修司君のパワーショットは真っ直ぐハヤミ君へと向かっている!!』
 ブレイグのショットはハヤミのショットを撃ち落として防御するためのものじゃなかった。
 最初からハヤミのビーダマンを狙うためのものだったのだ。
「し、しまっ!!」
『なんだこのスピードは!?ブレイグ、渾身のパワーショットでハヤミ君のビーダマンにヒット!!少し遅れて、ハヤミ君のショットがブレイグにヒットした!!』
「よしっ!」
「ば、バカな……先に撃ったオレのショットを追い越したのか……」
『脅威の大逆転で、勝ったのはストライクブレイグ!竜崎修司君だ!!よって千葉県波木町チャンピオンは竜崎修司君に決定だああああ!!!』
「おっしゃあああ!!!」
 修司は、ガッツポーズを決めながらブレイグを掲げた。
「へへっ!お前は最高のビーダマンだぜ!!」
 盛り上がる歓声を浴びながら、修司はブレイグに頬ずりし続けた。
 
 
 修司がビーダマン町内チャンピオンの栄冠を手にした一ヶ月後。
 
 休日の昼下がりの首都高では、大小さまざまな車が排ガスを撒き散らしながら走っている。
 その中に溶け込むように、一台の引越しトラックが軽トラックとワンボックスに挟まれて走っていた。
 そのトラックの荷台の中、いくつものダンボールに囲まれて、竜崎修司が寝そべっていた。
「あ~、さすがに首都高をずっとトラックの中ってのはキツイな……」
 ゴチンッ!!
 突如車がバウンドしたかと思うと、積み上げられたダンボールの上から何かが修司の頭上に落ちた。
「あいてっ!!」
 頭の上をバウンドして、目の前に落ちたそれを手に取る。それは金色に輝くカップだった。
「ってぇ……父さんの運転荒いし……はぁ」
 それを拾うと、修司は小さくため息をついた。
「せっかく、町一番のビーダーになったのに。その一ヶ月後に引越しだもんなぁ」
 そう、その金色のカップはついこの間まで住んでいた町の大会の優勝カップだ。
 本来なら、町内大会の優勝者として、チヤホヤされる生活が待っていたはずなのだが……チヤホヤされる前に父親の仕事の都合で引っ越しする羽目になってしまったのだ。
 少年の頭の横には、退屈凌ぎのためのラジオが置かれている。
 ラジオからは、ノイズに混じりながら女性キャスターの声が流れていた。
『ザザ……ビーダ…トル……界…ピオンのヒンメル……選手が来日……』
「ん~、電波悪いなぁ」
 修司は、ため息をつきながら、ラジオのアンテナの向きをグリグリとデタラメに動かしてみるのだが、大して効果はない。
「あと、何時間かかるんだろ……?」
 永遠とも思える退屈な時間。
 揺れる暗闇の中で、再び盛大なため息をついた。
「ブレイグ、早くお前と思いっきり戦いたいぜ。新しい街では、強い奴と出会えるといいな」
 修司は、愛機を手に新たな地への思いを馳せるのだった。
 
 
 そして、ついに修司の乗るトラックは、とある二階建ての木造アパートの前に到着した。
「さぁ、ついたぞ修司!降りろ降りろ!」
 トラックの荷台が開く。
「うぅ、やっとついたか……」
 フラフラになりながら修司はトラックを降りる。
「なんだなんだ、ダラしないな!これから引っ越し作業しようってんだから、シャンとしろ!!」
 修司の父親と思われる筋骨隆々な男が仁王立ちして呆れ顔をしている。
「あんだけ、荒い運転で何時間も荷台の中にいたらダラしなくもなるわい!!」
 勢いよく父親に向かって体当たりをかます修司だが、父はあっさりそれを受け止める。
「はっはっは!なんだまだ元気じゃないか!」
「ぐぐ……相変わらずのバカ力が……!」
「まだまだ父には勝てんよ!ほれ、さっさと荷物運べ!!」
 父は、修司を放り投げて、ダンボールを運び出す。
「ったたた……ったく……」
 尻餅をついた修司は、立ち上がってケツを掻きながら荷台のダンボールを手に取った。
 
