弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第28話「四聖獣集結!潁川エンタープライズ最終決戦」

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第28話「四聖獣集結!潁川エンタープライズ最終決戦」

 

 赤壁杯会場。
 休憩時間も終わり、決勝戦を待つだけなのだがステージでは本戦と同様の盛り上がりを見せていた。

『さぁ、急遽開催されたエキシビジョンマッチ!赤壁杯で活躍したあらゆるフリッカーの戦いがもう一度観られると言う事で、会場は大盛り上がりです!!』

「いけっ!コンバットスティングル!!」
「受け止めろ!ギガモス!!」

「いっくでぇ!スライドメレオン!!」
「飛び上がれ!ホッパソルジャー!!」

「躱せ!バリオペガサス!」
「おやおや、珍しいですね。実直なあなたが逃げ戦術とは」
「少し事情があってね。まぁ、じっくり楽しもうじゃないか」
「良いでしょう。逃げ戦術ならこちらの十八番。ヒドゥンスネイカー!!」

 いくつか用意された大型のフィールドでのバトルロイヤル方式のルールのようだ。

『各所で激しいぶつかり合いの連続!!さすがはトップフリッカー!エキシビジョンとはいえ、その迫力は本戦に負けていません!!』

 その様子を諸星コウが1人観戦席で眺めていた。
「……これでしばらくは時間が稼げるな。あとは、彼らの健闘を祈るのみ」

 ………。
 …………。

 潁川エンタープライズ最下層研究室。
 そこでは、タツヤが特殊な装置にバイフー、シェルロード、ドラグナーの3機を入れる事でセイバーギラフレアを擬似的なデザイアへ進化させてしまった。

「さぁ、ショータイムだ!デザイアの力の片鱗、存分に味わっていくがいい!!」
 ボコッ、ボコッ、とまるで溶岩のようにボディをうねらせながらセイバーギラフレアが禍々しいオーラを纏っている。

「なによ、あれ……」
「あ、あれがデザイア……!」
「くそっ、俺のドラグナーをあんなもの作るために……!」
「とにかく、倒すしかない!」
「そうだな。いくぞ、ケンタ!」
「うん!」

「「「いっけぇ!!」」」
 バシュッ!!
 オーガ、ケラトプス、アルトロンの三体がデザイアへ突っ込む。
 しかし、触れる前に弾かれてしまった。

「な、なんだ?何が起きたんだ……?」
 攻撃したはずなのに逆に弾かれてしまった事に理解が追い付かない。
「何も起きてはいない。ただステップで薙ぎ払っただけだ」
「薙ぎ、払った……!?」
「だったら今度はちゃんと見えるようにゆっくりと見せてあげよう。デザイアの力をね!」
 シュンッ!
 どこがゆっくりなのか突っ込みたくなるほどの勢いで擬似デザイアが真っ直ぐ突き進んできた。
「トータス!!」
 タカトラが咄嗟にそれを迎撃しようとするが逆に弾かれてしまう。
「タ、タカトラがこんなあっさり……!」
「なんて力だ……!」

 それからも何度も攻防を続けるが、一向に歯が立たず、圧倒されてしまう。

「たった一機で、こんな力を発揮するなんて……!」

「ふ、はははははは!!良いリアクションだ!楽しんでいただけたのなら、こちらも開発者冥利に尽きる……うっ!」

 ゴポッ!
 高笑いしていたタツヤがいきなり顔を顰めて俯き、嘔吐いた。

「な、なんだ、どうしたんだ?」
「ふ、ふふ、気にする事じゃない。ただの製品上の仕様だ」
 口を拭いながら、タツヤは顔を上げる。本人は余裕の表情のつもりだろうが、足元がおぼついていた。
「仕様って、どうみてもおかしいだろ!?」
「何もおかしくは無い。デザイアは誰が使っても最強になれると言っただろう?それはこの機体が使い手の脳に働きかけて能力を無理やり引き出しているからだ。その反動が来るのは当然の事」
「な、なに!?」
「反動……そう言えばドラグナーを使ったばかりの頃も……!」
 ゲンジはドラグナーを手に入れたばかりの頃を思い出した。
 シュートの反動で腕を痛め、それがソウに完敗した直接の原因になった。
 ゲンジはそれを克服するために猛特訓を重ねたものだが……。

