弾突バトル!フリックス・アレイ ゼノ 第6話「幻惑の少女」


第6話「幻惑の少女」

 

ライブラヴィレッジを突如襲撃してきた魔王軍。
弾介は、真紅の翼を持つフリックスアレイ『ウイングジャターユ』を駆る謎のフリッカーレイズとの共闘でこれを退けるが、今度はレイズが弾介へ戦いを挑んできた!

「やるしかないなら、やってやる!!」

バシュッ!!
覚悟を決めた弾介はウイングジャターユへ向かってシュートした。
勢いにのったドラグカリバーの攻撃が見事ヒットし、ウイングジャターユが弾ける。

「どうだ!」

しかし……。

「その程度か?」
「なに!?ダメージが入らない……!」

なぜか、ダメージが入る飛距離(140cm)にギリギリ届かないで止まってしまった。

「やれっ!」

今度はレイズの攻撃だ。

「耐えろ!!」

ガッ!
弾介はバリケードで攻撃を耐えた。

「どうだ!こっちだってお前の攻撃なんか喰わないぞ!」
「どうかな」

そして、それから同じような展開が何度か繰り返された。
弾介の攻撃は何故かダメージが入らないギリギリの距離までしか弾けず。
レイズの攻撃は弾介のバリケードによって耐えられる。

お互いに何度も攻撃を仕掛けているのに、ダメージが全く動かない。

「はぁ、はぁ……なんて奴だ……!ドラグカリバーと互角だなんて!」
「互角?ふっ、笑わせる」

何度も続くシュートと防御の応酬に弾介の息が乱れているのに対し、レイズは余裕の表情だ。

「そろそろだな」

チャキ…!
レイズがウイングジャターユを構え、弾介はバリケードを構える。

「何度だって耐えてやる!!」
「ムダだ!」

バシュッ!バキィ!!!
ウイングジャターユの攻撃を受けたドラグカリバーをバリケードで支える弾介だが、そのバリケードが砕けてしまい、ドラグカリバーは支えをなくして大きく飛ばされてしまった。

「なにぃ!?」
「いくらバリケードで攻撃を耐えてもいずれは限界が来る。考えなしに根競べを挑んだ結果だ」
「くっ!耐えてくれドラグカリバー!!」

なすがままに飛ばされるドラグカリバーに弾介は祈るしか無い。

「ウイングジャターユは二本の爪で掬い上げ、嘴で弾き飛ばす。そう簡単に耐えられると思うな」

ズザァァ!!
フィールド端まで飛ばされたドラグカリバーだが、どうにかフリップアウトは免れた。

「あ、危なかった…!」
「命拾いしたな。だが、次はないぞ」
「だったら次を作らない!」
「なに?」
「うおおおお!!!」

ジャキンッ!
弾介はドラグカリバーのフロントソードを変形させた。

「これが僕のとっておきだ!ドラグリーチスティンガー!!」

必殺技発動!
鋭い剣先の一撃がウイングジャターユを襲う!
しかし……

(手応えが小さい?)

クリーンヒットしたはずなのに、思ったよりも衝撃が小さかった。
それでも先ほどとは違いどうにかダメージは与えられたのだが……

「ほう」

思っていた事と違っていたのは弾介だけじゃなかった。
レイズも僅かに驚きの表情を浮かべている。

「そうか!レイズはヒットする直前にステップで打点をズラしてたんだ!一瞬だからバリケードの消耗も少ない!」
「ふっ、仮にも伝説のフリックスか。少しは潰す価値がありそうだ。
ならば、俺もとっておきを見せてやろう!」

レイズはウイングジャターユの両サイドの翼を広げた。

「羽が…!」
「焼き尽くせ!スプレッドウイング!!」

バシュッ!!
翼広げたウイングジャターユがドラグカリバーを掠め、さらに先へと進んでいった。

「っ!何をする気だ!?」

そしてその先にあったのは、シエルが先ほど出していたフリップマインだった。

「なに!?」

バチンッ!!
ウイングジャターユの翼の先端がマインに触れると、ドラグカリバーが小爆発した。

「まさか、あんな遠くにあったマインに当たるなんて……!翼を広げる事で、マインヒット力を高めたのか……!」

これによってドラグカリバーの残りHPはかなり少なくなってしまった。
このまま消耗戦を続ければ勝ち目がない。

「く、くそ……!」

しかも、弾介の様子がおかしい。
足元がおぼつかず、ふらつき始めた。
バトルによる疲れだけではなさそうだ。

(まずい、寝不足が祟ってめまいがしてきた……このままじゃ勝てない……!)

