爆・爆ストーリー ZERO 第19話

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第19話「人の手から手へと」
 川に流されたクロウはクレアに助けられ、クレアの家に連れていってもらった。
 クレアの家は、極普通の中流家庭によくあるような構造をしており、家の周りには、コンクリートの壁が囲っている。
 中に入る二人。玄関に上がり、居間に行く二人。
 居間は、キッチン、ダイニング、リビングの仕切りがなく、ワンフロアになっている。
クレア「とりあえず、そこに座って。今お茶を入れるから。」
 リビングにあるソファを指差すクレア。
 そして、お茶を入れるために、キッチンへ向かった。
クロウ「・・・・。」
 とりあえず、クロウは遠慮なくソファに座った。
クレア「紅茶でいい?」
 キッチンからクレアの声が聞こえる。
クロウ「ああ。」
 クロウはつぶやくように返事をした。
クレア「はい、どうぞ。」
 しばらくして、クレアが湯気の立つカップを持ってきて、クロウの前に置いてくれた。
クロウ「すまない・・。」
 クロウは、カップを手に持ち、そう呟いた。その口調は淡々としていたが、どこか罪悪と後悔が込められているように感じられた。
クレア「いいのよ、気にしなくて。なんだか、弟が出来たみたいで嬉しいんだか
ら。」
 クレアは笑顔でそんな事を言う。
 全く陰りのない本当の笑顔で。
クロウ「・・・・・。」
 その笑顔を見たクロウは、何故だか胸に温かさを感じた。
クロウ「・・・・っ!」
 しかし、それを拒むかのように、頭痛が起こる。
 痛みは一瞬だけだったが、瞬時にコメカミを押えた。
クロウ「・・・・・。」
クレア「大丈夫?やっぱり、まだ回復してなんじゃ・・・。」
クロウ「いや、大丈夫だ。・・・連れが待ってるから、俺はもう行く。」
 そう言って、立ち上がるクロウ。
 しかし、座ってる状態からいきなり立ち上がるのは、結構負担がかかるものだ。
クロウ「・・・っ!」
 また頭に鈍い痛みを感じ、コメカミを押えながらヨロヨロとふらついて腰を落とした。
クレア「無理しちゃダメ。・・・一体何してたんだか知らないけど、体中傷だらけな
んだから。」
クロウ「え・・・。」
 そう言われて、初めて自分の体を見た。
 今まで気付かなかったが、クレアの言う通りクロウは体中アザだらけだ。
 まぁ、崖から落ちて、そのまま川に流されたんだから当然だろう。いや、むしろそれで死ななかったと言うのは奇跡に近い。
クロウ「・・・・・。」
 改めて、クロウは自分の力を呪った。
 なんて生き汚い。
 あのまま死んでしまえば、それで終われたと言うのに。
 だって言うのに、しぶとく生き残って、他人に負担をかけている。
クロウ「すまない・・・。」
 思わず、さっき言ったセリフをまた呟いた。
 今度のは、消え入りそうなほど小さな声だ。
クレア「だから、いいって言ってるでしょ。私だって、別に嫌々やってるわけじゃないんだから。」
 はっきりと「仕方なくやってます」とか言う人はいないのだが、クロウはその言葉を必要以上に疑問に感じた。
クロウ「嫌々じゃ・・・ない・・・?『困っている人は助けないといけない』そんな
人間どもの作った教えを守ってるだけじゃないのか?」
 クロウの言い方にはどこか違和感がある。
 しかし、クレアは気にせずに言う。
クレア「ん~、確かにそれもあるのかもしれないけど・・・。」
 クレアは少し冷めて、飲み易くなったお茶を一口飲んでから答える。
クレア「なんて言うのかな?助けたいと思ったから・・・ううん、やっぱり『困って
いる人は助けないといけない』って教えを守ってるだけなのかも。」
クロウ「・・・・。」
クレア「でも、あのまま助けなかったら、私は絶対に後悔すると思う。これから先ず~っと。これって損じゃない?あなたを助ける事に得は無いかもしれないけど、損だけは絶対にしたくなかったから・・・。これじゃイケナイ?」
 クレアの言葉にクロウは目線を少し下げて言う。これはきっとクレアの本心ではないのだろう。だが、クロウが理解しやすいように自分を下げて話しているのだ。
クロウ「あぁ・・・イケナイな・・・。」