「って、ちょっと待てよ!それじゃ、いくらデザイアは使い手を選ばないって言っても、反動に耐えられるかどうかは……!」
「まぁ、フリッカーによるだろうね」
 タツヤはシレッと恐ろしいくらいにあっさりと答えた。
「なっ、そんな機体を一般のフリッカーに使わせようってのか!?」
「何が問題なんだい?最強の力が手に入る事に違いはない。その後など知った事か」
「こ、こいつ……!」

 改めてタツヤの倫理観に恐怖するゲンジ達。
 しかし、それ以上にアスカの顔色が変わった。
 血の気が引き、蹌踉めくように後退る。

「な、なによ、それ……話が違うじゃない……!デザイアが完成すれば、弱くて悲しむフリッカーがいなくなるんじゃなかったの!?こんな、反動があるなんて、聞いてない!!」
 叫ぶアスカへタツヤは冷たい視線を向ける。
「等価交換と言う言葉を知らないのか?通常なら、類稀な才能と血の滲む努力によって得られる力を誰もが手にできるんだ。相応の代償があるくらい、社会通念というものだろう」
「そ、そんな……!」
「まさか、何の代償も払わずに弱さを誤魔化せると本気で思っていたのかい?だとしたら、その方がよほど醜悪な望みだろう」
「っ!ち、ちがっ、あたしは、そんなつもりじゃ……!
 アスカの脳裏に、過去の記憶が蘇る。

 “ねぇ、諦めないでもうちょっと頑張ってみようよ!”
 “いや、無理でしょ”
 “やっぱ本気でやってる男子には勝てないよね”
 “でも、次はやってみなきゃ分からないじゃない!2人ともフリックスバトル好きなんでしょ!?”
 “……あのさ、アスカ。好きな事やって報われない気持ち、分かる?”
 “嫌いな事やるよりも辛いんだよ”

「……あたしは、デザイアプロジェクトが完成すれば、弱くても勝てなくても関係なく皆で楽しくフリックスが出来るようになるって思ったから……ホウセンにも、皆のためになる仕事に就いてもらえると思ったから、だから協力したのに……!」
 アスカはポロポロと涙を流しながら、懺悔をするように呟く。
「こんな事に、こんな事に加担するなんて、あたし……!」
「聞くな、アスカ!」
「アスカお前、そこまで……」

「まったく、自分で望んでおきながら被害者ぶるとは、とんだサイコパスだ。このような連中に付き合ってられないな、そろそろ仕上げに入るか」
 タツヤはリモコンを取り出してボタンを押す。
 すると、ドラグナー達の入っている装置が激しく振動を始めた。
「な、なんだ!?」
「出力アップだ」
 ガガガガガ!!!
 装置から、明らかに歪な音が鳴り響く。
「ぐっ!……ふふ、さすがに負担も大きいな……まぁ耐えられない事はない」
 ミシミシ……!
 そして、中にあるドラグナー達3体の機体が軋み始めた。ギラフレアに力を与えている機体もかなりの負担がかかるようだ。
「ドラグナー!」
「バイフー!!!」
「おい、あの機械を止めろ!ドラグナー達が壊れる!!」
「何を馬鹿な。既にあの三機はデザイアの一部だ。出汁を取った後の抜け殻が壊れようと大した損失ではない」
「なんだとぉ……!」
「バイフーは壊させない!!」
 ゲンジとケンタが装置へと駆けていく。
 が、それよりも早く2人の横を通り過ぎる巨体があった。
 ホウセンだ。
「うおおおおおお!!!」
 バーーーン!!
 ホウセンはその巨体を利用して体当たりをするが、装置はびくともしない。
 それどころか、電撃がホウセンへ襲いかかる。