気を張ろうとするものの、どうにもならない。
その時だった。

バチンッ!!
ウイングジャターユの後ろから急にマインがブチ当たり、小爆発を起こした。

「なに!?」

レイズが振り返る。そこには、シエルとそのフリックスがいた。
マインをもう一つ召喚して直接ぶつけたのだろう。
攻撃力が低くとも、マインなら大きなダメージを与えられる。

「ちっ!邪魔をするな!」

シエル目掛けてジャターユをシュートするレイズ。
しかしその攻撃はすり抜けてしまった。

「アクチュアル解除!」

シエルはアクチュアルモードを解除し、機体を元の大きさに戻して回収したため、回避できたのだ。

「シ、シエル!そんなことしたら危ないんじゃ!」

そう、この世界のフリックスは兵器のようなもの。
そしてフリッカーはフリックスをアクチュアルモードに起動しているからこそフリックスバトルの渦中にいても身を守る事が出来るのだ。
いくら攻撃を回避するためとはいえ、フリックスを回収しては丸腰も同然。

しかし、シエルの本当の目的はただの回避ではなかった。

「エスケープジュエル!!」

カッ!!
シエルが黄色い宝石型アイテムを取り出して投げると、そこから眩い閃光が発せられてレイズの視界を奪った。

そしてレイズの視力が戻った頃には弾介とシエルの姿は消えていた。

「ちっ、逃したか。まぁいい、いずれ潰す……」

レイズのフィールドから抜け出した二人は町外れの河原に座り込んで息を乱していた。

「はぁ、はぁ…ふぅ、助かった」
「こ、ここまで来れば大丈夫でしょう」
「それにしても、よくフィールドから脱出出来たね。生成者が解除するか倒さないといけなかったんじゃ」
「それは、このエスケープジュエルを使ったからです。これを使うと目眩しが発生するのと同時にフィールドの影響を受けなくなるんです。
無防備な一般人が悪質なフリッカーから逃げるためのものですね。
ただ、これを使うとしばらくはアクチュアルモードに起動できなくなるので、出来ればあまり使いたくはなかったんですが……」
「まさかあんな不意打ちくらうとはおもわなかったからなぁ……」
「やはり敵なんでしょうか、あの少年」
「女の子助けてたし、悪い奴じゃないと思うんだけどなぁ……でも、また戦うなら今度こそ倒してやる!
さっきはちょっと、急に…ねむ、けが……」

いきなり弾介の体が揺らついたと思ったら、仰向けに倒れてしまった。

「た、弾介さん!?」

慌てて弾介の体を揺すると、そこから小さな寝息が聞こえてきた。

「スー……スー……」
「寝てるだけですか…ビックリした」

穏やかに眠る弾介をシエルは目を細めながら見つめた。

「召喚されてから立て続けにいろんな事がありましたからね。夜眠れないのも無理はないです。このまま寝かせてあげましょう……」

弾介の寝不足の要因が自分にある事もつゆ知らず、シエルは慈愛の表情で弾介を見守った。

そして、黄昏時。
ライブラヴィレッジからやや離れた場所にある街の酒場で、一人の男と小さな女が並んで酒を飲みながら話をしていた。

「だからよぉ、こいつをよく見てくれよ!」

男の方はゴウガンだった。女の方はネオンが眩しくてよく姿が見えない。
ゴウガンは女へ水晶型のデバイスを見せており、そこには弾介との戦いの映像が映っていた。

「どうだ?仲間が撮った映像なんだが、凄いだろ」
「へぇ、これが噂に聞く伝説のフリックスねぇ」
「おう、なかなかかっこいいだろ!それでよぉ、いっちょ俺と手を組んでこいつを手に入れてみねぇか?」

ゴウガンの誘いに、女はグラスの酒を一口飲んでため息をついた。

「はぁ、珍しく奢るっていうから来てやったら、案の定そんな事か……お断りよ。あんたと手を組むなんてもうこりごり」
「な、なんでだよ!俺たち、長い付き合いじゃねぇか!!」
「だからよ。あんた、腕は認めるけどモットーが鬱陶しいのよね……正々堂々盗賊するとか意味分かんない」

