爆・爆ストーリー ZERO 第27話

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第27話「その花は夢見る」

 レシアスとのバトルが終わり、宿屋に戻るクロウとヒスイ。
クロウ「明日の正午か・・・。」
ヒスイ「わざわざ教えると言う事は、罠かもしれませんね。」
クロウ「なんだっていいさ。どのみち、情報がなくて動けない状態だったんだし。それに、罠は罠でそれなりに利用できるからな。」
ヒスイ「?」
 最初、クロウの言っている意味が分からなかったが、すぐに理解する。
ヒスイ「あぁ、そう言う事ですか。相変わらずですね。」
クロウ「当たり前だ。俺の目的は元々一つしかない。」
ヒスイ「ふ、それより、レクイエム直しておきましたよ。」
 ヒスイがクロウにレクイエムを手渡す。クロウ「これは・・!」
 そのレクイエムは、いろいろと改良されているところがあり、新型と言って良いようなものだった。
クロウ「・・・・。」
ヒスイ「うっ!」
 突如、ヒスイが右手首を押える。
クロウ「どうした?」
ヒスイ「えぇ、ずっとリバースハンドミッションを使ってきましたから・・・相当負担が掛かってるようです・・・。」
 見ると、ヒスイの右手首は、少し赤くはれていた。
クロウ「手首を捻る技だから、その分の負担が大きいわけか。」
ヒスイ「ええ、明日はあまり戦えそうにありません。でも、その強化したレクイエムなら、なんとか・・・。」
クロウ「もとより、お前の手を借りるつもりは無い。自分のビーダマンがあるのならな。」
ヒスイ「そうですか。分かりました。」
クロウ「それより、飯にするぞ。腹が減ってたら、勝てるバトルも勝てなくなるからな。」
ヒスイ「そうですね。」

 宿屋にある食堂へ行くクロウとヒスイ。
ヒスイ「クロウ・・。」
クロウ「ん?」
 食堂はバイキング形式になっており、好きなだけ食べられるのだ。
 クロウはここぞとばかりにテーブルいっぱいに料理を並べている。
ヒスイ「いや、いくらなんでも食べすぎなのでは?」
クロウ「明日は久しぶりにバトルが出来るからな。力を付けておかないと。」
ヒスイ「で、でもいくらなんでもそれは食べすぎですよ。お腹壊したら元も子もないですよ。」
クロウ「お前こそ、そんなに少食でいいのか?明日へばっても知らないぞ。」
ヒスイ「これが少食ですか・・・(汗)」
 ヒスイも大人一人前くらいの量は食べてる。
ヒスイ「まぁ、僕は明日あまりバトルしないつもりですから、別にいいんですけど・・・。」
クロウ「そうか。」
 と、いつの間にかクロウの前にあった皿が空になった。
ヒスイ「えぇ!?」
クロウ「さて・・・。」
 再び立ち上がり、料理を取りに行く。
ヒスイ「(いつの間に食べたんですか!?)」

 そして翌朝。
 早起きし、宿屋から出るヒスイとクロウ。

ヒスイ「まだ、時間がありますね。」
クロウ「そうだな・・・今のうちに新レクイエムの試しうちをしておいたほうがいいな。」
ヒスイ「あ、そう言えばこの村にも確かBコロシアムがあったはずですよ!」
クロウ「却下だ。」
 即答。
ヒスイ「え?」
クロウ「あんな所にいるザコどもの相手をした所で、何も得は無い。」
ヒスイ「得ならありますよ。暇つぶしになります!」
クロウ「確かに、時間を浪費するよりはいいかもしれないが・・・。」
ヒスイ「とにかく行きましょう。」
 歩きだすヒスイ。
クロウ「お、おい。」
 仕方なくついていくクロウ。

 Bコロシアム。
クロウ「・・・・・。」
 中ではビーダー達がしのぎを削っていた。
クロウ「くだらないな。」
ヒスイ「まぁまぁ。」
 クロウは、手始めにバトルボウリングの台へ行く。
クロウ「はぁ!」
 ドンッ!!バーン!!
 あっさりパーフェクト。
クロウ「・・・・。」
 つまらない表情のクロウ。
 と、そこでビーダー達の歓声が聞こえる。
 最初はクロウに対するものかと思ったが、どうやら違ったらしい。
子供A「す、すっげぇスピードだ!」
子供B「あぁ、全然装填してるのが見えなかった!」
クロウ「なんだ・・・?」 子供達の視線を追う。
 そこには、連射系のタイムアタックの競技の台に立っている、黒い服にトンガリ帽子を被った少年が立っていた。
少年「・・・・。」
 少年は再びビーダマンを構える。
少年「はあぁ!!!」
 ドドドドド!!
クロウ「なに!?」
ヒスイ「早い!」
 少年の撃ったビー玉が横一列になってターゲットに迫る。
 バーンッ!!!
 あっという間に全てのターゲットを倒してしまった。
少年「ふっ、完璧だ。これならあいつと最高のバトルが出来る。」
クロウ「・・・・・。」
 クロウはその少年に見覚えがあったらしい。
クロウ「(あいつ・・・どこかで・・・。)」

