爆・爆ストーリー ZERO 第30話

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第30話「クロウの告白」
 クロウ達の前に突如現れたロン。
 クロウへの憎しみをハッキリとあらわし、よりいっそう強くなった新型ヘイロンで
襲い掛かってきた。
ロン「はぁ!!」
 ドキュンッ!!
 ブリザードヘイロンから凄まじいパワーのショットが放たれる。
 迎撃するクロウだが、その玉はなかなかとまらない。
クロウ「ちっ!」
 仕方なくよけようとするクロウ。
 しかし、雪に足をとられて、うまく動けない。
クロウ「っ!」
 そうこうしているうちに、ロンのショットはすごい勢いでクロウに迫る。
セシル「危ない!」
クロウ「ぐっ!」
 もう遅い。かわすことを諦め、膝を少し曲げ、重心を下げる。体を安定させ、少しでも衝撃をやわらげるのだ。
 バーンッ!!
 ビー玉はクロウに命中すると同時に大爆発が起きる。まぁ、正確にはショットの衝撃波によりまわりの雪が舞い上がっただけだが。
クロウ「は・・・あ・・・。」
ロン「・・・・・。」
ヒスイ「(まてよ、まさかあいつ・・・!)」
 ヒスイは、ロンに対し何かの仮説が浮かんだようだ。
ヒスイ「(なるほど、だとしたら、あれが最後の作品というわけか・・・まさかこれ
ほどとは。)」
クロウ「はぁ!!」
ロン「・・・・。」
 バーンッ!!
 空中で激しく激突するクロウとロンのショット。
 バシュッ!!
 力はわずかにロンのほうが勝ったのか、かなり威力は落ちているが、ロンのショットがクロウに向かって飛んできた。
クロウ「なに!?」
 しかし、威力が落ちているので、すぐに撃ち落とすことが出来た。
クロウ「こいつ・・・!」
ロン「・・・・・・。」
 その様子を見て、ニヤリと笑うロン。
ヒスイ「す、すごい・・相変わらずすごいドライブショットです・・・。」
セシル「スピードも半端じゃないわよ!」
ヒスイ「えぇ、あの特殊なコア・・・肩と腕を分離し、腕パーツとホールドパーツが
一体化しています。それがあのパワーの秘密!そして、その強力なパワーの反動に耐えるために、バックアーマーもかなり改良されてますね。」
 あの二枚のフリー可動ウィングが最高の持ちやすさを出しているのだろう。
クロウ「(少し、厄介かもしれないな。)」
 さすがに身構えるクロウ。
クロウ「(まぁ、『少し』だけだが。)」
 ホールドパーツをおもいっきり締め付けるクロウ。
 ギシギシ・・・!
 軋むボディ。相当な負荷がかかっている。
クロウ「食らえ!」
 ドンッ!!
 レクイエムから発射される強力なショット。
ロン「むっ!」
 ロンもそれを撃ち落そうとするが、クロウのショットの方が数段強かったらしく、
何発撃ってもとまらない。
 ガキンッ!!
 それでも、大分威力を半減できたので、ショットがヒットしてダメージは少ない。
ロン「ほう。」
クロウ「・・・!」
 そしてクロウの方も、指に相当な負担がかかってしまった。
ヒスイ「今のショット・・・撃ったクロウの方がダメージは大きいですね。」
セシル「そんな!攻撃を仕掛けたほうが逆にダメージを受けるなんて!」
クロウ「(こいつもそろそろ限界か?・・・ふっ、ならいいさ。それならそれで、使
い物にならなくなる前に踏み台にするまでだ。)」
 再びシメうちの構えをとる。
セシル「え!?」
ヒスイ「まさか、またあんなショットを!?」
クロウ「(まだ利用価値はある・・・道具なら道具らしく、ゴミになるまえにしっか
り使わせてもらう。)」
 ドキュンッ!!
 再び強力なシメうち。
ロン「!?」
 そのシメうちはさっきとは比べ物にならないくらい強い。さすがのロンも迎撃しきれず、ヒットする。
ロン「・・・・。」
 だが、全く動じない。
クロウ「はあああぁぁ!!」
 再びおもいっきりシメる。
セシル「ちょ、ちょっとクロウ!」
ヒスイ「やめてください!これ以上あのショットを撃てば、レクイエムが持ちません!」
クロウ「持たすつもりなんかない。」
ヒスイ「な・・・!どういう意味ですか!?」
クロウ「そのままの意味だ。」
 ギシギシ・・・!!
 クロウは更に力を加える、ボディの軋みもどんどん大きくなる。
セシル「な、何、この音・・・!」
ヒスイ「悲鳴です・・・クロウの力に、レクイエムが悲鳴を上げてるんです・・
・。」
ロン「面白い・・・。」
 その様子を微笑しながら見るロン。
クロウ「うおおおおお!!!」
 更に力を上げる。
セシル「も、もうやめて・・・クロウ!このままじゃ・・・このままじゃ・・・!」
 そして、トリガーを押すクロウ。
クロウ「!?」
 その時、レクイエムのショルダーパーツの一部が砕けた。
 そして、その事で力を緩めてショットを放った。
 ドンッ!!