 それがなんとなく察せたからか、クロウはその言葉に頷かなかった。

 しかしクレアはそれ以上この話を続ける気はなかったのか、明るい口調で話題を変える。
クレア「まぁ、そんな事どうでもいいじゃない。それより、名前教えてくれない?いつまでも名前を知らないままっていうのもおかしいし。」
 そう言えば、クロウは名前を教えていなかった。
 本来ならクレアが名乗った時点で、自分の名前を教えるのが礼儀と言うものなのだが、あの時は昏睡状態(?)だったし、そのまま流れでクレアの家に来たからすっかり忘れていた。
クロウ「クロウだ。」
クレア「そう、よろしくクロウ。」
 クレアは笑顔で手を差し出す。
 一瞬ためらいながらも、クロウはその手を握った。クレアの手は少し冷たく、そして柔らかかった。
クレア「それで、クロウの家は?近くだったら、送っていくんだけど・・・でも、こ
の辺にはうち以外に家は無いし・・・。」
クロウ「俺は・・・旅をしているんだ。より強くなるために。」
クレア「へぇ、やっぱり男の子ね。そう言えば、あの子も同じ事言ってたなぁ・・
・。」
 目を細めて、思いに耽るクレア。
クロウ「あの子?」
クレア「うん、ちょっと前まで、二人で暮らしてた私の弟。あの子もただ強くなる事しか考えてなかったなぁ・・・。」
クロウ「そいつも旅に・・・?」
クレア「えぇ。前に一回帰ってきた事があるんだけど、やっぱり旅って凄いね・・
・。出て行ったばかりの頃とは全然雰囲気が違ったもん。」
クロウ「ああ。旅って言うのは、本当にいろんな事がある・・・。俺も、昨日までは
あんたに助けられるとは夢にも思わなかったわけだし。」
クレア「ふふ、それは旅をしていない私だって同じ。」
 自然と、クロウとクレアの間に隔たりはなくなっていた・・・。
 それから、クロウは風呂にも入れて貰い、食事や着替え、部屋まで用意して貰った。
 クロウの泊まる事になった部屋は、弟さんが使っていたであろう部屋で、居間から出て左に2、3Mくらい歩いたところにあり、殺風景で飾り気の無い部屋だった。
クロウ「・・・・。」
 ヘッドの中に入り、クロウは、久しぶりに家族の温かさを感じていた。
 いや、それは違う。
 クロウには、その温かさが家族とかそういうものと言う事とは感じていなかった。
 それでも、ただひたすら・・・温かかった。
 翌日。
クロウ「ん・・・・。」
 窓からこぼれてくる光を感じ、目を開けるクロウ。
 既に明るくなった外を見て、朝だと感じたクロウは、ベッドから出て、自分の服に着替える。
 そして部屋から出たところ、居間から出てきたクレアとばったり出会う。
クレア「あ、おはよう、クロウ。」
 ニコニコと、笑顔で挨拶するクレア。
クロウ「ああ・・・。」
 クロウは愛想悪く生返事する。
クレア「あ、そだ。私今からちょっと出かけなきゃいけないから、留守番してて。朝ご飯は居間に用意してあるから。」
クロウ「・・・ああ、悪いな。ありがたく、いただく。」
クレア「ふふ、それじゃいってきます。」
 そう言って、クレアは元気良く外へ出て行った。
クロウ「・・・。」
 とりあえず、居間へ行き朝食を済ます。
 それからは、特にやる事が無い。
クロウ「・・・・・。」
 ただひたすらボーっとしていた。
 その時、外から、音が聞こえる。
クロウ「なんだ・・・?」
 よく聞くとそれは、扉を強く、そして何度も叩き続けるような音だ。
 丁度退屈だったので、好奇心の赴くままに玄関に向かう。
 ドンッドンッ!!
 思ったとおり、その音は扉を叩く音だ。
 しかし、それにしてはかなり強い。扉が壊れるんじゃないかってくらい凄い音がしている。
 しかも・・・。
???「おい!中にいるのは分かってんだぞ!」
???「大人しく出て来い!!」
 なんて、まるで借金取りのようなドスのきいた声が聞こえてくる。
クロウ「・・・・。」
 なんとなく煩わしく思ったクロウは、めんどくさそうに扉を開ける。
 開けた途端、勢い良く人相の悪い三人の少年達が入って来た。
クロウ「!?」
 その勢いに押されそうになるクロウだが、なんとか踏みとどまり、不良達を外へ押し出した。
クロウ「なんだ、お前らは!」
不良A「おい・・・。あれを出せ!」
 開口一番それだ。
クロウ「は・・・?」
 当然何がなんだか分からない。
不良B「とぼけんなよ、おい!あれは元々俺のものだぞ!」
 不良Bの言葉に不良Aが反応する。
不良A「おい、お前何寝ぼけた事言ってんだよ、あれは俺が拾ったものだぜ。」
不良B「あん?あれの力を一番引き出してたのは、この俺じゃねぇかよ!」
不良C「それは俺のセリフだろ?この中で一番強いのも俺なんだからな!」
不良B「そんなの関係あるか!大事なのはあれをいかに使いこなすかだろうが!」
不良A「ふざけるな!そもそもお前があれを落とさなければ、こんな事にならなかったんだろ!」
不良B「あれは、お前があの時俺を押したりしたから・・・!!」
 三人は勝手に喧嘩をしはじめた。
クロウ「・・・・・。」
 クロウは置いてけぼりである。
 その時、何か銃声のような音が三回聞こえたあと、不良達は倒れてしまった。
クロウ「なんだ・・・!?」
 何がなんだか分からないが、クロウはとりあえず倒れた不良達は邪魔なので、外に放り投げた。
 そのすぐ後・・・。
クレア「あれ、クロウ?」
 クレアが帰ってきたのだ。
クレア「どうしたの、外に出て・・・。もしかして、お出迎え?」
クロウ「いや・・・。」
 クロウは視線を、情けなく倒れている不良達に向けた。
クレア「誰、この人達・・・?」
クロウ「さぁな。気がついたら倒れてた。・・・このままじゃ邪魔になるな。」
 クロウは三人の不良を抱えて歩き出す。
クレア「え、どこ行くの?」
クロウ「邪魔にならないような場所に置いていく。」
 そう言って、クロウはそのまま歩いていく。
クレア「・・・・。」
 クレアは無言で、懐から黄色いものを取り出す。
クレア「(また・・・やってしまった・・・。身を守るためとは言え・・・また・・
・人を・・・。)」
 ・・・・。
 ・・・。
 後悔に苛まれたクレアは、数日前の事を思い返した。
少年「ただいま!」
 より強くなるために旅に出ていたクレアの弟がその日、たまたま帰ってきたのだ。
クレア「アル!?」
 弟の名前はアルと言うようだ。
 突然の弟の帰宅に驚くクレア。
クレア「どうしたのよ、帰るんだったら連絡くらいいれてくれればいいのに。」
アル「へへへ、たまたま近くを寄ったからさ。たまには顔を見せないといけないか
な~って思って。」
 久しぶりの姉弟の再会だ。
 二人は水入らずで話しこんだ。
アル「あ、そうだ、お土産を持ってきたんだ。」
クレア「え、なに?お土産って・・・。」
アル「これだよ。」
 アルは懐から黄色いと黒のカラーリングのビーダマンを取り出した。
クレア「これは・・?」
アル「ビーダマンだよ。この前骨董屋に行った時、たまたま目に付いたものなんだけ
ど、結構強いよ。」
クレア「ビーダマン・・・ねぇ・・・。」
アル「姉さん一人じゃ、やっぱり心配だからさ、身を守るものが必要じゃないか
な~っと思ってね。」
クレア「ふふ、ありがと。」
 ・・・・・。
 ・・・。
 