「ぐあああああああ!!!!」
 衝撃で吹っ飛ばされて尻餅をつく。
「やめておきたまえ。いくら君の馬鹿力でもこの装置を破壊するのは不可能だ」
「ざけんな……シェルロードは俺と一緒に戦った相棒だ!簡単に壊されてたまるかよぉぉぉ!!」
 ホウセンは痺れる身体に鞭を打って再び突進する。
「ホウセン……」

「ぐおおおおおお!!!!」
 装置に身体を押しつけ、電撃に必死で耐えながら押し込んでいく。
「ほぅ、思ったよりタフだな。だが、そんな事しても無駄だよ」
「舐めるなよ……どれだけお前の実験に付き合わされたと思ってんだ……!装置の横にあるこいつを握りつぶせばいいって事は……!」
 ホウセンは必死に腕を伸ばし、装置の横にある直径30cmほどの赤い球体を掴んだ。
「小癪な!」
 突如、タツヤの表情に焦りが生まれたと思ったら、いきなり電撃の出力を高めてきた。

 バリバリバリバリ!!!!!

「ぐあああああああ!!!!!」

 さすがのホウセンもこれには苦しみもがき、赤い球体から手を離してしまう。
「ちょ、あんたやり過ぎよ!ホウセンを殺す気!?」
「忠告を無視して自ら突っ込んだのは彼だ。私に非はない。それにこれでも生命に関わるギリギリの出力に抑えている。心配する事はない」
 そうは言っても危険な事に変わりはない。

「とにかく、助けないと!」
 ケンタ、サクヤ、ナガトがホウセンを助けるために装置へ狙いを定める。
「まったく、そんな事をしてる場合じゃないだろうに」
 当然、タツヤはそれを妨害するために擬似デザイアをシュートするのだが……。

「やらせないよ!!」
 シュンッ、ガッ!!
 大型変形したケツァルトルとそれを支えるトータスが壁となって擬似デザイアの道を塞ぐ。
「無駄な事を!!」
 擬似デザイアはその壁を弾き飛ばそうとするのだが……。
「むっ!」
 ガキンッ!!
 ケツァルトルとトータスの壁は思ったよりも強く、突破出来なかった。
「ば、ばかな!計算ではこちらのパワーが上のはず……!」
「あんたには分からないでしょうね!誰かを想う事で出せる力の強さを!!」
「ほぅ……興味深い」
「今だ!いけっ!」
 アスカとタカトラが押さえ込んでいる間に、ケンタ達が装置へ向けてシュートする。

