弾突バトル!フリックス・アレイ 第34話

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第34話「リサの焦り 悪魔のささやき」
 
 
 突如猛威を振るい始めたスクール生たちによるフリックス破壊活動。
 それを脅威に感じたバン達は協力して闘う事にしたのだ。
 
 とあるデパートの屋上。
 『フリックス体験会』と看板が掲げられており、いくつもテーブルが並んでいる。
 そこではフリックスを初めて触る子供たちを中心にワイワイと楽しげな喧噪に包まれていたのだが。
 目つきの悪い三人の少年達の乱入によってその声は悲鳴に変わる。
 
「うわぁ、もうやめてよ!!」
 テーブルを挟んで、小さな子が泣きわめく。
 そんな子の機体に狙いを定め、目つきの悪い少年が口元を緩ませた。
「うるせぇ!これがバトルってもんなんだ……それを教えてやるってんだからありがたく思え!」
 自分勝手な理屈をわめきながら、悪少年がシュートをしようとした瞬間……!
「待ちやがれぇぇぇ!!!」
 どこからともなく怒声と青い機体が飛んできた。
 
 バンッ!!
 青い機体は悪少年がシュートしようとした機体を弾き飛ばした。
「な、なにしやがる!!」
 悪少年は反射的に、青い機体が飛んできた方向へ身体を向けた。
 そこに立っていたのは、バン、剛志、レイジ、リサの四人だった。
 バンは、壁に反射して戻ってきたディフィートヴィクターをキャッチすると、悪少年三人組を指さして啖呵を切った。
「やいやい!こんな初心者相手にロクでもない事しやがって!!」
 バンに続いて、剛志が仁王立ちして叫ぶ。
「そんなにバトルがしたいんなら、ワシらが相手になってやるじゃ!!」
 すると、悪少年達はバン達の行動に何か覚えがあるのか、多少たじろいだ。
「げっ、もしかしてこいつらが連絡網に書いてあった……」
「俺たちスクール生の邪魔をしてる凄腕のフリッカーか!」
「でも、なんで俺達がここにいる事が分かっちまったんだ!?まだなんもしてねぇのに、情報早すぎだろ!!」
 悪少年達が口々に言うと、レイジが胸を張って答えた。 
「ふふふ、この僕、藤堂家の情報網をなめてもらっちゃ困るよ!」
「っ!」
 悪少年達はしばらく顔を見合わせていたが、覚悟を決めたのかバン達へガンを飛ばした。
「ちっ、しょうがねぇ!こうなったらてめぇらから先に血祭りにあげてやる!」
「こんなザコどもでポイント稼ぐより、お前ら倒した方が配点高いしな!」
「スクールでの訓練の成果を見せてやる!」
 悪少年三人が機体を構え、それぞれ別のテーブルにつく。
「おっしゃ!行くぜ!」
「おう!」
「うん!」
 バン、剛志、レイジは、それぞれテーブルについた……あれ。
「……私は」
 人数が余ってしまい、リサは手持無沙汰になってしまった。
 それに気づいた三人はバツの悪そうな顔をする。
「あ、わりぃリサ。余っちまった」
「まぁ、お前さんは戦わずに済むならスクール生と関わらん方がええじゃろ」
「ここは、新型機の僕たちに任せて!」
 次々に言いくるめられ、リサは反論できなかった。
「……うん」
 リサは不満げにうなずくと、皆のバトルを観戦する事にした。
 
 バンのバトル。
 まず先にマインセットする。
 バンはマインを活用する戦い方はしないので、フィールドの端にセット。
 対戦相手の悪少年もフィールドの端にマインをセットした。
「一発で決めてやるぜ!!」
 二人がフィールドの角に機体を置いてシュートを構える。
 
「「アクティブシュート!!」」
 
 バシュッ!!!
 やや相手寄りのフィールド中央で二機が激突する。
 ヴィクターの方が打撃力が強いのだが、若干狙いが逸れていたため、力の方向が横に逸れて半回転しながら、左右に分かれた。
「くっそぉ!飛ばせなかった!!」
「あ、っぶねぇ……なんとか急所外した」
 しかし、スタート位置からより進んでいるのは当然ヴィクターだ。
「へへっ、でも先攻は俺だぜ!これで決めてやるぜ!!」
 バンはヴィクターの向きを変えて、相手機体へ狙いを定める。
 相手機体から場外までの距離はかなり離れているが、ヴィクターから相手機体までの距離はさほど離れていない。
 そして、相手機体は直角な横っ腹を晒している。力を受け流される心配はなさそうだ。
「いっけぇ!!!」
 バンは力いっぱいヴィクターをシュートした。
 バキィ!!
 ヴィクターの剣が相手機体のドテッ腹にヒットする。
「うわあああああ!!!!」
 ぶつかった瞬間にバネで伸びた剣によって、場外までスッ飛ばされてしまった。
「く、くそぉ……!」
「よっしゃ!あと1だ!!」
 相手はフリップアウトによって2ダメージ受けてしまった。
 
