爆・爆ストーリー ZERO 第21話

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第21話「汚れた聖なる翼」

 クレアが持っていたビーダマンはなんとレーザーホーネットだった。

 そのレーザーホーネットをクロウへ渡すためここまでやってきたクレアだが、チルドの攻撃を受けて倒れてしまう。
 そして、クレアが渡すはずだったレーザーホーネットはクロウではなく、チルドの手に渡り・・・。

 レーザーホーネットを手にしたチルドは面白そうに機体を弄繰り回す。
チルド「へぇ、これレーザーホーネットって言うんだ。」
 チルドは何気にヘッドについているレーザーのスイッチを入れる。
 カチッ!ビーン!
 赤い光が真っ直ぐ伸び、ジェイドガンナーに当たる。
ヒスイ「っ!?」
チルド「凄い。僕でも凝視しなきゃ分からないものが簡単に見える。」
クロウ「なに!?」
 そのままチルドはジェイドに向かってビー玉を撃つ。
 カンッ!
ヒスイ「くっ!」
 それほど強い攻撃ではなかった。
 しかし、それでもヒスイは成す術もなくジェイドを落としてしまった。
チルド「凄いね、このビーダマン。」
 ヒスイは慌ててジェイドを拾い、チルドに向かってビー玉を発射した。
ヒスイ「いけっ!」
 しかし、チルドはパワーショットでそれを止める。
チルド「無理だよ、そんなショットじゃ。」
ヒスイ「くっ!」
チルド「さて・・・。」
 チルドの視線がゆっくりとセシルに向く。
セシル「!?」
チルド「そろそろ終わらせようかな。」
 ドンッ!
 チルドは、またヒスイのジェイドを撃ち落した。
ヒスイ「!?」
 そして、すばやくセシルの所へ行き、腹部に拳を叩きつける。
セシル「うっ・・・!」
 そのまま気絶するセシルを抱え、チルドは去って行った。
クロウ「しまった!」

ヒスイ「そんなっ!」

 二人が反応する余裕もなく、チルドは姿を消してしまった。
クロウ「くそっ!」
 クロウはすぐに追いかけようとするのだが、ヒスイがそれを止める。
ヒスイ「まずは、この人を・・・。」
 ヒスイが言っているのは気絶して倒れているクレアの事だ。
クロウ「あ、ああ。」
 クロウ達は、見えなくなったセシルよりも、目の前のクレアを介抱する事を選んだ。
ヒスイ「近くの病院に運びましょう!」
 そしてヒスイ達は文字通り近くの病院にクレアを運んだのだった。

 薬品の匂いがなな鼻につく診察室でヒスイ達と医者が向かい合って座っている。
ヒスイ「どうですか?」
 ヒスイは神妙な面持ちで向かい合った医者の言葉を待った。
医者「ん~、特に外傷も無いし、問題はないでしょう。ただ、よほど大きな衝撃を受けたんでしょうな、鞭打ち症の疑いもあるし、しばらくは検査のために入院して貰う事になります。」
ヒスイ「そうですか・・・。ありがとうございます」

 ヒスイ達は一礼して診察室を出た。
 そして今度は、クレアの病室に向かった。
 クレアは、ベッドで安らかな眠りについている。
ヒスイ「よかったですね、特に問題なくて。」
クロウ「ああ。」
 クロウはそう呟いて、目線を落とす。
 クレアの顔を見て、何かを考えているようだった。
クロウ「(俺が・・・戦えてれば、あんな事には・・・。)」
 拳を握り締める。
 よほど強く握っているのか、小刻みに震えているようだ。
ヒスイ「クロウ、過ぎた事を悔やんでもしょうがありませんよ。」
 クロウの気持ちを察したヒスイが声をかける。
クロウ「俺は・・・言い訳は聞きたくない。それが俺に対するものなら尚更だ。」
ヒスイ「・・・・。」
クロウ「(結局、俺は自分のためにしか生きられないんだな。そうだ、それは今までも、これからも、変わらない。俺にとってたった一つの真実なんだ。)」
 クロウは突然立ち上がり、ドアの方へきびすを返した。
クロウ「行くぞ。」

