爆・爆ストーリー ZERO 第22話

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第22話「相反するもの」

 B-フォースのアジトの場所を知っている。そう言う少年、ツバサとバトルをする事になったヒスイだが、そのバトルに負けたヒスイはツバサにジェイドガンナーを破壊されてしまった。

ヒスイ「そんな・・・!」
 膝をつき、粉々になったジェイドガンナーのパーツを手にする。
ヒスイ「なんで・・・こんなことを・・・!」

 ヒスイは、震える手でジェイドガンナーの欠片を拾いながらツバサへ問う。
ツバサ「僕が強いからさ。」
クロウ「!?」
 ツバサの言葉に、何故かクロウが反応した。
ツバサ「だってそうだろ?僕が弱かったら、そんな事は出来ないわけだし。」
ヒスイ「・・・・!」
 ヒスイは目に涙を浮かべてツバサを睨みつける。
ツバサ「その目・・・最高に気持ち良いぜ。信用しきった相手に裏切られるときに見せる怒りと悲しみの入り混じった眼差し。実に滑稽だ。」
 言って、くくっと笑う。
ツバサ「そう、快感さ・・・。破壊するビーダマンの出来が良ければ尚更だな。」
ヒスイ「どういう、意味ですか・・・?」
ツバサ「ふ・・・。出来のいい作品と言うのはそれだけでつまらないものだ。文句をつける事も出来なければ、それ以上の発展はありえない。」
 ツバサの言葉を黙って聞いているヒスイとクロウ。
ツバサ「だったら、それに変化をもたらせばいい。簡単さ、踏み潰して粉々にしてしまえばいいんだから・・・。」
ヒスイ「・・・!」
ツバサ「確かに、後悔はある。素晴らしい作品をなくしてしまったと言う後悔はね。だが、その過程は実に美しい。素晴らしい作品が崩されていくと言う焦燥感、崩していく自分に対する怒り、作品に対する罪悪感・・・そして何より、それを感じられるのは強さを持った自分だけと言う絶対性がある。他人では絶対に味わう事の出来ないこの感覚・・・たまらないね。」
クロウ「おい・・!」
 いつの間にか、クロウが怒りの顔でツバサを睨み付けていた。
ツバサ「なんだ?仲間のビーダマンを破壊されて怒ってるってのか?」
クロウ「いや、こいつのビーダマンが壊れようがどうなろうが、正直俺にはどうでもいい。だがな・・・。」
ツバサ「?」
クロウ「強いから・・・強いからだと・・・?自分の強さを理由にして、そんなくだらない一時凌ぎの快感に身を投じて・・・。俺はそう言う奴が一番許せないんだ!」
 珍しくクロウが怒りの感情を露にしていた。
ツバサ「・・・分からないな。君は何が言いたい?」
クロウ「強さって言うのは、ただあるだけでいい!それだけで、十分な価値を持つんだ!」
ツバサ「何を言ってる。どんなものでも使わなければただの宝の持ち腐れだろ?」
クロウ「使って・・・意味のあるものならな。」

 クロウは憎々しげに呟いた。
ツバサ「う~ん、価値観の違いって奴かな?君はそこにあるだけで、ものの価値を見出している。でも僕は、そんな真似は出来ないな。」
クロウ「価値観だと?・・・なくなればいいと願って、でもなくすわけにはいかないと求めて・・・俺は・・・!」
 なかなか聞き取れないほどの小さな声で呟く。
ツバサ「あん?」
 と、その時。
ジョー「何やってんだお前!!」
 どこからともなく、いきなりジョーが現れた。
クロウ「なんだ、お前は?」
ジョー「俺の名前は荒波ジョー!そう言うお前こそなんだ?」
クロウ「クロウ。」
 とりあえず名乗る。
ジョー「そうか。まぁ、ぶっちゃけお前には用は無い。」

 名乗らさせておきながら、ジョーはクロウを無視してツバサやヒスイの方を向いた。
ヒスイ「ど、どうしたんですか?いきなり現れて・・・。」
ジョー「あぁ、ちょっと変な匂いがあったんでな。」
ヒスイ「匂い・・・?」

 そう言えば、ジョーはバトルの匂いを嗅ぎ分ける事が出来るのだった。
ジョー「そんな事より、そこのお前!」
 ジョーがツバサの事をビシッと指差す。
ツバサ「何かな?僕の名前は神鷹ツバサって言うんだ。」
 さわやかな笑顔で自己紹介するツバサ。
ジョー「でえぇい!名前なんてどうでもいい!!お前なんちゅーバトルしとるんじゃ!」