 
  約一時間後、なんとか全ての荷物をまとめ終えた。
「ふぃ~、まっ、こんなもんでいいか」
 父が、額の汗を乱暴に拭う。
「終わったぁ」
 修司も息をついてその場にへたり込む。
「お~、なかなか良い感じだなぁ!ここから新しい生活が始まるってわけだ!」
「うん……」
 改めて新居を見渡す。
 外見は古ぼけたアパートだが、部屋の中はなかなか小奇麗で、二人暮らしにしては広々としている。
 修司は今日から始まる新天地での生活を思い描き、心を踊らせた。
「おっし!父さん、俺ちょっとそこら辺見てくる!」
 気合を入れ直し、立ち上がる修司。
「おぅ?休憩に茶くらい飲まんか?」
 さっきまでヘタれてたとは思えない立ち直りっぷりに意外そうな父。
「んな事してたら夜になっちまうって!早くこいつを撃ちたくてウズウズしてんだ!!いってきます!!」
 そういって、元気良くかけだしていった。
「ったく、作業してるときはあんなウダウダ言ってたくせに、ビー玉遊びの事になると急に元気になりやがる……誰に似たんだかな」
 その背中を見ながら、父はフッと笑うのだった。
 
 
 東京都某所。
 都内から少し外れた閑静な住宅地。
 その中央に位置する大きめの公園は、日曜日と言う事もあって子供達で賑わっていた。もちろん、皆ビーダマンをやっている。
 「っひゃ~!やってるやってる!この町でもビーダマンは盛んみたいだなぁ」
 修司は早速公園へと足を踏み入れるのだが……
「あぁ!」
 
 
「ちくしょう!!俺のビーダマンがぁ!!」
 しかし、何かがおかしい。
 楽しくビーダマンでバトルしている様子ではない。
「あ、俺のバンデッドクライシスグレイシャーズ!!」
 一人のビーダーが、小さい子供達のビーダマンを次々となぎ倒しているのだ。
 その度に、その小さい子供達の悲鳴が響く。
「何?もう終わりなの?男の癖にだらしないわよ!」
 それは、女だった。
 しかし、その公園にいる中では一番背が高い。恐らく一番上級生なのだろう。
 シュウは、その様子を厳しい顔で見ていた。
「あいつ、あんな小さい子供相手に……許せねぇ!」
 そして、地面を蹴って駆け出した。
 
「くっそう!今度は俺の番だ!」
 下級生の男の子がビーダマンを持って立ちはだかる。
「いいわよ。セット!」
「「ビー・ファイト!!」」
「頑張れ!ビッグビッグスローリンガー!!」
「あんた達、いい加減自分のシアナイトに長ったらしい名前付けるの止めなさいよ(汗)」
 
 シアナイトとは、一般流通されているビーダマンの事で初心者にも扱いやすいスタンダードな機体だ。
 特にシアナイトは全体的に小さく、低学年の子供達の小さな手にもフィットする。
「よし、勝てるぞぉ!」
「遅い!!」
 あっと言う間に、上級生のゼンダグラップラーのショットが下級生のシアナイトを吹っ飛ばした。
「あぁ!!」
 勢いでフィールド外へ吹っ飛ばされたビッグビッグスローリンガー(シアナイト)を下級生は涙を浮かべながら拾った。
「ちくしょう……」
 それを見て、上級生の女は大袈裟にため息をつく。
「はぁ、ほんと弱い。いくらなんでも弱すぎるわよ。そんなんで……」
 