酒を飲み干し、女は立ち上がった。

「それじゃ話はおしまい。あたしは帰るから」
「ちょ、おい!」
「あ、そうだ。さっきの動画データしっかりコピー取らせてもらったから」

去り際に、メモリーをちらつかせる。

「なぁにぃ!?」
「こんな美女とサシで飲めたんだから、ホステス代みたいなもんでしょ。それじゃ、ごちそうさま」
「てんめぇ!ずりーぞぉ!!」

喚くゴウガンを無視して、女は出口へ歩く。

「一から盗みを勉強し直す事ね」

外に出るとヒンヤリとした風が頬を撫でた。
その時、女の瞳に興味深い光景が映り込んだ。

「あれは……へぇ、おもしろくなりそうじゃない」

その女の視線の先にいたのは……。

「うわぁ、すっかり暗くなっちゃった」
「イブさんから教わった村はまだ先ですけど、今日の所はここで泊まりましょう」

弾介とシエルが暗闇を照らすネオン街を歩いていた。

「ごめんシエル、つい寝すぎちゃって……」
「いえ、ここのところ慌ただしかったので無理もありません。今日はしっかり休んで英気を養いましょう」

そして、大きなホテルにたどり着き、二人はチェックインした。
当然部屋は別々だが、就寝時間まで同じ部屋で過ごす。

「うーん……」

弾介は机の上にドラグカリバーを置いてうんうん唸っている。

「どうしたんですか?弾介さん」
「いや、ドラグカリバーのメンテしてたんだけどさ。HPは寝てる間に回復したから良いけど、あのジョリジョリとか言うオカマに付けられた傷が思ったより深くてさ。このままだと性能下がっちゃうし、直そう思ったんだけど材料が足りないんだ」
「だったら明日アイテムショップに行きましょう。この街は大きいので必要なものはすぐ揃いますよ」
「うん、そうしよう!」

そして翌日、弾介とシエルは早速アイテムショップへ赴き修理に必要な材料を一通り揃えた。

「よし、これだけあれば完璧に直せるぞ」
「良かったですね、弾介さん」

トンッ!
急に、弾介の脚に小さな衝撃を受けた。

「ん?」

見下ろすと、そこにはツインテールの幼女が涙目で立っていた。

「あ、ごめん」
「ふぇ、ふえええええん!!!」

反射的に謝った弾介だが、幼女は急に大声で泣き出してしまった。

「う、うわわ!?な、なに!?そんな痛かったの???」
「だ、大丈夫ですか?」

慌てて幼女を慰めようとする二人だが、幼女はシャックリをあげながらも事情を説明してくれた。

「うぐっ、違うのぉ……あたし、お遣いに来たんだけど、お家までの帰り道が分からなくなったのぉ……!」
「迷子か……」
「もう大丈夫ですから、泣かないでください」

シエルは幼女と目線を合わせて宥めた。

「お家にはお姉ちゃん達が連れて行ってあげますから」
「うぅ、ぐす……ほんと?」
「はい。あなたお名前は?」
「フィリア……」
「私はシエル」
「僕は弾介。まぁ、こんな小さな子におつかいさせる距離ならそんなに遠くはないか」
「ありがとぉ、お兄ちゃん!」
「……?」

フィリアの返答に若干の違和感を覚えたシエルが言葉を詰まらせた代わりに弾介が口を開いた。

「それで、フィリアの家ってどういう所にあるの?」
「えっとね…あっちの方向の林の奥にあるお家なの」
「あ、そこなら意外と近くですし、すぐに向かいましょう」
「そうなんだ。じゃあ早速行こう」

歩き出す一同。

「お兄ちゃん、手を繋いでもいい?」
「ん、まぁいいけど」
「……」

フィリアの手を握る。

「お兄ちゃーん、フィリア疲れた…おんぶしてぇ」
「ええー、まぁいいけど」
「……」

フィリアは何故か弾介ばかりに甘える。

(なんとなく、シエルの視線が痛い気がする)

そして、しばらく歩いて林の中に辿り着いた。
まだ昼前だと言うのに、中は薄暗い。

「なぁフィリア、ほんとにこっちの方に家があるのか?」
「うん、あともうちょっとー」

奥に行くに連れてどんどん暗くなっていく。
ガサッ!
その時、淡く光る獣のような物体が飛び出してきた。

「きゃあああ!!」
「モンスター!?」
「フィリア、ちょっと降りて!シエル、フリックスで倒そう!」
「はい!」

弾介とシエルはフリックスを取り出して、目の前の獣をシュートでぶち抜いた。

「なんだ?随分あっさりだと思ったら、これハリボテじゃん」
「誰かのいたずらですかね…?」

弾介はドラグカリバーを回収し、破れたハリボテを軽く蹴ると、そこへフィリアが抱きついてきた。

「ふえええ!!お兄ちゃ〜ん!フィリア怖かった〜!」
「お、おう、もう大丈夫だ!(っていうか最初から大丈夫だったんだけど)」
「ジトー……」
「それじゃあフィリアのお家こっちだから、じゃあね〜!」

いきなりパッと表情が切り替り、フィリアは走り去って行った。

「なんだったんだ……」

気を取り直して宿屋へ戻り、弾介はドラグカリバーの修理をする事にした。
しかし……!