 そのショットはさっきよりも数段弱い。だが、その分機体への負担は軽減された。
ロン「ふん。」
 あっさり撃ち落すロン。
ロン「やはり・・な。」
クロウ「・・・・・。」
 自分の行動に驚きを隠せないクロウ。
クロウ「(何故だ・・・何故、俺は手加減した・・・!あの状態でパーツが破損する
など、予想の範囲内だったはずだ!なのに・・・何故俺は、あの時、必要以上に動揺した?・・・なんだ、この気持ちは・・・!)」
 得体の知れない感情に戸惑うクロウ。
ロン「お前の中に・・・弱さが生まれている。」
クロウ「!?」
ロン「完璧だったものが・・・崩されていく瞬間か・・・。」
クロウ「貴様いったい・・!」
ロン「これで、お前の支えているものの一つを崩せる。」
 ドキュンッ!!
 レクイエムへ強力なショットを放つロン。
クロウ「うっ!!」
 迎撃は間に合わず、それはレクイエムに直撃。
 そして・・・・。
クロウ「あ・・・・!」
 クロウの手から・・・無数の欠片が・・・落ちた・・・。
ヒスイ「そ、そんなバカな。」
セシル「レクイエムが、粉々になるなんて。」
ロン「ふん。」
 ロンはその様子を鼻で笑い、そのまま踵を返して歩いていった。
ロン「(今出来る復讐は、これが限度だな。)」
 クロウは、地面に落ちた欠片を見ることなく、去っていくロンの姿を見るわけでもなく、ただ、立っていた。シメ撃ちの構えをとったまま、直立不動していた。精彩の欠けた目をしながら。
クロウ「・・・・・。」
セシル「クロウ・・・。」
 セシルはクロウの足元にあるレクイエムの欠片を集め、拾った。
セシル「ひどい・・!」
ヒスイ「これではもう、修復は難しいです。」
セシル「そ、そんな!なんとかならないの!?」
ヒスイ「無理ですよ。原型がわからなくなるくらい粉々にされたら。」
クロウ「(俺は何故呆然としている・・・。経緯は違うもののこうなることは、こう
いう結果は既に予想できた・・・いや、俺の中で予定されていたものだ。じゃあ俺は何に驚き、何に対してこの気持ちを抱いているのか・・・。そして、この気持ちは何なのか・・・。)」
 クロウは、無言のままセシルの手にある欠片の一つをとった。
セシル「あ。」
クロウ「・・・・・。」
 無言でその欠片を見つめる。見ていると、なんだか喉に何か得体の知れないものが詰まったような感覚を覚えた。
クロウ「(これは・・・この感情は・・・まさか・・・。)」
 驚いた。クロウは自分自身に驚いた。自分自身の感情に。
ヒスイ「クロウ?」
 クロウは、顔を伏せ、静かにしゃべりだす。
クロウ「俺は・・・今まで・・・ビーダマンは自分の強さを表現するための、道具だ
と思っていた・・・。だから、たとえ壊れたとしても、それはそのビーダマンが弱い
せいだから・・・弱いビーダマンは俺にとっては必要の無いものだから・・・だか
ら、より強いものに取り替えればいいと、ただそれだけ思っていた。」
ヒスイ「・・・・。」
クロウ「なのに・・・・なのに、なんでだろうな?・・・・なんで、こんなに悲しい
んだろうな?」
 クロウは、手を握り締めた。必死で涙をこらえているのだ。その握り締めた手は小刻みに震えている。
セシル「クロウ、それは人として当然のことだよ。自分の愛機が壊れたんだから・・・。」
クロウ「俺は!・・・俺は・・・お前らと同じ、人間じゃないんだ。」
セシル「え!?」
ヒスイ「ど、どういう意味ですか!?」
 驚愕するセシル。
クロウ「俺は・・・あの忌々しいマッドサイエンティスト、Dr.コハクの手によっ
て、人工受精の末に生まれた、改良型ヒューマノイドなんだ。」
ヒスイ「改良型・・・ヒューマノイド・・・?」
セシル「それっていったい・・・?」
 今まで聴いたことの無い単語に疑問を抱くセシル。
クロウ「俺の両親は、二人とも有名なビーダーだった・・・。」
 ゆっくり語り始めるクロウ。
クロウ「数々の大会で優勝し、その実績は伝説のビーダーとうたわれるほどのものだったらしい・・・。
だが、そんな二人の間にはビーダーとしての才能を持ったものは生まれなかった。
よほどショックだったんだろうな。『才能を持ったものの子供が凡人』その事実が、どうしても許せなかったらしい。
そして二人は、悪魔に魂を売った・・・。」
ヒスイ「人工的に、才能のある子供を産もうとしたんですね?」
クロウ「ああ。」