 いきなり怒鳴られて、ツバサは面喰った。
ツバサ「え・・・?」
ヒスイ「ジョーってバトル見てましたっけ・・・?」
ジョー「バトル内容くらい匂いで分かる!」
クロウ「(分かるのか・・・?!)」
 疑問は尽きないが、とりあえず話を進める。
ツバサ「で、あのバトルが何か?」
ジョー「お前!全然バトルを楽しんで無かっただろ!」
ツバサ「そんな事無いよ。僕は十分楽しかったよ。」
ジョー「ああ、確かにお前は楽しんでたな。だが、それはバトルの内容じゃなく、勝つ過程だけだ!」
ツバサ「当たり前じゃないか。負けるバトルを楽しめるわけないだろ?」
ジョー「ちげぇよ!たしかに負けたら面白くねぇけど、それは終わってみなきゃわからない結果じゃねえか!バトル中は勝つか負けるか分からないんだから十分楽しめるだろ!」
ツバサ「はぁ?」
 ジョーの言葉にツバサは本当に訳の分からないような顔をする。
ジョー「勝つ事とか負ける事ばっかり考えてバトルを楽しまなかったら損じゃねぇか!」
ツバサ「損ねぇ・・・。どんなバトルだろうが、勝ったものが得をし、負けたものが損をする。それ以外に何がある?」
ジョー「て、てめぇ・・・!ゆるさねぇ!お前みたいな考えを持った奴がいるから、シャドウやB-フォースみたいな連中がはびこるんだよ!」
クロウ「(B-フォース!?)」
ツバサ「ん~、あまり関係ないと思うけどな~。」
ジョー「黙れ!勝負だ!お前のその腐りきった根性を叩きなおしてやる!」
ツバサ「まぁ、僕も君みたいな暑苦しい奴は好きじゃないんだ。それに、バトルを楽しむって事を言い訳にして、負けたときの痛みを和らげようとするような考え方も虫唾が走るし。」
 ツバサがビーダマンを取り出す。
ツバサ「いいよ、受けてあげる。」
 そう言ってにっこりと笑う。
ジョー「そうこなくっちゃな。」
 ジョーも不敵な笑みを浮かべながらウェイブギルを取り出す。
ジョー「で、ルールは?」
ツバサ「そおだねぇ・・・。」
 ツバサはフィールド上に20本のターゲットを用意する。
 そのうち十本は、ツバサの陣地へ、もう十本はジョーの陣地へ設置する。
ツバサ「先に相手の陣地のターゲットを全部倒したほうが勝ちって言うのはどうかな?」
ジョー「なんだって構わないぜ。」
 ツバサとジョーがフィールドにつき、構える。
ツバサ「それじゃ、始めるよ!」
ジョー「おう!」
ツバサ&ジョー「ビー、ファイア!!」
 先手必勝!と言わんばかりにジョーのパワーショットが放たれる。
 そのショットはツバサの陣地にあるターゲットに見事にヒット。
 カンッ!
ジョー「!?」
 ターゲットは、2、3回揺れたあと、ゆっくりと倒れた。
ジョー「(なんだぁ?結構強く撃ったつもりなんだけどなぁ・・・。)」
ツバサ「あぁ、言い忘れてたけど。」
ジョー「なんだよ?」
ツバサ「そのターゲットの中には鉛が仕込んであるんだ。そう簡単には倒れないよ。」
ジョー「ちっ、そう言う方針かよ!」
ツバサ「さぁ、行くよ!」
 ドンッ!
 セイクリッドホークのパワーウィングモードから放たれる強力なショットが風を裂きながらジョーのターゲットにヒット。
 カカンッ!
 2本ほどターゲットが吹っ飛ぶ。
ジョー「くっ!なんてパワーだ!だが、パワーなら負けねぇ!!」
 ジョーはバックルにビー玉を込めた。
ジョー「いくぜ・・・ファングバースト!!」
 ドンッ!!
 ウェイブギルから放たれるダブルバースト。
 カンッ!
 ターゲットを1本弾き飛ばした。
ジョー「おっしゃ!」
ツバサ「ちっ、並んじゃったか。」
 現在、ジョー、ツバサともに8本。
ツバサ「まだまだ負けないよ!」
 ドンッ!
 今度はノーマルモードでのしめ撃ちだ。
 しかし、3発ほど連射する。
ジョー「うおおおお!!!」
 ジョーは、再びダブルバーストを放つ。
