弾突バトル!フリックス・アレイ ゼノ 第7話「ノーパンの決意と男の夢」


第7話「ノーパンの決意と男の夢」

 

 フリックスアレイが戦力として活用され、その力を持ってフリップ魔王と呼ばれる存在が支配せんとしている異世界【フリップワールド】。
 その世界のどこかにある、暗雲立ち込め雷鳴轟く丘の上に拠点である魔王城があった。

 城内は魔王だけでなく従事する大勢のフリッカーやモンスターも住んでおり。
 フリックスやモンスターの製造、育成施設なんかも充備している。

 その中の施設である工房の一エリアでジュリエが細々と作業していた。

「あぁ〜んもう!あの二人ったら派手にやってくれちゃってぇ!全然直らないじゃないのよぉ!」

 先日、弾介とレイズのコンビネーションプレイによって破損してしまったクロススプラッターの修理をしているのだが、ノコギリとプラパーツという異種素材の接着に苦戦しているようだ。

「んもう!今度会ったらタダじゃおかないんだからぁ!」

 ジュリエが作業に手こずっている事をぼやいていると、横からヒョイッと小柄な少年が顔を出してきた。

「あれぇ?クロススプラッターまだ直ってなかったんだ」
「あらスリマ。そうなのよ〜、ちょっとめんどくさい所をやられちゃって」
「ふ〜んどれどれ……あ、ノコギリの付け根部分が逝っちゃったんだ。これは修理に時間かかるかもね」

 クロススプラッターの破損状況を瞬時に見抜いたスリマの態度に、ジュリエは共感者を得たとますますヒートアップする。

「ほんとよ!伝説のフリッカーが現れたって魔王様から伺ったからわざわざ出向いたのに、あんなオイタするような子とは思わなかったわ!……顔は可愛かったけど」
「あはははは!でも、このくらいの破損なら僕の開発した自動修復装置使えば一日で直せると思うよ」
「ほんと?じゃあお願いしようかしら」
「いいよー!でもジュリエをやっつけるなんて、凄いなぁ。僕も会ってみたい!」
「相変わらず無邪気なんだから……それよりもあなたはモンスヴィレッジ近くの森に落ちたフリックス調査の任務があるんじゃなかったっけ?」

 ジュリエに言われると、スリマは視線を逸らしながら苦笑いした。

「あ、あははー!もちろんボチボチ進めてるよ〜!でもそれよりもあの村でもっと面白い研究をしてるんだ」
「面白い研究?」
「うん!最終的に魔王軍の利益になるはずだよ。それでお願いなんだけど、ジュリエって粘変異剤持ってたよね。あれちょっと貸して!」
「良いけど……あなた普段モンスター使役しないじゃない。何に使うの?」
「面白い事さ!あはははは!」

 笑顔ではぐらかすスリマを不審に思いながら、ジュリエは緑色の液体の入った小さなの容器をスリマに渡した。

 所変わって、弾介とシエルのシーン。
 ドラグカリバーを取り戻した後の翌日の昼下がり、二人はイブから教わった黒いフリックスのような隕石の落ちた森の近くにある村を目指して歩いていた。

「うっ!すっごい風……!」

 ビュオオオオオオ!!
 前後左右上下、あらゆる方向から吹きかかる突風に弾介は顔をしかめた。

「ここは、風の谷です。左右の岩壁が特殊な形をしていて、常に突風が吹いてるんですが……きゃぁっ!!!」

 シエルはスカートを手で必死に抑えながらチョコチョコと小股で歩いている。

「シエル……そんなに捲れるのが嫌ならスカートの下に何か履けば良いのに」

 シエルがスカートの下に何も履いてない事は昨日発覚したのだが、それは今日も変わらずのようだ。
 弾介の言うように何か履けば解決のはずなのに、シエルは頑なに主張する。

