第61話「アジア予選開幕!マーライオンの波状攻撃!!」
ソルトレイクスタジアム。
インド最大規模のスタジアムで、さまざまな世界的競技が行われている場である。
本日はここでFICSアジア大陸予選大会が開催される。
会場にはすでに各国の代表選手、観客達が集まっている。
「おー、いよいよって感じだなぁ!」
「うん、ここまで長かったね……」
「これが世界へのスタートラインだ。気を引きしめていけよ」
「へっ、こんな予選軽く突破してやる」
「とかなんとか言って、この前みたいに油断して負けんなよ?」
ハオランに負けた事を思い出しながらバンが揶揄うとザキが睨みつけた。
「あん?……あんなのはただの戯れだ。だが、試合で当たったら絶対にぶっ潰す」
やはり自分に恥をかかせたハオランに対してはかなり憎しみを抱いているようで、ザキの目には復讐の炎が燃え上がっていた。
「あ、ははは……頑張ろうぜ」
その迫力にさすがのバンもたじろいだ。
「余計な事言わなきゃ良いのに」
……。
………。
そして、開会式も厳かに終わり大会が始まる。
大会はトーナメント形式で通常アクティブの3on3で試合が行われるようだ。
何戦か試合が終わった後にダントツウィナーズの対戦となった。
『さぁ、次の対戦カードは日本代表ダントツウィナーズVSシンガポールチームだ!』
それぞれのチームが礼をし、フィールドに着く。
「シンガポールチーム……一体どんなフリッカーなんだ?」
「関係ねぇ!全員ぶっ飛ばすだけだ!!」
「油断しないで、相手は国の代表なんだから」
「うるせぇ、俺に命令すんな」
ザキは前回の敗北を引きずって気が立っているようだ。
下手に刺激しない方がいいだろう。
そして、試合が始まる。
『では、いきます!3.2.1.アクティブシュート!!』
バシュッ!!
一斉に6体のフリックスがフィールド中央に向かってぶっ飛ぶ。
「いけぇ!ビートヴィクター!!」
「プロミネンスウェイバー!!」
「どけぇぇ!!!」
先行するヴィクターとウェイバーを後ろからディバウアがスピンで衝突し弾き飛ばす。
そのせいでダントツウィナーズは完全にバランスを崩してしまった。
「な、なにすんだ!」
「邪魔なんだよ!」
チームワークがバラバラのダントツウィナーズ。それを見逃してくれるほどFICSは甘くない。
「今だポー!!マーライオン!!」
「「ライオンサン!!」
ガッ!!
シンガポールチームの機体、マーライオンを模した機体が大口でダントツウィナーズを受け止めて、その隙にハンドスピナーを鬣のように取り付けているライオン型機体がフィールドの奥へ向かった。
『これは見事なチームワーク!リーダーのルーポガ君のマーライオン型フリックスがダントツウィナーズを受け止め、その隙にメンバー二人が先手を取った!!』
「げっ!」
「ちっ」
「これじゃ、ステップ使えない……!」
ダントツウィナーズは三体固まった状態でマーライオンに阻まれているのでステップによる回避が効かない。
そこへライオンサン二体の容赦ない攻撃が襲いかかる。
バチンッ!!
難なくダントツウィナーズの3機にマインヒットを決める。
「くぅ!」
『さぁ、先制ダメージを決めたのはシンガポールチームだ!ダントツウィナーズの3機は残りHP2!』
「甘い奴だ!全員まとめてぶっ潰す!!」
殆どの機体が密接している。これならザキの必殺技が1番通じやすい状態だ。
「ちょ、おまっ!俺たちまで巻き込む気か!?」
「このターンで落ちてもお前らは自滅で済むだろ、我慢しろ」
「そう言う問題じゃねぇ!!」
あからさまに味方を巻き添えにしようとするザキに反感を持つバンだが、その前にルーポガが宣言する。
「まだだポー!フリップスペル発動!ウェーブフラッド!!」
ウェーブフラッド……シュート後に発動し、敵機を好きな位置と向きに移動させる。
マーライオンの大口から大洪水のエフェクトが発生してダントツウィナーズの機体を押し流していく。
この効果によってダントツウィナーズはバラバラの位置へ移動させられてしまった。
「なに!?」
『これは上手い!シンガポールチームはフリップスペルを駆使して反撃を見事に回避した!!』
「FICSはチーム戦!これでチームワークは使えないポー!」
チーム戦においてメンバーをばらけさせられるのは大きなデバフになる。
これが、一般的なチームならば。
「けっ、好都合だ。これで邪魔な奴らがいなくなった」
「へ?」
「まぁ、今の俺らにとっては、これが良いかもな」
「うん。元々私たちは個人で戦ってたしね」
と言うわけで、バン達はそれぞれ別で一人一人を狙い撃ちする。
「いっけぇ!ビートインパクト!!」
「ダークホールディメンション!!」
「フリップスペル!ブレイズバレット!!」
バゴォォォォ!!!
バンとザキが敵機をフリップアウトさせ、リサはブレイズバレットを決めた。
これでシンガポールチームはそれぞれ残りHP1になる。
『一人一人の火力で勝るダントツウィナーズ!一気にシンガポールチームのHPを削った!!』
「んなっ!」
「おっしゃ!追い詰めたぜ!!」
『さぁ、仕切り直しのアクティブだ!』
両チームスタート位置に機体をセットする。
「おい、次は邪魔せずに大人しくしてろよ」
「ザキ、お前また勝手な……!」
「巻き込まれてぇなら好きにしろ」
仲の悪そうなのに強いダントツウィナーズの様子を不思議がるシンガポールチーム。
「なんだあいつら、チームワークめちゃくちゃなのに」
「どうしてあんなに強いんだポー」
そんなシンガポールチームをザキが睨みつける。
「テメェら、運が悪かったな。今の俺は気が立ってんだよ!!」
『3.2.1.アクティブシュート!!!』
「ブチ砕け!!!ダークホールジェノサイド!!!」
面積を広げたダークネスディバウアを両手でスピンさせる事で周り全てを弾き飛ばすザキの大技だ。
これによってシンガポールチームはあっさりと場外してしまった。
『決まったー!!!ダントツウィナーズのザキ君!凄まじい大技でシンガポールチームを下す!!よって勝者はダントツウィナーズだ!!!』
ダントツウィナーズの勝利。
何気にチームとして戦い、初めて他国に勝てたのだ。
しかし、なんとなく納得がいかない。
「けっ、楽勝だな。これで奴らも潰す。お前ら、勝ちたきゃそれまで俺の邪魔をするなよ」
「なっ、なに勝手な事言ってんだよ!これはチーム戦だぞ!!」
「それじゃ勝てないってユーロフリッカー騎士団との戦いで分かったはずなのに……!」
「それはそれだ。あいつを潰した後に考えてやるよ」
タイマンで完敗した経験のなかったザキは完全にハオランへのリベンジに意識を持っていかれている。
それでも他を圧倒する力を持っているから負ける事は無いだろうが……このままではまずい。
バンとリサは勝利したにも関わらずこの先の戦いに不安を覚えた。
つづく
CM