 そして仕切り直しのアクティブシュートだ。
「まともにぶつかってたら負ける……!」
「いくぜ!」
「「アクティブシュート!!」」
 
 バシュッ!!!
 悪少年はバンのパワーシュートを恐れて、軌道を逸らした。
「あぁ、力み過ぎた!!!」
 しかし、プレッシャーに負けたのか、力加減をミスってしまいそのまま場外してしまった。
 一方のヴィクターは対角線の角……つまり、相手のスタート位置でフロントの剣を外へ突き出しながらもなんとか落ちずに耐えていた。
「あっぶねぇ……!けど、俺の勝ちだぜ!」
 相手は自滅によって1ダメージ。合計3ダメージ受けたので敗北だ。
 
 一方剛志の試合。
 
「「アクティブシュート!!」」
 
 バキィ!!!
「あぁ!!」
 グランドギガの強烈な一撃がアクティブのぶつかり合いで相手を場外まで弾き飛ばす。
「どうじゃぁ!!グランドギガの力は!」
「くっ、だったら次は躱してやる……!」
 まともにぶつかってたらマズいと判断したのか、仕切り直しの際、グランドギガとぶつからないような位置取りで狙いを定めた。
 
「「アクティブシュート!!」」
 
「これでどうだ!!」
「甘いわっ!!」
 バキィィ!!!
 軌道をずらしたはずなのに、グランドギガの攻撃はヒットした。
「そ、そんなぁ……!」
「わしのグランドギガの二砲ハンマーからは簡単に逃げられんぞ!!」
「く、くそぉ!」
 
 再びアクティブシュート。
 今度も中央で激突するが、場外はさせられなかった。
 しかし、先攻は当然グランドギガだ。
 相手からの距離は遠く、その相手を場外させられる距離もそこそこあった。
 さすがのグランドギガでも一撃で場外させるのは難しそうだ。
「いくぞ、グランドギガ!!」
 バキィ!!
 が、マインが良い位置にあったため、相手機体を弾き飛ばして、マインにぶつけた。
 これで相手のHPは0だ。
 
 そしてお次はレイジの試合。
 
「「アクティブシュート!!」」
 二機のフリックスが同時に放たれる。 
「ファントムレイダー!!」
 中央で激突した瞬間、ファントムレイダーは相手機体を乗り上げて飛び上がった。
「なにぃ!?」
 ぶつかって減速する事を想定してシュートしたのか、ファントムレイダーの思わぬ回避によって自滅してしまった。
「うぐぐ、くそぉ……!」
 そして仕切り直しのアクティブ。
 今度は慎重に撃ったために自滅はしないものの、その分距離が稼げなかった。
「僕が先攻だね」
「くっ!」
「いけっ!」
 ファントムレイダーは、相手機体を乗り越えてその先にあるマインにヒットする。
 これで相手のHPは残り1だ。
「っざけやがって!!」
 相手のターン。ファントムレイダーの近くにマインがあるため、反撃でマインヒットを決めた。
 しかし、この時点で1ダメ与えた所でもう勝機はない。
「畜生……!」
「これで、決めるぞ!ファントムレイダー!!!」
 ファントムレイダーのシュートによってあっさりマインヒット。
 レイジの勝利だ。
 
 三つのバトルが全て終了。
 バン達の圧勝だ。
「くっそぉ、覚えてろよ!!」
 お決まりのセリフを吐きながら、スクールの悪い少年達は去って行った。
 
「へっへーん!俺達がいる限り、もう悪い事は出来ないぜ!!」
 悪少年たちの後姿を見ながら、バンは胸を張った。
「僕たちの勝ちだね、剛志!」
「おう、手ごたえのない相手じゃったな」
 互いに勝利をたたえ合うバン達だったが。
 リサは少し離れた所でその様子を寂し気に眺めていた。
「……」
 