「「「いっけええええ!!」」」

 バーーーーン!!
 三体のフリックスが装置にぶつかった事で発生した衝撃波でホウセンは吹っ飛び、電撃からは解放される。

「ぐっ!」
 しかし、思いの外勢いよく飛ばされてしまい、その先には何かの機械の角があった。
「あ、危ない!!」

 プシュウー。
 その時、扉が開き巨体が駆けてきて飛ばされたホウセンを受け止めてそのまま一緒に飛ばされて壁に背中をぶつけた。

「グボァ!」
 潰れた蛙のような汚い声を発しながらもホウセンを抱きかかえているのは、潁川トウマだった。

「「「え、潁川トウマ!?」」」

「だ、大丈夫かい、ホウセン……!」
「社長……!」
「よかった、無事なようだね」
 潁川は優しくホウセンを降ろすと、ヨロヨロと立ち上がった。
「まったく、何をやっているんですか、潁川さん」
 タツヤはやれやれとため息を吐く。そんなタツヤへ潁川は怒鳴った。
「それはこっちのセリフだタツヤ!!いくらエンターテイメントだからって、これはやりすぎだ!!!デザイアは世界中の子供達を笑顔にするための玩具なんだぞ!!!」
「潁川さん、何言ってるんです?我々が作っているものは、初めからこう言うものじゃないですか。それを承知で凍結したプロジェクトの再開を望んだのはあなたですよ?」
「……確かにデザイアには多少の問題はあったが、それはちゃんと解決すると言う約束だったではないか!開発は即刻中止だ!!」
「そうですか……では、ここまでの費用はどう回収するおつもりです?このまま中止にしてしまえば、莫大な負債を抱える事になりますが」
「ぐっ!しかし、こんなものは売り物にはならん!!」
「ご安心を。例え売れなくとも、この強さは見せ物としては十分収益は得られます。開発さえしてしまえばね」
「……金は欲しいが金の問題じゃない!!子供達の笑顔を奪うものを世に出す事が問題なのだ!」
 潁川がそうハッキリ言うと、タツヤは一瞬目を閉じて諦観の表情になった。

「……そうですか、分かりました」
 観念したような口調に潁川はホッとするが、タツヤは冷徹な表情になり続ける。
「では私は辞職するとします。ここまで来ればあなたの手を借りずとも開発は可能だ」
「どうあっても、中止にする気はないのか……!」
「当然。今の私はフリーだ、誰にも止める権利はない!」
 バシュッ、バーーン!!!!
 潁川の足元へデザイアをシュートし、その衝撃波で潁川は吹っ飛ばされて尻餅を付いた。
「ぐっ!」
「私の夢は必ず実現させる!!」
 潁川は地に伏しながら悲痛に叫んだ。
「僕が、僕が愚かだった……!頼む、あの悪夢を……僕の過ちを倒してくれぇ!!」
「潁川……さん……」
「あたしと、同じだったんだ……」
「この人、やっぱり悪い人じゃなかったんだね」
「神宮タツヤ、諸悪の根源は貴様のみだったと言う事だな」
 全員のヘイトがタツヤに集まるが、タツヤは全く意に介さない。

「力の差は既に明らか。だが、先程見せてくれた想いの力とやらでどこまで対抗してくれるか、興味深い実験にはなりそうだ」
 タツヤが擬似デザイアの照準を向ける。
「来るぞ!」
「迎撃だ!」
 バゴォォーーーン!!!
 全機体で同時にシュートし、擬似デザイアを迎撃しようとするが、力負けして弾き飛ばされてしまう。
「みんな!!」

「想いの力とやら、その程度か」
「くっ!」
「やっぱり、強い……!」
「何か手はないのか?」
「……あの、赤い球体だ」
 ボロボロの身体でホウセンが苦しそうに口を開く。
「そっか、そう言えばさっき狙ってた。よし、いけ!アルトロン!!」
「ちがっ、待て!!」
 ホウセンの言葉で閃きを得たケンタはアルトロンを赤い球体へ向けてシュートするが、ボヨンと弾かれてしまう。
「は、弾かれた」
「無駄な事を」

 最後まで話を聞かずに無駄なシュートをしたケンタへ、ホウセンは軽く苦言を呈した。
「先走んな、よく聞け。あの赤い球体の中にジェネレーターがある、だがあれは対フリックス用の装甲だ。直接握り潰さねぇ限り、ビクともしねぇ」
「それでさっき突っ込んだのか……」
「でも、それじゃ電撃にやられちゃうんじゃ」
 フリックスではビクともしない、直接壊そうにも電撃を喰らってしまう……。
「何か、いい手はないの?」
「わりぃが、俺も手があるならとっくに試してる。一か八か電撃に耐えてやろうとも思ったが、このザマだ」
 ホウセンは自分の身体を見下ろしながら自嘲気味に言った。
「打つ手なしか……!」

「ふふふ、デザイア完成まであと一歩!ここで邪魔者を消して、あとは赤壁杯会場に乱入してソウからカイザーフェニックスを奪うだけ!」
 バシュッ!
 ケンタ達が怯んでいる隙に、タツヤは素早くウェイトカウントを消費し再び擬似デザイアをシュートする。