 
「やいやい、待てよ!!」
 その時、威勢のいい少年の声が、上級生のセリフを遮った。
「ん?」
 振り向いたその先にいたのは、修司だった。
 修司が、女上級生を睨みつけながら立っていた。
「お前、何弱いものイジメしてんだ!!」
「はぁ?」
 いきなり割り込んで怒鳴り込んできた修司に、女はあっけに取られた。
「ビーバトルってのはなぁ!皆で楽しんでやるものなんだ!強い奴が弱い奴を一方的に倒すためにあるんじゃない!!」
 修司は、とってもいい事を言っている。
 どんな悪人でも、必ず心を打たれるような良い事を。
 しかし、その悪人である女は……。
「あのねぇ」
 呆れたように後頭部を掻いていた。
「別にあたしは、その子達を苛めてたわけじゃないの。特訓してただけなんだけど」
「嘘付くな!いじめっ子がよく言う事だぜ!!」
 すると、周りの子供達も。
「ほんとだよ」
「俺たち、ことねぇと練習してただけなんだ」
「ただ、俺たちがまだ弱くて……」
 その女を支持するようなことを口走る。
 それを聞くと、修司は優しい顔で子供達を見る。
 「無理すんな。脅されて言わされてるだけなんだろ?大丈夫、俺が絶対アイツをやっつけてやるから、安心しろ」
 「え、いや、あの……」
  修司のやさしい言葉を聞いても、子供たちの様子は変わらない。よっぽど怖い目にあったようだ。
  修司、絶対に許してはいけないぞ!!
 しかし、そんな修司のやり取りに悪者の女は声を荒らげた。
「あのねぇ!さっきから聞いてたらなんなのよ!私がその子達を苛めてたとして、なんのメリットがあるのよ!!」
「知るか!」
「知るかって……」
 話にならない。
「どうしても苛めてた事を認めないんだな」
「当たり前でしょ」
「よし、じゃあビーダマンバトルで決めようぜ!俺が勝ったらお前はあの子達をイジメてた。お前が勝ったらイジメてない」
 ブレイグを取り出して、突きつける修司。
「……メチャクチャな言い分だけど。分かったわ。これ以上うるさくされたらたまらないし」
「これだからビーダーは分かりやすくて良いぜ…!」
 実際、修司は単にビーダマンバトル出来れば理屈は何でもよかったりする。
「ルールは、DHBで良い?」
「いや、シャドウヒットバトルだ!せっかくだから、フィールド全体使おうぜ!」
 シャドウヒットバトル(SHB)、足に括り付けた紙風船などを自分の分身(シャドウ)とし、それを撃ち合うバトルだ。
 フィールド全体を使うので、フットワークが重要となり
 空中撃ちが基本となるので、かなり難易度の高い競技である。
「あんた、シャドウになるもの持ってるの?」
「紙風船ならちゃんと用意してるぜ!」
 ポケットから膨らます前の紙風船をペラペラとさせる。
「用意良いのね……」
「俺、このルール大好きなんだ!」
 
 と、言うわけで、二人が風船を膨らまし、足にくくりつける。
「準備OK!」
「それじゃ、始めましょうか」
「おう!」
 
「「ビー・ファイトッ!!」」
 
「例え女でも、相手がイジメっ子なら容赦しねぇ!全力で決めろ、ブレイグ!!」
 女の紙風船に向かってパワーショットを放つ。
「は、速い!?」
 バキィ!!
 間一髪で避けるが、ブレイグのショットで地面がえぐれた。
「あ、危なかった……!」
「おっしぃ!でも、絶好調だぜ!!」
「なるほど、パワーだけなら一級品みたいね……。でも、なんて単純な攻撃なの……!」
「もっかい行くぜ!!」
 再びブレイグのパワーショット。しかし、今度はあっさり攻撃をかわされる。
「あれ!?」
 女の、先ほどと違う余裕の反応に修司は少々面食らう。
 そんな修司の様子に女は呆れた。
「あまりに直線的過ぎる攻撃……フェイクかとも思ったけど……こいつ、もしかして素人?」
「くっそぉ!もう一回だぁぁ!!」
 再びまっすぐパワーショットを放つブレイグ。
 しかし、またあっさりかわされる。
「くそっ!」
「隙だらけよ!」
 女は、その返す刀で、反撃をする。
「ぐっ!」
「威勢が良いから少しは出来る奴かとも思ったけど。まぁいいわ、さっさとケリをつけるか」
「もう一回だ!!」
 再びパワーショットをブチかます修司に対して、女も避けようとはせず真正面から撃ってきた。
「おっ、真っ向勝負か!これならいけるぜ!!攻撃力で俺に勝てると思うなよぉ!!」
「言っとくけどねぇ」
 二つのビー玉の距離がドンドン狭まる。
「ビーダマンの攻撃は、単純な威力だけで決まるものじゃないの」
「へっ?」
 ガキンッ!
 修司のショットが女のショットを弾き、そのまま女の紙風船へ向かう。
「って、ハッタリかよ!そのままいけぇ!!」
 しかし、女はニヤリと笑うと再びビー玉を何発も何発も発射し続ける。
「なにっ!」
 そして、その連射でついに修司のショットを撃ち落とす。
「れ、連射で止められた……!」
「一発のパワーが強くても、止められるなら同じ事よ!」
「く、くそぉ……だったら!」
 ダッ!
 修司は女に背を向けて駆け出した。
「なっ、逃げる気っ!?」
「誰が逃げるかぁぁ!!」
 ある程度距離を置いた後、修司はUターンして再び女に向かって走り出す。
「これは、助走距離だ!!」
「っ!」
「男だったら攻撃あるのみ!」
 勢いを付けて走り、そしてビーダマンを地面に向かって撃つ。
 