 そして、まだ座っているヒスイを促した。
ヒスイ「え?」
クロウ「いつまでもここにいても仕方ないだろ。」
ヒスイ「でも、目覚めるまで待たないんですか?」
クロウ「待ってどうする?待って・・・どうすればいいんだ、俺は?」
 最後の方は、微妙に声が震えていた。
ヒスイ「どうするって・・・。」
クロウ「とにかく、俺はもう行く、お前がここにいたければいればいい。」
ヒスイ「分かりました。分かりましたよ。」
 ヒスイは仕方なくクロウについて外に出た。
クロウ「で、結局どうするかだな……」
 外に出て、開口一番クロウが聞く。
ヒスイ「どうって」
クロウ「B-フォースにレーザーホーネット、そしてセシルを奪われたんだ。そのままでいるわけにはいかないだろう?」
ヒスイ「そうですよね。なんとしてでも取り返さないと!」
クロウ「ふ、元々明確な目的がなかったんだ。こういったイベントがあったほうが、俺としても好都合だからな。」
 相変わらずのクロウの返答に、ヒスイは微笑しつつ、本題に入る。
ヒスイ「とりあえず、B-フォースの居所をつきめないといけませんね。あれだけの組織なんですから、アジトみたいなところがあるはずです!」
クロウ「そうだな。」
???「君達、B-フォースのアジトを探してるの?」
 ふいに、後ろから声が聞こえてきた。
 振り向くと、そこには美形の少年が、笑顔で立っていた。
ヒスイ「君は・・・?」
ツバサ「僕は、ツバサ。神鷹ツバサって言うんだ。」

 少年はニコニコと自己紹介をした。
ヒスイ「あ、あぁ、僕はヒスイです。こっちは、クロウ。」
 条件反射で自己紹介するヒスイ。が、クロウはそんな事よりもツバサの言葉に食い付いた。
クロウ「お前、B-フォースのアジトを知ってるのか?!」
ツバサ「うん。」