「そ、そういうわけにはいかないんですぅ!私達祭祀は、定められた正装でないと魔力が発揮できないんです!下着を履くと魔法が使えなくなるんですよぉ……!」

 シエルは顔を赤らめながら涙目で叫んだ。

「何そのめんどくさい制約……。ってか、基本戦闘はフリックス使えば良いし、魔法なんて滅多に使わないんだから別いいんじゃ」
「そういうわけにはいきません!」

 弾介の言葉に対して、シエルは真剣な口調で反論した。

「シエル……」

 馬鹿馬鹿しい議論だとは思ったが、シエルのあまりに真面目な表情に、弾介は口を紡いだ。

「この戦いは、いつ何が起こるか、何が必要になるか分かりません。
私は、なんとしてでも魔王軍から皆さんを守らなければならないんです。そのために魔法が必要になる可能性が僅かでもあるなら、恥ずかしいと言うだけで怠るわけにはいかないんです!」

 そう主張するシエルの表情には並々ならぬ決意が浮かんでいた。

(シエル……それほどまでに強い決意を持っていたなんて……!)

 シエルの熱い言葉に、弾介は感動してしまった。

「分かったよシエル!そこまで熱い想いがあったなんて……!いざという時の為に、これからもノーパンでいてくれ!」
「はい!恥ずかしいですが、がんばります!!」

 二人がノーパンの決意を固めあったその時だった。

 バシュッ!ドーーーン!!

 崖の上から大きな岩か何かが降ってきて、弾介達の側に墜落した。

「うわっ!」
「ひぃぃぃぃ、な、なになになにぃぃぃ!?はっ、きゃあああ!!スカートがっっっ!!!!」

 シエルはビビるやら捲れるスカートに恥ずかしがるやらで反応が忙しい。

(先ほどの熱い決意は一体……)

 弾介も突然の出来事で驚きはしてるのだが、それ以上にシエルの反応が煩すぎて大きなリアクションを取るタイミングを失ってしまった。

「こ、これはフリックス!?」

 土埃が晴れて、落ちてきた物体が何なのかハッキリしてきた。
 てっきり大きな岩かと思ったら、それはスケールアップした白いフリックスだった。
 鋭い眼光に牙と爪、まるで猫科の猛獣を思わせるフォルムだ。

「って事は、魔王軍のフリッカーか!?」
「そのとーりだぜぇ?」

 崖上に人影が現れ、そいつが弾介達の前に飛び降りた。

「こんな高い崖から飛び降りるなんて、ワイルドだろぉ?」

 その男はノースリーブのジーンズシャツのような衣装と語尾が特徴的なおっさんだった。

「ワイルドォ?!」
「そもそもアクチュアルモード起動してる時点でフリッカーにはダメージ入らないんですけどね……」
「な、なんなんだお前は!!」

 弾介が聞くと、男は親指で自分の顔を指して得意げに名乗った。

「俺の名はシダー・チャン。愛機はワイルドガレオン。伝説のフリックス、ドラグカリバーの命はここで頂戴するぜぇ?フィールドジェネレート!!」

 シダーチャンがフィールドを生成する。
 広い地形に合わせた広めのフィールドだ。

「そうはいくもんか!シエル、バトルだ!」
「は、はひっ!」

 シエルは乱れた裾を直しながら、弾介とともに機体を構えた。

「「アクティブシュート!!」」

 ドラグカリバーとシエルのフリックスが魔法陣を通してスケールアップして接地する。

「そんじゃ。ワイルドな仲間達も紹介するぜぇ!」
「なに!?」

 シダー・チャンが指を鳴らすと、周りから獣型のモンスターが複数体唸りを上げながら現れた。

「お前もジョリジョリみたいにモンスター使うのかよ」
「魔王軍なら当然だぜぇ?」
「こいつらに正々堂々ってのが通じるわけないか。だったらモンスターも一緒に倒すだけだ!いけっ!!」

 ドラグカリバーのシュートが獣型モンスターの腹部に直撃する。
 しかし、なかなかのダメージは入ったようだが、倒しきれなかった。

「なに!?」
「鍛え上げた俺のモンスター、ワイルドだろぉ?」
「ドラグカリバーの動きが、いつもと違う……!」
「風とこの地形のせいでドラグカリバーの攻撃力が下がってしまったんです!」