 ズゴオオオン!!!
 
 その反動で大ジャンプする。
「え、ショットの反動で跳んだ!?」
「押して駄目ならもっと押す!!連射で撃ち落とされるなら、今度は撃ち落とされないくらいのもっと強いショットを撃てば良いだけだ!!」
そして上空から、女の紙風船目掛けて、修司はパワーショットを放つ。
「そ、その状態でパワーショット!?」
「即興必殺!メテオールバスター!!」
 ブレイグのパワーに重力加速が加わったそのショットは風を切り裂きながら女の紙風船へとぶっ飛んでいく。
「くっ!」
 それを撃ち落とそうと必死で連射するが叶わず、女の紙風船は見事に割られてしまった。
「……」
 呆然と立ち尽くす女。
「お、おっしゃぁ!やったぜぇぇ!!」
 ブレイグを掲げ、ガッツポーズする修司。
「ま、負けた……あたしが……」
「ことねぇが負けた……」
「あいつ、なんなんだ」
 女だけでなく、子供達も驚いている。自分達の師匠である存在が見知らぬ少年に敗れたのだ。当然である。
「へへっ!俺の勝ちだぜ!」
 そんな周りは気にせず、修司はブレイグを女に突きつけて勝利宣言した。
「……まいったわ。あたしの負けよ」
 女は肩を竦めると潔く負けを認めた。
「ふははははは!!!どうだあああ!!!」
 それを見た修司は更に調子に乗ったのか、互いの健闘を称える事無く、ふんぞり返って高笑いした。
「なんか、ムカつくぅ……!それで、どうするの?」
 女の質問に、修司は高笑いをやめて首をかしげた。
「へ?何が?」
「何がって……だから、いじめっ子がどうとかっていう」
 女に言われ、修司はあぁと何度も頷く。
「あぁ、それか。すっかり忘れてた!」
 そして、う~んとしばらく唸ったのち
「……で、お前ほんとに虐めてたのか?」
 と、キョトンとした顔で問うた。
「そんなわけないでしょ!」
 女が言うと、周りの子供たちもうんうんと頷いた。
「そっか。じゃあいいや、バトル楽しかったし♪」
 あっさりと自分の意見を取り下げたシュウに女は素っ頓狂な声をあげる。
「はぁ!?」
「それに、こんな楽しくバトル出来る奴が、ビーダマンでイジメなんか出来るわけねぇよな。悪かったな、疑って」
 ニカッと笑顔を向ける修司に女は開いた口が塞がらなかった。
「……」
(なんなのよこいつは……!勝手に疑って、勝手に勝負しかけて、勝手に自己完結して……!!)
 女は、修司のあまりの自分勝手さに怒りに震えていた。
 そんな女の前に修司が手を差し出す。
「また、バトルしようぜ」
「……」
 笑顔の修司に少し戸惑いながらも女はその手を握った。
「自己紹介がまだだったな。俺、竜崎修司。シュウって呼んでくれ!今日この町に引っ越して来たばかりなんだ。よろしく」
 修司……シュウが自己紹介すると女もポソッと自分の名前を呟く。
「……佐倉琴音」
「琴音か。学校は、近くの爆球小学校だろ?俺もそこに転校するから、一緒のクラスになれるといいな!そしたら、またバトルしようぜ!」
 なんだか勝手に話を進めるシュウへ、琴音はジト目を向けながら言った。
「それはいいんだけど……その前にあんた何年生よ?」
「5年生だけど?」
「じゃ、無理ね。あたし、6年だから」
「うぇ……年上、でしたか……!」
 思わず敬語使ってしまう体育会系なシュウ。
「別に敬語はいいわよ。タメ口は慣れてるから」
「そっか。んじゃ、友達になった所で、もう一回バトルしようぜ!」
 シュウはブレイグを突きつけた。
「あんたって、ほんと無駄に元気ね……」
 シュウのペースについていけず、琴音は額を押えた。