「スウォープダイブ!!」
 バキィ!!
 しかし、横から赤いボディと虹色の羽を持ったフリックスがダイブして擬似デザイアの横っ腹を突く。
 突っ込んだフリックスの方が逆に弾かれるが、それでも擬似デザイアの軌道は逸らせた。

「なに!?」
「……俺に何か用か?タツヤ」
 そのフリックスの持ち主、南雲ソウが部屋の入り口からゆっくりと歩んできた。

「「「南雲ソウ!?」」」
 思わぬ来客に一同驚愕の声を上げた。

「ソウ。よくここが分かったね」
「長い付き合いだ。貴様の考えそうな事など手に取るように分かる」
「ふふふ、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。丁度いい、飛んで火を纏う夏の鳥とはまさにこの事!今ここでカイザーフェニックスを取り込み、真のデザイアを完成させる!」
 声を荒げるタツヤだが、ソウはそれを無視してコソッとナガトへ声をかけた。
「……おい、神童」
「え?」
「あの装置の横に赤い球体があるのは分かるな」
「あ、あぁ。ジェネレーター、だよな」
「知ってるなら話が早い、貴様の機体でアレを打ち砕け」
「しかし、あれは対フリックス用の装甲なんじゃ」
「正確には、真球形状と特殊素材の弾力で一方向からの打撃を無効化する。並のフリックスでは破壊出来ないが……」
「そうか、鬼牙二連斬なら」
 ナガトは、さっき弾力のあるドラグナーのシュートポイントを挟み込み、弾き飛ばした事を思い出した。
「よし。ゲンジ、話は聞いてたな」
 ナガトはオーガを元のスケールに戻してゲンジへ渡した。
「な、なんだよいきなり」
「どうせなら、自分の力で愛機取り戻したいだろ?」
「ナガト……あぁ、サンキュー!」
 ゲンジはマイティオーガをスケールアップさせるための構えを取った。
「まさか、あの機体はオーディンと同じ?ちっ!」
 ゲンジの動きに気付き、タツヤはあからさまに動揺を見せてデザイアのシュート準備をした。

「ゲンジを支援するぞ!」
「「おう!」」
 いかにデザイアと言えど、シュート準備中に一気に三体の攻撃を受ければたまらずすっ飛ぶ。
「しまっ!」
「いっけええええ!!!」
 バシュウウウウウ!!
 ゲンジのシュートでスケールアップしながらぶっ飛んでいくマイティオーガ。
 そのまま赤い球体へ激突。
「鬼牙二連斬!!」
 パーーーン!!
 と言う破裂音とともに球体が割れてジェネレーターが顕になる。
「小癪なああああ!!!」
 バキィィィ!!
 ようやくシュート準備完了したタツヤ。怒りで頭に血が上った勢いでデザイアをシュートしてオーガを吹っ飛ばす。
 バーーーン!!
 凄まじい距離を飛ばされたダメージでオーガのHPは0になり撃沈してしまった。
 が、既に役目を終えたオーガを撃沈させてもアドは薄い。

「今だ、ケンタ!!」
「うん!いっけぇアルトロン!!」
 バキィィィ!!
 アルトロンの一撃でジェネレーターがぶち壊れる。
 それによって装置が破裂し、中からドラグナー、バイフー、シェルロードが飛び出した。

「ドラグナー!」
「バイフー!」

 ゲンジは戦闘不能になったオーガをナガトへ返しつつ、ドラグナーをキャッチ。
 ケンタはバイフーとシェルロードをキャッチした。

「おおお、ドラグナー!!やっと戻ってきたな!!」
 ゲンジは感激のあまりドラグナーへ頬擦りする。
「バイフー……よかった、本当に……」
 ケンタもバイフーを抱きしめて涙した。

 そして擬似デザイアの姿も徐々にセイバーギラフレアへと戻っていく。
「くっ、オーディンの他にあの装甲を破れるフリックスがあったとは……!」
 ここに来て、タツヤが本当に悔しそうに顔を歪めた。
(オーディン?)