クレア「(やっぱり・・・これは私が持っちゃいけないものなのかも・・・。)」
 そう思ったクレアは、クロウを追いかけた。強さを求めて旅を続けてきたクロウなら、この強大な力を正しく使えるかもしれない。そう考えたからだ。
 しかし、いつの間にか、クロウは遥か彼方へ・・・!
クレア「(は、速い・・!?)」
 その頃、クロウは・・・・。
クロウ「ま、こんなもんだろ。」
 遠く、遠くの公園のベンチに、不良達を置いた。
クロウ「さて・・・帰るか。」
 そこで・・・クロウは大事な事に気がついた。
クロウ「どこへ・・・帰ればいいんだ・・・?」
 簡単に言うと、迷ったのである。
 クレアの家にも戻れないし、ヒスイ達ともはぐれたし、クロウは完全に一人きりになってしまった。
クロウ「まぁ、俺は元々一人だったから、別にいいんだけどな。」
 そう開き直り、再び歩き出す事にした。
 そして、クレアは・・・。
クレア「はぁ・・はぁ・・・確かにこっちに行ったと思うんだけど・・・。」
 息を切らしながらクロウを探していた。
 果たして、この二人は巡り会う事は出来るのだろうか?
 その頃、ヒスイ達は・・・。
ヒスイ「一体なんだったんでしょうね、ジャベンス。」
セシル「さぁ?でも、何か、思いつめてるみたいだったね。」
ヒスイ「ええ・・・。ジュウと何かあったんでしょうか?」
 グラビトンビレッジの公園の近くを歩いていた。
セシル「あ・・・!」
 その時、セシルの目に、黒い髪と黒い服の少年がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
クロウ「あ・・・。」
 クロウも、それに気づいたようだ。
ヒスイ「クロウ!」
クロウ「お前ら・・・!」
 ついに再会を果たした三人。
 しかし、それを見つめる黒い影・・・・。
???「へぇ・・・面白そうだね・・・・。」
           つづく
 次回予告
セシル「やった!ついにクロウと会えた!」
ヒスイ「しかも、レーザーホーネットまで見つかっちゃいました!いい事は続くもんですね~♪」
クロウ「しかし、そのレーザーホーネットはよりによって・・!次回!『最悪の巡り
会い』極めろ、強さへの道!」

 

 



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