 ドラグカリバーは比較的平面な地形で力を発揮する。
 こういった凹凸の激しい路面では性能は半減だ。

「そうか!アクチュアルバトルは戦う地形や環境の影響が大きいんだ!」
「俺様のワイルドガレオンには関係ないぜぇ!」

 バッ!
 ワイルドガレオンは荒い地形を物ともしない豪快なシュートで飛びかかってきた。

「ぐっ!」

 バシッ!!
 咄嗟にバリケードを構えて防御したのだが……。

「まだまだここからだぜぇ!!」
「え?」

 ガルルルルゥ!!
 モンスターが、バリケードで受け止められたドラグカリバーを横からすっ飛ばした。
 さすがにこれは防げず、ダメージを受けてしまう。

「くっ!」
「どうだ、このコンビネーション!ワイルドだろぉ?」
「弾介さん!」
「だったらこれだ!フリップスペル発動!ライトニングラッシュ!!」

 ライトニングラッシュ……発動してから10秒間、一度だけ向き変えした後に何度でもシュートできる。

「いっけぇ!!」

 シュン、シュンッ!バキィ!!
 ドラグカリバーは周りにいるモンスター達を押し除けながらワイルドガレオンへ迫り、連続攻撃を仕掛ける。
 一撃一撃の威力は低いが、何度も当てる事でバリケードを躱しながらワイルドガレオンを吹っ飛ばし、ダメージを与えた。

「やるねぇ!」

 更に、ワイルドガレオンはシエルのフリックスの目の前で止まる。

「私も行きます!フリップスペル、フレイムヒット発動!!」

 フレイムヒット……マインをセットし、向き変えせずにシュートできる。

 シエルはマインをワイルドガレオンの前に置いてシュートし、確実にマインヒットを決めた。
 バチィィン!!
 ワイルドガレオンにマインヒットの衝撃が与えられ、大ダメージを受けてしまう。

「やりました、弾介さん!」
「どうだ!僕らのコンビネーションだって負けてないぞ!!」
「ワイルドだねぇ!だが、まだまだこんなもんじゃないぜぇ?」

 シダーチャンはワイルドガレオンを変形させ、フロントに掬い上げパーツを出現させた。

「変形した!?」
「ワイルドガレオンマシンモードだぜぇ!」

 マシンモードに変形したワイルドガレオンをシエルのフリックスへ向けてシュートする。

「きゃぁぁ!!」

 バキィ!!
 掬い上げ形状のおかげで先ほどよりも遥かに攻撃力が上がっているだけじゃなく、凹凸のある地形を利用して自分はフロントパーツを地面に引っ掛け、シエルのフリックスは斜め上方向に弾かれてしまう。
 そして、バリケードを飛び越えて大きく吹っ飛ばされ、フリップアウトしてしまった。
 一気にHPが半分以上削られるほどの大ダメージだ。

「シエル!」
「ま、まだ大丈夫です……!」

 場外した後はフィールドの好きな場所に機体を置ける。
 シエルはドラグカリバーの側に機体を置いた。

「くそっ!今度はこっちの番だ!!」

 弾介は反撃にとドラグカリバーをシュートする。

「甘いぜぇ?」

 ガッ!
 モンスター達の集団が集まって盾となり、ドラグカリバーの攻撃を防ぐ。
 何体かはやられてしまったが、それでもワイルドガレオンへは攻撃が届かなかった。

「自分の仲間を盾にするなんて……!」
「役割分担ってやつだぜぇ!まだまだモンスターはいっぱいいるぜぇ、ワイルドだろぉ?」

 どこに隠れていたのか、ワラワラとモンスターが現れる。

「だ、弾介さん……!」
「これは、ちょっとキツイかな……!」

 ただでさえ不利な地形の上に、ライブラヴィレッジの時とは比べ物にならない戦力差を見せつけられてしまい、さすがに心が折れそうになる。
 それでも拳を握りしめて心を奮い立たせてシダーチャンを睨め付けた。

「このくらいで、負けるもんか!!」

 力を込めてバリケードを構えて気合いを入れた。
 その時だった。

 ズババババババ!ドーーーン!!!

