弾突バトル!フリックス・アレイ FICS 第80話「消えない憎しみ」

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第80話「消えない憎しみ」

 

 デウスリベンジャーズがユーロフリッカー騎士団の機体を破壊して勝利すると言う衝撃的な試合から1週間後。
 千葉県市原市子供の国キッズダムでは、午前中にTSインテリジェンスVSユーロフリッカー騎士団の試合、午後にダントツウィナーズVSデウスリベンジャーズの試合が予定されていた。

 しかし……。
『さぁ、本日このキッズダムで予定されているTSインテリジェンスVSユーロフリッカー騎士団の試合ですが、試合時間が迫っているにも関わらず、ユーロフリッカー騎士団の姿がまだ見えない!このまま時間が過ぎてしまえば、TSインテリジェンスの不戦勝になってしまうぞ!!』

 ステージにはTSインテリジェンスだけが立っており、その対戦相手の姿がない。
 その様子をダントツウィナーズは控え室のモニターで見ていた。

「ユーロフリッカー騎士団、やっぱり機体の修理が間に合わなかったのか……?」
「無理もないよ。あんな壊れ方したら……」

 ……。
 ………。
 そして、時間は過ぎていき……。

『タイムアップ!残念ながら、ユーロフリッカー騎士団は間に合わずに不戦敗!勝ったのはTSインテリジェンス!!』

 控え室のモニターからバトルフリッカーコウの無情なアナウンスが響く

『試合を楽しみにしていた皆様には申し訳ない!午後のダントツウィナーズVSデウスリベンジャーズもよろしく!!条約に則り、チケット代の半額返済手続きは……』

 ドンッ!
 バンは感情に任せて床を殴りつけた。
「くそっ!デウスリベンジャーズの奴らめ……!!」
「あそこまで破壊しなければ試合出来てたはずなのに」
「他のチームを気にしすぎるな。午後の試合に集中しろ。腹立つなら勝ってリベンジするしかねぇだろ」
「分かってるけどさ」
「ザキの言う通りだ。心を乱しては我々も同じ目に遭うだろう」
「……」

 コンコン。
 その時、控え室の扉がノックされ、控えめに開かれた。
 入ってきたのはTSインテリジェンスだった。

「お前ら」
「少し時間いいかな」
「なんだ?祝勝でもしてほしいのか」
「そんなわけないだろう。見て欲しいものがある。今の君達に最も必要なものだ」
「なんだと?」
「もしかして……」
「この間記録したデウスリベンジャーズの分析結果が出た。そして、奴らの素性もある程度調べがついた」
「ほ、ほんとか!?」
 ガタッと身を乗り出すバン。一同はデイビットが持ってきたタブレットを食い入るように見た。

「デウスリベンジャーズの使用機体『イービルリッパー』は、全身に刃のような装飾を取り付けて、それで攻撃力を高めている造形機だ。しかし、刃はあくまで装飾品であり、切れ味はない」
「そりゃ、そうだ。切れ味なんかあったらレギュ違反になる」

 刃物や針、火薬など、生き物や物を不要に怪我たり破壊するような危険な改造。
 フィールドを汚すような迷惑な改造はレギュレーションで禁止されている。
 当然、FICSではそんな違反をされないように事前に厳正なチェックが行われており、試合中も目を光らせている。
 しかし、それでも格闘競技ゆえに高すぎる攻撃力や機体の耐久力の低さによって発生する破損や破壊に関しては反則を取る事が出来ない。
 とは言え、高レベルで実力が拮抗しているFICSのフリッカー同士で性能差によって一方的な破壊が起こる事は滅多にないはずなのだが。

「だが、それはあくまで試合前の話だ」
「試合前?」
「イービルリッパーの刃には特殊な素材がコーティングされており、それは普段は丸みを帯びた柔らかい性質だが、強い衝撃や負荷を受けると硬く鋭く変化する……と言うものだ」
「え、それって……!」
「そう、機体チェック時は問題ないが、試合中に負荷を受ければ鋭い刃物に変化する。そして、負荷がなくなれば再び装飾のナマクラとなる……だからこそ、反則が取れないんだ」
「そんな……!」
「あの野郎……!」
「で、肝心の対抗策は無いのか?」
「まだ研究中だ」
「それよりも、これを運営に報告した方がいいんじゃ」
「これから掛け合う予定だが、あくまでこれは状況証拠。これだけでどう判断してもらえるかは未知数だ」

「どちらにしても、これから我々がデウスリベンジャーズと対戦する事に変わりはないと言うことだな」
 覚悟を決めるように伊江羅が言う。
「……申し訳ない。もう少し早く分析が終わっていれば」
「気にすんなよ!これだけ分かっただけでも十分だ!」

 そして、TSインテリジェンスは運営本部へデータを提出。
 ダントツウィナーズは試合時間が近づいて来たので控え室を出る。
 会場までの廊下を歩いていると、一人の仮面をつけた男が前に立ちはだかった。

「お前は……!」
 それは、デウスリベンジャーズのオーナーを名乗っていた男だった。
「無駄な努力ご苦労な事だ」
 男は開口一番そんなことを言ってきた。
「なに!?」
「お前達が我々の事を探っていたのは知っている。だが、そんなものになんの意味もない」
「へっ、どうかな!もうネタは割れてんだ!お前らが汚い真似してるのはハッキリしてんだよ!!」
「お前達の中でハッキリした所で、それが運営がそれを受理し、判断が下されるまでどれだけ時間がかかるかな?」
「なに!?」
「元より選手にバレるのは想定済み。運営と観客が気付くのに時間が掛かればいい……」
「どちらにしたって、バレてしまえばあなた達の優勝はありえない!」
「無駄なのはお前らの方だ!」
「無駄ではない。この大会を台無しにするには十分だ」
「な、に……!」
 男の言葉に面食らう。
「私の目標は大会の優勝ではないのでな。憎きフリップゴッド、奴の希望たるこの大会を潰す……!」
「憎き、フリップゴッド……まさか、お前……!」

 バン達の知っている中で、フリップゴッドへ恨みを持っている人物は一人しかいない。
 男は不敵に笑って仮面を外す。その、晒された素顔は……。

「幻の第一回優勝者、フクベ……!」
「久しいな、フリップゴッドの使い達よ」
「お前っ!教会で懺悔してたんじゃないのかよ!!」
「……確かに私は罪を感じ、懺悔を続けていた……。だが、当の張本人であるフリップゴッドはどうだ?」
「え」
「私へ憎しみを植え付け、人生を台無しにしたあの男は、罪を感じるどころかのうのうと表舞台へ返り咲き、このような大会を開き甘い蜜を吸おうとしている!許せるわけがない……!!」
「そんな、そんな事で……!」
「じゃあ、デウスリベンジャーズは、そのために」
「そうだ。奴らからふんだくった慰謝料を元手に増やした資金でブラジルのスラム街から身寄りのないガキどもを雇って結成した。あのガキどもは元々フリッカーではないからな、金さえ与えればなんでもやる。便利な物だ」
「ふ、ふざけんなよ!!フリックスの事をなんだと思ってんだ!!」

「消えるべき、害悪だ。私が、神へ罰を下す!」
「なっ……!」
 迷いなき憎悪。それの姿にバン達は言葉がない。

「では、この後の試合楽しみにしている。アメリカの坊やどもが余計な事をしてくれたおかげで、こちらも加減をする必要がなくなったのでな」

 そう言い残して去っていった。
 ダントツウィナーズVSデウスリベンジャーズの戦い、どうなってしまうのか……?

 

   つづく

 

CM

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