第31話「鋼の砦」
クロウの告白、衝撃の真実。そして、物語はあのなつかしのキャラの再登場により、急展開する。
大空を凄い勢いで飛んでいく鋼の烏。
それを追いかける三人。
ヒスイ「クロウ、あの烏。」
クロウ「ああ、間違えようが無い。あんなもの、この世で何匹もいるわけがないしな。」
セシル「ちょ、ちょっとなんでいきなり走り出したのよ!」
セシルはついていくので必死だ。
ヒスイ「あの銀色の鳥。」
セシル「え?」
見上げるセシルは驚愕の声を上げた。
セシル「な、なに!?あの鳥!!」
クロウ「今気づいたのか・・・?」
ヒスイ「あれこそが、クロウのレクイエムを復活させる鍵になるかもしれないんです!」
セシル「それってどういう事よ?」
クロウ「イチイチ話してる時間は無い。とにかく、あれを追いかける事に集中しろ。」
セシル「なによ、もう・・・。」
ブツブツと文句をいうセシルだが、徐々にクロウ達との差が開いて行く。
セシル「はぁ、はぁ・・!」
ヒスイ「クロウ、ちょっとペースを落とした方がいいんじゃないですか?」
セシルを気遣うヒスイだが、クロウは聞く気はないようだ。
クロウ「ちっ、じゃあお前だけ落としてろ。俺は行く。」
ヒスイ「分かりました、頼みますよ!」
クロウ「ああ、見失うなんて、愚かしい事は・・・あれ、どこだ?」
言ってるそばから鋼の烏はどこかにいってしまった。
ヒスイ「えぇ!?」
セシル「はぁ、はぁ、どうしたの?」
ようやく追いついたセシルは、立ち止まり肩で息をする。
クロウ「ちっ、どこ行った?」
舌打ちして、キョロキョロ辺りを見回すクロウ。
ヒスイ「ダメです、完全に見失ってしまいました。」
クロウ「くそっ。」
その時、どこからともなく、天の助けとも言える声が聞こえてきた・・・。
???「探しものよ最強のビーダーに届け!輝く強さ求められるように!」
セシル「このフレーズは・・・。」
思わず、背中の悪寒が走った。
ジュウ「とう!探しものの事なら、この捜索戦隊サガシンジャーにお任せあれ!」
またも変てこなヒーローの肩書きを引っさげ、あのジュウが現れた。
ジャベンス「同じく、サガシンジャー二号!」
ジャベンスも現れ、ジュウと同様ノリノリにポーズを決める。
ヒスイ「じゃ、ジャベンスまで・・・。」
ジュウ「で、何を探しているんだい?」
クロウ「鋼のツバサを持つ烏だ。」
ジュウ「なるほど、よし行くぞ!二号!」
ジャベンス「おうでごわす!」
まだロクに情報を聞いてもいないくせに走り出す気まんまんの二人。相変わらず勢いだけである。
???「ふん、あなた方には任せられませんね。」
と、その時、またも聞き覚えのある声が。
クロウ「お前は・・・!」
そう、あのB-フォースのメンバー、レシアスだった。
ヒスイ「レシアス・・・!!」
レシアスを見て、途端に険しい表情になるヒスイ。
クロウ「また懲りずにセシルを奪いに来たってわけか。」
レシアス「ふん、何か勘違いをしているようですね?」
クロウ「なに?」
レシアス「あれはあくまで依頼主の望み。我々の意志ではない。依頼主が依頼を破棄した今、それをする義務は無い。」
それより・・・と話をつづける。
レシアス「何か依頼があるのなら、こんな役立たずよりもB-フォースへお願いしますよ。」
レシアスは恭しく礼をした。
ジュウ「どういう意味だレシアス!」
レシアス「裏切り者であるあなた方では、この任務は荷が重いでしょう。大人しく引き上げたほうがいいのでは?」
ジュウ「うるさい!それより、この前はよくも酷いめに合わせたな!」
レシアス「ふん、私が直接やったわけではありませんが・・・。なんなら、また同じ目に合わせましょうか?」
パワードスナイパーをちらつかせるレシアス。
ジュウ「おいらだって、あの時のままじゃない!この新型ビーストの力を見せてやる!」
ジャベンス「わしも新型スピアで勝負でごわす!」
新型ビーダマンを取り出す二人。
ヒスイ「(ほう、面白そうだな。)」
一触即発な三人を見て、ヒスイは興味深げにメガネを光らせた。
セシル「ちょっと待って!こんなところで喧嘩しないでよ!」
が、セシルの言葉で三人は我に返ってビーダマンをしまった。