「ホウセン、くん。これ……」
 ケンタは恐る恐るホウセンへ近づき、シェルロードを差し出した。
「……悪いな」
 ホウセンはボソッとそう呟いて受け取り、ゆっくり立ち上がった。
「もう大丈夫なの?」
「あれだけ休めば十分だ。きっちり借りを返してやるぜ」
 ホウセンはタツヤを睨みつけた。
「よし、このまま畳みかけるぞ!」
 そして、ゲンジ達はそれぞれ取り戻した機体をスケールアップさせた。

「俺たち四聖獣フリックスの力を見せてやる!いけっ、ドラグナー!!」
「僕らの絆を見せるんだ!ディバイトバイフー!」
「後悔させてやれ!シェルロード!!」

 三体のフリックスがセイバーギラフレアへと飛んでいく。

「ふっ、機体を取り戻した程度で勝利ムードは早いんじゃないか?データは十分に取り込んだ!今のセイバーギラフレアでも擬似デザイアに近い力は維持している!」
 見ると、セイバーギラフレアの姿は若干擬似デザイアの姿が薄くダブっており、たまにそれらが点滅するように入れ替わって映っていた。
 その力はタツヤの言う通り、擬似デザイアだった頃から僅かしか落ちておらず、三体のシュートを受け止めるほどだった。

「くっ!」
「カイザーフェニックス!ヴァリアブルエクスプロージョン!!」
「甘いっ!」
 翼を広げたフェニックスがマインヒットを狙いに突っ込むが、ステップで回避される。

「ほぅ……!」
「ふっ、四体揃っているとは言え所詮はバラバラの力。三体分でもデザイアとして融合させたギラフレアの方が上なのさ」
「くそっ……!」
「万に一つ、君らが勝つ手段があるとすれば……四体の力を一つにする事だね。そうすれば三体分の力しかない今のギラフレアに勝る」
「なに!?」
「なんせ、元は一つのフリックスだ。簡単だろう?」
 タツヤがニヤリと笑う。確かに言っている事は正しいのだが……。
「いやだ!例え本当は一つの力だったとしても、俺達はバラバラだから強くなるんだ!」
「そうだよ!一つになったらライバルとして戦えない!!」
「あぁ、シェルロードでこいつらと戦ってた方がデザイア使うより強くなれるぜ!」
「なるほど。しかし、ここで勝利を逃しては強くなれる未来も手放す事になるぞ?」
 挑発してるようでどこか焦った口調のタツヤへ、ソウが鼻で笑う。
「ふん、見え透いた口車だな。貴様はデザイアさえ顕現出来れば、勝敗などどうでもいいのだろう?」
「さすがはソウ、見抜いていたか。だが、このままでは私の勝ちは確実。そうなればどのみち四神フリックスは全て手に入る……ぐっ!」

 ゴッポォ……!!
 突如、タツヤが再び嘔吐いた。さすがに身体が限界に近づいていたのだろう。

「やはりな。勝ちが確実なのはどちらかな?このままでは貴様の身体が朽ちるのは時間の問題だ」
「……ふっ、しかし君らも時間稼ぎ出来るほどの余裕はないんじゃないか?」
 タツヤに指摘されてゲンジは不意に思い出す。
「あ、決勝戦……!」
 そう、ゲンジ達は決勝を控えている身。このまま膠着状態が続けば、タツヤの望みもゲンジ達の夢も全てが水の泡になってしまう。

「早くこいつを倒さないと……!」
「でも、僕らの今の力じゃ負けないようにするので精一杯だよ!」
「ちっ、だからって勝つためにデザイア作ったら本末転倒だぜ!」

 激しい攻防戦を繰り広げるているが、お互いに決め手にかける。
 ジリジリとゲンジ達が押されている状況だ。

「ぐっ、何か手は……あ」
 必死に頭を巡らせていると、ゲンジはさっきのタツヤの言葉を思い出した。

 “くっ、オーディンの他にあの装甲を破れるフリックスがあったとは……!”