「なにーーー!!!ドラグカリバーがないーーー!!!!」
「え、ほんとですか!?って、あるじゃないですか」

弾介の目の前にはちゃんとドラグカリバーが置かれていた。

「違うよ!これ偽物だよ!!」
「そ、そうですか?全く同じに見えるんですが……」

弾介の持つドラグカリバーは非常に精巧で本物と瓜二つだった。

「全然違うよ!ここちょっと短いし、このエッジの角度も緩いし!」
「そ、そうなんですか…?」
「それに、ジョリジョリに付けられた傷もなくなってる……!」
「確かに!」
「まさか、あの迷子の子が……!こうしちゃいられない!早く探さなきゃ!!」

バッ!
弾介は急いで宿屋を出た。

「弾介さん!探すって言ってもどうすれば……!」
「またあの林に行けば何か手掛かりがあるかも……っ!!」

その時、弾介の頭に衝撃が走った。

「どうしたんですか?」
「わからない、けど、ドラグカリバーが戦ってる」
「え?」
「こっちだ!」
「え、そっちは林とは逆方向ですよ!?」

走り出す弾介を追い掛けるシエル。
そして辿り着いたのは、薄汚いビルの地下。
そこでは、怪しげな雰囲気の闘技場でフリックスバトルが行われていた。

バキィ!!

「フリップアウト!!これで10連勝!フィラン絶好調!謎のフリックスを提げて快勝している!!賞金は既に100万を突破!!」

背が小さく露出の激しい女性がドラグカリバーを使って圧勝していた。

「ふふん、なかなか強いじゃないこのフリックス。ゴウガンと飲みに行った価値は十分ね」

服装や髪型は違うが、その女性はあのフィリアと同じ顔をしていた。

「あー!フィリア!やっぱりお前か!!!」

弾介が声を上げると女性が弾介の方を見た。

「あ、お兄ちゃん。このフリックスありがと〜☆」
「ふざけるな!騙してたんだな!!」
「ふん、騙される方が悪いのよ。あたしの本当の名前はフィラン。フリーの盗賊よ」
「フィラン!早くドラグカリバーを返せ!!」
「バカなの?盗賊が奪ったものを簡単に返すわけないでしょ」
「このっ!」

弾介はステージへ乗り込もうとするが、屈強な男達に阻まれてぶっ飛ばされてしまった。

「ぐっ!」
「おっと、ここでの暴力行為は禁止されてるのよねぇ。それに、フリッカーならバトルするのが筋じゃない?」
「だったらやってやる!!」

弾介が言うと会場が盛り上がった。

「おおっと!本日無敗のフィランに挑戦者が現れた!!試合は10分後だ!!!」

小汚い控室に案内され、弾介は試合のための準備をする。

「弾介さん大丈夫ですか?ドラグカリバーもないのに」
「前に買った量産機があるし、こいつをカスタムして戦うしかない」

カチャカチャと量産型フリックスを改造していく。
出来るだけ重いウェイトを内部へ仕込み、シャーシはラバーのついたものを取り付ける。

「あ、そうだ。シエル、フィールドって自由に設定出来るんだっけ?」
「は、はい。サイズや形状、それから穴の位置や数をある程度設定できます。もちろん制限はありますが……」
「よし、それなら……!」

そして、試合時間となった。
ステージ上で弾介とフィランが対峙する。

「試合開始!」

審判の合図とともに、フィランと弾介はアクチュアルを起動した。
そして弾介はある事に気付いた。

「ドラグカリバーのHPがかなり減ってる……!そうか、さすがに連戦してるから回復しきれてないんだ!」
「回復アイテムもタダじゃないしね。このフリックスの性能があればいちいち回復させるまでもないわ」

そして、先にアクティブフェイズとなったのは弾介だ。

「フィールドジェネレート!!」

弾介の生み出したフィールドはやや大きめで、中央付近に二つの穴が設置されている。

「いけっ!インフェリアスタッブゼノ!!」

そして、シュート。ドラグカリバーへは届かず中央付近で停止した。

「ふん、伝説のフリックスに勝てる気でいるの?」

次はフィランのシュート。
インフェリアへドラグカリバーの痛烈な一撃が襲う。

ガッ!
どうにかバリケードで受け止める。

「えっ、こんな量産機に耐えられた!?」
「ここは僕のフィールドだからバリケードが強い!それに、なるべく防御力を重視してセッティングしたんだ!使い慣れてないドラグカリバーの攻撃くらい耐えられる!」
「や、やるじゃない」
「しかもその位置は…!」

ドラグカリバーが停止した位置、そこは穴[フリップホール]にかぶっていた。

「これで自滅だ!このフィールドはドラグカリバーには不利なんだ!」
「くっ!たかがフィールドの先手取られただけで…!」

場外扱いなのでフィランはフィールド内の好きな位置にドラグカリバーを設置して再びフェイトフェイズに入る。
そして弾介のターン。

(普通なら、ドラグカリバーに攻撃は通じない。でも、今なら…!)