 
 そして翌日。
 放課後にバン達はいつもの公園に集まっていた。
 
「今日は今のとこ事件は起きてないみたいだけど、スクールの奴らとの戦いに備えて、俺達もガンガン鍛えとかないとな!」
「じゃな!特訓あるのみじゃ!!」
 
 と言うわけで、今日は四人集まって特訓をするようだ。
 
 フィールドの四角で四人が機体を構える。
 
「「「「アクティブシュート!!!」」」」
 
 四つの機体が同時にはなたれ、中央で激突する。
 
 バーーーーン!!!
 実力伯仲……と思いきや、赤い機体が衝撃に耐えきれずに早々と場外した。
 
「ああ……!」
「フレイムウェイバー、自滅だね」
 アクティブシュート時の場外は自滅扱いとなる。自滅は1ダメージだ。
「くぅぅ!さっすが新型のグランドギガとファントムレイダーだぜ!ぶつかった時の衝撃がジンジン来るぜ!!」
「はっはっは!まだまだこんなもんじゃないぞ!!」
 場外したリサは気にせず、バン達は盛り上がっている。
「……」
 とりあえず、仕切り直しだ。
 
「「「「アクティブシュート!!!」」」」
 
「っ!」
 バキィ!!!
 今度はリサは若干軌道をずらし、直撃を避けた。
 しかし、そのせいでターンの順番は最後になってしまった。
 
「まずは、僕の番だね!」
 乗り上げ形状でディフィートヴィクターの突進を飛び越えたファントムレイダーが一番進んでいた。
「いけっ!」
 バシュッ!!
 ファントムレイダーはマインにぶつかったあとフレイムウェイバーにヒットした。
「あっ!」
「よしっ!」
「フレイムウェイバーに1ダメージじゃな!」
「……!」
 リサは悔しそうに顔をゆがませる。
 が、試合はまだ続行だ。
「次は俺の番だぜ!!」
 バンがディフィートヴィクターをグランドギガに照準を合わせてシュートを放った。
「いっけぇぇ!!」
 勢いよくブッ飛んで行く。
 その軌道の途中、フレイムウェイバーがあって、ついでにかすったのだが、バンの眼中にはグランドギガしかなかった。
 
 バーーーン!!
 グランドギガはディフィートヴィクターのアタックを受けて大きく弾かれるものの、場外には至らなかった。
「げぇ、耐えやがった……!」
「さすがバンじゃ、なかなかの攻撃じゃのぅ!じゃが、こんな位置からグランドギガをフリップアウトさせようなんて甘いわ!」
「ちぇ、行けると思ったのになぁ」
 
 ボンッ!
 バンが悔しがっていると、不意にマインヒットした音が聞こえた。
「ありゃ?」
 観ると、バンが弾き飛ばしたフレイムウェイバーがマインに当たっていたようだ。
「あ、リサマインヒットしてたのか。ラッキー!」
 まるでリサの事など気にしていないかのような、ついでの喜び。
 それにリサは、胸の奥で痛みを感じた。
「じゃあ、フレイムウェイバーはHP0で撃沈だね」
 レイジがそういうと、リサは俯いたままフレイムウェイバーを手に取った。
「……」
「おーし、続き続き!」
「次はワシのターンじゃ!覚悟しとれよ、バン!」
「無理無理!お前の位置からの方がフリップアウトは難しいじゃねぇか!!」
 
 敗北したリサを放っておいて盛り上がるバン達。
 リサは、まるで対岸の火事のように無言でそれを眺めていた。
「……!」
 そして、奥歯をかみしめると、そのまま踵を返してトボトボと公園を出て行った。
 
 行く当てがあるわけではなかった。
 ただ感情に任せた行動であることも自覚していた。
 それでも、今更あの場に戻ろうという気は起きなかった。
 一人になりたかったのだろうか。
 それとも、呼び止めて欲しかったのだろうか。気付いてほしかったのだろうか。
 そんな事も分からないまま、リサはただ公園とは逆の方向をただ歩いていた。
 