 ツバサは笑顔を浮かべたまま頷いた。
ヒスイ「ど、どこなんですか!?」
ツバサ「ん~、タダで教えるってのもな~。」
ヒスイ「うっ・・・。」
 お金はセシル持ちだ。

 しかし、ツバサは金を請求する事は無く、少し考えたのちこう提案した。
ツバサ「よし、僕とバトルして、勝ったら教えてあげるよ。B-フォースを探してるって事は、君達もビーダーなんだろ?」
ヒスイ「ほんとですか!?」
ツバサ「うん!ただし、僕が勝ったら・・・。」
ヒスイ「勝ったら・・?」
ツバサ「君のビーダマンを見せてよ。」
 屈託の無い笑顔でそう言う。
ヒスイ「僕の?」
ツバサ「うん、僕、いろんな人のビーダマンを見てみたいんだ!」
ヒスイ「分かりました。いいですよ。」
 別に見せても減るものじゃないので、快くOKするヒスイ。
ツバサ「ありがとう。それじゃ、こっちに来て。」
 ツバサは病院の裏に行こうとする。
ヒスイ「え・・・?」
ツバサ「こっちに面白いものがあるんだ。」
 ツバサに言われるまま、病院の裏に行くクロウとヒスイ。
ヒスイ「これは・・・!」
 そこには、バトル用のフィールド(テーブル)が置いてあった。
ツバサ「フィールドだよ。凄いでしょ。ここの院長、実は密かなビーダマンファン
で、こっそり持ち込んでるんだ。」
ヒスイ「へぇ~。」
ツバサ「それじゃ、なんの競技にしようかな・・・?スルーザターゲットか、バトル
ボウリングか・・・いや、でも対戦ならディレクトヒットバトルかな・・・?」
 ツバサがバトル用の道具を取り出して、どの競技にしようか迷っている。
ツバサ「よし、決めた!」
 そして、黒い三角のパックをフィールドの中央に置く。
ツバサ「バトルホッケーにしよう!」
ヒスイ「バトルホッケーですか・・・。」
 バトルホッケーはフィールド上におかれたパックをビー玉で撃ち合い、相手の陣地に押し込んだ方の勝ちとなる競技だ。
ヒスイ「(パワーと連射の総合力が決め手になりますね。)」
 ヒスイがジェイドガンナーの調整をする。
ヒスイ「(よし。)」
 調整完了。
ヒスイ「準備OKですよ。」
ツバサ「じゃあ始めようか。」
 二人がフィールドの端に立つ。
ヒスイ「(そういえば、こんなまともな競技をするのは、本当に久しぶりですね・・
・。)」
ツバサ「それじゃ、いくよ。ビーファイア!」
 ツバサの掛け声でバトルがスタートする。
ヒスイ「いけっ!」
 先手はヒスイが取った。
 ジェイドガンナーから発射されたビー玉が真っ直ぐパックに向かう。
 カンッ!
 見事にヒット。しかし、パックは微動だにしない。
ヒスイ「なに!?」
クロウ「あのパック・・・普通じゃないな。」
ヒスイ「なんて重量・・・まさかあれは鉛!?」
ツバサ「あれを動かすのはむずかしいよ!」
ヒスイ「くっ、だったら、連射で!」
 ズドドドド!!
 ジェイドの連射。徐々にパックが動いていく。
ヒスイ「よし!」
ツバサ「いくよ、セイクリッドホーク!!」
 セイクリッドホークは赤いカラーリングに、大きな羽根が印象的なビーダマンだ。
 ギシギシ・・・!
 ツバサが、ホールドパーツと腕につけられているウィングを押える。
ヒスイ「(あの構えはしめ撃ち・・・。でも、それだけじゃあのパックは動かないは
ず。)」
 ドンッ!
 セイクリッドホークからパワーショットが放たれ、パックにヒット。
 バンッ!
 パックは、その場から3センチほど移動した。
ツバサ「よし!」
ヒスイ「なに!?」
クロウ「馬鹿な、普通のパワーショットであれだけの威力が・・・!?」
ツバサ「普通じゃないさ。」
ヒスイ「普通じゃない?」
ツバサ「うん、僕のセイクリッドホークは、ただ指でホールドパーツを締め付けるだけじゃなくて、背中にある翼を押える事でも締め付ける力が上がるんだ!」
ヒスイ「あの羽根には、そんな機能が備わっていたなんて・・・!」
ツバサ「さぁ、どんどん行くよ!」
 ツバサの猛攻。
ヒスイ「ジェイドガンナー!!」
 ヒスイも連射でそれに耐えるのだが、徐々にツバサが押していく。
クロウ「(・・・まずいな。どうひいき目に見ても、総合力じゃ向こうの方が上だ。
このバトルは下手な小細工が通用しない・・・。勝ち目は薄いな。)」
ヒスイ「くっ!!」
 パックは既に自分の陣地のすぐ目の前まで来ている。
ツバサ「押し込め!!」
ヒスイ「(このままじゃ・・・・でも、ワンハンドミッションに組み替える暇もない
し・・・!)」
 しかし、負けるわけにはいかないと、必死で連射し、少しだけパックを押し返す。
ツバサ「へぇ・・・。」
クロウ「(ほぅ・・・。)」
ヒスイ「いっけー!!」
 ドドドド!!
 徐々に押していくヒスイ。
ヒスイ「よし!」
ツバサ「ふ・・・。」
 何故かビー玉を撃たなくなったツバサ。
クロウ「(ジャムったのか?)」
