爆・爆ストーリー ZERO 第24話

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第24話「浄化する魂」
 B-フォースのアジトを突き止めるためにチルドを追いかけていたクロウとヒスイだが、チルドの脚力は想像以上に速く、見失ってしまった。
ヒスイ「はぁ、折角のチャンスだったのに。」
クロウ「まぁ、仕方ないだろう。手かがりは自力で見つけるしかなさそうだな。」
 そう開き直って、二人は歩き出した。

 と、その時。
 ドンッ!
クロウ「!?」
 クロウに20歳くらいの男がぶつかってきた。
 咄嗟に反応できなかったクロウはよろめいた。
 しかし、男は気にする事無く走り去っていく。
???「待てー!!」
 そして、その遥か後方で警官らしき男が走ってくる。。
クロウ「なんだ?」
???「き、きみたち!あの男を捕まえてくれ!」
 なんだかよく分からないが、とりあえず男を追いかける事にするクロウとヒスイ。
 ヒスイはともかくクロウは足が速い。ヒスイをおいていって、あっという間に男の前に立ちはだかった。
男「な、なに!?元マラソン選手のこの俺を抜くとは・・・!」
クロウ「マラソン選手だろうがなんだろうが、お前は今まで走ってきた分のハンディがあるからな。当然の結果だ。」
男「ちっ、どけ!」
 ドンッ!
 と男がクロウを押しのけようと、肩に手をぶつけるのだが・・・・。
クロウ「ふんっ!」
 その手を掴まれ、そのまま投げ飛ばされてしまった。
男「どわああ!」
 ドサッ!
 前方へ飛ばされ、しりもちをつく男。
???「おっしゃ!観念しろ!」
 警官らしき男もおいついてきた。
男「簡単に捕まってたまるかよ!」
 男は慌てて立ち上がり、走り去ろうとする。
???「逃がすか!」
 警官は懐から、何か取り出す。
ヒスイ「あれは・・・ビーダマン!?」
 そして、素早くビー玉を一個装填。
クロウ「早い!?」
???「行くぜ、プロヴィデンスホーク!」
 警官はプロヴィデンスホークと呼ばれたビーダマンの腕を固定する。
クロウ「(ホールドパーツではなく、腕を固定した?)」
 ドンッ!!
 プロヴィデンスから発射されるビー玉はシメ撃ち並のパワーを持っている。
男「な、なにぃ!?」
 ビー玉は走っている男の目の前の地面にぶつかり、地面がえぐれる。
男「うっ!」
 そして、えぐれた地面に躓き、転ぶ。
???「観念しやがれ!」
 そこを警官が捕まえ、手錠をかける。
???「へへ、ついに捕まえたぜ、ポイジャン!引っ手繰りの現行犯で逮捕する!」
ポイジャン「くっそー!!」
 その様子を眺めているクロウとヒスイ。どうやら、警官のビーダマンの性能に驚いているようだが。
クロウ「あのパワー・・・。」
ヒスイ「なるほど・・・あのホールドパーツにつけられたシールドが腕パーツと干渉を起こす事で、腕を固定するだけでパワーショットが撃てるというわけですか・・・。」
 そこへ、数人の警官達がかけつける。
警官A「神鷹さーん!」
 さっきの警官は、神鷹と言う名前のようだ。どうやら、彼らは神鷹の部下のようだ。
神鷹「おう!遅かったな!事件解決だ!」
警官B「すごいですね!さすが神鷹さん。」
神鷹「はっはっは、まぁな!っと、それより、こいつを署へ連行してくれ。」
警官V「はっ!」
 部下達は敬礼して、ポイジャンを連れていく。
 クロウ達も、特に用は無いので、その場を去ろうとする。
神鷹「おい、待てよ。」
 神鷹は後ろから二人の肩に手をまわす。
クロウ「なんだ?」
神鷹「へへ、お前らのおかげで奴を逮捕できたんだから、お礼くらいさせろよ。」
ヒスイ「お礼・・・ですか?」
神鷹「そうそう。もうそろそろお昼も近いし、飯おごってやるよ。」
ヒスイ「え、でも・・・。」
クロウ「別にいいんじゃないのか?セシルがいなくなって、まともな物を食ってないんだからな。」
ヒスイ「それは、そうですが・・。」
神鷹「じゃ、決まりだな、俺は神鷹ツバキだ。よろしくな!」
 二カッと笑顔で言うツバキ。クロウ達も自己紹介をすます。
 と、言うわけで、飯をおごって貰う事になった。
 ここは荒野なので、レストランのある町へ行こうとするのだが・・。
ツバキ「あ、そだ。その前に、ちょっと野暮用があるんだった!」
ヒスイ「野暮用?」
ツバキ「あぁ、ちと付き合ってくれ。」
 そして、クロウ達が連れていかれた場所は・・・?
クロウ「ここは・・・!」