 住宅地を抜け、大通りに出ようとしたところで、後ろから温厚そうな少年の声に呼び止められた。
「あのー、少しよろしいですか?」
「(びくっ)!」
 思わぬ所で声をかけられてしまい、反射的に身体がビクッと強張ってしまった。
「あぁ、すみません。驚かせるつもりはなかったのですが……」
 そんなリサの様子を察したのか、声の主は申し訳なさそうに謝ってきた。
 リサはその無害そうな声音に少し落ち着き、振り向いた。
 そこには、長身で優しそうな表情をした少年がいた。歳はリサと同じくらいだろうか。穏やかな表情は落ち着いた大人びた雰囲気を漂わせている。
「いえ。私に、何か用ですか……?」
 リサは少し警戒しながら控えめに答えた。
「申し遅れました。私、豊臣イツキと言います。フリックスの研究者なのですが……あなた、遠山リサさんですよね?」
「……なんで私の名前を」
 リサの警戒は解けない。
 イツキはそれを察した上で胡散臭いくらいの人の良い笑みを浮かべた。
「あなたは有名人ですからね。今話題の遠山フリッカーズスクールの長、遠山段治郎の孫娘にして、最強のフリッカー。その圧倒的テクニックの前には何人たりとも敵わない」
「……」
「ですが、最近は戦績が良くない」
「っ!」
「おっと、これは失礼。フリックスの大会は逐一チェックしているものですから。しかし、以前のあなたならどんな大会でも優勝していたはずが、最近は優勝を逃しているのは純然たる事実」
「それは……」
「気を悪くしたのならすみません。何もあなたを貶そうとしているのではありません。むしろ逆です。あなたが素晴らしいフリッカーと言う事に変わりはない。誰もあなたには敵わない。これも、いえ、これこそが真実です」
「だけど」
 実際に戦績が振るわないと言ったのはイツキの方だ。その疑問を口にする前に答えが提示された。
「条件が同じならば、ですけどね」
「条件……?」
 意味深なその言葉に、リサは首を傾げた。
「……ここではなんです。場所を変えましょうか」
 そういって、イツキは歩き出した。リサは少し躊躇しながらもその後をついていった。
 
 二人は近所の小さな広場にやってきた。そこの屋根付きの休憩所の椅子に並んで腰掛ける。
「では、単刀直入に本題に入りましょうか。あなたが勝てない原因、それは簡単です。機体性能の差」
「機体、性能……」
 言われて、リサは思わずフレイムウェイバーを取り出して眺めた。
「えぇ。フレイムウェイバーは決して弱いフリックスではありません。が、最近猛威を振るっている機体に対しては明らかに力不足です」
「っ!」
 リサは、ディフィートヴィクター、グランドギガ、ファントムレイダーの性能を頭に浮かべて、悔し気にうつむいた。
「自覚はあるようですね」
「……」
 リサは答えなかった。だが、沈黙は肯定しているようなものだ。 
「そこで、私があなた用に開発した新しいフリックスがあります。これを使えば、かつてのようにあなたは最強のフリッカーへ舞い戻る事が出来るでしょう」
 そう言って、イツキは懐からゴツい見た目のフリックスを取り出してリサの目の前に置いた。
「どうして、これを私に?」
 リサはそれを受け取らず、視線をフリックスに向けたままイツキへ問いかけた。
「許せないからですよ。強いフリッカーが、たかだか機体性能差だけで埋もれてしまうと言う事が」
 イツキの考えは分かった。それでもリサの態度は煮え切らない。
「だけど、私には……」
 手の中にあるフレイムウェイバーに視線を移す。
「心配ありません。その機体は見た目こそ大きく違いますが、フレイムウェイバーの特性を元に作り上げたものです。あなたの手にもすぐ馴染むはず」
「……」
 そうは言うものの、弱いと言うだけで簡単に愛機を乗り換えていいものなのか……これまで一緒に戦ってきたフレイムウェイバーを……。
「試しに使ってみて、そのフリックスが使い物にならなければ、またフレイムウェイバーに変えれば良い。何も損する事はありませんよ?それに……」
 イツキは声のトーンを落として、リサの耳元でささやいた。
「このままでは、段田バンはいずれあなたをライバルとしてみなくなるでしょうね」
「っ!」
 そういわれた瞬間、リサは反射的に差し出されたフリックスを手に取った。
 それをみて、イツキは満足げにほくそ笑んだ。
 