 上空から銃の実弾が、そして離れた場所から大砲の爆音が鳴り響きシダーチャンへ攻撃した。
 フリックスであるワイルドガレオンに実弾や大砲程度の攻撃は大したダメージにはならないし。
 アクチュアルモード時のフリッカーであるシダーチャンは、幽霊と同じでどんな攻撃も通じないのだが。
 周りにいるモンスター達は一掃できた。

「なにぃ!?俺のモンスター達が!!」
「い、いったい……!」

 ババババババ!ゴオオオオ!!!
 上空からはちょっと小さめな戦闘ヘリが三機、そして遠くからはこれまた小さめな戦車が三機、轟音を立てながら向かってきた。

「ヘ、ヘリコプターに、戦車ぁ!?なんか、似つかわしくないもんが出てきたなぁ……!」

 てっきり、フリップワールドは剣と魔法のファンタジー異世界だとばかり思ってた弾介はいきなりの近代兵器の登場に面食らってしまった。

「あれは、科学軍が開発してた魔動力式の無人戦闘兵器……!もう完成してたんですねぇ」
「科学軍?」

 弾介が疑問を表情に出していると、SFチックな軍服を着た二人の男が駆け寄ってきた。

「大丈夫ですか〜?」
「加勢に来たぜ!!」

 一人はメガネをかけた痩せ型の理系風な男、もう一人は色黒でがっしりとした体つきの男だ。

「やっぱり、その制服は科学軍の方達ですか?」
「はい!この先の村へ調査任務に向かう途中だったのですが……」
「なんだか、ピンチみたいだったからな!新兵器のテストも兼ねて助けに来たってわけだ。俺はダグラス、こっちは弟のストラ」
「あ、ありがとうございます!私は祭祀のシエルです」
「僕は弾介」

 二人が名乗るとダグラスとストラは納得したように頷いた。

「あぁ、お前らが噂の二人か」
「通りで、魔王軍のフリッカーと正面から戦ってるわけですね」

 伝説のフリックスを持って旅をしている2人というのはある程度知れ渡っているようだ。説明が省けて助かる。

「ま、まぁね!でも凄いなぁ、ヘリコプターに戦車まであるなんて……!」
「俺たちが所属する科学軍は、魔法や近接武器で戦う兵士じゃなく
最新の技術を駆使した兵器を研究する部隊なのさ」
「出力はまだ不安定で長時間の稼働は出来ませんが、これで魔王軍にも対抗出来る大きな戦力になったはずです!」

 弾介達に頼もしい味方が付いた。
 しかし、それでもシダーチャンは不敵に笑う。

「まだまだ甘いねぇ!そんなもの、ワイルドガレオンの前じゃチャイルドだぜぇ?」

 バシュッ!!
 シダーチャンは戦車に向かってシュートする。

「来たなっ!砲撃開始!!」

 ドーーーン!ドーーーン!!とワイルドガレオンへ砲撃するのだが、全く怯まずに突進し、戦車を吹っ飛ばしてフリップアウト。
 フリップアウトによる強烈な衝撃で戦車は砕けた。

「す、すげぇ」
「戦車が砕けるなんて…!」
「嘘だろ!!なんてパワーだ……!」
「ま、まだまだ!いくらフリックスでも、空中からの攻撃には対応できないはずです!」

 ストラは戦闘ヘリで上空から射撃させる。

「そんな攻撃、屁でもないぜぇ〜!
フリップスペル発動!ブリーズストリーム!!」

 ブリーズストリーム……機体を70cmまで浮かせてシュートが出来る。

 シダーチャンはブリーズストリームの効果を利用してワイルドガレオンを上空へ撃ち出した。

「なに!?」

 打ち上げられたワイルドガレオンは的確にヘリへ攻撃を当てて、全て撃墜してしまった。

「新型兵器がこんなにアッサリと……!」
「モンスター達の仇は取ったぜぇ〜?」
「まだだ!ストラ、あれを出すぞ!」
「え、兄さん、あれはまだ調整段階で……!」
「こうなりゃこっちも意地だ!やるっきゃねぇ!!」
「わ、分かりましたよ。転送装置起動!人型自律兵器をE地点へ転送せよ!!」