 クレアの家の前だった。
ツバキ「すぅ~、はぁ~・・・。」
 ツバキは深呼吸してから、扉をノックする。
ツバキ「く、クレアさん・・・私です、神鷹です!」
 コンコンッ・・・・ガチャ。
 しばらくしてから扉が開き、中からクレアが出て来た。
クレア「あぁ、神鷹さん。見まわりご苦労様。」
 神鷹の姿を確認し、笑顔で言う。その笑顔を見て、顔を赤くする神鷹。
ツバキ「はっ!じょ、女性一人暮らしでは危険ですからね!だから、えっと、その・・・。」
 緊張しているのか、テンパっている。
クレア「ふふ、いつもありがとう。」
 結構な頻度で来ているようだ。
ツバキ「その・・・はい・・!」
 うつむきながら呟くツバキ。
クレア「あれ・・・クロウ?」
クロウ「あぁ、もう退院出来たのか・・・?」
クレア「うん、今朝退院したばかり。やっぱり、クロウが病院まで運んでくれたのね。ありがとう。」
クロウ「いや、あんたには一回助けて貰ったからな。・・・それより、すまないな、黙って行ってしまって・・・。」
クレア「気にしないで。あなた達にも都合があるんだし。」
ツバキ「おい、クロウ。」
 ツバキが、クロウの肩をつっつき、小声でしゃべる。
クロウ「なんだ?」
ツバキ「クレアさん、入院してたのか?・・・ていうか、お前ら、知り合いだったのかよ?」
クロウ「あぁ、まぁ、ちょっとした事でな。」
ツバキ「何だよお前、水臭いな。だったら最初から言ってくれればいいのに・・・。」
クロウ「・・・今のセリフ、全面的に何かおかしいぞ。」
ツバキ「そ、そうか?」
 と、その頃・・・。どこかの荒野では・・・。
ツバサ「へっ!」
 バキィ!!
 ツバサはまたも人のビーダマンを破壊して楽しんでいた。
少年A「うわ~ん!!」
 ビーダマンを破壊された少年は、泣きながら去って行った。
ツバサ「・・・・何か・・・違う。」
 いや、ツバサは楽しんではいなかった。
 得たいの知れない虚無感に必死に耐えていたのだ。
ツバサ「くっ、全部あいつのせいだ!あいつの・・・!」
 ツバサはジョーと出会ってから、ビーダマンを破壊する事への楽しみが薄れていたのだ。
ツバサ「くそっ!どうしてしまったんだ、僕は!・・・だが、あいつを倒せば、きっと元に戻ってくれるはず。」
 セイクリッドホークを取り出すツバサ。
ツバサ「そのために、僕は特訓してきたんだから・・・。」
 と、その時。
ジョー「あ、お前またこんな事やってんのか!?ちっ、こんな事なら楽しくないとかなんとか言ってないで、コテンパンにブッ倒してやれば良かったぜ!」
ツバサ「え・・!」
 いきなり、唐突に、問答無用にジョーが現れた。
ツバサ「・・・・。」
ジョー「ったく、バトルの匂いがしたから駆けつけてきたら、またお前かよ。どうりでなんか変な匂いかと思ったら・・・。」
ツバサ「ふふ、僕達、縁があるのかもしれないね。」
ジョー「だとしたら、ほんとに神様はいらない縁をくれたもんだぜ。」
ツバサ「丁度良かった。君に会いたいと思ってたんだ。」
ジョー「俺に?」
ツバサ「あぁ。君と出会ってから、なんかおかしいんだ。楽しい事が、楽しい事と感じられなくなってしまった。」
ジョー「はぁ?」
ツバサ「だから、僕と勝負してくれ!君をたおせば、きっと元に戻ってくれる!」
ジョー「あぁ、そうだな。俺も今、お前を倒して更正させなきゃいけないって思ったばかりだしな!」
ツバサ「それじゃあ、今回はこれを使おう。」
 ツバサは懐からターゲットバグを取り出す。
ツバサ「このターゲットバグを先に止めた方の勝ちだ。」
ジョー「ああ。構わないぜ!」
 カチャカチャ・・・ジャー!
 ネジを巻き、バグをスタートさせる。
ツバサ「それじゃ行くよ!ビー、ファイア!」
ジョー「おらあああ!!」
 合図と共にバグに向かってパワーショットを三連射する。
ツバサ「させない!」
 カンッカンッカンッ!!
 ジョーのショットを全て止めるツバサ。
ジョー「(こ、こいつ・・・!)」
ツバサ「いけっ!」
 そして、素早く構えてバグに狙いを定めてショットする。
 ドンッ!
 ジョーもツバサの玉をとめようとするのだが、外れてしまった。
ジョー「くっ!」
 バシュッ!!
ツバサ「惜しい!」
 ツバサの玉は、ターゲットバグにかわされてしまった。
ジョー「お前・・・前よりも強くなってるな。」
ツバサ「うん!君に勝つために、猛特訓したんだ!」
ジョー「特訓・・・俺に勝つために・・・。」