 そして一方の、バン達が戦っている公園。
 
「いっくぜぇ!ブースター・インパクトォォォ!!!」
 バンの必殺技、ブースターインパクトが炸裂し、グランドギガとファントムレイダーを二機同時にフリップアウトした。
「おっしゃあ!俺の勝ちぃ!!」
「くぅぅ、相変わらずの攻撃力じゃ……!」
「うぅ、さすがに耐え切れなかった」
 グランドギガとファントムレイダーを拾いながら、剛志とレイジは肩を落とした。
「へへへっ、でもグランドギガもファントムレイダーもめちゃくちゃ強かったぜ。俺達ならどんだけスクール生が暴れても問題ないな!」
「じゃな!」
「うん!」
「……って、そういやリサは?」
 ここでようやくバンはリサが不在な事に気付いた。
「そういえば、フレイムウェイバーが撃沈してから姿みてないのぅ」
「トイレにでも行ったのかな?」
 しかし、この公園にトイレはない。近くのコンビニにでも行ったのだろうか。
「ったくリサの奴。一人で勝手にフラフラして不用心だな……」
 悪態を付きながら、バンが公園の外へ行こうとしたら、リサが公園へ入ってきた。
「っと、リサ……なんだよどこ行ってたんだよ。一人でフラフラしたらダメだろぉ」
 リサへ文句を言いながら近づいたバンは、その雰囲気の違いに口を閉じた。
「バン……」
 リサは俯きながら口を開いた。
「ど、どうしたんだよ?」
「私と、戦って……」
「へ?」
「私と、戦え!!!」
 リサは、顔を上げてバンをにらみつけると、イツキにもらったフリックスを突きつけた。
「お、お前、そのフリックスは……?」
 リサの気迫にたじろぎながらも、バンは疑問を口にした。
「戦え!!!!」
 有無を言わさぬその迫力にバンの疑問はかき消される。
「あ、あぁ……分かった。勝負だぜ!」
 何を言っても無駄だろう。バンは気を引き締めてリサの勝負を受けた。
 
 戸惑いながら、バンはフィールドに付いて、リサと対峙する。
「なんじゃ、リサの奴急にどうしたんじゃ?」
「なんか、様子が違うね……」
 
「いくぜ!」
 バンとリサが機体を構える。
「「アクティブ・シュート!!」」
 バシュッ!!
 互いにぶつかり合うような軌道でシュートする。
「いっけぇぇぇ!!!」
 バーーーーン!!
 両機、フィールドの中央で激突する。
「くっ!すげぇパワーだ……!」
「あのパワー、ほんとにリサなのか?!」
「フレイムウェイバーじゃ絶対に出せない力だ……!」
 リサとは思えない攻撃力にバン達は驚愕した。
 しかし、シュートの結果はディフィートヴィクターの方が若干進んでいた。
「バンの先攻……だけど、凄い力……」
 リサ自身もイツキから託されたフリックスの力に驚いている。
「すっげぇぜリサ!でもこれで決めてやる!!」
 バンは目の前のリサのフリックス目掛けて猛シュートを放った。
「いっけぇ!!」
 しかし、リサのフリックスはバンの攻撃の力を逸らし、耐えきった。
「なに!?」
「あのバンのシュートを耐えきったじゃと!?」
「防御力も凄い……!」
 次はリサの番だ。
 ディフィート目掛けてシュートを放つ。
「いけっ!」
 バキィ!!
 そこそこの威力でディフィートはフッ飛ぶ。
「くっ!」
 フリップアウトには至らなかったものの、マインにぶつかってしまった。
「アクティブシュートはまぐれじゃなかったって事か。だったら俺も!!」
 バシュッ!!
 お返しにと、バンもリサのフリックスを弾いてマインヒットする。
 
 これで互いにHPは2だ。
「さすが、バン……!」
「へへ、でもすげぇリサ!いつの間にこんな強く……ってか、そんなフリックスどこで手に入れたんだよ?」
「そ、それは……」
「それに、フレイムウェイバーはどうしたんだよ?」
 フレイムウェイバーの事は聞かれたくなかった。だからそれを掻き消すように強く叫んだ。
「……私はっ!」
 リサのターンだ。
 力を籠めてシュートする。
「バンにっ、勝つために!!」
 バキィ!!!
 ディフィートヴィクターはリサの攻撃を受けてまたもマインヒットしてしまった。
「くっ!」
 これでHPは1。このままダメージレースを続けていては勝てない。
「フレイムウェイバーじゃ勝てないから……この機体なら、バンに勝てるから!だから、私は……私は……!」
 弁解にも近いその返事を聞いて、バンの表情が険しくなった。
「なんだよ、それ……!」
 次はバンのターンだ。
 バンはゆっくりとディフィートヴィクターの向きを変える。
「それじゃ、俺に勝つためだけに、フレイムウェイバーを使わないってのかよ……!」
「……」
 リサは何も言えずに顔をそむける。
「フレイムウェイバーは、ずっと一緒に戦ってきた相棒じゃなかったのかよ!勝てないってだけで、簡単に乗り換えられちゃうのかよ!」
「バンには分からないよ!!」
 バンに責められ、リサは悲痛に叫んだ。
「ヴィクターのまま、強くなれたバンには……分からないよ……!」
「俺は!強いからヴィクターを使ってんじゃねぇ!ヴィクターと一緒だから強くなれたんだ!!リサだってそうだろ!フレイムウェイバーと一緒に強くなってきたんじゃねぇのかよ!そんな簡単に乗り換えて、それで勝って、ほんとに勝ったって胸張れんのかよ!!」
 バンは気合いを入れて、シュートの構えをとった。
「俺は、こんなリサに勝ちたかったんじゃねぇ!!だから絶対に勝つ!勝って、俺のライバルを取り戻す!!!」
「え……」
「フリップスペル!デスペレーションリバース発動!!」