セシル「で、でも当時にそんな医療技術を持った人がいるの?今だって、そんな特殊な技術を持った人は数えるくらいしかいないのに・・・。」
クロウ「一人だけいたんだよ。悪魔のような、神がな・・・。」
ヒスイ「それが、Dr.コハク?」
クロウ「あぁ、あの二人の希望通り、Dr.コハクは人工的な受精を行い、俺が生まれた。
成功だった。俺は、誰もが予想も出来ないほどの強さをもって生まれることが出来た。
希望が叶ったんだ、最初は喜んださ、あの二人は。だが、問題はその後だった。」
セシル「その後って?」
クロウ「俺の力は、強すぎたんだ。それゆえ、バトルをすれば必ずまわりを傷つけてしまう。幼かった俺は、自分の力を制御するなんてノウハウはなかったからな。そして、その力に恐怖したあの二人は・・・俺を・・・!」
 クロウの手が更に強く握られる。
クロウ「地下牢へ監禁したんだ。」
ヒスイ「え!?」
セシル「ひ、ひどい!」
クロウ「日のあたらないあの暗闇の中、俺は外に出ることはおろか、誰とも会うことは許されず、しゃべることも、歩くことも、立つことさえ、制限された。それが、被害を出さない唯一の方法だったらしい。そして、俺はそれをただ受け入れていた。いや、ただ分からなかっただけかも知れない。自分が何故ここにいるのか、そして、今ここにいることはつらいことなのかどうかと言う事さえ。」
セシル「・・・・。」
クロウ「だが、ついにそれも限界が来た。例えわからなくても、精神や肉体は正直だ。限界が来れば、キレる。俺はついに、あの牢屋を破壊し、そして・・・。」
ヒスイ「そして・・・?」
クロウ「・・・・・。」
 クロウは息を吸い込んだ。次の言葉を発するには、相当なエネルギーがいるらしい。
クロウ「俺は・・・自分の両親と、兄弟を・・・手にかけてしまったんだ・・・!」
セシル「!?」
クロウ「俺は自分の力を、強さを呪った・・・。」
セシル「で、でも、だったらなんで、クロウは今まで強さを求めてきたの?クロウにとって強さは・・・。」
クロウ「自分の・・・唯一のパートナーを守るために・・・。」
セシル「唯一のパートナー?」
クロウ「肉親を手にかけた俺は、本当に孤独になってしまった。そんな俺には、もう何もなかった・・・そう、俺には強さしか残ってなかったんだ。」
セシル「強さしか・・・。」
クロウ「強さだけが、俺の唯一のパートナーだった。だから、俺はそれを失いたくなかったんだ!強さだけを求められて生まれたものにとって、それだけが俺の存在意義だった。俺は、それを失いたくなかったんだ・・・!」
 吐き出すように全てを語ったクロウ。
セシル「そんな過去があったなんて・・・・。」
クロウ「だが・・・・。」
 顔を上げるクロウ。
クロウ「そんな俺にも、いつの間にか・・・仲間、と呼べるものができたのかもしれない・・・。」
セシル「クロウ・・・・。」
 クロウのセリフにセシルは笑顔で言う。
セシル「うん!私達は仲間よ!」
ヒスイ「そうですよ!僕達は、どんなことがあっても、仲間です!」
クロウ「お前ら・・・。」
 ビュウウウウウ~!!
 その時、頭上から突風が吹いた。
クロウ「なんだ!?」
 見上げると、そこには鋼の烏が飛んでいた。
ヒスイ「あれは、あの時の!?」
セシル「あの時?」
ヒスイ「そうだ!クロウ!追いかけましょう!」
クロウ「なに。」
ヒスイ「あの烏なら、もしかしたら蘇らせることが出来るかもしれません!!」
クロウ「・・・・。」
 最初はヒスイの言ってる意味が良くわからなかったが、だんだん理解してくるクロウ。
クロウ「なるほど、賭けてみるのも、悪くないな。」
セシル「ちょっと、なんの話よ!」
ヒスイ「さぁ、行きましょう!」
クロウ「ああ!」
 駆け出す二人。
セシル「え、ちょっと待ってよ!」
 あわてて二人の後を追うセシル。
 ようやく本当の仲間となれた三人。この先、いったいどんなことが待っているのか・・・。
       つづく
 次回予告
ヒスイ「破壊されたレクイエムを復活させるため、僕達はあの鋼の烏を追いかけました!」
クロウ「そして、その末にたどり着いた場所にあったものは・・・!」
ヒスイ「こ、この建物はいったい!?」
セシル「次回!『鋼の砦』」
クロウ「極めろ、強さへの道!」




 

 



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