 疑問に思うクロウ。しかし、ジャムったにしては余裕の顔のツバサ。      
     (注)ジャムる=ビー玉が詰まる事
ヒスイ「いけー!」
 しかし、ヒスイは攻撃の手を緩めない。
ヒスイ「(よし、いける・・・いける・・!!)」
 圧倒的不利な状態からの逆転。
 絶対に勝てないと思っていた相手に、少しでも勝てる希望を見出し、この上なく興奮するヒスイ。
 それは表情にもハッキリ出ている。
 そしてツバサはその光景を面白そうに見ている。
ツバサ「(そうだよ・・・これが見たかったんだ。その滑稽な表情がね。)」
 口元が微妙に緩むツバサ。
クロウ「(なんだ、あいつ・・・?)」
ヒスイ「はぁ・・はぁ・・・!」
 そしてパックはツバサの陣地のすぐ近くまで来た。
ツバサ「ありがとう。少しでも足掻いてくれるんだね。」
ヒスイ「!?」
ツバサ「でも、ごめんね。もう少し楽しみたかったんだけど、勝てるバトルを長引かせられるほど、僕は器用じゃないんだ。」
ヒスイ「えっ!?」
ツバサ「見せてあげるよ、聖なる翼の羽ばたきを!」
 そう言って、セイクリッドホークの羽根を前方に突き出す。
ヒスイ「これは!」
 そして、セイクリッドホークの前方が銃身の様になった。
ツバサ「セイクリッドホークパワーバレルモード!」
ヒスイ「あの羽根は、バレルにもなるのか!?」
ツバサ「ただのバレルじゃないんだよ。」
 ギシギシギシ・・・!!
 ツバサがバレル状になった羽根を思いっきり締め付ける。
ヒスイ「あの状態で、しめ撃ちを・・!?」
ツバサ「喰らえ!」
 ドンッ!!
 そして放たれる強力なショット。
 物凄い勢いで、そして恐ろしいほどの正確さでパックに向かってくる。
ヒスイ「うっ・・・!」
 それに手も足も出ないヒスイ。
 バーンッ!!!
 ヒットしたパックは、その勢いに吹っ飛んでしまった。
 カシャ・・・・。
 そして、ヒスイの陣地で着地する。
ヒスイ「あ・・・!」
 バトルはツバサの勝ちだった。
ヒスイ「負けた・・・。」
クロウ「ちっ・・・!」
ツバサ「ふぅ、いいバトルだったね。すっごく強かったよ、君!」
 バトルが終わり、ヒスイの前に来て、手を出す。
ヒスイ「え、えぇ。君こそ、まさかジェイドガンナーが破られるとは思ってもみませ
んでした!」
 その手を握るヒスイ。
ツバサ「また、バトルしようね!」
ヒスイ「はい!」
 こうして、二人の間に熱き友情が生まれたのであった・・・。
ツバサ「あ、そうだ。バトル前にした約束。」
 思い出したかのように言うツバサ。
ヒスイ「そうでしたね。」
 ヒスイがジェイドガンナーをツバサに渡す。
ツバサ「へぇ~、見た事ない型だなぁ・・・。これってもしかしてオリジナル?」
ヒスイ「はい、一応自分でチューンしたものですよ。」
ツバサ「すごいな~。パーツ一つ一つのバランスもいいし、機構もすごいし・・・。まさに芸術品だね!」
 ツバサは大げさとも言えるほどにべた褒めしまくる。
ヒスイ「いやぁ。」
 が、褒められて悪い気はしないのか、ヒスイは照れ隠しに頭を掻いた。
ツバサ「(ふふ・・・本当にいい出来だ。そそられるなぁ・・・。あぁ、もう我慢出
来ない!!)」
 が、ツバサの様子が変わる。ジェイドガンナーを見つめながら徐々に表情を歪ませるのだ。
ヒスイ「どうしたんですか?」
 ヒスイは明らかに変な様子のツバサを不審に思いはじめた。
ツバサ「はぁ・・・!はぁ・・・!!」
 ガッ!
 ツバサがジェイドガンナーを地面に叩き付ける。
 しかし、ジェイドガンナーはヒスイの開発した特別なビーダマンだ。その程度では完全には壊れない。
ヒスイ「え・・・。」
 ヒスイは突然の出来事に呆然とした。何故、このような行動を・・・?それが分からずに思考が鈍ってしまう。
ツバサ「(これだよ・・・この感覚だ・・・。)」
 ツバサはそんなヒスイなどお構いなしに、セイクリッドホークを構え、ジェイドガンナーに標準を合わせる。
ヒスイ「ちょ・・・!」
 我に返ったヒスイが慌てて止めに入る。しかし、それは間に合わず・・・。
ツバサ「ふふふ!」
 ドンッ!!
 ツバサは、セイクリッドホークでジェイドガンナーに向かってビー玉を放った。
 バキィ!!
 セイクリッドホークのショットによりジェイドガンナーは粉々になってしまった。
ヒスイ「そ、そんな・・・!」
         つづく
 次回予告
ヒスイ「またもどこからともなく現れた、熱血ビーダージョー!しかも、ジョーとツ
バサはお互いの考え方の違いにいがみ合ってしまいました!これは大変です!!」
クロウ「次回!『相反するもの』極めろ、強さへの道!」





 

 



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