弾介は狙いを定めた。

「ごめん、ドラグカリバー!少しの間耐えてくれ!!」

バシュウウウウ!!!
渾身のシュートがドラグカリバーへ真っ直ぐ飛んでいく。

「その程度、耐えてやるわ!」

ガッ!
バリケードで耐えるフィラン。しかし、インフェリアスタッブの攻撃は的確にドラグカリバーの傷にヒットしており、その衝撃でボディの一部が欠けてしまいその欠片が場外へと飛んでしまった。

「そんなっ!」

これでフリップアウト。ドラグカリバー撃沈だ。

「やった!勝ったぞ!さぁフィラン、ドラグカリバーを……」
「えぇ、仕方ないわ。はいこれ約束のものよ」

フィランはあっさりと負けを認め、弾介に金貨を渡した。

「そうそうこの金貨を…ってちがーう!!!僕が勝ったんだからドラグカリバー返せ!!」
「何言ってんの?いつそんな約束したかしら?この地下闘技場で賭けてるのはお金なのよ」
「ふざけるな!そんなの屁理屈だ!!」

ダッ!
力尽くでも取り返そうと駆け出す弾介へまたも屈強な男達が現れて突き飛ばす。

「うわああ!!」
「弾介さっ、きゃぁ!!」

飛ばされた弾介とその後ろにいたシエルも巻き添えを食らって倒れてしまった。

その時だった。
会場が静まり返った。と思ったらざわめき始める。
みんな、シエルの方を見て驚愕の目を向けたり、顔を赤らめたりしている。

「あ、あああ、あんた、清楚ぶってるくせに、何考えてんのよ…!」

フィランがシエルの下半身を指差しながらワナワナと震えていた。

「え、私……?」

シエルがゆっくりと視線を落とす。
そこには、スカートがめくられて露わになった股が

「ひゃ、ひぃやああああああ!!!」

シエルは絶叫しながらスカートを抑えた。

「へ、へんたい…!痴女…!清楚痴女!!」
「ち、違うんですぅ!私、祭祀の娘で、その、これは正装で!下着はつけないしきたりなんですよぉ!!」

涙目で必死に弁明するシエルだが会場のざわめきは収まらない。

「いや、今時そんなのバカ正直に守るやついないでしょ」

屈強な男達も鼻血を流しながら顔を赤らめ、目のやり場に困ってるようだ。

(今だっ!)

弾介はこの隙を逃さずに駆け出し、男の間をすり抜けてフィランからドラグカリバーをぶんどった。

「あ、しまっ!」
「シエル、逃げよう!!」

弾介はシエルの手を掴んで立ち上がらせて、急いでビルを抜け出してなるべく遠くへと走り出した。

「ふぅ、ここまでくればなんとか……いやぁ取り戻せてよかったぁ!シエルのおかげだよ、ありが……」
「ずーーーーん……」

シエルはめっちゃ凹んでいた。
あんな大観衆の前で痴態を晒したなら当然だろう。

「あ、いや、でも、なんというか……!え、えっと僕のいた世界でもさ!和服ってのがあって、それは下着をつけないとかなんとか聞いたことあるし、そんなにおかしな事じゃないよ、うん!!」

必死で慰めようとする弾介だが、シエルの表情は暗いままだ。

(うぅ〜、こういう時ってどうすれば……)

弾介が悩んでいると、路地裏から一匹の子猫が飛び出してきた。

「ニャー」
「あっ!」

その瞬間シエルの表情が一変する。

「ニャーちゃん…!えへへ、おいでおいで〜」

満面の笑みで子猫を抱きかかえて頬擦りする。
完全に機嫌が直ったようだ。

(単純かっ!)

「にゃーちゃんにゃーちゃんにゃおんにゃおん」
「シャーーーー!!!」

しかし、抱きかかえられた猫は機嫌を損ねてバッとシエルの腕から飛び出して去ってしまった。

「ニャーちゃん……ずーーーーん」

今度は別の理由で凹むシエル。

(めんどくさいけど、なんかおもしろいな)

コロコロと感情を変化させるシエルに弾介はほっこりするのだった。

 

      つづく

 

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