少年「さぁ、もう一練習行くか。」
 再びビーダマンを構える少年。
クロウ「(そうか、思い出した。あいつ、結構有名なシスコンだったな。・・・)」
 レクイエムを取り出すクロウ。
クロウ「(となると、狙われる前に殺る必要があるな。)」
 そして、少年に話し掛ける。
クロウ「おい、俺と勝負しろ。」
少年「ん、なんだいきなり。」
クロウ「ルールはデスマッチだ。いいな?」
 有無を言わさないようだ。
少年「デスマッチ!?(デスマッチは、一般のビーダーには知れ渡っていないルール・・だとすると、こいつは裏社会のビーダー・・・もしくは・・・!)」
クロウ「どうした?」
少年「いや、こんな公の場で、デスマッチはやめておこう。ディレクトヒットバトルくらいでいいんじゃないか?」
クロウ「まぁ、いいだろう。」
 黒いビーダマンにDHBアーマーを取り付ける少年。クロウもそれに習うのだが・・・。
ヒスイ「あ、ダメですクロウ。」
クロウ「なんだ?」
ヒスイ「レクイエムの素体は、パッドがついてるから普通のDHBアーマーをつけられないんです。」
クロウ「そうなのか?」
 今まで、特に改良型素体ZEROを手に入れてからデスマッチくらいしかしてなかったから気づかなかったのだ。
ヒスイ「だから、これを使ってください。」
 ヒスイは、市販品のとはちょっと違う形状のDHBアーマーを取り出す。
ヒスイ「これならレクイエムでも装着出来ます。」
クロウ「ああ。」
 レクイエムもDHBモードだ。
 そしてクロウと少年がDHB用のステージに立つ。
クロウ&少年「ビーファイア!!」
 ドンドンッ!!
 二つのビーダマンからビー玉が凄い勢いで発射され、激しく撃ち合う。
クロウ「はあぁ!!」
少年「うおおお!!」
 しかし、シメ撃ちが出来ないとはいえ、ドライブショットが撃てるレクイエムの方が有利だ。
少年「(ドライブショット!?まさか・・・そう言えば、聞いた事がある、改良型素体ZEROをもちだして、組織を裏切った男がいると・・・まさか、こいつが?!)」
クロウ「どうした?その程度か?」
少年「ちぃ・・なら、これならどうだ!!!」
 ドンドンドンドンドン!!
 横に移動しながら連射する少年。
少年「超速5連打!!」
 五発のビー玉が横一直線に並んで向かってくる。
少年「どうだ!これなら躱せないはずだ!」
クロウ「躱す必要は無い。」
少年「なに!?」
 ドンドンドンドンドン!!
 クロウも少年みたいに五発横並びに連射する。
少年「俺と同じ技を・・・!」
クロウ「確かにこの技は凄い。だが、通常ビーダマンは最大5発までビー玉を装填できる。つまり、動きながら撃てばその技は誰にでも出来ると言う事だ。」
少年「くそっ!なら・・・俺にしかできない・・・俺だけの技を・・・!」
クロウ「なに・・・?!」
少年「うおおおおおお!!!」
 ドンドンドンドンドンドンドンドン!!!
 今度は、横に移動しながらしかもビー玉を補充しつつ連射する。
少年「超速八連打!!」
クロウ「なっ・・・!(一瞬で技を進化させた・・・!バトル中に成長したと言うのか・・・!?)」
 しかし、クロウはあっさりドライブショットで撃ち落す。
少年「くそ・・・なら!」
クロウ「(確かに、技も、テクニックも、俺どころか、あの炎呪よりも劣る・・・だが、このままいけば・・・。)」
少年「超速10連打!!!」
 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!
 今度は10連発だ。
クロウ「ほぅ・・・。」
 だが、ドライブショットで、レクイエムに向かってくる玉だけを弾き飛ばし、あとは少しも動かないでおく。
少年「!?」
クロウ「無駄に横に連射したところで、ビーダマンに当たるであろう玉だけを止めれば、おそるるにたらんな。」
少年「くそっ!」
 バンッバンッ!! レクイエムの横を通り、フェンスにぶつかるビー玉。
クロウ「終わりだ。」
 ドンッ!!
 レクイエムのショットが見事少年の黒いビーダマンにヒットする。
少年「ぐわああ!!」
 何故か黒いビーダマンとともに少年も吹っ飛ぶ。
クロウ「・・・なかなかいい腕だな。なのに、なぜシャドウにいる?」
少年「なに!?」
クロウ「あんな所にいても、腕を潰すだけだ。悪い事は言わない。すぐに見切りをつけるんだな。」
少年「シャドウから逃げ出したお前には、分からないさ。」
クロウ「俺は逃げたんじゃない。捨てたんだ。強くなるためにな。」
少年「俺には・・・出来ない・・・。強くなる以上に、大切なものがあるからな!」
クロウ「・・・・・。」
ヒスイ「クロウ、そろそろ時間です。いきましょう。」
クロウ「ああ。」