 バンッ!!
 フィールド中央で、ぶつかり合い、お互いに威力を打ち消しあう。
ツバサ「くっ!」
ジョー「負けるかぁ!!」
 ジョーのすばやい気合の入った装填により、ツバサが撃つ前に再びパワーショットを放つ。
ツバサ「早い!?」
 カンッ!!
 ツバサのターゲットが1本吹っ飛ぶ。
ジョー「まだ行くぜ!」
 ドンッ!
 再びパワーショット。
ツバサ「させない!」
 ツバサはそれを撃ち落そうと迎撃するのだが、焦って撃ったせいでパワーが乗らず、弾かれてしまう。
ツバサ「くっ!」
 カンッ!
 ジョーの玉がターゲットにヒット。しかし、ツバサのショットにより威力が下がってしまっていたので、ターゲットは倒れなかった。
 現在、ジョー8本。ツバサ7本。
ジョー「おっしぃ~!」
ツバサ「セイクリッドウィング!パワーバレルモード!!」
 ツバサの必殺技が羽ばたく!
 真っ直ぐジョーのターゲットに向かう。
ジョー「いっくぜぇ!!」
 しかし、ジョーはそれを無視し、ツバサのターゲットに向かってひたすら連射する。
 カンッ!
 ツバサの玉がジョーのターゲットを倒す。
 カカン!カカンッ!
 ジョーの連射がツバサのターゲットにどんどんヒットしていき、2本ほど倒れる。
ツバサ「うっ!」
 現在、ジョー7本。ツバサ5本。
ジョー「どおだぁ!」
ツバサ「くそっ!」
ジョー「どんどんいくぜ!ファングバースト!!」
 ジョーのダブルバースト。真っ直ぐツバサのターゲットへ向かっていく。
ツバサ「いけー!!」
 しかし、ツバサのパワーショットでそれを弾き飛ばす。
ジョー「ちっ!パワーが乗らなかったか!」
ツバサ「(くそっ・・・!なんだこの余裕のない戦いは・・・!)」
ジョー「(・・・確かに熱いバトルだ・・・。でも相手があんなんじゃ全然たのしくねぇ・・・。)」
 その頃、B-フォースのアジトでは・・・。
 シャドウも使っているでっかい水晶にあの旦那が映っており、それとレシアスが話をしている。
レシアス「あなたの依頼通り、セシル・エレスティアの捕獲に完了しましたよ。」
旦那「よくやった。では、早速セシルをこちらへ引き渡して貰おうか。」
レシアス「その前に・・・。」
 レシアスが何か言いたそうな顔をする。
旦那「あぁ、分かっている。報酬だろう?いくらほしいんだ?」
レシアス「ふ・・・報酬もなかなか魅力的なんですが、我々が欲しいものはまた別にある。」
旦那「なに・・・?」
レシアス「伝説のビーダマン・・・コバルトブレードを渡していただきたい。」
旦那「なんだと・・・!?」
レシアス「6年前・・・あなたが見せてくれたあれですよ。まぁ、偽者とも量産型と
もつかないようなマシンが巷で出回っているそうですが、本物はあなたが持ってるんでしょう?」
旦那「バカな・・・!あれはもう私の手元には無い!」
レシアス「そんなはずはないでしょう。あんな貴重なビーダマンをあなたが手放すわけが無い。」
旦那「確かに・・当時あれを手に入れた私は大切に保管した。だが、いつの間にかなくなっていたんだ。そう、ビーダマンが元々の持ち主の所へ帰って行ったかのようにな。」
レシアス「ふ・・・そんな見え透いた嘘を。まぁ、いいでしょう。あなたが渡す気が無いと言うのなら、この話は保留と言う事で。セシルもこちらで預からせていただきます。」
旦那「くっ・・・!」
             つづく
 次回予告
クロウ「ジェイドガンナーを失ってしまったヒスイは、新型マシン開発に取り組む。」
ヒスイ「蘇れ、ジェイドガンナー!そして、より強くなった姿を見せてくれ!」
クロウ「次回!『轟け!ビー玉の雷鳴!!』極めろ、強さへの道!」




 

 



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