 ストラが無線機のようなものに命令すると、空から光の筋が落ちてきて、そこに人型のロボットが出現した。

「これが俺達科学軍の秘密兵器!!」
「人型自律兵器ナンバー001!ラインセイバー!!」

 まさしく、アニメに出てきそうなロボット兵器がそこに仁王立ちしていた。

「これ、世界観どうなってんの!?」

 もはやなんでもありだ。

「そんなデカい機械人形に何が出来る?」
「ロボットこそ、全ての男のロマン!!」
「人型故に陸空海あらゆる場所で戦え、射撃にも格闘にも対応出来る究極の汎用兵器です!これなら……!!」

 しかし、ロボットはうんともすんとも動かない。

「どうした?なんで動かないんだよ!!」
「……やはり、出力が足りてないみたいです」
「なにいいいい!!!」
「重量や接地面の安定性の低さをカバーするためのバラストに、関節の多さ……今の技術ではまだ運用出来る段階ではないようですね……」

 ラインセイバーは、どうにか摺り足で動こうとはしているが、タダでさえ荒い路面の地形なので足元がおぼつかない。

「ガッハッハ!動けない兵器を無理やり投入する所は、なかなかワイルドだぜぇ〜!」

 バシュッ!ドーーーン!!
 ワイルドガレオンに足元を攻撃されてあっさりとこかされてしまった。

「くっ!男の夢が……!!」
「あぁ、開発費用が泡となって消えていく……!」

 もう打つ手がないのか、科学軍の二人は項垂れてしまった。

「さぁ、そろそろトドメといくぜぇ〜!」
「あぁ!こっちがね!!」

 勝利を確信したかのようなシダーチャンだったが、それよりも更に自信満々に弾介が叫んだ。

「なんだぁ?」
「確かにワイルドガレオンは強い!けど、おかげで良い時間稼ぎになった!!」

 見ると、ドラグカリバーはアクティブフェイズでシュート準備が完了している。
 いや、それだけじゃない。何なら機体の周りに力強い光が纏われている。

「ま、まさか、それは……!」
「フリップスペル、フルチャージ!準備完了だ!!」

 フルチャージ……発動したらアクティブフェイズを終了し、次のアクティブフェイズのシュートではマインヒットとフリップアウトによるダメージを2倍に出来る。

 強力な分発動までに時間がかかるスペルだが、科学軍がゴチャゴチャと抵抗してくれたおかげでチャージの時間が稼げたのだ。

「いっけぇぇ!ドラグリーチスティンガー!!」

 バキィィ!!!!
 必殺のドラグリーチスティンガーでワイルドガレオンを一気に弾き飛ばし、フリップアウトさせる。
 飛ばされた距離に加えて、2倍のフリップアウトダメージを喰らってしまい、ワイルドガレオンのHPは0になり撃沈。
 更に、アクチュアルモードが解除されても勢いは止まらず、そのまま岩に激突して砕けてしまった。

「ぐああああああ!!!」

 シダーチャンもやられた衝撃の余波を受けて気絶した。

「やった!勝ったぞ!!」

 バトルに勝利し、弾介達はその場から離れた。

「これで倒した魔王軍フリッカーは2人目!危なかったけど、やっぱりアクチュアルバトルは面白いなぁ!!」

 かなり危ないバトルだったが、喉元過ぎれば熱さを忘れるという奴か、弾介は上機嫌で歩いている。
 それに対して、自慢の兵器が全く通じなかったためか、科学軍の2人は少し元気がない。