 デスペレーションリバース……視界を遮ってシュートする代わりに自滅してもシュートした位置へ戻せる。フリップアウトやマインヒットは有効。使用後、バリケードを出すとゾーンに置く。
 自滅が無効になるので力の限りシュートする事が出来るパワーファイター向けのスペルだ。

 バンの目の周りに闇の瘴気が立ち込める。これで視界が奪われるようだ。

「いっけええええええ!!!アンリミテッドブースターインパクト!!」
 制限を超えた渾身のブースターインパクト。この威力にはたまらずリサのフリックスは場外してしまった。
 ディフィートヴィクターも場外するが、スペルの効果によってフィールドに戻る。
 これで2ダメージでHP0。バンの逆転勝利だ。
「負けた……」
 へたり込んで呆然とするリサに、バンは近づいた。
「リサ……フレイムウェイバーは……」
「うん……」
 バンに言われて、リサは懐からフレイムウェイバーを取り出した。
「ごめんね、フレイムウェイバー……私は、あなたを信じられなかった……ごめんなさい……!!」
 リサはフレイムウェイバーを抱きしめて、涙を流した。
「リサ……なんで、こんなバトル挑んだんだよ」
「私、怖くて……このまま、皆から取り残されてくみたいで……バンのライバルじゃなくなるような気がして……」
「何、言ってんだよ。リサは俺の一番の目標だ。お前の使うウェイバーに勝つまで、それはずっと変わらねぇよ」
「バン……」
「じゃな。そういえばバンはフレイムウェイバーを使ったリサに、まともに勝った事は無いからな!」
「確かに」
 剛志とレイジが茶々を入れてくる。
「うっせーな!目標ってのはそう簡単に達成できないの!!」
 それに対して不満げに叫ぶバン。
 場の空気が徐々に和やかになっていく……のだが、突如聞こえた拍手によってそれは崩された。
 
「ふふふ、なかなか良いバトルを見させていただきました」
 拍手をしながら現れたのは、豊臣イツキだ。
「お、お前は……!」
「豊臣イツキです。以後お見知りおきを。段田バン君」
「お前か!リサにあのフリックスを渡したのは!?」
「えぇ。おかげで良いデータが手に入りました。ザキ様への手土産に丁度いい」
「ザキだと……!お前、まさか……!」
 イツキの言葉から結論を導き出すよりも先に、良く見知った二人の人物がイツキの後ろから現れた。
「でゅふふふふ。リサたんの泣き顔がみられるなんて、来てよかったんだな」
「えぇ~、バトル出来ないなんて退屈だよ~。ゲンゴ趣味悪すぎ」
 
「お前ら、ゲンゴにユウタ……仲間だったのか……!」
 
「えぇ、私達は今回のスクールのテストで優秀な成績を残したトップスリー。通称『三武将』」
「三武将……?」
 
 突如現れたスクールトップスリーのフリッカー『三武将』。
 彼らの目的とは……!
 
 
 
 
      つづく
 
 次回予告
 
「織田ユウタ、徳川ゲンゴ、そして豊臣イツキは、スクールのトップスリー『三武将』だった。
こいつらが三人揃って俺達の前に現れたって事は、いよいよスクールとの決戦の時って事か!?
面白れぇ!ここでスクールとの因縁に決着をつけてやるぜ!!
 
 次回!『三武将出現!決戦へのカウントダウン!!』
 
次回も俺が、ダントツ一番!!」
 
 
 




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