「へへっ!行こうぜブレイグ!」
 意気揚々と駆けるシュウの前に、突如一人の少年が現れた。
「おわっ!」
 激突!
 二人は尻餅をつく。
「いってて……あぁわりっ、大丈夫か?」
 シュウは慌てて起き上がり、ぶつかった少年に手を差し伸べる。
「あぁ、ありがとう」
 少年は素直にその手を掴んで立ち上がった。
「……」
 その少年は、不思議な顔立ちをしていた。
 金色の長い髪に、青い瞳……とても日本人とは思えない。
 年齢は、シュウと同い年くらいのように見える。
「あれ?お前、さっきまでここにいたっけ?」
 シュウ以外の男の子は皆低学年くらいだと思っていたが……。
「あぁいえ、えっと、ちょっと道を尋ねたくて……」
「そっか。でも悪い。俺この町に引っ越してきたばかりで道は分からないんだ。あっちにいるあいつらのが詳しいと思う」
 と言って、琴音達を指差す。
 その琴音達は、その少年を見て唖然としている。
「??」
 シュウには、その理由が分からない。
「どうしたんだ、お前ら?こいつ、道尋ねたいって言うから案内してやれよ」
 しかし、反応が無い。
「なんだよなんだよ、道教えるくらい良いだろ。ケチケチすんなよ」
 しばらくすると、琴音が震える指で少年を指差し、パクパクと口を開けた。
「あ、あ、あなたは……」
 まるで要領を得ないその行動にますます首を傾げる修司。
「ヒンメル・フリューゲル?!」
 ようやく発せられたその言葉は、何かの名詞のようだ。
「はい、そうですが……」
 その言葉に反応する少年。どうやら、こいつの名前のようだ。
「あぁ、お前ヒンメルっつーのか。俺は竜崎修司、よろしく」
 シュウはヒンメルと握手した。
「ってか、名前知ってるって事は、お前ら知り合いだったのか?」
 シュウは手を離すと、琴音とヒンメルを見比べた。
 すると、琴音はシュウに向かって信じられないというような声をあげる。
「あんたほんとにビーダー!?その人は、前回のビーダマンバトル世界大会のチャンピオンよ!!」
「へ?」
 思わず、ヒンメルの顔を見る。
 柔和そうな顔つきからして、そんなに強そうには見えないのだが……。
「こいつが世界チャンピオン?」
 怪訝な顔で指をさすシュウ、琴音は怒鳴る。
「こいつとか言うな!失礼でしょ!!」
「……なんだかなぁ」
 琴音のテンションについていけずに、ばつが悪そうに頭を掻く。
(でも、世界チャンピオンか……)
 そして、一人思案する。
「で、えっとお尋ね……」
 勝手に自分の事で盛り上がられてるのに蚊帳の外にされてるヒンメルは遠慮がちに話を本題に戻そうとする。
「あぁ、ゴメンなさい。なんでも聞いて」
「セントラルホテルに行きたいんですが、その道のりを教えてください」
「あ、それならすぐ近くに……」
 琴音が道を教えようとしたその時!
「ちょっと待ったぁ!!」
 シュウが遮った。
「え?」
「いきなり何大声出してんのよ!」
「世界チャンピオンのヒンメル!!道を教えて欲しかったら、この俺に勝ってみせろ!!」
 ヒンメルにブレイグを突きつけて啖呵を切った。
 
 
 
     つづく
 
 次回予告
 
「引っ越してきてラッキーだったぜ!まさかいきなり世界チャンピオンと遭遇できるなんて!
俺だって町内チャンピオン、同じチャンピオンとして、絶対に負けるわけにはいかねぇ!
しかし、世界チャンピオンの実力は圧倒的だった……!
  
 次回!『入会!仲良しファイトクラブ』 
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!」