(デザイアを作る装置を破壊出来たのはオーガの他に遠近リョウマのオーディン……そのオーディンは、昔デザイアに破壊された……)
 なんとなく、何かが線で繋がりそうな気がする。

「ナガト、レジリエンスオーディンって新しく作り直したオーディンなのかな?」
「え?あ、あぁ、前はフルフォースオーディンって機体を使ってたな」
「それって、ナガトの二連斬みたいな技は使えたの?」
「あぁ、どっちのオーディンも使える。当然だが、レジリエンスオーディンの方が強化されていたが」
「って事は、もしも、デザイアがあの対フリックス装甲に近い技術も使ってたとしたら、オーディンは邪魔になるよな」
「そうか!天敵になりかねないオーディンは破壊されるし、リョウマも対抗するために強化するはず……!」
「イタチごっこになるとキリがないから、対立せずに味方についていたってのも理解出来るよな」
「確かに。だが実際は、オーガの攻撃は通じなかった……」
「オーディンもデザイアに勝てたわけじゃなかったっぽいし。多分、ぶつけ方が違ったんだ。あの、ジェネレーターの装甲を壊した時と同じ条件なら、もしかしたら……」
「打撃で弾き飛ばすんじゃなく、圧力で負荷を与える、って事か」
 さすがはナガト、すぐにゲンジの言わんとする事を理解した。ゲンジもナガトに話した事で確信を得たようだ。
「しかし、オーガはもう戦えない。それでも何か手があるのか?」
「……確実じゃないけど、一応」
 ゲンジはドラグナーの後ろの羽を変形させた。それは、まるで2本の槍のように鋭くボディ上部に背負うような形で装備された。
「この形態は」
「前に家で弄ってた時に発見したんだけど、特に使い道が分からなかったから放置してたんだ。でも、さっきオーガをシュートしてみて思い付いた」
 ゲンジはこの状態で更にドラゴンヘッドも展開させた。
 まるで三本の槍を突き出しているようだった。

 その様子を、タツヤと攻防しながら横目で見ていたソウはケンタとホウセンへ声をかけた。
「白虎のフリッカーに玄武のフリッカー、散開して青龍と挟み撃ちで同時攻撃するぞ」
「え、あ、はい!」
「ちっ、偉そうに指図すんじゃねぇよ」
 素直に返事したケンタも悪態をついたホウセンもソウの言う事を聞いて、ギラフレアを挟んでゲンジとは反対側に着いた。
「何の真似だ……!」

「ソウ……」
 ゲンジも、ソウが自分の意図を察してくれた事に気付いた。
「よし、行くぜ……ライジングドラグナー!!!」
 バシュッ!!
 ドラグナーがシュートされる。
「今だ!ヴァリアブルエクスプロージョン!!」
 翼を広げたフェニックスがギラフレアを覆うように受け止める。
「バイティングクロー!!」
 そこへバイフーがグリップを効かせながら後ろを支える。
「ブロッケンボンバー!!」
 シェルロードは向かってきたドラグナーとほぼ同じタイミングでギラフレアにぶつかるようにシュートした。

 ガッ!!
 挟み撃ちになるようにドラグナーがギラフレアへぶつかり、ドラゴンヘッドが掬い上げる。
 そして掬い上げたところを上部の槍が突き刺した。
「ドラゴンランストライデントォォ!!!」
「バカな!青龍にオーディンと同じ力が備わっていただと!?」

 挟み撃ちにした事による凄まじい圧力が運動エネルギーとしてギラフレアに伝わり装甲が割れ、砕け散った。

「ぐわあああああ!!!!」

 ギラフレアが撃沈する衝撃を受け、タツヤもまた叫び声を上げながらふっ飛んだ。
 ついに、デザイアを巡る戦いに勝利したのだった!

 

    つづく

 

 

CM

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