 と言う事で、公園についたクロウとヒスイ。
 陰に隠れ、レシアス達が来るのを待っている。
 そして数十分後、ついにレシアスがセシルを連れてやってきた。セシルは縄に縛られている。

クロウ「あいつ一人か・・・?」
ヒスイ「他のB-フォースのメンバーがいない。どこかに隠れている可能性がありますね。」
クロウ「用心していたほうがいいだろうな。」
ヒスイ「とにかく、今がチャンスです。」
クロウ「ああ!」
 ドンッ!
 クロウがビー玉を発射し、セシルの縄を切る。
レシアス「!?」
 そして一気に飛び出し、セシルの手を取る。
セシル「クロウ!」
クロウ「行くぞ!」
 一気に駆け出す。しかし・・・。
旦那「ふふふ。」
 突如、旦那がクロウの前に立ちはだかった。
クロウ「どけっ!怪我したくなかったらな。」
セシル「お、お父様・・・!」
クロウ「なに!?」
旦那「さぁ、帰るぞ、セシル。」
セシル「いやっ!」
 クロウの後ろに隠れるセシル。
クロウ「どういう事だ?」
ヒスイ「そう言えば、前に家出したとか何とか言ってましたね。」
セシル「う、うん。」
旦那「君達、セシルは私の大切な娘なんだ。返してもらおう。」
クロウ「俺達にとっても、セシルは大切な食費源だ。返すわけには行かないな。」
旦那「なに!?そんな理屈が通ると思ってるのか!?」
ヒスイ「あなたも、娘を取り返すためとは言え、やり方が乱暴すぎます!」
旦那「私は、セシルを取り戻すためならなんでもする。セシルは、私の大切な・・・いや、私自身と言ってもいい。」
ヒスイ「そこまで大事なら、力づくではなく、ちゃんと話し合えばいいじゃないですか!」
旦那「ふん、言って分かる娘ではないからな。それに、私はセシルに帰ってきてほしいわけじゃない。」
セシル「え・・・。」旦那「帰らせてやるんだ。この私がな。セシルの意志なぞ知らんよ。よって、説得する意味は皆無だ。」
セシル「そうやって、また私を縛るつもりなのね・・・!」
クロウ「縛る?」
セシル「ずっと嫌だった・・・あの家でも暮らしが。」
旦那「な、何を言っているんだ!私は、お前が望む事はなんでもしてやった何も不自由にはさせなかっただろうが!」
セシル「どこがよ!着替えも、入浴も、食事も、勉強も、何をやるにしてもまわりにメイドさんがいて、何一つ私にさせてくれなかった!これのどこが自由なの!?不自由極まりないじゃない!」
旦那「そ、そう言う考え方も出来なくは無いが・・・。」
セシル「でも、それだけなら、私だって耐えられた。だけど・・・。」
旦那「だけど?」
セシル「・・・私には夢があったんだ・・・。」
旦那「夢だと?」
セシル「私、愛する人と結婚して、綺麗なお嫁さんになるのが夢だった・・・。」
クロウ「(なんてベタベタな・・・。)」
旦那「そのために、私はお前に最高の相手を見つけてきてやったじゃないか!お前だって、彼を気に入って・・・。」
 話が完全に旦那とセシルにしか分からないような内容に発展していた。
 どうやら、旦那が許婚を決めたと言う話らしいが・・・。
セシル「えぇ、私も彼の事を愛してた・・・でも、彼は私の事を愛してはいなかった。ただ、許婚だから。それだけで私と一緒にいた・・・私はそれが我慢出来なかった!」
旦那「それで・・・家を出たと言うのか?」
セシル「出会いを求めるために・・・。」
旦那「くだらないな!これは少女漫画ではないんだ!やはり、連れ帰るべきだな!」
 パチンッ!と旦那が指をならす。
 するとどこからともなくシルバとチルドの姿が現れる。
シルバ「及びの用じゃな。」
チルド「やっと出番か、待ちくたびれたよ。」
クロウ「こいつら・・・!」
レシアス「さぁ、お話の時間は終わりです。一気にかたをつけますか!」

            つづく

 次回予告

ヒスイ「はわわわ~!!大変です!B-フォース三人が一気に僕らに襲いかかってきました!いくら新型レクイエムでも、これはかなりきついはずです!」
セシル「いや、帰りたくない!私は、私の夢を叶えたいの!」
クロウ「お前、ほんとに夢を叶えたいと思ってるのか?」
セシル「え・・・?」
クロウ「次回!『戦う決意』極めろ、強さへの道。」 

CM

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