レシアス「そうですね、こんな事で無駄に体力を使う事も無いか。」
ジュウ「まぁ、今はこんなつまらないしがらみより、困っている人を助け、正義を貫くほうが大切だしな。」
ジャベンス「そうでごわすな。」
ヒスイ「(ちっ、余計な事を・・。)」
気を取り直し、三人は目的を再認識した。
ジュウ「よし、それじゃあ早速いくぜ!」
再び駆け出そうとする。
レシアス「ふ、相変わらず素人だ。」
ジュウ「なんだと!?」
レシアス「依頼主からろくに話も聞かず、ただ突っ走るだけ。そんな事で、正義の味方が務まるんですか?」
ジュウ「くそぉ・・・!訳の分からない事ばかりいいやがって!」
それくらい理解しろよ。
レシアス「まぁ、もうあなたには用はありません。で、一体何を探すんですか、みなさん。もちろん、報酬は期待していま・・・あれ?」
レシアスは詳しい話を聞こうと、クロウ達の方へ向いた。が、そこには既にクロウ達の姿はなかった。
ジュウ「いなくなっちゃった。」
レシアス「全く、あなた方に構っていたせいで折角の仕事を・・・まぁいいでしょう。彼らとはまた後で合流すれば言いだけの話。」
ジャベンス「どういう意味でごわすか。」
レシアス「発信機をつけておきました。これなら、どこへいようとも、見つけるのは容易な事。」
発信機をちらつかせるレシアス。
ジュウ「あ~!それおいら達にも見せろよ~!!」
レシアスに飛びかかるジュウ。しかし、レシアスはあっさりかわす。
レシアス「さすがに、敵に塩を送るほど私もバカじゃありませんしね。」
ジュウ「ふ、そうか、ならこっちにも考えがあるぞ。」
レシアス「考え?」
ニタニタ笑うジュウ。
ジュウ「もし、おいら達にそれを見せてくれないんなら・・・。」
レシアス「くれないなら?」
ジュウ「あの秘密をばらしてやる!」
レシアス「なんですって・・・!?」
僅かに動揺するレシアス。
レシアス「(まさか、彼があの事を知ってるはずが・・・でも、もし・・・!)」
ジュウ「どうしよっかな~、しってんだけどな~?」
レシアス「くっ!(彼も且つてはB-フォースに所属していた者、知っていても不思議ではないが……!)」
ジュウ「(おっ、これは手ごたえありか!?)」
これに味をしめたジュウは更に調子に乗る。
ジュウ「いや~、しっかしお前がまさかあれだったとはな~。驚きだぜぇ~。」
レシアス「・・・・・。」
ジュウ「あ~、これを皆に発表したら驚くだろうなぁ~!歴史に残る大スクープ!」
レシアス「・・・ぐ・・・。」
その頃、クロウ達は。
セシル「ねぇ、いいの?おいてきちゃって。」
クロウ「あんなのに付きあってる暇は無い。」
ヒスイ「まぁ、彼らとは特に約束をしてたわけじゃありませんし・・・。」
最近の子供はアポを取らないと一緒に遊ばないらしい。まぁどうでもいいが。
クロウ「それよりもあの烏だ。なんとしてでも見つけないとな。」
セシル「でも、なんでそこまであの烏に執着するの?」
クロウ「持ってるんだ。」
セシル「?」
クロウ「伝説の、鋼のビーダマンをな。」
セシル「伝説のビーダマン!?」
クロウ「ああ。何が目的かは知らんが、コバルトブレードの他に、シャドウが狙っていた伝説のビーダマンの一つだ。」
ヒスイ「そのビーダマンがあれば、レクイエムは蘇るかも知れないんです!」
セシル「ほ、ほんとに!すごい、伝説のビーダマンってそんな力があったんだ!」
ヒスイ「い、いえ、根拠は殆どないんですけど(汗)」
セシル「な、なによそれ・・・(呆)」
クロウ「どの道、手にいれさえすれば俺のビーダマンになるんだ。それだけで十分だろ。」
セシル「とにかく、手っ取り早く強いビーダマンが欲しいわけね・・・。」
クロウ「まぁ、そんなところだ。」
と、いいつつクロウはボロボロになっているレクイエムのバイザーを取り出す。
クロウ「手にいれさえすれば・・・いくらでも、手を加えれば良い・・・。」
セシル「クロウ・・・。」
ヒスイ「あ、見えてきましたよ!」
ヒスイが指差した先に、あの鋼の烏が見えた。
クロウ「よし、今度は見失うなよ。」
セシル「(自分が見失ったくせに。)」
そして、見失わないように烏を追いかける三人。
タッタッタ!