「そう言えば、私達もこの先の村へ行く途中だったんですけど。お二人は一体どういった調査で?」
「えぇ、ここ最近モンスヴィレッジ近くの森で夜な夜な出現しているという巨大な怪獣について調査依頼が来まして」
「モンスヴィレッジは丁度俺達兄弟の生まれ故郷でな。帰省も兼ねて、調査と討伐に向かってるってわけだ」
「あ、実は僕達もそこに用事があるんだ」
「え?あなた方は伝説のフリックスを探すのが目的では?」
「怪獣の噂と何か関係あるのか?」
「はい、その怪獣が出現したのと同じ時期に、黒いフリックスのような形をした隕石が同じ場所に落ちてきたのが目撃されているんです。もしかしたら、何か関係があるのかと思いまして」
「なるほどな!だったらちょうど良い、案内してやるよ。宿は俺らんち泊まってけばいい」
「ほんとですか?ありがとうございます!」
「助かるよ!それに、科学軍の兵器と協力して戦うのも楽しそうだし」

 弾介は無邪気にそういうのだが、傷をえぐられたのか2人は露骨に落ち込んでしまった。

「え、え、どしたの?」
「用意した兵器は尽く撃墜……これじゃ何しに行くのか」

 軍人が兵器を失ってしまっては、その存在意義が揺らいでしまう。
 一応調査という名目とは言え、必要となれば戦わなければいけないというのに。

「ちくしょう、ロボットさえ完成すりゃあなぁ!あんな奴ら屁でもねぇのに」
「兄さん、やはりそれは現実的じゃないですよ。堅実に戦車やヘリを量産した方が」
「何言ってんだよ!お前だってロボット兵器作るのが夢だったじゃねぇか!!」
「それはそうですが……」

(どこの世界でもロボットって人気なんだなぁ)

 兄弟のやりとりを聞きながら弾介はそう思った。

「それに、いくら量産してもフリックスの前じゃ歯が立たねぇ。時間稼ぎが精一杯だ」
「そうですね……やはり時代はフリックスなんでしょうか。しかし、フリックス自体は誰でも扱えますが、ただ使うだけだと一般人の護身用レベルの武力しかありませんからね、実戦的な兵力として利用できるレベルとなると」
「フリッカーとしての能力を鍛えたり高性能な機体作らないといけないってだけでも大変なのに、それが自分と相性の良い愛機じゃないといけないんだよなぁ。それなら普通の武器や武術極めた方がよっぽど早い……けどそれだと魔王軍フリッカーには勝てねぇ。あ〜、せめてフリックスで人型兵器が使えればなぁ!そんなフリックスがあれば絶対愛機になる自信あるぜ」

 ダグオンのぼやきに対して、弾介はなんともなしに口を開いた。

「え、出来るよ?」
「なに!?」
「えっと、フリップスペルでそういう効果があるから。あとはそれに対応する機体を作れば……」
「そ、それはほんとですか!?」
「詳しく教えてくれ!!」
「あ、うん……!」

 一同は一旦小休憩し、機体製作談義に勤しむ。

「……とまぁこんな感じなんだけど」
「なるほどぉ……よくわからんが、ストラ、出来そうか?」
「え、えぇ!フリックスなら材料費もそこまで掛かりませんし、そのくらいなら作れそうです!弾介くん、参考までにドラグカリバーの可変構造を見させて貰っても良いですか?」
「うん」

 弾介はドラグカリバーをストラに渡した。
 ストラは食い入るようにドラグカリバーの
可動剣をチェックする。

「なるほど、ここを関節にして……ふむふむ……なら、あの設計図と照らし合わせて融合させればいけるな……素材も軽量だから重量バランスも確保できるぞ……」

「へへへ、始まったな、ストラのやつ」
「??」
「すげぇもんが出来上がるって事だ!でもな、ストラ!とりあえず出発しようぜ、製作は村に着いてからだ」
「あ、はい、そうですね!これは面白くなってきました!」

 新たな戦力の誕生にワクワクしながら、一同は村への道のりに足を進めた。

 その中で、会話に入れなかったシエルは1人寂しげな顔をしていた。

(結局、私はまた何も出来ませんでした……皆を、守らなきゃいけないのに、守られてしまった分、守らなきゃ……)

 

   つづく

 

 

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