ツバサ「あぁ、どうしても君に勝ちたかったから。だから!」
ジョー「(勝つために、特訓する・・・。ダメだ、理解できねぇ!勝つためにバトルするなんて、間違ってる!)」
ツバサ「いけっ!」
 再びツバサのショットがバグに向かう、バグはあっさりかわしてしまう。
ツバサ「くっ!」
ジョー「(でも、それは本当に間違ってるのか?確かに、バトルは勝つためではなく、楽しむためのもの・・・でも、強くなる事自体は、間違っていない。)」
ツバサ「今度こそ、当ててやる!そして、絶対に勝つんだ!」
ジョー「(こいつは、俺に勝つために・・・強くなった・・・だが、楽しむ事しか考えてない俺は・・・勝つための努力をした事があっただろうか・・・?)」
 ジョーがバトル中に悩んでいるのと同じように、ツバサも同様に悩みを抱えていた。
ツバサ「(・・・なんだこれは・・・勝とうと思えば思うほど・・・楽しくなる・・・!まだ、勝ってないのに、あいつのビーダマンを破壊して無いのに、なんでこんなに楽しいんだ!?)」
 お互いに、今の自分の考えを否定するように、必死でビー玉を発射する。
ジョー「いけっ!」
 バグにパワーショットを放つ。
ツバサ「させない!」
 それを妨害するツバサ。
ジョー「ぐっ!」
ツバサ「やった!(な、何でよろこぶんだ?!勝った訳じゃないのに!)」
ジョー「くそっ!(何、悔しがってるんだよ!?これじゃ、楽しめないだろ!)」
 ドンドンッ!!
 バトルは更に白熱していく。
 たった一つのターゲットを狙うだけなのに、かなり長引いている。
 お互いが全力をつくし、負けまいとする心、そしてバトルを楽しみたいと言う心が表れていた。
ジョー「(・・・強くなりたい・・・今よりも、もっと・・・でも、強かろうが、弱かろうが、バトルの楽しさは変わらない・・・じゃあ、なんで!)」
ツバサ「(・・・僕は・・・間違っていたのか・・・思えば、僕は今まで、勝てるバトルしかしなかった・・・。負けるのを怖がっていたんだ・・・。だから、確実に勝てる弱い相手とばかり戦って・・・。当然、そんなんじゃ、バトルを楽しめるわけが無い。だから、屁理屈を言って、ビーダマンを破壊するのが楽しいって、自分に嘘をついていたんだ・・・。)」
ジョー「(俺は・・・逃げていたのか?負ける事の悔しさから。だから、バトルを楽しむって言い訳をして・・・勝とうと努力をしなかった。努力をして負けた時の悔しさは、計り知れないものがある。でも、違うんだ、それじゃ、成長しない・・・成長しなければ、ビーダーとしてバトルする意味は・・・バトルを楽しむ意味は無いんじゃないのか・・?!)」
ツバサ「(本当の勝利と言うものは・・・!)」
ジョー「(本当のバトルと言うものは・・・!)」
ツバサ&ジョー「(勝とうとする事を楽しむものなんじゃないのか!?)」
 ついに、二人は、バトルの本当の答えを見出したのであった!
 お互いに、向き合う二人。
 その表情は、足かせとなっていたこだわりを全て捨て、爽やかだった。
ツバサ「・・・・。」
ジョー「・・・・。」
 一瞬だけフッと笑い、再びビーダマンを構える。
ジョー「このバトル・・・思いっきり楽しもうぜ!」
ツバサ「ああ!・・・でも!」
ジョー&ツバサ「勝つのは(ジョー)俺だ!(ツバサ)僕だ!」
 二人の想いと裏腹に勝手に動き回るターゲットバグ。
ジョー「いくぜ!ファングバースト!」
ツバサ「パワーウィングモード!」
 ガガガガガ!!
 お互いの必殺技が激突する。後一歩のところでターゲットをゲットできるのだが、お互いの玉がぶつかりあい、相殺してしまう。
ジョー「(力はほぼ互角・・・こいつに下手な小細工は通用しないな!)」
ツバサ「(となると、真正面からぶつかりあって、根競べしかない!)」
ジョー「行くぜ!ウェイブギル!」
ツバサ「セイクリッドホーク!!」
 絶対に勝利する考えを捨てたツバサと、勝ち負けを考えずに楽しむ考えを捨てたジョーは、本当に楽しげだった。


         つづく

 次回予告

ジャベンス「はぁ、はぁ・・・!辛いでごわす・・・。怖いでごわす・・・。でもわしは、後悔はしてないでごわす。これが、わしの選んだ道だから!ジュウあんちゃん!わしも、ジュウあんちゃんのように!」
クロウ「次回!『ジャベンスの試練』極めろ、強さへの道!」

  



 

 



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