クロウ「だんだん遅くなってきたな。」
しばらく追いかけていて、最初と比べて烏の飛ぶ速度が遅くなった事に気づいた。
ヒスイ「奴の住処が近くなったと言う事でしょうか?」
セシル「はぁ、はぁ・・・なら、そろそろ・・・終点って・・・事ね・・・・。」
かなりお疲れの様子のセシル。ちなみに、クロウ達から後方5メートルくらい離れている。
ヒスイ「あ!」
その時、鋼の烏の動きが変わった。
翼を止め、ゆっくり降下していく。
そして、その先には・・・。
クロウ「あれは、砦か?」
鉄で出来た砦の頂上に着地する烏。
クロウ「あそこが、住処か。」
ヒスイ「行きましょう。」
セシル「ま、まってぇ~!」
そして、砦の前までやってきた三人。
大きな門が立ち塞がっている。
クロウ「ここか。」
ヒスイ「大きな砦ですね。誰か住んでるんでしょうか・・・?」
???「いいえ、今は誰も住んでいません、いえ、住めないのです。」
その時、後ろから女の子の声が聞こえてきた。
振り向く一同。そこには、髪の長い物静かな少女が立っていた。
クロウ「お前は?」
フローネ「私の名前はフローネ・ギャラガー。この砦に住んでいた、預言者です。」
セシル「住んでいた?」
過去形である。つまり今は住んでいないと言う事。
フローネ「はい、つい先日、あの鋼の翼を持つ烏がこの砦に住みつくまでは・・・。」
クロウ「なに・・・!?」
フローネ「あの烏は、何人もの手下のビーダー達を操り、私や他の住民達を追い出してしまったのです。」
セシル「そんなっ!」
クロウ「そんな事はどうでもいい、それより何故俺達に声をかけた?」
フローネ「ふふふ、あなた方が来る事は最初から分かっていました。」
クロウ「!?」
フローネ「さきほど、神のお告げを聞いたのです。数々の困難を乗り越えた百戦錬磨のビーダーが現れ、この砦を救ってくれると。」
クロウ「ほう・・・。」
ヒスイ「さすが預言者。」
フローネ「お願いです、あの烏をこの砦から追い出してはいただけないでしょうか?」
クロウ「ふん、そんな願いなんか聞かなくても、俺達は最初からあの烏を狙っていた。とにかく、この門を開けろ。」
バンッ!と門を叩くクロウ。
と、その時、門がゆっくりと開いて行った。
ヒスイ「あ、開いた。」
フローネ「元々、鍵はかかってなかったんですよ。」
クロウ「なるほど。まぁ、家主の許可は得たんだ。遠慮なく行かせてもらうぞ。」
フローネ「でも、気を付けてください。中にはかなり強いビーダーが・・・!」
クロウ「関係ない。行くぞ。」
フローネの忠告を無視して歩き出すクロウ。
ヒスイ「え、ええ。」
セシル「あ、待ってよ!」
慌てて追いかける二人。
フローネ「(ふふふ・・・。)」
砦の中に入る三人。
しかし、その中は・・・草原が広がっていた。
セシル「なんか、建物の中っぽくないね。」
ヒスイ「ていうか、なんで草原があるんですか!?」
フローネ「烏の手下達が、自分達の都合のいいように、内装を変えてしまったの。」
ザ、ザ、ザ・・・。
その時、遠くから足音が聞こえてくる。
???「うみゃあ、久しぶりにお客さんなのぉ?」
そして、姿を現す。どうやら少女のようだが・・・。
クロウ「な・・・!」
しかし、あのクロウでさえも驚いてしまうその容姿とは、一体・・・!
つづく
次回予告
ヒスイ「あわわ!砦の中は凄いビーダーでいっぱいです!」
セシル「こいつらに全部勝たなきゃ、烏がいる屋上へはたどりつけないの!?」
クロウ「まぁ、それなら全部倒せばいいだけだ。それほど苦ではない。いや、むしろ喜びの方が近いか。」
セシル「ほ、ほんとにどんな時でもこれなんだから・・・。」
クロウ「次回『現れる刺客達』極めろ、強さへの道!」